文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「創造と前進を旨とし、価値ある商品によって社会に貢献し、社業の永続的発展成長を期す」を経営理念とし、「マテリアルの知恵を活かす」というコーポレートスローガンの下、「社会の持続的な成長」と「中長期的な企業価値の向上」に努めることを経営の基本方針としております。
(2) 対処すべき課題
〔中期経営計画「22中計」スタート〕
当社グループは、2022年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「22中計」を策定し、昨年4月よりスタートいたしました。パーパスを基軸とした全社ビジョン(2030年のありたい姿)を実現するため、「社会的価値の向上」と「経済的価値の向上」の両立を目指す統合思考経営を本格的に導入し、持続可能な会社へと変革を進めております。
「社会的価値の向上」については環境影響、社会関係資本、人的資本、ビジネスモデル・イノベーション、リーダーシップ・ガバナンスの5つの観点で各事業の機会・リスクを評価し、事業の持続可能性を経営判断に活かしております。
「経済的価値の向上」については両利きの経営(注)1を実現するべく、事業ポートフォリオの動的管理、社内外シナジーの追求、成長戦略を加速するためのM&Aの活用、研究開発と市場共創の機能を持つ事業創造本部への積極的資源投入に重点的に取り組んでおります。
そのような中、「22中計」スタート年である2022年度は、中国の景気減速等の市況悪化やウクライナ情勢の長期化等が懸念される中、原材料価格やエネルギーコストの上昇、急激な為替相場の変動等の影響により、損益・財務実績は計画値を大幅に下回りました。
「22中計」の2年目となる2023年度も、損益・財務指標は原計画値を下回る見込みの厳しい経営環境ではありますが、全社ビジョン実現に向けた戦略は変更せず、引き続き以下の重点施策を実行してまいります。
機能材料部門では、経済的価値実現に向けた事業機会拡大による成長加速とその仕組みづくり、社会的価値創造に向けた環境貢献製品の創出、CO2排出量削減の加速といった戦略の追加や経営資源配分の最適化による資産効率向上を進めてまいります。
金属部門では、持続可能な社会の実現に必須とされる存在になるためのリサイクルネットワークの確立、新たな金属・再生可能エネルギー資源の開発という中長期的な目標に向け、銅・貴金属採収率の改善や副産物の増回収に取り組むとともに再生可能エネルギー開発可能性の検討に引き続き取り組んでまいります。
モビリティ部門では、選ばれる価値を見極め、創り続けるモビリティ社会の開拓者となるべく、技製販全てにおける深化(商権維持)と共に新規開拓(新しい製品・事業創出)を推進するため、部門横断的な課題解決に取り組んでまいります。
事業創造本部では、新たな事業を「持続的」に創造できるようになるために、事業機会の探索力、研究開発力の強化を図り、事業化推進テーマについては環境の変化に応じてタイムリーに投資と人員の投入を行ってまいります。
本社部門では、サステナビリティ推進部と事業部門を含めた関係部門の連携促進を図り、「社会的価値の向上」の取り組みを更に加速させるため、2023年4月にサステナビリティ推進部を経営企画本部から、社長直下に移管いたしました。なお、2030年度CO2排出量をグローバルで38%削減(2013年度比)すること、2050年度カーボンニュートラル(Net排出ゼロ)を目指すため、カーボンニュートラルロードマップ運用やLCA(ライフサイクルアセスメント)(注)2による改善ポイントの把握、インターナルカーボンプライシング(注)3制度を導入しております。さらに、本年、経済産業省が推進するGX(グリーントランスフォーメーション)(注)4リーグ(注)5へ参画いたしました。2026年度以降の排出量取引市場の本格稼働に向け日本政府の制度構築の議論に積極的に参加してまいります。
また、「社会的価値の向上」と「経済的価値の向上」の両立を目指す統合思考経営に向け、技術系の4部門である生産技術部、品質保証部、保安環境部、知的財産部は各部でGX、DX(デジタルトランスフォーメーション)(注)6等の技術基盤の強化や人材育成に取り組んでおりますが、協働して取り組むことでシナジーを創出しその成果を最大化するため、2023年4月に上記4部門を統括する「技術本部」を新設いたしました。
厳しい経営環境ではありますが、以上の取り組みを実行することにより、統合思考経営への変革を遂げ、ステークホルダーの皆様と共に地球を笑顔にすることを目指してまいります。
(注)1 両利きの経営:「主力事業の絶え間ない改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させていく考え方。
2 LCA(ライフサイクルアセスメント):製品やサービスのライフサイクル(原料の採取、社内製造・加工過程、さらにその製品を使用、消費、廃棄プロセス)を通じた環境への影響を定量的に評価する手法。
3 インターナルカーボンプライシング:自社基準で二酸化炭素(CO2)に価格を設定してその排出量を費用換算し設備、開発投資判断の参考とするもの。
4 GX(グリーントランスフォーメーション):気候変動の主な要因となっている温室効果ガスの排出量を削減しようという世界の流れを経済成長の機会ととらえ、排出削減と産業競争力向上の両立を目指す取り組みのこと。
5 GXリーグ:2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXへの挑戦を行い、現在及び未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取り組みを行う企業群や官・学と共に協働する場で、日本政府が2022 年に設立。
6 DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタルテクノロジーを駆使して、経営の在り方やビジネスプロセスを再構築すること。
〔目標とする経営指標〕
このような状況の下、創業150年を迎える22中計最終年度である2024年度(2025年3月期)の業績予想は、入手可能な外部の情報等を踏まえ、次のとおりであります。
Net D/Eレシオ:有利子負債から現金及び預金を差し引いて、それを自己資本で割ったもの。
主な前提諸元
上記の業績予想につきましては、2023年5月16日現在において入手可能な情報に基づき算出したものであり、今後様々な要因により実際の業績が記載の予想数値と異なる場合があります。
中期経営計画「22中計」の進捗状況につきましては、当社ホームページのIR・投資家情報に、2023年5月16日付で掲載されております「22中計進捗説明会資料」をご参照下さい。
https://www.mitsui-kinzoku.com/LinkClick.aspx?fileticket=Qjgt7FQqwIw%3d&tabid=199&mid=826&TabModule950=0
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが目指している、社会的価値と経済的価値の両立による統合思考経営の実現に向け、2023年4月1日付にて、技術基盤の強化を担う「技術本部」の新設とともに、「サステナビリティ推進部」を経営企画本部から本社部門の社長直下に移管し、事業部門を含めた関係部門との連携促進を図り、社会的価値向上の取り組みを更に加速させることとしております。
(1) 気候変動
気候変動は地球全体に長期にわたり大きな影響を及ぼすことから、当社事業にとって特に重要な外部環境変化の一つであると認識しております。とりわけ当社グループは非鉄製錬、電解銅箔などエネルギー多消費型事業を有していることから、そのエネルギー消費に伴う温室効果ガス排出の適正な管理の一環として「エネルギー管理」と「温室効果ガスの排出削減」も経営上の重要なマテリアリティであると位置付け、気候変動対応関連の活動を推進しております。
また、気候変動とそれを巡る社会や経済の変化は、事業上のリスクをもたらす一方で、適切に対応することにより競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しております。そこで、2020年度より、当社グループはTCFD提言のフレームワークに則って、気候変動がもたらす中長期的なリスクと機会の分析、及びそれを事業戦略に落とし込む活動に着手し、2022年3月にはTCFD提言への賛同を表明し、気候変動対応関連活動の更なる加速に取り組んでおります。
当社グループにおける気候変動基本方針や重要事項は、取締役会の監督の下、社長が委員長を務めるCSR委員会において討議し、執行最高会議において審議・決定しております。執行最高会議は、代表取締役と業務執行取締役が参画しており、経営の観点から審議を行なっております。(体制図参照)

当社グループはグローバルに多数の事業を展開しており、気候変動に関わるリスク・機会が事業ごとに異なるという背景を考慮し、気候変動の影響を受ける可能性が相対的に高い事業から事業別にシナリオ分析を行なっております。
シナリオの定義
これまでに、グループ全体のCO2排出量の約70%を占める金属事業、次いでCO2排出量が多い銅箔事業、気候変動による事業環境の変化が大きい触媒事業、機能材料事業についてシナリオ分析を完了しておりますが、引き続き、その他の事業分野の分析と定期的なシナリオ分析のアップデートに取り組んでおります。
シナリオ分析の概要については、
https://www.mitsui-kinzoku.com/LinkClick.aspx?fileticket=XbJU7R7OjKw%3d&tabid=159&mid=1060&TabModule1202=0
シナリオ分析では、それぞれのリスクによる収益低下を最小化するとともに、新たな製品や新規事業の創出による機会の獲得を実現するための対応案を検討しております。それらの多くは長期的な視点で取り組むべき内容ですが、2022年度からの中期経営計画にも反映させて、戦略のレジリエンスの確保に努めております。
特に金属事業においては、2020年度に実施したシナリオ分析を踏まえ、CO2排出削減を最優先課題とし、カーボンニュートラル対応準備プロジェクトを立ち上げ、CO2削減施策を検討し、効果と確度に順位付けの上、22中計に織り込み、活動しております。
さらに、CO2削減施策の実行を促進するため、2023年4月1日よりICP(社内炭素価格)を設定(注)1し、設備投資・開発投資の判断に活用しております。設定金額については、当社グループにおける削減策実行のハードルがScope1とScope2の特性によって大きく異なる部分もあることから、Scope別の設定としております。
具体的には、Scope1では当社主力事業の一つである亜鉛精錬のようにプロセスの原理上CO2削減対策のハードルが高く、試験等も含めた開発投資が不可欠であるものも想定されることから、電力の再生可能エネルギーへの移行による削減が可能なScope2よりも高い金額といたしました。
(注)1 Scope1:30,000円/t-CO2,Scope2:20,000円/t-CO2
シナリオ分析の過程では、リスク及び機会の特定をしております。とりわけエネルギーコストの増大リスクに加えて、低炭素・脱炭素経済への移行を見据えた顧客ニーズの変化、サプライチェーン取引先への温室効果ガス削減貢献におけるリスクと機会が重要であると認識しております。シナリオ分析で検討した対応策には、これらの動向を監視して必要な早期対応を経営計画に反映させることも含めており、随時経営層に報告を行い、リスク管理をしております。
当社グループでは、エネルギー起源のCO2の削減目標を設定しております。
・2030年度:CO2排出量をグローバルで38%削減する(2013年度比)
・2050年度:カーボンニュートラル(Net 排出ゼロ) を目指す
なお、上記の指標と目標に対する、2021年度の三井金属グループのScope1及びScope2のCO2合計排出量は1,812千t-CO2であり、2013年度比で7.4%の削減となりました。
今後は、Scope3について、更に開示対象を拡充できるよう取り組みを進めてまいります。
(注)2 エネルギー起源のCO2を対象としております。
(注)3 当社(三井金属単体)が荷主である輸送に伴うCO2排出量を対象としております。
(注)4 三井金属グループ(グローバル)で発生した廃棄物の処理によるCO2排出量を対象としております。
(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループでは、人材を最も重要な経営資源と位置づけております。その考えの下、個人を尊重することと、組織として人材を活用することを両立させております。これにより当社グループが目指す、「社会的価値の向上」と「経済的価値の向上」の両立による統合思考経営の実現を人事の側面から推進しております。
①人材育成方針
当社グループは、「ひとづくり基本方針」に基づき、事業を通じて社会課題を解決し、価値創造を実行する人材の育成に取り組んでおります。
イ.ひとづくり基本方針
一人ひとりの可能性と原動力を引き出し、「ものづくり」に強い当社を実現するために、「ありたい人材像」を掲げ、継続的・計画的に「ひとづくり」を推進いたします。
‐「明るくのびのびとした職場づくり」に取り組み、良好なコミュニケーションと切磋琢磨により、ともに成長しあう文化を築き上げます。
‐社員をはじめ一人ひとりが、「ありたい人材像」を目指し、意欲的に自らの能力向上に取り組みます。
‐育成のためのOJTとローテーションを行い、「プロ人材(注)5」への成長を促進するとともに、適材適所により能力発揮の場を提供いたします。
‐発揮された能力・成果に対して「公正な評価」を行います。
‐教育プログラムは、時代のニーズを反映させ、より高い質を目指し、定期的に効果を検証し、改善につなげます。
(注)5 プロ人材:専門的な知識・スキルを備え、発揮することにより、ある一定の職種や領域において、自らPDCAを回して課題解決を目指せる人材
②社内環境整備方針
当社グループでは、「ひとづくり基本方針」に基づき、事業を通じて社会課題を解決し、価値創造を実現する人材を育成すべく、人材戦略を踏まえたHRBP(注)3機能の導入、実力重視の人事制度導入・定着、健康経営の推進、ダイバーシティ&インクルージョンの推進の4つ施策からなる社内環境整備活動を実施しております。
(注)6 HRBP:Human Resource Business Partnerの略。経営者や事業部門のパートナーとして事業成長と戦略の実行を人材・組織の面から支える機能。
イ.HRBP機能の導入
・人事ビジネスパートナー室の設置
当社は2022年4月に人事ビジネスパートナー室を設置いたしました。従来の人事は、経営が決定した人事戦略の実行や労務管理などオペレーション業務が中心となりがちでした。企業経営を取り巻く環境が大きく変化する 「VUCA」 の時代において、事業を継続的に成長させていくためには、経営戦略と人事マネジメントの連動した戦略人事が求められております。人事ビジネスパートナー室では、経営戦略、事業戦略に人事の面から迅速に対応できる体制を作ってきました。具体的には各本部にHRBPを配置し、人事部と連携する形を整えました。全社視点における事業ポートフォリオの動的管理に紐づく人材アロケーションの実行など、先見性のある人事課題を特定し、課題解決のための施策をスピーディに展開していくとともに、サクセッションプランや個人別の配置育成計画により各部門でのタレントマネジメントを支援・推進していきます。
ロ.実力重視の人事制度導入・定着
・実力重視の人事制度
当社は2022年4月より人事制度を、これまでのヒト基準の人事制度から職務・役割基準のジョブ型人事制度へと改定し、またその運用においても従来の年次・年功的な管理から脱却し、実力重視の適材適所を図っていくことといたしました。
このような改定の狙いは、当社が掲げる“パーパス”、“全社ビジョン”、そしてそこに向けた経営戦略と、人材マネジメントの整合性を強化することにあります。すなわち、人に仕事を与えるという従来の発想・仕組みから、経営戦略遂行上必要な仕事に対して人を就けるという考え方への転換により、これまで以上に効率的な戦略遂行を実現していくことを意味しております。また、このような制度の下で“実力”のある優秀な人材に対して、年次・年功などの制約条件なく活躍する機会を提供することで、組織の活性化と挑戦する風土の醸成にもつながるものと期待しております。
・キャリア開発支援
先述のとおり、当社は2022年度より“実力重視の適材適所”を実現するための新しい人材マネジメント・人事制度への転換を行いました。この転換により、当社で活躍する人材のキャリア形成のあり方に、大きく2点の変化が生じます。一点は一人ひとりが自分らしいキャリアビジョンを描き、定めた目標に向けて実力を身に着けていく、すなわち自律的なキャリア形成を志向することが求められるということです。そしてもう一点は、会社は社員のキャリア選択権を認め、一人ひとりと対話しながらキャリアビジョンの実現をサポートしていくというあり方です。当社はこのようなキャリアに関する会社と社員の新しい関係性を実現するための”キャリア開発支援“の取組みとして、教育施策や制度の整備など様々な施策に今後継続して取り組んでいきます。
・自律を後押しする人材育成
当社ではグループの価値創造を担う、「Willを持った人材」の育成をOJTとOff-JTの両輪で推進しております。従業員がWillを持って自律的に学び、スキルを向上し自らの強みを発揮できるよう、また、生涯キャリアの形成に向けた各従業員の継続的な努力をサポートすべく、自律的な学びを支援できるカリキュラムと学習環境の提供に努めております。例えば、新入社員に対してはOJT指導員を選出し指導員への教育を行いつつ、指導員-部下間のコミュニケーション方法など育成上の課題を集約し若手社員のフォローアップ研修に反映させるなどタイムリーにOff-JT研修の内容をブラッシュアップしております。また、統合思考経営の実践に向け、環境・社会課題を起点としたビジネスを創出できる人材の育成にも力を入れており、外部環境の変化を考慮しSDGs、ESG、CSRに対応する研修の拡大・強化に取り組んでおります。
2022年度より人事制度の刷新に併せ、「個」のキャリア自律を実現すべく教育体系制度の刷新並びに、それをサポートするDXツールとして、MLP(Mitsui₋kinzoku Learning Platform) を導入いたしました。新教育体系では選択型能力開発プログラムを更に強化し、各階層で必要な能力を開発する必須研修に加え、従業員が自由に受講できる学習コンテンツを大幅に拡充しカフェテリア型の研修体系といたしました。リーダーシップやアンガーマネジメント、ダイバーシティマネジメントなど管理職のマネジメントスキルを高めるコンテンツ、 DXやAIなどのテクノロジー、心理的安全性など働き方改革に関する学習、サステナビリティに関する学習など世の中のトレンドをキャッチアップしたコンテンツも用意しております。
ハ.健康経営の推進
当社グループは、統合思考経営の実現に向け、働く全ての従業員及びその家族が心身ともに健康であることが重要課題であると考えております。従業員とその家族が健康であることは、従業員の生活を充実させ、その個性・能力を最大限に発揮できる基盤となり、会社にとっても生産性を高め、業績向上に繋がっていきます。従業員及びその家族の健康維持・増進活動に取り組むことを通じて、更に活力のある会社づくりを推し進め、以って社会に貢献し続けることを三井金属グループ健康経営宣言に掲げております。当社は、2019 年以降継続して健康経営優良法人に認定されるなど、健康経営に注力しております。今後は従業員のみならず、従業員家族を含めた健康維持・増進活動に取り組むことを通じて、更に活力のある会社づくりを推し進めていきます。
ニ.ダイバーシティ&インクルージョンの推進
・ダイバーシティ推進室の設置
ダイバーシティ&インクルージョンの取組みを深化・加速させるため、専任組織であるダイバーシティ推進室を2021年10月に設置いたしました。ダイバーシティ推進室では、多様な価値観を持つ全ての従業員が活躍できる職場づくりを実現するための計画を策定・実行しております。具体的には、中期経営計画における重点取組み項目である働きがい改革と、多様性を高めて活かす取組みの第一歩として女性活躍を推進し、多様な人を惹きつける職場を実現していきます。また、社長を委員長とするダイバーシティ推進委員会を2022年4月に立ち上げ、委員会で方針・施策を定期的に協議・決定、進捗を管理していくこと、そして、課題や委員会での取組みについて取締役会への報告事項とすることで、経営方針に沿った取組みの継続実施、施策の浸透と定着を図っていきます。
・ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けて
当社グループでは、グローバルで1万3千人以上の従業員が働いており、人種・国籍・宗教・信条・文化・出身地・障がいの有無・性別・性的指向・性自認などの属性の多様性を活かすだけではなく、様々な価値観を持つ従業員がお互いを尊重し、それぞれの考えや経験を活かして働くことができる組織、つまりダイバーシティ&インクルージョンが実現された組織を目指しております。
絶えず変化して多様化するグローバル社会においてイノベーションを起こすためには、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方を従業員一人ひとりが理解し、それぞれがもつ様々な価値観・経験を活かすことが必要です。多様性を活かし、働くひと全てがいきいきと活躍できる企業グループ実現に向け、当社グループ全体の持続的な取組みを深化・加速させていきます。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するためには、仕組みを整備するだけではなく、従業員一人ひとりが重要性や意義を理解することが大切です。従業員への広い浸透を目指し、社内外への情報発信や全社を対象としたダイバーシティ研修を行なっております。
[定期的な情報発信]
‐社外:社長メッセージの社外ホームページ掲載
‐社内:社長メッセージ、社長×人事部長の対談記事の社内サイトや社内広報誌への掲載、各種研修で社長メッセージやダイバーシティ&インクルージョンの取組み紹介
[研修]
‐アンコンシャスバイアス研修 (非管理職向け)
‐ダイバーシティマネジメント研修 (管理職向け)
・働きがい改革による多様な人材の活躍
日本国内における労働力人口の減少、AI等のテクノロジーの進化など外部環境が大きく変化する中、当社グループの価値創造を担う人材確保につなげるための取組みとして、2016年度より制度面の整備を中心とした働き方改革を実行し、2022年度からは「当社だからこそ働きたい」と思えるための働きがい改革を推進して、いきいきと働ける職場づくりをめざしております。とくに今後、ライフスタイルが多様化することを踏まえ、子育てや介護、療養等の理由で働き方に制約がある人材でも長く働き続けられるよう、柔軟な働き方が選択できる仕組みづくりや所定外労働時間削減の取組みを行なっております。
[柔軟な働き方ができる仕組み]
‐コアタイム無しのフレックス制度
‐半日単位年休
‐テレワーク制度
‐配偶者の転勤に伴う休職制度
‐カムバック制度(やむを得ず退職した社員の再雇用制度)
‐時短勤務制度
‐時差勤務制度
‐時間外労働の免除
‐キャリア申告を元にした異動・転勤調整の仕組み など
[所定外労働時間削減の取組み]
‐労働安全衛生委員会における労使による対策検討
‐タイムマネジメント研修の実施
‐PCのログイン・ログオフ時間の自動集約による所定外労働時間の見える化、管理職の実労働時間の把握 など
[働きがい改革の取り組み]
‐お互いを認め合い尊重し、安心して働ける職場づくりに向けた各種研修の実施
‐エンゲージメント測定を活用したいきいき度向上のアクションプラン実施
・女性活躍推進
多様な考えや価値観を活かし、多様な視点での意思決定、組織運営ができるようにして、今後想定される複雑な問題に対応できる組織を作っていかなければ、「VUCAの時代を生き残れない」と考えております。そのために、まずは女性にフォーカスしており、女性の人材育成やキャリア採用での女性管理職登用などの取組み強化を行なっております。ライフイベント等により一時的に業務に制限がかかる社員についても昇進・登用にあたりその要因で不利にならないよう実力に応じて適切に選抜しており、経営幹部候補の女性社員には経営戦略講座を、管理職候補者には候補者育成研修を提供するなど、女性幹部・管理職候補者を増やす取組みも行なっております。
③指標及び目標
ダイバーシティの推進と働きがい改革をモニタリングするために、以下のような指標を設定しております。
イ.取締役会におけるダイバーシティ
取締役の女性比率10%以上
ロ.女性管理職比率
2024年度末までに5.0%以上
ハ.女性活躍の実現に向けた指標
‐女性も働ける職場数の向上
‐正社員採用女性比率の向上
‐リーダー層女性比率の向上
‐男性育休取得率の向上
‐政府機関等の認定取得
‐「多様性の尊重」(従業員へのアンケート結果)の数値向上
ニ.働きがい改革の推進指標
‐いきいき度(エンゲージメント測定指標)の向上
当社では2023年度から役員報酬制度の見直しを行い、ESGの指標達成の程度に応じて付与される「ESG指標要件型譲渡制限付株式報酬」を導入しており、ダイバーシティと働きがいの取り組みが経営レベルで後押しされる仕組みとなっております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)は、様々な要因によって、重要な影響を受ける可能性があります。当社グループでは、経営成績等やビジネスモデル、長期的価値創造に直接影響を与え、事業の継続や企業の存続を脅かす可能性のあるリスクを特定しております。また、リスクへの対応力を向上させるため、リスクマネジメントの推進体制や仕組みの整備・改善に取り組み、対応策を検討し実施しております。
(注)1.当社グループの持続可能性を実現するために、サステナビリティに関するマテリアリティを特定し取組みを進めております。マテリアリティの内、特に当社グループの経営成績等に影響を与えうる項目を、ESGリスクと区分しております。
2.新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という。)の影響については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照下さい。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の世界経済は、経済活動の回復が進展する中、世界的なインフレの加速と主要各国での金融引締め政策の継続、COVID-19の感染拡大による中国経済の下振れ等の影響により、全体としては減速基調で推移しました。
わが国経済は、COVID-19に係る行動制限の緩和により経済活動の正常化が進み、個人消費や設備投資に持ち直しの動きが見られるものの、中国の景気減速やウクライナ情勢の長期化等が懸念される中、原材料価格やエネルギーコストの上昇、急激な為替相場の変動等の影響により、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループを取り巻く環境としては、非鉄金属相場は概ね下落基調で推移し、為替相場は円安が進行しました。機能材料部門の需要は低調に推移し、主要製品の販売量は総じて減少しました。モビリティ部門の排ガス浄化触媒の販売量は増加しました。
このような状況の下、2022年を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「22中計」を策定し、昨年4月よりスタートしました。
当社グループはパーパスを基軸とした全社ビジョン(2030年のありたい姿)である「マテリアルの知恵で“未来”に貢献する、事業創発カンパニー。」を実現するため、各部門において、「経済的価値の向上」と「社会的価値の向上」を両立した統合思考経営を実践することで、持続的な企業価値向上の仕組みを構築し、成長し続けるための重点施策に取り組んでおります。
この結果、売上高は、機能材料部門は減少したものの、その他の部門の増加により、前連結会計年度に比べて186億円(2.9%)増加の6,519億円となりました。
営業利益は、円安の進行による好転要因があったものの、機能材料部門の販売量の減少に加え、エネルギーコストの上昇や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の影響等により、前連結会計年度に比べて482億円(79.4%)減少の125億円となりました。
経常利益は、営業利益が482億円減少したこと、及び持分法による投資利益が11億円増加したこと等により、前連結会計年度に比べて461億円(69.9%)減少の198億円となりました。
特別損益においては、固定資産除却損24億円や関係会社株式評価損10億円等を計上しました。加えて、税金費用及び非支配株主に帰属する当期純損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べて435億円(83.7%)減少の85億円となりました。
当連結会計年度のセグメント別の概況
2022年4月1日付の全社的な組織改編に伴い、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しております。その内容につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」に記載のとおりであります。
また、当社の連結子会社である三井金属アクト株式会社にて会計方針の変更を実施しております。その内容につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 会計方針の変更」に記載のとおりであります。
機能材料セグメント
〔銅箔〕
キャリア付極薄銅箔及びプリント配線板用電解銅箔は、半導体向けを中心にサプライチェーン全体で在庫調整が長期化したことから販売量は減少しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
〔機能粉〕
電子材料用金属粉は、巣ごもり需要の反動に加え、主要顧客の生産調整の影響により販売量は減少しました。高純度酸化タンタルは、スマートフォン向けの需要が低調であったことから販売量は減少しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
〔電池材料〕
リチウムイオン電池用のマンガン酸リチウムは、欧米向け需要が堅調であったものの、下半期に入り一時的な需要減少の影響を受けたことから販売量は減少しました。水素吸蔵合金は、半導体等の部材不足に伴う自動車メーカーの生産調整の影響により販売量は減少したものの、販売価格は原料代高騰の影響により上昇しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔スパッタリングターゲット〕
主力のディスプレイ用スパッタリングターゲットは、巣ごもり需要の反動により需要が低調であったことから販売量は減少しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
以上の結果、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて235億円(17.3%)減少の1,125億円となりました。経常利益は、主要製品の販売量が減少したこと等から、前連結会計年度に比べて192億円(64.3%)減少の107億円となりました。
金属セグメント
〔亜鉛〕
国内の亜鉛メッキ鋼板向け需要は、自動車メーカーの生産調整の影響により低調であったことから販売量は減少しました。一方、亜鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は下落基調で推移したものの、国内平均価格は円安の影響により上昇したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔金・銀〕
金・銀ともに国内価格は上昇したものの販売量が減少したことから、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
〔鉛〕
国内の鉛蓄電池向け需要は、補修用途向けは堅調であったものの、自動車メーカーの生産調整の影響により新車向けが低調であったことから販売量は減少しました。一方、鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は下落基調で推移したものの、国内平均価格は円安の影響により上昇したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
以上の結果、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて154億円(6.4%)増加の2,564億円となりました。経常利益は、円安の影響による増益要因があったものの、エネルギーコストの上昇や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の影響等により、前連結会計年度に比べて272億円(75.0%)減少の90億円となりました。
モビリティセグメント
〔排ガス浄化触媒〕
二輪車向け排ガス浄化触媒は、インド及び東南アジア向け需要が堅調であったことから販売量は増加しました。四輪車向け排ガス浄化触媒は、自動車メーカーの生産調整の影響により国内の需要は低調であったものの、インド向け新規受注車種の量産を開始したことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔自動車用ドアロック〕
世界の自動車販売台数は、半導体をはじめとする部材の供給不足が徐々に緩和されたことから微増となりました。主要製品であるサイドドアラッチは、中国における需要が低調であったものの、国内、インド及び東南アジア向け需要が回復したことから販売量は前連結会計年度並みとなりましたが、原材料費上昇の一部を販売価格に転嫁したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
以上の結果、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて93億円(4.5%)増加の2,164億円となりました。経常利益は、鋼材及び樹脂価格上昇等による減益要因があったものの、排ガス浄化触媒の販売量が増加したことに加え、主要原料であるロジウム価格等の変動に伴う影響が改善したこと等により、前連結会計年度に比べて7億円(31.3%)増加の32億円となりました。
その他の事業セグメント
〔各種産業プラントエンジニアリング〕
国内プラント工事の受注環境が回復したことに加え、海外向け設備部品の受注が堅調であったことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
また、非鉄金属製品の国内平均価格は円安の影響により上昇したこと等から、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて94億円(8.0%)増加の1,281億円となりました。経常利益は、エネルギーコストの上昇に加え、持分法による投資利益が減少したこと等から、前連結会計年度に比べて31億円(81.0%)減少の7億円となりました。
主要な品目等の生産実績及び受注状況の当連結会計年度の推移は、次のとおりであります。
* 亜鉛:共同製錬については当社シェア分
資産合計は、前連結会計年度末に比べ59億円減少の6,318億円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ173億円減少の3,704億円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ113億円増加の2,614億円となりました。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント上昇の40.1%となりました。
なお、財政状態の詳細については、「(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析 ①財政状態の状況」に記載しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ176億円収入減少の430億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ61億円支出増加の316億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ228億円支出減少の146億円の支出となりました。
以上の結果、為替換算差額等を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ27億円減少の268億円となりました。
なお、キャッシュ・フローの詳細については、「(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、セグメントごとの生産実績及び受注状況を正確に把握することは困難なため、主要な品目等についてのみ「(経営成績等の状況の概要)(1) 経営成績の状況」において、各セグメントに関連付けて記載しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。その作成にあたっての重要な会計方針・見積りは、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に記載のとおりであります。
① 売上高
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べて186億円(2.9%)増加の6,519億円となりました。なお、各セグメント及び主要製品別の分析については、「(経営成績等の状況の概要)(1)経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② 営業利益
機能材料セグメントの営業利益は、キャリア付極薄銅箔やプリント配線板用電解銅箔をはじめ、主要製品の販売量が減少したこと等から、前連結会計年度に比べて195億円(66.3%)減少の99億円となりました。
金属セグメントの営業利益は、円安の影響による増益要因があったものの、エネルギーコストの上昇や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の影響等により、前連結会計年度に比べて300億円(87.9%)減少の41億円となりました。
モビリティセグメントの営業利益は、鋼材及び樹脂価格上昇等による減益要因があったものの、排ガス浄化触媒の販売量が増加したことに加え、主要原料であるロジウム価格等の変動に伴う影響が改善したこと等により、前連結会計年度に比べて19億円(127.6%)増加の34億円となりました。
その他の事業セグメントの営業損益は、各種製品の減販に加え、エネルギーコストの上昇等の影響により、前連結会計年度に比べて22億円減少の9億円の損失となりました。
この結果、セグメントの調整額を加味した営業利益は、前連結会計年度に比べて482億円(79.4%)減少の125億円となりました。
③ 経常利益
営業利益が482億円減少したこと、及び持分法による投資利益が11億円増加したこと等により、前連結会計年度に比べて461億円(69.9%)減少の198億円となりました。
なお、各セグメント別の分析については、「(経営成績等の状況の概要)(1) 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
① 財政状態の状況
資産合計は、投資有価証券59億円等の増加があったものの、受取手形、売掛金及び契約資産112億円等の減少により、前連結会計年度末に比べ59億円減少の6,318億円となりました。
負債合計は、長・短借入金残高58億円、支払手形及び買掛金48億円、デリバティブ債務(流動負債)47億円等の減少があったことから、前連結会計年度末に比べ173億円減少の3,704億円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益85億円、繰延ヘッジ損益75億円、為替換算調整勘定37億円等の増加に加え、剰余金の配当62億円、非支配株主持分23億円等の減少があり、前連結会計年度末に比べ113億円増加の2,614億円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント上昇の40.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益151億円、減価償却費336億円、売上債権及び契約資産の減少136億円等の増加要因に対し、法人税等の支払額125億円、仕入債務の減少77億円等の減少要因を差し引いた結果、前連結会計年度に比べ176億円収入減少の430億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出287億円の減少要因等により、前連結会計年度に比べ61億円支出増加の316億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長・短借入金の減少70億円及び配当金の支払62億円等から、前連結会計年度に比べ228億円支出減少の146億円の支出となりました。
以上の結果、為替換算差額等を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ27億円減少の268億円となりました。
③ 財政状態及びキャッシュ・フロー指標のトレンド
(注)自己資本比率 :(純資産-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/支払利息
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている長・短期借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーを対象としております。
支払利息は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社は、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、適正な利益配分を行うことを基本方針としております。
内部留保資金につきましては、市場ニーズに応える研究開発・生産体制を強化し、グローバル戦略の展開を図るために有効な投資を実行してまいります。
当連結会計年度における主な設備投資については、機能材料部門において、主要製品である銅箔製造設備の生産性向上を目的とした投資を行いました。また、金属部門をはじめとしてその他の部門においては、主に設備の維持・更新を目的とした投資を行っております。この結果、当連結会計年度における有形固定資産の取得による支出は287億円となりました。
これらの投資等のための所要資金は、主に自己資金を充当しております。
手元流動性確保の手段としましては、短期社債(電子コマーシャル・ペーパー)発行枠500億円を設定しているほか、250億円を限度とした長期コミットメントライン契約を取引金融機関とシンジケーション形式により締結しております。
なお、キャッシュ・マネジメント・システム等によりグループ全体の資金効率の向上に努めております。
「3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
銅製錬事業に関する包括的業務提携について
当社とJX金属株式会社は、銅製錬事業において、両社の共同出資によるパンパシフィック・カッパー株式会社を通じた包括的な業務提携を行っております。
当社グループは、永年育成し蓄積してきた資源開発、非鉄金属製錬・加工技術を基礎として、グループ企業の「利益の最大化」に貢献することを基本理念に、新技術の創出や新製品の開発を積極的に行っております。
研究開発体制は、新規商品の開発及び事業化については、事業創造本部及び各事業本部内の開発部等で行い、基礎評価研究所においては、分析技術の向上に努め、各事業の研究開発を支援する体制としております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
また、セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
(1) 機能材料部門
当部門においては、銅箔事業部は半導体パッケージ基板用、高周波高速基板用、モジュール基板用などの回路材料分野に向けた製品開発を行っております。デジタルマーケティングによる幅広い分野でのテーマ探索や、試験処理機の導入を通じて、開発を加速してまいります。機能性粉体事業部はコア技術を活用し、放熱部材用途の3D造形用銅合金粉末や、タンタル、ニオブを中心とした難溶性元素の水溶液であるレアメタル溶液について、開発・マーケティングを強化しております。
この結果、当部門に係る研究開発費は
(2) 金属部門
当部門においては、循環型社会の形成により高まっているリサイクル・ニーズに応えるべく、持続可能な社会の実現に向けたソリューションとして、多様な元素回収を可能とする亜鉛・鉛・銅・貴金属製錬プロセスを用いた当社独自の製錬ネットワークを活かしながら、難処理鉱石及びリサイクル原料からの有価金属回収や、産業廃棄物処理、脱炭素社会の実現に向けたCO2排出量削減に関する技術開発を行っております。
また、南米ペルーを中心に探鉱を実施しており、加えて鉱山開発に係る鉱物、地質に関する研究を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は探鉱費を含めて
(3) モビリティ部門
当部門においては、次期排気ガス規制や省貴金属ニーズに対応した自動車用触媒の開発や触媒技術を活かした将来の環境貢献製品の開発、「CASE」に呼応した次世代ドアラッチやパワースライドドア、パワーテールゲート等システム製品の開発を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は
(4) その他の事業部門
当部門においては、銅電解工場装置向けの新規技術の開発、新しいポリエチレン材料や継手の評価及び導入、パイプ及び継手等の新製品の開発、素材製品の品質向上等の研究を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は
(5) 共通部門
当部門においては、当社のコア技術である「電気化学」、「粉体制御」、「材料複合化」などを活用して、環境・エネルギー、次世代エレクトロニクス、ライフサイエンス分野にソリューションを提供し、持続可能な社会への貢献と新たな事業価値の創造を推進しています。具体的には、全固体リチウムイオン電池向け固体電解質及び電極材料、次世代半導体チップ実装用キャリア、パワー半導体接合用材料、次世代ディスプレイ用蛍光体、燃料電池向け材料及び触媒等の次世代材料開発や製品ライフサイクルを意識したリサイクル技術開発の研究開発を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は