文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、高い技術力を活かした製品を顧客に提供し社会に貢献するために以下を企業理念とし、この企業理念のもと当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて企業活動を進めております。
・ 世界市場で顧客の信頼に応える企業グループ
・ 常に技術の先端を行く企業グループ
・ 地球環境保全、循環型社会に貢献する企業グループ
(2) 経営環境
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える大きな要因として、紙素材事業の構造的な需要減退、木材チップ、製紙用パルプ・重油・石炭・諸薬品等の原燃料価格変動があります。
機能商品事業は原燃料高騰の影響を受けておりますが、成長商品の拡販や販売数量の回復、価格改定によりこの影響を最小限に抑えるべく対策を進めております。水処理膜支持体、エアーフィルター、メルトブロー不織布、機能性濾材、超耐熱ガラスなど、安全かつ快適なサステナブル社会の実現に貢献する機能性不織布関連事業の拡大を目指します。また、自動車、省エネ・通信機器向けに規模の拡大が見込まれる蓄電デバイス用セパレータ事業、情報・通信技術の高度化に伴う電工材事業等のエレクトロニクス関連分野においても更なる規模の拡大を図ってまいります。
紙素材事業は機能商品事業同様の原燃料価格の高騰影響に加え、需要減退など厳しい環境にありますが、需要動向に合わせた生産体制最適化と在庫適正化を進めるとともに価格改定効果の維持を図ってまいります。更には需要減少に対応するため品揃え拡充により外販パルプを拡販、紙袋用途で需要が堅調なクラフト紙、減プラ、脱プラの加速化により需要拡大が見込めるバリアコート紙等の環境配慮型の商品の拡販を図ります。加えて、生産・販売体制の構造改革を実現し、紙素材事業を安定した収益を生み出す基盤事業にしてまいります。
当社グループは、2023年3月期より「中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)」に取り組んでおります。「中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)」の最終年度である今年度は、業績予想を以下のとおり設定しております。
○ 経営数値目標
(業績予想前提条件)
為替:150円/US$、原油価格(ドバイ):90US$/バレル、
石炭価格(豪州):140US$/トン
(中期経営計画前提条件)
為替:125円/US$、原油価格(ドバイ):85US$/バレル、
石炭価格(豪州):200US$/トン
(4) 会社の対処すべき課題
当社グループは「世界市場でお客様の信頼に応える」「常に技術の先端を行く」「地球環境保全、循環型社会に貢献する」を企業理念とし、この理念のもと、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて企業活動を進めています。
現「中期経営計画」(2023年3月期~2025年3月期)の基本方針に沿って以下の施策に取り組むことで、当初目標を超える業績を目指してまいります。また、次のステップアップに向けて新たな中期経営計画の策定を進めております。
<中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)>
当社グループでは激変する経営環境に対応し、これまでにないスピードで構造改革を進めて収益基盤を強化するべく、「新しい三菱製紙グループの創造」とのスローガンを掲げて、2023年3月期より中期経営計画を実施しています。中期経営計画の基本方針及び諸施策実施状況は以下のとおりです。
① 「選択と集中」「新事業拡大」による収益力の強化
選択と集中の取り組みとして、当社グループ子会社の統合(「グループ組織再編及び当社機構改革」参照)を進めています。2024年4月1日付でグループ子会社の合併による組織再編を実施し、更に2024年7月1日付でKJ特殊紙株式会社を当社に統合する予定です。子会社の再編により組織を合理化し、固定費削減とコーポレートガバナンスの強化を図るとともに、事業部と工場の一体運営を更に推進するものです。なお、本再編実施(2024年7月1日)後には、当社グループ子会社(清算中の会社等を除く)は、2022年3月31日時点の25社から11社(14社減)となります。
新事業拡大の取り組みとして、成長事業である機能性不織布事業やエレクトロニクス関連事業等の機能商品分野では研究開発体制を更に充実させ、製品の品質優位性を確保することで、販売拡大を進めております。また、印刷用紙は国内需要の減少分を輸出販売増でカバーすることで国内販売価格の適正化を図るとともに、パルプの輸出拡大にも取り組んでおります。
② グリーン社会への貢献
CO2排出量削減の取り組みでは、GXリーグ(GX:グリーン・トランスフォーメーション)へ参画し、カーボンニュートラル社会実現に向け、公約した2030年目標(2013年度比40%削減)の達成に向けた取り組みを推進しております。
社会課題の解決をビジネスチャンスと捉え、脱プラ・廃プラ、安全かつ快適なサステナブル社会の実現に貢献する製品として、包装紙(クラフト紙・バリア紙)の商品開発と拡販を進めております。
③ サステナビリティ向上のための組織変革
当社のサステナビリティ推進活動の在り方について、株主の皆さまに実体験を通して理解を深めていただくために、「三菱製紙 ニッシー・カッシーの森制度」を新設します。第一回目の植樹体験に向けて準備を進めます。
ダイバーシティー&インクルージョンの観点から、2023年度は女性の社外取締役・常勤監査役を選任いただき、2024年度には女性執行役員も就任しました。外国人採用、障害者雇用も取り組みを強化しています。
働き方改革の推進のため、育児介護在宅勤務適用対象の拡大、時差出勤制度などによるワークライフバランスの充実・生産性向上に努めてまいります。
コンプライアンスの徹底のため、内部通報制度の充実による実効性の向上、2023年度に行った「ハラスメント撲滅宣言」の遵守等を図ってまいります。
昨年度に続き統合報告書を発行し、ステークホルダーとのコミュニケーションを強化するとともに、YouTubeチャンネル「Green Webcast」による情報発信の強化を行ってまいります。
<当社子会社における不適切事案への対応>
当社グループである三菱製紙エンジニアリング株式会社白河事業所で製造していた耐熱プレスボード製品の品質検査に係る不適切事案は、2024年5月10日に事案の内容を公表するとともに外部専門家で構成される特別調査委員会を設置し、事案の全容解明、原因分析及び再発防止策の立案を進めております。特別調査委員会の調査が、迅速かつ実効的に行われるよう全面的に協力するとともに、当社グループ全体の品質管理体制を検証し、今後の改革に繋げるべく取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
① サステナビリティ基本方針
当社は、2023年4月に『サステナビリティ基本方針』を制定いたしました。皆さまからの信頼と共感を得ることを通して企業価値の向上を図るとともに、様々な社会的課題の解決につなげ、サステナブルな社会の実現に貢献していきたいと考えており、取り組むべき重要な経営課題のひとつとしてサステナビリティ推進活動を位置づけています
当社は、企業が社会の一員として存続するためには、利益を確保することだけでなく、様々なステークホルダーの皆様に対して社会的な責任を果たすことが必要と考えています。サステナビリティの目的は皆様からの信頼と共感を得ることを通して企業価値を上げることにあります。社会の要請に応えるため、サステナビリティを事業活動の中で取り組むべき重要な経営課題であると認識しています。
三菱製紙グループの企業理念は、「世界市場でお客様の信頼に応える企業グループ」、「常に技術の先端を行く企業グループ」、「地球環境保全、循環型社会に貢献する企業グループ」であり、事業を進める上での基本的な考え方を示しています。企業行動憲章は、この企業理念を具体化する際の指針を示しており、サステナビリティはそれを具体化する活動と考えています。
② サステナビリティ推進体制
サステナビリティを重視した企業グループ経営の推進のため、担当役員を任命するとともに社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設け、当社グループのサステナビリティ推進活動(コンプライアンス、リスクマネジメント、人財マネジメント、安全・衛生、環境、製品安全、製品品質、人権・労働、情報開示・広報、社会貢献、気候変動など)を組織横断的に統括しています。

(2) リスク管理
サステナビリティを推進し企業価値を維持向上させていくためには、企業が活動していく上で生じる様々なリスクを的確に把握し管理していくことが重要です。当社グループでは、サステナビリティ推進体制のもとで総務部が所管するリスクマネジメント委員会がグループ全体のリスクマネジメントを統括し、本社各部署や各委員会、各事業場では、関連リスクに対応するための諸規則・マニュアルの整備、事前予防体制の構築と訓練、問題発生時の再発防止策の策定など、様々なリスク管理強化策に取り組んでいます。

① リスクマネジメント規定
各部署が特定したリスク及び対応策はリスク管理表として取り纏め、リスクマネジメント委員会での審議を経た上で実行に移され、同委員会における定期的な進捗の確認、結果のレビューにより全社的なリスクマネジメントの実効性向上を図っています。
2024年度は、リスクマネジメント委員会において取り組みを進めていた事項(プロセス等)を明文化し、『三菱製紙グループ リスクマネジメント規定』の策定を進めています。
② 危機管理体制の構築
従来の『三菱製紙グループ 危機管理マニュアル』を、新たに策定する『三菱製紙グループ リスクマネジメント規定』に包含した上で、より迅速な対応のための改定を行います。
また、各場所や全社規模で様々な訓練や運用テストを定期的に実施し、課題を抽出して改善に努めています。安否確認システムを用いた訓練を各場所・国内グループ関連会社でも実施し、当社グループ全体での危機管理体制を構築しています。
③ 情報管理の強化
事業活動において取り扱う情報の管理と保全に関する措置を『情報管理規定』に定めるとともに、この規定を運用する上での指針となる『情報取扱に係るガイドライン』を策定し、情報の効率的・統合的な運用と適正な管理を図っています。
④ 「事業継続計画」(BCP)の構築
当社グループは、阪神淡路大震災、東日本大震災の経験から緊急時の対応力強化が必要と認識しています。甚大な被害から復興してきた経験を活かし、実効性のある事業継続計画の構築を進めています。
2023年度は「社会に有用で安全な製品の開発」、「気候変動問題への対応」及び「安全衛生に関する活動の強化」の3点を最重要アクションプランとして掲げ、取り組みを進めました。2023年度の活動実績と当社の現状を踏まえ、2024年度はさらに「機能商品の事業拡大」「ダイバーシティ&インクルージョン(人財パフォーマンス向上)」「リスクマネジメント体制の構築」を最重要アクションプランに加えました。
事業ポートフォリオ転換の中心となる機能商品事業の拡大が急務であること、人財の確保から育成、活躍の場の提供まで一貫した取り組みの構築が人財パフォーマンス向上に欠かせないものであること、急速に変化する社会環境の中で当社事業を取り巻くリスクの的確な把握と対応の重要性が増していることから、新たに最重要アクションプランとして追加したものです。
※網掛けは最重要アクションプランを示しています。
2023年度活動実績及び2024年度活動計画に関する詳細な情報については、2024年9月に当社ウェブサイト(https://www.mpm.co.jp/env/report.html)において公表予定の
世界的な課題である気候変動は、企業にとっても重大な影響を及ぼす要因と考えられ、その要因は中長期的な事業活動を行う上での“リスク”及び“機会”へと変わりつつあり、企業が持続的な成長を果たすためには、気候変動での影響を経営戦略に織り込む必要が出てきています。
三菱製紙グループは、2022年4月にTCFDへの賛同を表明するとともに「TCFDコンソーシアム」へ加入しています。当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、また、社会に貢献することを目指して、気候変動が事業に与えるリスク・機会の両面に関してTCFDの提言に沿った情報開示を進めてまいります。三菱製紙グループは社会価値を創造するとともに事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
① ガバナンス
・気候変動問題を重要な経営課題のひとつとして認識していますので、気候変動に係る基本方針や重要事項は取締役会において審議、決定いたします。またそのリスクと機会は取締役会においてサステナビリティ推進担当役員が少なくとも1回/年で付議、報告いたします。
・サステナビリティ推進担当役員も含めた全社横断的なTCFD対応プロジェクトチームを発足させています。
・サステナビリティ推進委員会(年2回開催)を設け三菱製紙グループ全体のサステナビリティ推進活動を組織横断的に統括するとともに、その傘下にあるリスクマネジメント委員会の下で、TCFD対応プロジェクトチームの進捗を管理しています。
・脱炭素に係る投資判断は、その重要度に応じて経営会議・取締役会で審議します。
② リスク管理
・サステナビリティ推進委員会の傘下にあるリスクマネジメント委員会が認識している項目から、気候変動に関連したリスクの抽出をしています。またTCFD対応プロジェクトチームで気候変動に関連したリスクを管理しています。
③ 戦略
・TCFD対応プロジェクトチームで洗い出したリスクと機会に対し担当部署で検討の上、対応策を定めています。
・環境省が創設した「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しています。また白河社有林を活用した体験型森林環境学習「エコシステムアカデミー」において、生物多様性や森のめぐみを学ぶ機会も提供しています。
・三菱製紙グループの製品及びグリーン社会への貢献に向けた取り組みについてご理解いただくため、「三菱製紙株式会社公式チャンネルGreen Webcast」を開設し、「Green」をテーマに、当社製品やイベントのご紹介、「エコシステムアカデミー」の活動の様子など、様々な動画配信を行っています。
④ 指標と目標
・2050年のカーボンニュートラルを目指す「三菱製紙グループ環境ビジョン2050」を策定しています。三菱製紙グループは、再生可能エネルギー等の最大利用、炭素固定技術の活用、環境配慮商品の開発を通じてカーボンニュートラルの実現を目指し、日本政府が目指す長期目標「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現」に貢献してまいります。
・2022年度のエネルギー起源CO2国内排出量は707千tです。2013年度エネルギー起源CO2国内排出量946千tと比較して25%(239千t)減とすることができました。2030年までにエネルギー起源CO2国内排出量を2013年比で40%削減し568千t以下を目指します。そのための取り組み体制として、2021年度に「2030年度CO2削減タスクフォース」を立ち上げ、省エネルギーの取り組み及び既存ボイラーの石炭からの燃料転換を推進し、石炭使用量の削減を進めています。
・SCOPE1+2のCO2を含む2022年度温室効果ガス国内排出量は821千tです。2013年度温室効果ガス国内排出量1,064千tと比較して23%(243千t)減とすることができました。2030年度までに2013年比で36%削減し681千t以下を目指します。
・サプライチェーンを含めたCO2削減につきましては、SCOPE3の算定方法を継続調査し、今後の開示について検討を進めてまいります。
・紙の生産には大量の水資源を使用します。2022年度の工業用水取水量は119百万tになりましたが、工程内の水リサイクル(水の循環利用)などを進め、有効利用に取り組んでまいります。なお、各工場には排水処理施設を設置し、工場内で使用した水は法律で定められた基準に基づききれいな状態にした上、放流することで地域に還しています。水質保全にも努め、基準を遵守し、その地域の環境保全に努めています。
・東北地方を中心に約2千haの森林を保有しています。積極的な北東北産の木材使用により国産材自給率向上と森林保全に今後とも継続して努めます。
⑤ シナリオ分析の実施
・人間と地球が共生するため、気候変動による深刻な影響を抑えるためには、地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃未満に抑えることが必要だと考えられています。
・今回の分析で設定したシナリオは、IEAのWEOSDS(持続可能な開発シナリオ)や気候変動に関する政府間パネルIPCCが示す外部シナリオを参照しました。温室効果ガスが排出できないために、社会システムが気候変動の緩和に移行する「カーボンニュートラルな世界」におけるシナリオでは移行リスクが大きくなり、自然の猛威に立ち向かうために物理的な影響への適応が必要な「気候変動の影響が甚大な世界」におけるシナリオでは物理的リスクが大きくなりました。
・想定する複数の世界における移行リスク及び物理的リスクに対し、対応策を講じることで、将来のリスクに対するレジリエンスを高められると考えています。また、それらが組み合わさった厳しい世界でも、それぞれの対応策の組み合わせによって、リスクを低減できると考えています。また、リストアップした機会を捉え、今後の事業拡大を進めてまいります。
・具体的には、以下のような商品群を拡充・増販することにより、中期経営計画に則った事業ポートフォリオ転換の加速による強固な経営基盤の確立を目指してまいります。
〇安全かつ快適なサステナブル社会に貢献する機能商品事業製品
・安全・安心な水の確保に貢献する水処理膜基材
・空気の最適化に貢献するフィルター
・電力の有効利用に寄与する蓄電デバイス用セパレータ
・電子工業材料関連など
〇脱プラ・減プラに貢献する木材由来新製品
・クラフト紙やバリア紙など
⑥ シナリオ分析の結果
表1:シナリオ分析の実施とリスクに対応する戦略・対応策

表2:機会に対する戦略・対応策

※戦略・対応策の網掛けは、重点施策を示しています。
三菱製紙グループでは、「人権・労働に関する理念と指針」に基づき、従業員ひとりひとりが持てる能力をフルに発揮し、働きやすく充実感を持てる職場環境を作り続けていけるよう、様々な取り組みを行っています。
<人権・労働に関する理念と指針>
理念:
私たちは、従業員の人間性を尊重し、職場においては安全を最優先に考え、各人が能力をフルに発揮し、働きやすく充実感を持てる職場環境を作ります。
指針:
1.人権の尊重と差別の禁止
健全な職場環境を維持することに努め、従業員各自の人権を尊重し、セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントなど人権を無視する行為や、出生、国籍、人種、民族、宗教、性別、年齢、各種障害、学歴などに基づく差別につながる行為は一切行わない。児童労働・強制労働は行わない。また、従業員の個人情報については、個人情報保護法に従い、適正に取り扱う。
2.職場の安全衛生の確保
職場においては、安全・衛生の確保を最優先とし、安全で衛生的な職場環境の整備に努め、労働安全衛生法のほか関係法令を理解し、これを遵守する。
3.労働関係法令の遵守
労働基準法ほかの労働関係法を遵守し、働きやすい健康な職場環境の維持に努める。
<人的資本の取り組み>
より活力的で働き甲斐のある企業グループとして発展し、企業価値の持続的向上を目指していくため、働きやすい職場環境づくりと人財育成の強化について、様々な取り組みを進めています。
グローバル競争の激化や日本における超高齢化社会の潮流の中で、技術技能の継承と多能工化推進に向けて採用活動を実施し、適材適所な人財配置に取り組んでいます。
(1) 人財育成の取り組み
① 教育制度の充実
階層別教育、専門職教育等、教育体系の充実
② コンプライアンスの徹底
国内グループ全従業員を対象とするコンプライアンス教育を毎年実施
2023年度はハラスメント防止について国内グループの全社全部署で展開(参加者:2,893名)
③ 活躍機会の多様化
高度専門職(スペシャリスト)制度の制定・活用
④ 自己啓発の推進
資格手当拡充、通信教育制度の補助金支給、ビジネススキル講座受講による能力開発(リスキリング)、英会話補助制度
(2) ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み
① 女性の活躍推進
[2023年度実績]女性社外取締役(1名)、女性常勤監査役(1名)の選任
[2024年度実績]女性社外取締役(1名)、女性執行役員(1名)、女性常勤監査役(1名)の選任
女性管理職比率の向上
「女性活躍のための行動計画策定」による女性採用比率向上等の取り組み
② 外国人雇用の推進
外国人雇用の推進(営業要員確保による海外販売戦略推進、工場操業要員の社員受け入れ)
③ 障がい者雇用の促進
法定障がい者雇用率充足に向けた取り組み実施
④キャリア採用の促進
多様な経験、価値観の活用に向けたキャリア採用の推進
(3) ワークエンゲージメント向上の取り組み
① ワークエンゲージメントサーベイ実施と調査結果に基づく職場ごとの強みや課題の共有
② 職場環境改善ワークショップの実施によるアクションプランの立案・実行
(4) 働き方改革
① フリーアドレス導入による業務の効率化、コミュニケーション活性化
② 育児介護在宅勤務適用対象拡大、時差出勤制度等によるワークライフバランスの充実と生産性の向上
③ 会議体の運用見直しによる会議時間短縮、業務の効率化推進
④ 健康保険組合との連携(健康経営・コラボヘルス推進委員会)による特定健康指導の推進等
<労働安全衛生の取り組み>
三菱製紙グループの事業活動に携わるすべての人の安全と健康を最優先に考え、安心して働ける災害のない職場環境を実現することを目的に、「安全と健康を最優先に考える」を基本理念とする「安全衛生推進計画」を策定し、安全衛生の取り組みを進めています。
(1) 2023年安全成績
労働災害度数率
三菱製紙グループ(協力会含む)の労働災害度数率は、2019年~2021年まで1.83~1.95で推移しましたが、2022年は災害の減少により1.14(日本製紙連合会 労働災害度数率:2.01)となりました。2023年は前年比で災害が増加し、1.41(同労働災害度数率:1.96)となりました。
(2) 2024年三菱製紙グループ安全衛生推進計画
三菱製紙グループで働くすべての従業員が、決めたルールを遵守し、作業時の安全確保を自ら考えるよう、安全意識と危険感受性向上の取り組みを進めます。また、各事業所のトップと本社安全衛生担当部門が連携し、設備の本質安全化や安全指針の策定等を進め、「死亡・重篤災害ゼロ」を達成します。
(3) 心とからだの健康保持増進
心身の健康管理の取り組みとして、過度な疲労やストレスを引き起こす過重労働の防止に向けて、長時間労働の管理基準を設定して管理を強化しています。
① 心身の健康管理
・管理職を含む全従業員の長時間労働防止及び健康管理ルール順守
・定期健康診断結果を踏まえた有所見者に対する二次健診及び特定保健指導の勧奨
② 職場衛生環境の改善整備
職場巡視(パトロール)による点検と指摘箇所の改善(衛生面)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。
(1) 市場及び事業に関するリスク
① 国内需要の減少及び市況価格の下落
国内景気の大幅な後退により、当社グループ製品の機能性材料、インクジェット用紙、写真感光材料、紙・パルプ等の国内需要が大幅に減少した場合や、製品市況が下落した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 原燃料価格の上昇
当社グループが調達する主要原燃料である木材チップ、製紙用パルプ、重油、石炭等の価格は、国際的な需給関係や国際紛争等の影響を受け変動するため、これら主要諸資材の価格が上昇した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 設備投資
当社グループの主要事業である機能商品事業、紙素材事業はいわゆる装置産業にあたり、多額の設備投資資金を要します。当社グループでは、大型の設備投資は将来の需要予測に基づいて実施いたしますが、市場の動向が変化した場合等においては、新規設備の稼働率が十分に上がらない可能性があります。この場合、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 固定資産の減損
当社グループは生産設備等の固定資産を有しております。これらの固定資産は、事業環境の変化によって将来キャッシュ・フローに悪化が見込まれる場合に、固定資産の減損に係る会計基準の適用により、減損損失が発生する可能性があります。この場合、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得の予測に基づいて繰延税金資産の計上・取崩を行っております。経営成績が大幅に悪化した場合には、繰延税金資産の回収が見込めないと判断をし、繰延税金資産を減少させることにより、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 金融及び経済に関するリスク
① 為替変動
当社グループは、原材料の購入及び製品の販売等において、広く外貨建て取引及び外貨ベースでの円建て取引を行っております。輸入取引と輸出取引のどちらか一方に大きく偏っているということはありませんが、為替レート変動の影響を受けることになるため、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 金利の上昇
当社グループは、主に借入れによる資金調達を行っており、大幅な金利の上昇が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 投資有価証券
当社グループは、政策的に保有している取引先の株式等時価のある投資有価証券を保有しております。当社グループが保有する株式等の投資有価証券の時価が大幅に下落した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 退職給付債務
当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の数理計算上の前提に基づいて算出されております。株式市場の下落などにより前提条件が変動した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) その他のリスク
① 災害
当社グループの国内外の事業所、社有林等は、地震、津波、火災等の災害に見舞われる可能性があります。また、テロやサイバー攻撃のような人為的な災害に見舞われる可能性もあります。この場合、保険金で補償される金額を除いて、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 新規感染症拡大
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は各国に甚大な影響を及ぼしました。今後も同様に、感染症が世界的に拡大した場合、需要低迷により、生産販売数量が大幅に減少する可能性があります。この場合、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 法規制又は訴訟
当社グループの国内外における事業は、環境、知的財産、製造物責任等各種の法規制を受けており、それに関連し訴訟等を受ける可能性があります。その結果によっては、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 偶発事象
その他偶発事象に起因して費用や損失が発生し、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループにおいて発生しうるリスクをすべて予測することは不可能であり、リスクは上記に限られるものではありません。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、個々の「重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたって、重要な見積りや計画の策定は、過去の実績や現状を勘案して合理的に行っておりますが、これらは不確実性を伴うため、実際の結果は異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
(固定資産の減損処理)
当社グループでは、固定資産の減損に係る会計基準等に従って減損の兆候判定を行い、兆候があると判断した場合には、将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失の認識・測定を行っています。経営環境や事業の状況の著しい変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、将来の課税所得について合理的な仮定に基づく見積りを行い、繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得に関する仮定について変動が生じた場合などは、将来の連結財務諸表の繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
② 経営成績に関する説明
当期における当社グループを取り巻く環境は、社会活動の正常化やインバウンド需要の復活等により回復基調で推移しました。一方で先行きにつきましては、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりなどによる原燃料価格の高止まりや、世界的な金融引き締めに伴う影響及び中国経済の先行き懸念、円安の常態化など、依然として不確実性が高い状況が続いております。
このような状況下、当社グループは、生産性向上やコスト削減に取り組み、販売面では製品価格改定や新製品の拡販に努めました。
また、当社グループでは、企業価値向上を図るべく「中期経営計画」(2023年3月期~2025年3月期)基本方針に沿って、以下の取り組みを実施しました。
1) 「選択と集中」、「新事業拡大」による収益力の強化
成長事業である、機能性不織布関連事業やエレクトロニクス関連分野の拡大を強力に推進し、事業を伸長させました。今後も「機能商品事業」に集中投資、売上・利益を着実に伸長させ、当社の主力事業にしてまいります。また、選択と集中による構造改革を進める中、当社への子会社の統合、子会社間の統合などのグループ組織再編を行ったほか、ドイツ事業フレンスブルク工場の事業売却、スポーツクラブ運営事業の譲渡、感熱紙加工等の事業の譲渡を実施いたしました。引き続きグループの組織変革を進め、収益性向上とコーポレートガバナンスの強化を図ってまいります。
2) グリーン社会への貢献
当社グループの持続的な成長と中長期的企業価値の向上に向け、また、社会に貢献することを目指して、気候変動が事業に与えるリスク・機会の両面に関して、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示を進めております。CO2排出量削減の取り組みでは、GXリーグ(GX:グリーン・トランスフォーメーション)へ参画し、カーボンニュートラル社会実現に向け、公約した2030年目標の達成に向けた取り組みを推進してまいります。
環境配慮型製品の拡販では、通販や外食テイクアウト等の紙袋用途で需要が堅調なクラフト紙やバリア紙の拡販を進めております。脱プラ・廃プラ、安全かつ快適なサステナブル社会の実現に貢献してまいります。
3) サステナビリティ向上のための組織変革
「三菱製紙グループサステナビリティ基本方針」を制定し、皆様からの信頼と共感を得ることを通して企業価値の向上を図るとともに、さまざまな社会的課題の解決につなげ、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。また、「三菱製紙 ニッシー・カッシーの森」制度を新設、当社グループの事業活動やサステナビリティ推進活動の在り方について、株主の皆様に理解を深めていただき、その一翼を担っていただくことを目的としております。また、コーポレートレポートに代えて統合報告書を発行、コーポレートレポートから内容を一新し、全てのステークホルダーの皆様に当社グループの活動全般をご理解いただくべく、より詳細な情報開示を進めてまいります。
当社グループでは基幹システムを刷新、グループ統一の新たなIT基盤を構築いたしました。工場を含めてデジタル化をさらに推進し、業務効率化や作業安全強化のみならず、企業価値向上に資するDXにも取り組んでまいります。
これらの結果、当期の連結売上高は1,934億6千2百万円(前期比7.7%減)となりました。
損益面では、原燃料価格高騰に対応した製品価格改定やコストダウン効果により、連結営業利益は54億1千万円(前期は連結営業利益9億6千8百万円)、連結経常利益は70億9千8百万円(前期は連結経常利益30億8千9百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は41億7千万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失5億7千1百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりとなりました。
なお、当社は、2023年4月1日付のグループ組織再編及び当社機構改革に伴い各報告セグメントの構成内容を見直し、当連結会計年度よりドイツ事業を含む情報・特殊紙製品を「紙素材事業」から「機能商品事業」、北上工場製品(写真用原紙他)を「機能商品事業」から「紙素材事業」にそれぞれ変更しております。
なお、前連結会計年度間のセグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しています。
(単位:百万円)
(注)調整額は主として内部取引に係るものです。
(機能商品事業)
産業資材関連製品は、蓄電デバイス用セパレータ、リライトメディアの販売金額は前年比増加、エアフィルター、水処理膜基材の販売金額は前年比減少しました。
画像資材関連製品は、インクジェット用紙は販売数量減により販売金額は前年比減少、特殊ドライフィルムレジストは販売数量増でしたが、販売金額は前年比減少しました。
情報資材関連製品は、感熱紙、ノーカーボン紙、PPC用紙の販売数量は前年比減少しましたが、価格改定効果を維持し販売金額は前年比増加しました。
建築資材関連製品は、テープ原紙の販売金額は前年比増加、化粧板原紙の販売金額は前年比減少しました。
ドイツ事業は、景気後退懸念による需要減少等の影響を受け、販売数量、販売金額ともに減少しました。
この結果、機能商品事業全体としては、減収増益となりました。
産業資材事業においては、さらなる品質向上による競争力強化や、海外拠点を活用したグローバルな販売強化を図り、水処理膜基材は工業用及び海水淡水化プラント用途、蓄電デバイス用セパレータは電気二重層キャパシタ及びコンデンサ用途、フィルターは全熱交換用途など成長分野の需要取り込みに取り組んでまいります。
画像資材事業は、特殊ドライフィルムレジストの通信デバイス用途と今後市場拡大が期待できる車載関連用途の拡販に取り組んでまいります。イメージングメディア関連事業は、画像出力や印刷向けの需要が減少しているものの、サイネージ・ラベル用途、産業用インクジェットの拡販、アジア新興国向けへの拡販により数量の拡大に努めるとともに、適正な生産体制の構築を図り、収益向上に取り組んでまいります。
情報資材事業は、引き続き収益の安定化に取り組むとともに、感熱紙はPOS市場、PPC用紙はFSC認証紙製品などの高付加価値品の拡販に取り組んでまいります。
建築資材事業は、米中の住宅不況の回復に伴う化粧板原紙の輸出による増販に取り組んでまいります。
ドイツ事業は、引き続きビーレフェルト1工場体制における事業構造改革を推進し、収益の安定化を図ってまいります。
(紙素材事業)
印刷用紙の国内市場は、需要の減少により販売数量は前年に比べ減少したものの、販売金額は前年度実施した価格改定の効果により増加しました。輸出は円安の市場環境下、販売数量、販売金額ともに前年を上回りました。生産体制については需要動向を見極めながら、効率生産、在庫削減を意識して進めてまいりました。
市販パルプは、生産設備の事故影響から、販売数量、販売金額ともに減少しました。
この結果、紙素材事業全体では、減収増益となりました。
印刷用紙に関しては価格維持、生産体制最適化と在庫水準適正化の取り組みを継続してまいります。
また、包装紙に関しては、環境意識の高まりを背景に脱プラ・減プラ需要が堅調であることに相まって、当社クラフトコート紙の印刷性が高く評価されており、採用実績を積み重ねております。環境配慮型製品であるバリア性とヒートシール性を有する包装紙(バリアコート紙)などのラインアップを拡充し、増販しております。さらに八戸・北上両工場のシナジー効果の最大化とコストダウンの追求により生産体制の効率化に取り組み、事業基盤を一層強固にしてまいります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっております。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
流動資産は、棚卸資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ70億9千3百万円減少しました。
固定資産は、投資有価証券の評価差額や退職給付に係る資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ154億1千5百万円増加しました。
この結果、当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ83億2千1百万円増加し、2,353億8千万円となりました。
負債は、借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少により、当連結会計年度末における残高は、前連結会計年度末に比べ105億9千万円減少し、1,444億2千5百万円となりました。
非支配株主持分を含む純資産は、退職給付に係る調整累計額の増加等により、当連結会計年度末における残高は、前連結会計年度末に比べ189億1千2百万円増加し、909億5千4百万円となりました。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ6.9ポイント改善し、38.6%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ16億8千3百万円増加し、100億9百万円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ162億8百万円増加し、134億8千7百万円となりました。収入の主な内訳は、減価償却費77億2千7百万円、棚卸資産の減少94億9千7百万円、支出の主な内訳は、仕入債務の減少33億3千6百万円であります。
投資活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ73億9千3百万円増加し、38億2千7百万円となりました。収入の主な内訳は、有形及び無形固定資産の売却による収入29億3千1百万円、投資有価証券の売却による収入31億8千4百万円であり、支出の主な内訳は有形及び無形固定資産の取得による支出16億8千2百万円であります。
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ214億7千4百万円増加し、162億6千4百万円となりました。これは主に借入金の返済によるものです。
当社グループの運転資金需要の主なものは、原燃料購入費用、製造諸費用、販売費及び一般管理費等であります。投資資金需要の主なものは、既存設備の改善や効率向上、省エネルギー対応などの性能向上、成長分野での事業拡大と多様な新規事業の確立に向けた設備投資などであります。
当社グループの運転資金及び設備資金については、自己資金、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパーの発行等により充当することとしております。また、資金調達手段の多様化として売掛債権の流動化も実施しております。長期借入金の資金調達につきましては、金利動向等の市場環境を見ながら、シンジケート・ローンの活用など調達手段や調達時期を適宜判断して実行しております。
また、当社グループ内では、キャッシュ・マネジメント・システムを導入して資金の一元管理を行い、資金効率の向上を図っております。
経営上の重要な契約等は次のとおりであります。
研究開発本部では、中期経営計画の事業戦略に沿った次の3つの研究開発方針を掲げています。成長事業である機能商品事業の拡大につながる商品開発。「紙」から「素材」への転換と環境配慮型商品の拡販につながる商品開発。事業の支えとなる力強い研究開発体制の構築。この方針のもと、既存分野の深化および周辺領域との相乗による基盤技術強化、ならびに新規分野の探索・開拓を積極的に行っています。
研究開発本部は、「企画」「開発」「支援」の部門から組織されています。「企画」は、2023年4月に設立された研究開発企画部にて、機能商品および紙素材の両事業部を、研究開発企画、市場情報収集、人材育成、技術共有、進捗管理などからサポートし、全社的な視点から研究開発を推進しています。「開発」は、工場で生産している製品および関連製品の研究開発と技術支援をスムーズに行い、開発を加速し、各事業分野の収益に確実に貢献するために、生産場所である工場の敷地内に開発部隊が置かれています。高砂工場内には、機能性不織布の開発をメインテーマとする高砂R&Dセンターが、京都工場内には、イメージングメディア、エレクトロニクス、医療・ヘルスケア関連製品などの開発をテーマとする京都R&Dセンターが置かれています。八戸工場には、商品開発部の開発部隊が常駐して、紙素材のポテンシャルを追求することを信条とした用途開発を行っています。また、パルプの用途開発は、研究開発部門が一丸となって探索を進めています。「支援」は、分析部門と知的財産部門が、研究開発本部直轄の組織として、京都R&Dセンター内で戦略的に開発部隊を支援しています。
また、2024年7月にはKJ特殊紙との合併により、KJ特殊紙の研究開発部門を統合し、特殊紙の研究開発の強化を行います。
当連結会計年度の研究開発費は
当社が手掛ける事業分野は、機能商品事業と紙素材事業です。事業分野ごとの研究開発活動は、次のとおりです。
機能商品事業分野においては、機能材関連製品、イメージングメディア関連製品の研究開発を進めています。
①機能材関連製品
機能材関連製品としては、高機能不織布製品の開発にリソースを集中し、水処理膜支持体、蓄電デバイス用セパレータ、耐熱材料、その他の機能性材料の開発に取り組んでいます。
水処理膜支持体については、逆浸透(RO)膜の高性能化・低コスト化に向けた基材の開発に取り組んでいます。また、食品・製薬用途向けフィルター用不織布などの開発を進めると共に、派生製品として、水素エネルギー関連製品の開発を進めています。
蓄電デバイス用セパレータ「NanoBase」については、使用される電子機器の小型化及び高性能化に適応するための要素技術の開発と製品の改良を進めております。
耐熱材料については、建材用途などの耐火性・耐熱性・断熱性が求められる分野へ向けて、高耐熱性ガラス繊維不織布を開発しております。その他機能性材料については、環境配慮型商品であるリサイクル炭素繊維不織布などの開発にも力を入れています。
エレクトロニクス関連製品については、電子工業向けの機能性フィルムとして、エッチング、エレクトロフォーミング、サンドブラストなどの精密フォトファブリケーション加工に用いる、特色のあるドライフィルムフォトレジストを開発しています。そして、高解像性、高耐薬品性などの機能を向上させ、情報・通信機器製造、半導体製造装置の部材加工、自動車電装部品加工用途等の電子工業分野への進出を推進しています。
医療・ヘルスケア関連製品については、生殖医療の発展に貢献する、研究用卵子・胚の凍結保存用デバイス「Diamour」の販売拡大、畜産用途への展開、周辺部材の開発を推進しています。
子会社のKJ特殊紙では、建築分野、環境分野、医療衛生分野への展開の観点からの商品開発を進めています。建築分野では内外装の塗装に使用する和紙マスキングテープの開発に取り組んでおり、グローバルな視点で、顧客からの様々なニーズに対応しております。環境分野については、有害物質処理装置に搭載する無機繊維シートの開発及び性能向上に取り組んでいます。医療衛生分野については、ヒートシール性を付与した紙タイプ及び不織布タイプの医療包装材料の開発及び性能向上に取り組んでいます。
②イメージングメディア関連製品
イメージングメディア関連商品としては、インクジェット用紙、写真感光材料などのイメージングメディア製品、これらイメージングメディア製品の開発で蓄積した技術を活かしたエレクトロニクス関連製品、医療・ヘルスケア関連製品などの成長分野での商品開発を進めています。
インクジェット用紙については、テキスタイル分野において環境負荷が低い昇華転写用デジタル捺染紙のラインナップを拡充して、国内、北米およびアジアを中心に市場開拓を推進しています。また、高速化、高精細化に対応した、新しい産業用インクジェット用紙の開発に取り組んでいます。
写真感光材料については、スクリーン印刷版、フレキソ印刷版を作製するときに用いる、サーマルレーザー製版用銀塩感熱フィルム「TRF-IR830」を製品化し、販売拡大に努めております。感熱ヘッドによる直接描画タイプ「TRF-IFM175」も開発いたしました。これらは薬液による現像処理が不要な完全プロセスレスフィルムであり、環境負荷を大幅に低減した環境配慮型商品です。「TRF-IR830」は日本印刷学会の2024年度の技術奨励賞を受賞しております。
また、情報資材分野では、物販系Eコマース市場と共に需要が堅調な物流ラベル市場に向けて、環境に配慮した再湿糊型ライナーレスラベル「Water Thermal」を開発しました。プリンタメーカーでは量産型の専用プリンタの開発をスタートしており、ライナーレスとシリコーンレスを同時に実現するサステナブルなラベルシステムとして紹介を進めています。
当連結会計年度の機能商品事業での研究開発費は
紙素材事業分野においては、容器包装プラスチックに代わる包装材料、印刷用紙などの紙素材の新規製品の研究開発を進めています。
拡販を進めている包装材料については、晒クラフト紙をベースとした片面クラフトコート紙(晒クラフトコートN FSC認証-MX)が大手菓子メーカーの2次包装商品パッケージに採用されました。これは、軟包装向けに開発したコート層による鮮やかな発色性と優れた屈曲耐性、ベースの晒クラフト紙による製袋加工時や輸送時に耐えられる強度などの品質面とFSC森林認証紙としての環境配慮面が高く評価されたものです。これまで軟包装分野の紙化包装で課題であった発色性の問題を解決できる素材として様々なユーザーから引き合いが来ております。
また、これまで晒クラフト紙では無かった両面に艶感を持たせた「両艶晒クラフト紙」も開発するなど、晒・未晒のクラフト紙分野での品質改良を行い包装材料分野の商品を拡充しました。
印刷用紙分野では、新たに印刷光沢と不透明性を両立させた薄物印刷用コート紙を開発し、大手通販会社に新規採用されました。
パルプ素材については、紙製品用途以外への有効活用技術を探索しています。
当連結会計年度の紙素材事業での研究開発費は