文中の将来に関する事項は、本書提出日現在にて、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは「ヒューマネスの力でビジネスをより“らしく”、より“いきいきと”」というパーパスのもと、企業固有の経営課題に「人と組織」の側面からアプローチすることにより、創造性溢れる豊かな社会の実現に向け、企業活動を推進しております。顧客企業の永続的な成長に不可欠である「リーダー人材開発」と「企業カルチャーの革新」を主軸に伴走し、社会にとって存在価値の高い起業を目指し、株主を始めとするステークホルダーの皆様の利益に貢献してまいります。
(2)経営環境および経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の主要顧客である大企業においては、人的資本経営への関心の高まりや、コーポレートガバナンス・コードの変革を起点とした次世代の経営幹部候補・ミドルマネジメント層の育成に対する課題意識を背景に、個社固有の経営課題と組織戦略を同期させるための人材・組織開発の支援に対するニーズは、中長期的に堅調に推移し、成長が継続していくと予測しております。
そのような状況において当社グループが持続的な成長を図るためには、健全な収益水準を意識すべきと考えております。当社グループは、のれん償却が多額、かつ、長期間に亘るため「連結EBITDA」は重要な経営指標であると考えております。適切な収益性を投資家と共有し、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
(3)経営戦略等、経営重点テーマ
上述の経営環境の中で、当社グループが選定している中期的な経営重点テーマは、以下のとおりであります。
i 顧客基盤の一層の拡充
当社グループの主要顧客は日本を代表する大手企業であり、この顧客層における更なるシェア拡大を目指します。加えて今後は、これまでに培われた知見を活かして、人材・組織開発に対して投資意欲の高い企業への取引開拓・深耕を積極化してまいります。
ⅱ 既存顧客企業における連結グループ企業及び人事以外の各部門との取引拡大
当社グループの主要顧客は、本社人事部門が行う全社共通の人材開発以外にも、社内カンパニーや事業部、及び各機能部門で一定規模の人材・組織開発に取り組んでいます。特にここ数年は、世界企業の経営モデルに倣って、HRBP(HRビジネスパートナー:個人と組織のパフォーマンスを最大化し、事業成長に貢献することを担う役割)人員を各部門に配置し、事業戦略の加速のための人材開発、ビジョン浸透、組織間連携を強化するチームビルディング等に、本社人事部門と連携しながら戦略的に取り組む動きが広がっています。また、顧客企業は海外子会社も含めた数多くの関連子会社も有しており、自社固有の状況に合わせた人材開発を行なっています。特に昨今は、グループ一体で企業価値を高めていくために、グループ内の事業連携、人事連携の取り組みが年々強くなっていく傾向が見受けられます。
こうした動きの中で、当社グループは部門及び関連会社の取引を拡大させていくことに一層注力してまいります。顧客企業が有する海外子会社も含めた関連会社数は、非常に多く、顧客企業とのパートナーシップ強化と取引拡大の余地は大きいと考えております。
ⅲ 好循環サイクルと顧客リピートの維持
長期的な取引から生まれる顧客との信頼関係が、当社グループの知見やノウハウの蓄積に繋がり、それが更なる顧客満足と顧客基盤の強化につながる、という好循環サイクルを今後も維持していくことが極めて重要であると認識しております。
そのためには、経営人材育成に代表される、顧客にとって重要度の高い案件の継続受注を維持することと、本社人事以外の部門や関連会社等に取引窓口を広げ、顧客人脈を増やし続けていくことが必要であると考えております。
ⅳ プロフェッショナルタレント基盤の拡充
当社グループの顧客への提供価値の決め手となるテーマ・ニーズに合わせたプロフェッショナルタレント基盤の更なる拡充は極めて重要であると認識しております。当社グループは、経営課題の変化を一歩先取りして、プロフェッショナルタレントの基盤を充実させてきました。今後も、社会課題・企業課題に沿ったプロフェッショナルタレントの拡充に取り組んでまいります。
(4)対処すべき課題
上記のような状況を踏まえ、当社グループは、人と企業の可能性を広げる新たな事業・市場創造に果敢に挑んでいくことで、コーポレートスローガンである「Activate Your Potential(可能性が動き出す)」を実現し続けたいと考えております。当社グループが更なる成長に向けて対処すべき課題は以下のとおりであります。
①フロント人材の確保と育成の強化
当社グループが継続的に業績成長を実現するためには、顧客企業内のあらゆる経営課題に精通し、個社固有の状況を踏まえながら、課題特定、サービス提供、フォローのサイクルを築きあげられるフロント人材の確保が重要であります。新卒・中途採用を積極的に進めると同時に、入社後の戦力化に必要な環境を整備し、人材育成の充実を図ってまいります。
②経営管理体制の強化
当社グループは、現状、小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。今後、既存事業の成長と、新規事業に取り組み、持続的な成長を図っていくためには、事業の成長や業容の拡大に合わせた経営管理体制の充実・強化が課題であると認識しております。また、株主を始めとするステークホルダーの皆様に信頼される企業となるために、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取組みが不可欠であると考えております。そのため、人材の採用・育成により、業務執行体制の充実を図り、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するような仕組みを強化・維持していくとともに、業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底してまいります。
③M&Aの推進およびグループ企業間のシナジーの最大化
当社グループでは、大企業顧客に対する人材・組織開発支援を主力領域と定義すると同時に、事業領域の拡大を目指し、M&Aを積極的に推進し、グループ経営を加速させていく方針であります。また、グループ企業間の営業連携の実行を実現するため、ITシステムを含む経営管理をグループ全体に展開し、当社グループ全体の価値向上に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理
当社はサステナビリティ関連を含む経営上の重要なリスクにつき、常勤取締役3名と執行役員で構成されたリスク・コンプライアンス委員会を中心に運用しております。内部監査室もオブザーバーとして出席の上、定期(年4回)及び必要に応じて臨時に開催し、全社リスクマネジメント体制においてサステナビリティに関するリスクを管理の上、シナリオ分析を実施し、リスク管理及び対応策検討を実施しております。また定期開催の委員会の内容については、取締役会に年4回報告、協議されております。
また、当社の経営上にインパクトを及ぼす重要な事業機会(サステナビリティに関連する事象を含む)については、全社経営計画を管掌する事業企画部、及びM&A・IR・資本政策方針を管掌する企業戦略部にて随時討議しております。企業価値や中期的な財務戦略上、重要と考える要素については取締役会においても審議する枠組みを設け、月1回で開催される定時取締役会、または必要に応じて臨時取締役会を開催することで、随時取締役の執行業務状況の監督と併せて討議し、経営戦略へ反映しております。
(2)戦略並びに指標及び目標
上述の当社のサステナビリティに関するガバナンス・リスク管理の枠組みにおいて、当社の企業価値や業績へ影響をもたらすサステナビリティ項目のうち、長期の企業価値の向上に向けて重要であるものは、当社の人的資本に関するものと判断いたしました。したがって「戦略」および「指標及び目標」については次項の人的資本に関するものを記載いたします。
(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
①人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
ⅰ.当社社員に対する成長機会の創出
当社は定型の人材開発・組織開発プログラムを持たず、複数の外部プロフェッショナルタレントの専門性を組み合わせて提供するテーラーメイド型のサービス体制を特長としております。自社内の人的資本を含むリソース・ノウハウに固執することなく、多種多様な専門性を有する1,600名超のプロフェッショナルタレントと共にディスカッションを通じて課題を特定し、解決策を模索することで昨今複雑化する顧客企業の経営課題にテーラーメイドで対応できる体制を構築しております。昨今重要視される多種多様な個人の専門性・価値観をかけあわせたダイバーシティ型の組織構成を社内外で構成される組織戦略に組み込むことで、グローバル化をはじめとする市場環境にも柔軟に対応できるビジネスモデルを構築しております。経営的な視点・視座でプロフェッショナルタレントと共に顧客企業に対する企画の提案や実行支援の活動は、当社従業員にとって経営を疑似的に体験する機会ともなっており、優秀な人材の成長機会を創出できるビジネスモデルとなっております。また、連結会計年度第9期から11期までの3年間において、当社人員に対する成長機会の創出と力強い組織作りを企図し、総額1億円規模の人材育成投資を実施する方針です。その初年度である第9期は、当社マネージャー層以上の社員を対象としたマネジメント力向上に向けた各種取り組み、フロント人員を中心とした学習環境の構築に着手する予定です。
ⅱ.中途採用とオンボーディング施策の連動による人材育成
日々の提案・伴走支援の活動による当社従業員の成長機会に加え、顧客とプロフェッショナルタレントとの間に当社が介在する価値を一層高めるため、多種多様なキャリア上のバックグラウンドを持つ中途人員の積極採用や人材の育成・強化等を通じて、ますます複雑化する顧客企業の経営課題に対して、信頼を勝ち得る人材組織戦略を遂行しております。中途採用人員を積極化する中で、当該人員が早期に活躍するオンボーディングと採用を連動させた体制を整備しております。オンボーディングと採用を連動させる狙いは以下の5点であります。
・立ち上がり期間を短縮
・求めるパフォーマンス基準を明確にした上で、立ち上がり状況を可視化し、周囲が適切に支援できる環境を構築
・目標とする成果に対して、本人自身が模索できる環境を整備
・オンボーディングを通じ、マネージャー層が持つ育成責任をより明確化
・育成施策により見えた課題を採用要件に反映し、採用と育成の両輪を見据えた中途戦力を確保
ⅲ.資本市場と連動した株式報酬制度構築の取り組み
当社は国内大企業における次世代経営者候補人材の育成支援を手掛けている一方、当社内においても資本市場から評価される次世代リーダーの育成施策を積極的に実践してまいります。具体的には、当社は株式報酬を用いた人材戦略として、2023年1月10日付で「業績条件付有償ストック・オプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ」、2023年5月24日付で「監査等委員ではない取締役及び監査等委員である取締役の報酬等の額設定ならびに譲渡制限付株式報酬制度の概要決定に関するお知らせ」を発表しており、株主の皆様との一層の価値共有を進められる社内人材の育成を率先し、コーポレートガバナンスへの取り組みを強化してまいります。
②指標及び目標
当社顧客である国内大企業におけるコーポレートガバナンス・コードの変革を起点とした経営組織作りに対する根強い需要や、人的資本経営に対する関心を背景とした当社に対する顧客からの期待に応えられるサービス体制の構築が、当社の中長期な成長戦略において欠かせない要素と考えております。上述オンボーディング施策と併せ、積極的な採用戦略を遂行することで連結従業員数の量と質を確保しながら、顧客の日々高まる期待に応えられる体制を整備してまいります。具体的には、当社グループの連結従業員数は2024年3月期末時点で187名在籍しており、当社グループの一員となった新規採用者に対するオンボーディングやリテンション施策の強化を通じ、2025年3月期末時点には200名以上に到達することを定量目標として掲げております。
当社のリスクマネジメントは、常勤取締役等を委員とするリスク・コンプライアンス委員会を中心に運用しており、委員会は定期(年4回)及び必要に応じて臨時に開催しております。リスクの洗い出し・評価・モニタリング対象ならびに予防対策と発生時対策を委員会で決定し、毎年度取締役会で決議しております。その上で、モニタリング対象については責任部署を決めて対応をしております。また、定期開催の委員会の内容については、取締役会に年4回報告、協議されております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、以下の記載は当社グループ株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありませんので、この点ご留意ください。
なお、文中における将来に関する事項、発生可能性・影響度は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1) 事業環境
当社グループの業績は、国内外の経済情勢や景気動向に影響されます。景気の減速等により顧客企業の人材開発予算が削減される場合、当社グループの人材開発・組織開発事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:中/影響度:大/対応策:顧客ポートフォリオの多様化、個社予算状況の確認等)
(2) 競合
人材開発・組織開発事業については、経営コンサルティングファーム、研修企業等多数の企業が存在する業界であります。政府が掲げる働き方改革、人づくり革命等の追い風もあり、より一層参入企業が増え、競争が激化する可能性があります。当社グループの競争力の源泉としている、顧客企業及びプロフェッショナルタレントとのパートナーシップによるサービス提供において、当社グループの強みの源泉であるビジネスモデルの優位性が低下した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:高/影響度:中/対応策:顧客とのパートナーシップの強化、競合他社の動向確認等)
(3) 少数の取引先への依存
当社グループ顧客企業には大手日本企業が多く、第8期連結会計年度において取引額上位20%の顧客企業との取引が当社グループの売上高の70%超を占めております。取引額上位20%の顧客企業との取引が、何らかの事情により減少した場合、将来的に特定の顧客への依存を回避するよう顧客企業の対象の拡大を図っているものの、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:高/影響度:大/対応策:取引額上位顧客の変化確認等)
(4) 法的規制
当社グループの事業のなかには、「職業安定法」及び関連する各種法令により規制を受けている事業があります。当社においては、職業安定法の規定により厚生労働大臣の許可を受けており、現時点において、許可が取り消しになる事由は発生しておりませんが、将来何らかの事由により許可の取り消しや更新が認められない場合、関連法律の改廃や厚生労働省からの通達等によっては、当社グループの事業活動が制約を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:低/影響度:大/対応策:法改正等情報の早期収集等)
(5) カントリーリスク
当社グループは、中国やシンガポール等アジア諸国においても事業を展開しております。この海外事業においては、政治・経済情勢、法規制、税制、文化・慣習等の日本との差異ならびに日本との関係等様々な要因により、当社グループが想定している事業展開ができずに業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:低/影響度:中/対応策:外国現地情報の収集等)
(6) 組織体制
今後の更なる企業価値の向上のため、人材の確保が重要と認識しております。しかし、人材の確保が想定通り進まない場合や、優秀人材の社外流出等が発生した場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼし、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、社員の育成が想定以上に遅れた場合には、上記同様に当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:中/影響度:大/対応策:処遇や働き方の改善、育成の拡充等)
(7) 事業の季節変動
当社グループの売上の大半を占める人材開発・組織開発事業においては、当社子会社の㈱ファーストキャリアが手がける新人向けトレーニングプログラムの実施時期が4-5月、当社の中心である経営層向けトレーニングプログラム、リーダー研修、マネジメント研修の実施時期が秋季に集中する傾向があります。従いまして、グループ連結業績においては、第2・第3四半期の売上及び利益が高く、第1・第4四半期が低くなる傾向にあります。(発生可能性:高/影響度:小/対応策:偏重状況の予測とモニタリング等)
(8) 情報セキュリティ
当社グループは事業活動に際し、プログラム受講生等の個人情報ならびに顧客企業等の機密情報を保有する場合があります。個人情報の取扱いについては、日本においては「個人情報の保護に関する法律」が適用され、諸外国においては、GDPR(EU一般データ保護規則)や当該国の個人情報に関する法律が適用されます。これらの情報を適切に取り扱うために、各種規程や社内教育、コンピューターウイルスやハッカー等に備える各種セキュリティ対策を通じて、情報漏洩の防止に取り組んでおります。しかしながら、悪意や過失等による各種情報の漏洩・消去の可能性があることは否めません。このような事態が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用を失う等により、当社グループの業績のみならず事業活動に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:中/影響度:大/対応策:情報セキュリティ教育、業務フローの改善、情報管理の徹底と内部監査等によるチェック等)
(9) プロフェッショナルタレントの不祥事・風評等
プロフェッショナルタレントが当社との取引以外の活動で不祥事を起こしたり、巻き込まれたり、その風評が立った場合、あるいは登壇中に不適切な言動をして顧客からのクレームになる場合等には、当社グループは該当プロフェッショナルタレントへ依頼業務の中止、顧客との取引停止、取引額の減額等の措置が必要となる場合があり、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:小/影響度:低/対応策:プロフェッショナルタレントへの注意喚起等)
(10) のれんの減損リスク
当社グループは、「第1 企業の概況 (はじめに)」に記載したとおり、セルムグループHDの株式をMBOにより取得しております。また、2024年1月においてヒューマンストラテジーズジャパン株式会社の株式を100%取得いたしました。結果、第8期連結会計年度末現在において、セルムグループHDの株式をMBOにより取得した際に発生したのれんを1,411,709千円、ヒューマンストラテジーズジャパン株式会社の株式を取得した際に発生したのれんを161,625千円計上しております。当該のれんについて将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、のれんの対象となる事業の将来の収益性が低下した場合には、当該のれんについて減損損失を計上するため、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。セルムグループHDの株式をMBOにより取得した際に発生したのれんについては、仮に将来キャッシュ・フローの見積額が32.8%減少した場合、減損損失の認識が必要となる可能性があります。また、ヒューマンストラテジーズジャパン株式会社の株式を取得した際に発生したのれんについては、仮に将来キャッシュ・フローの見積額が62.9%減少した場合、減損損失の認識が必要となる可能性があります。(発生可能性:低/影響度:大/対応策:下記)
当社グループでは、のれんの減損に係るリスクを逓減するため、事業の収益力強化に努めております。前述の「第2 事業の状況1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営戦略等、経営重点テーマ」にて記載したとおり、当社グループは、顧客企業とのパートナーシップの構築を軸としております。これにより、人事部門以外の他部門及びグループ会社への展開並びに新規顧客企業の開拓を進め、取引の拡大を進めております。今後も、顧客企業から得た信頼を基盤に、引き続き、売上高の拡大及び利益率の向上に努める方針であります。その為、回収可能価額が事業価値の帳簿価額を十分に上回ることが想定され、減損の可能性は低いと考えております。
(11) 新事業の創造に関する包括的なリスク
当社グループは、人材開発・組織開発事業が中核となっておりますが、今後の更なる成長のため、当社グループの事業領域に関連するテクノロジーの活用(HRテック)や人材採用支援事業、及び高齢化社会を見据えた、個人の市場価値向上に寄与する能力開発事業を育成しているところであります。当社グループは、これまでもこれからも、社会課題を背景とした経営課題や、人材・組織課題を解決する新たなサービスの開発と新たな市場を創造していく方針であります。
以上の取り組みに際しては、費用対効果を適切に管理しながら進めております。しかし、これらの事業が想定通りに成長しなかった場合、中長期的な業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:中/影響度:中/対応策:モニタリング等)
(12) CVC事業に関する包括的リスク
当社グループにおける、オープンイノベーションの実践と収益機会の多様化に資する事業の開発を目的に、アリストテレスパートナーズ㈱を無限責任組合員とするHRテック投資事業有限責任組合を運営しております。投資方針は、スタートアップやアーリー、ミドルステージの会社を中心に、顧客企業の人材開発や活性化、組織マネジメントの効率化や生産性の向上に繋がる新しいテクノロジーや知財・人材を有する国内外のHRテックベンチャー企業へ、マイノリティ投資を前提に成長支援しております。しかしながら、投資実行において、事前に想定されなかった事象が発生した場合、又は投資先の株式価値が著しく低下した場合には、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:中/影響度:中/対応策:モニタリング、定例取締役会への報告等)
(13) 自然災害、テロ等有事
大地震、台風、津波等の自然災害や、テロ、国際紛争等の有事及び新型コロナウイルス等の感染症の拡大が発生した場合、トレーニングプログラムの中止や延期等サービス提供ができなくなり、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。(発生可能性:中/影響度:大/対応策:対策本部組成や災害対策の更新等)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社グループは「ヒューマネスの力でビジネスをより“らしく”、より“いきいきと”」というパーパスのもと、顧客企業の中長期的な課題に対して「人と組織」の側面からアプローチし、持続的な企業価値向上のために必要なサポートをしております。当連結会計年度における人材開発・組織開発事業における事業環境としましては、人的資本経営に対する国内企業の関心が高まる中、経営戦略と人材・組織戦略を適合させる重要度が増しております。顧客企業を取り巻く経営環境が複雑化し、人材・組織開発領域におけるソリューションもその環境変化に合わせ、常に進化を要求されています。当社グループでは、企業経営やコンサルティングファームでの経験を有するプロフェッショナルタレントと連携し、様々な領域における知見を活用したテーラーメード型の人材開発・組織開発を支援しております。顧客課題やその背景にある事業課題を解決する際に自社だけのリソース、ノウハウだけで実現しようとせず、常にその実現に近い外部のプロフェッショナルタレントを複数組み合わせることで、昨今複雑化しサービス品質に対する期待が高度化する顧客側の課題に確り応え、信頼を勝ち得ることができております。昨今の日本企業を取り巻く複雑な経営環境は、顧客ごとにカスタマイズ出来る個社固有のテーラーメード型ソリューションを提供できる当社の差別化戦略が活きやすい事業環境であり、当社グループの成長可能性は高まっていると認識しております。
当連結会計年度における当社の人材開発・組織開発事業の業績としては、次世代経営幹部・ミドル向け領域( ㈱セルム、升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司、CELM ASIA Pte. Ltd.)において、顧客側の業績不調や顧客経営陣のアクシデント対応への優先等により、当連結会計年度の後半である10月以降に計上を予定していたプロジェクトが全社レベルで凍結、実行時期が結果として翌年度以降に繰り越された顧客が数社発生しました。なお、当該案件は翌年度以降徐々に再開を見込んでおります。一方で当連結会計年度に関しては、特に当社のファーストキャリア領域((株)ファーストキャリア、内定者から入社5年目までの若手ビジネスパーソン向け)が連結業績を牽引しました。若手人材の早期離職に対する課題意識を中心に、若手人材の育成環境に対する投資が、多くの顧客企業において重要課題となっていることが堅調な業績推移の背景にあります。同領域では若手社員向けのトレーニングプログラム実施の需要(育つ側)のみならず、社員育成を管理する顧客企業(育てる側)に対する育成体系の構築・コンサルティング需要が顕著となっており、当社のサービス提供体制の質の高さにより、競争優位性を発揮できております。また、2024年1月に買収したヒューマンストラテジーズジャパン㈱が手掛けるヒューマンストラテジーズ領域(適性検査・コンピテンシー評価に基づくコンサルティング支援)の損益については、当第4四半期連結累計期間より連結を開始しており、主に採用・人材配置において同社サービスに対する需要が高まっており、堅調に業績が進捗いたしました。
当連結会計年度における期末連結従業員数は187名と、前年度に比して13名純増しており、当社グループの組織づくりに対する投資も継続しております。当社は連結従業員1人当たりの利益創出力(1人当たりEBITDA)改善に着手しており、当連結会計年度における1人当たりEBITDAは7.0百万円と、前連結会計年度末の実績である6.6百万円を上回って生産性を向上することが出来ました。1人当たりEBITDA改善の要因としては、セルムグループ全体における顧客1社当たりの単価向上、前連結会計年度末で英語幼児教育事業を撤退する等の事業ポートフォリオの再編、コーポレート部門を中心とした業務オペレーションの抜本的見直し、販管費を用いた成長投資に対する投資対効果向上施策の加速、セルムグループとして初のM&Aの実行等、経営上の重要テーマとして取り込んできていることが功を奏しました。連結従業員数を増やしつつ、1人当たりの利益創出力を高める組織づくりは、当社グループの利益成長を持続的なものとする上で、今後も重要な取り組みであると認識しております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は7,504,627千円(前連結会計年度比3.3%増)となりました。
売上総利益は3,854,467千円(前連結会計年度比2.6%増)となりました。売上原価の大部分は外部のプロフェッショナルタレントへの支払金額となっています。
販売費及び一般管理費は2,817,113千円(前連結会計年度比0.1%減)となりました。主な内訳は、給料手当等の人件費であります。この結果、営業利益は1,037,353千円(前連結会計年度比10.8%増)となりました。
営業外収益は、12,300千円(前連結会計年度比23.1%増)となりました。主な内訳は、顧客都合により案件がキャンセルとなった場合等に発生する受取補償金であります。営業外費用は、42,774千円(前連結会計年度比61.4%増)となりました。主な内訳は、投資有価証券評価損及び自己株式取得費用であります。この結果、経常利益は1,006,879千円(前連結会計年度比9.5%増)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は631,528千円(前連結会計年度比16.3%増)となりました。
①財政状態の状況
(ⅰ) 資産の部
当連結会計年度末の総資産は4,869,817千円(前連結会計年度末比131,209千円減)となりました。流動資産は2,692,033千円(同187,990千円減)となりました。これは、主に現金及び預金が242,619千円増加した一方で、自己株式取得に伴う預け金が457,608千円減少したためであります。固定資産は2,177,784千円(同56,780千円増)となりました。これは、主にのれんの償却によりのれんが196,734千円減少した一方で、ヒューマンストラテジーズジャパン株式会社の株式取得に伴いのれんが170,132千円、基幹システムの投資によるソフトウエア仮勘定が99,739千円増加したためであります。
(ⅱ)負債の部
当連結会計年度末の負債合計は1,749,475千円(同56,024千円増)となりました。流動負債は1,725,227千円(同117,328千円増)となりました。これは、主に1年内返済予定の長期借入金が180,664千円、未払費用が124,375千円減少した一方で、短期借入金が500,000千円増加したためであります。また、固定負債は24,247千円(同61,303千円減)となりました。これは、主に長期借入金の流動負債への振替により61,112千円減少したためであります。
(ⅲ)純資産の部
当連結会計年度末の純資産は3,120,342千円(同187,234千円減)となりました。これは、主に新株予約権が51,078千円増加した一方で、資本剰余金が265,977千円減少したためであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ141,608千円増加し、1,840,538千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は710,516千円(前連結会計年度は699,735千円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,003,004千円によるものであります。
当連結会計年度における投資活動により使用した資金は372,217千円(前連結会計年度は41,891千円の使用)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出158,548千円、定期預金の預入による支出100,000千円によるものであります。
当連結会計年度における財務活動により使用した資金は206,631千円(前連結会計年度は1,905,635千円の使用)となりました。これは主に、短期借入による収入1,000,000千円、短期借入の返済による支出500,000千円及び自己株式の取得による支出747,292千円によるものであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
a.財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績の分析は、次のとおりであります。
(売上高)
売上高は、7,504,627千円と前連結会計年度に比べて238,969千円の増加となりました。これは、当社を中心とした人材開発・組織開発事業においては、コーポレートガバナンスコードの変革を起点とした次世代の経営幹部候補・ミドルマネジメント育成に対する顧客企業側の根強い関心を背景に、個社固有の経営課題に合わせたテーラーメード型の当社ソリューションが顧客企業経営層から高く評価され、業績が堅調に推移したことによるものであります。
(売上原価及び売上総利益)
売上原価は、3,650,160千円と前連結会計年度に比べて141,643千円の増加となりました。売上原価の大部分は外部のプロフェッショナルタレントへの支払金額となっており、売上高の増加に伴い売上原価も増加しました。この結果、売上総利益は3,854,467千円となり、前連結会計年度に比べて97,326千円増加しました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
販売費及び一般管理費は、2,817,113千円と前連結会計年度に比べて3,710千円の減少となりました。これは人件費等が減少したことによるものであります。この結果、営業利益は1,037,353千円となり、前連結会計年度と比べて101,036千円の増加となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
営業外収益は、12,300千円と前連結会計年度に比べて2,310千円増加となりました。主な内訳は、顧客都合により案件がキャンセルとなった場合等に発生する受取補償金であります。営業外費用は、42,774千円と前連結会計年度に比べて16,277千円増加となりました。主な内訳は、投資有価証券評価損及び自己株式取得費用であります。この結果、経常利益は1,006,879千円となり、前連結会計年度と比べて87,069千円の増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は631,528千円となり、前連結会計年度と比べて88,734千円の増加となりました。
なお、当社グループは持続的な成長を図るためには、健全な収益水準を意識すべきと考えております。当該指標としている連結EBITDAは1,317,182千円(前連結会計年度比13.9%増)となりました。適切な収益性を投資家と共有することで、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、借入金の返済、法人税の支払等であります。その資金の源泉といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入等であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
④経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご覧ください。
⑤経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
該当事項はありません。