文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「創造と前進を旨とし、価値ある商品によって社会に貢献し、社業の永続的発展成長を期す」を経営理念とし、「マテリアルの知恵を活かす」というコーポレートスローガンの下、「社会の持続的な成長」と「中長期的な企業価値の向上」に努めることを経営の基本方針としております。
(2) 対処すべき課題
当社グループでは、パーパスを基軸とした全社ビジョン(2030年のありたい姿)である「マテリアルの知恵で“未来”に貢献する、事業創発カンパニー。」を実現するため、2022年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「22中計」に取り組んでおります。
この「22中計」の2年目となる2023年度は厳しい経営環境の中、損益・財務指標が原計画値を下回ることとなりましたが、2030年のありたい姿である全社ビジョン実現に向けた戦略は変更せず、各部門において「社会的価値の向上」と「経済的価値の向上」を両立した統合思考経営を実践することで、持続的な企業価値向上の仕組みを構築し、重点施策に取り組んでまいりました。
「社会的価値の向上」については、環境影響、社会関係資本、人的資本、ビジネスモデル・イノベーション、リーダーシップ・ガバナンスの5つの観点で各事業の機会・リスクを評価し、事業の持続可能性を経営判断に活かしました。
「経済的価値の向上」については、両利きの経営(注)1を加速しております。「知の深化」では既存事業におけるポートフォリオの動的管理を進め、2023年度の見直しではセラミックス事業と日本イットリウム株式会社を「価値の強化」から「価値の拡大」へ、ダイカスト事業を「価値の強化」から「価値の再構築」へと変更しました。「価値の拡大」・「価値の強化」においては、社内外シナジーの追求、成長戦略を加速するためのM&Aの活用などを行うと共に、「価値の再構築」では社外ベストオーナーの探索も進めております。「知の探索」では、研究開発と市場共創の機能を持つ事業創造本部への積極的な経営資源投入を行い、全固体電池向け固体電解質「A-SOLiD®」や次世代半導体パッケージデバイス用「HRDP®」などへの増強投資を実施しました。
また、資本効率を意識した経営として、全社のROIC(投下資本利益率)の向上を図るべく、事業別WACC(加重平均資本コスト)の算出及びそれを上回る適切な事業別ROIC目標(ROICスプレッド)の設定について検討を進めました。
2024年度は、「22中計」の最終年度として、また、次期中期経営計画へ繋ぐ準備期間として、引き続き以下の重点施策を実行してまいります。
機能材料部門では、価値ある高機能製品の提供により、お客様のニーズを満たし、社会の課題解決に貢献するため、コア技術の深化やマーケティング力の向上、環境貢献製品の創出に注力し、既存の事業分野の深掘りと新たな事業機会の探索を進めてまいります。
金属部門では、循環型社会の形成により高まっているリサイクルニーズに応えるべく、当社グループが保有する多様なプロセスを活かした高度なリサイクル製錬ネットワークの追求、さらに脱炭素社会の実現に向けてCO2排出量を削減すべく、一部実施している排出係数が小さい電力会社・電力契約への切替に加え、CO2低減製品・SDGsに貢献する製品の提供等による新たな価格政策、再生可能エネルギー・CO2フリー電力購入等を両輪として新たに検討し、対応してまいります。
モビリティ部門では、CASE(注2)、MaaS(注3)、カーボンニュートラルといった自動車産業の大きな変化・進化を新たなニーズとして常に正面から捉え、お客様に必要とされる価値を提供し、モビリティ社会の実現に貢献してまいります。売上高に占める新製品の比率を高め、技製販の全てにおける深化(商権維持)と新規開拓(新しい製品・事業創出)の推進、短期・中期・長期それぞれのサイクルに合わせた事業シナジーの追求に取り組んでまいります。
事業創造本部では、新たな事業を「持続的」に創造できるようになるために、「事業機会の探索力強化」、「研究開発力の強化」、「基盤の強化」という3つの戦略を掲げ、研究開発と市場共創を軸にした価値創造を図り、事業化推進テーマについては環境の変化に応じてタイムリーに投資と人員の投入を行ってまいります。
本社部門では、監督機能及び業務執行機能の強化並びに経営の透明性の向上等、コーポレートガバナンスの強化に取り組んでおりますが、2024年6月27日開催の第99期定時株主総会の決議により、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」に移行しております。今後、経営に関する意思決定のさらなる迅速化を図るとともに、取締役会における審議事項を重点化して経営方針・経営戦略の策定などの議論をより充実させ、取締役会の経営に対する監督機能の強化を図ってまいります。
「社会的価値の向上」をさらに加速させるための取り組みといたしましては、2030年度CO2排出量をグローバルで38%削減(2013年度比)、2050年度カーボンニュートラル(Net排出ゼロ)を目標として、カーボンニュートラルロードマップ、LCA(ライフサイクルアセスメント)(注4)、インターナルカーボンプライシング(注5)制度を導入・活用しCO2排出量削減の取り組みを進めております。さらに昨年、経済産業省が推進するGX(注6)リーグ(注7)へ参画、トランジション戦略(注8)を策定し、公表しました。4つのアプローチ(省エネルギー/省資源、エネルギー・燃料転換、電力低炭素化、オフセット/イノベーション)によりカーボンニュートラル社会実現に貢献してまいります。
また、さらなる資本効率を意識した経営を実践するために、事業別WACC(加重平均資本コスト)と事業別ROIC目標(ROICスプレッド)を設定したうえで、企業価値向上への意識付けやROICの社内浸透を進め、各所社でROIC向上に必要な指標の設定と対応(ROICツリー等)を進めるとともに、業務執行取締役・常務執行役員の業績指標への効率性の指標(ROIC等)の導入を行なってまいります。
厳しい経営環境ではありますが、以上の取り組みを実行することにより、統合思考経営への変革を遂げ、ステークホルダーの皆様と共に地球を笑顔にすることを目指してまいります。
(注)1 両利きの経営:「既存事業の効率化と絶え間ない改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させていく考え方。
2 CASE:Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の略で、自動車の次世代技術やサービスの新たな潮流を表す造語。
3 MaaS:ICTを活用して交通をクラウド化し、マイカー以外の全ての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとして捉え、シームレスに繋ぐ「移動」の概念。
4 LCA(ライフサイクルアセスメント):製品やサービスのライフサイクル(原料の採取、社内製造・加工過程、さらにその製品の使用、消費、廃棄プロセス)を通じた環境への影響を定量的に評価する手法。
5 インターナルカーボンプライシング:自社基準で二酸化炭素(CO2)に価格を設定してその排出量を費用換算し設備、開発投資判断の参考とするもの。
6 GX(グリーントランスフォーメーション):気候変動の主な要因となっている温室効果ガスの排出量を削減しようという世界の流れを経済成長の機会ととらえ、排出削減と産業競争力向上の両立を目指す取り組みのこと。
7 GXリーグ:カーボンニュートラルへの移行に向けた挑戦を果敢に行い、国際ビジネスで勝てる企業群が、GXを牽引する枠組み。
8 トランジション戦略:CO2排出量削減を着実に進めるための取り組みやガバナンス等に関する長期的な戦略。
〔目標とする経営指標〕
このような状況の下、創業150年を迎える22中計最終年度である2024年度(2025年3月期)の業績予想は、入手可能な外部の情報等を踏まえ、次のとおりであります。
Net D/Eレシオ:有利子負債から現金及び預金を差し引いて、それを自己資本で割ったもの。
主な前提諸元
上記の業績予想につきましては、2024年5月21日現在において入手可能な情報に基づき算出したものであり、今後様々な要因により実際の業績が記載の予想数値と異なる場合があります。
中期経営計画「22中計」の進捗状況につきましては、当社ホームページのIR・投資家情報に、2024年5月21日付で掲載されております「22中計進捗説明会資料」をご参照下さい。
https://www.mitsui-kinzoku.com/LinkClick.aspx?fileticket=7ZpslJ12dQ0%3d&tabid=100&mid=826&TabModule819=0
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが目指している、社会的価値と経済的価値の両立による統合思考経営の実現に向け、2023年4月1日付にて、技術基盤の強化を担う「技術本部」の新設とともに、「サステナビリティ推進部」を経営企画本部から本社部門の社長直下に移管し、事業部門を含めた関係部門との連携促進を図り、社会的価値向上の取り組みを更に加速させることとしております。
(1) 気候変動
気候変動は地球全体に長期にわたり大きな影響を及ぼすことから、当社事業にとって特に重要な外部環境変化の一つであると認識しております。とりわけ当社グループは非鉄製錬、電解銅箔などエネルギー多消費型事業を有していることから、そのエネルギー消費に伴う温室効果ガス排出の適正な管理の一環として「エネルギー管理」と「温室効果ガスの排出削減」も経営上の重要なマテリアリティであると位置付け、気候変動対応関連の活動を推進しております。
また、気候変動とそれを巡る社会や経済の変化は、事業上のリスクをもたらす一方で、適切に対応することにより競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しております。そこで、2020年度より、当社グループはTCFD提言のフレームワークに則って、気候変動がもたらす中長期的なリスクと機会の分析、及びそれを事業戦略に落とし込む活動に着手し、2022年3月にはTCFD提言への賛同を表明し、気候変動対応関連活動の更なる加速に取り組んでおります。さらに2023年度からはGXリーグへの参画を通じて官民学一体となった活動により、気候変動対応のさらなる加速に取組んでおります。
当社グループにおける気候変動基本方針や重要事項は、取締役会の監督の下、社長が委員長を務めるCSR委員会において討議し、執行最高会議において審議・決定しております。執行最高会議は、代表取締役と業務執行取締役が参画しており、経営の観点から審議を行なっております。(体制図参照)

当社グループはグローバルに多数の事業を展開しており、気候変動に関わるリスク・機会が事業ごとに異なるという背景を考慮し、気候変動の影響を受ける可能性が相対的に高い事業から事業別にシナリオ分析を行なっております。
シナリオの定義
これまでに、グループ全体のCO2排出量の約70%を占める金属事業、次いでCO2排出量が多い銅箔事業、気候変動による事業環境の変化が大きい触媒事業、機能材料事業についてシナリオ分析を完了しておりますが、引き続き、その他の事業分野の分析と定期的なシナリオ分析のアップデートに取り組んでおります。
シナリオ分析では、それぞれのリスクによる収益低下を最小化するとともに、新たな製品や新規事業の創出による機会の獲得を実現するための対応案を検討しております。それらの多くは長期的な視点で取り組むべき内容ですが、2022年度からの中期経営計画である「22中計」に続き、2025年度からの次期中期経営計画にも反映させて、戦略のレジリエンスの確保に努めてまいります。
特に金属事業においては、2020年度に実施したシナリオ分析を踏まえ、CO2排出削減を最優先課題とし、カーボンニュートラル対応準備プロジェクトを立ち上げ、CO2削減施策を検討し、効果と確度に順位付けの上、22中計に織り込み、活動しております。
さらに、CO2削減施策の実行を促進するため、2023年4月1日よりICP(社内炭素価格)を設定(注)1し、設備投資・開発投資の判断に活用しております。設定金額については、当社グループにおける削減策実行のハードルがScope1とScope2の特性によって大きく異なる部分もあることから、Scope別の設定としております。
具体的には、Scope1では当社主力事業の一つである亜鉛精錬のようにプロセスの原理上CO2削減対策のハードルが高く、試験等も含めた開発投資が不可欠であるものも想定されることから、電力の再生可能エネルギーへの移行による削減が可能なScope2よりも高い金額といたしました。
また、2030年度までのCO2排出量の削減と2050年度までのカーボンニュートラルの実現に向け、2023年12月にトランジション戦略の策定を公表いたしました。(詳細は以下URLをご参照ください。)
(注)1 Scope1:30,000円/t-CO2,Scope2:20,000円/t-CO2
シナリオ分析の過程では、リスク及び機会の特定をしております。とりわけエネルギーコストの増大リスクに加えて、低炭素・脱炭素経済への移行を見据えた顧客ニーズの変化、サプライチェーン取引先への温室効果ガス削減貢献におけるリスクと機会が重要であると認識しております。シナリオ分析で検討した対応策には、これらの動向を監視して必要な早期対応を経営計画に反映させることも含めており、随時経営層に報告を行い、リスク管理をしております。
当社グループでは、エネルギー起源のCO2の削減目標を設定しております。
・2030年度:CO2排出量をグローバルで38%削減する(2013年度比)
・2050年度:カーボンニュートラル(Net 排出ゼロ) を目指す
なお、上記の指標と目標に対する、2022年度の三井金属グループのScope1及びScope2のCO2合計排出量は1,720千t-CO2であり、2013年度比で7%の削減(注)2となりました。
今後は、Scope3について、更に開示対象を拡充できるよう取り組みを進めてまいります。
(注)2 基準年である2013年度の排出量を電力の調整後排出係数を使用して算出することに変更したため、98期の2013年度比削減率よりも見かけ上、小さくなっております。
(注)3 エネルギー起源のCO2を対象としております。
(注)4 当社(三井金属単体)が荷主である輸送に伴うCO2排出量を対象としております。
(注)5 三井金属グループ(グローバル)で発生した廃棄物の処理によるCO2排出量を対象としております。
なお、最新のCO2排出量については、当社ホームページをご参照ください。
環境データ:
また、当社グループの気候変動及び環境に対する取組みについては、
2023年度ESG説明会資料:
https://www.mitsui-kinzoku.com/LinkClick.aspx? fileticket=%2bfOSFKUPXAI%3d&tabid=159&mid=1060&TabModule1202=0
2023年度統合報告書:
https://www.mitsui-kinzoku.com/Portals/0/CSR/integrated_report/2023/JP2/12_integrated_report2023.pdf
(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループの持続可能性、そして世の中の持続可能性を高めるために、事業を通じて環境・社会課題を解決していく必要があり、そのためにはイノベーションを創出し、新たな価値を生み出し続けていかなければなりません。こうした当社の取り組みは、多様な個性と様々な価値観、経験とスキルを持った人材がいてこそできるものであります。ゆえに人は最も重要な経営資源であります。当社グループで働く全ての人が、それぞれの役割を担いながら、新たな価値を生みだし、当社グループで働くことに誇りや幸せを感じることができるよう、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、働きがい改革、健康経営、実力主義の人事制度、HRBP(注)6という5つの施策を推進しております。これにより、個人を尊重することと、組織として人材を活用することを両立し、「パーパス」を基軸にした「全社ビジョン」の実現と、統合思考経営への変革を、人事の側面から推進しております。
(注)6 HRBP:Human Resource Business Partnerの略。経営者や事業部門のパートナーとして事業成長と戦略の実行を人材・組織の面から支える機能。
①人材育成方針
当社グループは、「ひとづくり基本方針」に基づき、事業を通じて社会課題を解決し、価値創造を実行する人材の育成に取り組んでおります。
イ.ひとづくり基本方針
一人ひとりの可能性と原動力を引き出し、「ものづくり」に強い当社を実現するために、「ありたい人材像」を掲げ、継続的・計画的に「ひとづくり」を推進いたします。
‐「明るくのびのびとした職場づくり」に取り組み、良好なコミュニケーションと切磋琢磨により、ともに成長しあう文化を築き上げます。
‐社員をはじめ一人ひとりが、「ありたい人材像」を目指し、意欲的に自らの能力向上に取り組みます。
‐育成のためのOJTとローテーションを行い、「プロ人材(注)7」への成長を促進するとともに、適材適所により能力発揮の場を提供いたします。
‐発揮された能力・成果に対して「公正な評価」を行います。
‐教育プログラムは、時代のニーズを反映させ、より高い質を目指し、定期的に効果を検証し、改善につなげます。
(注)7 プロ人材:専門的な知識・スキルを備え、発揮することにより、ある一定の職種や領域において、自らPDCAを回して課題解決を目指せる人材
②社内環境整備方針
2050年の世界では、人の働き方は今とは大きく異なり、人材流動性が非常に高くなると予想されております。このような社会においても、働く人に選ばれる会社、そこで働くことに誇りを持てる会社、成長し続けられる会社であるために、今から何をすべきかが問われております。
個人の視点としては、チャレンジして自己成長を実感できる、キャリアを自律的につかみとれる、多様性に価値があることの実感、これらを実現していく必要があります。もちろん健康に働き続けられることは大前提です。
組織側の視点では、育成・拡大・再構築・強化の事業評価に対して、どのような人を配置するかという人材のアロケーション、そのための人材育成に加え、経営者をはじめとした重要なポジションの後継者育成をしっかりと計画的に考えることが重要となります。これら、個人視点と組織視点の人材戦略の礎となるのが実力主義の人事制度です。

イ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンと働きがい改革の推進
一人ひとりが優秀で知識が豊富でも、似通った視点や価値観の集団では、新しい価値の創造性や、組織としての強靭性に欠けます。異なる視点や経験、価値観を持ち多角的に物事を捉えられ、その多様性が十分に活きる組織を目指します。
そのためには、多様な視点は属性を多様化することで確保しやすいことから、第一歩として女性活躍推進に取り組んでおります。その先には、どのような考え方・経験・価値観の人であっても、あらゆる職場で十分に力を発揮し、企業価値向上に貢献している、そのような未来を描いております。
さらに、安心して働ける職場、自律的に働き、仕事の成功や失敗を通じて成長を実感できる職場を実現する働きがい改革を推進、加速いたします。これにより、組織と個人の関係性、つまりエンゲージメントが向上し、多様性を認め合い活かす土台を固めます。
・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進体制
2021年にダイバーシティ推進室、2022年に社長を委員長とするダイバーシティ推進委員会を設置し、ありたい姿に基づくロードマップとKPIを策定し取り組みを推進してきました。各本部からの代表者と協議し、委員長のダイバーシティ推進方針の意思決定を補佐しております。
2023年度からは武川社外取締役がアドバイザーとして参画し、更に幅広い視点で議論できる体制といたしました。
・働きがい改革推進の加速
2024年4月から、働きがい改革を加速するべく専任組織を設置いたしました。働きやすさ、働きがいが実感できることを早期に実現し、さらには「この会社だからこそ働きたい」と思えるような会社を目指しております。まずはエンゲージメントが向上しやすい組織の特徴を分析し、データに基づいた各種の施策を立案・実行することで、ありたい姿を実現していきます。
・マネジメント体制
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンと働きがい改革は、密接に関係していることから、一つの委員会で議論しております。委員会ではロードマップに対する進捗と課題、今後の取組みを協議し、その結果は最高執行会議と取締役会でも報告・議論して取組みに反映させております。

[定期的な情報発信]
- 経営連絡会等における社長のメッセージ発信
- 社外取締役・ダイバーシティ推進室長メッセージ(採用ホームページ)
- 人事戦略・ダイバーシティ推進の取組み進捗発信(ESG説明会)
- 社内報の連載
[研修]
- アンコンシャスバイアス研修 (非管理職向け)
- ダイバーシティマネジメント研修 (管理職向け)
- D&I推進ワークショップ(男性育休編)
- 女性交流会
[女性活躍推進の取組み]
- 業務効率化推進プロジェクト
- 男性育休取得事例の社内共有、製造現場へのポスター掲示
- 職域拡大の検討
- 女性管理職育成計画
ロ.健康経営の推進
当社グループに働く全ての従業員及びその家族が心身ともに健康であることは重要な経営課題です。従業員とその家族が健康であることは、従業員の生活を充実させ、その個性・能力を最大限に発揮できる基盤となり、会社にとっても生産性を高め、業績向上に繋がっていきます。従業員及びその家族の健康維持・増進活動に取り組むことを通じて、さらに活力のある会社づくりを推し進めることをもって社会に貢献し続けることを、健康経営宣言として社内外に公表しております。
当社は、2019年以降継続して健康経営優良法人に認定されております。2022年度以降は、健康関連の研修・イベント、全拠点でのメンタルヘルス研修を継続して実施してきました。2023年度には全社産業保健・健康経営施策の推進役として新たに統括産業医を選任し、事務局として人事部労政室内に健康経営担当を設置いたしました。また、フィジカル・メンタルの両面からの健康経営重点項目の設定、二次健診等への費用補助制度の導入、治療と仕事の両立に資する制度改定として半日年次有給休暇制度利用上限の撤廃、全社での健康診断結果のデータ分析、各職場へのストレスチェック結果のフィードバック及び重点職場の状況確認や改善サポート等を行なっております。
ハ.実力重視の人事制度とHRBPによる戦略人事
・実力重視の人事制度
2022年4月より、これまでのヒト基準の人事制度から職務・役割基準のジョブ型人事制度へと改定いたしました。これにより、当社グループが掲げる“パーパス”、“全社ビジョン”、そしてそこに向けた経営戦略と、人材マネジメントの整合性が強化されるようになります。すなわち、人に仕事を付けるという従来の発想・仕組みから、経営戦略遂行上必要な仕事を設定し、それに対して人を就けるという考え方への転換により、これまで以上に効率的な戦略遂行を実現していくことを意味します。
2024年度からは、これまで社内にあった、社員を属人的な要素によって区分する仕組み、いわゆる総合職、一般職の区分を廃止いたしました。
今後は、年次・年功・学歴などの制約条件は関係なく、“実力”のある優秀な人材に対して活躍する機会を提供することで、組織の活性化と挑戦する風土の醸成につながるものと期待しております。
・キャリア開発支援
“実力重視の適材適所”の人材マネジメント・人事制度への転換にともない、人材のキャリア形成のあり方に、大きく2点の変化が生じます。一点は一人ひとりが自分らしいキャリアビジョンを描き、定めた目標に向けて実力を身に着けていく、すなわち自律的なキャリア形成を志向することが求められるということです。そしてもう一点は、会社は社員のキャリア選択権を認め、一人ひとりと対話しながらキャリアビジョンの実現をサポートしていくというあり方です。当社はこのようなキャリアに関する会社と社員の新しい関係性を実現するための”キャリア開発支援“の取組みとして、キャリア面談の実施、自己申告書の拡充などに取り組んでおります。
自己申告からは、個人のキャリア希望の方向性や個別事情を読み取ることができ、その情報を個人別配置育成計画に落とし込むことで、適性や本人の意思、発揮能力を踏まえたキャリア形成、能力開発が可能となります。一律にジェネラリストの育成だけでない、スペシャリストを含めたキャリアビジョンの複線化も意識できるような仕組みとなっております。具体的には、経営系、事業創造系、研究開発系または人事、経理、法務などの機能系のマネジメントなのか、あるいはスペシャリストとして活躍したいのか、というキャリアビジョンを本人も上司も考えるようにしております。
・自律を後押しする人材育成
一人ひとりのキャリアビジョンを実現するための仕組みとして、教育体制を充実させております。従業員がスキルを向上し自らの強みを発揮できるよう、また生涯キャリアの形成に向けた各従業員の継続的な努力をサポートすべく、自律的な学びを支援できるカリキュラムと学習環境の提供に努めております。
2022年度より「個」のキャリア自律を実現すべく教育体系制度の刷新並びに、それをサポートするDXツールとして、MLP(Mitsui₋kinzoku Learning Platform) を導入いたしました。ここでは選択型能力開発プログラムを更に強化し、各階層で必要な能力を開発する必須研修に加え、従業員が自由に受講できる学習コンテンツを大幅に拡充しカフェテリア型の研修体系といたしました。リーダーシップやアンガーマネジメント、ダイバーシティマネジメントなど管理職のマネジメントスキルを高めるコンテンツ、 DXやAIなどのテクノロジー、心理的安全性など働き方改革に関する学習、サステナビリティに関する学習など世の中のトレンドに対応したコンテンツも用意しております。加えて、全従業員のITリテラシーのさらなる向上を目標とし、三井金属総デジタル人材化と銘打ったICT教育を実施しております。本取組みの継続的な実施を通じて、DXによる新たなビジネスモデル創出が出来るような人材の輩出を目指しております。
新入社員に対するきめ細やかな教育も特徴です。選出されたOJT指導員への教育を行いつつ、指導員-新入社員のコミュニケーション方法など育成上の課題を集約してフィードバックするとともに、得られた知見をフォローアップ研修に反映させるなどタイムリーに内容をブラッシュアップしております。また、統合思考経営の実践に向け、環境・社会課題を起点としたビジネスを創出できる人材の育成にも力を入れており、外部環境の変化を考慮しSDGs、ESG、CSRに対応する研修の拡大・強化に取り組んでおります。
これらの個別の研修のつみかさねにより、事業を通じて環境・社会課題を解決していく人材、当社の掲げる「人づくり基本方針」にもとづいた人材育成が実現されております。
・HRBPによる戦略人事の実施
2022年4月に設置された人事ビジネスパートナー室は、経営戦略、事業戦略に人事の面から迅速に対応することをミッションとしております。従業員は個人として尊重されつつ、組織としてはこれを活用していく必要があります。各本部にあるHRBPは人事部と連携しつつ、全社視点における事業ポートフォリオの動的管理に紐づく人材アロケーションを実行し、必要なところに必要な人材を投入するようにしております。重要ポジションのサクセッションプランや中長期的な必要人材の特定、各部門でのタレントマネジメントなどについても、先見性をもって迅速な課題解決に努めております。
③指標及び目標
ダイバーシティの推進と働きがい改革をモニタリングするために、以下のような指標を設定しております。
イ.取締役会におけるダイバーシティ
取締役の女性比率10%以上
ロ.女性管理職比率(係長級以上の比率)
2024年度末までに5.0%以上(2023年度末は3.6%)
ハ.女性活躍の実現に向けた指標
‐正社員採用女性比率の向上
‐リーダー層女性比率の向上
‐男性育休取得率の向上
‐政府機関等の認定取得
‐「多様性の尊重」(従業員へのアンケート結果)の数値向上
ニ.働きがい改革の推進指標
‐いきいき度(エンゲージメント測定指標)の向上
当社では2023年度から役員報酬にESGの指標達成の程度に応じて付与される「ESG指標要件型譲渡制限付株式報酬」を導入しており、人に対する取り組みが、経営レベルで後押しされる仕組みとなっております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)は、様々な要因によって、重要な影響を受ける可能性があります。当社グループでは、経営成績等やビジネスモデル、長期的価値創造に直接影響を与え、事業の継続や企業の存続を脅かす可能性のあるリスクを特定しております。また、リスクへの対応力を向上させるため、リスクマネジメントの推進体制や仕組みの整備・改善に取り組み、対応策を検討し実施しております。
(注)1.当社グループの持続可能性を実現するために、サステナビリティに関するマテリアリティを特定し取組みを進めております。マテリアリティの内、特に当社グループの経営成績等に影響を与えうる項目を、ESGリスクと区分しております。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症に係る行動制限の解除により経済活動の正常化が進み、個人消費やインバウンド需要の回復の動きが見られるなど、全体としては緩やかな回復基調で推移しました。
一方、米国経済は個人消費の回復や雇用環境の改善を背景に堅調に推移しているものの、中国経済は不動産市場や個人消費の低迷により成長鈍化の動きが見られる中、ウクライナ情勢の長期化や米中関係及び中東における地政学的リスクの高まり、インフレ抑制のための世界的な金融引き締めや急激な為替相場の変動等、国内外の景気の下振れが懸念されております。
当社グループを取り巻く環境としては、亜鉛及びロジウムの相場は下落基調で推移し、前連結会計年度に比べ平均価格は下落しました。また、為替相場は前連結会計年度に比べ円安が進行しました。
機能材料部門では、半導体市場におけるサプライチェーンの在庫調整が一巡したことから、銅箔及び電子材料用金属粉の販売量は増加しました。モビリティ部門では、半導体不足の緩和により自動車市場が回復していることから、排ガス浄化触媒や自動車用サイドドアラッチの販売量は増加しました。
当社グループは、パーパスを基軸とした全社ビジョン(2030年のありたい姿)である「マテリアルの知恵で“未来”に貢献する、事業創発カンパニー。」を実現するため、2022年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「22中計」に取り組んでおります。
「22中計」の2年目となる2023年度も全社ビジョン実現に向けた戦略を実行するとともに、引き続き各部門において「経済的価値の向上」と「社会的価値の向上」を両立した統合思考経営を実践することで、持続的な企業価値向上の仕組みを構築し、成長し続けるための重点施策に取り組んでおります。
機能材料部門では、事業機会拡大による成長加速とその仕組みづくりの一環として、先端材料分野でのシナジー創出を目的とし、当社の連結子会社でありレアアースの総合メーカーである日本イットリウム株式会社を完全子会社としました。
また、スマートフォン並びにデータセンター及び車載向けメモリー基板用途等の採用拡大により、需要の伸長が見込まれる半導体パッケージ基板用キャリア付極薄銅箔の生産体制を増強しております。
金属部門では、リサイクルネットワークの確立に向け、有価金属の回収やリサイクル原料の処理の強化に取り組んでおります。
モビリティ部門では、ICTを活用した生産性向上、開発力の強化及び新規製品拡販に取り組むと同時に各事業のシナジー効果創出・最大化に向けて取り組んでおります。
事業創造本部では、次世代の蓄電池として期待されている全固体電池向け固体電解質の量産試験用設備の生産能力を増強しました。
この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、52億円(0.8%)減少の6,466億円となりました。
営業利益は前連結会計年度に比べ、機能材料部門やモビリティ部門の主要製品の販売量の増加、円安の進行や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の好転に加え、退職給付債務の算定に用いる割引率を変更した影響等により退職給付費用が減少したこと等から、191億円(153.0%)増加の316億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ、営業利益が191億円増加したこと、及び持分法による投資利益が24億円減少したものの、受取配当金が61億円増加したこと等により、246億円(123.8%)増加の445億円となりました。
特別損益においては、投資有価証券売却益12億円、貸倒引当金繰入額25億円、固定資産除却損22億円等を計上しました。加えて、税金費用及び非支配株主に帰属する当期純利益を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ、174億円(205.3%)増加の259億円となりました。
当連結会計年度のセグメント別の概況
機能材料セグメント
〔銅箔〕
キャリア付極薄銅箔は、在庫調整が一巡したことにより、半導体パッケージ基板向けの需要が回復したことから販売量は増加しました。プリント配線板用電解銅箔は、AIサーバー用途を中心とした通信インフラ向け多層基板の需要が堅調であったことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔機能粉〕
高純度酸化タンタルは、スマートフォン向けの需要が低調であったことから販売量は減少しました。一方で、電子材料用金属粉は、在庫調整が一巡したことにより、積層セラミックコンデンサ向けの需要が回復し、中国向けの需要が堅調であったことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔電池材料〕
リチウムイオン電池用のマンガン酸リチウムは、海外向けの需要が低調であったことから販売量は減少したものの、水素吸蔵合金は、半導体等の部材不足の緩和に伴い自動車メーカーの生産が回復したことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔スパッタリングターゲット〕
主力のディスプレイ用スパッタリングターゲットは、フラットパネルディスプレイ市場の低迷により、パネルメーカーの稼働率が低調であったことから販売量は減少しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
以上の結果、当部門の売上高は前連結会計年度に比べ、銅箔の販売量が増加したこと等から、115億円(10.3%)増加の1,240億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ、銅箔の販売量が増加したことや円安が進行したことに加え、インジウム価格の変動に伴う在庫要因が好転したこと等により、57億円(53.4%)増加の164億円となりました。
金属セグメント
〔亜鉛〕
国内の亜鉛メッキ鋼板向け需要は、自動車メーカーの生産が回復したものの、国内需要全体としては伸び悩んだことから販売量は減少しました。加えて、亜鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は下落基調で推移し国内平均価格は下落したことから、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
〔鉛〕
国内の鉛蓄電池向け需要は、自動車メーカーの生産が回復したことから販売量は増加しました。加えて、鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は前連結会計年度並みで推移したものの、国内平均価格は円安の影響により上昇したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
〔金・銀〕
金・銀ともに国内価格は上昇したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
以上の結果、当部門の売上高は前連結会計年度に比べ、円安が進行したものの、亜鉛のLME(ロンドン金属取引所)平均価格が下落したこと等から、95億円(3.7%)減少の2,468億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ、エネルギーコストの上昇や持分法による投資利益の減少等による減益要因があったものの、円安の進行や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の好転に加え、日韓共同製錬株式会社からの受取配当金が増加したこと等により、69億円(76.9%)増加の160億円となりました。
モビリティセグメント
〔排ガス浄化触媒〕
二輪車向け排ガス浄化触媒は、インド向け需要が堅調であったことから販売量は増加しました。四輪車向け排ガス浄化触媒は、自動車メーカーの生産が回復したことに加え、新規受注車種の量産が本格化したことから販売量は増加しました。一方、主要原料であるロジウム等の価格が下落したことから、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
〔自動車用ドアロック〕
主要製品であるサイドドアラッチは、自動車メーカー各社の生産回復により国内の販売量は増加となりました。中国では日系自動車メーカーが減産したことから販売量が減少したものの、欧米における需要が堅調であったことから海外の販売量も増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
以上の結果、当部門の売上高は前連結会計年度に比べ、主要製品の販売量が増加したことから、18億円(0.9%)増加の2,183億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ、主要製品の販売量が増加したことに加え、為替差損益が好転したこと等により、80億円(252.6%)増加の112億円となりました。
その他の事業セグメント
〔各種産業プラントエンジニアリング〕
国内の金属加工関連分野及び海底送水管分野で大型工事案件を受注したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
一方、国内の子会社による非鉄金属製品の輸出額が減少したこと等から、当部門の売上高は前連結会計年度に比べ、147億円(11.5%)減少の1,133億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ、各種産業プラントエンジニアリングの受注が堅調であったことに加え、エネルギーコスト等の上昇を販売価格に転嫁したこと等により、24億円(331.0%)増加の31億円となりました。
主要な品目等の生産実績の当連結会計年度の推移は、次のとおりであります。
* 亜鉛:共同製錬については当社シェア分
資産合計は、前連結会計年度末に比べ87億円増加の6,406億円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ158億円減少の3,546億円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ246億円増加の2,860億円となりました。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.4ポイント上昇の43.5%となりました。
なお、財政状態の詳細については、「(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析 ①財政状態の状況」に記載しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ323億円収入増加の753億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ32億円支出増加の349億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ218億円支出増加の365億円の支出となりました。
以上の結果、為替換算差額等を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ56億円増加の324億円となりました。
なお、キャッシュ・フローの詳細については、「(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、セグメントごとの生産実績及び受注状況を正確に把握することは困難なため、主要な品目等についてのみ「(経営成績等の状況の概要)(1) 経営成績の状況」において、各セグメントに関連付けて記載しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。その作成にあたっての重要な会計方針・見積りは、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に記載のとおりであります。
① 売上高
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べて52億円(0.8%)減少の6,466億円となりました。なお、各セグメント及び主要製品別の分析については、「(経営成績等の状況の概要)(1)経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② 営業利益
機能材料セグメントの営業利益は、銅箔の販売量が増加したことや円安が進行したことに加え、インジウム価格の変動に伴う在庫要因が好転したこと等により、前連結会計年度に比べて55億円(55.8%)増加の154億円となりました。
金属セグメントの営業利益は、エネルギーコストの上昇等による減益要因があったものの、円安の進行や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の好転等により、前連結会計年度に比べて22億円(53.4%)増加の63億円となりました。
モビリティセグメントの営業利益は、主要製品の販売量が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて67億円(199.4%)増加の102億円となりました。
その他の事業セグメントの営業損益は、各種産業プラントエンジニアリングの受注が堅調であったことに加え、エネルギーコスト等の上昇を販売価格に転嫁したこと等により、前連結会計年度に比べて24億円増加の14億円の利益となりました。
この結果、セグメントの調整額を加味した営業利益は、前連結会計年度に比べて191億円(153.0%)増加の316億円となりました。
③ 経常利益
営業利益が191億円増加したこと、及び持分法による投資利益が24億円減少したものの、受取配当金が61億円増加したこと等により、前連結会計年度に比べて246億円(123.8%)増加の445億円となりました。
なお、各セグメント別の分析については、「(経営成績等の状況の概要)(1) 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
① 財政状態の状況
資産合計は、棚卸資産110億円等の減少があったものの、受取手形、売掛金及び契約資産69億円、現金及び預金56億円、投資有価証券45億円等の増加により、前連結会計年度末に比べ87億円増加の6,406億円となりました。
負債合計は、繰延税金負債49億円、未払法人税等22億円等の増加があったものの、長・短借入金及びコマーシャル・ペーパー残高185億円、支払手形及び買掛金58億円等の減少があったことから、前連結会計年度末に比べ158億円減少の3,546億円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益259億円、為替換算調整勘定92億円、その他有価証券評価差額金28億円等の増加に加え、剰余金の配当120億円等の減少があり、前連結会計年度末に比べ246億円増加の2,860億円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.4ポイント上昇の43.5%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益385億円、減価償却費343億円、棚卸資産の減少159億円等の収入に対し、仕入債務の減少112億円、法人税等の支払額98億円等の支出を差し引いた結果、前連結会計年度に比べ323億円収入増加の753億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出290億円等により、前連結会計年度に比べ32億円支出増加の349億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長・短借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少206億円及び配当金の支払額120億円等から、前連結会計年度に比べ218億円支出増加の365億円の支出となりました。
以上の結果、為替換算差額等を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ56億円増加の324億円となりました。
③ 財政状態及びキャッシュ・フロー指標のトレンド
(注)自己資本比率 :(純資産-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/支払利息
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている長・短期借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーを対象としております。
支払利息は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社は、安定した経営を行う上で急激な市況変動や為替・非鉄金属相場の変動等に備えるため、一定の手元流動性を確保しております。一方、事業創造、機能材料を中心とした積極的な投資に加え、経済的価値とともに社会的価値の向上を目指す投資を計画しており、これらの投資等のための所要資金は、主に自己資金を充当することとしておりますが、金融情勢や金利水準などを考慮しながら、資金需要に応じた調達に努めております。
手元流動性確保の手段としましては、短期社債(電子コマーシャル・ペーパー)発行枠500億円を設定しているほか、250億円を限度とした長期コミットメントライン契約を取引金融機関とシンジケーション形式により締結しております。
なお、キャッシュ・マネジメント・システム等によりグループ全体の資金効率の向上に努めております。
「3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
銅製錬事業に関する包括的業務提携について
当社とJX金属株式会社は、銅製錬事業において、両社の共同出資によるパンパシフィック・カッパー株式会社を通じた包括的な業務提携を行っております。
当社グループは、永年育成し蓄積してきた資源開発、非鉄金属製錬・加工技術を基礎として、グループ企業の「利益の最大化」に貢献することを基本理念に、新技術の創出や新製品の開発を積極的に行っております。
研究開発体制は、新規商品の開発及び事業化については、事業創造本部及び各事業本部内の開発部等で行い、基礎評価研究所においては、分析技術の向上に努め、各事業の研究開発を支援する体制としております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
また、セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
(1) 機能材料部門
当部門においては、銅箔事業部は、グローバルでのマーケティング体制やデジタルマーケティングの導入により、半導体パッケージ基板用などの回路材料分野のみならず、環境分野等を含め、幅広い分野でテーマを探索しております。また、開発試験用処理機の導入が完了し、機能箔の開発を加速してまいります。機能性粉体事業部は、新機能性材料としてタンタルなどレアメタルの新溶液材料シリーズ「iconos™(イコノス)」を独自の溶解技術により開発し、省エネ・プロセス短縮による環境負荷低減に貢献してまいります。
この結果、当部門に係る研究開発費は
(2) 金属部門
当部門においては、持続可能な社会の実現に向けたソリューションとして、循環型社会の形成により高まっているリサイクル・ニーズに応えるべく、多様な元素回収を可能とする亜鉛・鉛・銅・貴金属製錬プロセスを用いた当社独自の製錬ネットワークを活かしながら、難処理鉱石及びリサイクル原料からの有価金属回収や、産業廃棄物処理、また脱炭素社会の実現に向けたCO2排出量削減に関する技術開発を行っております。
また、南米ペルーを中心に探鉱を実施しており、加えて鉱山開発に係る鉱物、地質に関する研究を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は探鉱費を含めて
(3) モビリティ部門
当部門においては、次期排気ガス規制や省貴金属ニーズに対応した自動車用触媒の開発や触媒技術を活かした将来の環境貢献製品の開発、「CASE」に呼応した次世代ドアラッチやパワースライドドア、パワーテールゲート等システム製品の開発を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は
(4) その他の事業部門
当部門においては、銅電解工場装置向けの新規技術の開発、新しいポリエチレン材料や継手の評価及び導入、パイプ及び継手等の新製品の開発、素材製品の品質向上等の研究を行っております。
この結果、当部門に係る研究開発費は
(5) 共通部門
当部門においては、「触媒」、「電気化学」、「粉体制御」、「材料複合化」等の当社のコアとなる技術を活用しながら、環境・エネルギー、次世代エレクトロニクス、ライフサイエンス分野にソリューションを提供し、持続可能な社会への貢献と新たな事業価値の創出を推進しております。具体的には、全固体電池向け固体電解質及び電極材料、次世代半導体チップ実装用キャリア、パワー半導体接合用材料、次世代ディスプレイ用蛍光体、燃料電池用電極材料、カーボンニュートラルに資する二酸化炭素吸着分離材料や脱炭素燃料合成用触媒等の次世代材料開発や製品ライフサイクルを意識したリサイクル技術開発に取り組んでおります。
この結果、当部門に係る研究開発費は