当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営理念及び経営ビジョン
経営理念:私たち新日本理化グループは、もの創りを通して広く社会の発展に貢献します。
ビジョン2030(2030年のありたい姿):Be the best SPICE!~心躍る極上のスパイスになる~
当社は、1919年の創業からこれまで、上記経営理念のもと着実に事業を継続してまいりました。そして2030年のありたい姿を示すものとして、ビジョン2030「Be the best SPICE!~心躍る極上のスパイスになる~」を策定しております。
当社が創るものは、社会の様々なシーンを支える、キラリと光る唯一無二の特性をもった素材です。それらの素材は、当社自身が、多様な価値観を活かす、精鋭の集まりであってこそ生み出されるものだと考えております。当社の一人ひとりが、スパイスのようにお互いを引き立て合い、そして人々の心を躍らせるようなスパイスを提供する企業となること、それが2030年に向けて、当社が目指す姿です。
(2)中期経営計画の進捗と対処すべき課題
ビジョン2030の達成に向け、5ヶ年の中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定の上、多方面で取組みを進めております。なお、計画最終年度の経営目標につきましては、足元の業績と乖離が生じたため、2024年6月6日付で目標数値の修正を行っております。
<中期経営計画の基本コンセプト>
・環境・社会・人(命)に関わる課題に果敢にチャレンジし、価値創造企業を目指す。
・「情報・通信」「モビリティ」「ライフサイエンス」「環境ソリューション」の4領域に経営資源を集中し、成長戦略を実現する。
<経営目標(連結)>
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2025年度目標 |
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売上高 |
340億円 |
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営業利益 |
8億円 |
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ROE |
6.0%以上 |
なお、2023年度業績は、売上高(連結)328億円、営業利益(連結)3億円、ROE(連結)1.3%となりました。詳細な結果については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
<事業戦略の進捗(2021年度~2023年度)>
既存事業のスクラップ&ビルドを進めるべく、ステアリン酸の製造中止のほか、可塑剤や酸無水物の製造拠点集約など合理化策を講じてまいりました。また、油脂技術やエステル技術を活用したバイオマス由来製品を拡充するなど、環境課題解決に寄与する技術・製品を将来の柱を担う事業として育成しております。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大や原材料・エネルギーコストの大幅上昇、中国経済の長期停滞など厳しい事業環境を背景に、収益構造の変革に遅れが生じたことから、2025年度の経営目標を下方修正するに至りました。
<対処すべき課題(2024年度~2025年度)>
本計画の残りの期間につきましては、モノづくり力の向上と事業ポートフォリオの組換え加速を重点課題として取組みを進めてまいります。まずは原料サプライチェーン強化や予防保全の徹底、安定的かつ高品質な製品提供など、モノづくりの基本に立ち返り事業基盤を固めます。そしてスクラップ&ビルド対象製品の分析・選定を継続的に行い、製品ラインアップ見直しに対応するフレキシブルな生産体制を確立します。新規事業につきましては、当社技術を活かした環境貢献製品の開発に引き続き注力するとともに、事業化スピードを加速させるため、製造委託の活用やグループ海外拠点を通じた海外への拡販を進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、「もの創りを通して広く社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、事業を通して社会価値を創造し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指すことをCSR方針に掲げております。CSRを通してサステナビリティへの取組みを推進し、経営のレジリエンスを高めるため、代表取締役社長が委員長を務めるCSR委員会を設置し、CSRの取組みについて審議・協議し、必要に応じて取締役会に報告しています。CSR委員会の構成委員は本部長である執行役員および国内連結子会社社長であり、各組織でのCSR課題への取組みを遂行する責任を担っております。また、CSR委員会の内部組織としてESG事務局を設置し、コンプライアンス委員会、安全衛生委員会、省エネ委員会、品質管理委員会と連携し、グループ全体のCSR課題への取組みを推進しております。
また、環境への取組みにおいては、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2022年4月CN(カーボンニュートラル)推進室を立ち上げました。CN推進室は全社横断型の組織であり、その取組み内容については、定期的に経営会議にて報告しております。
<CSR推進体制>
(2)戦略
当社グループは、事業を通して社会価値を創造することが経営理念の実現そのものであり、企業と社会の持続的な成長に繋がると考え、以下のとおりCSR方針及びCSR目標を策定しております。
<CSR方針>
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1.社会課題の解決 |
社会課題の解決に事業を通して貢献することで企業の持続的な成長を目指します。 |
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2.環境への責任 |
事業活動の環境影響に責任を持ち、地球環境と調和した事業活動を行います。 |
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3.安全への責任 |
安全を事業運営上の最優先に位置付け、職場と地域社会に安全・安心を提供します。 |
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4.人権の尊重 |
基本的人権を尊重し、あらゆる差別、不当労働やハラスメントなどの非人道的な行いを排除します。 |
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5.企業統治の責任 |
健全かつ透明度の高い経営に努め、全てのステークホルダーの理解と信頼を深めます。 |
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6.従業員への責任 |
従業員の自己実現を支援し、安全で働きがいのある職場を創ります。 |
<CSR目標>
① 中期目標(2025年度):環境・社会・人(命)に関わる課題に果敢にチャレンジし、価値創造企業を目指す。
② 2024年度目標:
・持続可能について考える(意識)
・スピード!やり切る!全員参加!(行動)
また、上記目標の達成に向けて当社グループが取組むCSR重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり特定しました。
<CSR重要課題>
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重要課題 |
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E (環境) |
カーボンニュートラルの実現 |
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資源(水・燃料)の有効利用 |
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人・環境にやさしい製品の拡充 |
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S (社会) |
人権の尊重 |
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多様な人材の育成と確保 |
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安全で働きやすい職場づくり |
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サプライチェーンマネジメント |
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地域活性化への貢献 |
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G (企業統治) |
ステークホルダーエンゲージメントの実践 |
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リスクマネジメントの徹底 |
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迅速果断な意思決定を支えるガバナンスの構築 |
なかでも、環境項目のカーボンニュートラルの実現及び社会項目の多様な人材の育成と確保は最重要課題と捉え、以下のとおり取組みを進めています。また、
<カーボンニュートラルの実現に向けた取組み>
① 製造時のCO2排出量削減に向けて
事業活動で使用する電力及びガスの再生可能エネルギー化を進め、電力については2030年までに国内事業所における再生可能エネルギー化率100%を目指します。加えて、これまでの省エネルギー活動を見直し、設備における燃料の使用状況を根本から把握しムダ・ムラをより一層排除していくことで、燃料効率の向上を図ってまいります。
② 事業を通した低炭素社会へのアプローチ
低炭素社会への移行に伴い、従来主流であった石化原料からバイオマス原料へのシフトが求められます。創業当初より培ってきた油脂技術の知見を活かし、非石化製品群の拡大と需要開拓を進めております。これまでに、バイオマス由来の可塑剤やエステル油など、石化由来品と同等以上の性能を発揮する製品の開発に成功しており、顧客での評価が進んでおります。また、プラスチックを取り巻く課題にアプローチする結晶核剤の開発も進めております。すでに、ポリプロピレン樹脂の成形加工のサイクルタイムを短縮する結晶核剤を開発し、省エネルギー効果や成形性の改善効果などを実証しております。今後も引き続き、低炭素社会の実現に貢献する製品の拡大と提案強化に努めてまいります。
<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組み>
当社は、人材の持続的な成長が、企業の持続的な成長に繋がるという考えのもと、Vision2030「Be the best SPICE! ~心躍る極上のスパイスになる~」では、従業員の意欲や挑戦を引き出すこと、多様な価値観を受容する企業風土を創造することで、活力ある組織の実現を目指しています。そのための施策として、人事制度改革、教育制度の見直し、社内環境整備に取組んでおります。
① 人事制度改革
昨今、経営環境の変化が大幅に加速し、従業員の就労意識や職業観などにも大きな変化が見られるなか、当社は新たな人材マネジメントの実現に向けて人事制度の改革に挑戦しています。新たな人事制度では、旧来の制度、事業を守り支えるだけでなく、新たな課題や事業に取り組む挑戦型の人材が評価される仕組みへと改めました。従業員ひとりひとりの課題や問題意識に寄り添い、安心して働きやすい環境を整えることで、チャレンジする従業員をしっかり後押しをするような人材マネジメントを目指します。
・人事制度改革の方針
保守的人材から挑戦型人材への変革 ~Change & Challenge!~
・人事制度の改定
急速に変化する社会環境の中で、変化を恐れずチャレンジし新しい社会を切り拓いていく人をより力強く後押ししていくために、段階的に人事制度の改定を進めています。
評価とフィードバックによってチャレンジ精神を醸成し、変化や困難に負けず、新しい発想や自分らしいアイデアを自らつくり出す人材の育成を第一の目的として、まず2022年4月に評価制度の改定を実施いたしました。成果までのプロセスを重視した、プラス評価中心の前向きな評価基準により、「挑戦力」「変革力」そして「創造力」を培うことを目指しています。また、現在は新しい制度の定着のため、評価者に対しては研修による基本スキルの習得に加え、部下と成長や課題について話し合う機会をこれまで以上に増やしています。
続いて、等級ごとの役割明確化と健全な競争意識向上のために、2023年4月より新等級制度を導入いたしました。年功的な要素を見直し、評価によって昇級などの処遇にメリハリをつけることで、よりチャレンジングな行動を促します。等級と役職の関係をシンプルに分かりやすく再整理し、昇給、昇格のみならず、人材の育成、配置など人材マネジメント全般の実効性を高めてまいります。
今後も引き続き、新評価制度と新等級制度の安定と定着に向け、双方向コミュニケーションの活発化と、チャレンジを評価する企業文化の醸成に努めてまいります。
② 教育制度の見直し
人事制度の改定にあわせ、教育制度についても見直しました。従来の階層型研修や次世代経営層の候補者育成のための選抜型研修に加え、2023年4月より新たに選択型研修を導入しています。多種多様な研修を自由に選択し受講出来る環境を整えることで、学びたい意欲のある従業員を支援します。2024年度は等級に沿った階層別教育の見直しも行う予定です。社員の成長を促し、社員が自身の成長を実感できる仕組みと風土づくりを行ってまいります。
③ 社内環境整備
当社は、組織風土の変革の加速と実現のため、多様な経験やキャリアを有する人材の採用と登用を通じて、ダイバーシティ&インクルージョンにも取組んでいます。また、一人ひとりが心身ともに健康であるために、各職場における従業員の安全管理や健康づくりを進めるとともに、柔軟な働き方を可能にする勤務体系の整備にも取組んでおります。2020年の「女性活躍推進法」に基づく行動計画及び、2022年の「次世代育成支援対策推進法」に基づく行動計画では、男女の均衡ある育児参加や成長機会の提供を念頭に、それぞれの活動を推進しています。
④ エンゲージメント
当社は従業員に対して定期的に独自の従業員満足度調査を行っております。2023年度に実施した従業員満足度調査24項目に対するポジティブ回答率は60%でありました。2024年度には、目標であるポジティブ回答率70%に向けて、まずは現状把握を行いエンゲージメント向上に取組んでまいります。
(3)リスク管理
当社グループではCSRとして取組むべき重要課題をCSR委員会にて策定しました。CSR重要課題は、サステナビリティ経営に向けて取組まなければならないと認識した社会課題へのアプローチであり、経営課題と捉えております。そのため、各課題を各部門の業務計画へ落とし込み、業務として遂行しております。CSR重要課題の取組み状況については、CSR委員会の内部組織であるESG事務局が確認および支援を行い、取組みの進捗状況については、各部門より業務計画の進捗と併せて経営会議にて報告しております。
サステナビリティに関するリスクと機会に関しては、各種指標やシナリオを参考に分析を進めていき、取締役会および執行の諸機関、委員会におけるサステナビリティに関する議論の活発化を図ってまいります。
(4)指標及び目標
当社グループでは、CSR重要課題の各項目に対してKPIを設定し、取組みを進めております。なかでも最重要課題と位置付けている環境項目のカーボンニュートラルの実現及び社会項目の多様な人材の育成と確保においての指標及び目標は以下のとおりです。
<カーボンニュートラルの実現に向けた取組みの指標及び目標>
カーボンニュートラルの実現に向け、パリ協定で努力目標とされる高水準の1.5℃目標でのCO2削減を目指し、2030年度には2013年度比で50%のCO2排出量削減、更に2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目標としております。当該目標に関する指標として、現時点では当社及び製造子会社の日新理化㈱におけるScope1及びScope2のCO2排出量を用いており、その実績は次のとおりです。なお、Scope3を含めたCO2排出量につきましては、現在、算定を進めております。
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年度 |
2013年度実績 |
2023年度実績 |
2030年度目標 |
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CO2排出量(t-CO2) |
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21,091 |
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削減率 |
- |
約34.6% |
50% |
※ 2023年度実績のCO2排出量の算定においては、再生可能エネルギー由来の非化石証書が有する環境価値を付加した電力の使用量を除外しております。
<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組みの指標及び目標>
当社グループでは、一人ひとりの多様な背景や経験、知識を活かし、能力を最大限に発揮できる環境を整えるとともに、活躍への意識を高め、次世代を担う人材の育成を加速させます。また、働く環境の改善やワークエンゲージメントの向上にも取組んでおり、様々な施策を通じて、多様な人材がそれぞれの強みを生かして働くことのできる組織づくりを進めております。
人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組みの指標は次の通りです。管理職に占める女性労働者の割合においては、当事業年度は2025年度目標に掲げる7.0%以上に到達いたしました。引き続き女性が活躍できる環境づくりを進めてまいります。
なお、本取組みはグループ会社までの実行には至っておらず、以下に示す実績、目標は提出会社である当社のみのデータとなっております。
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方針に関する指標 |
2023年度実績 |
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※ 男女賃金格差については、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)原材料の価格変動
当社グループの主要原材料である油脂原料及び石化原料の購入価格は、国内・国外の市況の変動の影響を受けます。
油脂原料の購入価格については、植物系油脂原料価格は産地の天候に左右され、動物系油脂原料価格は疫病等による供給減の影響を受ける可能性があります。また、石化原料の購入価格は、原油・ナフサの国際市況に影響を受けます。原油価格は、国際的な需給関係に加え、中東等の産油国の情勢、先物市場での投機的な要因により変動する可能性があります。当社グループの化学製品事業の業績はこれらによって大きく影響を受けます。
上記のような原料価格の変動に対しては、販売価格への転嫁等の対策をとっておりますが、変動が大きく対応しきれない場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)原材料の調達
当社グループは主要原材料として油脂原料及び石化原料を国内・国外の幅広い原材料メーカーから調達しております。
原材料の調達に関しては、取引先への継続的な安定供給を行うために、品質・コストを検討したうえで、複数調達先の確保などで、安定的な調達に努めておりますが、原材料メーカーの生産上のトラブルによる一時的な供給停止や品質不良の発生により、当社製品の安定生産が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)物流の確保
当社グループは原材料の調達及び製品の出荷において、国内・国外の海運及び国内陸送等の幅広い物流手段を利用しており、コスト・時間・品質面での最適化に努めております。
昨今の物流事情におきましては、世界的な人手不足、国際的な紛争発生等により、コスト増加が顕著となっており、適時・適切な物流ルート確保に支障をきたすこともあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)為替相場の変動
輸入原料の増加等に伴い、当社グループの支払いに占める外貨決済額は増加しており、為替相場の変動が当社の業績に与える影響は増大しつつあります。
この影響を最小化することを目的として、必要な範囲で為替予約等のヘッジ策を講じておりますが、急激な為替変動により、当社グループの業績及び財務状況にヘッジすることができない影響を及ぼす可能性があります。
また、連結財務諸表の作成のために、在外連結子会社及び在外持分法適用会社の財務諸表は円換算されています。換算時の為替相場により、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(5)製造物責任
当社グループは、製品の開発、生産にあたって安全性や品質に十分に配慮しておりますが、製品の予期しない欠陥によって、製品回収や損害賠償につながる可能性があります。
保険に加入し賠償に備えているものの、保険による補填ができない事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権
当社グループは、開発された技術・製品を保護するために、特許等の知的財産権の確立を進めるほか、製品及び商品の製造・販売に先立ち、第三者が保有する知的財産権を十分調査し、権利を侵害しないように努めております。
しかし、予期しない事情により当社グループと第三者との間で知的財産権に関する紛争が発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)産業事故災害
当社グループは事業活動全般において無事故・無災害に努めておりますが、当社グループの工場において万が一産業事故災害が発生した場合、自社の保有資産に対しては保険に加入することで備えているものの、被災地域への損害賠償や社会的信用の失墜、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米国経済が良好な雇用環境を支えとして堅調であったものの、不動産市場が停滞する中国経済と製造業が不振であった欧州経済の低迷により、全体的には低調に推移しました。また、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化するなか、中東ではイスラエルとハマスとの紛争が勃発するなど、国際情勢の悪化により地政学リスクが高まりました。わが国経済においては、インバウンド消費による上振れ要因はあったものの、物価高や人手不足の影響による内需の低迷が継続しており、足踏み状態にありました。
当社グループにおいては、欧州、中国経済の低迷により輸出が大きく減少したものの、下半期には国内産業の緩やかな上昇を受けた製品需要の回復が見られました。このような環境のなか、販売数量は伸び悩んだものの、不採算事業の見直しやコスト削減、在庫の適正化などの収益改善策を実施してまいりました。
この結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は、328億6千3百万円(前期比0.7%減)となり、損益面では、営業利益3億6千1百万円(前期は営業損失4億3千9百万円)、経常利益7億8千万円(前期比641.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2億2千万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失4億4千4百万円)となりました。
しかしながら、安定的な利益還元を実現するための経営基盤の確立には至っておらず、企業体質の強化が急がれること、また、新規事業立ち上げの設備投資に備えるため、誠に遺憾ではございますが、2024年3月期期末配当につきましては、無配とさせていただきます。株主の皆様には深くお詫び申し上げます。
当社グループは現在、中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)に掲げるコンセプト「環境・社会・人(命)に関わる課題に果敢にチャレンジし、価値創造企業を目指す」に基づき、事業構造の改革を推し進めております。
当連結会計年度におきましては、2023年6月のステアリン酸製造中止をはじめ、収益を圧迫する既存事業のスクラップを実行しており、その他製品についても製造拠点の集約やラインアップの見直しなどの合理化を進めております。一方、新規事業の創出に向けては、樹脂成形の省エネルギー化に貢献する新規結晶核剤「RiKACRYSTA」の用途開拓に注力しており、今般モビリティ向け部材での採用が内定しました。また、オレオケミカルで培った技術・知見を取り入れた環境関連事業を展開すべく、バイオマス由来の化粧品原料「リカナチュラ」のほか、バイオマス由来潤滑油「エヌジェルブ」、バイオマス可塑剤「グリーンサイザー」の3ブランドを開発し、各方面にてユーザーへのサンプル提供を進めております。引き続き、環境負荷低減に寄与する製品群の育成に注力してまいります。
当連結会計年度における主要製品の概況は次のとおりであります。
トイレタリー向け界面活性剤においては、訪日観光客の増加を受け国内需要は回復傾向にありますが、依然として中国経済の低迷による輸出不振が継続しており、数量、売上高ともに前年を下回りました。繊維油剤原料向けアルコールは、需要の回復及び顧客での在庫調整が一服したことから、数量は前年を上回ったものの、原料である油脂の価格下落を受けた販売価格の適正化により売上高は減少しました。
日用品雑貨などのポリオレフィン樹脂成形物向け添加剤は、国内のエチレンプラントの稼働率低下の影響もあり、国内需要は低迷した一方、主要輸出先である欧州での需要が下期にかけ回復したことなどから、数量、売上高ともに前年を上回りました。また、食品・医薬品向け添加剤は、国内需要が堅調であったことから数量、売上高ともに前年を上回りました。
主に床材や電線被覆材などの建材向け原料として使用される可塑剤製品においては、海外市況の大幅な下落による価格競争力の低下から輸出は低迷したものの、国内需要の緩やかな回復と、原料価格の上昇に対応した価格転嫁が進んだ結果、数量、売上高ともに前年並みとなりました。
自動車産業向け製品及び電子材料向け製品においては、メーカー需要の回復により堅調に推移し、数量、売上高ともに前年を上回りました。
当連結会計年度末の総資産は前期末比4.0%増、金額で15億6千1百万円増加の401億1千4百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ、9億2千3百万円増加し、36億9千5百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は35億7千8百万円増加(前期は1億4百万円増加)しました。これは主に、売上債権の増加16億8千4百万円、仕入債務の増加25億4千1百万円及び棚卸資産の減少15億4千1百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は6千万円減少(前期は6億5千9百万円減少)しました。これは主に、有形固定資産の取得による支出7億7千9百万円及び投資有価証券の売却による収入6億9千6百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は25億9千6百万円減少(前期は3百万円減少)しました。これは主に、長期借入金の返済による支出21億4千7百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。
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生産量(トン) |
前年同期比(%) |
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73,956 |
98.0 |
2)受注状況
当社グループ(当社及び連結子会社)は、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。
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販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
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32,863 |
99.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の売上高は、前期比0.7%減、金額で2億4千2百万円減少の328億6千3百万円となりました。これは主に、下半期に国内産業の緩やかな上昇を受け製品需要の回復が見られたものの、欧州、中国経済の低迷により輸出が大きく減少したことによるものであります。
営業利益は、3億6千1百万円(前期は営業損失4億3千9百万円)となりました。これは主に、販売数量は伸び悩んだものの、不採算事業の見直しやコスト削減、在庫の適正化などの収益改善策の実施によるものであります。
受取配当金、持分法による投資利益等の営業外損益を加えた経常利益は前期比641.1%増、金額で6億7千5百万円増加の7億8千万円となり、減損損失等の特別損失や法人税等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2億2千万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失4億4千4百万円)となりました。
当連結会計年度末の総資産は前期末比4.0%増、金額で15億6千1百万円増加の401億1千4百万円となりました。
流動資産につきましては、現金及び預金、受取手形及び売掛金が増加した影響などにより前期末比4.5%増、金額で8億5千8百万円増加の198億4千5百万円となりました。固定資産につきましては、投資有価証券の時価が上昇したことなどにより前期末比3.6%増、金額で7億3百万円増加の202億6千8百万円となりました。
流動負債につきましては、短期借入金及び1年内返済予定の長期借入金が減少したものの、支払手形及び買掛金が増加したことなどにより前期末比2.4%増、金額で3億5百万円増加の128億3千7百万円となりました。固定負債につきましては、長期借入金が減少したことなどにより前期末比2.9%減、金額で2億6千6百万円減少の88億円となりました。
純資産につきましては、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金が増加したことなどにより前期末比9.0%増、金額で15億2千1百万円増加の184億7千6百万円となりました。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は43.1%となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、3「事業等のリスク」をご参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金及び設備資金を内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入金による資金調達につきましては、運転資金は短期借入金で、設備資金などの長期資金は長期借入金で調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は75億8千9百万円となっております。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は36億9千5百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されています。
連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合がありますが、この前提条件の置き方などにより、連結貸借対照表上の資産及び負債、連結損益計算書上の収益及び費用などに重要な影響を及ぼすことがあります。
なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
私たち新日本理化グループは、もの創りを通して広く社会の発展に貢献することを経営理念として、次の100年に向けた新規事業の創出を目指します。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
「情報通信」「モビリティ」「ライフサイエンス」「環境ソリューション」の4重点領域に研究テーマを絞っている中で、注力するテーマとして3つのテーマをプロジェクトとして進めています。
ポリオレフィン系樹脂の結晶化促進剤として開発中の「RiKACRYSTA」は、成形速度の改善や成形時の収縮率などの特徴が認められ、雑貨品での採用が決まりました。また、次世代SUVの内装品への採用も見込まれています。
また、一般社団法人京都府産業廃棄物3R支援センターの技術開発支援事業に採択されたリサイクルポリオレフィン系樹脂の成形性改善の2年間の検討計画が満了しました。補助金で購入した押出機、射出成形用の金型を使用して評価を続けてきましたが、リサイクルPPでもRiKACRYSTAの性能がでることが確認できました。このリサイクルPPでの評価結果については、ユーザー様からの関心、ニーズが非常に強く、各ユーザー様から自社のリサイクル材配合樹脂での性能評価を要望されており、その対応を進めています。
ライフサイエンス・環境ソリューションとして力を入れているバイオマス由来エステルは、潤滑油、化粧品および可塑剤の分野でそれぞれ展開を図っています。潤滑油分野では、石化由来エステル同等以上の性能が認められユーザー評価が進む中で、各国の法規制への対応を求められています。需要家様の期待に添うべく法規制に必要な試験を順次行っており、開発の促進につながるよう進めています。
化粧品分野では、バイオマスエステルとともに植物由来アルカンの製造方法の目処がついたことから、「リカナチュラ」シリーズとして、需要家様でのサンプルワークを進めています。単にバイオマスというだけではなく、「リカナチュラ」シリーズの特徴である感触の軽さ、伸びのよさなどから、シリコーン系材料の代替としての可能性が認められ、ノンシリコーン化粧品として各社で開発が進められています。
可塑剤分野ではまだまだバイオマス化への動きは大きくないものの、特に環境を意識された需要家様からの受注生産・販売を開始しており、今後の需要拡大に向けた準備を着々と進めています。
当社独自の特殊酸二無水物が、有機EL用材料およびEVモータの絶縁封止樹脂として、新規採用、需要が急拡大しています。製造工程と分析方法の技術向上により、需要家様の高い品質要求をクリアすることができ、今後、電気電子分野などへの展開を図っていきます。現在ラボ段階ではありますが、新たな製品開発にも着手しており、需要家様でのサンプル評価が始まっています。
京都R&Dセンターも開所して3年経ちましたが、見学者・来訪者の数は減ることなく年々増加しております。京都R&Dセンターの見学をきっかけとして秘密保持契約の締結、共同研究の検討も進んでおり、需要家様との信頼関係の強化にも取り組んでおります。