当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
1964年の創業時に「ウシオが社員の英知によって成長し、一人ひとりの人生の中になくてはならない生きがいのような存在になっていけたら」との想いのもと「四つの基本方針」を策定しました。
また、創業以来「光」が持つ可能性を信じ、光を「あかり」としてだけではなく、「エネルギー」として利用することで社会課題や世の中の技術革新に貢献することを事業方針としています。
(2)新成長戦略
2030年の目指す姿に向け、2024年5月に新成長戦略「Revive Vision 2030」を発表しました。「Revive」に「大きな変革をもって目指す姿を実現する」という想いを込め策定しました。
新成長戦略では、2024年度から2026年度をPhaseⅠ、2027年度から2030年度をPhaseⅡとしており、係数目標として2026年度にROE8%以上、2030年度にROE12%以上を設定し、達成を目指します。また、目標に向け着実に計画を進めていくための方針として、「経営効率を重要視した成長戦略」を掲げています。具体的な方針は次のとおりです。
① |
成長・開発投資及びリソースを成長分野であるIndustrial Process事業へ集中 |
② |
規模を追わず利益率を追求 |
③ |
成長投資と資本効率を両立 |
これらの方針のもと、新成長戦略の目標を達成するために、より実効性の高い「事業戦略」と「財務戦略」を策定しました。
事業戦略
・ポートフォリオ変革の実行(不採算事業のてこ入れ)
事業ポートフォリオの変革の方向性については、経営資本配分の最適化により、注力事業(領域)へ積極的に投資しつつ、将来性等を鑑みた不採算事業の見極めを進めていきます。また、加重平均資本コスト(WACC)を見据えたハードルレートの設定などにより明確な事業評価を行い、メリハリのある投資計画への見直しを行うとともに、創業からのウシオの文化と強みであるグローバル・ニッチトップの考えのもと、「光」に関わる技術的強みを活かせ、かつ、高い付加価値の提供が可能な領域に経営資本をシフトしていきます。これらのポートフォリオ変革を実行することで、収益性向上の実現を目指します。なお、各セグメントのポートフォリオ変革実行のイメージは以下のとおりです。
・半導体アドバンスドパッケージ事業の成長拡大
新成長戦略では、Industrial Process事業を注力事業と位置づけ、成長投資やリソースを同事業へ集中し、成長拡大を目指します。特に、半導体アドバンスドパッケージに関連する露光装置事業を成長ドライバーと考え、注力していきます。AI進展やIoTの拡大に伴う半導体アドバンスドパッケージのニーズの高まりに対し、露光装置のフルラインアップ化により、同市場におけるリーディングカンパニーを目指します。2023年12月に公表したアプライドマテリアルズ社との業務提携により、新たにデジタルリソグラフィ装置を製品ラインアップへ加えることで、同市場でのシェアを拡大させ、2030年に向け成長を拡大してまいります。
参考:アプライドマテリアルズ社との業務提携後の製品ポートフォリオのイメージ
財務戦略
新成長戦略では、ROE向上の目標を掲げ、その実現に向けた資本最適化の取り組みを行っていきます。財務規律を重視した経営を推進かつ資産効率を改善すること及び有価証券の売却による金融資産の事業資産及び株主還元への振替えを加速することで、ROE目標の達成を目指します。
資本効率改善に向けた取り組みとしては、PhaseⅠでは1株当たり70円の下限配当を設定し、自社株投資を3年間合計で500~600億円実施する予定です。また、PhaseⅡでは機動的な自社株投資等を実施することで、自己資本を2,000億円以下に維持します。
バランスシートについては、成長投資を拡大しつつも、財務規律を重視した経営を推進かつ資産効率の改善を行います。有価証券の売却を通じ、金融資産の事業資産及び株主還元への振替えを加速させます。また、事業拡大により運転資本の増加を計画していますが、各資産回転率のモニタリングを強化するなどのバランスシートマネジメントを行っていきます。
これらの取り組みにより、ROEの向上とともに、PBRの改善・向上を目指します。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く事業環境において、Industrial Process事業では半導体市場が徐々に回復する見込みである一方で、フラットパネルディスプレイ関連市場では需要の底を脱するも低調に推移すると見込んでおり、Visual Imaging事業では中国経済悪化などによる影響の注視が必要な状況となっております。また従来から、今後の主な収益源となる装置事業への収益基盤のシフトや新規事業の立ち上げによる成長ドライバー創出に時間を要しており、固定費削減や生産性向上などの施策を行うも、収益性改善が停滞する状態にありました。これらの課題に対処すべく、2030年のありたい姿(Vision 2030)の実現に向けた2020年度を初年度とする3次にわたる中期経営計画を推し進めてきましたが、その後、半導体を中心とした大きな事業環境の変化により、第2次中期経営計画の達成が難しい見通しとなりました。
一方で、新たな成長可能性も出てきたことから、これらの事業環境を改めて認識し、より実現可能性の高い企業価値向上シナリオとすべく、新経営体制のもと2024年5月に新成長戦略(Revive Vision 2030)を発表し、課題に対する抜本的な改善を進めております。新成長戦略では「経営効率を重視した成長戦略」を方針に掲げ、より実効性の高い事業戦略と財務戦略を策定しました。具体的には、成長分野であるIndustrial Process事業を注力事業と位置づけ成長・開発投資及びリソースを集中させること、規模は追わず利益“率”を追求すること並びに成長投資及び資本効率を両立させることを方針としています。
事業成長のための各施策とともに、ESG経営の強化にも取り組んでまいります。省エネルギー・省資源、廃棄物削減・リサイクル化等、持続的環境負荷低減に積極的に取り組むほか、コーポレートガバナンス、コンプライアンス体制強化による内部統制システムの充実、BCPなどリスク管理体制の整備による安定した事業継続にも引き続き取り組んでまいります。また、新成長戦略に沿った人財戦略を進めてまいります。具体的には、新成長戦略ではIndustrial Process事業を注力事業と位置づけ、リソースを集中させる計画ですが、特に半導体アドバンスドパッケージ市場の急拡大に向けた技術開発や対応への課題があり、これらに対処すべく、リスキリングや人財の拡充を積極的に行ってまいります。加えて、これらの人財戦略を実行する上でグループ全体の人件費コントロールを行ってまいります。これらの取り組みを積極的かつ着実に行っていくことで、あらゆるステークホルダーからの信頼にお応えできるよう努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社は、サステナビリティ経営推進にあたり、2021年度よりESG経営の強化に着手、2022年度より「ESG推進本部」を新設しました。
当社のESG経営は、企業理念を具現化するためのものであり、「人々の幸せと社会の発展を支える」ことを共通の目的としています。社会が抱える問題を解決する「『光』のソリューションカンパニー」になるために、「5つの経営のフォーカス」を設定し、取り組むべき事項について、バランスのとれた運営を推進します。
① ガバナンス
サステナビリティ経営のガバナンスとして、代表取締役社長を議長とし、取締役、執行役員等の経営陣が参画するコーポレート戦略会議の中でESG経営への取り組み内容や方針を決定しています。この方針に従い、ESG推進本部が経営と現場とのアライメント機能として、各事業部・各事業所やグループ各社と連携の上、計画・施策を展開しています。また、各専門委員会や各拠点のサステナブルな取り組みを共有する個別会議を通じて、周知や社内の情報共有を行っています。ESGに関する重大事項については、取締役会への報告がなされます。
② リスク管理
リスク全般に関しては、グループ全体を対象とする全社的リスク管理体制のもと、リスクマネジメントプロセスを導入し、リスク管理委員会が軸となり、PDCAサイクルを回しております。当社グループでは経営理念の実践及び企業価値の向上を阻害する恐れのある事象を「リスク」と認識し、さらに、その中でESGリスクについても特定し、対応を進めています。
リスク管理規程に基づき、具体的なシナリオを想定した上で、影響度と発生頻度の2軸でリスクを定性・定量の両面から年1回評価しています。各事業部・本部及び国内・海外の各グループ会社でアセスメントを実施し、その結果をリスク管理委員会事務局で収集・集計し、回答部署の責任者へのヒアリングも実施します。得られたデータ・情報・ヒアリング結果から重要リスク候補を選定し、リスク管理委員会へ提案し、承認された重要リスクについて取締役会へ報告しています。
リスク管理体制は、代表取締役社長を委員長とし、委員長が事業部長・本部長・部門長・グループ会社のエリア責任者から選出した委員で構成されるリスク管理委員会を設置しており、グローバルなリスク管理体制を構築しています。
リスクが顕在化し、重大な損害の発生が予測される場合は、担当取締役又は執行役員は速やかに取締役会に報告することとしています。
(2)重要なサステナビリティ項目
① 人的資本
当社グループでは、当社が掲げる5つの経営のフォーカスのうち「ビジョンに近付くための人財の質向上」及び「成果を上げやすい職場環境作り」の2項目を人的資本経営の取組の中核に据え、各種戦略を策定しています。
a.ガバナンス
人的資本に関しては、取締役会の監督の下、グループ人事総務戦略部門と関係委員会・部署において協議の上、計画立案・施策推進を行っております。進捗や課題はコーポレート戦略会議にて定期的に報告、議論し、年1回以上は取締役会において報告を行っております。
b.リスク管理
人的資本においては、人財確保や技術・ノウハウ等の継承に関わる「グローバル人財戦略」を重要リスクと定め、グループ人事総務戦略部門で策定された施策、実施計画に対してモニタリングを行っています。施策、実施計画の進捗は、リスク管理委員会にて選定された他の重要リスクとともに、取締役会にて年1回以上報告しています。
c.戦略
<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>
当社グループは、企業理念にある「会社の繁栄と社員一人ひとりの人生の充実を一致させること」の実現に向け、経営方針・事業戦略の実現に向けた人事・労務施策を展開し、企業価値創出を加速させることを目指しています。
そのために、ウシオ電機の社員としてどのようにありたいかを定めた「人事ビジョン」や、ビジョンを実現するための「求める人財像・人財要件」を定義・明文化し、このような人財を育成するために、育成体系を構築し、社員一人ひとりの成長を支援しています。
ⅰ.人財の採用と育成
当社では多様な学術領域の知識を核に、ウシオの強みを理解し、ソリューションに展開できる技術バックグラウンドとビジネスマインドの双方を持った人財の拡充に取り組んでいます。
当社の教育研修では、階層別研修や従来の選抜型人財育成施策「ウシオカレッジ」に加えて、自ら学ぶ意欲を持った人財を支援するための自薦型の「ウシオラーニングプレイス」を導入しています。
また、グローバルな重要ポジションのリーダー人財を育成すべく、GHCC(Global Human Capital Committee)、及び人財育成委員会の2軸で当社グループの将来を担う社員を選抜し、人財育成を実施しています。さらに、2023年度よりグローバルモビリティ課を新設し、グループ間の人事交流、人財の見える化(タレントマッピング)の検討を開始しました。今後タレントマッピングを整備し、2026年3月末までに、統一された人事制度に基づき、事業戦略に沿った人財確保、システム運用を目指します。
ⅱ.ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
D&I推進は「成果を上げやすい職場環境作り」の重要取組課題に位置づけています。
D&I推進の中で、女性の活躍推進のため、有志社員によるD&Iプロジェクトと関係所管部署が連携し、キャリア自律のセミナーや座談会を各拠点にて開催するなど社員に寄り添った活動に取り組んでいます。
女性の活躍推進は、当社を含む国内グループ会社での対応・改善が喫緊の課題となっています。2024年度からは当社にD&I推進部署を設置し、当社における「女性管理職比率」向上を目指します。
ⅲ.従業員エンゲージメントの向上
当社グループは、エンゲージメントを「会社や職場の同僚との関係に価値を感じ、積極的に貢献したいと考えている状態」と定義し、その状態を示す設問に肯定的な回答をしている社員の割合をエンゲージメントスコアとして可視化、定点観測しています。2021年度に当社にて実施したエンゲージメントサーベイを皮切りに、2022年度以降は国内外グループ会社へと実施対象を拡大しています。
エンゲージメントサーベイを継続して実施・分析することで課題を明確化し、エンゲージメントの向上に向けた社内環境整備を進め、「ビジョンに近づくための人財の質向上」及び「成果を上げやすい職場環境作り」の実現を目指します
ⅳ.社員の健康と安全衛生
会社の持続的な成長を支える最も重要な経営資源は「人財」であると考えており、労働時間の適正化やワークライフバランスの推進、休職後の職場復帰支援、就業と治療の両立支援策など、社員が安心・安全かつ働きやすい職場環境づくりに努めています。
「健康経営戦略マップ」により経営課題とその解決に必要な健康課題への取り組みを可視化し、社員一人ひとりが心身の健康維持・増進と働きがいを実感、挑戦し続けることのできる職場環境を整備していきます。その実現に向け、「生活習慣の改善(カラダの健康)」「メンタルヘルスの向上(ココロの健康)」「生産性の向上(仕事の健康)」の3つを目標指標とし、定量目標の設定と周知活動を推進していきます。
指標及び目標
戦略 |
項目 |
範囲 |
目標 ( |
実績 (2023年度) |
ダイバーシティ&インクルージョン |
|
単体 |
10% |
5.4% |
グループ |
|
|
||
働きがい |
|
グループ |
|
|
社員の健康 |
健康優良法人 |
単体(※1) |
認定維持 |
認定維持 |
安心・安全 |
|
単体(※2) |
|
|
※『人財の育成と採用』に関連する指標及び目標の一部については策定予定。
※1健康優良法人は現在ウシオ電機単体で認定を取得。今後『社員の健康』に関するグループ目標を策定予定。
※2労災度数率は次年度以降国内外の製造拠点を含めた目標を策定予定。
② 気候変動
a.ガバナンス
ESG推進本部と関連する委員会で検討した気候関連課題について、代表取締役社長が議長を務め、取締役、執行役員等の経営陣が参画する「コーポレート戦略会議」にて年4回以上審議し、年1回以上の頻度で審議結果を取締役会へ報告しています。また、取締役会では気候関連目標及びそれに対する進捗のモニタリングを実施しています。
役員報酬の算定方法の評価指標にはESG目標の達成度も盛り込まれ、環境を含むESG評価スコアに連動する報酬制度を導入しております。
b.リスク管理
リスク管理においては、リスクの種類ごとに責任部門及び対応責任者となる取締役又は執行役員を任命しています。気候変動リスクは、全社で導入している「リスクマネジメントプロセス」の下で定期的に識別し、リスク管理委員会(委員長:代表取締役社長)にて評価・モニタリングされ、重大と評価されたリスクは取締役会へ報告されます。
また、気候変動に関する機会はESG推進本部が中心となり関係部署及びグループ会社に係る機会を網羅的に抽出する仕組みを構築し、重要度と妥当性などから識別、評価しています。モニタリングとして定期的にコーポレート戦略会議に報告し、重要と評価された機会は取締役会へ報告されます。
c.戦略
ⅰ.気候変動シナリオの選択
IEA(国際エネルギー機関)等が公表している気候変動シナリオから1.5-2℃シナリオ、及び4℃シナリオを選択し、2050年における気候変動の影響を分析しました。
ⅱ.分析のプロセス
各事業へ影響する主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予測データを収集しました。これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理リスクについて事業影響を試算し、当社事業に2050年までに影響を与えうる重要なリスクと機会を特定しています。
ⅲ.シナリオ分析結果
重要度の高いリスク・機会の財務影響を分析した結果、特に気温が上昇する4℃シナリオにおいては、拠点が洪水等で被災することによる影響が大きいことを特定しました。併せて、該当する生産拠点への適切な保険の手配により、気候変動リスクが財務へ与える影響を軽減できることを確認しました。
気候変動領域における主なリスク
重要な気候変動リスク |
時間軸 |
気候変動リスクが財務へ与える影響 |
||
移行リスク |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 |
炭素税負担 |
中期 |
GHG排出への炭素税の賦課により、操業コストが1.5℃シナリオでは2.0億円、2℃シナリオでは1.6億円増加する。*1 |
原材料価格の上昇 |
銅価格 |
長期 |
低炭素技術(太陽光発電やEVバッテリー等)に関連する需要の増加に伴い、各鉱物の需給が逼迫。その結果、各鉱物の価格が上昇し、原材料コストが増加する。 |
|
亜鉛価格 |
||||
モリブデン価格 |
||||
物理リスク |
水不足 |
渇水による 逸失利益 |
中期 |
水不足に伴う取水制限により、製品生産が遅延・停止し、逸失利益が発生する。 |
異常気象の 激甚化 |
洪水による 物損・逸失利益 |
短期 |
洪水により生産拠点が被災し、製品生産が遅延・停止。物損コスト及び逸失利益が4℃シナリオでは66.8億円発生する一方で、被害額のうち66.7億円は保険により補填可能。 |
|
保険料の増加 |
短期 |
洪水・台風の激甚化による生産拠点の被災リスクの増加に伴い、保険料が上昇。保険コストが増加する。 |
*1 IEAによる炭素価格の予測値と当社の各国におけるGHG排出量から試算
気候変動領域における主な機会
種類 |
機会内容と影響 |
時間軸 |
機会実現の対応策 |
|
製品・サービス |
事業創出本部 |
製品の環境性能向上、及びカーボンフットプリント削減に係る関心の高まりと需要増加により、環境配慮製品開発が拡大する。 |
短中期 |
・高い地球温暖化係数を持つN2Oガス分解システムの開発 ・地球温暖化に繋がるCO2の分離/回収を行うDAC装置の開発 ・温室効果ガスであるメタンガス処理技術の開発 ・脱化石燃料社会に向けた円筒型太陽電池の開発 |
Industrial Process 事業部 |
・GHG排出量の削減に貢献する環境対応車(EV車等)や家電製品、電子機器に使用される半導体の需要拡大に伴った関連製品の販売拡大 ・EV車載用電池の市場拡大に伴い、車載用電池(リチウムイオン電池等)の製造工程への参入機会の拡大 ・GHG排出量の削減に貢献する製品の販売機会の拡大 |
短期 |
・半導体関連製品(パッケージ向け露光装置、EUV装置、超高圧UVランプ等)の開発と提供 ・車載用電池(リチウムイオン電池)製造工程への採用に向けた製品開発と提供 |
|
Visual Imaging 事業部 |
省エネ需要の高まりにより電力効率の高い光源への切り替え/新規導入が拡大する。 |
短期 |
より良い電力効率製品への改善に向けた取り組み、開発 |
|
Life Science 事業部 |
気候変動の影響による感染症の拡大 |
短期 |
感染症のグローバルな環境変化に適応したソリューション(Care222)の提供 |
|
全般 |
省エネルギー製品をはじめ、ライフサイクル全体でCO2排出量を少なくすることに貢献する製品・CO2排出量が小さい製品(スーパーグリーンプロダクト、グリーンプロダクト)に対する販売機会の拡大 |
短中期 |
ユーザーがCO2排出量を少なくすることに貢献する製品、省エネ性能を向上させた製品の開発、製造、販売 |
|
資源の効率化 |
製造プロセス、流通プロセスの効率化によるエネルギーコストの削減 |
短中期 |
・エネルギー目標の達成 ・高効率設備や輸送手段の切り替え、新規導入 |
|
エネルギー源 |
省エネ推進による再生可能エネルギーの低コスト化と活用機会の拡大 |
短中期 |
・再生可能エネルギーへの切り替え ・自社工場の太陽光発電の設置 |
|
その他 |
脱炭素に取り組む企業として社会的評価が高まることによるビジネス機会の増加 |
短期 |
・GHG排出削減量の開示 ・規制動向や関連機関の動向への対応 |
ⅳ.機会創出
当社グループは、「5つの経営のフォーカス」のひとつに「より社会的価値の大きい事業創出」を掲げており、気候変動対策や食糧問題等の社会課題を起点とし、当社グループが持つ「光」とその周辺技術によるソリューションの提案及び既存を含め今後市場に提供する製品に対する環境配慮型製品の追求、並びにサーキュラーエコノミーの取組みを強化してまいります。
指標及び目標
(ⅰ)実績
・GHG排出量(Scope1、2、3)※1
・環境配慮型製品、スーパーグリーン製品の売上高※2
※1:当社グループにおける、2017年~2023年3月期のGHG排出量実績について、当社ウェブページ(以下)にて、地域別・スコープ別に開示しています。排出量はGHGプロトコルに基づき算定しています。https://www.ushio.co.jp/jp/sustainability/data/esg_data/environmental/
※2:当社では環境性能を向上させた製品を「環境配慮型製品」として認定し、その中でも既存製品とは一線を画した革新的環境対応技術を採用した製品を「スーパーグリーン製品」として認定しています。
https://www.ushio.co.jp/jp/sustainability/esg/contribution_to_society/
(ⅱ)目標
近年の気候変動に関する国際的見地から、当社では2018年にSBT(Science Based Targets)目標を設定し、認定されました。この目標値は定期的に見直しを行い、現在Scope1+Scope2については、2030年度までに2017年度比で55%、Scope3(Cat.11)については同33%のGHG排出量削減を目標値としています。事業所での活動等によるCO2排出削減のみならず、環境配慮型製品の開発により、Scope3にあたる製品使用段階でのCO2排出削減も進めてまいります。さらに現在、2050年までに当社グループでScope1+Scope2においてカーボンニュートラルを達成する目標の設定を検討しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものであり、また、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1)各事業領域におけるリスク
① Industrial Process事業におけるリスク
本事業では、製品及びサービスの競争力を強化するため、半導体パッケージ及びプリント基板・電子部品市場、EUVリソグラフィマスク検査市場といった成長分野において、関連製品の採用拡大及び新規採用に向け、研究開発投資を継続的に行っています。しかしながら、研究開発投資において想定した成果が十分かつ迅速にもたらされない可能性、又は競合他社に技術開発を先行されてしまう可能性があります。これらは、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、世界各国の経済動向や各事業分野における事業環境変化により、消耗品が搭載される機器の需要及び装置の稼働状況に想定を超える大幅な変化が生じた場合、収益力の低下につながる可能性があります。
今後の技術動向や市場環境変化及び取引先動向を早期に情報取得できる体制を構築し、柔軟に事業体制及び技術開発動向変化に対応していく考えです。
② Visual Imaging事業におけるリスク
本事業では、取引先として映画館や公共施設、企業、アミューズメントパーク、代理店等がありますが、市況環境の変化により取引先の経営状況の悪化が加速した場合、取引先が契約の条項を履行できなくなる可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。中長期的には映画館市場において、映像コンテンツのストリーミングサービスの充実・普及拡大、消費者のコンテンツ消費行動・スタイルの変化により、シネマチェーンの存続に影響を与えるほどの大きな業界構造変化が起こった場合、プロジェクターを中心とした映像装置の需要に大きな変化が生じ、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、シネマ用ランプにおける固体光源への代替が進んでおりますが、想定を超える更なる革新的な技術の進展があった場合、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、世界各国の経済動向や各事業分野における事業環境変化により、消耗品が搭載される装置の需要及び稼働状況に想定を超える大幅な変化が生じた場合、収益力の低下につながる可能性があります。
なお、今後、当社グループとしては、技術の進展を含む事業環境変化から常に長期的な需要予測を更新し、それに応じて柔軟に対応していきます。具体的には、需要予測を基に、それに見合った生産等の体制へ柔軟に変化させていくことや、既存技術や製品を活用した競争優位のある製品を新規市場で展開するなどの新規事業創出に力を入れてまいります。
(2)各事業領域共通のリスク
重要リスク |
リスクシナリオ |
リスク対応策 |
サプライチェーン |
・仕入れ先の廃業、原産国の法規制強化等による原材料・部品・購入品の供給遅延、途絶で操業停止等が発生する。 ・資源の枯渇及び需給の逼迫などにより原価が上昇する。 |
・各部材毎に現状分析し、見える化したリスクに対して代替化案、バックアップ案を明確にする。 ・グループの集中購買と分散購買含めて調達方針を立案する。 ・価格高騰対応は適正価格査定と適正価格転嫁ができる仕組み作りを行う。 |
事業継続対応 |
・特定の国との政治的対立により現地の事業活動が制約を受けるなどにより、売上が激減する。 ・地震、津波や噴火により、人的被害や工場、倉庫、事務所、設備・システム等に損害が発生、また、事業も中断する。 |
・各事業部からの事業方向性情報を元に各拠点の持つ強みを活かした拠点間連携によって適地生産、適地販売の観点で事業継続の取組強化を推進する。 ・マニュアルに基づいた防災初動訓練とBCP訓練、自衛消防隊訓練の定期開催、備蓄品や防災設備の更新を行う。 |
海外危機管理 |
・戦争、紛争、政情不安などが発生し、当社グループ事業に悪影響が発生する。 |
・海外拠点との連携開始、定期的に情報を収集できる仕組みを構築する。 ・対応、判断すべき事項を整理し、報告ルールや情報共有ラインを整備する。 |
グローバル人財戦略 |
・特定の専門知識やスキルを持つ人財を採用することができず、企業として事業成長の停滞や競争力の低下等を招く懸念がある。 ・豊富な経験を有する職員が業務を通じて培ってきた技術やノウハウが継承されず、生産性や競争力が失われていく。 |
・海外拠点HR部門や各事業部とコミュニケーションを強化し、現状認識と問題点の洗い出しを行う。 ・事業部や技術分野スペシャリストの協力を仰ぎ、グローバルな人財戦略、人事制度を構築し、施策を実行する。 |
情報セキュリティ管理 |
・内部の不正行為、外部からの不正アクセスや脆弱性の悪用、マルウェア感染などのITシステムへの悪意ある攻撃により情報の漏洩、改ざん、消失又はITシステムの停止を引き起こし、事業活動上の損失や賠償責任、事業の中断等が発生する。 |
・グループで統一した「グループ情報セキュリティポリシー」の浸透を図るため、グループ各社のセキュリティレベルに応じた教育・啓蒙活動を推進する。 ・ランサムウェア対策として検知率の高いツール(EDR)と監視サービスを導入することで、グループ全体が情報セキュリティ強化を図る。 ・定期的に情報セキュリティアセスメントを実施し、グループ情報セキュリティポリシーの遵守状況の確認と課題抽出を行う。 |
気候変動対応 |
・気候変動に係るリスクや具体的な活動状況をTCFDに則って情報開示する対応が遅れる ・取引先等からのCO₂排出量の削減要請に応えられず、取引の解除や企業イメージが低下する。 |
・サステナビリティに関する重要項目である気候変動の情報開示内容の拡充を行う。 ・1.5℃目標前提でSBT目標の見直しを行う。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの事業環境は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化の影響によるエネルギー・原材料価格の上昇、欧米でのインフレ進行に伴う政策金利の引き上げの継続、中国での不動産開発投資に始まる内外需要の低迷による景気の減速など世界的な不況感が継続しており、先行き不透明な状況が続いています。
このような環境のもと、半導体・電子デバイス・プリント基板市場においては、世界的にパソコンやスマートフォンなどの最終需要に回復の兆しが見え始めているものの、足元で関連する設備投資の抑制や稼働の低調が継続しています。また、関連する最先端ICパッケージ基板市場においても、最終製品の需要低迷が続いており、一時的な設備投資の抑制が発生するなど、引き続き注視が必要な状況です。一方で、5Gの実用化やIoT・AI活用が進展し、関連する需要の中長期での拡大が期待されます。フラットパネルディスプレイ市場においては、巣ごもり需要が一巡し、液晶パネルメーカー各社の稼働の低調が継続しています。映像関連市場においては、世界全域でコロナ禍からの正常化に向けた経済活動再開により映画館の稼働や設備投資の回復が進みました。また、一般映像機器市場においても、イベント等の回復に伴い、堅調な市況が継続しています。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産は、3,375億4千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ139億2千3百万円増加いたしました。主な増加要因は、一部光学装置の売上時期後倒しによる棚卸資産の増加であります。一方、主な減少要因は、減損損失の計上による有形固定資産の減少であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、1,005億7千1百万円となり、前連結会計年度末に比べ210億5千4百万円増加いたしました。主な増加要因は、配当支払や自己株式購入等の資金需要による長期借入金の増加であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、2,369億7千5百万円となり、前連結会計年度末に比べ71億3千万円減少いたしました。主な増加要因は、当連結会計年度末にかけて円安が進行したことによる為替換算調整勘定の増加及び親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加であります。一方、主な減少要因は、配当支払及び自己株式消却による利益剰余金の減少であります。
b.経営成績
当連結会計年度は、売上高は1,794億2千万円(前年同期比2.5%増)、営業利益は129億7千6百万円(前年同期比18.2%減)、経常利益は160億8千8百万円(前年同期比20.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は107億8千5百万円(前年同期比21.3%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントを変更しており、前年同期の比較及び分析は、変更後の区分に基づいて記載しております。
(Industrial Process事業)
[露光用ランプ]
巣ごもり需要の一巡により液晶パネルメーカー各社で生産調整が継続し、液晶パネル向けで販売が低調に推移しました。一方で、パソコンやスマートフォンなどの最終需要が徐々に回復基調となり、半導体や電子デバイス向けで稼働が堅調に推移し販売が増加したことや円安による為替効果もあり、増収となりました。
[OA用ランプ]
需要は堅調であるものの、前期のセットメーカーでの部材不足緩和による需要増加の反動により、ランプの販売が減少し、減収となりました。
[光学機器用ランプ]
液晶パネルメーカー各社の生産調整が継続しているため、主に液晶パネル向け光源の販売が減少し、減収となりました。
[光学装置(露光装置)]
5Gの実用化やIoT・AIの進展に伴うデータセンター向けサーバー需要等の高まりは継続しているものの、半導体市況悪化長期化の影響により、設備投資の抑制が発生したため、関連する最先端ICパッケージ基板向け投影露光装置及び直描式露光装置の販売が減少し、減収となりました。
[光学装置(その他)]
主に、巣ごもり需要の一巡により、液晶パネル向けの設備投資が減速したことにより、関連する装置の販売が減少し、減収となりました。
なお、利益面では、減収に加え、光学装置を中心とした将来に向けた戦略投資(R&D等)を拡大したこと及び光学装置や光学機器用ランプなどの付加価値の高い製品の販売が減少したことで利益率が低下し、減益となりました。
以上の結果、Industrial Process事業の売上高は821億3千1百万円(前年同期比8.2%減)、セグメント利益は108億7千6百万円(前年同期比40.4%減)を計上いたしました。
(Visual Imaging事業)
[プロジェクター用ランプ]
コロナ禍からの回復に伴う映画館の稼働改善によりシネマプロジェクター用クセノンランプの需要は堅調に推移したものの、一般映像向けプロジェクター用ランプにおいて、固体光源化が進んだ影響により販売が減少し、減収となりました。
[映像装置(シネマ)]
前期に発生した部材不足の解消が進み、映画館におけるプロジェクターの置き換え需要を取り込んだことでデジタルシネマプロジェクターの販売が増加しました。また、円安による為替効果もあり、増収となりました。
[映像装置(一般映像)]
イベント等を中心とした高度な映像演出ニーズの高まりが継続し、需要が堅調に推移したほか、第2四半期連結会計期間における大型案件の検収や円安による為替効果もあり、増収となりました。
なお、利益面では、増収に加え、映像関連機器において前期に発生した部材コスト高騰の影響緩和により、部材価格が正常化し仕入原価の改善が進んだこと及び一般映像向けハイエンド機種の販売割合が増加したことで利益率の改善が進み、増益となりました
以上の結果、Visual Imaging事業の売上高は805億5千7百万円(前年同期比16.9%増)、セグメント利益は58億8千7百万円(前年同期比69.5%増)を計上いたしました。
(Life Science事業)
主に環境衛生向け光源の販売が減少し、減収となりました。一方、前期において計上した棚卸資産評価損が減少したこと及び環境衛生向け事業の戦略見直しによる投資抑制を行ったことにより、増益となりました。
以上の結果、Life Science事業の売上高は52億1千5百万円(前年同期比7.2%減)、セグメント損失は23億2千9百万円(前年同期はセグメント損失51億3千5百万円)を計上いたしました。
(Photonics Solution事業)
レーザーモジュール等の販売増加及び事業譲受による売上高増加の効果により、増収となりました。一方で、事業譲受による販管費の増加や開発費の増加により、減益となりました。
以上の結果、Photonics Solution事業の売上高は102億5千万円(前年同期比10.7%増)、セグメント損失は15億1千3百万円(前年同期はセグメント損失2億9千3百万円)を計上いたしました。
(その他事業)
客先製造ラインの稼働低下に伴い、点灯装置の販売が減少しました。
以上の結果、その他事業の売上高は13億2千7百万円(前年同期比25.2%減)、セグメント利益は1億3千6百万円(前年同期はセグメント損失3億9千4百万円)を計上いたしました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ49億8千2百万円増加し624億9千8百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、89億6千6百万円の収入(前連結会計年度は8億7千1百万円の収入)となりました。
この主な内訳は、税金等調整前当期純利益の計上156億8千1百万円、減価償却費の発生83億2千5百万円及び減損損失の発生71億7千1百万円による収入と、投資有価証券売却損益の発生69億8千7百万円、棚卸資産の増加30億円、仕入債務の減少56億9千8百万円及び法人税等の支払59億4百万円の支出によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、53億9千4百万円の収入(前連結会計年度は11億7千5百万円の支出)となりました。
この主な内訳は、定期預金の払戻124億5千3百万円及び投資有価証券の売却及び償還98億9千8百万円による収入と、定期預金の預入81億8千8百万円及び有形固定資産の取得79億3千6百万円の支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、134億8千9百万円の支出(前連結会計年度は268億1千1百万円の支出)となりました。
この主な内訳は、長期借入れ250億円による収入と、自己株式の取得306億5千4百万円及び配当金の支払58億9千1百万円の支出によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
Industrial Process事業(百万円) |
80,352 |
86.6 |
Visual Imaging事業(百万円) |
57,282 |
120.6 |
Life Science事業(百万円) |
3,252 |
130.0 |
Photonics Solution事業(百万円) |
9,551 |
100.2 |
報告セグメント計(百万円) |
150,439 |
98.8 |
その他(百万円) |
984 |
91.6 |
合計(百万円) |
151,423 |
98.8 |
(注)上記金額は販売価格にて算定しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当社グループの生産は過去の販売実績及び市場調査による需要の予測並びに将来の予測等を考慮し、生産計画を設定し、これに基づいて勘案された見込生産であります。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
Industrial Process事業(百万円) |
82,124 |
91.8 |
Visual Imaging事業(百万円) |
80,534 |
116.9 |
Life Science事業(百万円) |
5,212 |
92.8 |
Photonics Solution事業(百万円) |
10,243 |
110.6 |
報告セグメント計(百万円) |
178,115 |
102.8 |
その他(百万円) |
1,305 |
74.5 |
合計(百万円) |
179,420 |
102.5 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 第2次中期経営計画の振り返り
2030年のありたい姿の実現に向け、2020年7月に公表した第1次中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)では目標を達成し、2023年5月に公表した第2次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)では、1年目となる2023年度は期初計画に対し、特に半導体市況悪化の影響により、売上高は未達となったものの、経費効率の改善や円安による為替効果もあり、営業利益は達成することができました。ただし、半導体の市況悪化の影響が長期化するなどの事業環境の変化が生じ、第2次中期経営計画の再検証を行った結果、最終年度である2025年度の売上高、営業利益目標が未達となる見通しとなりました。
このような状況を踏まえ、改めて第2次中期経営計画の見通し修正に至った要因を分析し、外部要因として「半導体製造装置の市場動向の変化とPCパッケージ基板市場の急減速」、内部要因として「成長事業における主要顧客層への依存」「EUV競争環境変化」「不採算事業の影響」を認識しました。一方で、将来のプラス要因として、2023年12月に発表した「アプライドマテリアルズ社との業務提携」を認識しました。これらの分析結果を踏まえて見出された戦略重点分野の更なる強化を図るべく、「事業ポートフォリオの変革」を推し進めるとともに計画の厳格なモニタリングを行うことでより実現可能性の高い企業価値向上シナリオとした新成長戦略「Revive Vision 2030」を策定し、公表を行いました。
なお、新成長戦略の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)新成長戦略」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.財務・資本政策の基本的な方針
当社グループは、財務の健全性・安定性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元のバランスを追求するとともに、企業価値向上のために経営資源を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。
株主還元については、株主の皆様に対する利益還元が企業として最重要課題の一つであることを常に認識し、安定的な配当の実施に加え、資本効率、業績、キャッシュ・フローの状況等を勘案しながら自己株式の取得を行っております。なお、自己株式については、保有上限を発行済株式総数の5%を目途とし、その部分を上回る自己株式については毎期消却することを基本方針としております。
b.資金需要及び資金調達について
当社グループの資金需要として、原材料、商品等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用に加え、設備投資、研究開発及びM&Aのための資金や配当支払、自己株式の取得等を見込んでおります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は基本的に自己資金によって賄い、設備投資やM&A等の長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入も活用しております。なお、当連結会計年度末における借入金の残高は288億6千5百万円となっております。
当社グループは当連結会計年度末において現金及び現金同等物624億9千8百万円を保有しており、また、換金性の高い金融資産も保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積りが必要とされますが、これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的な根拠を有した仮定や基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点での見積りと異なることも考えられます。
当社グループにおける連結財務諸表作成のための重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、課税主体ごとに将来の課税所得又は税金等調整前損益を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は主に将来の課税所得又は税金等調整前損益の見積りに依存するため、これらの見積り額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
c.退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算されております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
経営上の重要な契約として特記すべき事項はありません。
当社グループは、産業用の光源の開発・製造を中核として光学系技術をはじめ、エレクトロニクスやメカトロニクスなど、光を利用・応用していく上で不可欠なさまざまな周辺技術の開発を推し進め、光のユニット化、光の装置・システム化へと事業を展開しております。新市場・新技術の動向を常に把握し、戦略的な研究開発活動を行うとともに、各研究開発部門が相互に連携・連動しながら数々の新しい光源及び光の関連装置やソリューションを生み出す体制となっております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりであります。
(Industrial Process事業)
・最先端ICパッケージ基板向け投影露光装置開発及び環境配慮型露光装置の研究開発
DX、AI及び5Gなどの進展に伴うデータセンター向け半導体用パッケージ技術は、大学やコンソーシアムで盛んに研究され「More than Moore」として期待されています。
その中で、近年は微細化と高速伝送・電力効率改善を目的として、従来の有機基板より強度と電気特性に優れたガラスコア基板技術の研究が進んでいます。
当社もお客様の新たな技術課題に対応する為、ガラス基板用露光装置の開発に注力しリソースを集中させています。また、環境対応にも積極的に取り組んでおり、従来より環境負荷を大幅に低減した環境配慮型露光装置の開発も進めています。
・アドバンスド・パッケージ基板向け新型DI(Direct Imaging/直描式)露光装置開発
Heterogeneous Integration(異種チップ集積化)を達成するアドバンスド・パッケージ基板は、近年みられるムーアの法則に基づくスケーリングの鈍化傾向に対抗して、デバイス密度向上と機能拡張を果たせる唯一の解決策として期待されています。
グループ会社である株式会社アドテックエンジニアリングでは、アドバンスド・パッケージ基板向けに求められる、超高精細パターン描画をDI露光機で行うべく、DI機としての露光解像性能と生産効率の両方を高める技術開発に継続投資を行い、2024年内に新型DI露光装置IP-NX7000を上市すべく製品開発を進めています。
・小型、高輝度、高信頼性のEUV光源の研究開発
当社グループでは、EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源の研究開発に継続的に取り組んでおります。高度な微細化が進む半導体業界では、EUVリソグラフィマスク検査装置の量産プロセスへのニーズもより高まっています。
当社のEUV光源はエンドユーザーの量産条件を満たす高い安定稼働と充分な性能を達成しています。今後も開発投資を継続し、更なる高性能、高安定稼働などの技術優位性の維持・向上に注力すると共に、更なるランニングコスト低減を目指します。
Industrial Process事業に係る研究開発費は
(Visual Imaging事業)
・高輝度プロジェクター及びLEDディスプレイ等の映像表示装置の開発
グループ会社であるCHRISTIE DIGITAL SYSTEMS USA, INC.では、映画館向けや、テーマパークなどエンタープライズ用途の高輝度プロジェクターやLEDディスプレイなどの映像表示装置の研究開発に継続的に取り組んでおります。プロジェクターでは、高輝度・高精細・広色域、更には省電力への要求を実現するレーザー光源等を採用し、その上で新しい技術やデバイスを取り入れ、先進的なプロジェクターの開発を進めています。また、付加価値向上のため、プロジェクターでマルチ画面やマッピングなどに柔軟に、そして簡単に対応するための自動調整を可能にするソフトウェアやコンテンツ送出などの周辺機器、ネットワークをベースとした画像の伝送・合成等を行う周辺機器など、映像全体をトータルなソリューションとして提供出来る機材やソフトも開発提供しております。
加えて、近年、用途が拡大しているLEDディスプレイ市場向けにおいては、広色域で設置容易性を追求した独自のマイクロタイルLEDディスプレイや、価格を抑えた製品の開発も進めております。
今後も、観客の映像体験の向上や展示者の運営の簡素化、効率化を実現する研究開発を進めてまいります。
Visual Imaging事業に係る研究開発費は
(Life Science事業)
・Care222技術を用いた抗ウイルス・除菌装置の拡販
当社グループでは、エキシマランプによる環境衛生用途のアプリケーションとして、脱臭、揮発性の高い有害な化学物質の除去などを目的とした技術ブランドClean172のアプリケーション探査を目的とした実証デモ装置を開発・製作し、顧客との共同実験を開始するとともに、紫外線が持つ殺菌力を活かしたCare222という技術ブランドのもと感染制御の領域において有人環境下で利用できる紫外線として安全性、効果の検証を進め、2020年から実用化してまいりました。
2023年度中は、感染制御領域において主に北米にて実際の病院内での菌に対する効果検証試験を実施しました。病院内では薬剤耐性菌による院内感染の防止が大きなテーマであるため、今回の効果検証試験が有効に活用できるかを検証する第一歩となります。
また、感染制御以外においても、滋賀県からの助成金を得て外来植物駆除の実証試験機の開発、黴の抑制効果の実施検証など、様々な領域においてCare222技術のアプリケーション探査を実施してまいりました。
Care222の更なる安全性、効果検証エビデンスの取得だけでなく、この技術の可能性を追求し、我々の使命である光を用いた様々な社会課題解決のソリューション提案に向けた新たなアプリケーション開拓を中心に研究開発として投資いたしました。
・Organs On Chip(創薬向け生体模倣デバイスの開発)
当社グループでは、Life Science事業のアプリケーション拡大に向け、172nmのエキシマ光を樹脂接合に応用し、Photobonding™(光接合技術)を開発しました。
本技術をOrgans On Chipの製作プロセスに適用し、微小空間で行われる生体模倣と薬剤評価において不純物のないデバイスの開発に成功いたしました。他の接合技術は同用途において必要な品質を実現することが難しいため、本技術は多くのお客様より高い評価を得ております。
なお、SDGsなどの社会課題解決などを対象とした新規事業創出に関する開発等もLife Science事業に係る研究開発活動に含まれております。
Life Science事業に係る研究開発費は
(Photonics Solution事業)
・Violet-LDの開発
当社グループでは、直描式露光装置、バイオ・メディカル、光センシング、光計測、AR/MRグラス等に応用されるGaN系半導体レーザ(LD)の開発を通じ、各アプリケーションにおける課題解決及び技術革新に貢献しております。
2023年度においては、特に、波長405nmマルチモードLDのさらなる高出力化に向けて、LDチップ形成に必要な結晶成長やウェハプロセスの各要素技術の開発を推進し、基本設計を確立しました。
引き続き、2024年度中の量産化を目指して開発を進めております。また、既存製品に対しては、ウェハ間・ウェハ面内の特性ばらつきの原因を特定してプロセスの最適化を図り、品質および生産性を向上しました。
今後も、GaN系LDの特長を活かしたアプリケーションの技術発展に貢献し、社会課題を解決できる製品開発を行ってまいります。
Photonics Solution事業に係る研究開発費は
(その他事業)
その他事業に係る研究開発費は