第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社は、「高品質」「高価値」を旨に、他社にない製商品の創造と提供を通して、価値としての利益を還元し、お客様に貢献することを基本方針として、独創性に満ちた、売上規模は小さくとも利益率の高い、「小さくて強い会社」を目指しております。

 

(2) 経営環境

① 企業構造

 当社は、省エネルギーかつ環境にやさしいバイコン製法によるコンクリート製品の製造を基本として、開発→生産→販売→顧客という基本サイクルを効率よく回転させ、国の「安全・安心なまちづくり」や「環境にやさしい国づくり」という基本路線にマッチした市場の求める顧客満足度の高い製品を開発・製造・販売いたしております。

② 市場環境

 当社は、公共事業だけでなく、新たな事業チャンネルの構築によって、さらに民間企業への積極的参入を展開しておりますが、依然として公共投資の動向には大きく影響を受けます。

③ 顧客動向

 当社の売上に占める割合の高い公共事業に関しては、構造改革の進行や経済環境により、今後も、不透明かつ大幅な増加は見込めない状況にあります。当社は従来にはない高付加価値製品・商品の販売により収益の確保に努めているものの、このまま市場の縮小が続いた場合、当社の業績は悪影響を受ける可能性があります。

④ その他

 当社の売上に占める割合の高い公共事業への販売強化の取組においては、国土交通省の進める「選択と集中」を視野に入れ、「交通事故対策」「道路構造物の長寿命化」や「無電柱化の推進」そして、日本特有の課題である「予防的な治水対策、浸水対策」並びに「維持管理」等に焦点をしぼり、技術開発を強化しております。

 また、民間需要に対する販売強化策として新たな事業チャンネルを構築し、環境を中心とした民間設備投資の開拓にも注力しております。

 今後も全社が価値観を共有し、中期ビジョン「自ら需要をつくれる企業」の実現に向かい、一歩づつ着実に成長できるよう努力する所存であります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1.当社の経営方針

 官民各顧客に対し当社の強みである付加価値の高い既存製商品の独自性・優位性を高める周知活動の徹底強化、知的財産権を活用した製商品開発、異業種連携による新たなネットワークの構築、当社が保有する資産の更なる有効活用、それらを推進するための各種投資等を積極的に行ってまいります。

 このような方針の下、当社が参入すべき分野は、次のとおりであります。

① インフラ老朽化対策の推進(道路の老朽化対策)

② 無電柱化の推進(通学路・緊急輸送道路)

③ 生活道路・通学路の安全対策(自転車・歩行者中心の空間づくり)

④ 自転車の利用環境の整備(自転車道・自転車専用通行帯)

⑤ 頻発する局地的な豪雨(ゲリラ豪雨への対応)

⑥ 道路における再生可能エネルギーの活用や道路照明の省エネ化、高度化

⑦ インフラ等を活用した太陽光発電等の地域再エネの導入、利用の拡大

 

2.人材確保

 人材確保難への対応として、働きやすい就業環境の実現が必要であると考えております。この実現のため、有給休暇取得率の向上や産前産後休暇・育児休業等の取得率の向上を進めるとともに、それを実現するための環境整備に努めてまいります。

 

3.その他

 当社は、中期ビジョンである「自ら需要をつくれる企業」に向けた実践を進めるため、次期経営方針として「Beyond innovation ―革新のその先へ―」という社内スローガンを掲げております。引き続き、公共事業だけでなく民間市場にも積極的に参入することで下期偏重となっている収益構造の改善を図ってまいります。また、永続企業に必要となる「持続可能な収益モデル」の早期確立、そして次のステップとして「新たなビジネスモデルのステージ」を描き、既存製品の進化だけではなく、常に新たな製品の開発と販売に挑戦することで更なる価値を生み出していくことに注力してまいります。

 今後も、「魅力ある企業」として輝き、ステークホルダーの皆様から信頼いただけるよう、さらに努力を重ねてまいります。

 今後ともなお一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

 当社は、気候変動などの地球環境問題への配慮、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題について、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。

 当社では「企業と社会の持続可能性の両立」を目指し、サステナビリティ推進活動に取り組む専任組織である「サステナビリティ委員会」を設置しております。社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る様々な課題について、当社方針や目的を決定し、具体的な活動に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

 当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

 当社は、人材の多様化とそれら人材の育成が中長期的な企業価値向上につながるものと考え、多様性確保の観点から、性別・国籍・年齢に関わらず意欲と能力のある優秀な人材を採用し、また、管理職に登用していることから、全ての従業員に平等な評価及び登用の機会を設けております。

 また、当社は、女性従業員が活発的に働き、かつ様々なフィールドで継続的に活躍できる職場環境づくりやワーク・ライフ・バランス実現に向けた支援として、育児休業規程及び介護休業規程を制定し、育児短時間勤務を子が小学校3年生の年度末になるまでとするなど、育児・介護等に関する両立支援制度の整備を行っております。

 

(3) リスク管理

 異常気象による被害が増大するなど、気候変動をはじめとする地球環境の変化は、経済活動のみならず私たちの日常生活に大きな影響を及ぼしつつあり、人類共通の大きなリスクとなっております。

 当社のリスク管理においては、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えるリスクを総合的に判断しており、その点においては、当社のコンクリート関連事業及び建築設備機器関連事業における事業内容が、脱炭素社会の実現及び当社のリスク管理に不可欠であるとの認識であります。

 

 具体的なリスク減少への取り組みとしまして、コンクリート関連事業においては、CO2排出量が少ない製法によるコンクリート製品の製造や環境に配慮し、環境問題を解決するための製品の提案、建築設備機器関連事業においては、フロン類排出抑制法・高圧ガス保安法に遵守した作業の実施や環境負担の少ない次世代冷媒機器の提案、業務上発生する産業廃棄物の削減等、また、その他の取り組みとしてペットボトルキャップのリサイクルなど様々な取り組みを実施しており、その内容を当社ウェブサイト(URL https://itoyogyo.co.jp/company/sdgs/)内「SDGsの取り組み」にて開示しております。

 現時点において具体的な指標については開示しておりませんが、刻々と変わる社会動向や技術革新など状況の変化に合わせて柔軟に対応し、脱炭素社会の早期実現に向け取り組んでまいります。

 

(4) 指標及び目標

 当社では、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

① 女性活躍の推進

 当事業年度末における当社の女性従業員比率は22%となりました。

 当社では、2030年代に女性従業員比率30%程度となることを目指し、中長期の視点で当たり前に女性が活躍する環境づくりを進めております。なお、女性の管理職登用については現時点において従業員に占める比率が大きくないことや若年層に偏っていることから具体的な目標の設定には至っておりません。

 今後、更なる人材戦略の整備を図る過程で必要に応じて検討してまいります。

 

② 男性従業員の育児休業取得

 当事業年度における当社の男性従業員の育児休業の取得率は、対象者1名に対して1名が取得したことから100%となりました。

 今後も男性従業員の育児休業取得率100%の維持を目標としてまいります。

3 【事業等のリスク】

 文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 なお、将来に関する事項につきましては、不確実性を有しており、将来生じる結果と異なる可能性がありますので、記載しております事項に対する判断は、以下記載事項及び本項目以外の記載内容も合わせて慎重に行われる必要があります。

 

(1) 主要なリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

 

 財政状態及び経営成績の変動に係る事項

① 当社は、公共事業だけでなく、新たな事業チャンネルの構築によって、さらに民間企業への積極的参入を展開してまいりますが、依然として公共投資の動向には大きく影響を受けます。公共事業に関しては、構造改革の進行や経済環境により、今後も、不透明かつ大幅な増加は見込めない状況にあります。当社は従来にはない高付加価値製品・商品の販売により収益の確保に努めているものの、このまま市場の縮小が続いた場合、当社の業績は悪影響を受ける可能性があります。当該リスクへの対応については、さらなる民間企業への積極的参入及び高付加価値製品・商品の開発等に努めております。

② 当社の取扱い商品については海外メーカーからの外貨建て輸入商品があり、仕入に係る買掛金債務について為替リスクを有しております。当該リスクへの対応については、為替レートの管理や専任部署の設置、社内ルールの徹底等に努めております。

③ 当社のコンクリート製品の原料である国内セメント価格は、原油価格の変動による影響を受けます。厳しい市場環境では、この変動相当額を必ずしも売価に転嫁しきれない場合があり、このような場合には、当社の業績は悪影響を受ける可能性があります。当該リスクへの対応については、専任部署の設置、社内ルールの徹底等に努めております。

 

(2) 重要事象等

 提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象はありません。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済情勢は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっており、また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。さらに、2024年能登半島地震の経済に与える影響にも十分注意する必要があります。

このような状況のなかで、当社では当事業年度においては「原点は、小さくて強い会社。~ゆるぎない成長へ進取果敢に~」という原点に立ち返った社内スローガンを経営方針として掲げ、事業を推進してまいりました。

コンクリート関連事業の製商品に関しましては、少ないセメント量で高強度製品が製造できる「バイコン製法」で製造を行っており、他製法に比べてCO2排出量を削減できることから、カーボンニュートラル社会の実現にも貢献しております。そのなかでも、当社主力製品である「ライン導水ブロックシリーズ」の独自性・優位性について引き続き高い評価を受けております。

当社無電柱化製品におきましては、無電柱化の推進に関して施策の総合的、計画的かつ迅速な推進を図るため、国土交通省が「無電柱化推進計画」を策定し、未だ多くの課題が残っているものの、無電柱化の推進に向けた着実な取組が行われており、「S.D.BOX」等の採用も増加しております。

環境対策製品におきましては、NEXCO設計要領に準拠した油水分離ます「ヒュームセプター」が、環境対策・ノンポイント汚染対策として高速道路、国道、都道府県道等の交通量の多い道路や工場、商業施設等に幅広く採用されており、省スペースでの施工が可能な点、施工が簡易的である点、油の再流出が無い点等のメリットから、採用実績は2015年~2020年の5年間で約5倍に増え、2022年度には総販売台数が1,000基に達し、非常に高い評価を戴いております。

また、G20サミットや締約国会議においても取り上げられております「マイクロプラスチック対策」や「温室効果ガス削減」といった問題に対する具体的ソリューションとして、現在、「ヒュームセプターMP2フィルター」「ソーラー縁石システム」「レインガーデンシステム」といった環境関連製品の開発にも着手しております。

これらの製商品におきましては、当社製品のPR活動強化のため、「EE東北‘23」、「ハイウェイテクノフェア2023」、「第3回脱炭素経営EXPO関西」及び「建設技術フェア2023in中部」に出展し、官公庁を始め、設計・施工会社、専門商社等の皆様から非常に高い評価を戴いております。

また、営業活動以外でも、サステナビリティ及びCSR活動の一環として、寄付型自動販売機による寄付支援、また、国土交通省主催の「ボランティア・サポート・プログラム」等にも参加し、営業活動や技術開発だけでなく、環境問題を意識したSDGsへの活動についても積極的に取り組んでまいりました。

その結果、当事業年度の売上高は31億32百万円(前事業年度比9.7%減)、営業利益は1億8百万円(同39.4%減)、経常利益は1億1百万円(同42.7%減)、当期純利益は1億1百万円(同22.6%減)となりました。

 

当事業年度におけるセグメントの業績は次のとおりであります。

①コンクリート関連事業

コンクリート関連事業の売上高は18億65百万円(前事業年度比12.4%減)、セグメント利益は24百万円(同64.8%減)となりました。

当事業年度において、製商品デモンストレーションを各自治体・設計事務所を中心に実施し、当期間で全国218か所にて1,258名の方に参加して頂き、「ライン導水ブロックシリーズ」、「ヒュームセプター」の引き合いが順調に増加いたしました。また同デモで展示しております「ソーラー縁石システム」、「路面ソーラー」への関心も高く、今後の採用増加に向けて、様々なイベントでPRを継続して参りました。

また今年度よりIコマース事業室を設置し、販売網の拡大と取扱品目を増やすことを目的として活動を開始しております。新規取引先への勉強会や工場見学会を実施するなど、売上増加に向けた取り組みを強化して参りました。

当事業年度より全製商品についての価格改定を実施しておりますが、業界全体における資材高騰の影響で、発注予定案件の延期や見直しが発生し、予定していた出荷量が減少となり、同事業の売上高、セグメント利益ともに前年同期を下回る結果となりました。

②建築設備機器関連事業

建築設備機器関連事業の売上高は11億50百万円(前事業年度比6.3%減)、セグメント利益は59百万円(同30.2%減)となりました。

中・大型の公共事業案件を中心に堅調に受注したこと、また、民間工事へ積極的な営業を展開し、受注拡大につながった一方で、前事業年度と比較して期首における仕掛工事案件が少なかったこと、資材価格の高騰や給湯器、制御機器、ポンプ関連機器などの納期の遅れなど供給面の影響を受けたことなどにより、同事業の売上高、セグメント利益ともに前年同期を下回る結果となりました。

③不動産関連事業

不動産関連事業の売上高は1億15百万円(前事業年度比6.9%増)、セグメント利益は40百万円(同5.6%減)となりました。

売上高、セグメント利益ともにほぼ当初の計画通りに推移致しました。

 

セグメント情報の詳細は(セグメント情報等)をご覧ください。

 

当事業年度における財政状態の概況は次のとおりであります。

資産、負債及び純資産の状況

(資産)

当事業年度末の流動資産は28億33百万円となり、前事業年度末に比べ1億83百万円増加しました。

完成工事未収入金の増加3億98百万円、現金及び預金の減少1億97百万円、受取手形の減少94百万円、売掛金の減少77百万円、商品及び製品の増加62百万円、電子記録債権の増加57百万円、未収還付法人税等の増加などによるその他流動資産の増加23百万円、原材料及び貯蔵品の増加10百万円が主な理由であります。

当事業年度末の固定資産は32億57百万円となり、前事業年度末に比べ51百万円増加しました。

投資有価証券の増加39百万円、保険積立金の増加などによる投資その他の資産その他の増加11百万円が主な理由であります。

この結果、総資産は60億90百万円となり、前事業年度末に比べ2億34百万円増加しました。

(負債)

当事業年度末の流動負債は19億93百万円となり、前事業年度末に比べ2億34百万円増加しました。

支払手形の減少4億53百万円、電子記録債務の増加3億58百万円、工事未払金の増加2億3百万円、短期借入金の増加2億円、買掛金の減少21百万円、未払消費税等の減少などによるその他流動負債の減少21百万円、賞与引当金の減少17百万円、前受金の減少15百万円が主な理由であります。

当事業年度末の固定負債は7億12百万円となり、前事業年度末に比べ88百万円減少しました。

長期借入金の減少60百万円、繰延税金負債の減少37百万円、役員退職慰労引当金の増加12百万円が主な理由であります。

この結果、負債合計は27億6百万円となり、前事業年度末に比べ1億46百万円増加しました。

(純資産)

当事業年度末の純資産は33億84百万円となり、前事業年度末に比べ88百万円増加しました。

繰越利益剰余金の増加56百万円、その他有価証券評価差額金の増加34百万円が主な理由であります。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ1億97百万円減少し、6億74百万円となりました。

 

当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減理由は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、1億53百万円(前年同期3億84百万円の資金獲得)となりました。

収入の主な内訳は、仕入債務の増加96百万円、減価償却費91百万円、税引前当期純利益81百万円、役員退職慰労引当金の増加12百万円、減損損失8百万円、支出の主な内訳は、売上債権の増加2億83百万円、棚卸資産の増加73百万円、法人税等の支払額43百万円、未払消費税等の減少21百万円、賞与引当金の減少17百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、1億27百万円(前年同期2億89百万円の資金使用)となりました。

支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1億11百万円、保険積立金の積立による支出11百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は、84百万円(前年同期2億3百万円の資金獲得)となりました。

収入の主な内訳は、短期借入金の純増減額2億円、支出の内訳は、長期借入金の返済による支出60百万円、配当金の支払額による支出47百万円、リース債務の返済による支出7百万円であります。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

コンクリート関連事業

1,195,084

95.6

建築設備機器関連事業

949,843

96.5

不動産関連事業

合計

2,144,927

96.0

(注)金額は販売価格により記載しております。

 

② 受注実績

当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

コンクリート関連事業

建築設備機器関連事業

1,213,333

137.6

458,132

235.4

不動産関連事業

合計

1,213,333

137.6

458,132

235.4

(注)金額は販売価格により記載しております。

 

③ 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

コンクリート関連事業

1,865,826

87.6

建築設備機器関連事業

1,150,691

93.7

不動産関連事業

115,725

106.9

合計

3,132,244

90.3

(注)金額は販売価格により記載しております。

 

 当社の売上高は、季節変動があり、事業年度の上半期と下半期との間に著しい相違があります。

 

(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。特に以下の重要な会計方針が、当社の判断と見積りに重要な影響を及ぼすと考えております。

イ 貸倒引当金

 貸倒引当金については、債権の貸倒れによる損失に備えるために、一般債権は貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権は個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。従って、取引先の財務状態が悪化し、その回収可能性が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

ロ 棚卸資産

 棚卸資産については、市場状況及び生産経過年数に基づく収益性の低下の見積り額について、棚卸資産評価損の計上を行っております。実際の市場状況等が当社の見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。

ハ 繰延税金資産

 当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

ニ 固定資産の減損処理

 当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。この回収可能価額の算定には、将来キャッシュ・フローを直近の実績や事業計画等の意思決定に基づいて合理的に見積りを行うほか、不動産等の時価のある資産については必要に応じ鑑定等の外部評価に基づく適正な価額を用い、帳簿価額の回収可否について判定を行っております。また当社は管理会計上、コンクリート関連事業、建築設備機器関連事業、不動産関連事業の各収益不動産物件を単位として資産をグルーピングし、損益状況の把握を行っております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

ホ 工事売上高の計上及び工事原価総額の見積り

 当社は、工事売上高の計上について、一定の期間にわたり充足される履行義務は、金額的重要性が乏しい工事契約を除き、履行義務の充足に係る進捗率を見積り、当該進捗率に基づき一定の期間にわたり収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗率の見積りの方法として発生原価に基づくインプット法、すなわち、工事原価総額に対する発生した工事原価の割合により計算しております。

 工事原価総額は、契約ごとの実行予算として見積ります。実行予算の策定にあたっては、個々の工事における作業内容及び工数を見積りますが、これには工事に対する専門的な知識と施工経験を有する工事現場責任者による一定の仮定と判断を伴います。また、その後の工事期間において、顧客との合意による作業内容の変更や想定外の事象の発生により、工期の延長や追加的な工数が生じることがあります。この場合、工事契約の変更等に関する情報を収集し、追加的に生じる作業内容及びそれに対応する工数の見積りを再度実施することにより実行予算を適時・適切に見直すことが必要となります。これらの見積りには一定の不確実性が伴うため、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 当事業年度の経営成績の分析

 当事業年度の売上高は31億32百万円(前事業年度比9.7%減)となりました。損益面につきましては、営業利益は1億8百万円(同39.4%減)、経常利益は1億1百万円(同42.7%減)、当期純利益は1億1百万円(同22.6%減)となりました。

 当事業年度の業績等の概況は「(1)財政状態及び経営成績の状況」にセグメント別に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

イ 主要な資金需要及び財源

 当社の主要な資金需要は、製品製造及び建築設備工事のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用ならびに設備新設、改修等に係る投資であります。

 これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、銀行借入による資金調達にて対応していくこととしております。

ロ 資金の流動性

 当社の当事業年度末における現金及び現金同等物は、6億74百万円であり、流動比率も142.1%であることから財務の健全性は保たれており、次期の設備投資においても自己資金で賄う予定であります。

 なお、当社は、当事業年度末においても、自己資本比率は55.6%と依然として高く、財務体質は極めて健全であります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社は、主に成長性、収益性の指標として売上高及び営業利益を重視しております。また、株主資本の効率的活用による株主利益重視の観点から、ROE(自己資本当期純利益率)を重要経営指標とする基本方針を堅持しております。

 当事業年度の売上高は31億32百万円となり、当初計画である32億円を下回る結果となりました。営業利益は1億8百万円となり、当初計画である1億2百万円を上回る結果となりました。

 当事業年度の業績等の概況は「(1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 当事業年度末におけるROEは3.0%となっております。ROEにつきましては具体的な数値目標は定めておりませんが、今後は、必要な成長投資を強化し、収益を確保することや資本効率を高めること等によりROEの向上に努めてまいります。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況に関する分析

 キャッシュ・フローの状況に関する分析は、「(2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 キャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。

 

 

第71期

2020年3月期

第72期

2021年3月期

第73期

2022年3月期

第74期

2023年3月期

第75期

2024年3月期

自己資本比率

59.0

54.2

56.9

56.3

55.6

時価ベースの自己資本比率

54.9

59.4

37.4

31.1

27.7

キャッシュ・フロー対有利子

負債比率

749.7

735.3

327.2

インタレスト・カバレッジ・

レシオ

39.7

36.8

73.5

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※ 株式時価総額は期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。

※ キャッシュ・フローはキャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。

有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

また、利払いについてはキャッシュ・フロー計算書の支払利息を利用しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社は「高品質」「高価値」を旨に、他社にない製商品の創造と提供を通して価値としての利益を還元し、お客様に貢献するという社是に基づき、常に変化し多様化する時代のニーズをとらえ、新しい価値の創造を目指し研究開発活動を行っております。

研究開発部門の要員は5名となっております。

当事業年度における当社の研究開発費の総額は25百万円であります。

 

当事業年度における研究目的、主要課題及び研究成果は次のとおりであります。

(1) 道路製品関連分野及び、コンクリート製品分野

当社のコンクリート製品は、生産効率が高く高強度な製造が可能で、CO2排出量を抑制出来る環境にやさしい、即時脱型工法(バイコン工法)により製造を行っています。

道路製品関連分野の縁石一体型の側溝製品「ライン導水ブロックF型」及び縁石別体型の側溝製品「ライン導水ブロックV型」は、従来の歩車道境界側溝では路肩部に必要となる50cm幅のコンクリートエプロンを無くす事が出来る構造であり、限られた現道幅員の中での自転車通行空間整備、歩道・通学路設置、交差点改良等の交通安全対策での採用で着実に実績を伸ばしており、対策効果を発揮しています。これらの製品については多数の採用実績からのフィードバックを基に製品の改良とラインナップの拡充を継続して行っております。

特に自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組である“グリーンインフラ”に対応出来る新たなラインナップとして、ライン導水ブロックF型及びV型を活用したレインガーデンシステムを開発いたしました。

これらは道路沿いの縁石の一部に開口を設け、道路に降った雨を緑地内に流し込むことで保水・浸透させるグリーンインフラ技術であり、雨水流出抑制、ヒートアイランド現象緩和、緑化推進による景観創出など、さまざまな効果が期待できます。

再生可能エネルギーの分野では、歩道や建築外構等の路面で発電が可能なソーラー発電製品である平板型の路面ソーラーを早水電機工業株式会社様と共同で開発いたしました。実証実験としての現場への施工を完了すると共に、複数の案件への納入を完了しております。

併せて、道路での太陽光発電をより現実的なものにする製品として「ソーラー縁石」を開発いたしました。これは、歩車道境界ブロック上部にソーラーパネルを設置した製品であり、縁石内部には配線や付属機器の収納を容易にする構造を持った製品であります。

これらの幅広いラインナップにより様々な発電ニーズに対応出来るよう、開発を継続しております。

また、弊社のSDGsに関する取組と関連する製品を情報発信する施設として「Kasai Farm」を弊社加西工場内に整備いたしました。当施設ではレインガーデンシステムを応用した植栽帯を整備し、路面ソーラー及びソーラー縁石製品を活用した発電・蓄電システムを用いていちご栽培のビニールハウスへ電力を供給しており、製品の試験検証の場として、或いはお客様にご覧頂くデモンストレーション施設として活用しております。

(2) 非コンクリート製品及び工法等

降雨水により流出する汚濁物質によるノンポイント汚染は、汚染源が特定できず河川・湖沼等の水質に大きな影響を与えております。この対象の広いノンポイント汚染に対し、水流を制御することにより無動力で汚濁物質を分離・回収できる「ヒュームセプター」は、高速道路や民間企業での採用が拡大しております。

また、従前からのノンポイント汚染対策に加え、近年特に問題視されるようになっているプラスチック片による海洋汚染対策としての用途にも着目し、「ヒュームセプター」の応用製品である「MP2フィルター」を開発いたしました。

「MP2フィルター」はヒュームセプターの比重分離メカニズムに加えて特殊なフィルターを併用した構造であり、海洋汚染源となるマイクロプラスチックの流出源として注目される人工芝の捕捉に特化した技術です。

また、既存の人工芝競技場に適用可能なマイクロプラスチック流出対策製品として、既設桝に後付け可能な製品も開発いたしました。

これらの製商品につきましては、「建設技術フェア2023in中部」、「ハイウェイテクノフェア2023」、「EE東北’23」、「第3回 脱炭素経営 EXPO 秋」に出展し、PR活動を展開いたしました。

その結果、昨今の環境意識の高まりから予想を超える反響を頂いており、開発中の製品につきましては1日も早く市場のニーズに応えるべく、販売に向けて研究開発を継続しております。