第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは以下4項目を経営理念とし、東邦亜鉛グループの経営を行っております。

① “顧客”を満足させる良質の製品・サービスを提供する。

② “株主”の期待に応える業績をあげ、企業価値の増大を図る。

③ “従業員”の生活を向上させ、働き甲斐のある会社にする。

④ “地域”の一員として認められ、地域にとって存在価値のある会社を目指す。

これらの経営理念を土台に、当社グループのサステナビリティ基本方針でもある「金属事業で培った技術・開発力をベースに、ニッチ分野での輝きと拡大に挑戦を続ける会社」の実現に向かって、グループ一丸となって取り組んでまいります。

 

(2) 経営環境

2023年度における当社グループを取り巻く経営環境は、具体的には「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」の《経営環境》に記載したとおりであります。米国経済は金融引き締めのなかで底堅い雇用と所得環境により堅調に推移しましたが、日本経済は物価高・海外経済減速や円安傾向により景気回復に一服感が見られ、欧州経済は金融引き締め政策、また、中国経済は賃金上昇による輸出競争力の低下や不動産市場の低迷が影響するなど、世界経済は減速傾向にあり、ウクライナ情勢やイスラエル・ハマス紛争による中東情勢など国際情勢が不安定化し、エネルギー価格高騰懸念など、今後の経済見通しに不確実性が高まる状況となりました。こうした世界経済の減速感を反映し、当社の主力製品である亜鉛と鉛の金属相場は、年度末に向けて下落傾向が続きました。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社がこれまで主力とする製錬事業においては、特に亜鉛製錬について、市況変動の大きさや価格転嫁が困難な事業環境の下、固定費抑制など徹底した操業コスト引き下げ等の努力を続けてきましたが、電力費やコークス等の副原料費の高騰により、高コストな事業構造となり、大きく収支が悪化しています。

また、製錬事業に対する原料の長期安定的調達と自山鉱比率の引上げを目的として、豪州CBH Resources Ltd.による鉱山事業に進出しましたが、市況変動や鉱石品位による損益振幅が大きく、操業効率の改善施策等を講じてきたものの、長年に渡り厳しい収支が続いてきました。

このような厳しい事業環境に対処するため、当社といたしましては、2023年11月に2030年ビジョンを策定し、亜鉛製錬については、リサイクル原料比率の引き上げにより収支を改善させること、資源事業については、一時的に多額の損失計上を強いられるものの、現在の当社の財務体力の観点から、収益変動の激しい鉱山事業からの撤退を基本方針として事業ポートフォリオを再構築すること、また、成長が期待される電子部材・機能材料事業の業態拡大を目指すことといたしました。

しかしながら、当社を取り巻く経営環境は、ウクライナや中東情勢等の地政学リスクの高まりによる電力費とエネルギー価格の上昇、コロナ後の景気回復による大幅なインフレ進行に伴う原材料費や人件費の上昇、循環型社会や脱炭素を目指す社会的要請の高まりなど、想定を超えて大きく変化しており、今後もその厳しさを増すことが見込まれます。また、当社の財務基盤を回復させるためには、早期に当社の収益構造を改善させることが急務となっております。

このような危機感から、今般、2030年ビジョンで目指した事業再生施策を大幅に見直し、外部専門家の支援も得ながら、ステークホルダーの皆様から信任いただける抜本的な当社事業再生計画を策定し断行することといたしました。現在、同計画詳細は策定の段階にありますが、骨子は次のとおりであります。

 

① 当社が目指す姿

変化に挑戦する企業文化・意識改革を推し進め、当社の事業ポートフォリオを「循環型社会」「脱炭素」「環境問題対応の技術力」及び「顧客に認められる開発力」の観点から再構築し、新しい東邦亜鉛に向けて変革、成長する。

 

② 主要事業の見直し

高コスト事業構造である亜鉛製錬事業は、現在取り組んでいるリサイクル原料比率の引き上げによる収支改善に留まらず、今後の事業のあり方をゼロベースで見直す。また、資源事業は、当社の財務体力の観点から継続することは難しく、保有鉱山の閉山や売却などにより早期に事業撤退する。

 

③ 新しい東邦亜鉛の柱となる基盤事業と成長事業

抜本的な事業ポートフォリオの再編を行い、新しい東邦亜鉛の柱として、国内トップシェアである鉛事業(リサイクル原料比率引き上げによる生産増強と銀等の副産物回収強化)、国内シェアトップクラスの亜鉛リサイクル事業(電炉ダストを原料とする酸化亜鉛の生産効率向上)から成る基盤事業に加え、世界トップシェアの機能材料事業(電解鉄)と、市場拡大・新規案件獲得が期待される電子部材事業から成る成長事業に対して、経営資源を重点的にシフトし、成長と企業価値の向上を目指す。

 

④ 強固な経営基盤

新しい東邦亜鉛へと成長するために、徹底的なコスト削減、効率的資金運用、保有遊休資産売却による収益性改善、事業環境の変化に対応し的確な経営判断を可能とする組織体制の再整備とガバナンス体制の強化を行う。あわせて、強固な財務基盤への早期回復を目指し、資本性資金の導入も検討する。

 

本事業再生計画は現在鋭意策定中であります。外部環境の変化に対応して持続的成長を遂げる新生東邦亜鉛の道筋を、財務基盤の回復シナリオとともに、まとまり次第、追って公表いたします。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループでは、経営理念とグループ行動指針の価値観に基づくサステナビリティ基本方針に則り、取り組みを進めてまいります。

東邦亜鉛グループのサステナビリティ基本方針

「金属事業で培った技術・開発力をベースに、ニッチ分野での輝きと拡大に挑戦を続ける会社」を目指し、

① 地球環境保全に積極的に取り組み、社会・経済活動に貢献する

② 企業価値を高め、全てのステークホルダーに報いる

③ 職場の安全・安心を確保し、社員の生活向上を図れる          会社となる。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社は、取締役会の監督の下でサステナビリティ経営の推進体制を構築し、経営企画部を事務局として、サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理の強化を図っております。サステナビリティ推進会議では、半期に1回、サステナビリティ課題について各委員会のモニタリングを行うとともに経営幹部による討議や情報共有を通じた審議を行い、リスク及び機会を識別・評価・管理しております。この結果に基づき代表取締役社長が最高責任者として意思決定を行います。審議結果は、必要に応じて取締役会に報告しております。

 

[サステナビリティ推進体制]


 

(2) 重要なサステナビリティ項目

当社グループは、サステナビリティを巡る課題への適切な対応を経営の重要なテーマと考え、社外取締役及び社外有識者の意見を参考にマテリアリティ(重要課題)を特定し、取締役会にて決議しております。特定したマテリアリティは「気候変動」「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」「人権尊重/地域との関連性」「人材育成」「コーポレートガバナンス」「健全な財務基盤」の6項目であります。これらマテリアリティへの対応をより具体化させるとともに、取締役会において重要度の高いテーマについて議論を行い、当社グループの長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいく方針としております。

以降「気候変動」「人権尊重/地域との関連性」「人材育成」の取り組みに関して報告いたします。

なお、残る3つのマテリアリティについては今後KPIを設定するなど、管理手法の高度化を進めてまいります。

 

① 気候変動
1)当社の認識

当社では脱炭素社会の実現に向けて、自社の事業活動に伴うGHG排出量の削減や将来の気候変動が自社に与えるリスクや機会を把握し適切に対処していくことが企業を存続させ、中長期的な企業価値を高めていくためには不可欠であると認識しております。

 

2)ガバナンス

気候変動対策の最高責任者は、代表取締役社長です。

気候変動によるリスクや機会が事業に大きな影響を及ぼすと判断された場合は、取締役会へ報告します。

取締役会では報告を受けた場合、審議を通じて対策指示することで東邦亜鉛の気候変動対策が適切に推進されるよう監督します。

また、2022年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、TCFDのフレームワークに沿った情報開示を推進しております。

 

3)戦略

1.5℃及び4℃シナリオを設定し、シナリオ分析を実施しました。

リスクとして、主にカーボンプライシング、エネルギー価格の変動等を特定し、対策を検討しました。

機会として、主にリサイクル需要の増加、ZEV化の進行、世界的な非鉄金属需要の増加等を特定し、対策を検討しました。今後、各要素の定量的な財務影響評価と事業戦略への取り込みを進めてまいります。

詳細については、以下の「気候変動リスク及び機会に関するシナリオ分析の実施について」をご参照下さい。

https://www.toho-zinc.co.jp/news/pdf/news_20220513_3.pdf

 

4)リスク管理

気候変動対策委員会において半期に一度リスクモニタリング等を行い、重要な気候変動対策に関する報告・提案事項については、サステナビリティ推進会議に付議され経営幹部による討議や情報共有を通じて審議が行われます。最終的には代表取締役社長が最高責任者として意思決定を行います。

 

5)指標及び目標

気候変動緩和のための指標として、温室効果ガス(GHG)削減目標を策定しております。

Scope1及びScope2において、2013年度対比でGHG排出量を2030年度までに38%削減、2050年度にカーボンニュートラルを達成することを目標として設定しております。2023年度のGHG排出状況(※)は、430千t-CO2(2013年度対比30.8%削減)となります。

※ 算定対象範囲は国内・海外を含めた連結子会社とし、国内は連結子会社の内、影響度の観点から「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」の定期報告対象となっている子会社を対象としております。

Scope3については、所属する業界団体のカーボンフットプリント算定方法ガイドラインの作成に関する研究会に参加、取引先との情報共有を進め算定範囲の拡大及び精度向上に向けた検討、を行ってまいります。

社内炭素税については、2022年度より導入しております。2023年3月には世界的な炭素規制強化の動きや対策コストの増加を考慮した再評価を実施し取締役会にて決議を行い、現在は10,000円/t-CO2として運用中です。

 

② 人権尊重/地域との関連性、人材育成(人的資本及び多様性に関わるマテリアリティ)
1)当社の認識

当社は、市場の多様なニーズに的確に対応し、新規ビジネスや、付加価値の創造をしながら、企業を存続させその中長期的な企業価値を高めていくためには、「組織の多様性、つまり中核人材の多様性」が不可欠であると考えております。

 

2)戦略

中核人材の登用においては、個人の能力・適性により評価・判断を行い、その属性に左右されないことを徹底しながら、様々な職歴、属性、価値観を持つ人材を登用してまいります。

中核人材における多様性の確保のための人材育成と社内環境整備に対しては、特に女性の職場での積極的な活躍を後押しすることをはじめとして、様々な属性の人材が働きやすい、そして働きがいのある職場環境を確保できるよう、育児・介護に関連する休暇や在宅勤務等、柔軟な働き方を可能とする社内制度を整備・運用しております。

さらには管理職をはじめとする職制に対し、育児や介護、働き方に関するセミナーを実施するなど、多様性を理解し受け入れるための啓蒙・教育活動を行っております。

 

3)指標及び目標

女性比率については、社員全体での女性比率(現状12%)も考慮しつつ、この比率に近づけるよう採用・登用を進めており、5名の女性管理職を登用しております。

外国人に関しては、1名を管理職に登用しております。今後も、より深く国際的な視野を醸成・体得していると考えられる人材として、外国人に加え海外勤務経験者についても、社内外からの採用・登用を進め、比率増を図ってまいります。

[属性別管理職比率目標]

女性 :現状6% ⇒ 2026年 8%

外国人及び海外勤務経験者 :現状14% ⇒ 2026年 15%

中途採用者 :現状21% ⇒ 2026年 25%

(注)上記については当社単体の数値目標であります。連結会社は、鉛・銀製品の受託製錬や、運輸業等、業態が様々であることから、連結グループ全体での数値目標等設定による人員数のコントロールはせず、安全・衛生、安定的な操業を最優先に、適材を配置することを目標としております。

男性労働者の育児休業取得率は、現在33%ですが啓蒙・教育活動を行うとともに、有給の育児休業日も設定し、子育ての後押しをしてまいります。

なお、現在の労働者の男女の賃金差異(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)は、以下のとおりです。

① 全労働者:66%

② 正規雇用労働者:80%

③ パート・有期労働者:56%

賃金差異の主な要因は、高い職位に任用されている女性の比率がまだ低いことが主な要因であります。加えて、男性比率の高い現場作業者に支給される製錬手当等も差異の一因となっております。

女性社員については特に「職務範囲の拡大等により、職務経験の機会を増やす」ことに取り組み、引き続き、女性社員のより一層の活躍を支援してまいります。

パート・有期労働者に関しては、勤務時間の短い社員の女性比率が高いことが差異の要因であります。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状態に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

(1) 市況関連

① 金属価格

製錬事業の亜鉛及び鉛や銀の原料鉱石価格と製品価格は、LME(ロンドン金属取引所)やその他の国際市場の価格を基準としております。国際市場の価格は、需給バランスや投機筋の思惑、政治や経済の状況などから影響を受けて変動し、価格が予想以上に急激かつ大幅に変動した場合など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 為替相場

亜鉛及び鉛の製錬事業の主原料である鉱石は、海外から輸入しておりますが、その買鉱条件である製錬費(T/C)は米ドル建てとなっていることと、各製品の国内販売価格は米ドル建て価格を円換算したものを基礎としているため、米ドルに対する円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。この関係は豪州で鉱山業を営む連結子会社CBH Resources Ltd.(以下、CBH社)においても同様で、生産物である鉱石価格が米ドル建てであるため、豪ドル安が好影響をもたらします。そのため、為替相場が予想以上に急激かつ大幅に変動した場合など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ エネルギー資源価格

当社の主要製品である亜鉛の製造には多量の電力消費を伴います。また、亜鉛・鉛の製造にはコークスや重油等を多く使用いたします。電力やコークスの価格は原油、LNGや石炭といったエネルギー資源価格に大きく影響を受けるものであり、同価格が大幅に上昇した場合には、製造原価が大きく悪化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

これらのリスクに対し、当社グループは根本的には市況の影響を相対的に受けにくい事業の収益拡大及び安定化を図っていくとともに、市況影響を受けやすい製錬事業・資源事業に多くを依存した当社グループの事業ポートフォリオの見直しが必要であります。また、当座の市況影響に対しては、市況変動のリスクヘッジを目的とした為替予約、商品先渡取引やオプション取引などを用いて対処いたします。エネルギーコスト高に対しては、製法や仕入先の工夫により対処いたします。

 

(2) 安全・安定操業の確保

① 原材料の確保

当社グループの主力事業である製錬事業の主原料である亜鉛及び鉛鉱石の確保は、経営上の重要課題です。亜鉛及び鉛鉱石は、すべてを海外の鉱山から調達しており、世界的な鉱石需給の状況や、鉱山における事故等不測の事態の発生は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。具体的には原料不足による減産による販売機会の喪失や、単位当たり原価の悪化による影響です。これらに対して、当社グループは、ペルー・豪州等の有力鉱山との間で長期買鉱契約を結ぶ等、安定的な原料確保を図っております。さらに、廃バッテリーや製鋼ダスト等のリサイクル原料の利用を増加させる等、鉱石以外の原料の多様化を図ってまいります。

 

② 生産量の確保

当社グループの主力事業である製錬事業や資源事業は市況の影響を受けやすい業態です。市況のコントロールは難しいことから、計画通りの生産を行うことで販売機会を確保することが当社グループの業績には重要です。自然災害(地震や洪水などに加え新型コロナウイルス感染症の拡大といった病気の蔓延を含む)や操業上の事故・トラブルで操業に支障が生じて計画通りの生産が行えない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。具体的には減産による販売機会の喪失や、単位当たり原価の悪化による影響です。これらについては、長期的な計画に沿った予防的設備保守や、安全操業のための各種施策を確実に行ってまいります。

(3) 鉱山開発

当社グループは、主に亜鉛・鉛・銀の原料鉱石の安定確保を目指して、豪州において自社開発鉱山を運営しております。しかしながら、鉱山の開発や運営には埋蔵量や操業状況などに関連して、想定外の採算や投資効率の悪化といった不確実性リスクが不可避であり、経営成績及び財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。具体的には採掘コスト増によるコスト高や減損損失の計上による影響です。

当社連結子会社であるCBH社が運営しているラスプ鉱山については、今後の中長期事業計画を慎重に検討した結果、次期主力となる鉱体開発の経済性は低く、同鉱体開発を前提とする同鉱山の中長期事業計画は事業性を見込めないとの結論に至り、当連結会計年度において、2024年中に同鉱山を閉山することを決定いたしました。これに伴い、ラスプ鉱山の固定資産の大宗について減損損失を計上しております。今後の鉱山開発については、当社グループの財務体力の観点から継続は難しく、現在保有している鉱山については、将来的な追加損失の発生を最小限に抑制することを目指して、閉山あるいは売却により早期に撤退する方針としております。当該方針は、現在策定中の事業再生計画の骨子のひとつであり、本計画の詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。

 

(4) 環境問題

国内外の事業所においては、環境関連法令に基づき、大気、排水、土壌、地下水等の汚染防止に努め、また、国内の管理鉱山については、鉱山保安法に基づき、坑廃水による水質汚濁の防止や堆積場の安全管理等、鉱害防止に努めておりますが、関連法令の改正等によっては、当社グループに新たな費用が発生する可能性があります。また、気候変動対策に対する社会的要請が急速に高まっており、当社ではTCFDフレームワークによる分析を実施し、リスク及び機会の把握に努めています。カーボンニュートラルの達成は気候変動対策の中核となりますが、脱炭素実現に向けた取り組みにより、原材料の調達や製造工程等において、追加的な義務(コスト)や事業形態の変更などの可能性があり、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

なお、非鉄スラグの問題(当社が過去に出荷した非鉄スラグの一部における土壌汚染対策法の土壌環境基準超過及び不適切な使用・混入の問題)につきましては、再発防止のため、業務執行部門から独立した専門部署として「品質保証室」、「環境・安全室」を本社に設置しており、品質保証体制を強化するとともに、今一度、環境保全に対する意識を高め、これに取り組んでまいります。

 

(5) 情報セキュリティについて

当社グループが事業活動を行う上で保有する情報資産について、万一、従業員等による操作上の錯誤や不正アクセスによる紛失や盗難、サイバー攻撃やコンピュータウイルスの感染等による漏洩や改竄、関連法令への不適合などの事態が発生した場合には、当社グループに対する社会的信用の低下、対策費用の発生、生産プロセスの中断や取引の停止等により、当社グループの経営成績及び財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

これらの情報資産を適切に保護・管理することは経営上の重要課題と位置付けており、情報セキュリティ関連規程を制定し、役職員の情報資産の保護に対する認識を高め管理を強化するとともに、社長の直轄下にサステナビリティ推進本部長を委員長とする「情報セキュリティ管理委員会」を設置し、当該委員会においてPDCAサイクルを回すことにより情報セキュリティ管理における運用体制を定期的に見直しさらなる向上に取り組んでおります。

 

(6) 継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、当連結会計年度において、多額の親会社株主に帰属する当期純損失を計上していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。当社グループは当該重要事象を解消するための対応策として、現在、事業再生計画を鋭意策定中であります。本事業再生計画につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。

なお、継続企業の前提に関する詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(継続企業の前提に関する事項)」をご参照ください。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度の連結業績は以下のとおり、売上高は減収、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益ともに減益となりました。

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減(増減率%)

売上高

145,764

130,803

△14,960

(△10)

営業利益又は営業損失(△)

4,049

△690

△4,739

()

経常利益又は経常損失(△)

3,137

△10,727

△13,865

()

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

794

△46,452

△47,247

()

 

 

《経営環境》

当連結会計年度における世界の経済動向につき、米国経済は金融引き締めのなかで底堅い雇用と所得環境により堅調に推移しましたが、日本経済は物価高・海外経済減速や円安傾向により景気回復に一服感が見られ、欧州経済は金融引き締め政策、また、中国経済は賃金上昇による輸出競争力の低下や不動産市場の低迷が影響するなど、世界経済は減速傾向にあり、ウクライナ情勢やイスラエル・ハマス紛争による中東情勢など国際情勢が不安定化し、エネルギー価格高騰懸念など、今後の経済見通しに不確実性が高まる状況となりました。

当社グループを取り巻く事業環境につきましては、当社の主力製品である亜鉛と鉛の金属相場は、世界経済の減速感を反映し、年度末に向けて下落傾向が続きました。

一方、為替相場は、日銀による異次元緩和の修正があったものの、米国の金融引き締め政策に基づく金利引き上げにより年度末に向けて大幅な円安傾向となりました。

販売面では、主力製品の亜鉛は、自動車業界や家電業界向けの亜鉛めっき鋼板需要の伸び悩みの影響を受けて減販、また、鉛も一部自動車メーカーの品質問題による生産台数減少の影響と、東邦契島製錬株式会社の生産量減少により減販となりました。

《売上高》

当社グループにおける当連結会計年度の業績は、製錬事業における亜鉛の相場安や亜鉛、銀製品の減販もあり、売上高は1,308億3百万円前期比149億60百万円(10%)の減収となりました。

《利益》

損益面では、製錬事業は、亜鉛が相場安によるフリーメタル収入減など、鉛・銀も生産減やリサイクル原料の調達価格高などから、前期比9億円の減益となりました。環境・リサイクル事業は、亜鉛の相場安などもあり前期比9億円の減益となりました。また、資源事業は、豪州ラスプ鉱山が粗鉱品位の低下などもあり、前期比26億円の減益になったことに加え、当期より本格的に操業を開始した豪州アブラ鉱山も、立上げ初期段階の不安定な操業による赤字計上と、同鉱山を操業する持分法適用関連会社であるAbra Mining Pty Ltd.(以下、Abra)株式の減損を含んだ持分法による投資損失97億円を計上したこともあり、前期比115億円の減益となりました。

その結果、営業損失は6億90百万円前期比47億39百万円経常損失は107億27百万円前期比138億65百万円の減益となりました。さらに、2024年でのラスプ鉱山の閉山を決定した影響で同鉱山の減損損失218億円を計上したこと、中国関係会社の売却による関連損失40億円を計上したこと、加えて、Abraに対する貸付金及び原料前渡金について貸倒引当金並びに同社債務について債務保証損失引当金をあわせて87億円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は464億52百万円前期比472億47百万円の大幅な減益となりました。

 

 

セグメントの業績は次のとおりであります(以下、各セグメントの売上高には、セグメント間売上高を含みます)。なお、セグメント利益又は損失について、従来は連結損益計算書の営業利益と調整を行っておりましたが、当連結会計年度より経常利益と調整を行うこととしました。

また、前連結会計年度のセグメント情報については、経常利益と調整を行ったセグメント利益により作成したものを記載しております。

 

① 製錬事業部門

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減(増減率%)

売上高

123,488

106,652

△16,835

(△14)

経常利益

2,904

1,963

△941

(△32)

 

 

《亜鉛》

亜鉛は自動車減産等の影響を受け前期比減販となったほか、相場下落の影響が大きく、売上高は前期比21%の減収となりました。

《鉛》

鉛も自動車減産等の影響を受け前期比減販となりましたが、円安の影響で国内販売価格が上昇したこともあり、売上高は前期比7%の増収となりました。

《銀》

銀は円安による国内販売価格の上昇もありましたが、減販の影響が大きく、売上高は前期比10%の減収となりました。

 

以上のほか、金や硫酸などその他の製品を合わせた当事業部門の業績は、亜鉛の減販と相場下落の影響が大きく、売上高は1,066億52百万円前期比168億35百万円(14%)の減収となりました。損益面については、亜鉛は相場安によるフリーメタル収入減等、鉛・銀は生産減やリサイクル原料の調達価格高もあり、経常利益は19億63百万円前期比9億41百万円(32%)減益となりました。

 

なお、金属相場(平均)及び為替相場(平均)の推移は下表のとおりであります(米ドル/豪ドルの通期は1月-12月に対応します)。

 

区 分

亜鉛

為替レート

LME相場

国内価格

LME相場

国内価格

ロンドン

相 場

国内価格

円/米ドル

米ドル/

豪ドル

 

$/t

\/t

$/t

\/t

$/toz

\/kg

\/$

US$/A$

2022年度

 

 

 

 

 

 

 

 

第1四半期

3,925

563,900

2,203

348,233

22.6

96,007

129.57

0.7230

第2四半期

3,269

504,533

1,976

335,067

19.2

86,870

138.37

0.7150

第3四半期

3,004

477,867

2,100

357,867

21.2

98,067

141.59

0.6832

第4四半期

3,130

468,967

2,141

345,100

22.6

97,617

132.34

0.6566

(通期平均)

3,332

503,817

2,105

346,567

21.4

94,640

135.47

0.6945

2023年度

 

 

 

 

 

 

 

 

第1四半期

2,540

405,400

2,118

356,033

24.2

108,390

137.37

0.6850

第2四半期

2,429

410,000

2,170

380,700

23.6

111,750

144.62

0.6681

第3四半期

2,498

430,167

2,119

381,867

23.2

112,560

147.89

0.6547

第4四半期

2,449

426,033

2,076

375,667

23.4

113,383

148.61

0.6512

(通期平均)

2,479

417,900

2,121

373,567

23.6

111,521

144.62

0.6648

 

 

 

② 環境・リサイクル事業部門

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減(増減率%)

売上高

5,937

5,336

△601

(△10)

経常利益

1,470

617

△853

(△58)

 

 

自動車のタイヤ製造に用いられる主力製品の酸化亜鉛は、新車用タイヤの需要は堅調な一方で、市販用タイヤ、トラック・バス用タイヤの販売が低迷、在庫過剰によるタイヤメーカーでの生産調整などもあり、前期比6%の減販となりました。また、亜鉛の相場安による販売価格の下落により、当事業部門売上高は53億36百万円前期比6億1百万円(10%)の減収となりました。

損益面については、電力価格や諸資材価格の高止まりに加え、原料中の亜鉛品位低下による生産量の減少により、経常利益は6億17百万円前期比8億53百万円(58%)の減益となりました。

 

③ 資源事業部門

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減(増減率%)

売上高

10,530

11,346

816

(8)

経常損失(△)

△1,608

△13,182

△11,574

(-)

 

 

豪州CBH Resources Ltd.(以下、CBH社)が保有するラスプ鉱山については、高品位鉱体の端境期を経た2022年末以降、品位改善による業績向上を計画しておりましたが、採掘安全管理面の問題による採掘計画の変更や採掘許認可プロセスの複雑化により、高品位鉱体の採掘開始が後倒しとなったこともあり、粗鉱処理量減と粗鉱品位の低下により精鉱生産量及び精鉱出荷量は前期比減少となりました。加えて、現主力の中品位鉱体は今後3年間で終掘する一方、次期主力となる深部鉱体の開発には多額の投資を要し操業コストも上昇することから、同鉱体開発を前提とするラスプ鉱山の中長期操業継続は十分な事業性が見込めないとの結論に至り、同鉱山の2024年での閉山を2023年11月に決定し、当期に固定資産の大宗について減損損失(特別損失)を計上しました。

CBH社を通じて当社が40%を出資する持分法適用関連会社のAbraが操業するアブラ鉱山については、2023年1月より本格的に操業を開始しましたが、2023年3月の大雨の影響や立上げ初期段階の要因による不安定な操業、熟練オペレータ―不足等により当初計画を大きく下回りました。12月には必要な熟練オペレータ―を確保し徐々に改善が見られていたものの、2023年度は大幅な赤字となったことにより持分法投資損失31億円を計上しました。また、当初計画を下回ったことや天候不順による輸送障害等の影響を受け、資金繰りが悪化することとなり、Abraに60%を出資するGalena Mining Ltd.を主体に精鉱代金前払い等の支援を実施しておりました。2024年2月にAbraから提示された新操業計画を踏まえ、Abra、両株主及びAbraの債権者等の当事者間で追加の資金繰り支援及び債務リストラクチャリングを協議してまいりましたが、4月に至り支援策の協議が難航し短期的な資金繰りに支障をきたす蓋然性が高まったことから、Abra取締役会において豪州会社法に基づく任意管理手続開始を決議しました。このため、当期末において、Abra株式や同社に対する金融債権の回収可能性及び債務保証発生の蓋然性を検討した結果、Abra株式の減損としての持分法投資損失66億円を追加計上しました(持分法投資損失としては合計97億円)。また、任意管理手続下において再建も視野に入れた検討が進められておりますが、現時点におけるその財政状態を勘案して、同社への貸付金及び原料前渡金に対する貸倒引当金並びに同社債務に対する債務保証損失引当金あわせて87億円を特別損失として計上しました。

この結果、ラスプ鉱山からの精鉱出荷量減少はあったもののアブラ鉱山からの精鉱取扱量が増加したことから、売上高は113億46百万円前期比8億16百万円(8%)の増収となりました。損益面については、ラスプ鉱山の精鉱生産量及び精鉱出荷量減等による減益とAbra株式の減損を含めた持分法投資損失の計上により、経常損失は131億82百万円前期比115億74百万円の減益となりました。

 

 

④ 電子部材・機能材料事業部門

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減(増減率%)

売上高

5,938

5,082

△855

(△14)

経常利益

756

191

△564

(△75)

 

 

《電子部品》

電子部品事業は、米国におけるEV(電気自動車)市場の鈍化により車載電装向けの販売が落ち込んだことにより、売上高は前期比で26%の減収となりました。

《電解鉄》

電解鉄事業は、半導体製造装置の輸出規制強化及び民生用半導体市況の悪化に、自動車部材の在庫調整が重なり、国内特殊鋼向け販売に負の影響が拡がる一方、旅客需要回復やエネルギー効率向上を期す航空各社の新造機大量発注が海外特殊鋼向け販売を押し上げ、売上高は前期比で11%の増収となりました。

 

以上のほか、プレーティング事業及び機器部品事業を合わせた当事業部門の業績は、プレーティング事業で受注減により減収となったこともあり、売上高は50億82百万円前期比8億55百万円(14%)の減収となりました。損益面については、電子部品事業における販売の落込みとプレーティング事業及び機器部品事業における事業撤退に伴う在庫評価損失の計上などもあり、経常利益は1億91百万円前期比5億64百万円(75%)の減益となりました。

 

⑤ その他事業部門

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減(増減率%)

売上高

9,891

10,800

908

(9)

経常利益

777

631

△145

(△19)

 

 

防音建材事業、土木・建築・プラントエンジニアリング事業、運輸事業、環境分析事業などからなる当事業部門の業績は、土木・建築・プラントエンジニアリング事業で受注の回復もあり増収となったものの、運輸事業においてリサイクル原料等の扱い量が減少したことなどもあり、売上高は108億円前期比9億8百万円(9%)の増収経常利益は6億31百万円前期比1億45百万円(19%)の減益となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

製  錬

102,963

90.3

環境・リサイクル

5,232

87.8

資  源

9,359

146.3

電子部材・機能材料

3,612

78.3

  報告セグメント計

121,167

92.5

その他

1,388

100.0

合計

122,555

92.5

 

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
ただし、電子部材事業、環境・リサイクル事業、その他事業の生産高は、販売金額と同額であります。

2.製錬事業には、八戸製錬㈱他委託分が含まれております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

製  錬

182

123.3

22

90.0

環境・リサイクル

318

125.2

48

238.2

資  源

電子部材・機能材料

4,899

74.5

1,039

68.4

  報告セグメント計

5,401

77.4

1,110

70.9

その他

2,746

151.3

1,471

178.8

合計

8,148

92.6

2,581

108.1

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

製  錬

105,747

86.4

環境・リサイクル

5,336

89.9

資  源

9,359

146.3

電子部材・機能材料

5,082

85.6

  報告セグメント計

125,525

89.3

その他

5,277

102.7

合計

130,803

89.7

 

(注)1.総販売実績に対し、10%以上に該当する販売先はありません。

2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 財務政策について

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料鉱石の購入代金のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、既存鉱山の坑道掘進や周辺探査、新規鉱山の探査、鉱山及び国内製錬所・事業所の設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、鉱山投資や設備投資といった長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入や資本市場からの調達を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は757億95百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は134億9百万円となっております。

 

② 財政状態について
(資産)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ345億63百万円減少し、1,084億36百万円となりました。これは豪州ラスプ鉱山で217億63百万円の固定資産の減損を行ったこと、Abra株式の減損を含む持分法投資損失の計上により投資有価証券が減少したことや同社への貸付金及び原料前渡金に対して貸倒引当金を計上したこと、資金繰り改善施策としての棚卸資産削減などによるものです。

 

(負債)

負債は、前連結会計年度末に比べ132億49百万円増加し、1,057億30百万円となりました。これは主に有利子負債が増加したこと、Abraの金融債務に対する債務保証損失引当金を計上したことによるものです。

 

(純資産)

純資産は、多額の親会社株主に帰属する当期純損失の計上により、前連結会計年度末に比べ478億13百万円減少し、27億5百万円となりました。

 

以上の結果、自己資本比率は当連結会計年度末において2.5%となり、前連結会計年度末に比べ32.8ポイント下落しております。

 

③ キャッシュ・フローについて

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ38億73百万円増加し、当連結会計年度末は134億9百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、37億49百万円の収入前期は110億9百万円の収入)となりました。資金繰り改善のため棚卸資産管理を徹底したことによる運転資本の減少はあったものの、多額の税金等調整前当期純損失を計上したことなどにより、営業活動によるキャッシュ・フローは前期比で収入減となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、76億12百万円の支出前期比5億16百万円の支出減)となりました。これは主に、国内設備の維持更新投資や鉱山投資、関係会社への追加投資によるものでありますが、当期は政策保有株式の売却による収入があったことから、前期比で支出減となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは76億94百万円の収入前期は13億73百万円の支出)となりました。これは主に、原料鉱石の支払い需要に備えた資金調達に対して、同需要が想定を下回ったことによるものであります。

(3) 重要な会計上の見積もり及び当該見積もりに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

2024年1月、金属・リサイクル事業(製錬セグメント及び環境・リサイクルセグメント)と電子部材・機能材料事業を2大コア事業と位置付け、機能別組織へと再編し、コア事業2本部にそれぞれ技術開発・製品開発機能を配置し、スピード感を持って技術的課題の解決や製品開発に取り組んでおります。

なお、当連結会計年度中に支出した研究開発費は340百万円、研究人員は50名であります。

 

セグメント別の主な研究開発の内容は、次のとおりであります。

 

(1) 金属・リサイクル事業

長年培ってきた素材、製錬等の技術をベースに工程効率化、原料多様化、製品品質安定化のための研究開発に努力しております。また、各製錬所には引き続き各現場密着型の研究組織を配置し、製錬プロセスの高度化・効率化のための研究開発に加え、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルのような中長期の社会的要求に合致した電池材料、資源リサイクル等に関する研究開発を進めております。

 

① 製錬セグメント

・徹底的なコストダウン及び品質向上のためのプロセス改善に取り組んでおります。特に電力代の大幅アップに対する工程効率化対策や省エネルギー対策に取り組んでおります。

・素材、製錬等の技術をベースとした廃棄物再資源化や、鉱石中有価金属の回収促進のための技術開発に努力しております。

② 環境・リサイクルセグメント

・廃棄物の資源有効活用として、蓄積された製錬技術を活用し、電炉ダストから酸化亜鉛の再資源化を行っており、その工程効率化や省エネルギー対策に取り組んでおります。

・蓄積された電池リサイクルの技術的知見を活用し、新たにLiB(リチウムイオン電池)リサイクルの事業化を目指し、基礎研究、中規模試験を進めております。

 

(2) 電子部材・機能材料事業(電子部材・機能材料セグメント)

EV化や再生可能エネルギーに対する社会のニーズに合致した製品開発、また、新規用途開発を長期的視野に立って鋭意行っております。外部機関(企業・大学・研究機関)との共同研究、機能研究も積極的に行っております。

 

① 電子部品

・電気電子機器の小型化、軽量化と高効率化に貢献できる様、最適構造を有する電子部品の開発はもとより、コイル、トランスの性能を決定づける高機能、高性能の磁性材料研究を進めています。

② 高純度電解鉄

・電解鉄の優れた機能をより引き出して製品化するため、製品開発部において、大学や外部研究機関と提携し研究を進め、特許取得や学会発表等も行っております。

 

以上のように、顧客ニーズへの対応を第一に、従来の技術の応用のほか、新規素材、新規製品を世に送り出すため、研究人員、研究インフラ、生産設備を並行して充実する努力を続けております。