第一部 【企業情報】

第1 【企業の概況】

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 最近5連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移

 

回次

第118期

第119期

第120期

第121期

第122期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

売上高

(百万円)

1,698,292

1,456,473

1,482,961

1,933,814

2,005,518

経常利益又は

経常損失(△)

(百万円)

137,986

105,465

50,419

56,546

19,834

親会社株主に帰属する

当期純利益

(百万円)

98,977

77,176

47,761

49,057

17,163

包括利益

(百万円)

53,200

109,354

49,336

44,956

83,067

純資産

(百万円)

736,412

821,446

875,172

907,277

948,059

総資産

(百万円)

1,904,934

1,908,674

2,128,356

2,448,010

2,538,769

1株当たり純資産

(円)

957.56

1,068.74

1,116.89

1,150.70

1,243.88

1株当たり当期純利益

(円)

128.31

101.17

64.09

66.29

23.57

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

128.30

101.17

自己資本比率

(%)

38.3

42.7

38.7

34.8

35.0

自己資本利益率

(%)

13.6

10.0

5.8

5.9

2.0

株価収益率

(倍)

6.6

8.9

11.5

11.3

42.4

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

170,557

80,674

77,772

83,842

21,253

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

115,745

113,954

89,308

52,434

5,358

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

68,732

42,710

19,634

65,635

23,972

現金及び現金同等物

の期末残高

(百万円)

352,722

276,321

287,134

386,750

339,240

従業員数

(人)

16,297

16,586

19,661

19,869

20,515

(うち、契約社員数)

2,178

2,308

2,625

2,640

2,388

(注)1 第120期以降の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、希薄化効果を有している潜在株式が存在しないため記載しておりません。

2 契約社員数には、再雇用社員数、嘱託社員数を含めております。

3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第120期の期首から適用しており、第120期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

(2) 提出会社の最近5事業年度に係る主要な経営指標等の推移

 

回次

第118期

第119期

第120期

第121期

第122期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

売上高

(百万円)

1,417,604

1,249,985

1,287,352

1,557,325

1,577,909

経常利益又は

経常損失(△)

(百万円)

122,686

98,613

43,926

41,389

37,467

当期純利益

(百万円)

89,365

72,370

45,735

41,754

11,606

資本金

(百万円)

74,365

74,365

74,365

74,365

74,365

発行済株式総数

(株)

788,514,613

788,514,613

788,514,613

788,514,613

743,676,313

純資産

(百万円)

620,143

697,042

699,210

714,361

725,047

総資産

(百万円)

1,604,429

1,632,972

1,749,528

2,016,732

2,091,072

1株当たり純資産

(円)

811.50

912.13

943.72

964.18

1,015.01

1株当たり配当額

(円)

38.00

30.00

23.00

21.00

20.00

(うち1株当たり中間配当額)

(18.00)

(12.00)

(11.50)

(10.50)

(13.50)

1株当たり当期純利益

(円)

115.65

94.70

61.26

56.36

15.94

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

38.7

42.7

40.0

35.4

34.7

自己資本利益率

(%)

14.3

11.0

6.6

5.9

1.6

株価収益率

(倍)

7.3

9.5

12.0

13.3

62.8

配当性向

(%)

32.9

31.7

37.5

37.3

125.5

従業員数

(人)

10,384

10,494

10,688

10,845

10,949

(うち、契約社員数)

788

842

748

639

459

株主総利回り

(%)

91.8

100.2

85.9

89.6

117.7

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(90.5)

(128.6)

(131.2)

(138.8)

(196.2)

最高株価

(円)

1,176

965

953

790

1,121.5

最低株価

(円)

718

711

707

661

750.0

(注)1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、潜在株式がないため記載しておりません。

2 契約社員数には、再雇用社員数、嘱託社員数を含めております。

3 最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所プライム市場におけるものであり、それ以前については東京証券取引所市場第一部におけるものであります。

4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第120期の期首から適用しており、第120期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

2 【沿革】

 1804年(文化元年)、清水喜助が江戸神田鍛冶町に大工業を開業したのが、当社の起源であります。

以来、個人営業の時代が続きましたが、明治中期には近代建設業者としての基礎を確立しました。

 その後の当社グループの主な変遷は次のとおりであります。

 

1915年10月

資本金100万円をもって合資会社清水組を設立し、会社組織に変更した。

1928年2月

本店芝浦鐵工所を、合資会社東京鐵骨橋梁製作所(現 日本ファブテック株式会社)として設立

1937年8月

株式会社清水組設立

1937年11月

合資会社清水組を合併

名古屋支店・大阪支店(現 関西支店)・九州支店開設

1939年5月

北海道支店開設

1945年5月

広島支店開設

1946年4月

仙台支店開設(現 東北支店)

1946年7月

北陸支店・四国支店開設

1946年8月

建設資材等の販売会社の丸喜産業株式会社(現 株式会社ミルックス)を設立

1947年3月

総合設備会社の第一設備工業株式会社を設立

1948年2月

清水建設株式会社と社名変更

1961年4月

当社株式を東京店頭市場に公開

1961年10月

当社株式を東京証券取引所市場第二部に上場

1962年2月

当社株式を東京証券取引所市場第一部に上場

1962年10月

当社株式を名古屋・大阪両証券取引所市場第一部に上場

1971年5月

不動産取引に関する業務を事業目的に追加した。

1980年4月

横浜支店開設

1982年6月

EC(エンジニアリング・コンストラクター)化に備えるため、定款の事業目的を追加した。

1986年4月

当社リフォームセンターを株式会社シミズリフォーム(現 株式会社シミズ・ビルライフケア)として設立

1987年4月

千葉支店開設

1988年4月

当社機械事業部を株式会社エスシー・リース・マシーナリ(現 株式会社エスシー・マシーナリ)として設立

1990年6月

資源エネルギー開発、環境整備等への業容拡大と、情報通信システム分野、医療用機械器具の販売、損害保険代理業等新規事業分野への展開に備えるため、定款の事業目的を追加した。

1991年4月

本店を東京都中央区から港区に移転

1992年4月

東京支店・土木東京支店開設

2000年6月

エネルギー供給事業、公共施設の企画・建設・保有などPFI事業等の展開に備えるため、定款の事業目的を追加した。

2000年11月

不動産会社の清水総合開発株式会社を設立

2006年6月

土壌浄化事業、温室効果ガス排出権の取引に関する事業等の展開に備えるため、定款の事業目的を追加するとともに、当面事業展開を予定しない事業目的を削除した。

 

2009年4月

国際支店開設

2012年8月

本店を東京都港区から中央区に移転

2014年6月

自然共生事業の拡大を目指し、農林水産関連分野の事業展開に備えるため、定款の事業目的を追加した。

2020年3月

北米における事業拡大を目的に、北米事業の事業統括法人であるシミズ・アメリカ社を設立

2021年4月

土木国際支店開設

2022年3月

日本道路株式会社を株式公開買付けにより連結子会社化

2022年4月

市場区分の見直しにより、東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場に移行

2023年4月

海外で事業活動を行うすべての事業部門を包括的に管理し、海外建設の事業責任を担うグローバル事業本部を設立

2023年5月

丸彦渡辺建設株式会社を株式取得により連結子会社化

 

3 【事業の内容】

 当社グループは、当社、子会社126社及び関連会社21社で構成され、建設事業、開発事業及び各事業に附帯関連する事業を営んでおります。

建設事業……… 当社及び日本道路㈱、日本ファブテック㈱、丸彦渡辺建設㈱、第一設備工業㈱、㈱シミズ・ビルライフケア等が営んでおり、当社は工事の一部を関係会社に発注しております。

開発事業……… 当社及び清水総合開発㈱等が営んでおり、当社は一部の関係会社と土地・建物の賃貸借を行い、また建設工事を受注しております。

その他の事業… 建設資機材の販売及びリース事業を㈱ミルックスが営んでおり、当社は建設資機材の一部を購入・賃借しております。建設機械のレンタル事業を㈱エスシー・マシーナリが営んでおり、当社は一部の建設機械を賃借しております。当社及び関係会社等への資金貸付事業をシミズ・ファイナンス㈱等が営んでおります。公共施設等の建設・維持管理・運営等のPFI事業を多摩医療PFⅠ㈱等が営んでおります。
 このほか、北米における当社グループの事業活動の統括をシミズ・アメリカ社が行っております。

 

 各事業と報告セグメントとの関連は、次のとおりであります。

 当社グループは、当社における建設事業、投資開発事業及び日本道路㈱が営む事業を主要な事業としており、報告セグメントは、当社の建設事業を「当社建設事業」、当社の投資開発事業を「当社投資開発事業」、日本道路㈱が営む事業を「道路舗装事業」としております。また、当社が営んでいるエンジニアリング事業、LCV事業及び日本道路㈱を除く子会社が営んでいる各種事業は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、「セグメント情報」において「その他」に含めております。

 

 事業の系統図は次のとおりであります。なお、関係会社の一部は、複数の事業を行っております。

 

0101010_001.png

4 【関係会社の状況】

(1)連結子会社

(2024年3月31日現在)

 

名称

住所

資本金
又は出資金

(百万円)

主要な事業

の内容

議決権の
所有割合

(%)

関係内容

日本道路㈱ ※

東京都港区

12,290

建設事業

50.2

当社施工工事の一部を受注しております。

清水総合開発㈱

東京都中央区

3,000

開発事業

100

当社に工事を発注しております。

当社から施設の管理を受託しております。

当社に建物を賃貸しております。

役員の兼任7人

日本ファブテック㈱

東京都中央区

2,437

建設事業

84.6

当社施工工事の一部を受注しております。

役員の兼任5人

丸彦渡辺建設㈱

札幌市豊平区

476

建設事業

57.6

役員の兼任2人

第一設備工業㈱

東京都港区

400

建設事業

100

当社施工工事の一部を受注しております。

役員の兼任6人

㈱ミルックス

東京都中央区

372

建設資機材販売・リース及び保険代理業

100

当社施工工事の一部を受注しております。

当社に建設資機材の販売・リース等を行って

おります。

当社から建物・構築物等を賃借しております。

役員の兼任4人

㈱エスシー・マシーナリ

横浜市瀬谷区

200

建設機械の

レンタル

100

当社に建設機械のレンタルを行っております。

当社から建物・構築物等を賃借しております。

役員の兼任8人

㈱シミズ・ビルライフケア

東京都中央区

100

ビルマネジメント事業

100

当社施工工事の一部を受注しております。
役員の兼任11人

日本建設㈱

東京都千代田区

100

建設事業

95.0

当社施工工事の一部を受注しております。

役員の兼任5人

㈱エスシー・プレコン

千葉県流山市

100

建設事業

100

当社にPC板等を製造・納入しております。

当社から建物・構築物等を賃借しております。

役員の兼任7人

シミズ・ファイナンス㈱

東京都中央区

2,000

当社関係会社

への融資

100

当社と資金の貸借等の取引を行っております。

役員の兼任4人

多摩医療PFI㈱

東京都中央区

500

医療センターの運営

95.0

当社に工事を発注しております。

役員の兼任6人

つくば営農型太陽光発電㈱

東京都中央区

450

売電事業

100

役員の兼任5人

シミズ・USA・

ホールディングス社 ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

200,000

北米における

持株会社

100

役員の兼任3人

シミズ・アメリカ社

アメリカ合衆国

デラウェア州

US$

1

北米における

事業の統括

100

 (100)

役員の兼任2人

シミズ・ノースアメリカLLC

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

3,000

建設事業

100

 (100)

役員の兼任2人

シミズ・リアルティ・デベロップメント(U.S.A.)社

アメリカ合衆国

デラウェア州

US$

1

開発事業

100

 (100)

役員の兼任4人

シミズ・インターナショナル・ファイナンス(U.S.A.)社

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

30,000

 

当社関係会社

への融資

100

 (100)

役員の兼任3人

SCB Boylston PO, LLC ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

79,500

開発事業

97.0

 (97.0)

SCB Boylston Holding, LLC ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

79,500

開発事業

97.0

 (97.0)

SC Boylston Investment, LLC ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

77,800

開発事業

99.5

 (99.5)

清水建設(中国)有限公司

中華人民共和国

上海市

千元

80,000

建設事業

100

役員の兼任3人

シミズ・インベストメント(アジア)社

シンガポール

共和国

千シンガ
ポールドル

84,000

開発事業

100

役員の兼任5人

シミズ・インターナショナル・キャピタル(シンガポール)社

シンガポール

共和国

千シンガ
ポールドル

10,000

当社関係会社

への融資

100

役員の兼任4人

その他99社

 (注)1 議決権の所有割合の( )内は、間接所有割合で内数であります。

   2 日本道路㈱は、有価証券報告書を提出している会社であります。

   3 ※ 特定子会社であります。

 

(2)持分法適用関連会社

(2024年3月31日現在)

 

名称

住所

資本金
又は出資金

(百万円)

主要な事業

の内容

議決権の
所有割合

(%)

関係内容

東京コンクリート㈱

東京都江東区

150

建設事業

33.3

役員の兼任2人

㈱幕張テクノガーデン

千葉市美浜区

1,500

開発事業

26.7

役員の兼任1人

プロパティデータバンク㈱

東京都港区

332

不動産関連情報の運用管理

24.1

その他7社

 (注) プロパティデータバンク㈱は、有価証券報告書を提出している会社であります。

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

(2024年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

当社建設事業

9,394

(356)

当社投資開発事業

107

(2)

道路舗装事業

2,860

(548)

その他

8,154

(1,482)

合計

20,515

(2,388)

  (注) 従業員数は、( )内に内書きで記載した期末の契約社員数を含む合計人数を記載しております。

    なお、契約社員数には再雇用社員数、嘱託社員数を含めて記載しております。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

(2024年3月31日現在)

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

10,949

43.6

15.9

9,821

(459)

 

セグメントの名称

従業員数(人)

当社建設事業

9,394

(356)

当社投資開発事業

107

(2)

その他

1,448

(101)

合計

10,949

(459)

 (注)1 従業員数は、( )内に内書きで記載した期末の契約社員数を含む合計人数を記載しております。

     なお、契約社員数には再雇用社員数、嘱託社員数を含めて記載しております。

      2 平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与は、契約社員459人を除く従業員10,490人の状況を記載しており

          ます。

      3 平均年間給与は、期末手当及び諸手当を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

 特記事項はありません。

 

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ①提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1、2)

男性労働者の育児休業取得率(%)(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1、4)

全労働者

うち

正規雇用労働者

うち

有期労働者

3.9

81.0

64.9

64.5

69.1

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 「管理職に占める女性労働者の割合」については、男女別の雇用人数などによるものであり、適用する登用要件に男女の差異はありません。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

4 「労働者の男女の賃金の差異」については、職種や等級別の人員構成などによるものであり、適用する給与体系に男女の差異はありません。

 

 ②連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める

女性労働者の割合(%)(注1、2)

男性労働者の

育児休業取得率

(%)(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1、4)

全労働者

うち

正規雇用労働者

うち

有期労働者

日本道路㈱

0.7

41.0

53.5

52.6

58.3

㈱シミズ・ビルライフケア

2.5

52.2

75.2

75.9

62.0

日本ファブテック㈱

6.5

77.0

76.5

76.6

㈱ミルックス

66.6

70.0

57.2

清水総合開発㈱

3.8

75.1

74.0

93.8

㈱ピーディーシステム

15.6

72.9

72.4

61.6

丸彦渡辺建設㈱

5.6

20.0

79.5

79.8

52.6

第一設備工業㈱

77.9

74.7

74.0

㈱エスシー・マシーナリ

13.0

33.3

㈱トータルオフィスパートナー

42.5

日本建設㈱

1.4

㈱ダイヤビルサービス

11.5

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 「管理職に占める女性労働者の割合」については、男女別の雇用人数などによるものであり、適用する登用要件に男女の差異はありません。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

4 「労働者の男女の賃金の差異」については、職種や等級別の人員構成などによるものであり、適用する給与体系に男女の差異はありません。

 

 

第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) シミズグループの中長期的な経営方針

当社は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により、社会の期待を超える価値を創造し、持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めております。

当社は、2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」を定めるとともに、その実現に向けて、中期経営計画を策定し、実行しております。2023年度をもって、「中期経営計画〈2019‐2023〉」の計画期間が終了しましたので、その振り返りと当社を取り巻く環境認識に基づき、計画期間を3年とする「中期経営計画〈2024‐2026〉」を2024年5月に策定しました。

 

「SHIMZ VISION 2030」

■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』

建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を通じて、時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し、人々が豊かさと幸福を実感できる、持続可能な未来社会の実現に貢献します。

 

■シミズグループが社会に提供する価値

イノベーションを通じた価値の提供により、SDGsの達成に貢献します。

①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現

地震や巨大台風、豪雨などの自然災害リスクが高まる中、生活と事業を災害から守ることが求められております。強靭な建物・インフラの構築を通じて、安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していきます。

・強靭な社会インフラの構築

・建物・インフラの長寿命化

・防災・減災技術の普及

・ecoBCP※2の普及

※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある

※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)対策を両立する施設・まちづくり

 

②健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現

高齢化や人口減少、都市化などの急速な社会変化が進む中、誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められております。人に優しい施設やまちづくりを通じて、健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していきます。

・ICTを活用したまちづくり

・ユニバーサルデザインの普及

・Well-beingの提供

・人類の活躍フィールドの拡大(海洋、宇宙へ)

※ インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる

 

③地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現

地球温暖化や森林破壊、海洋汚染などが深刻化する中、次世代に豊かな地球を残すことが求められております。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて、地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に貢献していきます。

・再生可能エネルギーの普及

 

 

・省エネ・創エネ、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進

・事業活動におけるCO排出量削減

・自然環境と生物多様性の保全

※ サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な

 

■ビジョンの達成に向けて

3つのイノベーションの融合により、新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパニーを目指します。

①事業構造のイノベーション

ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速、及び、グループ経営力の向上

 

②技術のイノベーション

建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術の開発

 

③人財のイノベーション

多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積

 

■目指す収益構造

スマート イノベーション カンパニーへの進化により、2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指します。

連結売上利益の構成は、事業別では、建設65%、非建設35%、地域別では、国内75%、海外25%を想定しております。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

 

「中期経営計画〈2019‐2023〉」の総括

中期経営計画〈2019‐2023〉の最終年度である2023年度の業績について、売上高は大型プロジェクトの竣工及びM&A等の進展により、公表目標を上回りました。一方、コロナ禍及び地政学的リスクの顕在化並びに資材・労務価格の上昇などの環境変化への対応の遅れに加え、国内外の高難度な超大型プロジェクトにおける工程逼迫、工事原価の増大、品質不具合事象等の影響により、売上利益や経常利益は目標未達となりました。

非財務KPIについては、超大型プロジェクトを中心に生産性向上の難しさを経験した一方で、CO排出量は目標を大幅に上回る削減を果たし、脱酸素社会の実現に向けた取組みを進展させました。また、働きがい指標については、柔軟で多様な働き方が進み、働きやすさが向上したことに加え、1on1ミーティングの職場定着や健康経営の推進等によって、職場の信頼関係及び心身の健康に関するスコアが大きく改善しました。しかしながら、繁忙等により働きがい指標の向上に課題が残りました。

 

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■投資計画の実施状況

当社グループは、前中期経営計画〈2019‐2023〉を、長期ビジョン達成のための新たな収益基盤確立に向けた先行投資期間と位置づけ、投資環境を精査しながら5年間で5,240億円の投資を実施しました。今後これらの投資から得られる短期的又は中長期的な成果を、事業活動や更なる持続的成長に向けた投資に活用します。

 

①生産性向上・研究開発投資

生産性向上・研究開発投資については、実績は460億円となりました。建物高さ300メートル超の超高層建築物をはじめ、超大型・高難度プロジェクトへの挑戦・経験を通じて獲得した対応力・技術は、高い技術競争力と高度なお客様ニーズの実現を可能にしました。また、2020年策定の中期デジタル戦略「Shimzデジタルゼネコン」のコンセプトに基づき、「ものづくりをデジタルで」、「デジタルな空間・サービスを提供」、「ものづくりを支えるデジタル」を着実に進めました。こうした取組みが高く評価され、当社は、経済産業省、東京証券取引所及び(独)情報処理推進機構が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に2021~2023年度の3年連続で選定されました。

 

②不動産開発事業

不動産開発事業では、国内外で3,280億円の新規投資を行い、国内外のオフィス、生産・物流施設、ホテル、集合住宅等、アセットの充実を図る一方で、私募REIT「清水建設プライベートリート投資法人」を設立し、開発から保有、売却、再投資のサイクルを確立するとともに、グループ企業がAM・PM業務を受託することで、当社グループのバリューチェーンを拡充する不動産循環型ビジネスモデルを構築しました。

また、東京都江東区豊洲に、オフィスビルとホテル、バスターミナル等で構成する複合施設「ミチノテラス豊洲」を整備しました。ここをスマートシティ推進の拠点と位置付け、国土交通省及び東京都が各々推進する豊洲スマートシティプロジェクトに参画するとともに、全国各地で未来の街づくりを研究する自治体、研究機関、企業等との協働を拡充し、事業機会の探究を図っております。

 

③インフラ・再生可能エネルギー・新規事業他

インフラ・再生可能エネルギー・新規事業関連では、810億円の投資を実施しました。再生可能エネルギー分野においては、洋上風力発電施設建設の受注トップシェア獲得に向けた、世界最大級の搭載能力及びクレーン能力を備えた自航式SEP船「BLUE WIND」を建造しました。初稼働となった富山県入善町沖の洋上風力発電所に加え、北海道石狩湾新港洋上風力発電所の国内プロジェクトを無事に竣工するなど、着実に実績を積んでおります。現在は、台湾の洋上風力発電所プロジェクトにて稼働するなど、その活躍の場をグローバルに広げており、収益拡大・安定化に寄与しております。

また、日本国内で太陽光・バイオマス・水力発電所のグリーンエネルギー開発を進め、脱炭素社会の実現へ向けた取組みを推進しています。

 

④イノベーション・人財関連

イノベーション・人財関連では、690億円の投資を実施しました。代表的なものに、イノベーションと人財育成の拠点「温故創新の森 NOVARE」の整備があります。「温故創新」とは、ものづくりの原点に立ち返る「温故」と、進取の精神を育む「創新」を実践するという意味が込められており、「森」はそれが自律的に循環するエコシステムを意味しております。このコンセプトのもと、同施設にて、「SHIMZ VISION 2030」に掲げる事業構造・技術・人財の3つのイノベーションを積極的に推進するとともに、それらを融合させるべく同施設を社内外の交流の場とすることで、オープンイノベーションの実践を目指してまいります。

 

 

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■非財務KPIの達成状況

前中期経営計画〈2019‐2023〉では、基本方針で「ESG経営の推進」を掲げ、「持続可能な地球環境への貢献」、人権尊重の徹底やサプライチェーンを含む労働環境の整備、地域社会との共生など「すべてのステークホルダーとの共生」、「コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化」を図るべく、非財務KPIにおいてE・S・Gに生産性を加えた4つの指標を設定しました。

4指標のうち環境(E)とガバナンス(G)については目標を達成しました。生産性向上と社会(S)については、生産性向上に寄与する技術開発や働きやすさの向上に寄与する人事制度・労働環境面の整備の着実な進展を図った一方で、超高層・高難度工事のマネジメントの難しさや繁忙状況の影響を受け、目標未達となりました。これらの経験を活かし、受注管理の高度化や人事・組織制度を含む生産体制改革を実施していきます。

 

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■環境認識をふまえた中期経営計画〈2024‐2026〉への課題

社内環境(当社グループの強み、中期経営計画〈2019‐2023〉の成果・継続課題)及び外部環境をふまえ、中期経営計画〈2024‐2026〉にて取り組むべき経営課題を3つ特定しました。

・戦略実行力の向上を目指した経営基盤強化

・収益力の向上と技術・品質確保に向けた事業戦略・グローバル展開の着実な実行

・強みと先行投資成果の活用、多様化するお客様・社会の本質的ニーズの実現

 

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「中期経営計画〈2024‐2026〉」の策定

 

■位置付け及び基本方針

社是「論語と算盤」及び経営理念を体現し、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」で示した目指す姿を実現するための実行計画として中期経営計画〈2024‐2026〉を位置付けるとともに、役員・従業員一人ひとりが新たなマインドセット「超建設」を共有し、本中期経営計画を実践することとしました。

中期経営計画〈2024‐2026〉の基本方針は、前中期経営計画〈2019‐2023〉の振返りにより浮き彫りとなった諸課題をふまえ、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」としました。この基本方針及びそれに基づく事業展開は、「超建設」のマインドセットのもと、レジリエント・インクルーシブ・サステナブルな社会の実現に象徴される「お客様・社会への提供価値」を常に念頭において実践してまいります。

※超建設:当社グループにおいて大切にしてきた価値を基礎とし、既存の事業や組織の枠を超えて、お客様や社会の本質的なニーズや課題を積極的に探究しつつ、建設をはじめとするあらゆる事業を通じて、お客様や社会に新しい価値を提供し、その結果、当社グループも共に成長していくという考え方

 

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■経営基盤の強化

中期経営計画〈2024‐2026〉を構成する第一の柱として「経営基盤の強化」を挙げています。経営基盤のコアである人財と組織力の成長と、当社グループ内の諸機能の連携を強化することによりサステナビリティ経営の進化を図ることを通じ、戦略実行力の向上を目指します。

 

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①人財と組織力の成長

当社グループは、人財の成長を支援する仕組みを整備することによって「挑戦し共創する多様な人財」を育成し、そうした人財が経営戦略・事業戦略の実現に貢献するとともに、経営が更なる人財の成長機会・基盤を提供することで、従業員の自己実現と自律的なキャリア形成を可能にします。それらが好循環の原動力となり、経営基盤のコアである「人財の力・組織カルチャー・マネジメント力」を強化することで、経営戦略・事業戦略の実現と、人財・従業員の自己実現・自律的なキャリア形成を推進していきます。

 

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②機能連携の強化によるサステナビリティ経営の進化

前中期経営計画〈2019‐2023〉では、基本方針にESG経営の推進を掲げ、事業活動を通して企業の社会的責任を果たすことを主眼としていましたが、本中期経営計画〈2024‐2026〉では更に前進し、企業の社会的責任と事業機会の探究を両立しながら環境・社会・経済の全てで持続可能性を実現するサステナビリティ経営を体現します。これに向けて、計画期間で重要視する機能としてマーケティング、技術開発・知的財産、デジタル、グローバル化、サプライチェーン、グループ経営の6つを特定し、全社横断でそれらの連携を強めて戦略実行力を強化することにより、企業の社会的責任と事業機会探究の両面でサステナビリティ経営の進化を目指します。

 

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■非財務KPI

中期経営計画〈2024‐2026〉では、経営基盤の強化で掲げた「人財と組織力の成長」及び「機能連携の強化によるサステナビリティの進化」をふまえ、従業員のエンゲージメント・多様性・専門性に加え、ESGの観点で選定した合計9つの指標を設定し、PDCAサイクルによるモニタリングを実施します。

 

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■事業戦略

中期経営計画〈2024‐2026〉における事業戦略では、各事業セグメントの成長段階と位置付けの整理に基づき、各事業に応じた戦略の方向性を策定し、事業ポートフォリオの充実を図ってまいります。

 

①更なる収益力向上を目指す事業:建設事業(建築・土木)

当社グループの建設事業は、「高収益な事業体質への転換」及び「ものづくりの魅力を追求できる生産体制の再構築」の2つの方向性を目指して重点施策を構成し、技術・品質の追求と収益力向上に取り組みます。同時に、建設業界が共通に抱える課題にも挑戦を続け、持続可能な建設業の実現を目指します。

また、社会ニーズに照らし、建築・土木事業における今後の有望マーケットとしてリニューアル、環境、防災・減災、原子力発電関連、伝統・最先端の木質建築、スマートシティ、国土強靭化、インフラ更新、再生可能エネルギー関連施設等を見定め、着実に対応力強化を図っていきます。

 

 

②収益拡大と安定化を目指す事業:不動産開発事業、エンジニアリング事業

両事業は事業規模拡大のフェーズにあり、成長と同時に収益の安定化を目指し、技術・ノウハウの蓄積と深化による成長軌道の維持及び発展領域への挑戦に努めます。

不動産開発事業では取組みアセットの多様化、既存ビルのバリューアップ事業、アイマーク、S・LOGI、VIEQU等のグループ不動産ブランド価値の向上、グループ内連携による不動産バリューチェーン拡大等に注力してまいります。

エンジニアリング事業では、再生可能エネルギー・GX、先端・戦略製品の生産施設、DX、環境浄化等の成長分野における受注拡大に注力するとともに、洋上風力のトップランナーとして、発電施設EPC事業とSEP船運用事業で収益安定化・受注拡大を目指します。

 

③スケール化を目指す事業:グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業

これらの事業が手掛ける市場は、今後サステナビリティの観点で拡大・多様化が期待されることから、成長ドライブ加速のための投資を継続いたします。

グリーンエネルギー開発事業では、再エネの電源開発と電力小売、そしてHydro Q-BiC等の水素活用技術の開発・実装に注力してまいります。

建物ライフサイクル事業では、建物のライフサイクルを通じ、当社グループ全体で一貫したサービス提供と、DX、GXニーズに対応した付加価値の向上を図り、お客様の大切な不動産の価値を高め、長寿命化を実現するソリューションパートナーを目指します。

 

④ビジネスモデルの確立を目指す事業:フロンティア事業

フロンティア領域として、宇宙開発、海洋開発、自然共生の3分野で、それぞれ技術開発と事業モデルの確立・収益化を目指し、成長投資を継続します。

宇宙開発においては、小型ロケット打上げ事業をはじめとした宇宙輸送関連事業の収益化、高精度衛星測位サービス QuartetS(カルテットエス)の事業化及び月資源利用・月面構造物建設等の研究開発を推進します。

海洋開発では、浮体構造物やその係留に関する設計・施工技術の確立を進めるとともに、浮体式建築の市場創出に向けた活動を推進します。

自然共生については、北海道の大規模ハウスによるイチゴ栽培をはじめとした地域農業の再生・地方創生への貢献に努めます。

 

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■グローバル展開

海外拠点の経営自立化を重点的に推進し、エリアごとの事業機会・リスク・収益性を見究め、進出国に根差した持続的・安定的な事業展開を図る中で収益力強化を目指すとともに、拠点経営を支える人財、ガバナンス、国内外の連携及びローカルパートナーとの連携促進・M&Aを含むグローバルなプラットフォームを進化させ、東アジア・東南アジア、西南アジア・アフリカ、北米の主要エリアで、更なる飛躍を目指します。

 

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■業績目標及び財務KPI

経営基盤強化と事業戦略・グローバル展開の着実な取組みにより、収益力向上と持続的成長に向けた堅固な足場を再構築します。

 

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■キャッシュアロケーション

3年間で稼得する営業キャッシュフローに加え、賃貸用不動産や政策保有株式の着実な売却を通して得たキャッシュを、持続的成長に向けた投資と、積極的・継続的な株主還元に振り向け、更なる企業価値の向上に努めてまいります。

 

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■資本コストや株価を意識した経営の実現

資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、中期経営計画〈2024‐2026〉に定めた事業戦略、成長投資、資本政策、株主還元などを着実に実行することにより、株主資本コストを上回る収益力の確保・維持に加え、持続的成長期待の創出を推進することで、企業価値向上とPBRの早期改善を目指してまいります。

 

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「中期経営計画〈2024‐2026〉」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/about/strategy/index.html#sec4

 

 

政策保有株式に関する方針・縮減状況

①政策保有株式に関する方針

当社は、営業政策上の必要性がある場合、主に「取引先との信頼関係の維持・強化」の目的で、政策保有株式として、取引先の株式を保有します。主要な政策保有株式については、取締役会が保有によって得られる当社の利益と取得額、株価変動リスク等を総合的に勘案して取得の可否を判断しています。保有株式については、毎年、個別銘柄毎に、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、取締役会にて、保有の必要性を検証しており、検証の結果、営業上の保有意義が希薄化した株式については、取引先との信頼関係を確認しながら、適宜売却をしております。

なお、当社は、資本の有効活用を図るため、2027年3月末までに政策保有株式の残高を連結純資産の20%以下とすることを目標に、取引先との対話を重ね、政策保有株式の縮減を積極的に進めております。

 

②政策保有株式の縮減状況

2023年度に売却した上場株式の銘柄数は16銘柄(一部売却を含む)、売却額は621億円となり、2018年度から2023年度までに売却した上場株式の銘柄数は67銘柄(一部売却を含む)、売却額は1,500億円となりました。その結果、上場株式の銘柄数は、2018年3月末時点の187銘柄から、2024年3月末時点では138銘柄へと減少しております。

2024年3月末時点における政策保有株式残高の連結純資産に対する割合は、保有銘柄の株価上昇が影響し、2023年3月末の30.6%から34.8%へ上昇しておりますが、目標達成に向けて今後、縮減を加速してまいります。

 

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2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社は「論語と算盤」を社是とし、その考え方を基に、経営理念「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により、社会の期待を超える価値を創造し、持続可能な未来づくりに貢献する」を定め、サステナビリティを強く意識し、事業活動を行っております。

2024年5月に策定された「中期経営計画〈2024‐2026〉」では、企業の社会的責任と事業機会の探究を両立し、環境・社会・経済の全てにおいて持続可能性を実現するサステナビリティ経営の推進を掲げています。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

①「中期経営計画〈2019‐2023〉」

前中期経営計画〈2019‐2023〉では、基本方針で「ESG経営の推進」を掲げ、「持続可能な地球環境への貢献」、人権尊重の徹底やサプライチェーンを含む労働環境の整備、地域社会との共生など「すべてのステークホルダーとの共生」、「コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化」を図ってきました。

社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、当社グループのESGに関する方針と重点施策並びにESGに関する情報開示(TCFD提言に基づく情報開示など)の審議・決定を行いました。なお、気候変動や人権等に関わるリスク情報などの重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会に報告を行い、監督する体制を構築してきました。

サステナビリティ委員会の下部組織として、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)のテーマごとに部会を設置し、関連する機能別部門・部署に対して指示又は報告を受ける体制を整えておりました。併せて、気候変動や人権等に関わるリスク情報については、社長を委員長とする「リスク管理委員会」に共有するとともに、取締役会に適宜報告を行い、監督する体制を構築していました。

 

<サステナビリティ推進に関するガバナンス体制図(2023年度)>

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2023年度はサステナビリティ委員会を6回開催し、18件の議題について審議・報告を行いました。また、重要事項となる6件について、サステナビリティ委員会から取締役会に報告を行いました。

 

 

②「中期経営計画〈2024‐2026〉」

中期経営計画〈2024‐2026〉では、基本方針に「持続的成長に向けた経営基盤の強化」を掲げ、機能連携の強化によるサステナビリティ経営の進化を図り、戦略実行力を向上させます。

中期経営計画〈2024‐2026〉の内容及び2023年度の実績をふまえ、サステナビリティ推進に関するガバナンス体制を変更いたします。

 

<サステナビリティ推進に関するガバナンス体制図(2024年度)>

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当社はこれまで「ESG経営」を推進してきましたが、今後は企業の社会的責任と事業機会の探究を両立した「サステナビリティ経営」を推進していきます。

ガバナンスは、サステナビリティ委員会全体に関わるインフラの役割を担うことから、サステナビリティ推進における「ガバナンス部会」の位置付けを見直しました。また、社会部会のテーマに「労働環境改善」を追加するとともに、関連委員会である「健康経営推進委員会」及び「人権啓発推進委員会」を社会部会に加えました。

 

(2)マテリアリティの特定

当社は、SDGsをはじめとする様々な社会課題や当社の社是、経営理念、長期ビジョン等を勘案し、「社会への影響度」と「自社にとっての影響度」の2つの側面から重要度を検討のうえマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティを強く意識した事業活動を推進しております。なお、最新の社会動向をふまえて、マテリアリティの見直しを行いました。

 

<当社のマテリアリティ(7つのカテゴリーに分類して整理)>

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「マテリアリティ」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/csr/materiality/

 

(3)環境に関する取組み

2021年6月に策定したグループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」では、当社グループが目指す持続可能な社会を「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」と定めています。2050年までに自社活動が環境に与える負の影響をゼロにするだけでなく、お客様や社会にプラスの環境価値を提供し、SDGsが目指す持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

「SHIMZ Beyond Zero 2050」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/beyondzero/

 

①気候変動

当社グループは、気候変動による事業への影響を重要な経営課題と捉え、サステナビリティ経営の観点からも、気候関連情報の開示を重視しています。2019年10月には、TCFD提言への賛同を表明し、「TCFDコンソーシアム」に参画するとともに、2020年から同提言に沿った気候関連の情報を開示しております。

 

a.ガバナンス

サステナビリティ委員会において、気候関連のリスクと機会の特定と評価の結果を審議するとともに、CO₂排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション 2030‐2050」等の達成度を管理し、重要事項は取締役会に報告され、監督する体制となっております。また、本委員会で決定されたシミズグループの環境問題に関する重要事項は、本委員会の下部組織である環境部会を通じて、事業部門(支店を含む)及びグループ会社に伝達され、主要サプライヤーも含めた環境に関するガバナンス体系を構築しております。

 

b.戦略

当社グループの事業に影響を与える気候関連のリスクと機会は、脱炭素社会の構築に必要な政策や規制の強化及び市場の変化等の「移行」に関するものと、地球温暖化による急性的・慢性的な「物理的変化」が考えられます。また、「2050年までにカーボンニュートラル達成」との日本政府の方針が示され、ビジネスモデルの変革や産業構造の転換が求められており、既に市場や社会環境の変化も生じております。

なお、「移行」と「物理的変化」に関するリスクと機会を検討するにあたり、以下のシナリオを採用しております。

 

・移行シナリオ :国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ(SDS)

 

・物理的シナリオ:国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4℃を越えるシナリオ(RCP8.5)

 

また、2024年6月に公表したTNFD提言に基づく自然関連財務情報開示をふまえて、気候関連の機会とリスクの要因と自然関連の影響との関連性についても検討を行いました。その結果、気候関連の機会と捉えていた要因でも、自然関連の側面では、リスクとなり得ることがわかりました。今後は、気候関連と自然関連の両面から、それぞれのリスクの軽減、また機会の最大化に取り組んでいきます。

 

 

<気候関連の主な機会とリスクのうち、当社グループの事業に与える影響度が「大」となる

主な要因と対応>

 

主な要因

影響時期

当社の主な対応

自然関連の

リスク

省エネルギービルの

ニーズ拡大

中期

・ZEBの設計施工を推進

再生可能エネルギー

のニーズ拡大

短期~中期

・再生可能エネルギー事業を推進

・水素エネルギー利用システムを

 開発・実用化

再生可能エネルギー

事業と生態系保護の

トレードオフ

気候変動による市場

の変化

短期~長期

・BCP対応の提案実施

・非建設分野における新たな事業

 の創出

国土強靭化政策

短期~中期

・インフラ整備事業の受注活動を

 強化

夏季の平均気温上昇

中期

・ロボット、ICT、AI等を活

 用し、現場の省人化と生産性の

 向上を推進

・働き方改革や熱中症対策など、

 労働環境を改善

植栽の生育不良、

植栽適期の縮小

※ 短期:3年以内、中期:3年超~10年以内、長期:10年超と設定

 

c.リスク管理

当社グループは、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」のもと、気候変動をはじめとする環境に関連する事業リスクの最小化と、機会の最大化を目指しております。

サステナビリティ委員会において、気候変動への対応に関する日本と世界の動向等が報告され、気候関連のリスク管理についても審議しております。また、本委員会では、地球温暖化に対するリスク管理として、事業による温室効果ガス(CO₂)の排出量の削減目標を設定し、目標を達成するための具体的な施策(建設作業所における使用エネルギーの軽油から電力へのシフト、再生可能エネルギー由来電力の使用拡大等)を決定するとともに、温室効果ガス(CO₂)の排出量の定期的監視を実施しております。

これらのリスク管理を通じて、今後、多様化・広域化・激甚化する気候変動に関するリスクや機会に対処していきます。

 

d.指標と目標

当社グループでは、気候関連のリスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO₂)総排出量を指標とし、SBT※1に基づいた中長期の温室効果ガス(CO₂)の削減目標(SBTイニシアティブから認証を取得)を設定しております。さらに、「SHIMZ Beyond Zero 2050」に基づき、2050年度のCO排出量をゼロとする目標を2021年度に設定しました。今後、この目標に基づきSBTの再認証を取得する予定です。

※1 Science Based Targets(科学的根拠に基づく目標)

 世界の平均気温の上昇を「2℃(もしくは1.5℃)未満」に抑えるための、企業の科学的な知見と整合した温室効果ガス(CO)の排出量削減目標

 

 

<温室効果ガス(CO₂)削減目標と実績(2022年度)※2>        (単位:t-CO₂)

対象Scope

基準排出量

排出量実績

目標年排出量

2017年度

2022年度実績

2023年度

2030年度

2050年度

Scope1※3

Scope2※4

275,575

214,709

(△22%)

248,040

(△10%)

184,650

(△33%)

0

(△100%)

(Scope1)

216,710

153,596

(Scope2)

58,865

61,113

Scope3※5

(Category11※6)

3,451,656

4,122,779

(+19%)

2,761,320

(△20%)

0

(△100%)

※2 2023年度の排出量実績は算定中であります。また、目標及び実績に、日本道路㈱の温室効果ガス(CO₂)排出量は含まれておりません。

※3 重機等の燃料使用に伴う排出(直接排出)

※4 購入した電力・熱の使用に伴う排出(電力会社等による間接排出)

※5 サプライチェーンにおけるその他の間接排出

※6 (販売した製品の使用)設計施工ビル運用時のCO₂排出量

「TCFD提言に基づく気候関連の情報開示」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/csr/environment/tcfd/

 

②自然関連課題

当社グループでは、気候変動が事業に与える影響と同様に自然関連の影響を重要な経営課題と捉えています。2023年2月にTNFD提言への賛同を表明し、2024年6月にTNFD提言に基づく自然関連財務情報を開示しました。国内における建設事業、不動産開発事業及びグリーンエネルギー開発事業のうち太陽光発電事業の3事業を情報開示の対象としています。

 

a.ガバナンス

サステナビリティ委員会において、自然関連課題の特定と評価の結果を審議し戦略を立て、自然関連の指標と目標の達成度を管理しています。審議内容は、取締役会に報告・監督する体制となっています。また、本委員会で決定された重要事項は、本委員会の下部組織である環境部会を通じて、事業部門(支店を含む)及びグループ会社に伝達され、主要サプライヤーも含めた環境に関するガバナンス体系を構築しています。

 

b.戦略

情報開示の対象3事業それぞれのバリューチェーンにおける自然への依存及び影響として、「バリューチェーン上流における3事業での木材への依存」及び「建設工事による土地利用の変化に起因する陸域生態系への影響」を特定しました。その結果を基にシナリオ分析し、自然関連のリスクと機会の特定を行い、当社の対応を検討しました。

 

 

<自然関連のシナリオ分析結果>

 

事象

R:リスク

O:機会

影響

時期※1

当社の対応

トレーサビリティや環境認証への要求

囲い込み、価格上昇、数量制約によ

る競争

短期

~中期

・サプライヤーとの関係構築

 (CSR調達アンケート)

・型枠合板への取組み

新技術による優位

性の確保

短期

~中期

・リサイクル、新建材の技術開発

建設資材の入手困難

・不安定化

(災害、資源枯渇)

資材価格が不透明・

不安定、工期遅延

中期

~長期

・顧客とのパートナーシップ早期構

 築、強化

・限られた資機材で要求水準を満たす

 技術力の強化

サプライチェーン

の再構築・強化、

新技術による優位

性の確保

中期

~長期

・サプライヤーとの関係構築

 (CSR調達アンケート)

・リサイクル、新建材の技術開発

土地改変への強い

規制や土地利用の

抜本的な見直し

新規建設需要の

減少

長期

・新たな建設領域への投資

 (「BLUE WIND※2」など)

・土地利用高度化に対応する技術力

 向上

改修更新工事の

増加、自然配慮・

再生事業の実施

長期

・次世代の需要に対応する技術

 (DX-Core※3、Hydro Q-BiC※4など)

・自然関連技術で規制緩和に寄与

 (グリーンインフラ+(PLUS)※5

建設現場での自然

関連規制や監視が

強化

評判リスク、

ブランド毀損

短期

~長期

・独自に自然関連アセスメントを

 実施(自然KY※6

「自然性能※7」の

評価やモニタリングの要求

長引く施工責任、

後施工の増加、

管理負担の増大

短期

~中期

・「自然性能」を査定できる人財、

 組織の構築

「自然性能」を顕現

化し差別化する技術

短期

~中期

・「自然性能」を高めることで不動

 産価値向上へ寄与

総量規制を含む

再資源化への強い

要請

設計段階からの強い

制約

長期

・「新Kanたす※8」による副産物管理

・設計・施工段階から建物解体撤去を

 見据えた4R活動の徹底

解体技術が施工能力

に直結

長期

・「新Kanたす」による副産物管理

・リサイクルルートの開拓、積極採用

※1 短期:3年以内、中期:3年超~10年以内、長期:10年超と設定

※2 洋上風力発電施設の建設工事において世界最大級の搭載能力及びクレーン能力を備えた当社保有の自航式SEP船

※3 建物とデジタルを融合させ各種設備機器同士の連携をローコード(プログラムレス)で可能にすることで新しいサービスを生み出す、建物の次世代デジタルプラットフォーム

※4 再生可能エネルギーの余剰電力を水素に変えて水素吸蔵合金に蓄えたのち、必要に応じて水素を取り出して発電できる建物付帯型水素エネルギー利用システム

※5 自然が持つ機能を賢く活かしながらインフラ整備をするとともに、当社が持つソフトや技術を「+」することで、自然の恵みを地域全体に還元する事業コンセプト

※6 当社が開発した、事業の営業・立地選定段階において、プロジェクト周辺の自然環境情報を基に、当該プロジェクトの自然関連のリスクと機会を事前に把握するツール

※7 自然の状態に目標を定めて実施する工法や対策が、自然に対して良い影響を与える度合い

※8 当社が開発した建設副産物総合管理システム

 

 

「バリューチェーン上流における3事業での木材への依存」については、コンクリート型枠に使用する合板が森林減少に影響を与えていることや、特定の地域に依存していることが分かりました。協力会社に対してアンケート調査を実施し、アンケート結果に基づく勉強会実施等の戦略を立て、取組みを開始しました。

また、「自然KY」を営業段階から実施し早期に課題を把握することで、ミティゲーション・ヒエラルキー(回避、低減、再生、オフセット)の考えに沿った対策を実施し、「リスク管理」による自然関連の重点管理項目を明確化する取組みを開始しました。加えて、効果的な自然再生の機会を発見し、その候補地において事業者に自然再生や創出の提案を行い、劣化した自然の再興に貢献していきます。

 

c.リスク管理

上流段階の原材料調達では、「シミズグループCSR調達ガイドライン」に基づいたアンケート調査を実施することで、状況の把握と働きかけを行っています。特にコンクリート型枠については、個別の取組みを実施していきます。

直接操業段階にあたる施工においては、「自然KY」の取組みにより自然関連リスク及び自然再生の機会を把握し、「優先地域」を特定して個別の対応策等を検討していきます。なお、自然KYによる環境分析実施率は、中期経営計画〈2024‐2026〉における非財務KPIに設定しています。

下流段階にあたる建設施設の運営及び解体については、建設副産物の管理システム「新Kanたす」を軸に、法令遵守と建設副産物のより一層の発生抑制と再資源化に取り組んでいきます。

 

d.指標と目標

自然への依存と影響に関する指標と目標は以下のとおりです。

 

<自然への依存と影響に関する指標と目標>

自然の変化の要因

指標

測定項目

実績

目標

陸・淡水・海洋の

利用の変化

総空間フットプリント

[km2]

工事範囲の面積

工事範囲の集計

陸・淡水・海洋の利用

変化の範囲 [km2]

工事による土地

利用変化範囲の

面積

工事による土地

利用変化範囲の

集計

資源の利用

陸・淡水・海洋から

調達する高リスク天然

一次産品の量 [t]

木材

型枠合板の種別

内訳

2030年、外国産合板

(非認証材)ゼロ

 

「TNFD提言に基づく自然関連財務情報開示」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/csr/environment/tnfd/

 

 

(4)人財育成・社内環境整備に関する取組み

当社グループでは、サステナビリティ経営の実現に向けて人財や社内環境の観点から課題を整理し、マテリアリティに定める「働きがいと魅力あふれる職場づくり」「挑戦し共創する多様な人財の育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、「DE&I」という。)及び「人権の尊重」並びに社是「論語と算盤」を基本とした「倫理意識の涵養」を主要テーマとして取り組んでいます。

 

①ガバナンス及びリスク管理

「働きがいと魅力あふれる職場づくり」「DE&I」及び「人権の尊重」についてはサステナビリティ委員会を、「挑戦し共創する多様な人財の育成」については人財開発委員会を、また「倫理意識の涵養」は企業倫理委員会を、それぞれ所管委員会とし、重要な戦略や方針の審議及び重要施策のモニタリングを実施する体制を構築しています。

また、各主要テーマに関するリスクについては、所管の各委員会において、対応策、再発防止策などの処置を講じています。さらに、当社グループの事業遂行上、重大な脅威となりうる事象については、上記に加えて、社長を委員長とするリスク管理委員会においてモニタリングするとともに、取締役会に報告するリスク管理体制を整えています。

 

②戦略並びに指標と目標

各主要テーマに基づき、以下の人財や社内環境に関する施策を推進しています。

 

a.働きがいと魅力あふれる職場づくり

当社は、個人の行動変容や職場内・組織間の連携強化による生産性の向上を通じて、企業価値(業績)の創出を行うべく、「働きがい」の継続的な向上に取り組んでいます。当社が目指す姿について従業員の理解を深め、ベクトルを合わせるために「働きがいと魅力あふれる職場づくり」に向けたグランドデザインを策定し、1on1ミーティングやパルスサーベイを活用した、対話(コミュニケーション)による意識・行動変革を進めています。

 

<「働きがいと魅力あふれる職場づくり」に向けたグランドデザイン>

0101010_021.png

 

 

2018年から全従業員を対象とした「働きがい意識調査」を毎年実施し、従業員の“働きがい”を定量的に把握しています。

2023年度までに働きがい指標を4.0以上にすることを目標に、さまざまな取組みを行った結果、2023年度の実績は3.71となりました。

※当社従業員に対する「働きがい意識調査」による指標(5段階評価の平均)

<働きがい指標の状況>

 

2023年度目標

2023年度実績

働きがい指標

4.0以上

3.71

 

なお、今後は個人の「働きがい」に加え、職場内・組織間の連携強化にも着目した「エンゲージメントスコア」を新たな管理指標として設定し、2026年度までに4.0の達成という高い目標を継続して掲げることで、全社一体となって組織風土改革に挑戦していきます。

<主な取組み>

・360度フィードバックを活用した、マネジメントに対する多角的なフィードバックの開始(2021年10月~)

・全職場を対象とした月に一度のパルスサーベイの実施とフォロー(2022年5月~)

・役職者約3,500名を対象とした1on1ミーティング研修の実施(2022年10月~)

・働きがい向上に関する取組みの主旨、理念の更なる浸透を目的とした「働き方・働きがい改革推進期間」の実施(2023年10~12月)

 

また、当社は、従業員の健康増進に向けて、全社的な推進体制を整備し、必要な施策を継続的に実行しております。

<主な取組み>

・勤務時間中の喫煙禁止と本社の喫煙所の廃止(2021年10月~)

・多様な相談窓口の設置、各拠点への常勤産業保健スタッフの配置などメンタルヘルスの向上をサポートする体制の強化(2022年4月~)

・職場環境改善に向けたフォローの強化(職場巡回、希望者との面談など)(2022年4月~)

・食事・睡眠の質向上に向けた施策の全社展開(2022年10月~)

 

以上の取組みの結果、当社は、特に優良な健康経営®※を実践している企業を顕彰する健康経営優良法人2024に認定されました。引き続き、一人ひとりの心身の健康、職場の活性化等による健康経営への取組みを推進していきます。

※「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

 

b.挑戦し共創する多様な人財の育成

当社は、デジタル化・グローバル化といったダイナミックな環境変化に迅速に対応し、変化をビジネスチャンスとして企業の持続的成長に繋げるためには、自律性とチャレンジ精神が重要と考え、優秀な人財の確保・育成に向けて、人財管理の仕組みづくりや計画的かつ継続的な人財投資を行っています。加えて、グローバルに通用し、改革を率先するリーダー人財の育成の場を拡充するとともに、チャレンジする機会を創出し、事業家マインドを持った人財の育成と活用を進めています。

 

<主な取組み>

・成長意欲の伸長を促す評価制度の導入(2021年4月~)

・シニア世代の活躍推進にも着目した65歳までの定年延長(2021年4月~)

・全従業員が受講可能な情報系教育コンテンツの配信開始(2021年11月~)

・従業員の企業を支援するコーポレートベンチャリング制度の開始(2022年5月~)

・公募留学制度の開始(2022年5月~)

・公募職務に対して希望者が自ら手を挙げるジョブチャレンジ制度の開始(2022年11月~)

・新入社員向けDX研修の実施(2023年4月~)

・手上げ式研修(公募型ビジネススキル研修)の実施(2023年7月~)

 

2023年には、イノベーションと人財育成の拠点「温故創新の森 NOVARE」を開設しました。当該施設を活用して、多様なパートナーとの共創、建設事業の枠を超えた活動を実践し、レジリエント・インクルーシブ・サステナブルな社会の実現に向け、50年先・100年先を見据えて、当社と社会の発展に貢献できる人財の育成を目指します。

また、デジタルを活用した業務変革や新ビジネス創出を推進する「DXコア人財」の育成をはじめとして、役員・従業員のスキルとマインドを底上げし、デジタル技術とデータを俯瞰的に活かせる人財を増強していきます。

 

<人財関連投資の状況>

〈2019‐2023〉

計画

実績

人財関連投資

200億円

175億円

 

c.DE&I、人権の尊重

当社は、従業員一人ひとりが多様な個性を活かし、能力を最大限発揮できるように、DE&Iの推進や働きやすい職場環境の整備等について、計画的に取組みを進めております。

 

<主な取組み>

・障がいのある従業員の活躍推進と全従業員の意識啓発を目的とした「チャレンジフォーラム」の開催(2018年~)

・人権デュー・ディリジェンスの取組み(2019年~)

・LGBTQ理解促進施策の実施(2019年~)

・改正育児・介護休業法の施行に先駆けた男性版産休制度「パタニティ休業制度」の導入(2021年10月~)

・自身又は配偶者の妊娠がわかった段階で上職者と休業前後の働き方等のすり合わせを行い、対象者が安心して休めることを目的とした「育児とキャリアの面談」の導入(2021年10月~)

・多様な人財確保のための通年採用の実施(2022年4月~)

・社内のジェンダーギャップ解消を目的とした「シン・ダイバーシティ」活動の展開(2022年5月~)

・不妊治療支援金制度の導入(2023年11月~)

 

管理職への登用にあたっては、多様性を尊重し、性別、性的指向・性自認、国籍、障がいの有無、新卒・中途の採用区分等に関係なく、能力や人物を評価したうえで実施しています。

これらの取組みの結果、女性管理職数は、2019年度に設定した目標「2023年度までに2018年度(84名)比50%増」を2021年度に前倒しで達成するなど、着実に増加しております。

今後は障がい者雇用率を新たな管理指標として設定する等、更なるDE&Iの推進に取組み、企業文化を含む、企業変革を確実に進めていきます。

 

<女性従業員の管理職への登用の状況(2024年3月末時点)>

 

人数

(総数に占める比率)

管理職人数

(管理職総数に占める比率)

女性管理職比率

目標値

女性従業員

1,995名

(18.2%)

167名

3.9%)

2026年度  6以上

2030年度 10%以上

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループは、事業活動の遂行において直面し、あるいは事業活動の中で発生し得るさまざまなリスクを認識し、的確な管理を行うことによって、その発生の可能性を低下させるとともに、発生した場合の損失を最小限にとどめることにより、事業の継続的・安定的発展の確保に努めております。中期経営計画〈2024‐2026〉においても「サステナビリティ経営の進化」を掲げ、「リスクヘッジとリスクテイクの徹底」を図っております。

 なお、リスクとは、以下の観点から、当社グループの経営において経営目標の達成を阻害する要因すべてを指します。

・当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性のあるもの

・当社グループ事業の継続を中断・停止させる可能性のあるもの

・当社グループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性のあるもの

 当社は、リスク管理規程に基づき、社長が委員長を務めるリスク管理委員会において、毎年度、全社の「重点リスク管理項目」を定めて各部門の運営計画に反映させており、当該項目には、法令違反リスクや安全・環境・品質に関するリスク等のESG要素も含まれております。同委員会は、本社部門、各事業部門及びグループ会社における機能別のリスク管理状況を定期的(年2回)にモニタリングし、必要に応じて是正・改善措置を指示するとともに、新たなリスクへの対応を図り、その対応状況を取締役会に定期的(年2回)に報告しております。

0101010_022.png

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、次のようなものがあります。ただし、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見しがたいリスクが顕在化し、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、こうしたリスク管理体制のもと、下記に掲げる対応策を適宜実施することにより、リスクの回避又は軽減を図ることで、経営への影響の低減に努めております。

 

(1)主に外部環境の変化に伴うリスク

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

建設市場の縮小リスク

国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や、財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合には、今後の受注動向に影響を及ぼす可能性があります。

 

取締役会で建設事業の受注見通し、案件量を毎月フォローし、執行役員会議・事業部門長会議等において適宜必要な対策を指示しております。

2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」において収益構造の転換を掲げ、中期経営計画〈2024‐2026〉によって各事業に応じた成長戦略を実行しております。

建設資材価格及び労務単価の変動リスク

建設資材価格や労務単価等が、請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し、それを請負金額に反映することが困難な場合には、建設コストの増加につながり、損益が悪化する可能性があります。

 

厳格な受注前審査の実施、見積提出時における業務範囲の明確化等により、リスクの低減に努めております。

工事請負契約の締結にあたっては、契約条件に労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を含めた契約の徹底に努めております。

取引先の信用リスク

発注者、協力会社、共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性があります。

 

取引先に対する与信審査の徹底と継続的なモニタリングを行うとともに、当社グループの債権保全が可能な契約の締結に努めております。

海外事業リスク

海外での事業を展開するうえで、進出国での政治・経済情勢、為替、租税制度や法的規制等に著しい変化が生じた場合や、テロ・戦争・暴動等の発生、資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には、工事の進捗や工事損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

海外事業展開にあたって、事業機会とともにカントリーリスク等も踏まえて地域や国を絞り込み、必要な対策を図っております。

(主な取組み)

・海外大型案件取組み時の審査体制の強化

・契約リスク管理部署の設置

・コンサルの活用等によるテロ対策の実施

・腐敗防止の取組み

投資開発事業リスク

景気の減速による不動産市況の低迷や金融市場の変動など、投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

企業体力に見合ったリスクの範囲内で事業を行うよう毎年度投資計画を策定するとともに、個別案件の取組みにおいては、投資取組基準に基づき、出口戦略(投資の回収計画)も含めて計画的に投資を行っております。

取締役会で投資開発事業の進捗状況、投資残高、事業ポートフォリオ、時価評価を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

長期にわたる事業におけるリスク

PFI事業、再生可能エネルギー事業等の長期にわたる事業において、諸物価や人件費、金利等の上昇、取引先の信用不安など、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

取締役会でPFI事業、再生可能エネルギー事業等の進捗状況を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。

 

投資有価証券の価格変動リスク

投資有価証券の時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

毎年、個別銘柄ごとに、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、保有意義を見直し、取締役会にて、保有の必要性を検証したうえで、保有意義の低下した銘柄は、原則として売却しております。

金利水準・為替相場の変動リスク

金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

金融相場変動リスク管理規程に従い、リスク管理を行っております。

(主な取組み)

・固定金利による資金調達、金利スワップによる金利変動リスクの低減

・為替予約、通貨スワップ、現地通貨による資金調達、外貨持高の調整による為替相場変動リスクの低減

 

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

自然災害・感染症リスク

地震、津波、風水害等の自然災害や、感染症の世界的流行が発生した場合は、当社グループが保有する資産や従業員に直接被害が及び、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

災害規模が大きな場合には、受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

BCP委員会を設置し、BCPの継続的見直しや訓練計画の決定及び実施状況のフォローを行っております。

(主な取組み)

・首都直下地震、南海トラフ地震等の巨大地震を想定した震災訓練の定期的な実施

・風水害発生時の行動基準の策定、風水害に関する従業員向け研修(eラーニング)の実施及び風水害を想定した訓練の実施

・災害時情報共有システムの整備

・非常用電源の確保及び備蓄品の拡充

・データセンターのバックアップ体制の構築

 

サイバーリスク

標的型メールやマルウェアによるウイルス感染、不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合、事業活動や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

デジタル戦略委員会を設置し、情報セキュリティに関する事項を審議し、必要な対策を図っております。

(主な取組み)

・従業員対象の標的型メール訓練の実施

・社外公開サーバーの脆弱性診断

・外部委託によるウイルスの常時監視

・未知のマルウェア対策の実施

法令の新設・改廃等に係るリスク

社会や時代の変化により、新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

事業活動に影響を及ぼす法令の新設・改廃等について適切に対応するため、関連規程・規則を整備し、各種会議体・イントラネット等を用いた社内周知、社内教育・研修(eラーニングを含む)を実施しております。

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

気候変動リスク

脱炭素社会への移行に向けて、建築物の新築時の各種規制の強化や炭素価格付けの導入等がなされた場合、また気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇や気象災害が頻発・激甚化した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

2019年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、2020年から毎年、気候変動に関するリスクと機会を分析・開示するとともに、気候変動への対策を図っております。

(主な取組み)

・気候変動関連のリスクと機会について、取締役会で事業戦略との整合性を確認

・サステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置し、気候変動を含む地球環境問題に関する基本的な方針・施策を審議・決定

・環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」、CO2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」を掲げ、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、活動を推進

・気象災害の頻発・激甚化に対し、グループ会社や協力会社を中心にサプライヤーとの連携を強化

退職給付債務に関わるリスク

年金資産の時価の下落及び割引率など退職給付債務の数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

年金資産運用委員会を設置し、資産運用実績や財政決算シミュレーション等について審議を行い、年金資産運用に関する基本方針並びに政策的資産構成割合の見直し・改定を実施するとともに、委託先の運用機関による運用状況について適切なモニタリングを行い、毎年、取締役会に報告しております。

 

(2)主に業界特性・組織内部に起因するリスク

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

重大事故や契約不適合等のリスク

設計、施工段階における技術・品質面での重大事故・不具合や人身事故、環境事故が発生し、その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり、重大な契約不適合となった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

「安全第一」「人命尊重」「顧客第一」「品質確保」「環境保全」の事業姿勢を社内で共有し、安全と品質への意識向上を図っております。

(主な取組み)

・技術・品質委員会、安全・環境委員会の設置

・品質管理部署の追加設置

・建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の運用、安全衛生管理基本方針の制定、全社安全衛生計画の策定

・QMS(品質マネジメントシステム)の実施、品質方針の策定、CS(顧客満足)推進活動の実施

・EMS(環境マネジメントシステム)の実施、環境基本方針の策定

・事故・不具合事例のフィードバック、全社水平展開、PDCAの実施

個人情報・機密情報漏洩リスク

事業活動において取得した個人情報、機密情報が漏洩した場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

「プライバシー・ポリシー」の制定や個人情報保護規程等の整備、全社個人情報保護管理者の設置により、個人情報の適切な管理を実施するとともに、情報セキュリティリスクに対応するため、各種取組みを実施しております。

(主な取組み)

・「情報セキュリティガイドライン」の適宜見直し

・「情報セキュリティハンドブック」の配布、デジタルサイネージを利用した啓発

・情報セキュリティeラーニング、情報セキュリティ監査の定期的実施

・日本シーサート協議会への加盟とCSIRT体制によるインシデント対応

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

法令違反リスク

当社グループの主な事業分野である建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには安全・環境、労働、ハラスメント関連の法令等、さまざまな法的規制を受けており、当社グループにおいて違法な行為があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

社是「論語と算盤」を拳拳服膺し、グループ全体で倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図っております。

(主な取組み)

・「企業倫理行動規範」の制定

・各種法令等に適切に対応するための関連規程類・社内体制の整備

・企業倫理委員会(委員長:社長)、企業倫理室の設置、内部通報制度(相談連絡先:企業倫理相談室、ハラスメント相談窓口、外部相談窓口、グループ会社相談窓口等)、内部監査体制の整備等、コンプライアンス推進体制の構築

・経営幹部向け企業倫理研修の定期的実施

 (グループ会社幹部含む)

・全従業員へのコンプライアンス研修(eラーニング含む)を毎年実施

・独占禁止法順守プログラムや行動規準等の整備、独占禁止法違反行為に対する再発防止策の継続実施

・社内媒体(社内報・法務ニュース等)を通じた啓発

・グループ会社も当社に準じてこれらの取組みを実施

中長期的な担い手不足リスク

建設業の担い手である技能労働者の高齢化が進んでおり、団塊世代が大量離職するまでに、新規入職者の増加による世代交代が進まない場合、生産体制に支障をきたし、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

官民連携のうえ、担い手の確保・育成、処遇改善、建設業界の魅力向上等に取り組んでおります。

(主な取組み)

・適正な請負代金と工期の確保

・協力会社を通じた技能労働者の賃金水準の向上、社会保険加入促進

・週休二日推進

・協力会社への入職支援、優良技能者の表彰・手当支給、多能工化支援

・技能者訓練施設(清水匠技塾)を活用した、技能者の適応・定着教育の実施

・女性の活躍推進

・建設業の魅力をPRする広報活動

・外国人材の適正な活躍推進

・建設キャリアアップシステムの普及・推進

・省人化工法・建設ロボットの開発・採用、ICTの活用を含む生産性向上の取組み

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

  当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ3.7%増加し2兆55億円となりました。

  利益については、営業利益は246億円の損失(前連結会計年度は546億円の利益)、経常利益は198億円の損失(前連結会計年度は565億円の利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ65.0%減少し171億円となりました

 

  セグメントの業績は、以下のとおりであります。

  なお、当連結会計年度から従来「その他」に含めていた「道路舗装事業」の量的な重要性が増したため、新たに報告セグメントとして区分しております。また、当連結会計年度の前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいております。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。また、報告セグメントの利益は、連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでおりません。なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (セグメント情報等)をご覧ください。)

 

(当社建設事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ1.7%増加し1兆4,629億円となりましたが、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ57.2%減少し207億円となりました。

 

(当社投資開発事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ7.2%減少し826億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ27.7%減少し275億円となりました。

 

(道路舗装事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ3.3%増加し1,605億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ37.5%増加し78億円となりました。

 

(その他)

  当社が営んでいるエンジニアリング事業、LCV事業及び子会社(日本道路㈱を除く)が営んでいる各種事業の売上高は、前連結会計年度に比べ15.4%増加し4,767億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ125.5%増加し279億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については、営業活動により212億円資金が減少し(前連結会計年度は838億円の資金増加)、投資活動により53億円資金が減少し(前連結会計年度は524億円の資金減少)、財務活動により239億円資金を使用した結果(前連結会計年度は656億円の資金増加)、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末に比べ475億円減少し3,392億円となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では、「生産」を定義することが困難であり、また、子会社が営んでいる事業には、「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできません。

  また、当社グループの主な事業である建設事業では、請負形態をとっているので、「販売」という概念には適合しないため、販売実績を示すことはできません。

  このため、「生産、受注及び販売の状況」については、記載可能な項目を「① 経営成績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載しております。

  なお、参考のため当社単体の事業の状況は次のとおりであります。

 a. 受注(契約)高、売上高、及び次期繰越高

期別

種類別

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注(契約)高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期

繰越高

(百万円)

 

第121期

 

 

2022

 

 

2023

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

1,520,616

1,142,688

2,663,305

1,189,563

1,473,741

土木工事

578,965

258,591

837,556

238,542

599,014

2,099,582

1,401,279

3,500,861

1,428,105

2,072,755

開発事業等

93,221

114,608

207,829

129,219

78,610

合計

2,192,803

1,515,887

3,708,691

1,557,325

2,151,365

 

第122期

 

 

2023

 

 

2024

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

1,473,741

1,385,820

2,859,561

1,174,972

1,684,589

土木工事

599,014

335,177

934,191

260,007

674,183

2,072,755

1,720,997

3,793,753

1,434,980

2,358,772

開発事業等

78,610

131,183

209,793

142,928

66,864

合計

2,151,365

1,852,181

4,003,547

1,577,909

2,425,637

 (注) 1 前期以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注(契約)

      高にその増減額を含んでおります。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

    2 開発事業等は、投資開発事業、エンジニアリング事業及びLCV事業等であります。

 

 b. 受注工事高の受注方法別比率

  工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第121期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建築工事

40.7

59.3

100

土木工事

10.4

89.6

100

第122期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建築工事

34.5

65.5

100

土木工事

6.2

93.8

100

 (注) 百分比は請負金額比であります。

 

 

 c. 売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第121期

 

2022

 

 

2023

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

128,231

1,061,331

1,189,563

土木工事

152,081

86,460

238,542

280,313

1,147,792

1,428,105

開発事業等

1,517

127,702

129,219

合計

281,830

1,275,494

1,557,325

第122期

 

2023

 

 

2024

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

108,326

1,066,646

1,174,972

土木工事

151,549

108,458

260,007

259,875

1,175,105

1,434,980

開発事業等

1,542

141,386

142,928

合計

261,418

1,316,491

1,577,909

 (注) 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

 

    第121期

東急㈱

㈱東急レクリエーション

東急歌舞伎町タワー

 

 

大名プロジェクト特定目的会社

福岡大名ガーデンシティ

 

 

シンガポール共和国政府

シンガポール国立がんセンター

 

 

東京都

東京都市計画道路幹線街路環状第5の1号線

 

 

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 萱沼トンネル

 

    第122期

森ビル㈱

虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業に係る

A街区・B-2街区施設建築物等新築建築工事

 

 

勝どき東地区市街地再開発組合

パークタワー勝どきミッド

 

 

名古屋プロパティー特定目的会社

ロジポート名古屋

 

 

環境省

令和2年度中間貯蔵施設(大熊2・4工区)の受入

分別処理・貯蔵工事

 

 

国土交通省

東京外環中央JCT北側A・Hランプシールド工事

 

 d. 次期繰越高(2024年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

建設事業

 

 

 

建築工事

211,501

1,473,088

1,684,589

土木工事

433,279

240,903

674,183

644,780

1,713,992

2,358,772

開発事業等

231

66,633

66,864

合計

645,012

1,780,625

2,425,637

 (注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。

日本橋一丁目中地区市街地再開発組合

日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業C街区新築工事

 

 

野村不動産㈱

(仮称)芝浦一丁目計画 第Ⅰ期(S棟)新築工事

 

 

豊海地区市街地再開発組合

豊海地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事

 

 

フィリピン共和国政府

マニラ地下鉄 CP101工区建設工事

 

 

東日本高速道路㈱

東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 経営成績の分析

  2023年度の日本経済は、社会経済活動の正常化やインバウンド需要の復調等により、景気には緩やかな回復が見られました。一方で、世界的な物価高や各国の金融引き締めに加え、ウクライナ危機の長期化など国際情勢の不安定化が進み、企業活動と国民生活に広く影響を及ぼしました。

  建設業界においては、公共投資の底堅い推移と民間設備投資の持ち直しの動きが見られましたが、供給面では、建設資材・エネルギー価格の高止まりや労務費の上昇等による影響があり、厳しい経営環境が続きました。

  このような状況のもと、当社グループの売上高は、完成工事高及び開発事業等売上高が増加したことにより、前連結会計年度に比べ3.7%増加し2兆55億円となりました。

  利益については、国内・海外の複数の大型建築工事において、工事採算の大幅な悪化に伴い工事損失引当金を計上したことにより、完成工事総利益が減少したことなどから、営業利益は246億円の損失(前連結会計年度は546億円の利益)、経常利益は198億円の損失(前連結会計年度は565億円の利益)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に保有株式の売却に伴う固定資産売却益などを計上した結果、前連結会計年度に比べ65.0%減少し171億円となりました。

 

  セグメントの業績は、以下のとおりであります。

  なお、当連結会計年度から従来「その他」に含めていた「道路舗装事業」の量的な重要性が増したため、新たに報告セグメントとして区分しております。また、当連結会計年度の前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいております。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。また、報告セグメントの利益は、連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでおりません。なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (セグメント情報等)をご覧ください。)

 

(当社建設事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ1.7%増加し1兆4,629億円となりましたが、セグメント利益は、工事採算の低下により前連結会計年度に比べ57.2%減少し207億円となりました。

  なお、セグメント情報の当社建設事業における完成工事総利益に、引当金の繰入額及び取崩額を含めるなどの調整を行った当社個別の完成工事総利益は、前連結会計年度に比べ820億円減少し74億円の損失となりました。

 

(当社投資開発事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ7.2%減少し826億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ27.7%減少し275億円となりました。

 

(道路舗装事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ3.3%増加し1,605億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ37.5%増加し78億円となりました。

 

(その他)

  当社が営んでいるエンジニアリング事業、LCV事業及び子会社(日本道路㈱を除く)が営んでいる各種事業の売上高は、前連結会計年度に比べ15.4%増加し4,767億円となり、セグメント利益は、SEP船による洋上工事の利益が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ125.5%増加し279億円となりました。

 

 

② 財政状態の分析

  当連結会計年度末の資産の部は、受取手形・完成工事未収入金等や株式相場の上昇に伴う保有株式(投資有価証券)の含み益の増加などにより、前連結会計年度末に比べ907億円増加し2兆5,387億円となりました。

  当連結会計年度末の負債の部は、支払手形・工事未払金等は減少しましたが、工事損失引当金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ499億円増加し1兆5,907億円となりました。

  連結有利子負債の残高は6,031億円となり、前連結会計年度末に比べ259億円増加しました。

  当連結会計年度末の純資産の部は、自己株式の取得を実施したものの、保有株式の時価の上昇に伴うその他有価証券評価差額金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ407億円増加し9,480億円となりました。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.2ポイント上昇し35.0%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

  当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については、営業活動により212億円、投資活動により53億円、財務活動により239億円それぞれ資金が減少した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末に比べ475億円減少し3,392億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益335億円を計上しましたが、仕入債務の減少などにより212億円の資金減少となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動によるキャッシュ・フローは、イノベーション拠点の建設に伴う固定資産の取得などにより53億円の資金減少となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払などにより239億円の資金減少となりました。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  当社グループの資金需要の主なものは、建設事業における工事代金の立替金や販売費及び一般管理費などの営業活動に伴う支出、不動産開発事業における賃貸事業用資産の取得などの設備投資に伴う支出であります。これらの資金需要に対し、自己資金に加え、金融機関からの借入金やノンリコース借入金などの有利子負債を活用することにより、必要資金の調達を行う方針であります。

  また、当社グループは、2024年5月に策定した「中期経営計画〈2024‐2026〉」において、経営基盤強化、事業戦略、グローバル展開を推進するとともに、経営数値目標の達成と資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、2024年度から3年間で人財、生産性向上・研究開発、不動産開発、グリーンエネルギー開発、新規事業などに3,600億円の投資を計画しております。これらの資金需要に対しては、事業の着実な推進により営業キャッシュフローを増加させるとともに、賃貸不動産等の売却や政策保有株式の段階的縮減を継続し、創出したキャッシュにより、必要資金の調達を行う方針であります。

  なお、財務体質の健全性を維持するため「中期経営計画〈2024‐2026〉」では、自己資本比率を35%以上、負債資本倍率(D/Eレシオ)を1.0倍以内、また、中長期的(次期中期経営計画期間中)には、自己資本比率40%以上、負債資本倍率(D/Eレシオ)を0.7倍程度とすることを財務上のKPIとして設定しております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末日時点の状況をもとに種々の見積りを行っておりますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なることがあります。

当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(工事契約における収益認識)

当社グループは、工事契約について、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識しており、履行義務の充足に係る進捗度の見積りは、工事原価総額に対する発生原価の割合に基づき算定しております。

収益の認識にあたり、工事原価総額の変動は、履行義務の充足に係る進捗度の算定に影響を与えるため、期末日における工事原価総額を合理的に見積る必要がありますが、工事は一般に長期にわたることから、建設資材単価や労務単価等が請負契約締結後に想定を超えて大幅に上昇する場合など、工事原価総額の見積りには不確実性を伴うため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。

固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しておりますが、市況の変動などにより前提条件に変更があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

  2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」の最終年度である2023年度の実績及び2024年5月に策定した「中期経営計画〈2024‐2026〉」における経営数値目標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 特記事項はありません。

6 【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は199億円であり、うち当社の研究開発費は190億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。

 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。

 また、2023年9月1日から運用を開始したイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」(東京都江東区)内の施設の一つである「NOVARE Lab(ノヴァーレラボ、技術研究所潮見ラボ)」に技術研究所の一部機能を移転し、社内外と連携した研究開発を推進しております。

 これら研究開発の成果として、今年度も日本コンクリート工学会、土木学会、地盤工学会、空気調和・衛生工学会をはじめ、さまざまな学協会からの賞を受賞しております。

 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。

 

(1)脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に資する技術開発

①カーボンネガティブ仕様の環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を現場適用

 バイオ炭(炭化した木質バイオマス)を混和することでコンクリート内部に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を千葉県印西市のグッドマンビジネスパーク ステージ6ビルディング2新築工事に適用しました。バイオ炭に固定されたCO₂量が、その他の材料製造等に起因するCO₂排出量を上回る、カーボンネガティブ仕様の配合を初めて適用し、バイオ炭を利用しない配合と比べて111%のCO₂排出削減を実現しました。また、本技術は㈱日刊工業新聞社主催の「第66回 2023年 十大新製品賞」において、本賞を受賞しました。

 

②カーボンネガティブを実現する脱炭素アスファルト舗装の共同開発に着手

 日本道路㈱と共同で、道路舗装に使用するアスファルト材に炭素を貯留する、脱炭素アスファルト舗装技術「SUSMICS-A」の開発に着手しました。CO₂固定効果のあるバイオ炭をアスファルト材の混合材料として用い、カーボンネガティブ舗装材の実用化を目指し、今後、実証試験を通じて施工性や耐久性を検証していきます。

 

③生産施設の環境性能評価指標「F-CaS」を制定

 生産施設の環境性能をCO₂排出量の観点から数値評価する独自の環境指標「F-CaS(エフキャス:Factory Carbon Score)」を制定しました。独自に開発したシミュレーションツールを用いて各生産設備のエネルギー消費量からCO₂排出量を求め、施設全体の環境性能をFーCaS値としてスコア化します。今後、FーCaS値に基づき、顧客ニーズに対し最適な施設計画の提案を行い、CO₂削減目標の達成やカーボンニュートラルに向けた中長期かつ総合的な支援を行います。

 

④街区熱融通システム「ネツノワ」を開発

 街区全体でエネルギーの有効利用を図る街区熱融通システム「ネツノワ」を開発し、当社施設「温故創新の森 NOVARE」に導入しました。街区内の複数建物の熱源機器を連携させ、総合的なエネルギー効率を踏まえて運転制御を最適化することで、エネルギー消費量とCO₂排出量を削減します。熱源の3割に再生可能エネルギーと未利用エネルギーを導入したケースの試算では、熱源消費エネルギーと熱搬送消費エネルギーの削減量が約20%に達することを確認しました。

 

⑤グリーン水素を活用した臨海副都心の脱炭素化に向けた取組みを推進

 脱炭素化に向けた取組みを推進するため、東京都港湾局、産業技術総合研究所、東京臨海熱供給㈱及び㈱東京テレポートセンターと、臨海副都心の青海地区においてグリーン水素を活用した事業に取り組み、全国初となる水素混焼ボイラーによる地域熱供給や水素と太陽光による電力供給モデルの構築に向けて共同研究を実施します。

 

⑥社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設

 東京大学大学院工学系研究科と、地球資源を考慮したサーキュラーエコノミー(循環経済)に資する物質循環型建造物の構築を研究テーマとする社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設しました。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を抑制するサーキュラーエコノミーの社会実装に貢献していきます。

 

⑦PFAS汚染土壌の浄化試験を米国内で開始

 米国テキサス州で、人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む土壌の浄化実証試験に着手しました。当社が独自に開発してきた土壌洗浄技術の実効性を検証し、処理効率を最大化できる技術の確立に取り組みます。今後、すでに軍用地等でのPFAS土壌汚染が顕在化し、規制面でも先行する米国での技術適用を目指します。将来的には日本国内において、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある施設や、PFASを製造・使用していた事業所等への技術展開を進めていきます。

 

⑧カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携協定を締結

 早稲田大学と当社は「カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携に関する基本協定」を締結しました。産学連携による最先端の技術や知見の活用を通じて、新たな価値の創造と社会問題や産業界の抱える諸問題の解決に導く事を目的とし、研究開発成果の創出と、研究・教育を牽引する人材の交流と育成、起業支援など新事業創出に向けた活動に取り組みます。

 

(2)生産性向上に資する技術

①天井仕上げ工事をアシストする「スカイランナー」、「スカイテーブル」を開発

 ㈱レンタルのニッケンと共同で、建築物の天井仕上げ工事のアシスト機械、電動走行作業台「スカイランナー」と無線操作式資材運搬・揚重機「スカイテーブル」を開発しました。両機を併用することで足場の移設作業が不要となり、作業員一人で天井資材の運搬・揚重・設置を連続的に進めることが可能となります。従来工法と比べ、約20%の作業効率向上が期待できます。

 

②遠隔地から建物の諸検査を実施できるメタバース検査システムを開発

 建築生産の効率化を目的に、遠隔地にいながら建物の諸検査を実施できるメタバース検査システムを開発しました。施工中建物の3次元スキャンをもとに、施工状況をリアルに再現した仮想空間の中に入り、設計図(3次元BIMデータ)との整合を自動計測機能により確認できます。実建物を対象としたシステム検証では、日本建築センターから「実用に供し得る」という評価を得ており、将来的には、このシステムを一般公開し、日本全体の建築生産の効率化に寄与していきます。

 

③ロボットで床版更新工事のマーキング作業を効率化

 東名高速道路所領橋他2橋床版取替工事にデンマーク製の自動マーキング(墨出し)ロボット「タイニーサーベイヤー(Tiny Surveyor)」を導入しました。事前の性能試験により、所定の測量・マーキング精度を確認できる設定を確認し、当該工事にロボット2台を投入することで、橋面のマーキング作業の生産性を約90%向上させました。今後、床版取替工事や空港等の大規模舗装工事に導入し、生産性の向上を図ります。

 

④山岳トンネル工事の遠隔施工管理システム「Shimizu Tunnel Excavation Laser guidance System」を構築

 施工管理業務の省人化・省力化を目的に、㈱演算工房、ニシオティーアンドエム㈱と共同で山岳トンネル工事の遠隔施工管理システム「Shimizu Tunnel Excavation Laser guidance System」を構築しました。コンクリート吹付け機に搭載した3Dスキャナや広角高精度カメラを介して、吹付け面の出来形計測や切羽の性状評価を、遠隔で効率的かつ安全に行えます。当社トンネル工事での実証施工では、吹付け面の出来形確認・調書作成の作業時間を従来の約6分の1に、切羽面の観察・判定を従来の約3分の1に短縮しました。

 

⑤AI・IoTを活用した造成工事の管理システム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発

 AIやIoTを活用して造成工事の施工管理を効率化するシステム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発しました。ダンプトラックに積載した土砂の有無を3Dスキャンによる点群データをもとにAIが判定し、GNSS(位置情報システム)によるダンプトラックの位置情報と併せてクラウド上で統合・分析します。現場内で稼働するダンプトラックの土砂運搬量や各集積場の土量をデジタル上でリアルタイムに一括管理でき、施工管理を遠隔地から少人数で行えます。本システムを福島大熊西地区基盤整備1期工事に適用し、有効性を確認しております。

 

⑥山岳トンネル工事における最適発破自動設計施工システムを開発

 山岳トンネル工事における発破作業の生産性向上を目的に、最適な発破パターンの自動設計施工システムを、古河ロックドリル㈱、㈱演算工房、㈱ジャペックスと共同で開発しました。地山性状のデータを自動計測・解析し、熟練技能者が経験と感覚をもとに行っていた穿孔数や火薬量など最適な発破パターンの設計を自動で行うことで、サイクルタイム・施工コストの大幅な削減が見込めます。当社トンネル工事現場での実証試験では、発破掘削の過不足を抑え、火薬使用量を削減できることを確認しました。

 

⑦シールドマシンの現在位置をARで確認できる「Shimz ARシールド」を開発

 ㈱菱友システムズと共同で、地中を掘進するシールドマシンの現在位置をタブレット端末のAR画面でリアルタイムに確認できるシステム「Shimz ARシールド」を開発しました。工事関係者や地域住民と、掘進イメージを円滑に共有できます。福岡県内の当社シールドトンネル工事現場で行った実証試験では、数㎝程度の誤差でシールドマシンの現在位置を捕捉できることを確認しました。今後、本システムをシールドトンネル工事の標準技術として工事現場に広く展開していきます。

 

(3)ものづくりを支援する技術開発

①建設3Dプリント材料「構造用ラクツム」を建築構造部材の施工に初適用

 3Dプリンティング用のコンクリート材として自社開発した「構造用ラクツム」を、「温故創新の森 NOVARE」における建築構造部材のプリント施工に初適用しました。構造用ラクツムは、3Dプリント材では国内で唯一、建築基準法上の指定建築材料として国土交通大臣の認定を受けているため、その積層造形体を構造部材として適用でき、施工の省力化・省人化に寄与します。今後、適用案件の拡大とプリント施工の更なる効率化に向けた技術開発に注力していきます。

 

②材料噴射型3Dプリンティングで有筋構造部材を高精度に造形

 材料噴射型の3Dプリンティング技術を用いて、鉄筋を内蔵した有筋構造部材を自動造形する技術を開発しました。実証試験では、所要時間2時間程度で、断面寸法510×210mm、高さ1.5mの柱部材を寸法誤差±5mm以下で造形でき、高い精度を確認しました。本技術による造形体は、在来工法による鉄筋コンクリート部材と同等以上の構造的な性能を有し、実用化されれば施工の省人化・省力化が期待できます。今後、造形精度の更なる向上、意匠性の高い複雑形状に対する技術確立を目指すとともに、新設構造物だけでなく既設構造物の補修・補強、応急復旧への適用も視野に技術開発を進めていきます。

 

③トンネル切羽のリアルタイム監視システムを開発

 山岳トンネル工事における安全管理の高度化を目的に、切羽の微細な変状を面的かつリアルタイムに捕捉する「トンネル切羽安全監視システム」を開発しました。切羽掘削面における振動挙動を高速・高精度に計測して可視化することで、従来では捕捉が困難だった切羽崩落の予兆を適時・的確に捉えられるようになり、作業安全性が飛躍的に高まります。当社の山岳トンネル工事現場に試験適用し、システムの有用性を確認しました。今後、本システムに注意報・警報発報機能を組み込み、切羽崩落災害の根絶につなげていきます。

 

④トンネル切羽クラック検知AIシステム「みまもりマスタ」を開発

 山岳トンネル工事現場の安全性向上を目的に、㈱sMedioと共同でトンネル切羽クラックを検知するAI安全支援システム「みまもりマスタ」を開発しました。従来は作業員が目視で発見していたクラックの発生を、画像解析AIがリアルタイムかつ高精度に検知し、切羽崩落の危険性が高い場合に、近傍作業者へアラートを発報して切羽からの退避を促します。実証試験では、従来よりもクラックの検知時間が短縮され、作業者に十分な退避時間を提供できることを確認しました。今後、本システムを当社施工の山岳トンネル工事現場に広く展開していきます。

 

⑤車両搭載型AI監視カメラシステム「カワセミ」を商品化

 建設現場における重機接触災害の根絶を目指し、㈱Lightblue、エヌディーリース・システム㈱と共同開発した建設重機用の車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」を商品化し、エヌディーリース・システム㈱を通じた外部販売を開始しました。画像解析AIを活用して建設重機オペレータの死角に入っている人や車両を瞬時に検知し、アラートを発報します。画像解析AIに組み込んだ骨格推定アルゴリズムにより、さまざまな作業姿勢の人物を高精度で検知できます。

 

⑥ブルドーザーの自律施工に向けた要素機能の実効性を確認

 土木工事の無人化施工の実現に向け、ボッシュエンジニアリング㈱、山﨑建設㈱と共同で、盛土工事におけるブルドーザーの自動運転システムを構築しました。操作者が盛土工事の作業内容を設定すると、AIがセンサーやカメラからの情報をもとに状況を分析・判断し、移動やブレードの上下稼働などの運転制御や、物体・人の検知による緊急停止を設定どおりに自動で行います。実証試験を通じて、運転制御や物体検知、緊急停止など要素機能の実効性を確認しました。今後、ブルドーザーの環境認識機能の高度化を図り、自律施工型ブルドーザーの開発につなげていきます。

 

⑦国内最大・最高性能の陸上風車建設用移動式タワークレーン「S-Movable Towercrane」が完成

 当社が、㈱エスシー・マシーナリ、IHI運搬機械㈱と共同で開発を進めてきた国内最大・最高性能の陸上風車建設用移動式タワークレーン「S-Movable Towercrane」が完成しました。5~6MWクラスの大型陸上風車の建設に対応でき、陸上風力発電施設の施工で不可欠となるクレーンの移設を短期間で行えます。

 

⑧超高層ビル建設現場の高速通信を実現

 KDDI㈱と共同で、超高層ビル建設現場の高速通信環境を簡易に構築する新手法の実証試験を都内の建設現場で行いました。KDDI㈱が提供する衛星通信サービス「Starlink Business」を通信インフラとして活用するもので、建設現場のタワークレーン上部に専用アンテナを設置し、タワークレーンを現場内の電波塔として活用します。実証試験では、タワークレーンの旋回時や悪天候時にも、高さ100mの施工フロアで高速通信環境を安定的に維持できることを確認しました。今後、本手法を国内の超高層ビルの建設現場に広く展開していきます。

 

⑨建設現場のDX実現に向けた協業を開始

 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ㈱、㈱竹中工務店と当社は、建設現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた協業を開始しました。建設現場におけるさまざまな施工管理情報をデジタル化する「施工管理業務のDX」を進めます。DXの実現に向けたソリューションの構築と建設現場への実装・定着化を行うとともに、DXにより得られたデータの利活用により、更なる施工管理業務の高度化と業務プロセスの最適化を目指します。

 

⑩「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を本格化

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と当社は、「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を進めております。当社が保有する金属積層造形技術と、JAXAが保有する宇宙輸送システム技術を組み合わせることで、アルミ合金製液体燃料タンク等の大型構造体を低コストかつ短期間で製造する技術の確立を目指します。今後はこれまでの成果を踏まえ、サブスケール供試体の試作に向けた積層造形装置の整備や、造形プロセスの確認を行い、供試体の試作を通して造形精度や品質安定性などを検証していきます。さらに当社では、地上用途として本技術を建設材料の製造にも活用していきます。

 

(4)設計技術・構工法

①AIによりZEB設計業務を支援するツール「ZEB SEEKER」を開発

 設計業務の効率化・高度化を目的として、AIを活用してZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計業務を支援するツール「ZEB SEEKER」を開発しました。設備機器の能力設計や建物の省エネルギー性能の評価を自動化し、顧客ニーズに適した設計案をAIが探索・提案します。従来は1ヶ月以上を要していた設計者による検討を100倍以上効率化でき、顧客が脱炭素の取組方針や事業計画の方向性を決める計画の初期段階から、顧客ニーズに適した提案が可能となります。

 

②設計初期段階における構造検討業務を支援するシステム「SYMPREST」を開発

 設計業務の高度化と効率化を目的として、設計初期段階における鉄骨造オフィスビルの構造検討業務をAIにより支援する「SYMPREST」を開発し、社内運用を開始しました。検討対象建物の形状・寸法を入力すると、データベースから形状に概ね合致する構造架構が複数抽出され、設計者が選択した案の架構部材3DモデルをAIが作成します。今後は超高層オフィスビルや他の用途・構造形式の架構生成も行い、システムの機能拡充を図ります。

 

③個室ブースの空調を最適化するパーソナル空調システムを開発

 大阪公立大学健康科学イノベーションセンター、㈱総合医科学研究所と共同で、オフィス内の個室ブースの空調を最適化できる「床吹き出し型パーソナル空調システム」を開発しました。在室者は体調や好みに応じて風量や風向きを任意に選択でき、長時間執務しても疲労しにくい快適な執務環境を実現します。実証試験では、在室者の作業エラーの発生率が、一般的な空調システムと比べて30%低減されることを確認しました。新築建物はもとより、床吹出空調方式の既存建物にも簡易に導入できます。

 

④鉄骨造建物の梁部材を合理化する「エコウェブ工法」を開発

 鉄骨造建物の梁部材を合理化する補剛工法「エコウェブ工法」を開発し、第三者認定の建築技術性能証明を取得しました。鉄骨造建物の梁ウェブ(側面部分)端部に、鋼製の板材を取り付けることで、梁の変形性能を維持しながらウェブを薄肉化します。従来工法比で、梁単体の鉄骨量を最大30%縮減でき、コストダウンが図れます。

 

⑤RC造建物の耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発

 RC(鉄筋コンクリート)造建物の耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発し、現在都内で施工中の建設現場に初適用しました。RC造建物の梁端部の主筋を増強し、地震時に損傷が生じやすいヒンジ領域を梁の中央側に移動させることで、柱梁接合部の損傷を防ぎます。震度7相当の負荷をかけても、従来構法と同等の耐力を維持しながら、柱梁接合部の損傷を最小限に抑制できることを確認しました。

 

⑥地震時の杭への負荷を低減する新構法「スリムパイルヘッド構法」を開発

 基礎躯体の必要数量を縮減できる杭頭半剛接合構法「スリムパイルヘッド構法」を開発し、都内の超高層ビルに初適用しました。超高層ビルの場所打ちコンクリート杭頭部と基礎部の固定度を半剛状態にして地震時の杭への負担を低減することで、杭や地中梁の必要数量を減らし、コストダウンや工期短縮を実現します。震度7相当の負荷をかけても期待された性能を維持することを確認しており、今後、超高層案件に本構法の適用を提案していくことで、案件受注の拡大につなげていきます。

 

⑦超高層ビルの環境配慮型解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を開発・実用化

 内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業解体工事に、環境配慮型超高層解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を適用しました。本工法は、ブロック状に切断した躯体を大型クレーンで最上階から吊り降ろし、地上で破砕・分別するブロック解体工法をベースに構築され、他工法と比べて安全性が高く、騒音・粉塵の発生量も少ないため、周辺環境に与える影響を最小化できるメリットがあります。また、鉄骨躯体の切断工程に自社開発した自動プラズマ切断装置「シミズプラズマカッター」を用いることで、CO₂排出削減と作業時間短縮を実現できます。

 

⑧道路橋プレキャストPC床版接合部の継手工法「アローヘッドジョイント」を開発

 道路橋に使用されるプレキャストPC(プレストレストコンクリート)床版接合部の継手工法「アローヘッドジョイント」を開発しました。床版の接合技術として、端部に矢尻状の定着体を設けた機械式定着鉄筋「アローヘッド鉄筋」を用いることにより、耐久性向上と配筋作業の合理化が図れます。本工法で接合したプレキャストPC床版を用いて輪荷重走行試験を行い、高い疲労耐久性を確認しました。また、従来工法と比べて約50%の生産性向上が見込めます。

 

(5)デジタルな空間・サービスを提供する技術開発

①淡海医療センターの医療サービスのDXに着手

 淡海医療センター(滋賀県草津市)において、当社が提案する「DX-Coreスマートホスピタル構想」の具現化に向けたDXの取組みに着手しました。当社が開発した、建物設備と各種アプリケーションを連携・制御できる建物OS「DX-Core」を基盤として、受診予約システムや電子カルテなどの医療系システムデータと、ロボットの統合制御システムや各種設備の制御システム、各種センサー類などのファシリティ系システムデータの連携を進めます。これにより、医療サービスの質と生産性の向上を図り、医療施設利用者の満足度の向上、医療施設の収益改善に寄与していきます。

 

②複数ロボットのエレベータ同乗技術を確立・実装

 施設内で稼働する複数サービスロボットのエレベータ同乗技術を確立し、メブクス豊洲に実装しました。共通のインターフェースを介して複数ロボットを統合制御する「Mobility-Core」と「DX-Core」を連携させ、ロボットとエレベータの運用・運行を統合制御することで、ロボット同士が互いを障害物と認識することなくエレベータに同乗し、ロボットとエレベータの運行効率を合理化できます。今後、メブクス豊洲での実証運用を通じて、本技術の実効性をさらに高めていきます。

 

③まちづくり計画支援サービス「マチミル」を提供

 付加価値の高い、ウォーカブルな人中心のまちづくりを目的に、まちづくり計画支援サービス「マチミル」を提供しました。建物、道路、人流や災害状況などの都市データに基づく分析やさまざまな仮説の迅速な検証をもとに、地域の課題やまちづくり計画の効果を分かりやすく可視化して関係者間の合意形成を促し、地域の防災・省エネルギーや効果的なエリアマネジメントの計画を支援していきます。今後、デジタルを活用して地域の課題解決を目指す自治体やまちづくり組織に対して、本サービスを提供していきます。

 

④バーチャルエコノミーの拡大に向け、産学官協働の研究開発が始動

 産業技術総合研究所、早稲田大学、東京大学、㈱バンダイナムコピクチャーズと共同で、内閣府が運営する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題/バーチャルエコノミー拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」に係る公募に対し、「コミュニケーションを拡張するインターバース技術の研究開発」プロジェクトを提案し、採択されました。本課題では、サイバー空間とフィジカル空間をつなぐインターバースを注力領域として、技術開発やルール・制度の整備により、新たなバーチャルエコノミー圏の創出・拡大を図ります。

 

第3 【設備の状況】

1 【設備投資等の概要】

 当社グループの当連結会計年度の設備投資額は584億円であり、うち当社の設備投資額は410億円であります。

 なお、当社グループでは資産を事業セグメントに配分していないため、セグメント別の記載を省略しております。

 当連結会計年度の設備投資の主なものは、当社及び開発事業を営む子会社における賃貸事業用固定資産の取得や、当社におけるイノベーションセンター(NOVARE)の建設、日本道路㈱における技術研究所及び研修施設等を集約した複合施設の建設、㈱エスシー・マシーナリにおけるレンタル事業用の建設機械の取得であります。

 

 

2 【主要な設備の状況】

 当社グループにおける主要な設備は、次のとおりであります。

(1) 提出会社

(2024年3月31日現在)

 

事業所名

(所在地)

帳簿価額(百万円)

従業員数

(人)

建物・構築物

機械、運搬具及び

工具器具備品

土地

合計

面積(㎡)

金額

本社

(東京都中央区)

14,979

3,377

(244)

262,586

33,053

51,410

704

技術研究所

(東京都江東区)

3,615

1,915

(-)

20,976

4,214

9,745

245

NOVARE

(東京都江東区)

27,641

2,010

(-)

32,233

20,181

49,833

51

建築総本部

(東京都中央区)

1,270

726

(1,875)

10,257

1,931

3,929

1,241

名古屋支店

(名古屋市中区)

2,192

77

(1,630)

101,811

4,278

6,548

772

関西支店

(大阪市中央区)

537

94

(-)

19,735

1,773

2,406

821

九州支店

(福岡市中央区)

627

49

(-)

38,402

4,383

5,060

494

投資開発本部

(東京都中央区)

129,060

969

(86,178)

224,630

125,856

255,886

101

エンジニアリング事業本部

(東京都中央区)

0

37,886

(-)

37,886

253

LCV事業本部

(東京都中央区)

790

8,000

(263,268)

980,913

1,565

10,357

105

 

(2) 国内子会社

(2024年3月31日現在)

 

会社名

事業所名

(所在地)

帳簿価額(百万円)

従業員数

(人)

建物・

構築物

機械、運搬具

及び工具器具

備品

土地

合計

面積(㎡)

金額

日本道路㈱

本社他

(東京都港区他)

11,697

4,153

(564,370)

657,864

17,898

33,749

2,004

日本ファブテック㈱

取手工場他

(茨城県取手市他)

3,118

1,960

(41,096)

416,376

5,699

10,778

625

㈱ミルックス

本店他

(東京都中央区他)

2,140

277

(-)

217,298

8,645

11,064

441

 

(3) 在外子会社

 記載すべき主要な設備はありません。

 (注) 1 帳簿価額に建設仮勘定は含めておりません。

2 提出会社は、資産を事業セグメントに配分していないため、主要な事業所ごとに一括して記載しております。

3 土地の面積の( )内は、賃借中のものを外書きで記載しております。

4 当社グループの設備の内容は、主として研究所、事務所ビル、工場及び工事用船舶等であります。

5 土地、建物のうち賃貸中の主なもの

名称

土地(㎡)

建物(㎡)

投資開発本部

146,065

739,862

6 従業員数は、期末の契約社員数を含む合計人数を記載しております。

3 【設備の新設、除却等の計画】

 当社グループの当連結会計年度後1年間の設備投資計画額は630億円であり、うち当社の設備投資計画額は470億円であります。

 設備投資計画の主なものは、当社及び開発事業を営む子会社における賃貸事業用固定資産の取得、当社のLCV事業における再生可能エネルギー事業用固定資産の取得、日本道路㈱における事務所・製造拠点の拡充更新、㈱エスシー・マシーナリにおけるレンタル事業用の建設機械の取得であります。