当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
①経営方針
会社の経営の基本方針
当社及びグループ会社は、「品質管理」、「安全管理」、「コンプライアンス遵守の徹底」を事業活動の3原則として掲げています。地域密着型経営を通じて株主の皆様方を含むステークホルダーから寄せられるご期待に応え、その利益を第一に考えて経営を行って参ります。令和2年9月には「パートナーシップ構築宣言」を公表し、取引先・協力業者を始め皆様とより強固なパートナーシップの構築に努めて参ります。また、安定かつ持続的な成長を実現するため、人財育成に注力するとともに、企業を取り巻く状況の変化を瞬時に捉えるよう各種情報の収集及び分析に努めて参ります。更に日々の事業活動において顧客満足度を高めるべく技術力の向上、企画提案力の向上を目指し研鑽に励んで参ります。
今後とも、財務指標等の相対価値のみに左右されることなく、各ステークホルダーの皆様方から寄せられる信頼の醸成によって構築される絶対価値の向上を目指し企業価値の最大化を図って参ります。
中長期的な会社の経営戦略
当社及びグループ会社は、コーポレートステートメントとして「未来を育てる人がいる」を掲げています。中長期的な視点に立ち当社及びグループ会社の次世代を担う人財の育成、技能・知識の継承、収益性重視の経営施策を継続、財務体質の健全性を堅持し、持続的な成長戦略を描けるよう全役職員一丸となって邁進して参ります。また当社の使命として「高品質・高付加価値なものづくり」を通じて、快適に安心して過ごせる環境、安全で働きやすい健康的な職場環境を提供し、社員や家族のゆとりと豊かさの実現に努め、各ステークホルダーの方々とよりよい未来を共有することを認識し社業に取り組んで参ります(健康経営優良法人2024(大規模法人部門))。また「北野建設グループSDGs宣言」により、国連で採択された「持続可能な2030年までの開発目標(SDGs)」の理念を共有し、国際的な目標である「SDGs」の達成に向けて積極的に貢献することを推進して参ります(長野県SDGs推進企業登録認定済)。
他のゴルフ場、ホテル、広告代理店の各事業におきましても、当社グループの一員として経営理念及び経営方針等を共有し中長期的な成長を目指すべく鋭意努力して参ります。
(経営理念及び経営方針等)
(経営理念)
「顧客からの信頼を第一義に考え、高品質・高付加価値なものづくりに徹し、社会の期待に応え、ともに発展する」
(経営方針)
1.高品質・高付加価値なものづくり
2.コンプライアンスの重視とコーポレート・ガバナンスの強化
3.地域密着型経営
4.積極かつ堅実経営
(事業活動の3原則)
「品質管理」
ものづくり企業として顧客からの要望の実現に向け取り組むことを第一義の使命と考え、高品質・高付加価値な商品の提供と、絶え間ない技術変革に対応する技術者の育成に努めて参ります。
「安全管理」
全ての役職員並びに工事に携わる協力企業の作業員は、労働安全衛生管理を徹底し、労働災害及びその他災害事故の発生を防止します。
「コンプライアンス遵守の徹底」
法令や社会規範を遵守し、経営に健全なコーポレート・ガバナンスが機能し、かつ確保されるよう努めて参ります。
(各指針等)
1.高品質・高付加価値なものづくり
1)コンプライアンス遵守の徹底
2)営業・現業部門間の情報共有による顧客ニーズの把握徹底
3)各種リスクの認識と適切な管理(情報の共有化徹底)
2.営業指針
1)選別受注の徹底(収益性と債権保全の重視)
2)計画的な顧客訪問実施による情報収集の徹底
3)土地情報等の優良情報の収集及び分析
3.人財・組織戦略
1)適材適所の徹底、社員配置の適正化
2)社員教育の徹底、研修制度の充実、世代間の技能・知識継承
3)業務効率化による過重労働時間の削減
4.財務戦略
1)安定配当の継続
2)健全な財務体質の堅持
(サステナビリティ及び人的資本に関する方針等)
当社及びグループ会社は、サステナビリティの実践に向けて、最も重要な経営資源である人財に対して採用・育成などに積極的な投資を行うことで、持続的に企業価値向上することを目指しています。
②経営環境
当社及びグループ会社を取り巻く経営環境は、我が国経済の動向と密接につながっています。令和6年1月26日に閣議決定された「令和6年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によりますと、我が国経済は、コロナ禍の3年間を乗り越え、改善しつつあり、30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済には前向きな動きが見られ、デフレから脱却し、経済の新たなステージに移行する千載一遇のチャンスを迎えています。他方、賃金上昇は輸入価格の上昇を起点とする物価上昇に追い付かず、個人消費や設備投資は、依然として力強さを欠いています。これを放置すれば、再びデフレに戻るリスクがあり、また、潜在成長率が0%台の低い水準で推移しているという課題もあるため、政府は、デフレ脱却のための一時的な措置として国民の可処分所得を下支えするとともに、構造的賃上げに向けた供給力の強化を図るため、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を打ち出しています。
しかし一方で、これまでにない速度で変化する国際情勢、エネルギー資源や原材料価格上昇、円安方向への為替変動、構造的な問題としての「労働者人口の高齢化の進展」や「慢性的な人手不足」を背景とする労務費の高騰等のリスクの存在は、健全な収益確保、業務効率を推進する建設業にとって予断を許さないリスク要因となっています。
当社グループの海外ホテルを含むホテル事業については、同様な影響を受けつつも集客面では回復傾向にあります。引き続き「顧客第一」に徹し慎重な営業展開が求められるものと考えています。
この様な状況下ではございますが、当社におきましては、現在、人財の確保と育成、といった人への投資に加え、DXへの取組みを積極的に進めて参る所存です。これに伴い発生する経費等を見込んだ結果、次期の当社グループの見通しとしましては、総売上高860億円、営業利益33億円、経常利益35億円、親会社株主に帰属する当期純利益24億円の達成に注力して参ります。
③対処すべき課題等
当社及びグループ会社は、経営方針として「コンプライアンスの重視とコーポレート・ガバナンスの強化」を掲げています。コンプライアンスの強化は企業に課せられた重要な命題であると認識し、全役職員に対する啓蒙を日々実践継続しています。また、企業を取り巻く各種リスクへ適切に対応するためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要であると認識しております。当社及びグループ会社においてはコーポレート・ガバナンスの強化と併せ、「品質管理・安全管理・コンプライアンス遵守の徹底」を事業活動の3原則として重点管理することによって経営効率の改善に向けて積極的に取り組んで参ります。
具体的には、施工面において安全管理、品質管理、工程管理、予算管理等の各種管理を徹底することで顧客の皆様に対して「高品質・高付加価値なものづくり」の提供を目指して参ります。営業面においては受注段階における工事案件の内容を精査し収益性重視の基本方針に基づき意思決定の迅速化、権限と責任の明確化を図り、安定的な受注確保を目指して参ります。人事面においては建設系人財の採用が難しい環境にあり、積極的なキャリア採用を行っています。財務面においては引き続き財務健全性を堅持し、株主の皆様方に対する安定的な配当を実施することが当社の最重要課題であると認識し継続して参ります。
当社及びグループ会社は、「北野建設グループ行動指針」のもと、事業活動を通じ経営理念の具現化を実践するとともに、社会からの信頼に誠実に向き合い、持続的な発展に貢献する事を目指しています。また、創業以来「企業は人なり」を標榜し、「人財はバランスシートに表せない資産である」「企業活動の原点は人にある」との考えをもとに、「未来を育てる人がいる」をコーポレートステートメントに掲げています。人財=未来を育てる、ものづくりを通じて、人を、社会を、次世代の未来を創り出します。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社及びグループ会社は、コーポレートステートメント「未来を育てる人がいる」に基づき、株主を含むステークホルダーの皆様と共に未来に向かって成長し、中長期的な企業価値の向上を実現するため、北野建設グループコーポレートガバナンス憲章を制定し、コーポ―レートガバナンスの充実に継続的に取り組みます。
サステナビリティを推進する社内体制としては、ブランディング・広報戦略室を中心に人事本部、経営管理本部、CSR推進室の各部で連携して行っております。人口減少、人材流動化時代において様々なステークホルダーから選ばれる企業となるべく、経営層と関係部署とが連携し、社内外の対応方針を策定するなど、経営施策へ適宜反映し、活動を推進していきます。ブランディング・広報戦略室は、原則月1回開催する執行役員会にて活動状況を報告し、重要性の高い案件に関しては、担当役員及び担当部署より取締役会へ報告が行われ、取締役会のレビューを受けます。
コーポレート・ガバナンス報告書は、東京証券取引所の上場会社情報に掲載しております。
コーポレート・ガバナンス報告書 (https://www2.jpx.co.jp/disc/18660/140120220912531413.pdf)
コーポレート・ガバナンス憲章は、当社ウエブサイトに掲載しております。
コーポレート・ガバナンス憲章(https://www.kitano.co.jp/ir/docs/governance.pdf)
②リスク管理
当社及びグループ会社は、経営に関する様々なリスクを審議するため、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価、分析をし、執行役員会にて必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を整えています。特に、①安全確保と健康②令和6年4月からの時間外労働時間制限③建設系人材の採用・定着などのリスクや課題について対応しております。
(2)人的資本
①戦略
当社及びグループ会社は、サステナビリティの実践に向けて、特に人的資本への投資を重要課題と捉え、持続的な企業価値の向上を目指して人材採用・人材教育に資する戦略を設計しています。
具体的な方針は、下記のとおりです。
<採用方針>
1.人材を最も重要な経営資源と捉え、積極的に採用活動を行います。
2.採用機会を逸することなく、通年でタイムリーに採用活動を行います。
3.新卒、キャリアともに積極的に採用活動を行います。
4.性別、国籍、勤務日数・勤務時間、障害の有無、在宅ワークなど多様性を排除することなく採用活動を行います。
<人材育成(従業員のキャリア形成支援)の基本的方針>
1.人材は唯一の経営資源と捉え、人材の力を最大限発揮できる投資を行います。
2.従業員が各々の選択で、キャリアを選択することができる様、年齢や職歴、学歴などによらない脱年功的な人事制度とします。
3.自身の望むキャリアに向けて階層別の教育だけではなく、自身で選択できる教育機会を用意します。
4.従業員が公私共に、モチベーションを高く持てる環境を整えます。(育児休業取得の推進、短時間勤務上限を子の小学校卒業まで延長 など)
<安全衛生方針>
「人命の尊厳は何人も侵すことの出来ない至上のものである」
当社及びグループ会社は、全ての社員及び協力業者の社員が、労働安全衛生管理を徹底し、労働災害及びその他災害事故の発生を防止して参ります。安全衛生管理は企業存立の基盤をなすものであり、その確保と充実は企業の社会的責任です。上記の安全衛生理念に基づき、安全衛生方針を表明します。
1.キタノコスモス(労働安全衛生マネジメントシステム)に則り、PDCAサイクル(計画-実行-検証-改善)を適切に運用し、安全衛生管理活動の形骸化防止を図る。
2.労働災害ゼロを目指し、建設事業所のあらゆる危険有害要因を排除するため、店社及び作業所の社員並びに関係する事業者が一体となって安全衛生管理活動を継続的に実施する。
3.労働安全衛生関係法令、建設事業所において定めた安全衛生に関する規定等を遵守することにより、全ての社員及び関係する作業員の快適な職場を確保する。
4.からだとこころの健康づくりと、メンタルヘルスケアの充実を通じて、全ての社員及び協力業者の作業員がいきいきと働ける環境を整備する。
②指標及び目標
<取り組み事例>
◇キャリア採用プロジェクトの取り組み
社員一人一人が働きやすい環境づくりを行い、中長期且つ安定的に事業活動を継続する目的のため、キャリア採用プロジェクトを推進しています。どのような職種においても女性が活躍できる環境を整え、性差なく採用を進めていきます。
|
目標項目 |
目標数値 |
令和5年3月末 時点の実績 |
令和6年3月末 時点の実績 |
|
採用者に占める 女性割合向上 |
|
29.8% |
|
◇女性活躍推進の取り組み
女性が活躍できる環境を整えて推進するため、平成28年より「北野こまち会(女性技術者の会)」、令和3年5月より「女性活躍政策部会(通称:える会)」が発足しています。ママ会や座談会、経営陣との意見交換会などにより、課題を抽出して推進する活動や、3月8日世界国際女性デーにあわせ、D&I、キャリア形成について討議し、理解を深める社内イベントを開催しました。
令和2年に認証取得しました「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定制度「えるぼし2段階認証」を当事業年度も継続して取得しています。
◇健康経営の取り組み
経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。
法定健診の受診のみならず、二次検査の受診率向上、法定外の健診項目への補助増額などを通じて、社員の健康づくりを支援しております。
◇満足度の高い制度づくり
誰もが働きやすい職場環境づくりのため、令和4年度に実施しました社員意識調査結果について外部専門家による検証を行い、その結果を令和6年4月からの新人事制度に反映しました。脱年功主義は維持しつつ、より公平で公正な満足度の高い人事制度を追求して参ります。また、従業員とのエンゲージメントを経営に活かす取り組みを行っております。
今後も、社員に選ばれる企業を目指し、女性活躍推進や健康経営の取り組み、満足度向上のための制度作りなど、積極的に推進して参ります。
当社グループの経営成績、財政状態及び株価に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①建設市場の縮小リスク
当社グループが事業活動を行う市場である我が国の経済環境の動向は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
・景気後退局面による企業の設備投資抑制による受注機会の減少。
・工事完成時までの発注者側の業況悪化に伴う工事代金回収の遅延、又は貸倒の発生懸念。
・資材、エネルギー価格の高騰等による原価高騰。
・震災等の影響による需要の減少及び上記に基づく建設市場の更なる収縮。
②重大事故や契約不適合の発生リスク
当社グループが設計、施工した物件において、施工途中における重大事故の発生や完成後に契約不適合が認められた場合、多額の費用負担が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③海外工事のカントリーリスク
当社グループの建設事業では海外工事を受注していますが、以下のような理由等により工事の進行に支障が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
・現地における政変発生等による工事の中断、又は中止。
・現地政府の政策、税制を含む各種制度等の変更による原価高騰。
・政情不安等による当社社員の安全面の確保。
④為替相場の変動リスク
当社グループの建設事業では海外工事を受注しています。現地での外貨必要資金は基本的に受注確定後、速やかに為替予約によるリスクヘッジを行っていますが、急激な為替市場の変動により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また海外におけるホテル事業も建設事業同様に為替変動リスクが顕在化する可能性があります。
⑤保有不動産等の価格変動リスク
当社グループでは不動産(販売用不動産等を含む)を多数保有していますが、不動産市況の動向によっては、時価評価額が下落し評価損が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥保有投資有価証券の価格変動リスク
当社グループでは投資有価証券(非上場を含む)を多数保有していますが、証券市場の動向によっては、時価評価額が下落し評価損が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦関連会社の業況リスク
グループ内の関連会社につきましては、堅実な経営を心掛けていますが、業況が変化した場合は当社への影響が発生する可能性があります。
⑧法的規制等に関するリスク
当社グループの建設事業では建築基準法に代表される様々な法的規制を受けています。これらの規制を遵守できない事象が発生した場合、官公庁による営業停止、入札参加資格の停止処分を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
①経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
イ.財政状態
(資産の部)
当連結会計年度末における資産の残高は778億29百万円(前年同期比4.1%増)となり、前連結会計年度末に比べ30億67百万円の増加となりました。主な要因としましては、「未成工事支出金」が減少した一方で、「受取手形・完成工事未収入金等」及び「開発事業等支出金」、「投資有価証券」が増加したことによるものです。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債の残高は341億35百万円(前年同期比4.9%減)となり、前連結会計年度末に比べ17億63百万円の減少となりました。主な要因としましては、「繰延税金負債」が増加した一方で、「支払手形・工事未払金等」が減少したことによるものです。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産の残高は436億93百万円(前年同期比12.4%増)となり、前連結会計年度末に比べ48億31百万円の増加となりました。主な要因としましては、「利益剰余金」及び「その他有価証券評価差額金」が増加したことによるものです。
ロ.経営成績
当連結会計年度における我が国経済は、コロナ禍明け後の需要回復はすでに一巡し、個人消費は物価高の影響で対面型サービスへの支出の伸びが鈍く、持ち直しが一服、一方、企業部門では企業利益の増加が続き、設備投資意欲は底堅く、内需を中心に緩やかに持ち直しています。しかしながら世界経済におきましては、欧米経済の物価高や金融引き締めの影響による減速の可能性、資源価格の動向や為替変動など海外情勢の不安定さや海外経済の回復ペースの鈍化の影響を受けており、引き続き日本経済への影響に十分注意する必要があります。
当社グループが主に事業を展開している建設業界においては、政府建設投資は底堅く推移しており、民間建設投資も持ち直しの動きがみられておりますが、労働者不足や労務費の上昇、原材料価格の高騰、為替変動、同業他社との厳しい受注環境の激化等、引き続き注視が必要な状況が続いております。また、連結子会社のホテル事業につきましては、諸外国における各種規制の撤廃の影響により、コロナ禍前の水準への回復基調にあります。
かかる状況下におきまして、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高849億64百万円(前年同期比0.4%減)、営業利益48億4百万円(前年同期比22.2%増)、経常利益50億73百万円(前年同期比16.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益39億2百万円(前年同期比96.3%増)となりました。
当社グループにおける経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、当社グループ各社の事業計画における売上高、営業利益を元に算出し、証券取引所にて開示している通期業績見込みの営業利益を重視しています。
なお、各社の事業計画策定にあたっては、数字ありきではなく、配分資源の効率性、市場環境の動向等を踏まえ、総合的に勘案した上で事業計画の数字を確定しているため、目標値は年度ごとに変動するものとなります。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(建設事業)
当連結会計年度における建設事業の業績につきましては、売上高は前年同期比1.4%減の813億52百万円となり、セグメント利益は前年同期比12.3%増の43億44百万円となりました。
(ゴルフ場事業)
ゴルフ場事業の業績につきましては、売上高は前年同期比4.7%減の2億68百万円となり、セグメント利益は前年同期比65.8%減の15百万円となりました。
(ホテル事業)
ホテル事業におきましては、売上高は前年同期比50.2%増の25億48百万円、セグメント利益は3億73百万円(前連結会計年度は94百万円のセグメント損失)となりました。
(広告代理店事業)
広告代理店事業の業績につきましては、売上高は前年同期比0.6%増の8億82百万円、セグメント利益は前年同期比49.6%減の40百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は258億68百万円(前年同期比2.2%増)となり、前連結会計年度末に比べ5億46百万円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加19億17百万円(前年同期は165億20百万円の資金の増加)の主な内訳は、税金等調整前当期純利益の増加50億64百万円及び仕入債務の減少30億52百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少2億54百万円(前年同期は2億36百万円の資金の減少)の主な内訳は、定期預金の払戻8億7百万円があった一方で、有形固定資産の取得5億42百万円及び定期預金の預入4億57百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少13億7百万円(前年同期は52億41百万円の資金の減少)の主な内訳は、自己株式の取得6億34百万円及び親会社の配当金による支出6億53百万円などによるものです。
(3)財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、自己資金又は借入による資金の調達を基本としています。建設事業において、工事代金の回収と下請工事代金の支払のタイミングが一致しないことにより生じる短期の運転資金需要については、金融機関からの短期借入を基本としています。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では生産実績を定義することが困難であり、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
また、当社グループにおいては建設事業以外では受注生産形態をとっていません。
したがって受注及び販売の状況については記載可能な項目を「①経営成績等の状況の概要」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて記載しています。
なお、提出会社単独の事業の実績は、以下のとおりです。
1 建設事業部門
(1)受注工事高、完成工事高及び繰越工事高
|
期別 |
区分 |
前期繰越工事高 (百万円) |
当期受注工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成工事高 (百万円) |
次期繰越工事高 (百万円) |
|
前事業年度 自 令和4年4月1日 至 令和5年3月31日 |
建築工事 |
51,007 |
73,332 |
124,340 |
73,485 |
50,855 |
|
土木工事 |
10,142 |
7,377 |
17,519 |
8,318 |
9,201 |
|
|
計 |
61,150 |
80,710 |
141,860 |
81,803 |
60,056 |
|
|
当事業年度 自 令和5年4月1日 至 令和6年3月31日 |
建築工事 |
50,855 |
84,729 |
135,584 |
72,069 |
63,514 |
|
土木工事 |
9,201 |
6,069 |
15,271 |
8,612 |
6,659 |
|
|
計 |
60,056 |
90,798 |
150,855 |
80,681 |
70,173 |
1 前事業年度以前に受注した工事で契約の変更により請負金額の増減がある場合、当期受注工事高にその増減額を含めています。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致します。
(2)受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期間 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
前事業年度 自 令和4年4月1日 至 令和5年3月31日 |
建築工事 |
53.5 |
46.5 |
100 |
|
土木工事 |
24.7 |
75.3 |
100 |
|
|
当事業年度 自 令和5年4月1日 至 令和6年3月31日 |
建築工事 |
54.7 |
45.3 |
100 |
|
土木工事 |
19.6 |
80.4 |
100 |
(注)百分比は請負金額比です。
(3)完成工事高
|
期別 |
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
|
前事業年度 自 令和4年4月1日 至 令和5年3月31日 |
建築工事 |
2,199 |
71,285 |
73,485 |
|
土木工事 |
6,333 |
1,984 |
8,318 |
|
|
計 |
8,533 |
73,270 |
81,803 |
|
|
当事業年度 自 令和5年4月1日 至 令和6年3月31日 |
建築工事 |
2,150 |
69,919 |
72,069 |
|
土木工事 |
6,839 |
1,772 |
8,612 |
|
|
計 |
8,989 |
71,692 |
80,681 |
1 完成工事のうち主なものは次のとおりです。
前事業年度の完成工事のうち主なもの
|
株式会社デンソー三共 |
株式会社デンソー三共新拠点計画 |
|
株式会社池の平ホテル&リゾーツ |
池の平ホテル&リゾーツ新本館建設工事 |
|
株式会社モンベル |
北陸モンベル越前大野流通センター新築工事 |
当事業年度の完成工事のうち主なもの
|
大和ハウス工業株式会社 |
(仮称)DPL長野千曲Ⅱ新築工事 |
|
株式会社ベルーナ |
株式会社ベルーナ吉見ロジスティクスセンター増築工事 |
|
大和ハウス工業株式会社 |
(仮称)Dタワー富山新築工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりです。
前事業年度
|
相手先 |
完成工事高(百万円) |
割合(%) |
|
大和ハウス工業株式会社 |
13,837 |
16.9 |
当事業年度
|
相手先 |
完成工事高(百万円) |
割合(%) |
|
大和ハウス工業株式会社 |
10,833 |
13.4 |
(4)繰越工事高(令和6年3月31日現在)
|
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
|
建築工事 |
8,569 |
54,944 |
63,514 |
|
土木工事 |
5,734 |
924 |
6,659 |
|
計 |
14,304 |
55,868 |
70,173 |
繰越工事のうち主なものは次のとおりです。
|
公益財団法人倉石地域振興財団 |
公益財団法人倉石地域振興財団 栗田病院新棟新築工事 |
令和6年12月完成予定 |
|
新光電気工業株式会社 |
新光電気工業株式会社 新井工場 新棟建設工事(建築) |
令和7年9月完成予定 |
|
オリンパス株式会社 |
オリンパス株式会社 技術開発センター石川O3プロジェクト Phase3・Phase4工事 |
令和7年11月完成予定 |
2 開発事業部門
開発事業等の売上実績
提出会社における開発事業等の売上高の推移は次のとおりです。
|
科目 |
前事業年度 自 令和4年4月1日 至 令和5年3月31日 |
当事業年度 自 令和5年4月1日 至 令和6年3月31日 |
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件数 |
金額(百万円) |
件数 |
金額(百万円) |
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土地 |
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不動産賃貸収入他 |
18 |
1,247 |
20 |
1,257 |
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計 |
18 |
1,247 |
20 |
1,257 |
特記事項はありません。
当社グループの研究開発は、建設事業において、さまざまな建設環境に適応して品質と生産性の向上に資することを基本方針としながら、広範な社会ニーズに適切に対応できるよう品質管理部技術研究室を中心に推進しています。また、多様化する社会動向や高度化する顧客ニーズに対応するために、公的機関、大学、異業種企業等との共同研究を推進・強化しています。
当連結会計年度における研究開発費は
主な研究活動は次のとおりです。なお、「ゴルフ場事業」、「ホテル事業」、「広告代理店事業」のセグメントにおいては特段の研究開発活動を行っていません。
(1)耐震性に優れた超高層RC、CFT、免震・制振等の各種構造の研究開発
構造解析技術や高強度コンクリート等の研究に基づき、CFT造や超高層RC造の設計及び施工技術を確立し、各種構工法システムをさまざまな建造物へ適用するとともに、さらなるレベルアップと応用展開を図るべく研究開発を推進しています。
(2)環境関連技術の研究開発
環境に対し高度化する社会や顧客の要請に応えるべく、ビル風・熱・音・振動・空気質等の住環境評価予測技術や環境影響評価技術の確立を図っています。また、地球環境の保護と改善につながる自然共生型技術や汚染物質浄化・エコエネルギーなど、環境関連技術の実用化研究を進めています。これまで次のような研究開発に取り組み実現させました。
・電子機器生産施設における微振動の計測解析と振動低減システム
・ビル風、騒音、振動、断熱等の環境予測シミュレーションシステム
・廃熱を利用したアイスアリーナ結露防止システム
・廃熱を利用した屋根融雪システム(特許工法)
(3)耐震補強とリニューアル対応技術の整備促進
耐震解析技術に基づく既存建物の調査診断や耐震補強の実績を積み重ねることにより、顧客のニーズに合わせて提案できる耐震・リニューアル技術の研究を推進しています。
また、当社の得意分野である社寺建築や木造文化財の耐震診断・補強技術の研究開発を推進しています。
(4)建築物の長寿命化技術の開発
建物の劣化調査・長期修繕計画作成ツール等の既存建物のライフサイクルを適切に考慮した維持管理手法や、省エネルギーリニューアル技術等による、建築物の長寿命化技術の開発を推進しています。
(5)技術提案力の強化と災害発生時の事業継続計画構築等による技術支援体制の整備改善
総合評価落札方式における技術提案へのバックアップ体制強化を図るとともに、品質・環境マネジメントシステムをベースとした品質向上・環境配慮に努めています。
また、首都圏における大地震を想定した事業継続計画(BCP)を構築し、災害発生時にも品質確保ができるよう技術支援体制の整備と改善を進めています。
(6)準大手・中堅ゼネコンとの共同研究開発
当社は令和元年度から準大手・中堅ゼネコン21社による「配筋検査システム」の共同研究開発に取り組み、令和2年9月からはゼネコン21社とプライム ライフ テクノロジーズ株式会社が共同で開発を進めています。AIカメラが配筋を立体検知し、鉄筋径、本数、ピッチを計測、鉄筋の配置を登録した設計データと自動照合し、その結果を帳票フォーマットへ自動的に反映することが可能で、AI及びICT技術により配筋検査に要する時間の大幅な短縮を実現します。令和6年4月よりゼネコン21社で先行導入を開始しました。ゼネコン4社により土木工事向けの配筋検査システムの共同研究開発も進めています。
また、鉄骨造の合理化工法に関する共同研究開発として、ゼネコン10社による「床スラブによる拘束効果を考慮した鉄骨梁横座屈補剛工法」ならびに、ゼネコン9社による「異幅柱接合部工法」の構造性能評価を令和4年度に取得しました。この構造性能評価を取得した工法を設計施工物件に採用し実施設計が完了しています。また、「異幅柱接合部工法」については令和6年度より適用範囲拡大のための共同研究開発を行う予定です。