(1) 経営の基本方針
当社グループは、変化する事業環境の中で、世界に点在する当社グループ企業の全従業員が、共通する使命感、価値観のもとでグループとしての一体感を高めていくことを目的に、Mission、Vision、Values、いわゆるMVVを制定しております。
世界水準のエンジニアリングの提供によって、多様な顧客各社の課題を総合的に解決し、顧客ニーズの充足を実現するとともに、エネルギー・素材等の供給と環境保全を調和させ、持続性のある地球社会の実現に貢献します。
◆グループ・ビジョン(目指す企業像):“Global Leading Engineering Partner”
世界第一級のエンジニアリング企業グループとして、顧客の立場に立脚し共に課題を解決することによって、品質、HSE(健康・安全・環境)、納期、価格等を含む総合的な価値を提供し、顧客にとって最も信頼できる継続的なパートナーとなります。
東洋エンジニアリンググループで働く一人ひとりの役職員は、これらの価値観を共有して行動します。

上記の経営方針に基づき、当社グループは、5つの強み(プロジェクトマネジメント力・技術力・アライアンス構築力・総合エンジニアリング力・グローバル対応力)を発揮し、「EPC強靭化」戦略と「新技術・事業開拓」戦略を軸として、多様化、個別化する顧客の課題に対し、最適なソリューションを提供しています。
(2) 経営環境
当連結会計年度における世界経済全体としては、引き締めによる需要抑制的な金融環境を背景として、緩やかな減速傾向が継続しました。物価上昇は一巡したものの各国・地域で高金利政策が維持されたことにより需要が抑制され、それに伴う貿易の低迷が、輸出依存度の高い国を中心とする各国の経済活動を抑制しました。今後、利上げの累積効果、中国の不動産問題、地政学リスクの高まり等の不確実性を伴いつつも、来年以降にかけて巡航速度の成長軌道へと回帰するものと見込まれます。
地域別に見ると米国経済は、今後は利上げ効果が顕在化し、成長減速が見込まれるものの、底堅い雇用・所得環境に支えられ景気の大幅な悪化は回避すると見込まれます。 欧州経済は、実質賃金の増加により消費は持ち直すものの、金融引き締めの影響が経済活動を抑制することが見込まれます。中国経済は、従来の不動産投資の低迷に加え、賃金上昇による製造業の競争力低下と雇用吸収力の低下に起因する需要不足、過剰設備および欧米向け輸出の伸び悩み等による下押し圧力がかかることが見込まれます。一方、日本経済は、高めの賃金上昇、物価上昇の鈍化、経済対策などが個人消費を押し上げ、設備投資の拡大傾向も継続するなど、内需主導で底堅い成長軌道に復することが見込まれますが、一方で人手不足が深刻化しており、如何に労働力を確保するかが課題となりつつあります。
このような経済状況を受け、当社グループの事業環境としては、
①カーボンニュートラル事業については、全世界的に、脱炭素化や経済安全保障上のレジリエンス強化の観点から、政府支援で民間投資を後押しする動きが強まっております。燃料アンモニアに関しては、アンモニア製造およびアンモニア分解による水素製造の複数のFS(事業化調査)/Pre-FEED(概念設計)が進捗しており、2024年度には複数案件のFEED(基本設計)実施が予定されております。SAF(持続可能な航空燃料)に関しては、世界的な市場規模の拡大を見据えた日揮株式会社との国内アライアンスにおける早期実績作りに向け注力しています。CO2資源化に関しては、燃料としてのメタノールの需要増加が今後期待され、国内市場においては、国内元売り会社が海外で合成燃料を製造し、輸入する動きが継続すると見込まれます。地熱に関しては、PT Geo Dipa Energi、PT Medco Power Indonesiaと各々インドネシアにおける地熱の包括利用に関する覚書を締結し、社会実装に向け注力します。
②既存事業については、海外では、各種の設備投資計画が再開に向け動き始めております。肥料案件は人口増加と世界的な食糧安全保障問題の高まりに伴う堅調な需要増が見込まれ、石油化学案件については、中国で大規模なコンプレックスが相次いで稼働開始し石油化学製品の需給が緩和した一方、世界のエチレン・ポリマー市場は今後も安定した成長が見込まれており、特に中東やインドにおいて引き続き設備投資が見込まれます。インフラ市場においては、中南米でFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)が引き続き計画され、アジアでは再生可能エネルギーやバイオマス、廃棄物等の発電事業分野等で設備投資が見込まれます。一方、国内では、高機能化学品の需要の回復が見込まれます。
当社グループは、2021年度から、更なる企業価値の向上を目指し、ポストコロナとカーボンニュートラルへの移行を見据えた中期経営計画を推進しています。この中期経営計画では、「EPC強靭化」戦略と「新技術・事業開拓」戦略の2つの戦略を軸に取り組んでいる諸施策の結果を収益化し、KGI(Key Goal Indicator)の達成を目指すとともに、2026年度以降の次期中期経営計画へと繋がる強固な基盤を築いてまいります。
① 中期経営計画を振り返って
「新技術・事業開拓」戦略においては、昨年度に引き続き燃料アンモニアやSAFなどでの案件形成に向けた取り組みを積極的に推進し、FS、FEED、更にはEPC(設計・調達・工事)フェーズへの展開に向けた取り組みを進めています。一例としては、日本水素エネルギー株式会社が取り組む液化水素サプライチェーンに関するFEEDを効率的に進めるために締結した、川崎重工業株式会社、日揮グローバル株式会社、千代田化工建設株式会社との4社JV協定書の締結が挙げられます。
また、地熱発電設備については、インドネシアPT Geo Dipa Energiと地熱の包括利用に係る共同研究に関する覚書を締結し、地熱クローズドループ技術や地熱発電からのグリーン水素製造なども行うカーボンニュートラルパークの可能性を検討しています。地熱エネルギーの活用については、他にもPT Medco Power Indonesiaとの地熱エネルギー利用最適化における全体開発計画に関する覚書も締結しております。
こうした様々な切り口からカーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献してまいります。
また、従来からの事業の軸であるハイドロカーボン領域の当連結会計年度の主な受注では、タイにおけるアセチレンブラック製造設備の詳細設計・調達業務案件や、三井海洋開発株式会社(MODEC)との合弁会社であるOFS(Offshore Frontier Solutions Pte. Ltd.)を通じてガイアナ共和国向けFPSO、および、ブラジル向けFPSOの2件のEPCI(設計・調達・工事・据付)案件などがありました。「EPC強靭化」戦略のもと、こうした大型プロジェクトに対しても効率的に対応する体制を敷いて着実に推進してまいります。
当社グループは、自社の強みであるプロジェクトマネジメント力・技術力を更に磨き、他企業とも連携しながら、社会課題に応える価値の提供を目指します。
② 今後の中期経営計画に関する重点課題
当社は過年度の工事損失により、過去6期にわたり無配が続いておりましたが、当期の期末配当をもって復配することといたしました。財務基盤を着実に強化し、安定的に配当を継続できる体制とするため、以下の取り組み等を通じて、事業ポートフォリオの拡充と、その成果を支える人財力の向上を図ってまいります。
(事業ポートフォリオ拡充の礎としての技術力向上と連携)
「新技術・事業開拓」戦略においては、新たな可能性を拓くため、様々な挑戦が必要です。そのため、当社の技術力はもちろんのこと、それぞれのテーマにおける社外との連携も重要と考えております。当社は、より広く設備が充実した環境で技術開発を加速させるために、本年3月に技術研究所を千葉市の千葉土気緑の森工業団地に移転・拡張しております。
社外との連携事例としては、燃料としての用途で注目されているアンモニア関連で以下の開発テーマが挙げられます。
国立大学法人東京工業大学(東工大)の原亨和教授らが開発した鉄-ヒドリド触媒を、燃料用アンモニア製造システムに適用することを目指し、実証に向けた触媒商業化の開発に共同で取り組む覚書を、東工大、Ammon Fields株式会社、株式会社エフ・シー・シーと締結しております。
このほか、KBR(KELLOGG BROWN & ROOT LLC)と、KBRが保有するHydrogen from Ammonia Cracking
Technology(アンモニア分解技術からの水素製造)の商業化推進に関する覚書をEPCパートナーとして初めて締結しております。
当社自身の技術力の向上、そして社外との協業を通じて、社会への新たな価値提供、その結果としての当社の事業ポートフォリオの拡充を目指し、取り組みを進めてまいります。
(価値創出の源泉である人財力の向上)
当社は、本社を現在の千葉県習志野市から千葉市幕張新都心、幕張テクニカルセンターに移転することを決定いたしました。新オフィスでの業務開始は2025年1月を予定しております。
更に、千葉ロッテマリーンズが掲げる地域提携の強化についてのVision(地域コミュニティと共に成長し、地域経済にも貢献する)に共感し、今回の移転を機に千葉ロッテマリーンズとのオフィシャルスポンサー契約を締結しております。
「多彩な人がいきいきと働く」環境の整備・向上を重要経営課題の1つとして取り組み続けている当社にとって、オフィス移転や地域との結びつきの強化は、従業員の個性を生かしながら多様性を認め合い、働くモチベーションを更に向上させていくものと考えています。
(4) 2025年3月期連結業績予想
受注高については、「(2)経営環境」および「(3)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題」に記載した全般的状況を踏まえて算出しました。
[本業績見通しにおける想定為替レート]
1米ドル=150円
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
① ガバナンス
サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にも繋がる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る取組みについて「サステナビリティ基本方針」(以下参照)を策定し、取締役会が適切に監督を行うための体制を構築しております。
気候変動関連をはじめサステナビリティ全般について、経営執行会議の諮問機関である「サステナビリティ委員会」にて検討・推進・モニタリングを行い、基本方針や重要事項は経営執行会議での審議を経て取締役会に付議・報告の上、決定しております。

○「サステナビリティ基本方針」
当社グループは、“Engineering for Sustainable Growth of the Global Community(エンジニアリングで地球と社会のサステナビリティに貢献する)”というミッション(使命)のもと、企業価値の持続的向上と地球社会のサステナビリティに貢献していきます。
これは多種多様な課題に対し、地球と社会の持続的成長に不可欠であるエネルギー・素材等の供給と環境保全の調和を重視した解決策を提供することがエンジニアリング会社の役割であり、その役割を果たす決意を示したものです。
当社グループは、「環境調和型社会を目指す」「人々の暮らしを豊かにする」「多彩な人がいきいきと働く」「インテグリティのある組織を作る」の4つのマテリアリティ(重要経営課題)を指針に、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の課題解決、サステナビリティに取り組んでいきます。
② リスク管理
「内部統制システムの基本方針」に基づき、事業環境の変化を含めリスクの可能性のある事象を識別し、リスクの分類、分析、評価、対応を行うプロセスおよびその所管部門、関連規程等を明確化しリスク管理体制を整備・実行しております。潜在リスクを可及的速やかに把握し対応するために、定期的に見直しを行った上で、重点リスク項目を洗い出しリスク管理を実施しております。
③ 戦略および指標・目標
「エンジニアリングで地球と社会のサステナビリティに貢献する」ことをミッションに掲げ、以下の項目を重要経営課題(マテリアリティ)として定めております。各項目において特定したリスクと機会を中期経営計画(2021~2025)に反映し、サステナビリティ課題への対応を推進しております。また、サステナビリティに向けた進捗度合いを計るため、マテリアリティごとに指標と目標を掲げ取り進めております。
(注)「役職員調査」に関する指標は、提出会社の数値です。
金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、同提言も踏まえ戦略策定、取組みを推進しております。
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスについても、サステナビリティ全般でのガバナンスに組み込み、推進しております(上記「(1)サステナビリティ全般」「①ガバナンス」参照)。
② リスク管理
気候変動に関するリスク管理についても、サステナビリティ全般でのリスク管理に組み込み、推進しております(上記「(1)サステナビリティ全般」「②リスク管理」参照)。
③ 戦略
気候変動に関してTCFDの提言に沿って、主に2つのシナリオ(注)のもと、移行リスク(政策/法規制・技術・市場・評価)と物理リスク(急性・慢性)に大別、事業に影響を及ぼす重要な要因を選定・分析し中期経営計画などの戦略策定に反映・活用しております。
特に技術、製品・サービスや市場については、①中長期的には、クリーン燃料への転換による石油ガス関連や石化関連での従来型プラントの機会の減(短中期的には、トランジッションでの機会増)の一方、新製法等による非従来型プラントの機会の増、②アンモニア・水素/合成ガス技術/CO2資源化等のノウハウ・実績を活用した機会の増(短中期的には実証、中長期的には本格実装)、③省エネ、廃プラ・再生プラ等の循環型分野や高機能素材分野への機会の増(短中長期)と捉えております。
(注)主に国際エネルギー機関(IEA)による①2.6℃シナリオ(気候変動の公表政策ベースSTEPS)と②1.5℃シナリオ(2050年ネットゼロ達成ベースNZE)参照のもと分析しております。
④ 指標と目標
GHG排出量削減に関し、以下の目標を掲げ取り組んでおります。
2023年の排出量(Scope1&2)は1.66t-CO2/人(約14,400t-CO2)であり、基準年2021年比で約11%減少となっております。
(注)2021年の基準年含め、持分法適用関連会社は持分比率を考慮した排出量を集計しております。
(3) 人的資本に関する取組み
①人材の育成および社内環境整備に関する方針、戦略
<人的資本に関する基本的な考え方>
当社中期経営計画の両輪の戦略である「新技術・事業開拓」戦略と「EPC強靭化」戦略においては、これまでのEPCで培った知見と経験に加え、多様なバックグラウンドやノウハウを持つ人財の確保・育成が不可欠であると認識しております。このため、当社では人財を最も重要な経営資源と位置付けるとともに、マテリアリティの1つである「多彩な人がいきいきと働く」組織を目指しております。
<多様性に関する方針>
当社はこれまでも事業環境の変化や市場の動きに対応するため、多様な人財の確保・育成に取り組んでまいりましたが、上記の中期経営計画の戦略を推進し課題を実現するため、下記の通り女性、外国人、キャリア採用者の管理職への登用等、中核人財の多様性に関する指標を設けるとともに、多彩な人財が活躍できる環境の整備に取り組んでまいります。
<環境整備に関する方針>
当社では、社員に対してチャレンジングな業務の付与やキャリアプランに基づく異動による経験の拡大を促進し、成果に対しては賞与、抜擢昇格、表彰等によって報いることで「やりがい」を提供する一方で、リモートワーク制度や育児・介護休業制度など多様な働き方に応じた環境の整備により「働きやすさ」を確保することで社員のエンゲージメントを高め、社員が持続的に能力を発揮できる環境の整備に努めていきます。
<採用活動>
社内では得られない知見を持った人財を獲得するため、従来重視してきた新卒採用に加えて近年ではキャリア採用に注力しております。また、入社後の迅速な活躍やエンゲージメント向上のため、キャリア採用者を対象に最長1年間のオンボーディングプラン(早期定着・戦力化のための支援プログラム)を実施しております。採用活動は特定の国籍、性別、言語に偏重することなく、本人の個性、能力、キャリア志向等に基づき実施することを重視しております。
<人財育成>
社員の多角的な視点や幅広い分野での経験を重視する観点から、各人のキャリアプランに基づく若手・中堅のローテーションを促進しているほか、一定期間ごとにマネージャー層とキャリアに関しての面談を実施し、主体的なキャリアの選択・開発を後押ししております。特に若手に対しては、講義形式の研修や建設現場・海外グループ拠点への派遣による知識・経験の付与に加えて、入社後一定期間のメンタリングの機会を設けることで日々の業務を通した早期育成を図っております。
② 人材の育成および社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標および実績
(4) 人権への対応
① ガバナンス
当社グループはマテリアリティとする「人々の豊かな暮らし」と「多彩な人がいきいきと働く」社会の実現においては、グループ各社を含めたグローバルな事業活動において影響を受ける全ての人々の人権を尊重することが基盤であると認識しています。かかる認識のもと、人権尊重の取り組みを更に推進し、その責務を果たすべく、「役職員行動規範」「サステナビリティ基本方針」のもと、「人権基本方針」を定めています。
この「人権基本方針」のもと、当社グループは「国際人権章典」および国際労働機関(ILO)の「労働の基本原則および権利に関する宣言」に規定される人権を尊重し、国連グローバルコンパクトの10原則に賛同するとともに、国連の「ビジネスと人権に関する国連指導原則」に従い人権尊重の取り組みを推進します。
人権尊重の取り組みを着実に進めるため、サステナビリティ委員会の下に人権分科会を設置するとともに、グループ会社とも連携を取りながら、グローバル体制のもと、人権尊重の取り組みを推進しています。
② リスク管理
当社グループの事業活動に関係する人権への負の影響を特定・評価し、防止・軽減するために人権デュー・ディリジェンスを実施します。
特に優先すべき人権課題として、下記の5項目をあげ、優先的に取り組み、対応を継続・強化していきます。
グローバルな事業活動における全ての人権リスクに対応するため、各グループ会社に苦情処理窓口を設け、報告に対しては適切かつ真摯に対応するとともに、万一、自らが人権に対する負の影響を引き起こし、助長し、または直接関係したことが明らかになった場合は、適切な手続きを通じてその是正や救済に努めます。
また、人権リスクに関する外部専門家を活用するとともに、負の影響を受ける人々やその他の関連するステークホルダーとの対話・協議を真摯に行っていきます。
③ 戦略(取引基本方針)
サプライヤーや協力会社など、サプライチェーンを構成する全てのビジネスパートナーに当社「人権基本方針」を支持いただけるように働きかけ、連携しながら人権の尊重に取り組んでいきます。このため、「取引基本方針」を制定し、全てのビジネスパートナーに対して、国際規範と法令等を遵守したうえで人権を尊重するとともに、あらゆる差別の排除、安全・快適な職場環境の整備、環境への配慮に努めるよう理解を求め、ともに「人々の豊かな暮らし」と「多彩な人がいきいきと働く社会」の実現に取り組んでいきます。
投資者の判断に重要な影響を与える可能性のあるリスクの内容および程度につき当社グループが認識している事項は以下のとおりであります。但し、列挙した項目は例示であり、限定的なものではありません。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
当社グループはグローバルな環境における長期間に渡るプラント建設工事を主たる事業としているため、当社グループ内の各種リソースの状況等の内的要因や、客先や取引先をはじめとする各ビジネスパートナーの状況、各国・各地域の政治・経済情勢および自然災害等の外的要因に起因して、受注額が大きく減少したり、プロジェクトの中止、中断又は延期等による収支の悪化や工事代金の回収不能等によって、当社グループの経営成績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはこのようなプロジェクトの受注および遂行に関するリスクに対して、受注前の情報収集を密にして、プロジェクトの内容を審査し、併せてリスクの把握と評価に努めることによって、合理的な対応策を策定するとともに、受注後も定期的な報告とモニタリングを通じた適切な対応策を講じることで、リスクの軽減に努めております。
各種感染症の流行により、当社グループの事業の遂行に影響を与える可能性があります。感染症が発生した場合、当社グループは、協力会社を含めた従業員およびその家族、更に地域の方々の安全を最優先とし、テレワークや時差出勤の推奨、事業所および建設現場内での感染拡大防止対策に取り組み、また事業活動に与える影響を最小限とすべく、事業構造の変革、新規事業機会の創出、サステナビリティの強化といった施策に取り組んでまいります。
当社グループは、世界各国・各地域の拠点、パートナー、顧客、取引先等と連携し、グローバルに事業活動を行っているため、戦争、内乱、テロ等の非常事態の発生や、貿易、金融政策等の各種政策の変更、為替レートの著しい変動等のカントリーリスクの顕在化によって、プロジェクトの中止、中断または延期等による収支の悪化や工事代金の回収不能等の様々な影響が生じる可能性があります。このようなリスクに対応するため、各地の情勢や政策等に関する情報収集を行い、リスクに応じた契約条件の設定(契約建値の設定、支払い条件、顧客とのリスク分担条項等)、為替予約、機器・資材の調達先や工事発注先の分散化等の可能な対策を講じ、プロジェクト収支の維持・向上に努めております。
(4) コンプライアンスに関するリスク
当社グループの事業は、国内外の労働法規、個人情報保護法、税法、輸出入管理規制、不正競争防止法等の広範な法律や規制に服しており、これらの法令の変更、予測しえない解釈等により、法令遵守対応の負担が増加する可能性があります。法令に違反する行為または疑義を持たれる行為が万が一発生した場合、当社グループに追加の負担、営業の中断や信用の低下等が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。当社グループはこのようなリスクに対して、役職員行動規範、コンプライアンス・マニュアル等の周知徹底、当社グループ統一の内部通報制度の整備・運用、および、Chief Compliance Officer(CCO)を委員長とするコンプライアンス委員会を中心とした啓蒙・推進活動の実施により、法令遵守体制の強化に努めております。
(5) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、当社グループおよび当社グループと取引関係にある法人または個人の技術上および営業上その他の業務上の企業秘密情報および個人情報を保持・管理しておりますが、コンピューターウイルスの感染、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃等によりシステム障害、情報の漏洩、破壊または改ざん等があった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。当社グループは、情報資産マネジメント規程およびHSE・品質・情報セキュリティ基本方針に従い、事業継続のために必要な情報セキュリティに関する管理計画の策定・維持、SQE統括担当部門による各部門の情報セキュリティマネジメント活動の推進、情報セキュリティマネジメントに関する啓発教育、各部門の情報セキュリティマネジメント活動の監査および監査結果のICT委員会への報告等を行い、リスクの軽減に努めております。
当社グループは、新会社の設立や事業会社の買収等の事業投資を行うことがあります。それらの事業投資において多額の資本拠出や投資先に対する貸付・保証等の信用供与を行う場合がありますが、事業環境の変化等により、業績の停滞等に伴い投資にかかわる損失が発生するリスクがあります。当社が出資しているグループ各社の事業運営に関しては、グループ経営管理部門がグループ会社の状況を適時に把握するよう努めており、上述のようなリスクが起こらぬよう努めております。
当社グループの事業における気候変動に関するリスクとしては、各種関連政策等による従来型プラントの需要の減少やコストの増大、新技術の開発や省エネ対応への遅れによる事業機会の逸失、電源構成・商品等の市場の変化、自然災害の激甚化等によるプロジェクト遂行への影響が想定されます。こうしたリスクに適切に対応できない場合、財務状態や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
一方、当社グループでは、気候変動に関する課題への対応は、新たな事業機会獲得にもつながる重要な経営課題であると認識しております。技術、製品・サービスや市場の観点からは、新たな技術を適用した非従来型プラントやアンモニア・水素/合成ガス技術/CO2資源化等のノウハウ・実績を活用した受注機会の増加、また、省エネ、廃プラ・再生プラ等の循環型分野や高機能素材分野の受注機会の増加等が想定されます。
当社グループとしては、ステークホルダーとの協調、技術・製品・ソリューションの提供により、引き続き、気候変動対策に取り組んでまいります(上記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組、(2)気候変動への対応」参照)。
プラント建設地、機器資材の調達地において、工事従事者の不足・賃金の高騰、機器資材の価格高騰が発生した場合、建設工事の遅延および建設工事費の増加等の様々な影響が生じるリスクがあります。このようなリスクに対応するため、継続的に市場動向をモニタリングし、工事従事者の不足・賃金の高騰に対しては、モジュール工法の採用による工事最適化等の対策、機器資材の価格高騰に対しては、調達先候補の多様化、調達先との交渉、客先への価格転嫁、予定調達先の振替等の対策によりリスクの軽減に努めてまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」と記載します。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態および経営成績の状況
a. 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は2,503億円で、前連結会計年度末から275億円増加しております。受取手形・完成工事未収入金等が165億円、現金預金が113億円それぞれ増加したことなどが主な原因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は356億円で、前連結会計年度末から21億円増加しております。土地が43億円減少した一方で、投資その他の資産が71億円増加したことなどが主な原因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は1,935億円で、前連結会計年度末から187億円増加しております。未成工事受入金が151億円減少した一方、支払手形・工事未払金等が264億円増加したことなどが主な原因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は282億円で、前連結会計年度末から41億円減少しております。長期借入金が48億円減少したことが主な原因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は641億円で、前連結会計年度末から150億円増加しております。親会社株主に帰属する当期純利益を98億円計上したほか、為替換算調整勘定が32億円、退職給付に係る調整累計額が23億円それぞれ増加したことなどが主な原因であります。
b. 経営成績
(完成工事高)
当連結会計年度における完成工事高は、主に複数の国内向けバイオマス発電所と石油化学プラント、中国向け化学プラント、インド向け石油精製プラント等の複数のプロジェクトの進捗により、前連結会計年度比679億円(35.2%)増の2,608億円となりました。
(完成工事総利益)
当連結会計年度における完成工事総利益は、完成工事高が増加した結果、前連結会計年度比41億円(17.0%)増の283億円となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、販売費及び一般管理費は増加した一方、完成工事総利益が増加した結果、前連結会計年度比19億円(40.9%)増の67億円となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、営業利益が増加したほか、為替換算調整勘定取崩益の計上および為替差損の改善により、前連結会計年度比31億円(79.9%)増の69億円となりました。
(特別損益および税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度において、固定資産売却による特別利益66億円および、減損損失による特別損失18億円を計上した結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比78億円(203.0%)増の117億円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、子会社等の税金費用を19億円計上した結果、前連結会計年度比81億円(496.3%)増の98億円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末と比較し132億円増加し、1,090億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益117億円の計上、仕入債務の増加、未成工事受入金の減少、売上債権の増加などにより、結果として60億円の資金増加(前連結会計年度は155億円の資金増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入などにより、73億円の資金増加(前連結会計年度は94億円の資金減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、ファイナンス・リース債務の返済による支出、借入金の収支などにより、10億円の資金減少(前連結会計年度は15億円の資金減少)となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
a. 受注実績
当連結会計年度における当社および当社の連結子会社の受注実績は次のとおりであります。
(注) 1 期中完成工事高は、外貨建受注工事高のうち期中完成工事高に係る為替差分(前連結会計年度6,486百万円、当連結会計年度10,751百万円)を含んでおります。
2 次期繰越工事高は、前期以前に受注した工事の契約変更等による調整分(前連結会計年度△7,378百万円、
当連結会計年度△9,314百万円)を含んでおります。
3 ※印は、外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額を示しております。
(参考情報) 当連結会計年度における持分法適用関連会社の当社持分相当の期中受注工事高は302,465百万円、次期繰越工事高は250,732百万円であります。
当連結会計年度の受注実績は、タイ向け石油化学プラント、インドネシア向け排ガス利用の火力発電所等を受注し、1,598億円(前連結会計年度比24.2%減)となりました。なお、持分法適用関連会社の2件のFPSOの当社持分相当の受注高3,024億円を含めた総受注高は4,623億円、総受注残高5,504億円となりました。
なお、提出会社における受注実績は次のとおりであります。
(注) 1 期中完成工事高は、外貨建受注工事高のうち期中完成工事高に係る為替差分(前事業年度2,742百万円、当事業年度1,556百万円)を含んでおります。
2 次期繰越工事高は、前期以前に受注した工事の契約変更等による調整分(前事業年度△6,495百万円、当事業年度△8,787百万円)を含んでおります。
3 ※印は、外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額を示しております。
b. 売上実績
当社グループはEPC事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
主な相手先別の売上実績および総売上実績に対する割合は、前連結会計年度、当連結会計年度ともに当該割合が100分の10以上を占める相手先が存在しないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状況
概要は「(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況 a.財政状態」に記載したとおりです。
現金預金や受取手形・完成工事未収入金等の増加の影響等により、総資産の残高は2,859億円となり、前連結会計年度末から296億円増加しました。総負債につきましては、支払手形・工事未払金等の増加に伴い、残高は前連結会計年度末から146億円増加の2,218億円となりました。純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益98億円の計上による株主資本の積み上げ、その他の包括利益累計額において為替換算調整勘定等の増加に伴い、残高は前連結会計年度末から150億円増加の641億円となりました。この結果、自己資本比率は22.4%となり、前連結会計年度の19.1%から改善しました。
b. 経営成績
概要は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」および「(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況 b.経営成績」に記載したとおりです。
当期の期初に公表した業績見込みとの比較は以下のとおりです。
持分法適用関連会社の当社持分相当の2024年3月期受注実績は3,024億円となりました。
完成工事高につきましては、期初業績予想値2,400億円に対し、208億円増収の2,608億円となりました。主にインド、中国で進行中の一部のプロジェクトの進捗が想定を上回り、増収となったことによるものです。
営業利益につきましては、完成工事高の増収効果に加えて、粗利率が相対的に高い非EPC案件が堅調に推移していること、一部の海外プロジェクトでの追加収入の獲得等により、期初業績予想値30億円に対し、37億円増益の67億円となりました。
経常利益につきましては、営業利益の増益効果、一部海外子会社の清算に伴う為替換算調整勘定取崩益の計上、持分法による投資損失の計上等により、期初業績予想値45億円に対し、24億円増益の69億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、当社固定資産の譲渡による特別損益の計上、繰延税金資産の計上による税金費用の減少等により、期初業績予想値30億円に対し、68億円増益の98億円となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載したとおりです。
当社グループは、2021~2025年度の5年間にわたる中期経営計画を推進しており、「EPC強靭化」と「新技術・事業開拓」の2つの戦略を軸に、段階的な取り組みを進めております。
また、当社グループの経営成績における先行指標となります受注実績の概要につきましては、「(1)経営成績等の概要 ③生産、受注および販売の実績」に記載のとおりです。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」に記載した状況を受けて、当連結会計年度の受注実績は1,598億円となりました。持分法適用関連会社の2件のFPSOの当社持分相当の受注高3,024億円を含めた総受注高は4,623億円となりました。
分野別では、「石油化学」分野の受注実績が688億円(受注実績合計に対して43.2%)と最も大きく、以下、「石油・ガス」分野の受注実績が430億円、「化学・肥料」分野の受注実績が238億円となりました。
なお、当社グループはEPC事業のみの単一セグメントであり、セグメント別の記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関わる情報
a. キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高(以下「資金」と記載します。)は、主に営業活動による資金の増加60億円、投資活動による資金の増加73億円等の影響により、前連結会計年度末から132億円増加し、1,090億円となりました。
概要は「(1)経営成績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりです。
当連結会計年度における資金の増加の主な要因は、当社固定資産の譲渡に伴う資金流入などによるものです。
b. キャッシュ・フロー指標のトレンド経営成績
(注) キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
* 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
* キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
* 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象と
しております。
c. 資本の財源および資金の流動性に関わる情報
(資金需要)
当社グループは、現金及び現金同等物ならびに営業活動によるキャッシュ・フローを資金の源泉としております。資金需要の主なものは、進行中プロジェクトの遂行に関わる機器資材の購入や外注費等の費用、従業員給料手当等の人件費、営業費用・DX・研究開発に係る活動費といった販売費及び一般管理費、IT基盤の充実に関わる設備投資等となります。将来の成長のため、財務規律の徹底を図りつつ、DX・研究開発に係る活動費および投資支出の拡大を計画しております。
(資金調達)
当社グループは、円滑な事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持および健全な財務状態の維持を財務方針としており、資金需要に対して必要充分な水準の手元流動性として月商の2.5ヶ月分程度の資金残高を確保すべく、自己資金のほか、銀行からの借入による資金調達を行っております。当連結会計年度末の資金残高は1,090億円となり、工事関係収支の入金超過相当を除いてもやや高水準の残高となっております。銀行からの借入水準については、今後の資金残高の推移や金利動向、更に在外拠点における独自与信確保の必要性も踏まえて決定します。
なお、安定的な経常運転資金枠の確保、マーケット環境の一時的な変化等の不測の事態への対応手段確保の観点から、取引銀行10行と総額90億円の貸出コミットメント契約を締結しております。なお、これら契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(財務上の課題)
当社グループの財務上の課題は、復配を実現させながら、自己資本の蓄積を図り、企業価値向上への安定成長軌道に乗せることです。当社は過年度の工事損失により、過去6期にわたり無配が続いておりましたが、当期の期末配当をもって復配することといたしました。総合エンジニアリング会社として、EPC事業を円滑に遂行するための財務基盤を強化し、安定的に配当を継続できる体制とするため、引き続き中期経営計画の柱である「EPC強靭化」「新技術・事業開拓」戦略の遂行に注力し、収益力を一層高めて、自己資本比率は25%超、自己資本は750億円前後まで積み上げることが当面の目標です。また、ROEについては資本コスト水準を勘案して2025年度以降、安定的に10%超とすることを目標とし、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(株主還元)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営の重要課題として位置づけております。当面は、配当性向を25%とすることを基本的な方針といたします。具体的な株主還元方針の内容については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、経営者による会計方針の選択や適用、また、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を与える見積りおよび仮定を用いております。経営者は、これらの見積りおよび仮定に基づく数値について過去の実績や状況に応じ合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性が存在する為、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
なお、なかでも特に重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(a)完成工事高および完成工事原価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り) 1 一定の期間にわたり履行義務を充足し認識する収益」に記載しております。
(b)工事損失引当金
当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、その損失見込額を計上しています。工事施工の途中において見積りを超える原価が発生した場合、引当金の追加計上、追加損失の計上が必要となる可能性があります。
(c)貸倒引当金
営業債権、貸付金等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率に基づき、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に債権の回収可能性を検討し、回収不能見込額を引当金として計上しています。顧客の財政状況が悪化し、その支払い見通しが変動した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
(d)退職給付に係る資産または負債
退職給付債務および退職給付費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しており、これらの前提条件には、割引率、予定昇給率、退職率、死亡率および年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。前提条件の変動により、将来の退職給付に係る資産または負債、および退職給付費用の金額に影響を与える可能性があります。
(e)繰延税金資産
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り) 2 繰延税金資産の評価」に記載しております。
技術導入契約
現在締結している主要な技術導入契約は次のとおりであります。
当連結会計年度において、当社グループは研究開発費
《新たなビジネス・商品開拓》
(DX(Digital Transformation)利用のスマート保安)
スマート保安分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT®のソリューション深化と拡販を進めております。そのためのシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすく、要求に柔軟に対応できる体制を整え、現在計9件の導入実績となっています。また、尿素プラント向け性能監視・最適化システム(PMOS®)や、エチレンプラント向けエチレン分解炉の運転状態予測・最適化支援システム(RL-Tracker®)、分解ガス圧縮機性能監視など、当社の知見を活かした高付加価値ソリューションの運用を行っております。分解ガス圧縮機性能監視では、実運転条件によるリアルタイム動力計算を行うことで、従来の設計条件による動力計算に改善余地を確認するという成果を得ています。今後は尿素・エチレン等の化学工場に加え、カーボンニュートラル関連施設にも適用のアプローチを拡げるとともに、更に技術支援サービスにおけるDX技術の活用など新しい顧客支援領域を拡張し、顧客のプラント運営の収益改善に貢献してまいります。
(環境・省エネ)
① SUPERHIDIC®・HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization)
環境・省エネ分野では、脱炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC®”に加え、プラントを構成するプロセス系・用役系を省エネ・温室効果ガス(GHG)排出削減の観点から数学的に同時最適化するコンサルタントサービス“HERO”のビジネスを積極的に展開しております。“SUPERHIDIC®”は、CO2コストが高い欧州にて複数のフィジビリティスタディーを実施中です。また、経済産業省『省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金制度』における先進設備・システムに認定され、国内の製造者により導入頂き易くなりました。“HERO”では国内外の顧客から複数の案件を受注し、特にタイ石油化学最大手であるGC(PTT Global Chemical Public Company Limited)向けには、2つの案件を通して5.5万t/年のCO2排出量削減案を創出し、GCで改造プロジェクトが動き出しています。2024年度においても両技術を用いた大規模なGHG排出削減に繋がる案件が期待されております。
② 二酸化炭素回収・有効利用・貯留(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage = CCUS)分野
世界的に急速に加速しているGHGのゼロエミッション実現に向け、CCUSはCO2排出削減に不可欠な技術となっております。当社は、CCUSに関する技術分野において、国内外の協業パートナーと連携を行い、CCUS案件の実現に注力しております。当社が推し進めているカーボンニュートラルバリューチェーン事業においては、グリーン燃料に加え、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)を組み合わせることによりCO2オフセットされたブルー燃料の実現を推進しております。特に、CO2削減に向けた喫緊の対策が必要となる石炭火力、石油精製、金属製錬等の分野の顧客の支援にも取り組んでおります。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施いたします。
③ 地熱エネルギー分野
地熱エネルギーは大きな可能性を秘めており、カーボンニュートラル社会の実現のためベースロードとなり得る再生可能エネルギーとして期待されています。当社は、この地熱エネルギーの可能性を最大限に活用する“カーボンニュートラルパーク”(地下・地上の様々な関連技術を組み合わせた地熱フィールドの全体開発・最適化を進める構想)実現のための取り組みを推進しています。グループ会社で地熱発電設備のEPC実績が豊富なインドネシア・IKPT(PT. Inti Karya Persada Tehnik)とも連携しています。具体的には、2023年9月にインドネシアの地熱事業者であるPT Geo Dipa Energi、2024年2月にインドネシアの地熱事業者であるPT Medco Power Indonesiaとそれぞれ覚書を締結し、今後技術導入を検討します。当社は、地熱分野でインドネシアの持続可能な社会の実現と経済発展に貢献し、将来的には日本の地熱開発にも技術を展開していきます。
④ 持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation fuel = SAF)分野
SAF分野では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、三菱重工業株式会社、株式会社JERA、および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、木質系バイオマス等を原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトの成功裏の完了をもとに、引き続きNEDOの助成を受け、三菱重工業株式会社と共同で、将来のSAF供給の一端を担うべく、商業規模での製造技術確立とサプライチェーン構築検討を進めております。
⑤ 燃料アンモニア分野
水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術開発の一環として、一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会 (CFAA)に理事会員として参画しており、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのアンモニアへの燃料転換によるCO2排出低減や海外でのアンモニアバリューチェーンの事業化について検討を継続しております。
2022年度に「正確な燃料アンモニア関連情報の発信や、安全性などの社会受容性の向上等に向けた広報活動の検討・推進」を目的としてCFAA企画運営委員会に新設された広報WGのリーダーとして燃料アンモニアの早期社会実装に向けた活動も推進しております。
国立大学法人東京工業大学(東工大)、Ammon Fields株式会社、株式会社エフ・シー・シーと連携し、東工大の原亨和教授らが開発した高性能な鉄-ヒドリド触媒を燃料用アンモニア製造システムに適用することを目指し、触媒の商業化および実証に向けた開発に共同で取り組む覚書を2023年6月に締結しました。中・大型設備において適切な運転条件と鉄-ヒドリド触媒を組み合わせることで、低コストで省エネルギーな燃料用アンモニアの製造技術の確立と社会実装に取り組んでまいります。
アンモニア分解による水素製造技術に関してKBR(KELLOGG BROWN & ROOT LLC)との覚書を2023年7月にEPCパートナーとして初めて締結しました。低炭素社会の実現には水素エネルギーの役割が重要であり、CO2フリー水素バリューチェーンの構築が必須となります。水素エネルギーキャリアであるアンモニアの利点として、運搬や貯蔵の容易さに加えて、アンモニア火力発電などでの直接利用に加え、アンモニアを分解して水素を取り出し水素発電や燃料電池自動車(FCV)へ適用するなど用途の広さが挙げられます。当該技術による設備を主にアンモニアの受入基地に併設し、アンモニアを分解して水素を取り出すことで、将来の水素エネルギー社会の実現を推進してまいります。
アンモニア利用による化石燃料代替技術として、三井化学株式会社、丸善石油化学株式会社、双日マシナリー株式会社と共同で、エチレン分解炉におけるアンモニア燃料実用化研究開発に取り組んでおります。本開発は、燃料アンモニア利用を促進するとともに、エチレン分解炉のカーボンニュートラル化によって石化セクターのCO2排出量の大幅削減を目指すものであり、グリーンイノベーション基金によるNEDO実証事業として採択されました。2022年4月より共同実施者の双日マシナリー株式会社が分解炉に装着されるアンモニア燃焼バーナーの開発を開始し、同時に当社は小型の分解炉(試験炉)の基本設計に着手し、2022年10月からは実施してきた基本設計をもとに試験炉建設の為の詳細設計に引き続き取り組んでおります。
⑥ エチレン分解炉電化分野
もう一つのエチレン分解炉のCO2排出削減技術として有望な分解炉の電化技術については、引き続き、具体的な設計検討を進めております。分解炉電化技術の確立と社会実装に向けた検討を更に加速させてまいります。
⑦ 水素利活用分野
早期水素社会を構築することを目的とした水素バリューチェーン推進協議会に発足当時から参画し、水素利用の社会実装に向けてプロジェクトの提案、需要創出、法令整備等の政策提言などの検討を継続実施しております。
また、NEDOの委託を受けて、海外の水素製造技術の調査を行い、2021年度は中間調査報告書を提出いたしました。 2022年度は海外水素ベンチャーの水素製造装置を用いた実証試験を実施する予定でしたが、デモプラント建設の遅延に伴い実証試験は一旦保留となっております。
⑧ 回収二酸化炭素の利活用分野
回収CO2の利活用については、CO2とグリーン水素から環境循環型メタノールを合成する自社技術であるg-Methanol®を用いて、国内外での具体的な案件に取り組んでおります。お問い合わせが多い10t/日から数100t/日までのFeasibility Study用の情報パッケージを取り揃えると共に、プラント側が再生可能エネルギーによる発電量の変動(再エネ変動)に対応可能とする設備計画最適化ツール「MethaMasterTM」を開発しました。これにより、プロジェクト毎に固有となる再エネ変動プロファイルを基に、水電解設備や水素ホルダー、蓄電池やガスタービン等のシステム全体の迅速かつ効果的な計画提案が可能となりました。
また、東芝エネルギーシステムズ株式会社、株式会社東芝、出光興産株式会社、全日本空輸株式会社、日本CCS調査株式会社と共同で、CO2電解技術(株式会社東芝固有技術)とFT合成技術(当社プロセス設計)を組み合わせてSAFを製造する炭素循環ビジネスモデルの実現を目指し、2021年度採択の環境省委託事業として、脱炭素化の促進と地域振興を両立させるべく検討を進めてまいりました。当社は実証および商用プラント建設の基本計画を進め、2023年度で完了いたしました。
⑨ 資源循環分野
資源循環分野では、世界的なプラスチック廃棄物の問題解決と循環型社会の実現に貢献するために、当社は、廃プラスチックリサイクルの技術開発を進めております。特に、熱分解油化を中心としたケミカルリサイクルを検討しており、タイのSCGケミカルズが60%出資するCircular Plas Company Limited(CirPlas)との間で、同社が保有する混合廃プラスチックの油化技術の商業化に向けた共同検討に関する基本合意書を2022年度に締結しました。現在も、CirPlasおよびSCGケミカルズと共同で、技術面では実証プラントのスケールアップや技術実証を進めるとともに、ビジネス面では外販のためのライセンス供与の準備等に取り組んでおります。
⑩ 原子力分野
原子力分野では、 国内の廃炉分野で主にプロジェクト・マネージメントエンジニアリングサービスに関する取組みを継続しております。核燃料デブリ取出しに関しては、原子力損害賠償・廃炉等支援機構にて提言された、充填剤を原子炉等に流し込み核燃料デブリごと固めて取り出す「充填固化工法」について、掘削技術を中心に検討を進めております。また、核融合市場研究会に加入するとともに、核融合を含めた次世代革新炉の研究開発、社会実装に向けたビジネス展開について検討を行ってまいります。
《各事業分野のビジネス戦略強化》
① 尿素分野
尿素プロセス“ACES21®”は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に取り組んでおります。革新的次世代尿素プロセス「ACES21-LP®」を2022年に発表しました。ACES21-LP®は、従来の ACES21®の特徴を維持しながら、競合プロセスを含め最も低い合成圧力と最も高いCO2転化率を同時に実現する先進的プロセスです。ACES21-LP®は、ACES21®の優れたプロセスコンセプトと最先端の低圧合成技術を組み合わせることで現ACES21®から更なる原料昇圧動力削減・プロセス効率向上によるエネルギー消費減と、合成機器軽量化によるプラントコスト削減を実現し、低コスト尿素製造と地球環境保全に貢献する技術です。2023年度はACES21®を適用するインドネシア肥料プラント向け尿素ライセンス供与プロジェクトを受注いたしました。本設備はACES21-LP®の設計を初めて適用する予定です。今後も一層のプロセス改良に取り組むとともに、DX-PLANT®のソリューション深化と展開を図ることによる設備の運転および保全の最適化やカーボンニュートラルに向けた尿素プロセスの開発も推進してまいります。
② バイオマス発電分野
バイオマス発電分野では、完工済みもしくは現在進行中の複数の50MW/75MW案件の知見・ノウハウを生かし、スケールアップの検討、発電事業参画/アフターサービス事業/燃料供給事業等への展開の検討、バイオマスバリューチェーン構築の検討、および海外案件への展開の検討を積極的に進めてまいりましたが、当社の目指す案件を見出すことが難しく、新規案件への取組みを保留しております。
③ 海洋資源開発分野
海洋資源開発の分野では、近年急速に需要が高まるデジタル機器、再生可能エネルギー設備、ハイブリッド車や電気自動車等の電池材料、磁気材料等に欠かせないレアメタル・レアアース等の鉱物資源を深海から回収する国策技術開発の支援を行ってまいりました。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のもと、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が率いる日本勢は、大水深6,000mからレアアースを回収するプログラムを進めております。ここでは、当社はこれまで培ってきた資源開発技術やサブシー技術を活用してレアアース泥回収システムの技術開発に携わっております。具体的には、2019年度の概念設計、2020年度の基本設計に引き続き、2021年度には「レアアース泥回収用解泥・揚泥機の製作」業務をJAMSTECから受託し、2022年度に実証試験の実施をサポートいたしました。2023年度はレアアース分離・精製・製錬分野の支援を実施いたしました。従来のメタンハイドレート開発への取組みも継続するとともに、統合的な海洋資源開発に向けたビジネス強化を進めております。
④ 医薬品分野
医薬品分野では、テックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供するとともに、将来を見据えた革新的な技術開発を行っております。低分子医薬品向けの原薬連続生産技術開発では、NEDO戦略的省エネルギー技術革新プログラムにて開発した「再構成可能なモジュール型単位操作の相互接続に基づいた医薬品製造用iFactory」の取り組みが評価され、下記の賞を受賞しました。
2022年度「日本オープンイノベーション大賞経済産業大臣賞」
2023年度「NEDO省エネルギー技術開発賞」理事長賞
2023年度「エンジニアリング功労者賞・奨励特別賞」(一般財団法人エンジニアリング協会)
中分子・バイオ医薬品向けには、シングルユース技術を活用した自動化装置開発を行うことで2023年度までに3件の特許を取得し、精製工程連続化の設備開発や不活化、清澄化および無菌ろ過等の各工程省力化システムを納入いたしました。
《EPC事業の基盤強化》
① DX/ICT分野
ICT分野では、当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化や競争力強化を加速するため、2025年に向けたビジョンとロードマップ、それを実現させるためのICT中期戦略を策定いたしました。本ロードマップに基づき、Engineering、Procurement、Construction、Project Managementのそれぞれの分野において、デジタル技術を活用したデジタルツインを構築することによるマネジメント強化、設計品質の向上、納期遵守、エ期短縮を図っております。デジタル技術を活用したデータセントリックなプロジェクト実行手法が海外拠点展開を含め徐々に定着してきており、2021年8月1日付で、経済産業省が定めるDX認定制度に基づき、DX認定業者に選定され、2023年に認定が更新されています。2022年度には、エンジニアリングデータ統合プラットフォームの構築と実証も完了し、ドキュメント中心の業務からデータ中心の業務変革が加速し、更に、プロジェクト、サプライチェーン、工事の各部門が管理するデータとの統合管理によるEPCプロジェクト全体のDX化の取組みと実プロジェクトヘの適用が進んでおります。また、データ利活用に関しても、業務提携先であるHEROZ株式会社と共同開発を進めていました、工事段階で発生し得る地下工事におけるスケジュール遅延リスクを3D CADモデルから検知するシステムの実案件への適用を2022年に開始しました。2023年には、実案件での効果が表れはじめ、プロジェクトの業績向上への貢献度合いが継続的に増加してきています。引き続き、プロジェクトヘのAWP(Advanced Work Packaging)実装を深化させ、プロジェクト遂行における一気通貫のデジタル化を目指し、ビジネス改革や提供価値向上を通じて社会に貢献してまいります。
② 工事技術分野
工事技術分野では、上記のAWPや4D(3次元および時間軸)計画情報を使った施工技術実用化、またAI活用による地下構造物の施工性確認や潜在的危険の検知、設計変更による対応、工事シーケンスの見直し等の工事遅延リスクの洗い出しについて引き続き検討を行っております。また、現場業務のDX化の一環として、溶接管理システムや品質管理システムのツールは、現在合計12ツールとなり、実ジョブでの運用を通じ継続的に改善を行っております。
また建設ICT関連技術の深掘りとして、2023年度は個別ジョブの業務実施/支援に力を入れてまいりました。得られた知見を工事本部の基礎力UPに繋げていくために、情報を整理し、部門へ水平展開していく準備を行っております。3次元関連技術についてはレーザー測量のみならず、その他の関連新技術の調査と運用方法を検討するとともに、従来通りの溶接や塗装といった基礎技術に関する部員教育および現場作業で得られた各種知見の集約と水平展開にも引き続き注力してまいります。
③ 調達分野
調達分野では、品質管理業務の確実性向上とそれに伴う損失コスト極小化を目的として各種新規技術を検証し、活用しております。例えば、3Dレーザー測定技術に関しては、塔槽類の外部取付品への適用化検証および熱交換器管端溶接部の高精度測定への活用の検証を継続しております。また、複数の国内バイオマス発電案件で発生した熱交換器チューブ欠陥による漏れへの対策として、将来的に音響パルスを使用した迅速且つ正確な欠陥検知手法の確立を目指しております。
④ 技術研究所
当社では1990年代当初から、千葉県習志野市のエンジニアリングセンター敷地内に技術研究所を設け自社商品技術やEPC遂行技術の開発および強化に努めてまいりました。今般、新規事業領域での研究開発活動強化も勘案し、規模を拡張した技術研究所(T-Labo)を千葉市緑区の千葉土気緑の森工業団地内に新設しました。また、新建屋屋上には太陽光発電設備も設置し、技術研究所の運営におけるカーボンニュートラル化とサステナビリティ推進も図ってまいります。