文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、放送という公共性の高い事業を中核としており、「テレビ、ラジオの放送を通じてすぐれた報道、情報、娯楽番組を提供し、地域社会や文化に貢献する」ことを経営の基本理念としております。
テクノロジーの進展、メディア・デバイスの多様化、広告市場の変化、少子高齢化と人口の減少、新型コロナウイルス感染症の影響などで、当社グループを取り巻く経営環境は大きく変わってきております。これまで、主力である放送事業は、高成長・高収益をもたらしてきましたが、視聴者や聴取者はいまや、時間、空間、デバイスを問わず、コンテンツを取捨選択するようになりました。放送は絶対的に優位なメディアではなくなっていることは事実です。しかし、その一方で、大規模な災害や感染症拡大などの緊急時において、信頼ある情報を発信するメディアの存在価値は改めて見直され、とりわけ地域に根差したローカル放送局が果たす役割の重要性は、ますます高まってきております。こうした環境変化を踏まえ、当社グループはこれからも、地域を代表するメディア、そして報道機関として、地域にとって有益な情報、魅力あるコンテンツ、そして生活者のライフスタイルにふさわしいサービスを提供し続けてまいります。
当社グループの中核をなす放送事業は、広告市場から大きな影響を受けるという特殊性を持っております。ウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症拡大による不安定な経済情勢は、広告市況の悪化をもたらし、当社グループの業績にも影響を及ぼしました。これから先、いかなる状況下にあっても、地域住民の生命、財産を守るという放送事業者としての使命を全うするためには、様々な環境変化に柔軟に対応し、安定した経営基盤を確保し続けていくことが重要であると考えております。
中部日本放送は2025年、日本の民放で最初となる「創立75周年」を迎えます。この間、地域の人々と喜びも悲しみも一緒に時間を共有してきました。創世期には、未曽有の災害だった伊勢湾台風をテレビの生中継を交えて伝え、ドラゴンズの優勝時には歓喜を分かち合い、愛知万博ではパビリオンを出展して地域の活性化に努めてきました。私たちは、その喜怒哀楽に寄り添うことで地域の人々と繋がりを持ち続けてきました。テクノロジーの進歩で社会のあり方は変化しても人間の本質である喜怒哀楽に変わりはありません。
スマホの登場で社会は劇的にかつスピーディに変わりました。様々な業界がデジタル化・DXの渦に巻き込まれています。放送もその例外ではありません。スマホが「いつでも」「どこでも」「なんにでも」アクセスできる一方で、放送は決められた時間に決められたコンテンツを決められたデバイスでしか見たり聞いたりできないメディアです。しかし、スマホに代表されるインターネットメディアは「フィルターバブル」「エコーチェンバー」「アテンションエコノミー」などの問題や「フェイク」などにより情報そのものの信頼性の問題が指摘されています。デジタル社会を生き抜くにあたり、私たちも「アテンションエコノミー」における競争に臨む場面が増えてきていますが、アテンションを集めるだけでなく、コンテンツの「質」と「信頼」が問われています。
私たち放送が持つ最大の財産は長い歴史で培った「信頼」です。70年以上にわたって視聴者・リスナーの喜怒哀楽を見つめ共有してきたことから得た「信頼」です。放送法は「放送は表現の自由の確保と民主主義の発達に資すること」と規定していて、この責任を全うするために我々は免許制度で守られてきました。しかし、免許制度に守られてきた放送業界は局間競争ばかりに目を奪われ、独りよがりの送り手論理に陥っている可能性があり、この点を自省しなければ視聴者・リスナー離れを食い止められません。また、「信頼」を失わずに維持していくためには、「フェア」=公正でなければなりません。ルールを守るコンプライアンスだけが「フェア」ではありません。なぜならルールは時代とともに変わるからです。多様性や人権などに対応し、コンプライアンスの先にある「フェア」な姿勢で時代にあった新しい価値を生み出していかなければなりません。我々には公共の電波を預かっている責任があるのです。
「中期経営計画2024-2026」~フェアな姿勢でデジタル化社会に「信頼」を~
「中期経営計画2021-2023」期間中には、2021年にコンテンツ制作力強化のためケイマックスがグループ傘下入りし、2022年に技術とデザインの融合で新たな価値の創造をめざすCBC Dテックを設立し、「地域ナンバーワンのメディアコンテンツグループ」へと向かうグループ機能の再編を行いました。
そして、2024年度には、この最適化がさらに機能を発揮するよう新たに「中期経営計画2024-2026」を策定しました。本計画実行にあたり、大切にしたい3つのキーワードがあります。それは「地域」「コンテンツ」「人財」です。信頼を培い、最重要マーケットである「地域」から、グループ成長のため我々が生み出していくのが「コンテンツ」です。「コンテンツ」はエリアを超えグローバルにも展開できますし、放送や配信で発信されるものだけでなく、グループ各社が提供する商品・サービスもそのひとつと考えています。そして、最も大切なものは成長戦略の原動力であり財産でもある「人財」です。
中部日本放送は、2014年4月に認定放送持株会社体制を敷いてからちょうど10年が経ちました。グループの主力である放送ビジネスは配信プラットフォームの成長により、そのビジネスモデル自体が厳しい環境になっています。グループ成長のため、2030年にあるべき姿を定め、「収益構造改革」と「デジタル推進」を2つの改革の柱とし、戦略の転換により、収益ポートフォリオの最適化を図ることにしました。
デジタル時代における競争力向上のため、各社の自立と協調を促しつつ、グループ全体のトータルマネジメントを行い、すべてのリソースを有効に活用して、地域で最も信頼されるメディアコンテンツグループとして地域社会の経済や文化の発展に寄与し続けられるようCBCグループを発展させていきます。
〈メディアコンテンツ関連〉
メディア環境は、スマホの普及や動画配信サービスの拡大などで競争が激しくなり、テレビのPUT(総個人視聴率)は減少傾向にあります。しかし、多様化によりメディアへの接触時間は増え、動画需要が高まりをみせており、放送各社も配信事業を拡大させています。同時に広告需要も、インターネット広告費がけん引役となり国内の広告需要は年々高まっていますが、放送メディアの広告費は高まる需要を取り込みきれず微減あるいは横ばいとなっています。この状況下、当社は、「中期経営計画2024-2026」に、従来の放送ビジネスの拡大と新たな収益の柱を築く戦略を盛り込み、エリアでのシェア向上やデジタル領域での事業拡大をめざしていきます。計画では、「従来の放送ビジネス」の再価値化(リブランディング)で視聴率の向上と広告価格の適正化をめざす一方、「新たな柱」として、アニメ、ドラマ、映画など「知的財産(IP)事業」や放送枠以外の商品を開発する「ビジネスプロデュース(BP)事業」を成長させ、新たな収益ポートフォリオの構築を進めます。
IP事業の取り組みとして、2024年4月に放送を開始する日曜夜のアニメ放送枠を『アガルアニメ』(日曜23:30~24:00)と称してブランディングし、CBCテレビ発の全国へ向けて放送します。様々な作品の放送や系列局であるTBS、MBSのアニメ枠と連携するなどし、アニメファンだけでなく多くの視聴者の方との接点を増やしていきます。
BP事業は、既存のCM枠収入とは異なるスポンサー由来の新規ビジネスの総称です。CBC資産のIP等を活用したクリエイティブ、デジタル、リアルなどを組み合わせ、複合的にスポンサー向け商品の開発を行っていきます。
現在放送中の番組では、2023年10月に放送開始した『デララバ』(水曜 19:00~20:00放送)が、東海地方のグルメや人気スポット、そして文化を紹介し、幅広い層の方に支持をいただいています。今後も、「東海3県の皆が知っているつもりのド定番」を深掘りするコンセプトに磨きをかけていきます。平日の夕方のワイド番組『チャント!」(月~金曜 15:49~19:00放送)は、メインMCが交代し、「ジモトがもっと好きになる!」をコンセプトに、ニュースや調査報道、そして生活情報を分かりやすく伝えて「信頼」を継承していくほか、視聴率が好調な『ゴゴスマ』(月~金曜 13:55~15:49放送)や『花咲かタイムズ』(土曜 9:25~11:45放送)も新たな企画の開発などにより番組の底上げを図ります。CBCラジオも、2024年4月、朝の情報番組をリニューアルし、『CBCラジオ#プラス!』(月曜~金曜 6:30~9:00放送)がスタートしました。CBCの中堅、若手アナウンサーらがパーソナリティを務め、より幅広い世代の方にお楽しみいただける番組をめざします。
多様化するメディア環境への対応としては、インターネット配信プラットフォームへオリジナルコンテンツを供給する他、Locipoなどで有料のプレミアムコンテンツの配信も行っていきます。さらに、グループ各社において、VR、ARへの展開やAIを活用したコンテンツ制作について研究・開発に取り組み、デジタル推進を加速していきます。
一方で、放送機能の先進化に向けては、テクノロジーの進展に合わせた新たな設備投資も必要です。また、報道機関を持つ当社グループは、いつ、いかなるときも、その役割を果たし続けていく使命があるため、財務基盤を常に強化し続ける必要があります。そして、人材面では、変化する社会に柔軟に対応できるよう、多種多様な人材の採用・育成を行うとともに、DX推進による効率化、競争力の維持・強化にも取り組んでいきます。
〈不動産関連〉
保有資産の「選択と集中」戦略に基づき、新たなポートフォリオの構築を行った不動産関連事業は、安定的な収益をもたらしました。引き続き、保有資産の収益率向上に努め、グループを支える収益基盤の強化に向け、さらなる高度利用の検討を進めていきます。
〈その他〉
その他の各社における事業に関しては、メディアグループの一員として放送事業を支える機能を強化するとともに、CBCのブランド力を活かしたさらなる連携、協業を推進し、グループ外売上の拡大を図ります。
メディアコンテンツグループとしての使命、SDGs達成への貢献
当社は、当地域でいち早く「SDGメディア・コンパクト」に加盟し、テレビやラジオなどを通じて啓蒙活動に注力してきました。CBCグループはSDGs宣言をし、地域に根差したメディアコンテンツグループとして、SDGs達成に貢献していきます。
~CBCグループSDGs宣言~
CBCグループは、国際社会の共通目標として掲げられたSDGsに賛同し、「地域で最も信頼されるメディアコンテンツグループ」を目指して、様々な価値の創造、正確で有益な情報発信を続けていきます。
「未来にワクワクを」をキーワードに、視聴者・リスナーをはじめ、地域の皆さまとともに様々な問題を考え、行動し、全ての人が笑顔で日々を暮らせる未来を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、「SDGs(持続可能な開発目標)」の考え方を根底に、「100年企業」に向けたサステナブル(持続可能)な価値の創造を目指すことを目的として、当社代表取締役を議長とする「CBC SDGs推進会議」を設置し、SDGsに関する基本理念を定めています。「CBC SDGs推進会議」の下に「CBC SDGs推進プロジェクト委員会」「CBC SDGs推進プロジェクトワーキンググループ」を組織し、グループのSDGs全般の方針や目標・計画などを立案、実行しています。
また当社グループは、「CBCグループ行動憲章」に、「環境への配慮」、「人権の尊重」、「公正な取引の維持」などを掲げ、グループの全職員がこれを行動指針としています。
こうした体制をもとに、当社取締役会が持続可能な社会の実現に係る重要事項を踏まえ、当社グループ全体のリスクや機会を管理し、ガバナンスの強化を進めています。また、中期経営計画の策定においては、外部環境の変化によるリスクや機会を識別・評価し、取締役会の承認を得ています。なお、環境への対応や人的資本に関する事項等につきましては、定期的に常勤取締役会に報告しており、重要リスクを把握・管理しています。
当社グループは、中期経営計画の策定において、2050年の当社創立100周年を見据え、外部環境の変化を認識し、2030年のあるべき姿に向けたグループ構造改革の立案と具体的目標の設定を行っています。その中で、当社グループの普遍的な経営方針として、「地域で最も信頼されるメディアコンテンツグループとして、地域社会の経済や文化の発展に寄与し続ける」ことを目指しています。
また、以下の「CBCグループ SDGs宣言」を掲げ、本方針に基づく取組みとして、SDGメディア・コンパクトに加盟し、SDGsに関する社会課題の解決に向けた情報発信を推進しています。
また、当社グループは、人権を尊重する責任をよりいっそう果たすべく、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「CBCグループ人権方針」を、2023年12月26日付にて下記の通り制定しました。
人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針としては、中核人材の登用等における多様性の確保について、性別・国籍・採用ルート等の属性に依ることなく、個人の能力・成果に基づく評価・登用を行っており、一人ひとりの個性や多様性を尊重しています。また、多様性の確保に向けた人材戦略として、ライフイベントと仕事の両立を支援する各制度や、人材育成方針に基づく教育研修体系を整備しており、多様な人材の活躍を推進しています。また、中核会社である㈱CBCテレビにおいて、女性活躍推進法ならびに次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画として、それぞれ以下の行動計画を策定しております。なお、㈱CBCテレビは、当期において、一定の基準を満たした企業が「子育てサポート企業」として厚生労働大臣から認定を受ける制度「くるみん認定」を取得しました。
上記「(2) 戦略」に記載しておりますが、当社グループでは中核会社である㈱CBCテレビにおいて、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関わる指標として、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(注) 上記指標については、㈱CBCテレビにおいては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載はしておりません。
事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 景況等の影響について
当社グループの売上の多くは、広告収入に依存しています。特に、大きなウエイトを占めているテレビスポット収入は、国内景気の全体の動きに加え、広告主である各企業の業績や広告出稿に対する動向などとの連動性が強くなっています。このため、景況や広告主の動向によって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、放送事業の広告収入を柱としながらも、不動産関連セグメント他の事業により収益基盤を強化しており、リスクの最小化に努めております。
(2) 視聴率、聴取率による影響
視聴率および聴取率は、スポンサーにとって、CMが、視聴者および聴取者に、いかに到達しているかを示す指標となっています。このため、視聴率や聴取率の変動は、メディアコンテンツ関連部門の売上高に影響を与えることとなります。
テレビにおける視聴率のうち、ゴールデンタイム、プライムタイムと呼ばれる時間帯の多くは、キー局である㈱TBSテレビが制作、編成していますが、こうした番組の視聴率動向によっても、売上高が大きく変動する可能性があります。
当社グループの㈱CBCテレビでは、キー局制作の番組を番組宣伝などにより多くの視聴者に見ていただけるよう努める一方、自社による編成時間帯では、自社制作番組の強化などにより、高い視聴率を獲得できるよう取り組んでおります。
(3) 他メディアとの競合について
テレビメディアは受像機が広く普及しており、広告メディアとしての優位性を保っていますが、技術の飛躍的な進歩によるメディア、情報デバイスの多様化は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、報道、制作、編成、営業の各部署が連携して、番組を主軸としたコミュニケーション力を最大化する「総合力」を生かして、70年余りの間に培ってきた制作力に基づくコンテンツを生み出し、最大のリーチメディアである地上波放送や通信を活用した多様なメディア戦略によって、その価値を最大化し、グループの業容拡大と収益性の最大化を目指してまいります。
(4) 大規模災害の発生、気候変動、感染症拡大などへの対応について
当社の本社がある名古屋市をはじめ、放送サービスエリア内の広い範囲が、東海地震に係る地震防災対策強化地域および東南海・南海地震防災対策推進地域に指定されています。当社グループでは、本社建物や電波を送り出す瀬戸のデジタルタワーを始めとした放送関連施設について、最大限の地震対策を施しております。
また、当社グループのメディアコンテンツ関連部門は報道機関であることから、大地震をはじめとする大規模な災害や新型コロナウイルスに代表される感染症拡大など、緊急時や非常事態においても、放送を続けるばかりでなく、平時以上の情報を提供し続けるという使命を負っております。
さらに、地球規模で深刻さを増す気候変動は、日本でも異常気象が大規模な災害をもたらしており、災害による被害に加え、気候変動に対処する規制などが当社をはじめ様々な企業の活動に影響を及ぼす恐れがあります。
当社グループでは、財務基盤を常に強化し続けることで、広告収入が一定期間大幅に減少したり、全く無くなったりした場合でも放送事業を継続できるよう備えております。また、こうした有事の際の放送事業継続にあたっては、BCPに則り、対応マニュアル発動、テレワーク等勤務体制の変更、番組収録体制の工夫等、事業リスクの最小化に向けた施策を推進してまいります。
(5) 有価証券等の保有について
当社グループが保有する有価証券は、政策保有目的の株式など当社の企業価値向上を目的として中長期的に保有しているものですが、これらについては大幅な株式市況の下落や投資先の実質価額の著しい下落があった場合には、多額の評価損が計上され、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 法的規制について
当社は、放送法が定める認定放送持株会社として放送法ならびに関係の法令に規制されております。また、当社グループの主たる事業である放送事業は、電波法や放送法等の法令に規制されております。当社は1951年8月に放送法に基づく放送免許を取得して以来、同法による免許の有効期間である5年ごとに更新を続け、その後、2013年4月にラジオ放送免許を㈱CBCラジオに、2014年4月にテレビ放送免許を㈱CBCテレビに、それぞれ承継し、当社は2014年4月に認定放送持株会社化して現在に至っております。
いずれの会社も、将来において、電波法、放送法等の法令による規制に重大な変更があった場合や、それらの法令に抵触する決定を受けた場合には、当社グループの事業活動や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、内部管理体制の強化やコンプライアンス体制の整備に努めてまいります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会経済活動の緩やかな回復が進んだ一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や物価上昇、また不安定な世界情勢などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。
また、当社グループに影響を与える広告市況につきましては、インターネット広告の伸長による後押しにより堅調に推移したものの、地上波テレビ広告については停滞気味に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、326億25百万円(前期比0.3%減)となりました。利益面では、営業利益は13億81百万円(前期比12.0%増)、経常利益は20億62百万円(前期比16.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億86百万円(前期比11.4%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(注)売上高については、セグメント間の取引を相殺消去しております。
〈メディアコンテンツ関連〉
当セグメントは、当社、㈱CBCテレビ、㈱CBCラジオ、㈱CBCクリエイション、㈱CBCコミュニケーションズ、㈱ケイマックスならびに㈱CBC Dテックで構成されます。
当期を最終年度とする「中期経営計画2021-2023」では、当社グループの主力であるメディアコンテンツ関連事業について「放送関連事業売上の最大化」と「映像コンテンツ事業の拡張」を2本柱に据えました。
このうち「放送関連事業売上の最大化」に関して、CBCテレビでは、引き続き平日午後の生情報番組強化に注力しました。放送開始から11年を迎えた情報生ワイド番組『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』(月~金曜 13:55~15:49放送)は、全国24局39都道府県で放送されており、当期は、名古屋の個人視聴率ではじめて同時間帯1位を獲得しました。他地区でも視聴率の上昇傾向が見られ、収益の向上に寄与しています。
また平日夕方の報道情報番組『チャント!』(月~金曜 15:49~19:00放送)は、東海3県の暮らしに役立つ情報から硬軟にわたるニュースの深掘りまで、“地元”にこだわった放送を展開しています。
週末の人気番組として定着している情報生ワイド番組『なるほどプレゼンター!花咲かタイムズ』(土曜 9:25~11:30放送)は、世帯および個人視聴率で放送開始から16年連続同時間帯1位となるなど、その地位を確固たるものにしています。
秋改編で11年ぶりにゴールデンタイムのレギュラー番組としてスタートした『太田×石井のデララバ』(水曜 19:00~20:00放送)は、爆笑問題の太田光と『ゴゴスマ』の石井亮次アナウンサーが東海地方の地元ネタを徹底的に深掘りし、番組開始から5か月で世帯視聴率において同時間帯1位を獲得しました。
なお当期の年間視聴率は、個人全体で全日帯(6:00~24:00)が2.6%、ゴールデンタイム(19:00~22:00)が4.2%、プライムタイム(19:00~23:00)が4.0%となり、世帯では全日帯が4.8%、ゴールデンタイムが7.2%、プライムタイムが7.1%となりました。
CBCラジオでは、栄の久屋大通公園を会場に2日間にわたって開催した『CBCラジオ夏まつり』(7月)や、CBCホールなどで開催した『CBCラジオ春の終活文化祭~シニアにYELL!~』(3月)をはじめイベントが盛況を博し、グッズ販売も好調で収益の向上に貢献しました。
番組面では、リスナー層の拡大を目指すべく若年層向け施策を実施しました。CBCラジオのパーソナリティの座をかけ、東海3県の高校生が戦う『トーク甲子園』を企画し、優勝者による新番組『TEEN~高校生イブキの一人喋り~』(日曜 12:50~13:00放送)を開始しました。
イベント部門では、『第63回中日クラウンズ』(4月)に4日間で2万人を超えるギャラリーが入場し、また名古屋を代表するクラシックの祭典『第46回名古屋国際音楽祭』(4~7月)も前年を上回る売上となりました。企画展でも『アニメーション 呪術廻戦展「劇場版 呪術廻戦0」編』(7~8月)に若者や家族連れらを中心に2万人以上が来場し、成功を収めました。
「中期経営計画2021-2023」におけるもう1本の柱である「映像コンテンツ事業の拡張」については、当社グループが保有するコンテンツ制作力やノウハウを軸として事業領域の拡大を目指しました。
映像コンテンツ制作会社ケイマックスは、CBCテレビ発の全国ネット番組『ドーナツトーク』(日曜 23:30~24:00放送 3月終了)や、TBSテレビの『A-Studio+』(金曜 23:00~23:30放送)のほか、配信プラットフォームのコンテンツを制作し、収益を上げました。また他系列の放送局から番組制作を新規で受注するなど、グループ外部からの放送収入を増やしました。さらに、乃木坂46など坂道シリーズのコンテンツ制作も受注し、収益の向上に寄与しました。
日本民間放送連盟賞で優秀を受賞したテレビドラマ『マクラコトバ』は、CBCのコンテンツ制作力の高さを示したうえ、系列局へも販売されたほか、複数のプラットフォームでも配信されるなど、収益を上げています。また、『歩道・車道バラエティ 道との遭遇』(火曜 23:56~24:44放送)や『地名しりとり 旅人ながつの挑戦』(隔週土曜 24:28~24:58放送)では、イベントや配信、グッズ販売などを行い、新たな収益化を図りました。
出資映画においても『劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~」』が観客数340万人を超え、興行収入45億円となる大ヒットを記録しました。
このような事業活動の展開により、当期はケイマックスにおいて受注が増加したことに加え、イベント収入やクロスメディア収入が増加した一方で、テレビタイム収入やテレビスポット収入が減少したことなどにより、「メディアコンテンツ関連」の売上高は298億18百万円(前期比0.3%減)となりました。
利益面では、利益率の高いテレビスポット収入の減少が影響した一方で、クロスメディア収入の増加やケイマックスにおける受注増加、また前期のCBC会館リニューアルに伴う一時的な費用が無くなったことなどが増益要因となり、営業利益は2億2百万円(前期比117.1%増)となりました。
〈不動産関連〉
当セグメントは、当社と㈱千代田会館ならびに㈱CBCビップスで構成されます。
「不動産関連」は、一部で空き区画が発生したことにより、売上高は18億55百万円(前期比1.9%減)となりました。
利益面では、売上高の減少に加え、修繕費の増加などにより、営業利益は10億80百万円(前期比3.0%減)となりました。
〈その他〉
ゴルフ場事業を営む㈱南山カントリークラブならびに保険代理業などを営む㈱CBCビップスで構成される「その他」は、ゴルフ場事業の増収に加え、コロナ5類移行に伴うオフィス機器需要やパーキング事業の回復などにより、売上高は9億51百万円(前期比3.7%増)、営業利益は1億14百万円(前期比43.6%増)となりました。
② 財政状態の状況
(a)資産の部
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べて113億69百万円増加し、867億95百万円となりました。
主な増加要因として、保有株式の時価上昇などにより投資有価証券が94億52百万円、営業活動などで現金及び預金が26億50百万円それぞれ増加したほか、年金資産の運用好調により退職給付に係る資産が11億15百万円計上されております。また、主な減少要因として、減価償却等により有形及び無形固定資産が9億82百万円、繰延税金資産が7億38百万円それぞれ減少しております。
(b)負債の部
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて26億4百万円増加し、166億80百万円となりました。
これは、退職給付に係る負債が10億22百万円減少した一方で、保有株式の時価上昇などにより繰延税金負債が28億55百万円、流動負債のその他が4億49百万円、未払法人税等が2億97百万円それぞれ増加したことなどによるものです。
(c)純資産の部
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて87億64百万円増加し、701億15百万円となりました。
これは、保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券評価差額金が64億74百万円、退職給付に係る調整累計額が14億43百万円、親会社株主に帰属する当期純利益と配当金の支払額の差額により利益剰余金が7億90百万円それぞれ増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて29億50百万円増加し、142億64百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は42億13百万円となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益の計上20億64百万円、減価償却費の計上16億82百万円、未払消費税等の増加額3億49百万円、売上債権の減少額1億59百万円および法人税等の還付額3億94百万円です。また主な減少要因は、法人税等の支払額6億83百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は7億78百万円となりました。これは、投資有価証券の償還による収入9億91百万円があった一方で、投資有価証券の取得による支出10億8百万円や有形及び無形固定資産の取得による支出7億53百万円があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は4億85百万円となりました。これは、配当金の支払額3億96百万円や預り保証金の返還による支出88百万円などによるものです。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)当連結会計年度の経営成績の分析
(売上高および営業利益)
当社グループは2021年度を初年度とする「中期経営計画2021-2023」を策定し、当会計年度は3期目となります。当計画においては、「100年企業」グループに向けて、コロナ禍を乗り越え、10年先にあたる2030年における当社グループの姿を見据えて、既存の事業を「回復させ、成長させる」一方、これまで播いてきた「将来の種を育て」「新たな種播きを進める」3年間と位置付け、取り組んでまいりました。
計画3期目となる当連結会計年度は、2期連続の減収となりましたが、連結営業利益は2期ぶりの増益となりました。放送収入だけでなく、グループ再編による新たな利益の確保やクロスメディア事業が主要因です。しかし、主力の放送事業においては、近年のメディア環境の変化により、日本のテレビ・ラジオの広告費全体の大きな成長が見込み辛くなっています。この環境下、従来の放送ビジネスの再価値化(リブランディング)に取り組み、視聴率や聴取率を伸ばしてシェア拡大をめざすとともに、地上波広告価格の再価値化により拡大を目指します。その一方で、アニメなどによる知的財産(IP)事業の他、デジタルとリアルを組み合わせ複合的に広告主向けの商品を提供するビジネスプロデュース事業などを成長させ、新たな収益の柱の構築に取り組みます。
そして、グループの成長を支える体制と基盤も常に強化し続けていく必要があります。不動産関連セグメントは、今後も、保有資産の収益率向上により主力のメディアコンテンツ関連事業を支え、グループの持続的成長を促進していこうと考えております。2024年度は、新たな「中期経営計画2024-2026」の1期目です。従来の放送ビジネスの拡大と、新たな収益の柱の構築に向け、礎を築いてまいります。
また、メディアとして、地域住民の生命、生活、財産の維持に全力を尽くすことを最優先とし、中期経営計画の実行で将来にわたる経営基盤の安定化を進め、今後いかなる状況においても、地域の情報インフラとして存在し続けていくことを目指してまいります。
なお、上記事項を含むセグメント別の売上高および営業利益の詳細については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、受取配当金の増加などにより、前期比1億38百万円(25.0%)増の6億92百万円となりました。一方で、営業外費用は、前期比2百万円(17.3%)減の11百万円となりました。この結果、経常利益は前期比2億89百万円(16.3%)増の20億62百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は、投資有価証券売却益を4百万円計上しました。また、特別損失は、固定資産除却損を3百万円計上しました。
税金費用は、税金等調整前当期純利益の増益により、前期比1億75百万円(27.8%)増の8億6百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比1億21百万円(11.4%)増の11億86百万円となりました。
(b)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、テレビやラジオの放送における番組制作や送出に係る費用のほか、多額を要する放送設備の更新と社屋関係へのインフラ投資、持続的な成長を維持するための事業展開に向けた投資が見込まれております。また、株主還元等については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。
当社グループは、健全な財務状態及び営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資ならびに株主還元等に要する資金を調達することが可能と考えております。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は142億64百万円となっております。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える見積りおよび仮定設定を行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、経営者による見積りを要する主な会計方針およびその見積り要素は下記のとおりです。
なお、この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(a)固定資産の減損
当社グループは、減損の兆候が認められた場合には事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー及び不動産鑑定評価額等から関連する経費を差し引いた正味売却価額を用いて、減損損失の認識の要否を判定しております。今後、経営環境の悪化により将来キャッシュ・フローが減額された場合や保有資産の市場価額が下落した場合には、回収可能価額が低下し損失が発生する可能性があります。
(b)投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係維持のため、また余資運用目的で有価証券および投資有価証券を所有しております。この中には市場価格のある公開会社への投資と、市場価格のない非公開会社への投資が含まれております。今後、投資価値の下落が一時的でないと判断した場合、投資の減損が計上されることになります。投資価値の下落が一時的でないとの判断は、「金融商品会計基準」に従って行っております。
(c)繰延税金資産
当社グループは、課税所得の将来見積額や一時差異等のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産を計上しております。今後、経営環境の悪化により課税所得の見積りが減額となった場合には繰延税金資産を取り崩す必要が生じる可能性があります。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。
当連結会計年度において、当社グループで特筆すべき研究開発活動は行っておりません。