当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を企業理念に、「こどもの力になること、こどもが力になれること」を経営ビジョンとして掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、バイオシミラー事業では、より多くの患者さんが安心して治療を続けられる環境を作り出すために、また、細胞治療事業(再生医療)では、特に小児疾患や希少疾患を抱え苦しんでいる患者やその家族はもちろん、治療に奮闘する医療従事者の方々を支えられる革新的な治療を届けるために、研究開発活動の推進に取り組んでいます。
(2) 経営環境
「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)事業環境」に記載しております。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
バイオロジクスの研究開発には膨大な時間と費用を必要とし、収益計上ができるようになるまでの期間が非常に長いため、当社のような研究開発型のバイオベンチャーにおいては、短期的な経営指標による実績評価を行うことは一般的には適しません。しかし、当社バイオシミラー事業においては、パートナー製薬企業との協業の結果、既に4製品が上市済みであり、バイオシミラー原薬等をパートナー製薬企業に供給することによって得られる販売収益と、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を売上高として計上しています。一方で、バイオシミラー事業の成長のためには、継続した新規バイオシミラーへの開発投資は欠かせないため、効率的な開発投資の実行と、収益と開発投資のバランスを取ることを目的として、バイオシミラー事業単独での営業黒字を経営指標として定めています。
細胞治療事業においては、バイオシミラー事業とは異なり、研究開発投資が先行する事業ステージにあるために、効率的且つ適切な研究開発投資の実行を目的として、開発品ごとに中長期的な研究開発費用、研究開発スケジュール等を含む開発計画等を設定し、その達成度を経営指標としています。
なお、バイオシミラー事業と細胞治療事業を含めた当社企業グループ全体での事業の推進と営業黒字化を目指して、構造改革等を通じた事業間の連携強化、業務効率化、人的資源の最適化等にも取り組んでいます。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 上市済みバイオシミラーの安定供給体制の構築及び収益性の改善と、新規バイオシミラーの開発
バイオシミラー事業においては、既に上市しているバイオシミラーについては原薬等の供給を担っておりますが、一部の製品については需要が当初想定を大幅に上回って推移しており、安定供給体制の再構築と運転資金の最適化が求められています。また、原薬の製造を委託している海外市場における物価上昇と、大幅な円安の進行により、円建てでの製造費が大きく上昇しており、原価低減策の推進やバートナー製薬企業に対する供給価格等の調整が必要です。
一方で、バイオシミラー事業の更なる成長に向けて、既に4製品の開発を成功させたという実績と、開発経験を通じて培った経験とノウハウを発展的に応用し、新たなバイオシミラーの開発にも積極的に取り組む必要があります。なお、新たなバイオシミラーの開発においては、パートナー製薬企業との役割分担の見直し等を通じて、限られた資金と人財をより効率的に活用し継続的な成長を実現できる事業モデルへの変革を推進してまいります。
また、事業価値最大化に向けては、日本市場への依存からの脱却も重要です。上市済み及び新規バイオシミラーの両方について、売上高の拡大、製造量の拡大による製造単価の低下、海外売上高と海外製造費の両立による為替変動の影響緩和に向けて、パートナー製薬企業との協業を通じた海外市場への展開にも積極的に取り組みます。
② 再生医療等製品等の研究開発
細胞治療事業においては、研究開発投資が先行する事業ステージにあるために、資金調達とのバランスを強く意識した、効率的且つ適切な研究開発投資の実行が求められます。なお、2024年4月1日付で当社完全子会社として、S-Quatre株式会社(S-Quatre(エスカトル))を設立しており、今後は当社と連携しながら、S-Quatreとして、事業会社との資本業務提携、ベンチャーキャピタル等との連携を通じた資金調達に取り組んでまいります。また、バイオシミラー事業と同様に、早期にパートナー製薬企業と提携することで、S-Quatreとしての開発費負担と開発リスクの低減を実現する必要があります。そのためにも、SHEDのサイエンスの追求とSHED製造プロセスの開発、更には取得したデータと他社特許調査を基にした特許戦略の構築と実行による事業基盤の強化に向けた投資を継続してまいります。
なお、細胞治療事業においても海外市場への展開は欠かせない重要な取り組みです。既に米国FDA基準に準拠したSHED MCBの製造は完了しておりますが、海外市場での臨床開発に向けて、海外製薬企業や医療機関、開発業務受託機関等との協議を推進してまいります。
③ 開発品ポートフォリオの最適化
前述のとおり当社は主要事業のいずれにおいても複数の開発品によるポートフォリオを構築しており、限られた人員と資金を効率的に投下して最大限の成果を上げられるよう、提携先の製薬企業等や製造受託企業等との協業の下、当該開発品の価値最大化に努めております。その一方で、バイオ医薬品、再生医療等製品等に対する規制動向、新規技術の開発状況、各疾患領域の標準治療法、当社及び競合他社の開発状況等は日々変化しています。当社は、社内外の様々な要因を適時勘案し、事業ごとの開発品ポートフォリオにおける優先順位の見直し、開発品目の新規立ち上げや開発中止等に加え、企業グループ全体としての開発品目ポートフォリオの最適化を図ってまいります。
④ コンプライアンス・リスク管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化
当社が円滑に社外ネットワークを構築していくためには、当社の社会的信用を維持・向上させていくことが重要であると認識しております。当社の取引先の多くは上場企業など等の社会的信用のある会社や公的研究機関であり、対等な取引関係を維持していくためには、当社にも相応の社会的信用が必要です。
このような観点から、当社は小規模組織ではありますが、十分な信頼が得られるよう継続的にコンプライアンス及びそのリスクに対する意識の向上並びに内部統制の強化を図っております。また、全てのステークホルダーのニーズに対して組織的かつ的確に対応できるよう、コーポレート・ガバナンスの改善を図り、経営の公正性・透明性を高めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
当社は、「バイオで価値を創造する〜こども・家族・社会をつつむケアを目指して〜」の企業理念のもと、創業以来培ってきたバイオロジクス関連技術を用いた医薬品の開発ノウハウ等を最大限活用して、病気に苦しむ患者に新たな治療薬・治療法を提供し、こどもはもちろんのこと、こどもを支える大人を含むすべての年代の方が幸せに明るく暮らすことができる社会の実現に貢献することを目標として活動しております。また、当社のようなバイオベンチャーにおいても、中長期的な企業価値の向上に向けた事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することが可能であり、非常に重要であると考えております。
現時点において、当社はサステナビリティに係る基本方針を定めておりませんが、サステナビリティに配慮した企業経営に努めるとともに、当社が具体的に対処すべき課題の明確化と基本方針の策定に向けた検討を継続してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めておらず、サステナビリティ関連のリスク及び機会、管理するためのガバナンス過程、統制及び手続等の体制をその他のコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。
詳細は、
(2)戦略
当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の戦略における、リスク及び機会に対処するための重要な取り組みは検討中であります。
しかしながら、安定性の高いバイオシミラー事業で安定的な収益基盤を築きながら、細胞治療事業(再生医療)に取り組むことで高い成長性を目指す、ハイブリッド型の事業モデルにおいて、その事業活動を支えるのはバイオロジクスに関する高度な専門知識、技能や経験を有する多様なバイオ人財です。そのため、当社では、そのようなバイオ人財の採用及び育成の改善に努めるとともに、その能力を最大限発揮できる創造性とイノベーションにあふれる組織風土を基盤として、「病気に苦しむ患者様、特に病気のこどもたちに、早期に新たな治療薬・治療法を提供し、みんなが幸せに明るく暮らすことができる社会の実現に貢献する」という使命を実現するべく、以下を含む、各種人事制度及び組織体制の整備に取り組んでいます。
① 専門性の高い人財の確保
・バイオロジクスに関する知識・技能・経験を有するバイオ人財の採用
・海外での事業推進を見据えたグローバル人財の採用
・競合他社と比べても遜色ない報酬制度の構築
② 多様性、創造性・革新性、自主性を評価し、失敗を恐れずチャレンジができる環境の確保
・多様性(性別・年齢・国籍・価値観)を認め、尊重する企業文化の醸成
・創造的・革新的な取り組みや、自主的な取り組みを評価する人事評価制度の策定
・機動的かつ適正な人事配置・キャリアデベロップメントプラン(人財育成計画)の策定、実行
③ 従業員一人ひとりを尊重した働き方の確保
・一人ひとりのキャリアプランを尊重した人財育成計画の策定、実行
・それぞれ異なるワーク・ライフ・バランスの実現に向けた柔軟な働き方の導入とインフラ整備
(3)リスク管理
当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連のリスク管理における記載はいたしませんが、リスク・コンプライアンス委員会によるリスク管理体制を構築しております。
詳細は、「
(4)指標及び目標
当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の指標及び目標の記載はいたしません。
具体的な指標及び目標については、今後、サステナビリティの基本方針の策定と併せて検討を進めてまいります。
以下において、当社の事業展開その他に関してリスク要因と考えられる主な事項を記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載のうち、予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、特段の記載がない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため実際の結果とは異なる可能性があることにご留意下さい。
1.法的規制等に関する事項
(1) 許認可等に関するリスク
当社は、原薬などの販売に当たり医薬品医療機器等法その他の規制を受けますが、これらについて法令違反があった場合、あるいは必要とされる資格を保有する人財が離職しその補充ができない場合には、監督官庁から業務の停止や許認可の取消し等の処分を受けることになり、当社の経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、業務の停止や許認可の取消し等の処分を受ける原因となる事由は発生しておりません。
主な許認可等の状況
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許認可等の名称 |
所管官庁等 |
許認可等の内容 |
有効期限 |
取消し等となる事由 |
|
医薬品販売業許可 |
東京都 |
東京都保健所長 許可 (5302190371) |
2025年6月30日 (6年ごとの更新) |
医薬品医療機器等法、その他薬事に関する法令若しくはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、医薬品医療機器等法第75条第1項により、その許可が取り消され又は期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命じられることがある。 |
(2) 医薬品の研究開発における医薬品医療機器等法その他の規制に関するリスク
当社が業を営む医薬品業界では、研究、開発、製造及び販売のそれぞれにおいて、国内外の薬事に関する法令、薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けております。当社は、日本国内市場に留まらず欧米を含む国外市場への進出も想定して各開発品の研究開発を進めておりますが、これらの開発品を医薬品として上市させるためには、各国の薬事に関する法令、関連するガイドライン及びその他の規制に準拠して製造販売承認の申請を行い、承認を取得することが必須となります。このため、臨床試験等において、医薬品としての品質、安全性及び有効性 を示すことができない場合には、承認を得られず、上市できないため、当社の事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、現在の医薬品医療機器等法においては、原薬の外部委託製造が可能となっておりますが、今後このような外部委託製造に関する規制や海外品の輸入等に関する規制が改定された場合、当社の事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 医療制度改革の影響に関するリスク
我が国では、医療費の抑制を目的として、薬価改定を含む数々の医療制度改革がこれまで実施されてきており、今後の高齢化社会を見据えた場合、その方針は継続されるものと考えられます。このため、当社開発品の上市後に当該医薬品の薬価が影響を受け、当社がパートナー製薬企業に販売する原薬又は製剤の販売価格や、パートナー製薬企業の販売実績に応じて当社が受領するロイヤリティ収益にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
2.医薬品開発事業に関する事項
(1) 医薬品開発事業全般に関するリスク
医薬品の研究開発は、基礎研究から製造販売承認の取得、上市に至るまで、段階的に進めていく必要がありますが、非臨床試験や臨床試験において予期せぬ副作用が発生した場合や期待する治療効果が確認できない場合には、当該開発品の研究開発は中止されます。当社の開発品について、これらの理由により研究開発が続行できなくなった場合には、当社の事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、医薬品の研究開発において、当初計画したとおりの研究開発結果が得られない場合、各種試験の開始又は完了に遅延が生じた場合、治験薬製造等において問題が発生した場合等には、製造販売承認の取得が遅れる可能性があります。当社は、このような事態を極力回避すべく、各開発品の評価及び進捗管理を適時実施し、必要に応じた追加経営資源の投下等を通じた研究開発の遅延リスク低減に努めておりますが、研究開発が計画どおりに進捗しない場合には、当社の事業計画並びに財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 医薬品の品質・副作用に関するリスク
当社が開発に関与する医薬品の安全性に関する情報は、限られた被験者を対象に実施した臨床試験から得られたものであり、上市前に副作用の全てを把握できない可能性があります。現時点において、当社は、直接医薬品を販売する計画はありませんが、パートナー製薬企業によって販売される製品について、上市後に予期せぬ副作用が発生する可能性を完全には否定できません。重篤な副作用が発生した場合、製品の回収あるいは販売中止を余儀なくされ、当社の原薬等の販売についても継続することが困難となり、以後の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
(3) 医薬品業界における競合に関するリスク
医薬品業界においては、国内外の製薬企業、バイオベンチャー、大学、研究機関等がそれぞれ独自に、又は協力して医薬品の研究開発に取り組んでおり、同じ疾患を対象とした開発品が複数存在することは珍しくありません。このため、競合となる開発品の研究開発結果等によって、当社の開発品が市場において優位性を失い、研究開発中止を余儀なくされるおそれがあります。当社としては、開発品の選定・優先順位付けにおいて、競合環境を綿密に調査することで、このような競合リスクの低減に努めていますが、当社の開発品がいち早く上市できた場合でも、安全性や有効性においてより優れた競合品の新規参入等によって当社開発品の市場シェアが奪われ、当社の事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、バイオシミラー事業においては、2019年に上市したダルベポエチンアルファのバイオセイム以降、バイオセイムの上市はなく、当社第3製品のラニビズマブバイオシミラー及び第4製品のペグフィルグラスチムバイオシミラーについては、他社のバイオシミラーも上市しておりません。しかし、今後バイオセイムや他社によるバイオシミラーが上市した場合には、営業活動を通じた市場シェアの奪い合いが発生し、市場シェアの低下や想定を超える薬価下落等の影響を受け、当社の事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 細胞治療事業(再生医療)における新規開発品の創出に関するリスク
細胞治療等の新規創薬モダリティにおいては、新しい技術の創出や複数技術の組み合わせ等による技術革新が進んでおり、細胞治療事業においては、自社研究に加えて、大学や他のバイオベンチャー等との協業を通じて、新規開発品の探索及び創出を図っております。しかしながら、これらの活動により、新規開発品の探索及び創出が確実にできる保証はありません。このため、何らかの理由により、新規開発品の探索及び創出活動に支障が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
3.事業モデルに関する事項
(1) 収益計上に関するリスク
医薬品の基礎研究開始から上市に至るまでには通常10年以上の年月を要することから、研究開発の成果が事業収益として計上されるまでには長期間を要します。また、医薬品開発の成功確率は近年益々低くなっており、上市に至らないケースも多いため、最終的に事業収益が計上されない可能性もあります。そのため、当社は、自社で臨床開発や製造販売を実施せず、パートナー製薬企業に臨床開発以降を主導してもらうことを基本方針とし、契約一時金や開発マイルストンペイメントの設定による早期収益化を目指しています。また、バイオシミラー事業と細胞治療事業の組み合わせによるハイブリッド型の事業モデルを構築することで、開発リスクと収益計上リスクの分散を図っています。しかし、各種取り組みにもかかわらず、提携時期や研究開発の遅延、研究開発の中断等が発生した場合には、当社の事業計画や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) パートナー製薬企業との契約に関するリスク
当社は、バイオシミラー事業においても、細胞治療事業においても、原則自社での臨床開発は行わず、臨床開発以降はパートナー製薬企業が主導することを想定しているために、パートナーが見つからない場合には、それだけ有望な開発品であっても、開発の遅延が生じ、必要に応じて当該開発品の開発中止を判断することになります。このようなリスクを低減するため、当社は、定期的に国内外の製薬企業等における複数の部署と面談することで、幅広い人間関係の構築と、相手の関心のある疾患領域や創薬モダリティの把握に努めています。また、バイオシミラー事業においては新たな開発候補品の選定・細胞株の構築段階から、細胞治療事業においては基礎研究・製造プロセス開発段階からパートナー候補製薬企業との協議を開始することで、相手が求めるデータ等を把握し、研究開発活動に反映するとともに、早期提携に向けたパートナリング活動を推進しています。しかし、パートナー製薬企業との契約締結に至れない場合には、当社の事業計画や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3) パートナー製薬企業に関するリスク
当社は、各事業においてパートナー製薬企業と提携し、協働して開発活動を行っておりますが、相手方における経営環境の変化や経営方針の変更等、当社が制御し得ない要因によって、開発活動が中断あるいは中止になった場合、または又は何らかの理由により当該契約が解除された場合には、当社の事業戦略や事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、バイオシミラー事業においては、パートナー企業の需要予測に基づいて、上市済みバイオシミラーの原薬等の製造を委託していますが、当該需要予測が下方修正された場合には、原薬等の販売遅延や余剰在庫により、当社の経営成績や資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) バーチャル型研究開発に関するリスク
当社は、社外の受託機関の積極的な活用を前提に、バイオロジクスの研究と製造プロセス開発等に当社の人的資源を集中し、医薬品開発に伴う様々な試験や治験薬製造等を受託機関に委託しております。そのため、当該委託先において一定の信頼性や品質を有する対応が困難となり、試験や製造を代替先に速やかに移管することができない場合には、当該開発品の研究開発に遅れが生じたり、研究開発自体が中止となることで、当社の事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、当該開発品の上市後、原薬等の安定供給を担っていますが、製造委託先での安定的な商業製造や、試験委託先での試験実施が困難となった場合には、当該医薬品の販売開始の遅延や市場への供給不足が発生し、当社の経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 知的財産権に関するリスク
バイオ医薬品には、先行医薬品メーカーを含む複数の第三者の特許権等が存在しえます。当社のバイオシミラー事業活動においては、候補品の選定時に加え継続的に国内外の特許調査を実施することにより、関連しうる第三者特許権等を特定し侵害行為が発生しないように努めておりますが、開発途中で第三者特許権等が見い出された場合には開発遅延や中止、ライセンス料や損害賠償の発生により当社の事業計画に大きな影響が及ぶ可能性があります。
再生医療事業においても、高度で複雑な技術の絡む分野であり、第三者の特許権等が多数存在しうるため、研究開発の段階ごとに特許調査を実施することにより、関連しうる第三者特許権等の侵害の回避に努めておりますが、万が一侵害が発生した場合には、当社の事業計画に多大な影響が出る可能性があります。再生医療事業では、自社開発品の権利を保護することにより当社の競争力を高めることにも注力しております。現在出願中の特許出願を成立させるために戦略的な取り組みを行なっていますが、特許権の成立保証はなく、成立した権利の保護範囲や特許発明の代替技術の有無によっては当社の競争力を充分に保護できない可能性があります。特許権が成立した後は、その権利を侵害する第三者に対して権利行使等の措置をとる必要があり、紛争の規模によっては解決のために多くの費用と時間を要する可能性があります。
なお、本書提出日現在、当社が事業活動の中で利用している様々な知的財産権は、当社が権利を保有している又は権利申請中であるか第三者から適法に使用許諾を受けたもの、あるいは第三者の権利が満了したものと認識しており、また、当社の事業活動について第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた事実はありません。
(6) 研究所の使用に関するリスク
当社は、札幌市及び東京都に研究所を置いております。札幌研究所は北海道大学創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センターが民間企業との共同研究等のために設けているオープンラボラトリスペースの一部を、東京研究所は三井不動産株式会社が運営する研究施設における賃貸借契約の下、それぞれ当社研究所として使用しております。このため、共同研究契約あるいは賃貸借契約の終了等何らかの理由により、同施設の使用ができなくなった場合には、当社研究所の移転を余儀なくされ、追加的な設備投資や賃借料の発生等によって、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
4.業績等に関する事項
(1) 財政状態及び経営成績に関するリスク
当社は主にバイオシミラー等の販売で得た収益により研究開発費を除いた固定費を賄える状況となっているものの、2025年度中の治験申請に向けて細胞治療事業の開発費が拡大傾向にあり、現時点では利益を計上することができておりません。当社は、早期の黒字化を目指しておりますが、事業計画が想定通りに進捗しない場合には、黒字化の時期が遅れたり、繰越利益剰余金がマイナスからプラスに転じる時期が遅れる可能性があります。
(2) 特定の販売先への依存に関するリスク
当社の売上高の大半はバイオシミラーの原薬又は製剤供給にかかる売上であり、特にラニビズマブバイオシミラーのパートナーである千寿製薬㈱に対する依存度が非常に高い状況です。また、2023年11月に上市したペグフィルグラスチムバイオシミラーが成長することで、当該製品のパートナーである持田製薬㈱に対する依存度が高くなることが想定されます。今後新たなバイオシミラー又は再生医療等製品等を新規パートナー製薬企業と開発することで、特定の販売先への売上依存度の引き下げを図る方針でありますが、開発が想定どおりに進まない可能性があります。また、現在契約を締結している販売先との契約解消等が生じた場合には、当社の経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
(3) 資金調達に関するリスク
バイオシミラー事業においては、上市済みバイオシミラーに対する需要拡大に伴って、パートナー製薬企業に販売するバイオシミラー原薬等の製造量が増え、製造のための運転資金が大きく増加しております。製造運転資金の一部は金融機関からの借入で賄っているものの、追加の借入のためには負債資本倍率の改善を求められるために、増資による資金調達も組み合わせる必要があります。調達した資金を活用して、バイオシミラー原薬の製造や研究開発活動を推進することで、当社企業価値の増大を図りますが、増資による資金調達の実施の際には発行済株式総数が増加するため、企業価値の増大規模次第では、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
一方で、細胞治療事業においては、引き続き研究開発投資が先行しており、今後は、当社と連携しながら、S-Quatreとして、事業会社との資本業務提携、ベンチャーキャピタル等との連携を通じた資金調達に取り組みます。なお、S-Quatreが増資で資金を調達することにより、当社のS-Quatreに対する出資比率は徐々に低下します。そのため、調達した資金を活用して再生医療等製品等の研究開発活動を推進することで、S-Quatreの企業価値と当社持ち分の価値向上を図りますが、増資による資金調達の実施の際には発行済株式総数が増加するため、企業価値の増大規模次第では、1株当たりの株式価値が希薄化し、当社持ち分の価値が低下する可能性があります。
また、当初の想定を上回る製造運転資金や研究開発資金が必要となり、機動的な資金調達が困難な場合には、製造や研究開発を継続することができなくなり、当社の経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
(4) 財務制限条項への抵触リスク
当社の一部借入金には財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合、期限の利益を喪失し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 為替レートの変動に関するリスク
当社は、バイオシミラー事業において、売上原価に相当する原薬等の製造費用を海外の製造委託先企業に外貨建にて支払っております。当該事業の製品に対する需要拡大が進む一方で、為替市場においてドル円レートが歴史的な円安水準で推移していることを受け、当社製品の収益性は大きく悪化しております。また、細胞治療事業においても一部の試験を海外の試験受託機関に委託しているため、現在の為替レートが、研究開発費の増大につながっています。今後海外市場への事業展開に取り組むことで、為替レート変動の業績への影響を一部相殺できるようにするとともに、パートナー企業等との契約においても、為替レート変動に伴う費用増加について取り決めることで、為替レート変動の業績への影響を低減できるように図る方針です。しかし、事業規模の拡大に伴い、さらに外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動により当社の経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(6) 投資有価証券の価値変動に関するリスク
当社は本書提出日現在において投資有価証券を保有しております。このため、当該投資有価証券の価値変動に伴い評価損が計上された場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 配当政策に関するリスク
当社は、創業以来配当を実施しておらず、本書提出日現在においても、会社法の規定上、配当可能な状態にはありません。当面は早期の黒字化を目指し、内部留保による財務体質の強化及び研究開発活動への再投資を優先する方針であります。一方で、株主への利益還元についても重要な経営課題として捉え、財政状態及び経営成績を勘案しつつ配当の実施を検討してまいります。しかしながら、利益計画が想定どおりに進捗せず、今後も安定的に利益を計上できない状態が続いた場合には、配当による株主還元が困難となる可能性があります。
5.その他
(1) 情報流出に関するリスク
当社が研究開発の過程で入手する知見、技術、ノウハウ等には重要な機密情報が多く含まれております。当社は、これらの機密情報が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。しかしながら、役職員や取引先によりこれらが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が流出し、当社の事業活動に大きな影響を与える可能性があります。
(2) システム障害等に関するリスク
当社はシステム障害、セキュリティ侵害等を未然に防止するために様々な手段を講じておりますが、ウィルス、権限のないアクセス、自然災害、通信エラーあるいは電気障害等が引き起こす事故が発生する可能性を否定することはできません。システム障害、セキュリティ侵害等が発生した場合、当社が保有する医薬品開発過程における重要な情報が喪失又は流出する可能性があります。データの喪失あるいは機密情報の流出を招いた場合、データ復旧のために金銭的・時間的に多大な負担を余儀なくされたり、特定の開発品の開発の進捗が遅延したり、取引先から損害賠償を請求されたり、当社の社会的信用が失墜して社外との提携関係の構築が難しくなる等、当社の事業計画の進捗に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 訴訟等に関するリスク
当社は、コンプライアンス体制の構築に注力しておりますが、製薬企業等から特許等の侵害を理由として損害賠償請求を受けたり、訴訟を提起される可能性があります。また、製造物関連、環境関連、労務関連その他に関する訴訟が提起される可能性もあり、これらの結果、当社の社会的信用が失墜し、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 小規模組織であることに関するリスク
当社は、製薬企業や他のバイオベンチャー、大学等の研究機関との協業と、積極的な受託機関の活用を前提として、固定費を抑えつつ効率的に研究開発を推進することを想定しており、高度な専門知識、技能や経験を有するバイオ人財による少人数組織体制が適しています。しかし、バイオロジクスの研究開発経験のあるバイオ人財は限られており、想定どおりに人財の確保ができない場合あるいは人財の流出が生じた場合には、研究開発の推進や社外との提携関係の構築に支障が生じ、当社の事業計画や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
また、事業の拡大に伴い、内部管理体制の強化も必要になりますが、研究開発体制と同様に少人数の組織であるため、想定どおりに人財の確保ができない場合あるいは人財の流出が生じた場合には、内部管理体制の質の低下を招き、当社の社会的信用を損なう可能性があります。
(5) 企業再編、企業買収、合併等に関するリスク
当社は、事業展開及び企業価値向上の手段として、他社との経営統合や企業買収等を用いる可能性があります。そのため、経営統合・企業買収等にかかる費用等が、一時的に当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。また、当該経営統合・企業買収等が当初の計画どおりに進捗しない場合、あるいは事業環境や競合状況の著しい変化により、当該経営統合・企業買収等後に当初想定していた効果が得られず、例えば投資価値の減損処理を行う必要が生じる等、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 災害及びパンデミック等の緊急事態に関するリスク
当社は、事業活動の中心となる事業所を東京都と北海道に設けており、地理的なリスク分散を図っております。また、当社は研究開発活動の一部を社外に委託していることから、実質的にはさらに広くリスク分散されているものと考えております。しかしながら、これらの地域において地震等の大規模な災害、あるいは新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック等が発生した場合、当社は予め可能な限りの対策を講じ、事業の継続に努めることとしていますが、設備等の損壊やインフラの機能停止等により、当社の事業活動が影響を受ける可能性があります。
(7) 継続企業の前提に関する重要事象等について
当社の経営基盤であるバイオシミラー事業で営業黒字を確保しているものの、細胞治療事業(再生医療)への研究開発投資により期間損益でマイナスが先行する結果となっております。
当期末においても営業赤字が継続しているため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況となっておりますが、バイオシミラー事業の拡大に伴う運転資金や細胞治療事業の研究活動資金のニーズに対して、バイオシミラー事業によるキャッシュフローで対応することに加え、金融機関からの借入、転換社債型新株予約権付社債および第三者割当による新株予約権の発行等により適時、事業継続に必要な資金調達活動を実施しておりますので、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないと認識しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度における当社業績は、売上高 2,431,236千円(前期比 12.4%減)、営業損失 1,335,597千円(前期は550,929千円の営業損失)、経常損失 1,389,601千円(前期は624,769千円の経常損失)、当期純損失 1,422,078千円(前期は657,434千円の当期純損失)となりました。バイオシミラー事業において、2023年9月にラニビズマブバイオシミラー(GBS-007)が新たな追加適応症承認を、またペグフィルグラスチムバイオシミラー(GBS-010)が当社第4製品として製造販売承認を取得した一方で、薬価下落、一部製品の納品時期の期ズレ及び支払い条件変更の影響を受けたことに加え、細胞治療事業(再生医療)において前期計上したマスターセルバンク構築完了に伴う売上高の影響がなくなったことから、売上高は減収となりました。また損益につきましては、売上高の減収に加えて、バイオシミラー製品の構成変化や円安及び海外における物価上昇の影響を受けた利益率の低下、順調に研究開発活動が進捗したことによる研究開発費の増加に伴い、営業損失、経常損失、当期純損失は前期比で赤字幅が拡大しました。
前述のとおり、当事業年度においては、3事業に分散していた経営資源をバイオシミラー事業と細胞治療事業に集中的に投下することで、研究開発活動を更に効率的かつ強力に推進してまいります。
当事業年度における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。
イ バイオシミラー事業
当事業年度においては、2023年9月に、当初予定通りGBS-007の追加適応症とGBS-010の製造販売が承認され、今後の更なる収益拡大に向けた事業基盤が確立されました。一方で、上市済みのフィルグラスチムバイオシミラー(GBS-001)、ダルベポエチンアルファバイオシミラー(GBS-011)及びGBS-007は、2021年度以降、毎年薬価改定による薬価下落の影響を受けております。加えて、製造委託先企業における製造スケジュールの調整等の影響で、当期に納品を予定していたバイオシミラーの一部の納品が次期(2025年3月期)にずれ込むこと、バイオシミラーの一部について、パートナー製薬企業から製造委託先企業に対し、製造費用を一時的に直接お支払いいただく等の支払い条件変更の結果、当期売上高は前年対比で減少いたしました。
ロ 細胞治療事業(再生医療)
SQ-SHEDの特徴を活かし、治療効果が期待できる疾患として、脳性麻痺(遠隔期)、骨疾患等を選択し、研究を進めてきた結果、当事業年度において、共同研究先の名古屋大学主導による脳性麻痺(遠隔期)を対象とした臨床研究が開始され、2023年10月には第一症例の患者が登録されました。また、2025年度中の治験計画届出を目指し、MCBを用いた治験製品の製法開発、及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構への相談が順調に進んでおります。加えて、2024年3月には、海外市場への参入に向けた第一歩として米国FDA基準に準拠したMCBの製造を完了いたしました。当該事業は今後、当社100%子会社として設立した株式会社S-Quatreにて遂行、展開してまいります。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における総資産の残高は、前事業年度度末比30.6%増の5,085,550千円となりました。これは主に、製品が213,007千円減少したものの、普通預金が1,164,249千円、仕掛品が453,345千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末比59.9%増の4,254,077千円となりました。これは主に、バイオシミラー製品に関する製造費用の一部について、パートナー製薬企業からの契約負債(前受金)として1,117,774千円、長期借入金(1年内返済予定を含む)が625,000千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末比32.6%減の831,473千円となりました。これは主に、資本金及び資本剰余金がそれぞれ527,226千円増加したものの、当期純損失を1,422,078千円計上したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、2,231,411千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は453,634千円となりました。これは主に、契約負債(前受金)の増加が1,117,774千円あったものの、棚卸資産の増加が240,337千円、税引前当期純損失を1,420,527千円計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の増減はありませんでした。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は1,617,883千円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が375,000千円あったものの、長期借入れによる収入が1,000,000千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入が970,083千円あったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。
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区分 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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生産高(千円) |
前年同期比(%) |
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バイオシミラー事業 |
1,391,852 |
113.8 |
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原薬等販売収益 |
1,391,852 |
113.8 |
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合計 |
1,391,852 |
113.8 |
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(注)金額は、製造原価によっております。
b.受注実績
フィルグラスチムバイオシミラー及びラニビズマブバイオシミラーにつきましては、ロット単位での受注であり、各ロットの生産高に応じて売上高が変動し、受注金額を確定できないことから、記載を行っておりません。
なお、上記以外の品目につきましては、研究開発段階での売上であり、その不確実性に鑑み、記載を行っておりません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
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区分 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
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バイオシミラー事業 |
2,425,813 |
94.3 |
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原薬等販売収益 |
2,140,405 |
91.8 |
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知的財産権等収益 |
285,407 |
118.3 |
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細胞治療事業(再生医療) |
5,422 |
2.7 |
|
|
|
知的財産権等収益 |
5,422 |
2.7 |
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合計 |
2,431,236 |
87.6 |
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(注)最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
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千寿製薬㈱ |
1,369,494 |
49.3 |
1,382,368 |
56.9 |
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持田製薬㈱ |
396,070 |
14.3 |
646,776 |
26.6 |
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富士製薬工業㈱ |
665,880 |
24.0 |
211,260 |
8.7 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
当事業年度における売上高は、新たに販売開始となったラニビズマブバイオシミラーを含めて主にバイオシミラーの原薬等の販売が順調に推移したことに加え、ダルベポエチンアルファバイオシミラーの販売に伴うロイヤリティ収益、バイオシミラーの第4製品目の製造プロセス開発に係る原薬販売等により、2,431,236千円となりました。一方、主にバイオシミラー事業におけるラニビズマブバイオシミラーの商用製造に向けた最終段階の開発及び将来の原価低減に向けた開発費用並びに細胞治療事業(再生医療)におけるSHEDマスターセルバンク開発等に取り組んだ結果、研究開発費を1,453,349千円計上したため、営業損失は1,335,597千円、当期純損失は1,422,078千円となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
資本の財源及び資金の流動性につきましては、バイオシミラー事業における上市済製品によって得られる販売収益等の範囲の中で研究開発費以外の事業活動を実施することで、資金の流動性を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、当期においては、GBS-007及びGBS-010がそれぞれの当初需要想定を大きく上回るペースで成長したことを受けて上方修正されたパートナー製薬企業による需要予想に基づき、原薬等の製造回数の追加等を進めており、原薬を製造する海外での物価上昇及び円安の影響も受けて増加し続ける運転資金に対応すべく、2023年7月には第三者割当による新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、未行使である新株予約権を除いて約10億円、さらに金融機関からの借入による10億円、総額約20億円規模の資金を調達いたしました。また、運転資金の増加を少しでも抑えるために、パートナー製薬企業との間で取引条件の見直し等にも取り組んでいます。なお、当該製品の市場シェア成長が一巡し市場シェアが安定した際には運転資金が安定することから、上述の原価低減策の成果と合わせ、バイオシミラー事業の販売収益等により、研究開発費を含む事業活動資金を全て賄えるようになることを見込んでおります。
安定的な資金の流動性の確保に取り組む一方で、バイオシミラー事業、細胞治療事業共に、継続的な成長のためには、今後も中長期的な戦略に基づいた研究開発投資の維持が必須です。しかし、上述の通り、GBS-007とGBS-010が大きく成長している期間においては運転資金が拡大するため、バイオシミラー事業における販売収益等に加えて外部からの研究開発資金の獲得が重要です。次期以降においては、当社はバイオシミラー事業に、子会社の株式会社S-Quatre(エスカトル)は細胞治療事業に特化し、それぞれの事業特性に合わせた独自の研究開発資金調達に取り組んでまいります。具体的には、開発パートナー企業等との資本業務提携や契約一時金の獲得、各種助成金等の活用を想定しており、必要に応じた直接及び間接金融等からの資金調達と合わせた資金調達手段の多様化と最適化を図ります。また、バイオシミラー事業及び細胞治療事業の双方において、研究開発活動の進捗及び事業性に基づいてパイプラインの優先順位を機動的に見直すとともに、早期のパートナリング等による役割と費用負担の分担等を通じて、メリハリのある研究開発投資の実行と研究開発投資リスクの低減に取り組み、将来の成長性を毀損することなく、安定的な財務基盤の確立を目指します。
なお、当社は、当事業年度末で現金及び預金並びに売掛金を合わせて3,112,818千円の残高を有しております。未行使である新株予約権の行使に加え、当期から継続しているパートナー候補企業との協議の一部が契約締結に至ることで、今後中期的に予定されている研究開発投資の実施に向け十分な資金を確保できる見込みです。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りには不確実性が伴うため、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。
当社の財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
(1) 原薬販売に関する契約
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契約書名 |
売買基本契約書 |
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相手先名 |
富士製薬工業㈱ |
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契約締結日 |
2013年2月25日 |
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契約期間 |
フィルグラスチムバイオ後続品製剤の製造販売承認取得日(2012年11月21日)から7年間。ただし、当該有効期間満了日の6ヶ月前までに終了の合意が無い限り、更に1年間自動延長されるものとし、以後もこの例による。 |
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主な契約内容 |
富士製薬工業㈱がフィルグラスチムバイオ後続品製剤を日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、フィルグラスチムバイオ後続品製剤の原薬を継続的・安定的に同社に売り渡し、同社はこれを独占的に買い受ける。 |
(2) 共同開発に関する契約
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契約書名 |
ダルベポエチンアルファバイオ後続品 国内サブライセンス及び共同開発契約書 |
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相手先名 |
㈱三和化学研究所 |
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契約締結日 |
2014年1月21日 |
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契約期間 |
本契約締結日からロイヤリティの支払いが終了する日まで |
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主な契約内容 |
① ㈱三和化学研究所がDong-A ST Co., Ltd.から許諾を受けたダルベポエチンアルファバイオ後続品の国内開発権の再許諾を受け、本製品の国内開発を共同で実施する。 ② 開発マイルストン等の支払いを行い、上市後はロイヤリティを受領する。 |
(3) ライセンスインに関する契約
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契約書名 |
ライセンス契約書 |
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相手先名 |
Dong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱) |
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契約締結日 |
2008年1月21日 |
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契約期間 |
本契約に定める各地域(日本、米国及び一部地域を除く欧州)での販売開始後10年間とし、一方の当事者から更新拒絶の意思表示がない限り、以後1年毎に自動更新される。ただし、日本地域に限り、当社の販売提携先が販売を継続する限り有効とする。 |
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主な契約内容 |
① フィルグラスチムバイオ後続品を産生する細胞及び技術に対する独占的実施権の許諾を受ける。 ② 上記実施許諾により得られたフィルグラスチムバイオ後続品の原薬又は製剤を、医薬品用途において使用、製造、販売及び譲渡を行う権利を受ける。 ③ 契約一時金、開発段階に応じたマイルストン契約金及び上市後におけるロイヤリティを支払う。 |
(4) 共同事業化に関する契約
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契約書名 |
日本国内向け共同事業化契約書 |
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相手先名 |
千寿製薬㈱ |
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契約締結日 |
2016年5月12日 |
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契約期間 |
本契約締結日から、開発を中止又は販売を終了する日まで有効 |
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主な契約内容 |
千寿製薬㈱がラニビズマブバイオ後続品製剤を日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、ラニビズマブバイオ後続品製剤の製剤を継続的・安定的に同社に売り渡し、同社はこれを独占的に買い受ける。 |
当社は、希少疾患、難治性疾患及び小児疾患など等の医療領域を対象として、バイオ医薬品(主にバイオシミラー)及び細胞治療事業(再生医療)における再生医療等製品等を主軸とした研究開発活動を展開しております。
(1) 自社研究開発体制
当社では、研究本部及び開発本部が研究開発を担当しており、従来の札幌研究所(北海道大学創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センター内)に加え、当事業年度において、新たに東京ラボ(東京都江東区)が稼働を開始いたしました。加えて、試験受託機関等の外部委託先を活用し、効率的かつ迅速な研究開発を推進しております。
細胞治療事業の研究開発においては、SHEDの特性と適性があると見込まれる神経系及び筋骨格系の疾患に対象を絞り基礎研究を進める傍ら、遺伝子導入や培養法改変によってSHEDの機能を強化した第二世代SHEDの発明、治験製剤の製法開発、及び製剤投与プロトコル作成に必要な試験など等を行っております。
(2) 共同研究開発体制
当社は、バイオベンチャー企業であることから、限られた人財と要員で事業を推進しております。このため、早期の段階から、各分野に専門性を有する社外の研究機関や製薬企業等と提携することにより共同研究開発体制を構築し、当社の研究開発費の増加を回避しつつ、必要な社外技術の有効活用を図っております。また、多額の開発費用を要する商業用規模での製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験の開発段階においては、製薬企業へのライセンスアウトを基本とし、それに伴う共同研究開発契約等により、契約一時金や開発マイルストン収益を得たり、共同研究開発に伴う役務収益を得たりすることで、研究開発費の負担の軽減を図っております。
(3) 研究開発活動の概要
当事業年度における研究開発費の総額は
(4) 主な開発品の進捗状況
① バイオシミラー事業
各上市済製品においてはパートナー会社との協働の下、フィルグラスチムバイオシミラー、ラニビズマブバイオシミラー、ペグフィルグラスチムバイオシミラーの原薬等の販売、ダルベポエチンアルファバイオシミラーの売上高に応じたロイヤリティによる収益を安定的に計上しております。とりわけ、ラニビズマブバイオシミラー、ペグフィルグラスチムバイオシミラーは、現状の競合製品の不在による想定を超える受注に伴い、今後さらなる売上増が見込まれることから、今後の経営基盤を支える収益源としての役割が期待されます。その他、上述の4製品に続いての上市を目指す第5製品目以降の新たなバイオシミラーの開発も着実に推進しております。
② 細胞治療事業(再生医療)
今後の成長ドライバーとなる細胞治療事業においては、SHEDを原料として、脳性麻痺(遠隔期)、骨疾患等に対する再生医療等製品を主要パイプラインと位置づけ、研究開発の促進とパートナリング活動を推進してまいります。脳性麻痺(遠隔期)を対象とした名古屋大学主導の臨床研究においては、患者登録が完了し、本臨床研究は着 実に進んでおります。
その他、より高い治療目標の達成や、新たな疾患領域への応用拡大を目指し、遺伝子導入や培養法改変によってSHEDの機能を強化した第二世代SHEDの研究開発活動を継続するとともに、米国FDA基準に準拠したMCBの製造完了を受けて、海外での治験実施に向けた準備活動をより一層推進してまいります。その他のパイプラインについても、基礎研究において明確な進展が見られており、今後、開発段階への早期発展を目指し、鋭意取り組んでまいります。