第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、2024年の創業100周年の節目に、改めて当社グループの強みを再整理し、継承・浸透させていくこと、当社グループに対する社会やステークホルダーの期待や要請に真摯に応えていくことを目的として、2002年に定めた「グループ経営理念」を見直しました。

当社グループの使命・責任は、世界中の人に快適と安心を提供し続けることであり、経営の基本となる考え方を示す「グループ経営理念」の下、さまざまな社会課題の解決・地球環境への対応に積極的に取り組むとともに、高品質のプロダクト、素材、サービス、ソリューション、独自の技術革新の追求を通じて、お客様や社会に新たな価値を提供し続けることで、企業価値を高めてまいります。

また、高い倫理性と公正な競争をベースとした企業活動を推進し、タイムリーで透明性のある情報開示と説明責任の遂行、地域社会への積極的貢献、ビジネスパートナーとの相互成長などをグループ共通の行動指針として徹底して実行するとともに、働く人の意欲と納得性を引き出し、一人ひとりの力を組織の力へと高めていくという「人を基軸におく経営」の実践、侃々諤々の議論をベースにした「フラット&スピードの組織運営」の徹底、一人ひとりの個性を活かす「ダイバーシティ経営」の推進など、当社の良き伝統に一層の磨きをかけることで、グローバルグループとして進化し続け、持続可能で豊かな未来を切り拓いてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

企業価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置づけ、FCF(フリーキャッシュフロー)、ROIC(投下資本利益率)、ROA(総資本利益率)、ROE(株主資本利益率)など「率の経営」指標を経営管理の重要指標として、積極的な事業展開と経営体質の強化を推進しております。特に企業価値の源泉であり、同時に全ての管理指標を向上させる総合指標としてFCFを最重視し、収益の増加、投資効率向上策にあわせて、売上債権及び在庫の徹底圧縮など運転資本面からもキャッシュフローを創出すべく取り組んでまいります。

 

(3)中期的な会社の経営戦略

当社グループでは、2023年に、2025年を最終年度とする戦略経営計画「FUSION25」の後半3ヵ年計画(2023~2025年度)を策定し、実行を開始しました。成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめ、「FUSION25」策定当初から掲げる重点戦略9テーマに「インドの一大拠点化」「高機能・環境材料事業」を新たに加え、重点戦略11テーマの施策展開を進めることで、経済価値・環境価値・社会価値の創出に取り組んでおります。

 

(4)企業集団の対処すべき課題

今後の世界経済は、ゆるやかに回復していく見通しです。欧米ではインフレ鈍化と利下げへの転換を背景に個人消費が回復、欧米経済の持ち直しによりアジア・新興国経済は上向くと見込まれます。

当社グループは、2024年10月に創業100周年を迎えます。大きな節目に当たる本年を次の飛躍に向けたスタートと位置付け、本年のグループ年頭方針を「築いた強みと新たな挑戦で、次の100年を切り拓こう」と定めました。

また、2024年度は、「FUSION25」の最終年度につながる非常に重要な年度であり、後半3ヵ年計画で掲げた重点戦略11テーマの施策展開を加速させることで、経済価値・環境価値・社会価値を高めてまいります。

併せて、2024年度の業績目標の達成に向けて、全社収益構造と利益率の改善・向上に取り組むとともに、グループ総合力を結集したグローバル横断での成果創出を推進してまいります。具体的なテーマは以下のとおりです。

 

 

(全社収益構造と利益率の改善・向上に向けたテーマ)

・差別化新商品の投入、機器単体売りからシステム販売への転換などによる、販売価格政策の推進と当社

シェアの向上の両立

・限界利益率の向上に向けた、グローバル横断でのコスト力強化

・強靭なサプライチェーンの構築に向けた、グローバルでの生産・調達・物流改革の実行

・既存固定費の削減と、先行投資・戦略投資の優先順位付け

・実行してきた買収案件・生産能力増強投資の成果創出

(グローバル横断、グループトータルの総合力で大きな成果創出をめざすテーマ)

・グローバルでのアプライド空調事業の積極的拡大と、用途や市場ごとの付加価値提供による業務用空調

ソリューション事業の収益拡大

・差別化技術の水平展開、サービス力の強化、工事の省施工・省人化対応

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、経営の基本的な考え方「グループ経営理念」を前提として、戦略経営計画「FUSION」によってグループの発展の方向を5年ごとに定めるとともに、サステナビリティの重点テーマを特定しています。重点テーマのうち、とりわけ重視しているのが環境(気候変動対応)と人材(人的資本)です。

気候変動対応については、長期的視野に立ち、深刻化する地球環境課題の解決に貢献するため、2018年度に「環境ビジョン2050」を策定しました。また、2019年5月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。環境ビジョンを踏まえながら、戦略経営計画「FUSION」で目標・施策を立案、実行し、事業を通じた社会課題の解決に取り組むことで社会の持続可能な発展に貢献します。

また人的資本については、当社の発展・成長を担う人材をタイムリーに確保・配置・育成していくことが当社の重点課題と捉え、戦略経営計画「FUSION25」の経営基盤強化テーマの一つに「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化」を定め取り組んでおります。

詳細につきましては当社ホームページにて開示しておりますサステナビリティレポートをご参照下さい。当該開示資料は以下のURLからご覧いただくことができます。

https://www.daikin.co.jp/csr/report

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(サステナビリティ共通)

ガバナンス

サステナビリティを経営の重要課題の一つと捉え、CSR担当役員を委員長とする「CSR委員会」が、活動の方向付けと進捗管理を担っております。

「CSR委員会」では、従来のスタッフ部門であるCSR・地球環境センターに加え、関連するコーポレート部門が共同で事務局を担い、グループのサステナビリティを統括的・横断的に推進しております。環境(気候変動対応)や人材(人的資本)をはじめとした重点テーマそれぞれの担当役員を委員として年1回開催、社会動向や重点テーマの進捗状況、推進課題について共有し議論しております。委員会の決定事項は「取締役会」に報告されます。

 

戦略

当社グループは、事業を通じて社会の課題解決と持続的発展(サステナビリティ)に貢献するために新たな価値創造に向けたマネジメントを行っております。

経営の基本的な考え方「グループ経営理念」を前提として、戦略経営計画「FUSION」で、グループの発展の方向を5年ごとに定め、それに基づく全社重点戦略と定量目標・実行計画を設定し行動しております。また、2018年度には長期的視野に立ち、深刻化する地球環境課題の解決に貢献するために「環境ビジョン2050」を策定しました。環境ビジョンを踏まえながら、戦略経営計画「FUSION」で目標・施策を立案、実行し、事業を通じた社会課題の解決に取り組むことで社会の持続可能な発展に貢献します。

 

 

リスク管理

戦略リスクは、当社の主要な経営会議体である「最高経営会議」や「執行役員会」などで、経営幹部が審議しております。財務報告の内部統制リスク及びオペレーションリスクは、代表取締役社長兼COOを委員長とする「内部統制委員会」にて、年2回、グループのリスクマネジメントを含めた内部統制全体について、適切に機能しているか点検・確認しております。その上で、PL・品質、安全、生産・販売活動、労働慣行、災害等をはじめとするオペレーションリスクについて「企業倫理・リスクマネジメント委員会」にてグループ横断的なリスク対応策を推進・管理しております。

 

指標及び目標

自社と社会の2軸で影響評価を分析した結果と戦略経営計画「FUSION25」を踏まえて、サステナビリティに関する重要なテーマについて、指標と目標を定めて推進しております。指標と目標の詳細はサステナビリティレポートをご参照ください。

 

(気候変動)

ガバナンス

・CSR担当役員を委員長とする「CSR委員会」で、気候変動を含めた環境に関するリスク・機会、取り組み方針、目標についての議論や実績の進捗を確認しております。

・特に気候変動は、空調事業を主力とする当社グループの重要課題であり、「カーボンニュートラルへの挑戦」を戦略経営計画「FUSION25」の成長戦略テーマの一つに位置付け、定期的に進捗を取締役会に報告しております。

 

戦略

・国際エネルギー機関(IEA)の論文「The Future of Cooling」などに基づき気候関連シナリオの分析を実施しております。

・空調需要は、2050年に現在の3倍以上に拡大すると予測されており、空調に伴うエネルギー規制強化や高い温室効果を有する冷媒に対する規制強化などがリスクとなり得る一方、当社グループが強みとする環境性に優れた製品・サービスを拡大する機会にもつながります。

・2050年に温室効果ガス排出実質ゼロをめざす「環境ビジョン2050」を掲げ、その実現に向けた温室効果ガス排出削減目標と主な施策を、戦略経営計画「FUSION25」で具体化しております。

・取り組みに当たっては、気候変動に伴う様々な外部環境の変化について、その要因を「移行リスク」と「物理的リスク」に分類のうえ、当社事業への影響を評価し、重要なリスクと機会を特定しております。

 

<気候関連リスクと機会>

種類

当社事業へのインパクト

リスク

移行

冷媒規制の強化

規制が極端に厳しくなり、規制に合わない既存の空調機が販売できなくなる可能性

電力の需給逼迫

新興国において、エアコンの普及に伴って電力消費量が増え、電力不足が生じてエアコンの販売拡大が難しくなる可能性

物理的

大規模災害や水不足による生産遅延

異常気象に伴う大規模災害や、水ストレスが高い地域に位置する生産拠点での水不足が発生し、操業に支障が生じる可能性

機会

移行

冷媒規制の強化

規制に対応する技術を持たない企業は淘汰され、当社の強みである低温暖化冷媒を使用した空調機の販売拡大が期待される

省エネルギーに関する規制の強化

省エネ規制の強化に対応する技術を持たない企業は淘汰され、当社の強みである省エネ性の高い空調機の販売拡大が期待される

化石燃料使用に関する規制の強化

化石燃料使用に対する規制がますます厳しくなり、燃焼暖房機もその対象となることから、当社の強みであるヒートポンプ暖房機のニーズが高まり販売拡大が期待される

 

 

 

リスク管理

・シナリオ分析に基づき、世界各地域の事業拠点から気候関連リスクを収集し、優先度を評価して、戦略に反映すべき気候関連リスクを特定しております。

・気候関連リスクを事業戦略に大きな影響を与えるリスクの一つとして認識し、全社リスクマネジメントプロセスに統合しております。

・代表取締役社長兼COOを委員長とする「内部統制委員会」で全社リスクの管理状況について確認し、「取締役会」に報告しております。

 

指標及び目標

・「環境ビジョン2050」で、2050年に温室効果ガス排出実質ゼロをめざします。

・戦略経営計画「FUSION25」で、当社事業による温室効果ガス実質排出量削減目標「2019年を基準年とし、未対策のまま事業成長した場合の排出量(BAU:Business As Usual)と比べ、実質排出量(温室効果ガス排出量から排出削減貢献量を引いたものと定義)を2025年に30%以上、2030年に50%以上の削減」を設定しております。

・温室効果ガス実質排出量の実績につきましては、当社ホームページにて開示しておりますサステナビリティレポートをご参照下さい。当該開示資料は以下のURLからご覧いただくことができます。

  https://www.daikin.co.jp/csr/report

 


 

(人的資本・多様性)

戦略

 (1)人材育成の方針

・当社はグループ経営理念に「一人ひとりの成長の総和が企業の発展の基盤」と掲げ、企業の競争力の源泉は「人」であり、変革の担い手は「人」以外にあり得ないという信念を徹底して貫いてきました。

・人材育成については、「人は仕事の経験を通じて成長する」という考えのもと、一人ひとりの適性を見極めて仕事を任せチャレンジするOJTを軸とした人材育成を展開しております。そのうえで、OJTを補完するものとして、Off-JTも含めた育成の機会の充実を図っております。

 

・例えば、当社の戦略・事業の方向性、時代変化も踏まえ、グローバル事業の第一線で活躍できる経営幹部層を育成する「ダイキン経営幹部塾」、若手をグローバル人材として育成するための「海外拠点実践研修」、AI分野の技術開発などを担う人材を育成する「ダイキン情報技術大学」など、必要な領域ごとに対象者を選抜した多様な育成策を展開しております。さらには、各大学との連携強化を通じた人材育成と多様な専門性・経験の取り込みによる新たな価値の創造など、積極的な人材への投資を行っております。

 

 (2)社内環境整備

・世界170カ国以上で事業展開し、2023年度の海外売上高比率は84%となっております。グループ従業員約9万8千人のうち、海外従業員比率は8割を超えております。

・グローバルでの提携・連携、M&Aなどにより事業が急拡大し、当社グループを構成するメンバーや価値観が多様性を増す中、国籍・年齢・性別等に関わらず、一人ひとりの個性や強みを組織の力とするダイバーシティマネジメントは、当社の最大の強みであると考えております。

・外部環境が大きく変化する中、当社の持続的な成長・企業価値の向上を実現し続けるためには、企業活動の担い手である「人材」が今後ますます重要になります。これまで当社が実践してきたダイバーシティマネジメントにさらに磨きをかけていくとともに、目に見える属性だけではなく、多様な経歴、仕事経験、バックグラウンド、働き方、価値観などに注目し、組織の力にしていくことが不可欠であります。

そのため当社では、戦略経営計画「FUSION25」において「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化」を経営基盤強化テーマの一つと定めるとともに、あらゆる層一人ひとりが挑戦・成長し、能力を発揮してより活躍し続けられる環境の実現に取り組んでおります。

 

・当社グループは、2024年の創業100周年の節目に、これからのさらなる成長発展を支える経営の基本となる考え方として、「グループ経営理念」の見直しを行いました。今回の新たな経営理念では、社会課題の解決や、持続可能な発展への貢献など、新たな価値の提供を目指し続ける企業姿勢を示すと同時に、当社の強み・競争力の源泉として、「人を基軸におく経営(People Centered Management)」「ダイバーシティ・マネジメント」「技術力」「グローバルグループ間の連携」などを継承・強化していくことを強調しています。

・また、「人を基軸におく経営」のさらなる浸透と実践に向けて、当社グループ社員一人ひとりに求める行動指針「PCM Behaviors」を新たに策定し、展開します。

・2024年度は様々な場面を通じて、新たな経営理念や「PCM Behaviors」の全従業員への認知・理解を進めてまいりますが、並行して、永年培ってきた当社独自の企業文化や強みの再整理・言語化、またそれらがどのように企業価値向上に具体的に結び付いているのかの検証を進めております。当社の良さ、強みを示すための定性的・定量的な開示項目を検討し、今後の人的資本情報開示の充実につなげてまいります。

 

<あらゆる層が活躍できる環境づくり>

65歳までの定年延長及び人事・処遇制度の見直し

・当社は今後の事業拡大に向けて、カーボンニュートラルへの挑戦、ソリューション事業の推進、国内外における生産拠点の設立等、多くの挑戦テーマが目白押しの状況であり、その担い手である人材が不足しています。このような状況に対応するため、外部からのキャリア採用も拡大しておりますが、今、社内にいる人材の能力を従来以上に引き出し、活かしていくことが最も重要だと考えております。

・このような背景から、2021年に本人が希望すれば70歳まで働き続けることができるよう再雇用制度を拡充しました。さらに2024年4月1日より、定年年齢を従来の60歳から65歳へ延長するとともに、若手からベテランまで一人ひとりの挑戦・成長を加速する人事・処遇制度の見直しを行っております。

・新制度では、これまで56歳としていた管理職の役職定年を廃止するとともに、59歳以下に適用していた資格等級・評価・賃金制度を、定年の65歳まで継続して運用します。これにより賃金水準は65歳まで一貫性のある体系へと見直され、年齢で一律的に賃金が下がることのない仕組みになります。

・同時に、若手・中堅を含むあらゆる年齢層の能力成長や成果により報いることができるよう制度運用を見直し、若手優秀層の昇格の早期化や思い切った基幹職登用を進め、組織全体の活性化につなげてまいります。

 

・当社では2001年から年齢給・勤続給といった一律的な賃金項目を廃止しておりますが、今回の制度見直しにより、一律的な年齢要素をさらに極小化し、従来以上に多様な人材が挑戦・成長し、成果を創出する風土へとつなげていきたいと考えています。

 

一人ひとりの無限の可能性を引き出す人材育成・配置の実現に向けたグローバル人材データベースの構築

・当社グループの競争力の源泉・強みである「人」の力を最大限引き出していくための一つの基盤として、人材データベース「DAIKIN People」を構築し、2023年10月より国内従業員を対象に利用を開始しました。「年齢」「役職」「社内歴」といった従業員一人ひとりの基本情報に加え、上司・本人が「強みや専門性」「仕事・キャリアの考えや希望」「育成に関する方針」「上司との対話記録」等を記入し、情報を蓄積・更新する仕組みを構築しております。一人ひとりが持てる力をさらに発揮するためのツールとして活用し、タイムリーな人材育成・配置等につなげてまいります。

・今後は、国内での基盤を構築しながら、データベースのグローバル展開を実施し、グループ全体での人材把握・探索をめざします。

 

指標及び目標

 (1)経営幹部・ビジネスリーダーの育成

・変化の激しい市場環境に対応し、さらなる成長・事業拡大を加速するためには、永年培ってきた当社の良さ、強みにさらに磨きをかけ、新たな価値創造につなげる力を身につけ、グローバル事業の第一線で活躍できる幹部人材を継続的に育成することが重要となります。

・当社では、今後のグローバルでの成長・発展を担う経営幹部・ビジネスリーダーの育成をグループ全体で実施しております。育成対象を役員、事業部長・部長クラス、課長・リーダークラスの3層に分け、それぞれ専用の育成プログラムを実施しております。同時に各地域・拠点での幹部・リーダー育成策も実施しております。

 


 

目標:幹部・リーダー育成プログラム参加人数  年間50名前後

実績:54名(2023年度実施人数)

 

 

 (2)海外拠点の経営幹部への登用

・当社は、急速に海外事業を拡大する中で、現地の文化を認め、地域に密着したビジネス展開ができるよう、積極的に権限委譲を進めてきました。現地従業員の現地経営幹部への登用を積極的に進め、海外拠点の経営のグローバル化を推進してきました。2023年度、海外拠点の現地人社長の比率は46%、取締役の比率は50%にのぼります。

・今後も引き続き、現地経営幹部候補の育成を加速し、国籍に関わらず、優秀な人材を適材適所で経営幹部ポジションへ登用してまいります。

 

目標:現地人社長比率の維持向上

実績:過年度及び2023年度の実績は以下の通り

2019年

2020年

2021年

2022年

2023年

47%

43%

45%

44%

46%

 

 

 (3)イノベーションを創出するダイキン独自のAI・IoT人材を育成

・産業構造や社会構造の大きな変革期に対応するため、「デジタル人材」を育成する「ダイキン情報技術大学」を設立しました。大阪大学を中心とした教育機関、先端研究機関などの講師を招いて、数学などの基礎知識からプログラミング、機械学習やAI応用まで幅広い教育を行っております。

・管理職、既存社員、新入社員それぞれの育成を加速し、2023年度末にデジタル人材約1,500人の育成を達成しました。現在は2025年度末までに2,000人の育成を目標に取り組みを進めております。

・2023年度末までに2年間の教育を修了した新入社員約440人を各部門に配属し、デジタル技術を核とした新たな事業創出テーマ、業務プロセスの効率化テーマに取り組んでおります。

・当社では、当社及び国内外のグループにおける、大きな成果を創出した取り組みや、優れたイノベーション、革新的な新商品開発等を、毎年「社長表彰」として表彰しておりますが、本年の表彰案件約50件のうち、1/4強(26%)の13件の取組みに情報技術大学の卒業生が参画しており、具体的な成果創出に結びつきつつあります。

 

デジタル人材の育成

目標:2,000人(2025年度末)

実績:約1,500人(2023年度末)

 

 人的資本経営・多様性に関するその他の取り組みや詳細については、サステナビリティレポート・統合報告書もあわせてご参照ください。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与え、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると経営者が認識している主なリスクは以下のとおりであります。

なお、以下に記載の内容は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 市場環境に関連するリスク

①市場環境の変化に関連するリスク

当社グループは、空調をはじめとする各事業領域において、開発・調達・生産・販売・サービスなどの事業活動をグローバルに展開し、販売網強化によるシェア向上、競争力ある商品・サービスの提供、固定費削減などにより、事業拡大と収益性向上に努めております。

しかしながら、政治・外交情勢の不安定化、貿易摩擦、景気の後退、天候不順、新型コロナウイルスをはじめとした感染症のまん延などにより、当社グループが事業展開する国・地域の市場環境が悪化した場合、事業拡大・収益性向上が計画通りに進まない可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②為替相場・資金調達環境の変動に関連するリスク

当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は高く、今後もグローバル展開の加速により、海外売上高の割合がさらに増加する見込みです。連結財務諸表の作成にあたっては、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目を円貨換算しております。従って、換算時の為替レートにより、これらの項目は、各地域の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円貨換算後の価値が影響を受けることになります。また、部材の調達、商品やサービスについて外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によって製造コストや売上高に影響する可能性があります。当社グループでは、これらの為替リスクを回避するため、短期的には為替予約などによりリスクヘッジを行っており、中長期的には為替変動に連動した最適調達・生産分担の構築、通貨毎の輸出入バランス化等により為替変動に左右されない体質の実現に取り組んでおります。

また、当社グループでは事業活動に必要となる資金を、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーや社債によって調達しており、経済環境が変動した際に、金融機関の貸出姿勢や資金調達市場の状況が変化し、必要な資金が調達できないリスク及び調達金利が上昇するリスクがあります。これらのリスクに備え、コミットメントラインの設定、金利スワップ等による金利の固定化などの取り組みを行っておりますが、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響する可能性があります。

 

③有価証券の時価の変動に関連するリスク

当社グループは、戦略的観点から当社の企業価値の向上が期待できる企業の株式を保有しておりますが、株式市況の動向によっては、評価額が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響する可能性があります。

 

(2) 事業活動に関連するリスク

①技術・商品・サービスに関連するリスク

当社グループは、顧客価値・社会的価値の創出を目指し、常にお客様に満足頂ける技術・商品・サービスの開発に注力しております。しかしながら、当社グループの想定とは異なる新たな技術・商品・サービスの出現や、新規参入を含む競合激化などの急激な環境変化により、技術・商品戦略の修正や転換が必要となる可能性があります。

このような場合、新商品・サービスの投入や新たな事業の立ち上げが遅れ、競合他社や新規参入企業に対する優位性が低下し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②買収・他社との提携等に関連するリスク

これまで当社グループは、事業のグローバル展開や品揃え・販売体制の強化などのために、既存の経営資源を活用した自前での成長に加えて、企業買収を活用してきました。今後、事業領域の拡大や事業構造の転換を加速させるためにも、提携・連携・M&Aを積極的に行ってまいります。案件の検討段階では、事業拡大に向けた戦略に留まらず、事業運営上のリスクについても検証を行うなど、案件の実行後には事業統合が円滑に進むように努めております。しかしながら、案件の実行後に、市場環境の悪化や、対象企業の経営資源が十分に活用できない、対象企業との連携が円滑に進まないなど、統合が計画通りに進まない可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③商品・サービスの品質と責任

当社グループでは、世界170カ国以上で事業を展開しており、現地のニーズに合致した商品・サービスの提供に努めております。また、各地域において厳格な設計審査と品質検査を実施し、品質・安全性の確保に万全を期しております。しかし、万一商品の安全性に関する問題が発生した場合には、顧客の安全を第一に考え、事故の発生や拡大を防止するため、修理・交換、新聞などでの告知、販売事業者等社外の関係者への情報開示など、製造物責任法に基づく責務を果たします。

これらの対策には多額の費用が発生する可能性があるため生産物賠償責任保険等に加入していますが、保険の補償限度額を超える場合やブランドイメージの低下により売上が減少する場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④調達に関連するリスク

当社グループでは、サプライヤーの経営状況の悪化、自然災害や事故の発生等の状況下においても、原材料や部品等が安定的かつタイムリーに、また合理的な価格で供給されることを確保するため、サプライヤーの複数化・自国・自地域内調達化、部品の共通化・標準化等の対応を進めております。また、サプライチェーンCSR推進ガイドラインを策定し、サプライヤーに対して人権・環境・コンプライアンス等のCSR取り組みの実施をお願いしております。しかしながら、上記のような対応が短期的には困難な場合があるほか、世界的な感染症の拡大や大規模災害などの想定を超えるような甚大な事象が発生した場合には、原材料や部品等の供給不足、納入遅延等が発生する可能性があります。また、サプライチェーン上において労働者の権利侵害等の重大な法令違反があった場合には、発注元として当社の社会的信用が低下する可能性があります。

当社グループとサプライヤーは、契約により原材料や部品等の価格を決定しております。長期契約の活用など安定した価格で調達できるよう努めておりますが、急激な需給環境の変化や為替相場の変動等により、調達価格の高騰が避けられないこともあります。

これらの場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤法的規制

当社グループは、世界170カ国以上で事業を展開しており、競争法・贈賄防止法・人権や労働関係法・安全規制関連法・環境規制関連法等の世界各国・各地域の法律や規制の適用を受けております。各国において、より厳格な法規制の導入や当局の法令解釈や運用指針の変更により、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンスの徹底に向け、役員・従業員一人ひとりが取るべき行動を明示した「グループ行動指針」及び「グループ人権方針」等の具体的な取り組み方針を定めております。各テーマについて教育研修を実施するとともに、年1回、法令・規程どおりに日々の業務を行っているかをセルフチェックする「自己点検」を導入し、コンプライアンス意識を高めるとともに、監査を実施し、遵守状況を確認しております。

しかしながら、法令違反が生じた場合には、課徴金等の行政処分を受ける可能性があります。また、ブランドイメージの低下により売上が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥情報セキュリティ

当社グループは、事業を展開するにあたり、第三者の機密情報や顧客の個人情報を取得することがあり、また、当社独自の機密情報も扱っております。このため、ハッカーによる不正アクセスやサイバー攻撃を受け、個人情報や機密情報が外部へ流出したり、各拠点の生産ラインや物流システムが停止したりするなど、事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのような事態が生じた場合、多額の損害賠償金や制裁金の支払を要する場合があります。さらに、多大な対策費用を支払うことになり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

これらの事象の発生を防ぐため、当社では、情報セキュリティ担当役員を委員長とする審議機関「情報セキュリティ委員会」を設置し、情報セキュリティ戦略・対策方針を審議し、情報セキュリティシステムの強化、秘密表示の徹底、外部からのアクセス制限、社内規程の整備や教育研修などの対策を講じております。同委員会で審議した重要事項や全社へ周知・徹底すべき事項は、「企業倫理・リスクマネジメント委員会」、代表取締役社長兼COOを委員長とする「内部統制委員会」へ報告するとともに、取締役会にも報告を行っております。また、海外グループ会社を含めた全社のセキュリティ管理体制を強化しております。

 

 

(3) 気候変動等環境に関連するリスク

気候変動はグローバルに取り組むべき社会課題の一つであり、当社グループは、「環境社会をリードする」とのグループ環境基本方針に基づいて、省エネ高効率空調機や低温暖化冷媒の開発・普及、建物全体でエネルギーを効率的に利用するソリューションの創出などにより、温室効果ガス(CO2・フロン)の排出を抑制し、気候変動の緩和に積極的に取り組んでおります。しかしながら、低炭素社会への移行に伴い、温室効果を有する冷媒ガスの使用・排出規制や省エネルギー規制がさらに強化される場合、規制に適合するために必要なコストが増加する可能性があります。また、仮にこれらへの十分な対応が困難であったり、遅れが生じた場合には、製品の販売に支障が出るなど、円滑な事業活動に影響が及ぶ可能性があります。物理的なリスクとしては、異常気象に伴う大規模災害発生時に当社グループの従業員、生産設備、システム、サプライチェーン等に被害が発生し、事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。

また、当社グループでは、事業活動による環境汚染の発生を防止すべく、規制の遵守は当然のこと、より厳しい自主基準を設けるなど万全を期しております。しかしながら、当社が排出した化学物質等に起因して結果的に環境汚染問題が発生した場合には、これに対して浄化処理、損害賠償等の対応を行う必要が生じ、そのための費用が発生する可能性があります。また、社会的信用の低下が発生する可能性があります 。

以上のようなリスクの顕在化により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(4) その他

①固定資産の減損

当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上しており、これらの資産については、減損損失の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があると認められる場合には、将来キャッシュ・フローの総額を見積り、減損損失の有無を判定しております。判定に必要な将来キャッシュ・フローは経営計画を基礎とし、将来の不確実性を考慮して見積っております。今後の業績変動等により減損損失を認識する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、継続的な業績のモニタリングを行っており、投資に対する回収が困難となる前に対策を講じるように努めております。

 

②自然災害等

当社グループは、世界中に研究開発・製造・販売・サービスの拠点を有しております。近年わが国では、地震・津波・台風・豪雨などの自然災害に見舞われております。当社では、このような自然災害に備え、各事業所で施設の耐震化を進めるほか、津波・大雨・洪水等に対する対策を進めております。また、自然災害に関する防災規程を制定し、定期的に防災訓練を実施するなどにより、自然災害による影響の極小化を図っております。しかしながら、甚大な自然災害により、当社グループの従業員・生産設備・システム等に被害が発生し、事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。海外においても、各種の自然災害のほか、テロや暴動・戦争等によって、当社グループの事業拠点だけではなくサプライチェーンや顧客が被害を受けることも考えられ、これらにより当社グループの事業活動に障害や遅延が発生する可能性があります。

新型コロナウイルス感染症については、わが国では感染状況の収束に伴い、行動制限が緩和されたことにより事業活動への影響は低減しました。海外においても事業活動に障害や遅延が発生するリスクは軽減されてきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の再拡大や新たな感染症が流行した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当期の世界経済は、米国が堅調であった一方で、欧州・中国は経済が停滞し、全体として低調に推移しました。米国経済は、雇用環境の改善や株価上昇による資産効果に支えられ、堅調な個人消費が景気を牽引した反面、住宅投資は金利上昇を受けて停滞しました。欧州経済は、インフレと金利上昇により個人消費、住宅投資がともに落ち込んだことに加えて、中国向けの輸出も落ち込み、減速しました。中国経済は、不動産不況や欧米向けの輸出の伸び悩みが見られました。アジア・新興国経済は、インバウンド需要の回復や旺盛な個人消費に支えられ、堅調に推移しました。日本経済は、サービス業が好調であったものの、インフレによる個人消費の停滞が重石となり、景気回復は緩慢なペースに留まりました。

このような事業環境のもと、当社グループでは、2025年を最終年度とする戦略経営計画「FUSION25」の後半3ヵ年計画(2023~2025年度)を策定し、実行を開始しました。成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめ、「FUSION25」策定当初から掲げる重点戦略9テーマに「インドの一大拠点化」「高機能・環境材料事業」を新たに加え、重点戦略11テーマの施策展開を進めることで、経済価値・環境価値・社会価値の創出に取り組みました。

また、当期は、環境変化をチャンスとした事業拡大・シェアアップと、収益力の再強化に向けて、以下のテーマに取り組みました。

・カーボンニュートラル・省エネに資する商品・サービスによる、業務用途・住宅用途での当社シェアの向上

・用途や市場ごとの付加価値提供による、ソリューション事業の収益拡大

・市場環境の変化に柔軟・迅速に対応が可能な、強靭なサプライチェーンの構築

・市場・顧客のニーズにミートした差別化商品の投入による、販売価格政策の推進

・変動費・物流費低減、材料置換、生産性向上など、グローバル横断でのコスト力強化

・積極的な投資を行いながら収益力を向上させるため、デジタルを活用した間接業務効率化などによる固定費の削減

・実行してきた買収案件・生産能力増強投資の成果創出

これらの取り組みを進める中で、それぞれの地域・事業の進捗状況をきめ細かくフォローしながら、環境変化に対して臨機応変に先手を打ち、業績に結びつけました。

当期の経営成績については、売上高は4兆3,953億17百万円(前期比10.4%増)となりました。利益面では、営業利益は3,921億37百万円(前期比4.0%増)となりましたが、主に金利上昇による支払利息の増加等により経常利益は3,544億92百万円(前期比3.2%減)となりました。一方で、主に政策保有株式の売却を進めたことにより親会社株主に帰属する当期純利益は2,603億11百万円(前期比1.0%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。

 

①  空調・冷凍機事業

空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比11.0%増4兆288億23百万円となりました。営業利益は、前期比2.7%増3,333億3百万円となりました。

国内空調では、業務用市場の需要は、ビル用・設備用・工場用などの需要が回復した一方、市場規模の大きい店舗・オフィス用の需要回復が遅れ、前期を下回りました。また、住宅用市場の需要は、猛暑による需要の拡大が見られたものの、耐久消費財に対する消費マインドの冷え込みや、過去数年間の高需要の反動により、前期を下回りました。このような状況の中、当社グループは、業務用空調機器市場に向けては、高い省エネ性能と施工性を兼ね備えた「FIVE STAR ZEAS」、個別運転ニーズに応える「machi(マチ)マルチ」、既設の冷媒配管を利用しスムーズな空調機器の更新が可能な更新用ビル用マルチエアコン「VRV Q」シリーズなど、高付加価値商品を中心にユーザー提案を強化し、売上高は前期を上回りました。また、住宅用空調機器市場に向けては、需要減少の影響を受ける中、電気料金の上昇や住宅設備への省エネニーズの拡大を背景に、高い省エネ性能を持つ『うるさらX(エックス)』を中心にユーザー訴求の強化を進め、売上高は前期並みとなりました。

 

米州では、住宅用空調機器については、長引くインフレや住宅ローン金利の高止まりなどにより業界需要が減速し、販売は厳しい状況が続きました。このような状況の中、上期の猛暑効果による追い風や、ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)の堅調な需要に伴う増販、前期に買収した会社を活用した販売網強化、さらに価格政策の実施に努めたことなどにより、売上高は前期を上回りました。大型ビル(アプライド)空調については、市場の成長の取り込みに加え、生産能力増強や価格政策の効果もあり、空調機器の販売を伸ばしました。また、買収した製造業・データセンター等の成長市場に強みを持つ会社や販売代理店、カスタムエアハンドリングユニットメーカーでの拡販、さらに、計装・エンジニアリング会社を活用したソリューション事業の拡大もあり、売上高は前期を大きく上回りました。

中国では、ゼロコロナ政策が解除され、3年ぶりに生産・販売活動を全面的に展開しました。不動産市況の回復は遅れているものの、住宅用市場を中心に販売を拡大し、地域全体の売上高は前期を上回りました。利益面では、高付加価値商品の拡販、コストダウン等に取り組み、これまでの高水準を維持しました。住宅用空調機器市場では、景気が減速する中、ユーザーダイレクトのオフラインの小売販売に加え、ショールームを活用したライブ放送、WEB戦略、SNSなどオンラインを組み合わせた当社グループ独自の販売活動が売上拡大に貢献しました。また、空調・換気・ヒートポンプ床暖房に、省エネ・空気質提案などのソリューションサービスを組み合わせた住宅用マルチエアコンの新シリーズ「Daikin Care中央空気システム」を投入し販売を拡大しました。業務用空調機器市場では、カーボンニュートラル政策の推進による政府物件・工場・グリーンビル(環境性能が高まるよう配慮して設計された建物)などの市場の伸びを受け、省エネを切り口とした新商品を投入しました。アプライド空調機器市場では、インフラ・半導体関連など成長分野に資源を投入したことに加え、保守・メンテナンス事業を強化しました。

アジア・オセアニアでは、インドでの好調な販売が牽引し、地域全体の売上高は前期を上回りました。アセアン・オセアニア地域では、インフレ率の高止まりによる消費低迷や需要減速の中、販促施策の展開、販売店への訪問活動等が奏功し、住宅用空調機器の売上高は前期を上回りました。業務用空調機器についても、金融引き締めによる施主やコントラクター等の資金繰りが悪化した影響でプロジェクトが遅延する中、販売店の開発・育成を推進し、売上高は前期を上回りました。インドでは、引き続き経済成長を背景に住宅用・業務用空調機器ともに売上高は前期を大きく上回りました。

欧州では、金融引き締め政策に伴う高金利、インフレによる消費低迷を受け大幅な需要減となりました。このような逆風のもと、当社グループでは各国での出荷最大化に取り組みましたが、住宅用市場を中心に空調機器の需要が減速した影響が大きく、現地通貨での地域全体の売上高は前期を下回りました。一方で、為替のプラス効果により、円貨換算後の地域全体の売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器は、熱波到来によりフランス・スペイン等で夏季の販売が拡大しましたが、高金利やインフレに伴う住宅の着工件数の減少や景気減速による消費マインドへの影響が大きく、売上高は前期を下回りました。住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器については、販売店開発や補助金申請支援などの販売力強化と商品ラインナップ拡充に取り組みました。しかし、イタリア・ドイツ・フランス等の主要市場における各国政府による補助金制度の削減等の影響に加え、欧州のガス価格下落により、各国でガスやオイルボイラーからの更新需要が停滞し、売上高は前期を下回りました。業務用空調機器では、コロナ規制の緩和による反動需要は一巡しましたが、きめ細かい販売活動の展開により、コロナ後に回復してきたホテル・レストラン向けの需要や、オフィスや店舗等の省エネニーズを着実に取り込み、売上高は前期を上回りました。アプライド空調機器では、データセンター向けの販売が拡大したこと等により、売上高は前期を上回りました。

中近東・アフリカでは、売上高は前期を大きく上回りました。UAE・ナイジェリア等での業務用物件の受注増加が販売を牽引しました。トルコでは、前期より現地で生産を開始した業務用空調機器において短納期対応を強みに販売を拡大しました。また、熱波による需要の取り込みに加え、震災復興需要もあり、住宅用空調機器においても販売が大きく増加しました。

 

 

フィルタ事業では、中国の景気減速は影響したものの、堅調な米国経済を筆頭に、日本・欧州・アジアでも総じて需要は底堅く推移しました。米国では、前期に事業買収した会社を含め代理店販売による病院・製薬・データセンター等のハイエンド市場で販売を強化しましたが、収益性改善のため低収益事業からの撤退を進めたこともあり、売上高は減少しました。欧州では、省エネや空気質に対する意識・ニーズは引き続き堅調で、一般ビル・OEM市場向けを中心に販売は安定して推移しました。アジア・中東では、東南アジアにおける半導体市場での販売が減速し、中国では景気減速による市場規模縮小もありましたが、中東及びインドを含むアジア地域全体では販売は前期並みとなりました。また、国内では、電子・半導体・製薬メーカーの需要を取り込み、高性能フィルタ・一般機器の販売が堅調に推移しました。さらに、ガスタービン・集塵機事業は、引き続き油田向け特殊フィルタの販売が好調に推移しました。このように、販売が好調な地域・事業もありましたが、米国における低収益事業からの撤退による販売減が影響し、フィルタ事業全体の売上高は前期を下回りました。

舶用事業では、舶用エアコン・冷凍機の販売を伸ばしましたが、需要減速による海上コンテナ冷凍装置の販売台数が減少し、舶用事業全体の売上高は前期を下回りました。

 

②  化学事業

化学事業セグメント合計の売上高は、前期比0.2%増2,638億95百万円となりました。営業利益は、前期比13.3%増514億70百万円となりました。

フッ素化学製品全体は、半導体・自動車分野を中心にした広範囲での需要回復遅れ、それに伴う流通在庫調整の動きなどがありましたが、為替のプラス効果により売上高は前期並みとなりました。

フッ素樹脂は、LAN電線分野での需要回復の遅れや自動車分野での流通在庫調整などにより販売が落ち込んだものの、半導体装置向け材料の増産による供給力の向上もあり、売上高は前期を上回りました。一方、フッ素ゴムについては、自動車分野等での販売減により、売上高は前期を下回りました。

化成品は、表面防汚コーティング剤や撥水撥油剤、さらには半導体プロセス向けエッチング剤などの需要の落ち込みにより、売上高は前期を下回りました。

フルオロカーボンガスについては、原材料市況高騰に対応した価格政策の実施に努め、売上高は前期を大きく上回りました。

 

③  その他事業

その他事業セグメント合計の売上高は、前期比16.1%増1,025億98百万円となりました。営業利益は、前期比2.1%増73億35百万円となりました。

油機事業では、産業機械用油圧機器は、国内市場では工作機械向けを中心に需要が減少したものの、前期に買収した欧州を拠点とする会社の欧米向けの販売の増加が寄与し、売上高は前期を上回りました。一方、建機・車両用油圧機器は、国内市場及び米国市場向けの販売が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。

特機事業では、酸素濃縮装置及びパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の販売は減少しましたが、防衛省向けの受注が増加したことにより、売上高は前期を上回りました。

電子システム事業では、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客ニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『Smart Innovator(スマートイノベーター)』の販売が増加したことに加え、データサイエンスソフトの増販もあり、売上高は前期を上回りました。

 

総資産は、4兆8,802億30百万円となり、前連結会計年度末に比べて5,765億47百万円増加しました。

流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,995億15百万円増加し、2兆7,265億98百万円となりました。

固定資産は、建物及び構築物の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,770億31百万円増加し、2兆1,536億31百万円となりました。

負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,683億39百万円増加し、2兆1,929億27百万円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や為替の変動によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べて4,082億7百万円増加し、2兆6,873億2百万円となりました。

 

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.9%から54.0%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の7,635.27円から9,009.19円となりました。

また、有利子負債については、短期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて805億54百万円増加し、9,682億39百万円となりましたが、総資産の増加により有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、20.6%から19.8%となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、棚卸資産の減少等により、前連結会計年度に比べて2,406億71百万円収入が増加し、3,995億67百万円の収入となりました。投資活動では、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少等により、前連結会計年度に比べて26億5百万円支出が減少し、2,271億88百万円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の増加幅の減少等により、前連結会計年度に比べて165億34百万円支出が増加し、1,296億23百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べて2,544億98百万円増加し、855億8百万円のキャッシュの増加となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

空調・冷凍機事業

2,855,263

△0.4

化学事業

233,821

△14.8

その他事業

94,516

16.3

合計

3,183,601

△1.2

 

(注) 1  金額は販売価格によっております。

 

(2) 受注状況

当社グループの製品は、大部分見込み生産であるため、受注高及び受注残高の記載は省略しております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

空調・冷凍機事業

4,028,823

11.0

化学事業

263,895

0.2

その他事業

102,598

16.1

合計

4,395,317

10.4

 

(注) 1  セグメント間の取引については相殺消去しております。

2  いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

以下に記載の内容については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。

なお、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 財政状態

①資産

総資産は、4兆8,802億30百万円となり、前連結会計年度末に比べて5,765億47百万円増加しました。

流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,995億15百万円増加し、2兆7,265億98百万円となりました。

固定資産は、建物及び構築物の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,770億31百万円増加し、2兆1,536億31百万円となりました。

 

②負債及び純資産

負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,683億39百万円増加し、2兆1,929億27百万円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や為替の変動によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べて4,082億7百万円増加し、2兆6,873億2百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.9%から54.0%になり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の7,635.27円から9,009.19円となりました。

 

(3) 経営成績

①売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比10.4%増4兆3,953億17百万円となりました。

空調・冷凍機事業では、金利上昇やインフレによる個人消費や住宅投資の低迷の影響を受けましたが、販売力の強化や差別化商品の投入による販売価格政策の実施に努め、売上高は前連結会計年度比11.0%増4兆288億23百万円となりました。

化学事業では、半導体・自動車分野を中心とした広範囲で需要回復の遅れがありましたが、拡販施策の展開や価格政策を実施したことなどにより売上高は前連結会計年度比0.2%増2,638億95百万円となりました。

その他事業全体では、産業機械用油圧機器の欧米向けの販売が増加したことなどにより、売上高は前連結会計年度比16.1%増1,025億98百万円となりました。

 

②営業費用、営業利益

売上原価は、前連結会計年度比8.9%増加し、2兆8,856億44百万円となりました。

販売費及び一般管理費については、前連結会計年度比17.1%増加し、1兆1,175億36百万円となりました。人件費の増加が主な要因であります。

以上の結果、営業利益は前連結会計年度比4.0%増3,921億37百万円となりました。

なお、セグメントの営業損益については、空調・冷凍機事業では、前連結会計年度比2.7%増3,333億3百万円の営業利益となり、化学事業では、前連結会計年度比13.3%増514億70百万円の営業利益となり、その他事業は前連結会計年度比2.1%増73億35百万円の営業利益となりました。

 

③営業外損益、経常利益

営業外損益は、支払利息が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて268億57百万円減少し、376億45百万円のマイナスとなりました。

経常利益は、前連結会計年度比3.2%減3,544億92百万円となりました。

 

 

④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

特別損益は、投資有価証券売却益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて236億63百万円増加し、308億2百万円のプラスとなりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比1.0%増2,603億11百万円となりました。

 

(4) キャッシュ・フロー

営業活動では、棚卸資産の減少等により、前連結会計年度に比べて2,406億71百万円収入が増加し、3,995億67百万円の収入となりました。投資活動では、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少等により、前連結会計年度に比べて26億5百万円支出が減少し、2,271億88百万円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の増加幅の減少等により、前連結会計年度に比べて165億34百万円支出が増加し、1,296億23百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べ2,544億98百万円増加し、855億8百万円のキャッシュの増加となりました。

 

当社グループでは、投資は成長の基盤と考えており、投資によって事業拡大を図るとともに、財務体質の強化、企業価値の一層の向上と株主への利益還元の向上を図ってまいります。具体的には、新製品に対応した設備投資、生産性向上・生産能力拡大のための投資などに加え、各戦略的投資を実行し、グローバルでの事業拡大及び競争力強化を図ってまいります。これらの投資に必要な資金は内部留保の蓄積を基本とした自己資金に加え、必要に応じ、金融機関からの借入や社債等で調達します。当連結会計年度では、投資活動によるキャッシュ・フロー(2,271億88百万円)は、営業活動によるキャッシュ・フロー(3,995億67百万円)を下回りました。

株主への配当は、安定的かつ継続的に実施していくことを基本に、連結純資産配当率(DOE)3.0%を維持するように努めるとともに、連結配当性向についてもさらに高い水準を目指していくことで、株主への還元の一層の拡充に取り組んでまいります。

 

キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

 

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

自己資本比率(%)

53.8

51.4

51.5

51.9

54.0

時価ベースの自己資本比率(%)

144.5

201.6

171.6

160.9

123.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (年)

1.8

2.0

3.4

5.6

2.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

25.6

39.3

27.7

7.8

9.0

 

 

(注)  自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

 

※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

提出会社

(1) 合弁契約

 

相手先

国名

契約内容

契約期間

中蛍集団有限公司

中華人民共和国

無水フッ酸の製造・販売に関する合弁契約

自  2007年8月14日
至  合弁会社設立から50年後

珠海格力電器股有限公司

中華人民共和国

空調機用基幹部品の製造・販売に関する合弁契約

自  2009年2月18日
至  合弁会社設立から20年後

珠海格力電器股有限公司

中華人民共和国

金型の製造・販売に関する合弁契約

自  2009年2月18日
至  合弁会社設立から20年後

ダンフォス パワー ソリューションズ インク

アメリカ合衆国

建機車両用油圧機器の製造・販売に関する合弁契約

自  2012年10月30日
至  定めなし

 

 

 

6 【研究開発活動】

環境・社会貢献の重要性が増し、カーボンニュートラルの動きが加速するなど、外部環境は急速に変化しています。こうした変化に対応し事業拡大を支えるために、当社グループではテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を中心に、FUSION25で掲げた成長戦略に関わる技術領域・テーマに取り組んでおります。

さらに、当社独自のコア技術の高度化に加えて、外部との協創による技術獲得にも取り組んでおります。2022年度には、京都大学との「組織対応型包括連携協定」に基づき、FUSION25の成長戦略テーマを対象領域として、技術シーズの社会実装の加速に向けた、公募制の社会実装・企業活動支援プログラム「ダイキンGAPファンドプログラム」を開始しました。2023年度には、同志社大学との「包括連携協定」に基づき、カーボンニュートラルに向けて、溶融塩電解によりCO2をアセチレンとして再利用可能な技術を実証しました。また、地球温暖化ガス排出のさらなる抑制に寄与すべく、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社様及び国立研究開発法人理化学研究所様と共同で、世界で初めて、レーザーによりR32冷媒の漏えいを遠隔検知する技術を開発しました。

既に提携している東京大学や大阪大学、スタートアップ企業などとの産官学連携を推進し、協創することでイノベーションを生み出し、環境・社会課題の解決、事業拡大に取り組んでまいります。

グローバルに広がる研究開発基盤を活用したこれらの取り組みにより、研究開発の大幅な効率化とスピードアップを図り、グローバル各地域で差別化商品を生み出してまいります。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費は、122,499百万円であり、当連結会計年度における各事業別の主要な取り組みと成果及び研究開発費は次の通りであります。

 

①  空調・冷凍機事業

国内空調事業においては、暮らしや、働き方の変化に対応した安心で快適な空気環境づくりを目指しております。

住宅用市場における空調商品では、加湿・除湿機能に加え1タッチで安定運転時に消費電力を抑える「節電自動運転」を新たに搭載したルームエアコン『うるさらX(エックス)』を2023年11月より発売いたしました。燃料費高騰による電気代の値上げを背景に、ルームエアコンの省エネ性に加えて節電機能を新搭載することで実使用ではさらに電気代を抑えることができ、快適な空気環境の実現と節電を考えたエアコンを提供いたします。

また、業界一の薄さを実現したルームエアコン『risora(リソラ)』を2024年3月から発売しております。185㎜の薄さと、デザインが豊富な正面パネルでお部屋に溶け込み、見た目にも心地よい空間をつくります。室内機の前面パネルはお客様自身で取り外しできる仕様にしており、お部屋のインテリアに合わせてパネルを変えるなど、生活に合わせてより自由に選んで頂ける仕様にしております。

住宅用給湯では、『ダイキンエコキュート2024年モデル(Y型)』を2024年9月に発売いたします。高まる省エネニーズに対し、目標年度 2025年の省エネ基準を全機種で達成いたします。また、パワフル高圧タイプにおいて、給湯圧力(減圧弁設定)330kPaを達成し、快適性を向上しました。当社は、暮らしのニーズや社会のニーズに対応しながら、快適で省エネな暮らしを実現する給湯機を提供してまいります。

店舗・オフィス用マルチエアコン 「machiマルチ」シリーズでは、新機種を2023年10月に発売いたしました。中~小規模店舗・オフィスでの小容量かつ個別空調ニーズに合わせ、ダイキン独自の最小容量1.6kW室内機(天井埋込カセット形シングルフロータイプ、壁掛形)の接続可能機種を拡大しました。小容量の室内機が接続できることにより、WEB会議室や店舗の控室などの小部屋へより適正な能力の空調機を設置することができ、消費電力を最大約50%削減することができます。同時に、施工性向上のため取っ手の追加や、中型ビルの更新需要増加に対応するため、既設配管を洗浄レスで流用できる配管長を50mから90mへ拡大し、更新対応力を強化しました。

店舗・オフィスエアコン『スカイエア』では、業界トップクラスの省エネ性を実現した省エネフラッグシップモデル『FIVE STAR ZEAS』シリーズの新モデルを、2023年10月に発売いたしました。容量では、これまで6馬力までだったラインナップに、新たに8馬力と10馬力の大容量クラスを追加しました。大容量クラスのラインナップにより、機器の省エネ性の高さによる電気代の削減だけでなく、設置台数の削減やそれに伴う施工費の削減に貢献します。さらに同日より本商品オーナー専用サポートサービス『省エネコンシェルジュ』を新たに開設、提供を開始しました。店舗やオフィスにおいて重要性が増している省エネや節電の取り組みを、機器とサービスの両面からサポートします。

アプライド商品においては、北米では、2024年2月に省エネ性とコンパクト性を両立した自社インバータ圧縮機搭載のルーフトップユニットのラインナップを拡充いたしました。換気・外気取り込みや熱回収機能などのオプションも豊富に揃え、オフィスビルや学校など幅広い顧客要望に対応できる商品を提供しております。また、低GWPのR32冷媒を採用した空冷スクロールチラーを2023年9月に発売いたしました。学校・政府系ビル空調市場など環境意識の高い顧客を中心に販売・提供しております。さらに、IT企業やデータセンター運用会社等の顧客向けに、空冷チラーのポンプ付きオプション、グリコールフリー対応等の機種拡充を行いました。

欧州では、急拡大するデータセンター市場に対し小型直動ファンを使った拡張性の高いエアハンドリングユニットを2023年7月に発売いたしました。外気による水冷却機能をもったフリークーリング機能付き空冷チラーとあわせてデータセンター等に提供しております。

中国では、2000トンの大型ターボチラーを2023年12月にラインナップに追加し、低GWPの環境性に加え、高効率によりエネルギー消費量を削減するとともに、低振動・静音性も実現しております。

 

空調・冷凍機事業に係る研究開発費は、107,452百万円であります。

 

②  化学事業

化学事業の研究開発は、豊富なフッ素素材や多岐にわたるフッ素化学関連技術を元に新商品開発および用途開発を行っております。

フッ素樹脂、ゴムではフッ素材料の得意とする耐熱性や耐薬品性、誘電特性などを活かし、自動車、半導体、ワイヤー&ケーブル(IT分野)などでの差別化新商品研究を行っております。また、フッ素の非粘着性、耐薬品性を活かしたコーティング材料開発、さらには含フッ素化合物の機能性を活かした情報通信・情報端末用材料の開発や、医薬中間体の受託合成研究など、フッ素に関する幅広い研究開発を行っております。

これらの開発に加え、周辺事業領域の研究開発や用途開発としては他素材との複合材料開発を、先端材料研究としてはメディカル分野、光学分野、環境分野、電池エネルギー分野などで新たな部材・デバイスビジネスの探索を進めることによってフッ素化学グローバルNo.1、オンリーワンのケミカルソリューション事業展開を目指しております。特に電気自動車分野では、グローバルで連携し、新規カーエアコン用冷媒、電池材料等で、市場の更なる開拓に注力します。

また、冷媒の回収再生などのリサイクル技術開発、長年培ったポリマー設計・重合技術を活かした、テキスタイル用、カーペット用、紙用等の撥水・撥油処理剤などフッ素を含まない材料開発も推進しております。

これらの研究開発を加速・推進するべく、化学事業部では新商品開発の確実な実行を担い、TICにおいては、化学事業につながる次世代テーマの探索を実施しております。

 

化学事業に係る研究開発費は、12,030百万円であります。

 

③  その他事業

油機関連では、油圧技術とインバータ技術を融合させた商品であるハイブリッド油圧システムの特徴を活かし、従来の油圧システムではなし得ない省エネ性と高機能を実現しております。また、国内外での採用拡大に取り組む中低圧・小容量市場に加え、高圧・大容量市場への用途開発を進めております。

工作機械向けの『エコリッチ』やプレスなどの産業機械向けの『スーパーユニット』は工場の電力削減の切り札として省エネ性で高い評価を得ており、低騒音、発熱低減、タンク油量削減による作業環境改善や環境負荷低減にも寄与しております。

また、工作機械などの設備や加工品の発熱を取り去ることで機械加工精度の向上に役立つ『オイルコン』は、高精度温調・省エネ性で高い評価を得ており、グローバルでの採用拡大に取り組み、異電圧電源対応など地域特性に合わせた機種シリーズの開発を進めております。

このように従来の油圧システムに加えて、その枠を超えた先進的な環境対応商品をグローバルに提供する商品と技術の開発を進めております。

特機関連では、主に防衛省向け砲弾・誘導弾弾頭と医療・ヘルスケア機器に関する研究を行っております。医療機器については在宅酸素療法に使用する酸素濃縮装置の新機種開発、ヘルスケア機器については低酸素空間でのフィットネスを実現する低酸素発生装置の開発を行っております。

 

その他事業に係る研究開発費は、3,016百万円であります。