当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業以来一貫してユーザーニーズにお応えしながら技術革新と製品開発に取り組み、当社独自の「織る、塗る、形づくる」技術を構築し、企業価値の向上を図ってまいりました。近年における市場のグローバル化及びニーズの多様化の急速な進展に伴い、更なる技術の差異化を図るとともに品質と生産性をより一層向上させ、企業価値を創造してまいります。
(1)会社経営の基本方針
当社グループは「創造 Create」「革新 Innovate」「挑戦 Challenge」を基本とし、
Ⅰ.新たな価値を創造し、顧客満足度を高める。
Ⅱ.顧客要求を発掘し、独創的な技術で新事業を創出する。
Ⅲ.品質と生産性を向上させ、企業体質を強化する。
Ⅳ.社会・環境課題の解決に貢献し、持続的な成長を実現する。
を経営方針としております。
この経営方針に基づき、中期経営計画を策定し、事業戦略と財務戦略の両輪を回し企業価値の最大化を目指しております。事業戦略では、経営指標としてROICを用いた管理により、既存事業の深掘りと新規事業の創出を推進し、収益力を強化いたします。
財務戦略では、非事業資産の事業資産化を進めるとともに積極的な株主への還元により、資本効率を向上させてまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、ユーザーニーズにお応えしながら技術革新と製品開発に取り組み、健全な存続と持続的な成長を実現し、中長期的な企業価値の向上を目指しております。具体的には、既存事業の収益基盤を維持・拡大するために、生産能力の向上及び拡大、並びにユーザーニーズを先取りした新製品開発に投資するほか、既存事業とのシナジーを最大限に発揮するとともに高い資本収益性を有する新規事業への戦略投資を実施してまいります。
また、社会・環境に影響を与えるテーマを選定し、事業を通じてその課題解決を目指しております。具体的には、①脱炭素社会への貢献(カーボンニュートラルの達成、省エネルギー・省資源の推進、再生可能エネルギーへの代替、環境負荷低減材料の提供)、②多様な人材の育成と働きがいの向上(次世代人材の育成、全ての社員が活き活きと働ける会社)、③循環型経済の推進(排出物の削減、持続可能なサプライチェーンの構築)、④ガバナンスの充実(高い倫理観のある組織、風通しの良い組織体制)を重要な課題と位置づけて取り組んでおります。とりわけ、気候変動については喫緊の課題と捉え、「気候変動に関する取り組み(TCFD提言の枠組みに基づく開示)」をホームページで公表しております。
・電子材料分野につきましては、モバイル、半導体及び車載分野を中心に新製品開発と事業拡大を目指します。また、グループ会社との連携を深め、中国、アジア市場での事業基盤の強化を図ります。
・産業用構造材料及び電気絶縁材料分野につきましては、交通インフラ、水処理及び新エネルギー分野を主力事業分野として個性あふれる製品を開発し、更なる成長を目指します。
・ディスプレイ材料分野につきましては、医療用高画質ディスプレイ分野を中心に、当社独自の技術を活かした新製品の拡販を図ります。
・キャッシュ・フローの有効活用と非事業資産の事業資産化を推進するとともに、成長に必要となる投下資本をコントロールし、資本効率性を意識したレバレッジ活用を含めた資本構成(中期的に自己資本比率50%程度)を担保した上で、積極的な株主還元を行い、加重平均資本コストを逓減させ、資本効率の良い企業体質への変換を図ってまいります。
当社グループは、上記内容を織り込んだ中期経営計画を策定し、ROIC6%以上を達成することを目標としております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、上述の経営戦略をより早期かつ確実に達成するため、対処すべき課題として次のことを推進いたします。
・独自技術による差異化製品を開発し、既存分野での収益力向上を図るとともに、新たな需要を創出し成長の見込める分野への参入を図ります。
・当社独自の管理技術、固有技術を磨き、品質・コストの競争力強化を図ります。
・製造・販売・技術の連携強化を推進し、効率的な事業運営を図ります。
・グループ会社との協働を強化し、新用途・分野の開拓を図ります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ROICを目標とする経営指標としております。2024年5月に中期経営計画を見直しており、2027年3月期でのROIC6%以上を目標としております。
なお、2024年3月期の実績は1.9%でありました。
(5)気候変動への取組み
近年の異常気象の増加や甚大化など、気候変動に起因する影響は地球規模で深刻化しております。当社グループは、化学品などを原料として製品を製造するメーカーとして、直面する気候変動の問題を重要な経営課題の一つと認識しております。
当社グループはこれまでも、環境保全活動について積極的に取り組んでおり、当社環境方針に則り電力・ガス使用量、有害化学物質、産業廃棄物の削減等を進め、環境保全管理委員会で審議し、継続的な改善を図ってきました。今後につきましても、上記「(2)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおり、事業を通じて脱炭素社会への貢献などを目指し、2021年6月より「カーボンニュートラルへの取り組み」を当社ホームページで公表しております。また、環境問題への取組みの一環として、当社グループではTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言が脱炭素社会、持続可能な社会の発展に資するものであると考え、この提言に沿って主要事業を対象とした分析・検討を進め、その結果を当社ホームページで情報開示しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、経営方針に「社会・環境課題の解決に貢献し、持続的な成長を実現する」と掲げ、社会・環境問題に対して積極的に取り組むことが、企業の存在と活動に必須の条件であることを認識し、①脱炭素社会への貢献、②多様な人材の育成・働きがいの向上、③循環型経済の推進、④ガバナンスの充実を重要課題(マテリアリティ)と捉え、2030年までにカーボンニュートラル(Scope1、2について)を達成することをはじめとする各種KGIを設定し、それらを中期経営計画に掲げ、気候変動問題の解決・人的資本経営の推進・排出物の削減などについて取り組んでいます。この取組みの一環として、2022年6月に「気候変動関連情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言へ賛同を表明しました。
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マテリアリティ |
KGI(目指す姿) |
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脱炭素社会への貢献 |
2030年までにカーボンニュートラルを達成、省エネルギー・省資源の推進、再生可能エネルギーへの代替、環境負荷低減材料の提供 |
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多様な人材の育成・働きがいの向上 |
次世代人材の育成、全ての社員が活き活きと働ける会社 |
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循環型経済の推進 |
排出物の削減、持続可能なサプライチェーンの構築 |
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ガバナンスの充実 |
高い倫理観のある組織、風通しの良い組織体制 |
(1)ガバナンス
気候変動問題に対する取組みを主導するため、2021年12月にESG委員会を設置し、この委員長には取締役専務執行役員が、構成員には各執行役員、各部門の部長が就き、組織的活動を展開しています。ESG委員会では、サステナビリティを意識した経営の啓発・推進のほか、気候変動への対応、脱炭素社会の実現、人権の尊重、労働環境への配慮、取引先との公正・適正な取引などのテーマに関し、年4回審議する体制をとっています。重要な審議事項並びに活動状況などについては、執行役員会、経営会議及び取締役会に定期的に報告され、取締役会において最終的な判断が下されます。環境保全活動に関しては、ESG委員会と連携する環境保全管理委員会が、カーボンニュートラル・プロジェクトや排出分科会の進捗状況を監督し、継続的な改善を図っています。
また、取締役会においては、定期的な報告について、公表された中期経営計画の進捗状況の確認と課題、対策の実施などを議論し、その結果は、経営戦略やリスク管理・評価に反映させる体制としています。取締役会は、気候変動関連の議案(目標設定や取組みの進捗状況など)について監督の役割を担っています。また2024年5月には「有沢製作所グループ人権方針」を制定し、当社ホームページで開示いたしました。
(2)戦略
当社は、中期経営計画において重要課題(マテリアリティ)を掲げました。これを達成するため、ESG委員会並びに環境保全管理委員会及び下部組織として各分科会、プロジェクトチームを整備し、各部門とともに活動目標を年度ごとに策定し、取組みを推進しています。
また、気候関連リスク及び機会に関する戦略は、シナリオ分析に際して、ESG委員会で気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しと、それらが及ぼす具体的な財務的影響額の評価を行っています。
今回実施したシナリオ分析は、当社における製品及びサービスの購入、開発、製造、販売までのサプライチェーン全体を対象とし、4℃シナリオ、1.5℃シナリオの2つのシナリオを用いて2030年時点における影響を考察、検討しました。
①気候変動によるリスクと機会
地球温暖化による気候変動は、社会に及ぼす影響が極めて大きいため、気温上昇を抑制することを目指す動きに貢献していくことが重要であると考えています。
気候変動は、台風・豪雨などの水害による当社やサプライチェーンへの被害、規制強化に伴う炭素税導入・クレジット購入・設備更新・再生エネルギー購入などの費用の増加のリスクが考えられます。
一方、顧客の環境意識の向上に対応した製品の提供は、当社のビジネスの機会であると捉えています。具体的には、FCV・EV、太陽光発電、海水淡水化処理、航空機(軽量化)、脱炭素新エネルギー開発事業へ材料を供給することで気候変動に対応するとともに、自動運転支援、医療機器などへの材料供給により生活環境の改善にも貢献しています。
(リスク)
(機会)
②人的資本経営に関する取組みについて
人材育成については、多様性の実現と機会均等の確保を基本方針としています。当社では採用、昇格を決める際、年齢、性別、経歴にとわれることなく能力主義を貫き、多面的な評価とそのフィードバックを通じて本人の成長を促す仕組みを取り入れています。また、eラーニングによる職制教育、自己啓発や、幅広い経験のための機会の提供に努め、社員一人ひとりの働きがいを高めると同時に、組織力の向上を目指しています。具体的には、コミュニケーションを通じて自ら考え実践する人材の育成、能力主義の徹底、将来のリーダー候補者の育成、並びに女性の活躍推進や男性の育児休暇取得者数の増加などに取り組んでいます。また、多様性の確保及び女性・外国人の活躍促進に向けて、能力や成果に応じた評価・処遇を行っています。その結果、当社グループ管理職の69.4%(有沢製作所単体では40.6%)は中途入社社員が占めています。また、仕事と生活の両立支援も進めており、男性と女性の平均勤続年数に差はありません。
(3)リスク管理
当社は、気候変動に関するリスクを重要な経営課題と認識しています。そのため、想定されるリスクについては、ESG委員会において識別・評価し、執行役員会、経営会議、更には取締役会へ報告され、重要な課題を確定しています。それらに適切な対策を講じ、リスク管理体制の向上を図っています。
なお、気候変動リスクの評価は、事業における気候変動要因を特定した上で、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオに基づく将来の規制、社会、技術、気候条件などの変化を前提としています。
また当社では、環境問題に伴う外部環境の変化への対応、さらに持続可能な開発の国際目標であるSDGsへの貢献についてESG委員会で検討してきました。その結果、中期経営計画で取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として、「脱炭素社会への貢献」、「多様な人材の育成と働きがいの向上」、「循環型経済の推進」、「ガバナンスの充実」の4項目を特定し、これらの課題の解決に向け、全社一丸となって取り組んでいます。
マテリアリティの特定に際しては、ESG委員会において、持続可能な社会に対する重要度と当社事業に対する重要度の観点から4項目に絞り込みました。
(4)指標及び目標
①気候変動
当社は、エネルギー使用効率の改善に向けて実施してきた様々な取組みを拡大展開するとともに、再生可能エネルギーの利用とカーボンニュートラルガスの購入、並びに低炭素製品の開発を推進することにより、2030年度にCO2の直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2)についてのカーボンニュートラルの達成を目指します。
(カーボンニュートラル化の計画)
②人的資本
女性管理職比率は、2022年3月末時点で12.5%でしたが、2025年3月末には20%まで増加することを目指し、候補者の採用・養成を積極的に進めていきます。なお、2021年6月に初の女性取締役が就任し、2023年6月にはさらに1名が加わり、合計2名となっています。また、2022年6月には内部昇格として、初の女性執行役員を登用し、2024年6月にはさらに1名が加わり、合計2名としました。今後も、社員の個性を尊重した能力開発や能力発揮の機会を提供するなど、様々な施策に取り組み、多様な人材の採用と登用を推進していきます。
(注)1.上記指標は、海外子会社を含めた指標であり、海外子会社の指標の定義や計算方法は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)と同様に扱っております。
2.指標の算出にあたっては、海外子会社の金額を期中平均レートにより邦貨に換算し算出しております。
3.育児休業には法令で定められた育児休業のほか、海外子会社における出産育児を目的とした休業制度等を含めております。またProtec Arisawa America, Inc.については、育児休業制度が整備されていないため、男性労働者の育児休業取得率の計算には含めておりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 製品需要の変動について
当社グループが製造・販売する製品の主なユーザーは、情報機器メーカー、電子部品メーカー、産業用電子機器メーカー等であり、これら電子機器の需要変動は当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(2) 特定の製品への依存について
当社グループの売上高は、電子材料分野への依存度が高くなっております。当分野の売上が減少した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(3) 新規事業の展開について
当社グループは、種々の新規事業の立上げを図っておりますが、その進捗状況によっては、経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(4) 原材料の調達について
当社グループが購入する原材料において、原油や銅価の高騰により購入価格が著しく高騰した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(5) 災害による影響について
当社グループの生産拠点は、その多くが新潟県上越市に集中しており、地震その他の災害が発生した場合には、生産活動の中断等により当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(6) 環境に関する規制について
当社グループの事業は、様々な環境保全やその他の法的規制のもとにあります。これらの環境保全やその他の規制の遵守に伴い甚大な債務や義務が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(7) 情報セキュリティに関するリスクについて
当社グループは、事業遂行上の技術情報や個人情報等の機密情報を保有するとともに、生産・販売・会計等の事業活動の多くは各種情報システムを利用しています。災害やサイバー攻撃、不正アクセス等により、これらの情報の漏洩や情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止した場合、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 新型感染症に関するリスクについて
新型コロナウイルス感染症の再拡大、または新たな感染症が発生した場合には、サプライチェーンや生産活動の混乱、国内経済や市場への悪影響などにより、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
当社グループはステークホルダーの皆さまの安全・健康を最優先とし、状況に応じた感染防止策を徹底するとともに、テレビ会議システムの有効活用、テレワーク(在宅勤務)の実施、サテライトオフィスの利用等を引き続き実施しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の制限が解除されたことにより、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、日米間の金利差拡大による円安の進行、継続的な物価上昇、ウクライナや中東情勢の地政学的なリスク、停滞する中国経済など、依然として先行きは不透明な状態が続いております。
このような状況のもと、当社グループ(当社及び連結子会社)の当連結会計年度における業績は、産業用構造材料の売上高が増加したものの、ディスプレイ材料、及び主力事業分野である電子材料の売上高が減少したことから、売上高は421億14百万円(前年同期比1.4%減)となりました。利益面につきましては、営業利益は14億83百万円(前年同期比33.4%減)、経常利益は14億88百万円(前年同期比45.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は16億39百万円(前年同期比42.6%減)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
電子材料
電子材料では、フレキシブルプリント配線板用材料(受注高166億46百万円4.0%減、生産高8.2%減、前連結会計年度比較、提出会社単体ベース)、及びプリント配線板用ガラスクロスの売上高が減少したこと等により、売上高は251億5百万円(前年同期比5.4%減)、セグメント利益は売上高の減少に加え、需要減少に伴い、生産高が減少したことが影響し、2億60百万円(前年同期比78.7%減)となりました。
産業用構造材料
産業用構造材料では、水処理用FRP製圧力容器、及び航空機用ハニカムパネルの売上高が増加したこと等により、売上高は106億1百万円(前年同期比16.1%増)、セグメント利益は14億76百万円(前年同期比12.2%増)となりました。
電気絶縁材料
電気絶縁材料では、インフラ関連向けの売上高が減少したこと等により、売上高は25億32百万円(前年同期比1.9%減)、セグメント利益は3億14百万円(前年同期比70.4%増)となりました。
ディスプレイ材料
ディスプレイ材料では、3D関連材料、及び偏光利用部材の売上高が減少したこと等により、売上高は35億35百万円(前年同期比15.1%減)、セグメント利益は9億40百万円(前年同期比8.2%減)となりました。
その他(その他の事業分野)
その他では、売上高は3億38百万円(前年同期比11.1%増)、セグメント利益は1億99百万円(前年同期比34.4%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ8億35百万円減少し、177億円(前年同期比4.5%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は32億19百万円(前年同期比7.2%減)となりました。主な資金増加の要因は、税金等調整前当期純利益20億72百万円、減価償却費22億6百万円等によるものであり、主な資金減少の要因は、売上債権の増加額28億75百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は10億61百万円(前年同期は5億8百万円の収入)となりました。主な資金増加の要因は、定期預金の払戻による収入17億57百万円等であり、主な資金減少の要因は、有形固定資産の取得による支出35億44百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は34億15百万円(前年同期比32.8%増)となりました。これは主に、配当金の支払36億41百万円等であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社 以下同様)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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電子材料(百万円) |
25,105 |
△5.4 |
|
産業用構造材料(百万円) |
10,601 |
16.1 |
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電気絶縁材料(百万円) |
2,532 |
△1.9 |
|
ディスプレイ材料(百万円) |
3,535 |
△15.1 |
|
報告セグメント計(百万円) |
41,775 |
△1.5 |
|
その他(百万円) |
338 |
11.1 |
|
合計(百万円) |
42,114 |
△1.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
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味の素ファインテクノ㈱ |
4,327 |
10.1 |
- |
- |
※当連結会計年度は、販売実績の割合が100分の10以上となる相手先がないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、主力の電子材料関連を中心に生産能力の向上及び拡大に向けた設備投資を行い、既存事業の継続的成長に取り組んでまいりました。同時に、各セグメントで市場の変化を先取りした新製品の開発を行い、市場拡大と当社グループの成長を促す挑戦を続けております。当社グループの主力製品である電子材料は、多機能携帯端末向けに子会社の新揚科技股份有限公司を含め受注拡大に努めましたが、在庫調整の影響を受け前年を下回る結果となりました。産業用構造材料、電気絶縁材料及びディスプレイ材料につきましては、更なる成長を期待しており、継続して新規開発と収益力強化を行う考えであります。
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の分析は、次のとおりであります。
a.財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は688億16百万円(前連結会計年度末は676億59百万円)となり、11億56百万円(1.7%)の増加となりました。
主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産が33億33百万円、有形固定資産が15億15百万円それぞれ増加し、現金及び預金が23億82百万円、商品及び製品が9億37百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債合計は225億70百万円(前連結会計年度末は205億52百万円)となり、20億18百万円(9.8%)の増加となりました。
主な要因は、支払手形及び買掛金が18億円、1年内返済予定の長期借入金が12億77百万円それぞれ増加し、長期借入金が7億52百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産合計は462億46百万円(前連結会計年度末は471億7百万円)となり、8億61百万円(1.8%)の減少となりました。
主な要因は、為替換算調整勘定が9億66百万円増加し、利益剰余金が20億40百万円減少したこと等によるものであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、421億14百万円(前連結会計年度は427億22百万円)と6億7百万円1.4%の減収となりました。また、売上原価につきましては、徹底したコスト削減に努めたことにより347億59百万円(前連結会計年度は349億13百万円)と1億53百万円の減少となりましたが、売上原価率は82.5%と0.8ポイントの悪化となりました。
これにより、売上総利益は73億54百万円(前連結会計年度は78億9百万円)となり、4億54百万円の減益となりました。売上総利益率は17.5%と0.8ポイント減少しております。
(営業損益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、売上原価と同様に徹底したコスト削減に努めましたが、58億71百万円(前連結会計年度は55億81百万円)と2億90百万円の増加となり、販売費及び一般管理費率は13.9%と0.8ポイントの悪化となりました。
これにより、営業利益は14億83百万円(前連結会計年度は22億28百万円)となり、7億44百万円の減少となりました。営業利益率は3.5%と1.7ポイント減少しております。
(経常損益)
当連結会計年度における営業外損益は4百万円の利益(前連結会計年度は4億89百万円の利益)と4億84百万円の減少となりました。主な減少要因は、為替差益が1億66百万円減少したこと等によるものです。
これにより、経常利益は14億88百万円(前連結会計年度は27億17百万円)となり、12億28百万円の減少となりました。経常利益率は3.5%と2.9ポイント減少しております。
(税金等調整前当期純損益)
当連結会計年度における特別損益は5億83百万円の利益(前連結会計年度は11億85百万円の利益)と6億1百万円の減少となりました。主な減少要因は、投資有価証券売却損益が6億26百万円減少したこと等によるものです。
これにより、税金等調整前当期純利益は20億72百万円(前連結会計年度は39億2百万円)となり、18億30百万円の減少となりました。税金等調整前当期純利益率は4.9%と4.2ポイント減少しております。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度における法人税等は4億32百万円(前連結会計年度は10億43百万円)となり、6億10百万円の減少となりました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は16億39百万円(前連結会計年度は28億56百万円)となり、12億16百万円の減少となりました。親会社株主に帰属する当期純利益率は3.9%と2.8ポイント減少しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(キャッシュ・フローの指標)
|
|
前連結会計年度 (2023年3月期) |
当連結会計年度 (2024年3月期) |
|
自己資本比率(%) |
69.5 |
67.2 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
61.3 |
54.8 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
3.0 |
3.4 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
23.2 |
15.6 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表により計算しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
※キャッシュ・フロー及び利払いは連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業キャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。
a.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金を基本としておりますが、不足時の一時的な運転資金を効率的に調達するため、主要取引銀行と当座貸越契約を締結しております。設備投資等の資本形成に関わる資金については、調達コストやリスク分散などを勘案しながら自己資金及び金融機関からの長期借入による調達を基本としております。また、資金運用の効率化と金融リスクの低減及び支払利息の削減を図るため、当社グループにおいて、グループファイナンスを進めております。
b.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計上の見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額を計上しております。顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、税効果会計の適用にあたり繰延税金資産については、その回収可能性を合理的に見積り、評価性引当額を控除して計上しております。繰延税金資産の回収可能性は有税項目の将来の無税処理の可能性や将来の収益力に基づく将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合には、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により利益が変動する可能性があります。
c.有価証券及び投資有価証券の減損
当社グループは、有価証券及び投資有価証券を保有しており、評価方法は市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しております。保有する有価証券につき、市場価格のあるものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のないものは投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。
当社グループでは有価証券及び投資有価証券について必要な減損処理をこれまでに行ってきておりますが、この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
d.固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、独立してキャッシュ・フローを生み出す事業単位を基準にして固定資産をグルーピングしております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、その差額を減損損失として認識しております。将来、新たに資産グループの回収可能額が低下した場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
この適用により、当連結会計年度においては提出会社の製造設備について減損損失15,524千円を特別損失として計上しました。
e.棚卸資産の評価
当社グループは、棚卸資産について正味売却価額が簿価を下回った場合に簿価の切下げを行っております。また、一定期間以上滞留が認められる棚卸資産については、販売の実現可能性が低下しつつあると仮定し、期間の経過に応じ規則的に簿価を切り下げる方法で早期に償却を行っております。さらに、販売が困難と認められる場合などには、個別に簿価の切下げも実施しております。
正味売却価額は、販売実績等を基礎として見積っているため、将来の市場環境の変化や販売見込みの相違によっては、棚卸資産の評価損に重要な影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの主な研究開発は、提出会社と連結子会社の新揚科技股份有限公司、㈱サトーセン、Protec Arisawa Europe, S.A.、Protec Arisawa America, Inc.、カラーリンク・ジャパン㈱が行い、他の連結子会社へ技術展開を図っております。
研究開発は、技術開発企業として、多様化、高度化するユーザーニーズに応えるべく、フレキシブルな組織体制を基本とし、電子材料分野、産業用構造材料分野、電気絶縁材料分野及びディスプレイ材料分野を中心に、新製品の立上げ、次世代製品の育成及び将来を見据えた技術の振興と基盤技術の拡大を目指し新技術、新製品の研究開発に邁進しております。
電子材料としては、FPC(フレキシブルプリント配線板)用材料、プリント配線板用ガラスクロス、特殊プリント配線板用プリプレグ等が、産業用構造材料としては、車載用材料、水処理関連材料、航空機内装用材料が、電気絶縁材料としては、電気絶縁用プリプレグ、各種成形品等が、ディスプレイ材料としては、3Dフィルター、光学成形品等があげられます。
当連結会計年度末の研究開発活動に係る人員は172名であり、当連結会計年度の研究開発費は
当連結会計年度における各セグメント別の研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
(1)電子材料分野
・モバイル用FPC材料
コンパクトに折りたたむことができるスマートフォン、いわゆるフォルダブルスマホの人気が徐々に高まってきております。この折り曲げされる部分の回路基板にはFPCが使用され、繰り返し数十万回の折り曲げをしても断線しない屈曲耐性が求められます。この要求に対し、当社では独自の配合技術を駆使し屈曲耐性に優れる接着剤を開発、さらに最適なフィルムや銅箔を組み合わせることにより、屈曲耐性に優れたFPC用の材料を完成させました。顧客での信頼性試験に合格し、最新モデルのフォルダブルスマホに採用され、今後の拡販も期待されます。また、更なる屈曲耐性の向上に向け、鋭意研究を進めております。
・車載用FPC材料
EV化が進む自動車においても電子部品の軽量化、小型化を目的としたFPC材料の採用検討が進んでおります。車載用FPCには高温に長時間晒されても特性が低下することのない耐熱性に優れた材料が要求されます。この要求に対し、当社では重合技術を駆使して耐熱性の高いポリマー樹脂を開発し、業界トップクラスの耐熱温度200℃耐性を実現しました。現在、顧客での採用評価が進められております。
・実験用小型塗工機の稼働開始
2023年8月より実験用小型塗工機が稼働開始しました。自社品開発での有効活用が進み、開発期間の短縮が図られています。さらにオープンイノベーションを推進する手段として本装置を有効活用すべく、多くの顧客にアピールしてまいりました。その成果もあり、すでに複数の顧客との共同開発プロジェクトが開始されました。
電子材料に係る研究開発費は
(2)産業用構造材料・電気絶縁材料分野
・水処理用FRP製圧力容器
当社のFRP製圧力容器は、耐食性、耐圧性、軽量という利点を有し、海水を淡水化するための水処理用途に幅広く利用されています。さらに、環境保護のために一般排水や工場排水を最小限に抑えるZLD:Zero Liquid Dischargeシステム向けにも開発を進めております。当社と連結子会社のProtec Arisawa Europe, S.A.及びProtec Arisawa America, Inc.は、共同で独自のワインディング技術を用いて業界最高クラスの1,800psi高圧容器を完成させました。米国機械学会(通称ASME)の認定も取得し、ZLD用にサンプルワークを開始しています。また、デジタル社会の急速な発展に伴い需要の高まる半導体製造分野において、必要不可欠な超純水を作るシステムへの採用に向けた取組みも進めています。
・水電解水素発生装置用部材
近年、次世代エネルギーとして水素への注目度が高まる中、水を電気分解して水素を発生させる水電解水素発生装置へ適用できるサブガスケットと呼ばれる部材が求められています。サブガスケットは、水の電気分解で発生する水素や酸素ガスの漏れを防ぐために、触媒付電解質膜(CCM:Catalyst Coated Membrane)に精密に貼り合わせる必要があります。そこで当社は、独自の配合技術と精密貼合技術を駆使して、最適なサブガスケット材料を開発しました。長期間、水中に晒されても剥がれず、ガス漏れしない品質が認められ、顧客にて大型プラントに向けた実証試験装置に採用されております。今後も当社コア技術を活かしたクリーンエネルギーに向けた部材開発を進めてまいります。
産業用構造材料及び電気絶縁材料に係る研究開発費は
(3)ディスプレイ材料分野
・医療用3Dディスプレイ
当社の3Dフィルター「Xpol®」を搭載する3Dディスプレイは、顧客の使用環境に応じた最適な設計と高精度な加工技術により、4K解像度の高画質を実現し、医療分野への採用が進んでおります。内視鏡手術用では主流の32インチに加え、大型化の要望に応えた40インチ超級を開発し、量産を開始しました。さらに、高速通信網の普及に伴う手術方式の多様化を見据えて、次世代医療として期待されるロボット手術用3Dディスプレイの設計に着手しています。
また、医療分野以外への用途展開を目指し、工事現場や空撮などの遠隔操作用モニターの3D化も検討しています。
ディスプレイ材料に係る研究開発費は