(1) 会社の基本方針
・企業理念と「Vision2030」
当社グループは、「地球上に限りある資源の有効活用を図り、あらゆる素材の表面改質を通じて、資源の新しい価値を創造し、地球環境の保全と豊かな社会作りに貢献する」を企業理念とし、アジアを中心に、北米や欧州などでグローバルに事業を展開しております。また、表面改質技術を通じて、持続可能な社会の実現に向けたさまざまな取り組みを推進しており、「サステナビリティ基本方針」を制定し、社会課題の解決に向けた行動を推進しております。
更に、当社グループでは、企業理念と基本方針を踏まえて、2030年のあるべき企業像と成長の道筋を示した「Vision2030」を策定し、表面改質のスペシャリストとして「表面改質技術を通じて、新たな価値を創造し、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを目標に、あらゆる素材の表面に、多様な機能を付加する技術の研究開発に取り組んでおります。
<サステナビリティ経営のフレームワーク〉
企業理念に基づき、サステナビリティ基本方針を始めとする各種方針、ガイドライン等を制定し、「Vision2030」のもと、重要課題(以下、「マテリアリティ」という)に取り組んでおります。持続可能な社会を実現するために、環境対応製品の開発や人権や環境に配慮したサプライチェーンを構築することで、事業を通じて社会課題の解決へ貢献してまいります。
・リージョナル経営の推進
当社グループは、1928年に創業した後、1965年に台湾に進出し、その後も積極的にグローバル展開を進め、現在では東南アジア・中国・欧米などに拠点を設けており、国内外のグループ会社が一体となって「リージョナル経営」を推進しております。今後も、インド・ASEANなど、高い経済成長が見込まれる海外市場において、マーケットインの視点で、各地域顧客のニーズに即した製品とサービスを迅速に提供することで、薬品、装置、加工の全てのセグメントにおいて、海外事業の更なる拡大を目指してまいります。また、各地域における経営目標を明確にすることで、「Vision2030」達成に向けた取り組みを強化してまいります。
・変革への挑戦(Challenge for Change)
事業環境の変化に対応するため、「変革への挑戦~Challenge for Change~」を会社方針として掲げ、既成概念やこれまでの慣習にとらわれない発想で、新規分野の開拓とビジネスプロセスの変革に挑戦してまいります。
具体的には、海外事業の拡大に加えて、電子・電気やライフサイエンスなど自動車や鉄鋼産業以外の新規分野の開拓を推進してまいります。また、CO2削減や省エネなど、環境に貢献する表面処理技術の開発を推進し、環境関連の研究開発テーマへより多くの工数を配分していく方針であり、表面処理技術を通じて社会課題の解決に貢献したいと考えております。
また、グループ最適な生産体制の構築、工場の自動化、IoT技術やAIを用いたDXの推進、ホワイトカラーの生産性向上、グループ再編も含めた事業構造改革など、収益力を高めるための施策を推進してまいります。
・配当方針と株主還元への取り組み
配当については、業績動向、将来の事業展開に必要な内部留保の水準等を総合的に勘案し、連結配当性向30%程度を目安に決定しておりますが、成長のための投資資金及び財務基盤の安定性がある程度確保されたと判断し、当面の間は配当方針を上回る配当を実施する方針です。また、ROE など資本効率を高めるために、自己株式取得についても機動的に検討して行く方針です。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
第4次グループ中期経営計画では、当社グループが優先的に取り組むべき6つのマテリアリティに対する具体的な取り組みを推進し、成長戦略、社会課題解決、企業変革の3つを柱として、「Vision2030」の実現に向けた経営基盤作りに取り組んでおります。
当社は1928年の創業以来、表面改質技術を通じて、産業や社会の発展に貢献してまいりましたが、近年、EV化の進展など、事業環境は目まぐるしく変化しております。このような先行きが不透明で、将来の予測が困難な、所謂VUCAの時代を生き抜いていくために、これまで以上の大きなチャレンジに果敢に取り組み、社会と共に持続的な成長・発展を目指してまいります。
(3) 目標とする経営指標
(第4次グループ中期経営計画:2025年3月期の目標)
・売 上 高 1,300億円
・営 業 利 益 169億円
・経 常 利 益 195億円
・売上高営業利益率 13%以上
・売上高経常利益率 15%以上
・自己資本利益率(ROE) 8~10%以上
(4)会社が対処すべき課題
2024年3月期における世界経済は、社会経済活動の正常化が進む中で、個人消費や企業の生産活動に持ち直しの動きが見られ、当社グループの業績も緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、原材料・エネルギー価格の高止まりや為替の変動幅が大きい状況は続いており、販売価格への転嫁、原価低減、生産性の向上などにより、適正なマージンを確保できるように取り組んでまいります。
また、中長期的には、主要な販売先である自動車業界においては、グローバル競争の激化による価格低下及び国内市場の成熟等による需要減少リスクに加え、脱炭素社会に向けた自動車の電動化への取り組みがグローバルで加速しております。そのような市場環境のなか、当社グループの持続的な企業価値の向上には、既存事業の収益力強化と将来を見据えた技術開発が不可欠と考えております。表面処理のリーディングカンパニーとして、CO2削減や省エネなど、環境に貢献する表面処理技術の研究開発に積極的に取り組むほか、「Vision2030」の実現に向けて、以下の取り組みを推進してまいります。
① 新規分野の開拓
自動車及び鉄鋼などの伝統的な市場だけでなく、医療機器、電子部品、航空宇宙、ヘルスケア、家庭用品など、新規市場及び新規分野への参入拡大を推進してまいります。
② 既存分野の深耕
次世代自動車に対応した技術開発、環境対応型製品及び高機能製品の開発など、社会のニーズに合わせた製品開発や技術開発により、既存分野の深耕を図ってまいります。
③ グローバル展開の加速
事業活動の更なるグローバル化を推進し、グループ総合力を活かして、社会課題の解決に貢献するソリューションをグローバルに提供する体制を強化してまいります。
④ グループ・ガバナンスの強化
中長期的な企業価値の向上に向けて、グローバルな事業活動を支えるためのグループ・ガバナンスの強化に取り組みます。
⑤ 多様な人材の活躍推進
イノベーションの創出と海外事業の拡大による持続的な成長を実現するため、ダイバーシティ経営をグローバルに推進し、多様な人材の活躍促進とグローバル人材の育成・確保に積極的に取り組みます。
(5)コーポレート・ガバナンスの強化
当社では、プライム市場上場会社として社会的な使命と責任を果たし、継続的な成長・発展を目指すためには、コーポレート・ガバナンスの充実が重要な経営課題であると考えております。
この考えに基づき、(ⅰ)取締役会による重要な意思決定と職務の監督、(ⅱ)グループ全般を視野においた経営管理体制による意思決定の迅速化、(ⅲ)監査等委員会による取締役の職務執行の監査、(ⅳ)社長直轄の内部監査室による内部監査の実施、(ⅴ)化学メーカーとしての責任である製品・サービスに関する安全性確保、品質保証、環境対応及び法令遵守を全社統合的に推進する組織の編成、(ⅵ)コンプライアンス委員会・リスク管理委員会の設置、リスク管理規程・子会社管理規程の整備、(ⅶ)任意の指名・報酬委員会の設置等の施策を実行しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティに関する考え方及び取り組みの状況
当社グループは、「地球上に限りある資源の有効活用を図り、あらゆる素材の表面改質を通じて、資源の新しい価値を創造し、地球環境の保全と豊かな社会作りに貢献します」との企業理念のもと、サステナビリティ基本方針を策定し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けた取り組みを推進しております。
① ガバナンス
当社では、サステナビリティに関する活動を全社的な視点から統括し、推進するための組織として、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会では、社会・環境問題などサステナビリティに関する重要な方針や議題を審議するとともに、各種施策の推進・進捗管理、マテリアリティ及びそのKPI等の策定・見直し、気候変動に関する事項などについて報告しております。
取締役会は、年4回開催される同委員会の議論について年1回以上報告を受け、監督と意思決定を行っております。また、事業戦略の策定・経営判断に際しては、サステナビリティの観点を踏まえ、総合的に審議・決定しております。
<サステナビリティの取り組みの体制>
② 戦略
当社グループは、事業活動におけるリスク及び機会を分析し、2022年5月に6つの優先的に取り組むべき重要課題をマテリアリティとして特定しました。さらに定量的・定性的なKPIを設定し、当社グループの経済価値の向上と社会課題の解決に貢献すべく、各マテリアリティの取り組みを推進しております。
<当社グループのマテリアリティおよび取り組み状況>
なお、気候変動が事業活動に与えるリスクと機会については、下記のとおり評価・特定し、対応しております。
③ リスク管理
当社グループは、事業目的の達成を阻害する恐れのあるさまざまなリスクを効果的、効率的に管理するため、リスク管理委員会を設置しております。本委員会は、経営リスク(オペレーショナルリスク)を中心とするリスクマネジメント活動を統括し、当該リスクに対するアセスメントを実施し、その評価・管理・対応策の検討を行い、内部統制委員会へ付議・報告しております。
なお、気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ委員会が主体となってマネジメントしており、両組織は全社的なリスクマネジメント活動において相互に緊密に連携・協力して対応しております。
当社グループでは、2023年気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づきシナリオ分析を行い、気候変動に関するリスクと機会を特定し、それらが当社グループにどのような影響を及ぼし得るのか評価しました。そのうえで、マテリアリティの取り組みの着実な推進およびGHG排出量削減目標の達成を目指すことにより、リスクの最小化および機会の最大化が図られ、当社グループのレジリエンス(強靭性)の向上に繋がることを確認しました。
④ 指標及び目標
こうした取り組みのなか、特に重要と考える気候変動への対応として、中長期の温室効果ガス(以下、「GHG」という。)排出量削減目標を策定するとともに、目標達成に向け、(ⅰ)設備・機器効率の改善、運転方法・プロセスの合理化、(ⅱ)再生可能エネルギー由来電力の利用拡大、(ⅲ)カーボン・オフセット手法の利用などの施策に取り組んでおります。
<当社のGHG排出量削減目標>
2030年目標 Scope1・2 売上高原単位CO2排出量30%削減(2020年度比)
2050年目標 Scope1・2 カーボンニュートラル達成
<2022年度 当社および国内連結子会社のGHG排出量(Scope1、2、3)>
(単位:t-CO2)
(注) 2023年度のGHG排出量は算定中のため、前事業年度の情報を記載しております。
※対象会社:日本パーカライジング㈱、パーカーエンジニアリング㈱、パーカー加工㈱、大分パーカライジング㈱、小松パーカライジング㈱、日本カニゼン㈱、浜松熱処理工業㈱、ミリオン化学㈱、共同輸送㈱
(2) 人的資本への取り組み
① 戦略
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
<人材育成方針>
持続的成長とイノベーションの創出には多様な人材の活躍が不可欠と考え、多様な人材の採用と育成によりグループ人材力の最大化を図ります。当社グループは、世界12の国と地域でグローバルに事業を展開しており、「多様な価値観を尊重し、“力”に変えられる企業文化の醸成」をマテリアリティに掲げ、グローバルな人材育成、ダイバーシティの推進、人権の尊重などに取り組んでおります。具体的には、グローバルな企業運営と地域に根差した事業展開を目指し、国内外の人材交流の活性化によるグローバル人材の育成、海外拠点におけるローカル人材の育成強化を図ります。
現在の取り組みとしましては、海外連結子会社の現地技術スタッフを研修生として日本に招き、技術面・文化面の交流を深め、グループ全体の活性化を図っています。また当社従業員に対しては、国内外問わず活躍できる人材を輩出するため、グローバル人材育成プログラムを推進しております。
また、ダイバーシティの観点においては、女性・障がい者・外国人・中途・シニアなど多様な価値観、バックグラウンド、スキルを持った人材の採用と定着を促進し、キャリアステージに合わせた研修などを通じキャリア形成をサポートしております。特に、女性活躍の観点からは、将来の管理職候補となる係長格の社員に対して、管理職に求められる意思決定力、組織マネジメント力、合意形成力等の向上を推し進める教育を実施し、管理職としての能力が着実に身に付くよう、育成を強化しております。
社員教育につきましては、積極性や行動力・創造性を有し、グローバルに活躍し得る人材を長期的な視点に立って育成するために、計画的に階層別の研修プログラムを実施し、さらに、グループ会社全体の人材力の向上を目指し、国内連結子会社と共同開催する研修の範囲を広げております。
<社内環境整備方針>
多様な人材が能力を発揮して活躍できる環境と柔軟な働き方を可能とする制度を整えることで、仕事のやりがいと個人の成長を実現し、社会価値と企業価値との両立を図っていきます。また、IT基盤の整備及び営業活動・生産・品質管理等におけるIoTの活用により、生産性の向上を図るなど、デジタル・トランスフォーメンションを推進します。さらに、「現場で働く人たちの安心・安全衛生確保」をマテリアリティに掲げ、安心・安全で快適な職場環境の形成を目指すとともに、心と身体の健康増進に取り組んでおります。
本年度の取り組みとしましては、従業員意識調査を実施いたしました。その結果をもとに社員の要望や改善が求められる課題を捉え、継続的に従業員の満足度を向上させる施策に取り組んでまいります。さらに、今後は従業員エンゲージメントレベルの向上を目指した活動を行います。
また、働き方においては、男性従業員の育児休業取得率を30%以上とすることを目標としての取り組みを行いました。具体的施策としては、企業として有給育休の制度を設け、育休取得の推進活動を実施いたしました。その結果、当社の本年度の男性従業員の育児休業取得率は目標を達成いたしました。(当社:37.0%)
今後さらに、育休取得を浸透させる活動や従業員の就業環境に繋がる改善を継続的に実施いたします。また、子育てサポート企業として「くるみん認定」の取得を目指し、策定した行動計画に基づく活動を現在実施しております。
② 指標及び目標
当社グループでは、従業員一人ひとりが高い専門性とスキルを習得・発揮し、多様な人材がそれぞれのキャリアを自律的に構築しながら、高い付加価値を創出できる仕組みを整備することを目標とし、フレックスタイム制度やテレワーク体制の整備などワークライフバランス支援の強化を図るとともに、人事制度の見直しを進めております。
なお、多様性の推進については、管理職に占める女性の割合(2024年3月期実績は当社:2.5%、国内連結子会社:1.1%、海外連結子会社:21.6%)を中長期的に引き上げることを目標としております。
当社グループの財政状態、経営成績及び株価等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、自動車、鉄鋼、金属・非鉄金属、建築・建材、電子部品等の様々な業界へ表面処理に関する製品及びサービスを提供しており、特定の取引先数社に集中することはありませんが、日本、アジア、欧米と様々な地域で事業活動を展開しており、各国・地域における景気低迷等及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
薬品事業においては、主として日本及びアジアにおいて、様々な業界に金属表面処理薬剤を提供しておりますが、主に自動車・鉄鋼業界等の需要状況に影響を受けます。
装置事業においては、主として日本及びアジアにおいて、自動車生産及び一般産業向けに、前処理・塗装装置プラントの設計・販売等を行っておりますが、装置事業の売上は、顧客の設備投資需要に影響を受け、年度により、業績が大きく変動する可能性があります。
加工事業においては、日本及びアジア並びに北米において、防錆加工と熱処理加工を中心に行っておりますが、主に自動車、金属、機械業界等の需要状況に影響を受けます。
また、当連結会計年度における世界経済は、社会経済活動の正常化が進む中で、個人消費や企業の生産活動に持ち直しの動きが見られ、当社グループの業績も緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、原材料・エネルギー価格の高止まりや為替の変動幅が大きい状況は続いており、また、各国の金融引き締め政策の継続やインフレの進行、中国の不動産市況低迷など景気減速懸念もあり、先行きは不透明な状況が続いております。当社グループでは、急激な需要変動にも対応できるように、柔軟な生産体制の整備に努めておりますが、国内外の経済情勢の変化により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの事業は、競合他社との差別化が重要なファクターであり、クロムフリー薬剤等の環境対応型薬剤の開発、様々な用途開発、顧客との共同研究等を推進し、差別化技術の開発及び将来を見据えた研究開発に取り組んでおります。
表面改質のスペシャリストとして、時代を先取りした迅速で柔軟な研究開発により、他社技術と差別化できる技術の開発、新規市場の開拓等を進めておりますが、新技術のトレンドや顧客ニーズの予測及び対応を誤り、競合他社が当社を上回る高品質で安価な製品又はサービスを実現した場合、収益性やシェアが低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、表面処理薬剤メーカーとして、りん酸をはじめとする多くの原材料を国内及び海外から調達しております。原材料を複数のサプライヤーから購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めておりますが、特定の地域からの輸入に頼る原料をはじめ、高度な技術により合成された化合物等、供給元が限定されている原料もあります。
サプライチェーンにおけるBCP対応の推進に取り組んでおりますが、サプライヤーの被災、事故、倒産等による原材料の供給中断、需要の急増による供給不足等、予期せぬ事象が発生した場合、製品の安定的な製造・販売体制に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、ISO9001、IATF16949等認証取得を積極的に進める等、各拠点において、厳格な管理基準に従って製品製造及び受託加工等を行っております。
お客様に高品質な製品・サービスをタイムリーに提供できるように、要求された品質レベルを確保すべく、工程管理、監査、教育の強化等、未然防止活動の徹底を行っておりますが、全ての製品等について不良又は不具合等が発生しないという保証はありません。製造・輸送・保管等の過程における予期せぬトラブルによって、不良又は不具合等が発生した場合、顧客企業への補償や対策費用等の発生に加え、市場における信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、製品の製造及びサービスを提供するに際して、その全てのプロセスに万全の安全衛生管理体制を構築することを目標としています。具体的には、労働安全衛生法をはじめとした関連法規制の遵守徹底とともに、企業としての安全配慮義務の履行と、それらに基づく安全衛生活動を実施しております。その活動事例としては、各事業場における巡視や関連法規制の遵守状況の監査、計画的な安全衛生教育等があります。
しかしながら、万が一、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(6) 環境保全
当社グループは、表面処理薬剤の製造及び加工処理等サービス提供のプロセスにおいて、大気、水質、土壌等の汚染防止や有害物質、廃棄物の管理等、環境保全に関連する法規制は全てこれを遵守しております。また環境保全に関連するものとしてはISO14001(環境ISO)の認証維持及びその要求事項に沿った活動も推進しております。
ただし、不測の事態により事業活動に起因する環境汚染等が発生した場合には、そのことによる経済的な損失や社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(7) 公的規制等
当社グループ及び当社グループの顧客企業が事業を行うにあたり、化学物質等の取り扱いにおける国内法規、製品や原料の輸出入に関わる国内外の法規、更にREACH規則、TSCA、RoHS規制等の化学物質に係る様々な海外の法規を遵守する必要があります。
事業の継続及び機会の確保のため、こうした法規に関する情報収集と対策を積極的に進めておりますが、これらの法令等の改正や強化がされた場合には、事業活動が制限される、あるいは事業機会を逸し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、長年にわたって蓄積した技術を活用し、他社技術と差別化できる技術の開発と他社の知的財産権侵害の回避を行っておりますが、当社グループが独自に開発した技術の一部は、知的財産権による保護が不可能な場合又は限定的にしか保護されない場合があります。
当社グループは、保有する知的財産権の適切な保護及びノウハウ等の管理に努めていますが、当社グループの技術の模倣等によって第三者が類似した製品を製造することやコスト競争力のある製品を開発することを効果的に防止できない可能性があり、これらによって当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、日本、アジア、欧米と様々な国と地域で事業活動を行っており、将来の成長には、新製品の開発力を高めるための研究、技術及びノウハウの伝承、事業のグローバル展開が不可欠であり、これらに携わる人材の確保が重要な経営課題のひとつです。
「多様な価値観を尊重し、“力”に変えられる企業文化の醸成」をマテリアリティに掲げ、多様な国籍の人材採用や経験者の通年採用を実施しております。また、将来の経営幹部等の確保と育成にも力を入れております。しかしながら、人材獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、当社グループの将来の成長に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、りん酸他の金属塩類、無機物、有機物、その他用途別の様々な原材料を仕入れており、これらの原材料の仕入価格は、国際的情勢による需給バランス、為替レート、ロンドン金属取引所(LME:London Metal Exchange)の相場等の影響を受けて変動します。
原材料価格の上昇局面においては、原価低減策によるコスト引き下げと製品価格への転嫁等を図ることにより、適正な利益の確保に努めております。原材料の種類は非常に多く、商社等を経由した輸入も多いため、原材料価格の変動が業績に与える影響を画一的に予想することはできませんが、急激な原材料価格の高騰は、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(11) 事業投資等
当社グループは、「表面改質のスペシャリストとして真のグローバルカンパニーを目指す!」を経営ビジョンとして、持続的成長のために、グローバルに積極的な設備投資やM&Aを進めております。
重要な投資案件については、取締役会において、事業性を評価の上、決定するとともに、定期的に事業の進捗状況を確認し、必要に応じて、今後の方向性や業績改善の為の対策を検討していますが、想定外の市場環境の悪化等により、利益計画を大幅に下回った場合、設備投資により計上した有形固定資産やM&Aにより計上したのれん等の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、日本、アジア、欧米と様々な国と地域で事業活動を行っており、海外に多数の在外子会社を有しております。在外子会社は、原則として、その会社が属する国又は地域の通貨によって財務諸表を作成しており、連結財務諸表の作成過程において、資産及び負債は連結決算日の直物為替相場により円換算し、収益及び費用は期中平均相場により円換算されております。
在外子会社は、米ドル圏だけでなく、アジア各国等様々な通貨圏で事業活動を行っており、為替換算レートの変動による影響を画一的に予測することはできませんが、一般的には、円高の場合は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円安の場合は好影響を及ぼします。
当社グループは、海外市場での事業拡大を成長戦略の一つとしていますが、海外では、政治不安、貿易・外貨規制、法令・税制の変更、治安悪化、紛争テロ、戦争、宗教や文化の相違等、様々な政治的、経済的又は法的な制約を伴う可能性があります。
リスク管理の強化やカントリーリスクの情報収集等に努めておりますが、予期せぬ事象の発生等により、事業活動が制限を受けたり、法令等に適合するための費用が増加したりする等、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、地震や台風等大規模な自然災害、火災等の事故、感染症によるパンデミックの発生時の安全確保と生産活動の中断による損害を最小限に抑えるため、定期的な製造設備の防災点検や防災訓練の他、事業継続計画(BCP)を策定して、早期に事業復旧できるように準備を行っております。
しかしながら、予期せぬ大規模な自然災害等が発生した場合には、人的、物的損害による事業活動の停止等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化が進む中で、個人消費や企業の生産活動に持ち直しの動きが見られ、緩やかな回復基調で推移しましたが、原材料・エネルギー価格の高止まりや為替の変動幅が大きい状況は続いており、依然として先行きは不透明な状況となっております。また、世界経済におきましても、米国で個人消費が底堅く推移するなど緩やかに持ち直す動きとなりましたが、各国の金融引き締め政策の継続やインフレの進行、中国の不動産不況低迷など景気減速懸念もあり、先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループの主要な供給先であります自動車業界では、半導体や部品の供給不足の解消を受け、世界的に生産台数の回復傾向が見られ、国内においても前年を上回る水準で推移しました。もう一つの柱であります鉄鋼業界においては、自動車向け鋼材需要は回復傾向となりましたが、建設向けは資材高騰や工期の遅れ等で低調となり、国内の粗鋼生産量は前年よりやや減少し、世界では横ばい推移となりました。
このような状況のなか、当社グループでは、昨年度よりスタートさせた第4次中期経営計画の下、全事業セグメントにおいて、既存事業の深耕、新規分野の開拓、グローバル事業の拡大に加えて、環境問題などの社会課題解決に積極的に取り組むなど、長期的な視点で企業価値の向上に取り組んでおります。また、お客様から信頼をいただける製品・サービスを提供するために、グループ全体の品質管理と品質保証の強化にも努めております。
この結果、当連結会計年度の連結業績は次のとおりとなりました。
売上高は1,250億85百万円(前年同期比5.0%増)となりました。事業の種類別セグメント毎の売上高は、前年同期に比べ薬品事業が6.3%、装置事業が14.0%、加工事業が0.2%、その他が4.1%の増収となりました。また、地域別セグメントは、国内が6.6%、アジアが2.0%、欧米が7.1%の増収となりました。
営業利益は152億58百万円(前年同期比20.4%増)、経常利益は199億45百万円(前年同期比20.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は131億94百万円(前年同期比32.3%増)となりました。なお、経常利益は四半期開示が始まった2004年3月期から過去3番目、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高の水準となりました。
海外業績の換算による損益計算書に与える影響額は、売上高で29億4百万円程度の増収、営業利益で3億8百万円程度の増益となっております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
売上高は562億69百万円(前年同期比6.3%増)となり、営業利益は100億62百万円(前年同期比31.1%増)となりました。当事業部門は、あらゆる産業分野における素材の洗浄、防錆、塗装下地、潤滑、意匠などを目的として表面処理剤の製造・販売と、これに伴う最新のノウハウ、技術サポートを提供しております。国内では主要顧客の生産回復に伴い、緩やかな回復基調で推移しました。また、国内外での販売価格上昇やインド、インドネシアでの販売拡大も寄与し、薬品事業全体では売上高は増収となりました。利益面では、原材料価格は高値圏での推移が継続しておりますが、売上高の増加により営業利益は増益となりました。
装置事業
売上高は191億49百万円(前年同期比14.0%増)となり、営業利益は5億27百万円(前年同期は8百万円の営業損失)となりました。当事業部門は、輸送機器業界を中心に前処理設備、塗装設備及び粉体塗装設備などを製造・販売しております。前期計上した大型案件の影響がなくなったタイなど東南アジアでは販売が伸び悩みましたが、企業の設備投資が持ち直している国内や北米では回復基調となり、装置事業全体では売上高は増収となり、利益面では前期の営業損失から営業利益へと転換しました。
売上高は468億22百万円(前年同期比0.2%増)となり、営業利益は57億24百万円(前年同期比5.9%減)となりました。当事業部門は、潤滑性・高密着性などの機能性を付与する「防錆加工」、金属の強度や耐久性を高める「熱処理加工」、素材表面に薄膜金属を被膜することで高耐食性、耐摩耗性などを付与できる「めっき処理」などの表面処理の加工サービスを提供しております。国内では主要取引先である自動車部品メーカーの生産回復に伴い、期前半は販売が回復基調で推移しましたが、期後半は伸び悩み横ばい推移となりました。海外ではメキシコ、インドネシア、インドで回復したほか、為替レートが円安に進んだこと等から、加工事業全体では売上高は増収となりました。一方で、中国、タイ、台湾では販売が伸び悩んだことに加えて、国内外ともに原材料費・光熱費の上昇により収益性が低下し、営業利益は減益となりました。
売上高は28億43百万円(前年同期比4.1%増)となり、営業利益は90百万円(前年同期比20.2%減)となりました。当事業部門は、主にビルメンテナンス事業、太陽光発電事業を営んでいるほか、新規事業として医療機器事業にも取り組んでおります。ビルメンテナンス事業を中心に販売が順調に推移したため売上高は増収となりました。一方で、新規事業の販売費が増加した影響等により営業利益は減益となりました。
第4次グループ中期経営計画の進捗状況は、次の通りです。
第4次グループ中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の2年目である2024年3月期は、社会経済活動の正常化が進む中で、個人消費や企業の生産活動に持ち直しの動きが見られ、当社グループの業績も、緩やかに売上が回復したほか、円安や値上げ効果などもあり、大幅に増収増益となりました。しかしながら、原材料・エネルギー価格の高止まりや為替の変動幅が大きい状況は続いていることから、適正なマージンを確保するための値上げ活動の推進や生産性の向上を、継続的に推進してまいります。
また、国内加工事業の中心的な子会社であるパーカー加工株式会社を株式交換により完全子会社化することを決定しており(株式交換の効力発生日は2024年7月1日予定)、グループ・シナジーの最大化に向けて、グループ再編も含めた事業構造改革を推進してまいります。
更に、「Vision2030」の実現に向けた経営基盤作りとして、新規分野開拓のための研究開発体制の強化、グループ最適な生産体制の構築、グローバル人材の育成やダイバーシティーの推進などに取り組んでまいります。
なお、ROEにつきましても、目標達成に向けて、利益率の向上への取り組みを推進するほか、機動的な自己株式の取得など適切なバランスシート管理を実施することで、自己資本の拡充とROE向上の両立を目指してまいります。
(単位:百万円)
当社グループは主として販売計画に基づいた見込生産及び短納期での受注生産によっております。そのため、生産実績及び受注実績は販売実績と重要な相違がないため記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 財政状態
(資産の部)
資産合計は、前連結会計年度末と比較し332億85百万円増加し2,698億19百万円となりました。流動資産は179億35百万円増加いたしました。主な要因は、現金及び預金が137億95百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が41億86百万円それぞれ増加した一方で、棚卸資産が4億94百万円減少いたしました。固定資産は153億50百万円増加いたしました。主な要因は、有形固定資産が35億11百万円、投資その他の資産が117億47百万円それぞれ増加いたしました。
(負債の部)
負債合計は、前連結会計年度末と比較し97億92百万円増加し499億33百万円となりました。流動負債は80億17百万円増加いたしました。主な要因は、支払手形及び買掛金が21億26百万円、契約負債が17億93百万円、未払法人税等が17億5百万円それぞれ増加いたしました。固定負債は17億74百万円増加いたしました。主な要因は、繰延税金負債が35億81百万円増加した一方で、退職給付に係る負債が11億80百万円、長期借入金が5億円それぞれ減少いたしました。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比較し234億93百万円増加し2,198億85百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が85億72百万円、その他有価証券評価差額金が45億14百万円、退職給付に係る調整累計額が40億34百万円、為替換算調整勘定が36億87百万円それぞれ増加いたしました。
以上の結果、自己資本比率は69.4%と前連結会計年度末と比較し0.9ポイント減少するとともに、1株当たり純資産は1,623円3銭と181円5銭増加いたしました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し76億55百万円増加し753億23百万円となりました。流動資産は71億82百万円増加し597億54百万円となりました。有形固定資産は4億51百万円増加し147億59百万円となりました。無形固定資産は5百万円増加し5億8百万円となりました。投資その他の資産は15百万円増加し3億2百万円となりました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し47億49百万円増加し240億56百万円となりました。流動資産は43億23百万円増加し214億13百万円となりました。有形固定資産は5億14百万円増加し15億61百万円となりました。無形固定資産は19百万円減少し31百万円となりました。投資その他の資産は68百万円減少し10億50百万円となりました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し28億69百万円増加し834億14百万円となりました。流動資産は16億1百万円増加し440億47百万円となりました。有形固定資産は3億8百万円増加し328億99百万円となりました。無形固定資産は1億34百万円増加し16億55百万円となりました。投資その他の資産は8億25百万円増加し48億11百万円となりました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し1億4百万円増加し18億63百万円となりました。流動資産は1億36百万円増加し12億69百万円となりました。有形固定資産は41百万円減少し4億93百万円となりました。無形固定資産は0百万円減少し0百万円となりました。投資その他の資産は9百万円増加し1億円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物は、当連結会計年度の期首と比較し115億62万円増加し、696億61百万円となりました。なお、当連結会計年度は、現金及び現金同等物に係る換算差額により13億50百万円増加しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と増減の要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ61億67百万円収入が増加し227億76百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益209億35百万円、減価償却費62億44百万円、法人税等の支払額36億68百万円、売上債権及び契約資産の増加額34億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ65億15百万円支出が減少し57億84百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出74億22百万円、定期預金の預入による支出65億79百万円、定期預金の払戻による収入57億80百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ23億79百万円支出が減少し67億78百万円の支出となりました。これは主に、配当金の支払額47億31百万円、非支配株主への配当金の支払額12億60百万円によるものです。
(キャッシュ・フロー関連指標)
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、加工処理費用、商品の仕入、販売費及び一般管理費、法人税等の支払、非支配株主への支払いを含めた配当金の支払、運転資金及び設備投資資金等であります。
当連結会計年度は、有形固定資産の取得74億22百万円、配当金の支払47億31百万円、法人税等の支払36億68百万円等の資金需要がありました。また、現金及び預金同等物の期末残高は、期首に比べ115億62百万円増加いたしました。有利子負債は当連結会計年度は2億81百万円減少しております。
基本的に運転資金と設備投資資金については、原則として自己資金を利用しておりますが、一部では借入金によるものがあります。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その適用においては、過去の実績等を勘案して将来の見積りを計上することが必要とされる場合があります。特に連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要とする項目は以下のとおりであります。
①工事請負契約に係る収益認識
工事請負契約について、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。進捗度は、当連結会計年度末までに発生した工事原価を工事原価総額の見積りと比較することにより測定しております。工事原価総額は、必要となる資材や技術員、完成するまでの期間等に基づいて算定いたします。工事契約の着手後に判明する事実の存在、現場の状況の変化、市場環境の変化によって作業内容等が変更される結果、進捗度の測定の前提となる工事原価総額の見積りに影響を与え、工事損益に影響を及ぼす可能性があります。
②貸倒引当金
売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、債権の相手先の財政状態が悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③有形固定資産
償却資産に関しては、一般に公正妥当と認められる減価償却方法に基づき実施しております。また、固定資産の減損に係る会計基準に従い、減損損失の認識と測定を実施しておりますが、資産の市場価格の見積りや将来キャッシュ・フローの見積りは、合理的な仮定や予測に基づいて算出するため、当社グループによる見積りより悪化した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
④投資有価証券
当社グループは金融機関及び販売、仕入に係る取引先等の株式を保有しております。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しております。なお、将来の市況悪化や投資先の業績不振等、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、期待収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率等が含まれます。当社及び一部の連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は安全性の高い長期債券をもとに算出しています。期待収益率は、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を勘案し計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合には、将来の費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
(1) 技術導入契約
(2) 代理店契約
(3) 資本・業務提携
(4)簡易株式交換によるパーカー加工株式会社の完全子会社化
当社は、2024年2月7日開催の取締役会において、当社を株式交換完全親会社とし、当社の連結子会社であるパーカー加工株式会社(以下、「パーカー加工」という。)を株式交換完全子会社とする株式交換(以下、「本株式交換」という。)を行うことを決議し、同日付でパーカー加工との間で株式交換契約(以下、「本株式交換契約」という。)を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは技術立社として、「金属表面処理技術の経験を活かして自動車・鉄鋼業等を中心に産業に貢献すべく、あらゆる素材の表面改質の分野で市場における技術的な優位性を維持し、世界のリーダーたる」ことを基本方針に掲げ、国内外関係会社の技術開発部門が連携し、表面改質技術を通じて、新たな価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けた表面処理技術の開発を進め、その地位を確固たるものにするために日々努力しております。特に近年では、金属材料表面に新たな機能を付与するだけではなく、脱炭素社会の実現に向け、金属材料をより長寿命化するための表面改質の開発や、環境負荷の低い表面処理プロセスの開発にも積極的に取り組んでおります。
当社グループの事業領域は、表面処理薬剤の製造販売を中心とする薬品事業領域、防錆加工及び熱処理加工を行う加工事業領域、表面処理及び塗装に関連する設備機器の製造販売を行う装置事業領域の3つに大別されます。これら事業領域を網羅した基礎的な研究開発は総合技術研究所(日本)が中心となり、国内外の開発拠点と緊密に連携しながら推進しております。国内に対しては東日本地区・西日本地区の各技術センター、加工技術開発センター、油性製品技術センターが、海外に対しては海外技術センター(日本)、パーカー表面処理技術(上海)(中国)、パーカー・サーフェス・テクノロジー・アジアパシフィック㈱(タイ)が、顧客により近い立場を生かして応用開発・実用化検討を行っております。このように、市場ニーズの急激な変化に対応するために、シーズ開発から製品開発までを一貫して行うと共に、グローバルな製品展開を視野に入れ、迅速で柔軟な研究開発体制を構築しております。また、自社の持つコア技術を軸とした新技術創生活動にも力を入れております。さらに、製品の製造に関しては、多様化する製品群に対し安定した品質を保証できる製造技術の開発を製造技術センターにおいて推進しております。
主な研究開発の概要及び成果は、以下のとおりです。
薬品事業領域では、従来から対象としてきた鉄鋼材料・自動車車体・塑性加工パーツ・非鉄材料といった主な分野で、環境課題にも積極的に取り組んでおり、性能とコストを両立させ、環境に配慮した新しい表面処理技術・材料の開発を進めております。自動車車体の塗装下地分野では、りん酸亜鉛処理に替わる環境負荷の少ない新規化成処理のグローバル展開を進めており、次世代に向けた応用開発も同時並行で行っております。同じくりん酸亜鉛処理に頼っていた塑性加工用潤滑処理についても、環境対応型の一液型潤滑処理の市場が海外展開を含めて進んでおります。非鉄材料分野では、エアコン用熱交換器に対して新たな機能を付与した皮膜処理剤の開発を進め、家電用エアコンへの市場化を目指しております。ライフサイエンス分野においては、表面改質を通じて人びとの生活と健康に貢献すべく、新規表面改質技術の市場展開を図っています。また、絶縁、断熱、撥水、抗菌など、新たな機能を付与するための表面処理技術を、電子部品、日用品、医療機器などの新規市場分野に積極的に適用しており、今後、更なる市場拡大が期待できます。
装置事業領域では、昨年11月に千葉県船橋市に新たに「技術開発センター」をオープン致しました。本センターでは、新たな塗装技術の開発を行うとともに、新たな溶剤塗料集塵機構を備えたドライキューブブース、近接塗装装置を始め、リニューアルした粉体色替えブースシステム、多目的乾燥炉や洗浄装置を設置し、ユーザー様の要望に合わせた試験を随時実施致しております。また、当実験装置は当社のIoTシステム(PARKER LEAPS)とすべて連携しており、実際に現場にお立会いいただかなくても、塗装テストの状況を遠隔地からリアルタイムに確認が可能な、スマートラボを実現しております。
加工事業領域では、顧客とともに製品の特性を観察し、求められる性能を提供できるよう取り組んでおります。例えば、表面処理が摩擦や摩耗などのトライボロジー特性にどのような影響を与えるか基礎的な評価を繰り返して知見を蓄積し、提案の一助としております。加工事業においては自社製品の取扱いが基本となりますが、生産技術的な開発にも注力しております。従来、主な要求性能であった耐食性や表面硬化においては、主に化成処理や塗装、軟窒化処理などで生産技術的な知見を積み重ねてきましたが、近年では接着性や絶縁性など、従来にない新たな機能を付与する表面処理が求められてきております。これらの分野では、これまであまり扱わなかった複雑形状の部品や微細部品に対する表面処理、製品の特定部位のみにコーティングする選択的表面処理など、顧客から求められる仕様や機能が多岐にわたっており、これらに対応するための生産技術的な開発にも取り組んでおります。さらに、既存技術の複合化による性能向上や、製品使用時の管理法の見直しによる品質の更なる安定化、表面処理工程の効率化による消費エネルギー量の抑制や、廃棄物の削減などにも取り組んでおります。表面処理における品質と環境保護を高い水準で両立させることで、脱炭素社会の実現に貢献することを、加工事業においても目指しております。
当連結会計年度では、総研究開発費として