当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、社員と企業の「革新と成長」を通じ、人と社会と地球環境に貢献することを企業理念とし、電池で培った先進のエネルギー技術で世界のお客様へ快適さと安心をお届けして参ります。以下の経営の基本方針に従って、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指して参ります。
・サステナビリティ課題の解決に貢献し、社会と共に永続的に成長します。
・公正で健全な経営を遂行し、持続的な成長を支える強固な事業基盤を保持します。
・多様なステークホルダーと対話し理解を得ながら、信頼関係を構築します。
当社グループは、2023年4月に長期ビジョン「Vision2035」並びに「第六次中期経営計画」を策定いたしました。第六次中期経営計画をVision2035で描くありたい姿の実現に向けた変革のための土台作りの期間と位置づけ、事業構造変革に向けた以下の諸施策を実行して参ります。
・本田技研工業㈱との合弁会社を活用した高容量・高出力なリチウムイオン電池開発
・モビリティ・社会インフラビジネス拡大のためのBEV用電池生産/供給体制整備
・徹底した付加価値創出と収益性改善
・国内産業電池電源事業における圧倒的な優位性による利益の最大化
・中国事業見直しを含む地域戦略の転換、主要拠点へのリソース集中と利益の最大化
・事業構造転換を可能にするDX推進
・社会課題解決に貢献する新規事業創出
当社グループは、「第六次中期経営計画」において、2026年3月期の連結での売上高6,100億円以上、営業利益410億円以上、ROE8%以上、ROIC10%以上、総還元性向30%以上を目標数値としています。なお、各指標はのれん等償却前利益(営業利益・当期純利益)に対するものです。
カーボンニュートラルの動きは世界規模で加速しており、特に欧州や中国、日本では電動化や再生可能エネルギーの導入に向けた動きが顕著になっています。当社の事業はサステナビリティとの親和性が高く、気候変動やエネルギー資源の問題解決が人類全体のテーマとなる中で、当社の社会的使命と責任はさらに大きくなっています。
当社がこれからの社会に貢献していくためには、培ってきた電気を蓄える・使う技術の更なる革新とともに、それらの技術を社会インフラとして広く実装・運用していくことが重要です。エネルギーデバイスの開発・製造・販売から、エネルギーを社会全体で使いこなすためのエネルギーマネジメント、さらにその先にあるエネルギー資源循環にまで視野を広げ、サステナブルな社会の実現に貢献して参ります。
カーボンニュートラルの潮流を時代の変節点と捉えており、急激に市場環境が変化する中、2035年に向けた長期ビジョン「Vision2035」を策定しました。Vision2035で「2035年のGSユアサのありたい姿」を示した上で、実現に向けた変革のための土台作りの期間として、2023年度から2025年度までの3年間の第六次中期経営計画を策定しています。第六次中期経営計画で挙げる事業構造変革に向けた諸施策を実行することが当社の課題であると認識しています。
需要変動への迅速な対応と在庫削減を両立する供給体制を構築するとともに原材料価格などの適正な売価反映による収益率の向上を図ります。また、中国事業の抜本的見直しを推進する一方、ASEAN拠点の強化による利益の最大化に取り組み、選択と集中による将来に向けた経営体制の変革と収益の強化を図って参ります。
常用分野において次世代の成長を取り込む事業基盤を構築すべく長期的な社会インフラビジネス拡大に向けた準備を進めるとともに、非常用分野においてはこれまでのビジネスモデルを拡張したサービスの事業化や顧客への更なる付加価値提供を通して収益性向上を図ります。また、海外市場における製品ラインアップ拡充による競争力の強化に取り組みます。
ハイブリッド車用電池の更なる増産体制の構築ならびに収益性の向上を図るとともに、BEV用電池については本田技研工業㈱との共同研究による高容量・高出力な電池の開発、生産/供給体制の整備に取り組んで参ります。
当社といたしましては、品質重視の基本姿勢に基づいた事業運営によりお客様に安心と信頼を提供するとともに、「革新と成長」の企業理念のもと、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けた事業基盤の構築に努めて参ります。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、グループ全体におけるサステナビリティへの取り組みを中長期的かつ多角的に推進するために、当社取締役会の監督のもと、サステナビリティ推進委員会を中心とした体制を構築しています。
本体制では、当社取締役社長が「サステナビリティ推進最高責任者」としてグループ全体のサステナビリティへの取り組みを統括し、当社グループにおける経営上の重要な意思決定を行う当社取締役会を中心としたコーポレート・ガバナンス体制がグループにおけるサステナビリティ経営の適切性を統括管理しています。また、グループの業務執行における意思決定機関の中心的存在である中核事業子会社(㈱GSユアサ)にサステナビリティ課題全般に関する協議、立案、推進を行う会議体(サステナビリティ推進委員会)を設置して、グループ全体におけるサステナビリティ経営への取り組みを推進しています。
サステナビリティ推進委員会は、重要なサステナビリティ課題の解決に向けた中長期的な取り組みを推進する役割を有する役員(コーポレートコミュニケーション担当役員)を委員長とし、主要な事業部門やグループ会社の責任者などによるメンバーで構成されています。本委員会では、各部門やグループ会社が取り組むべきサステナビリティ課題に関するリスク及び機会への対応状況などを管理しています。
本委員会で協議した重要事項(サステナビリティに関する方針の制改訂、重要なサステナビリティ課題に関するリスク・機会への対応など)については、取締役会(当社、中核事業子会社)の決議を経て、グループ全体に展開しています。また、当社グループに関するサステナビリティ情報を社外に公表する際には、当該情報のレビュー及び承認を取締役会で実施しています。
サステナビリティ推進体制

コーポレート・ガバナンス体制の詳細は、「
当社グループは、当社グループの不変的な価値観を示した企業理念を基盤としたサステナビリティ推進プロセスを運用することによって、企業価値とステークホルダー満足度を向上させることを目指しています。
当社グループでは、企業理念を実践するために、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指す方向性を示したサステナビリティ経営方針を策定しています。本方針では、ステークホルダーとの対話を重視し、サステナビリティ課題の解決への貢献や強固な事業基盤を保持する旨をコミットメントしています。
サステナビリティ経営方針の達成に向けては、中長期的な事業戦略プロセス(サステナビリティ課題を考慮した長期ビジョンの達成に向けた中期経営計画など)を運用しています。また、本方針の達成に向けて制定した従業員の行動指針(以下、CSR方針)に関連するサステナビリティ課題への取り組みを推進しています。いずれも、ステークホルダーのニーズ・期待及び社会・環境・経済に関する課題を考慮に入れた上で、社会及び当社グループの経済的な成長と持続性を確保するための事業計画を策定しています。また、サステナビリティ課題に関連する重要なリスクや機会への対応状況を適切に分析・評価し、必要な計画の見直しを行うことで、サステナビリティへの取り組みに対する継続的改善を図っています。なお、CSR方針の実践に向けては、責任ある企業行動における具体的な行動基準を明確にしたCSR行動規範を策定して、従業員に周知しています。
サステナビリティ推進プロセスの概要

CSR方針に関連するサステナビリティ課題への取り組みの概要
●公正、透明かつ健全な事業活動の推進と腐敗の防止
●人権の尊重
●適正な労働環境の維持、向上
●安全、安心な製品、サービスを提供する責任の遂行
●地球環境の保全
●地域社会との共生
●サプライチェーンにおける社会的責任活動の推進
企業理念、サステナビリティ経営方針、行動指針の詳細は、「
長期ビジョンの詳細は、「
CSR方針に関連するサステナビリティ課題への取り組みの詳細は、「
当社グループは、サステナビリティ経営方針を達成するための行動指針(CSR方針)に係るリスク・機会を特定し、事業及び社会への影響を評価してCSR方針に関連する重要なサステナビリティ課題(マテリアリティ)を明確にしています。また、事業基盤の強化や企業価値の向上などの観点を考慮した上で、マテリアリティに対応する事業計画(マテリアリティ対応計画)を策定し、計画の進捗状況を図る経営指標及び目標を設定しています。なお、マテリアリティ及びマテリアリティ対応計画の内容については、当社グループのサステナビリティを推進する会議体(サステナビリティ推進委員会)が、ステークホルダーのニーズ・期待やサステナビリティ課題などを考慮して、定期的に見直して決定しています。また、CSR方針に係る重要なリスクについては、当社グループのリスク管理システムを活用して、適切なリスク対応を実施しています。
当社グループは、マテリアリティを長期ビジョンや中期経営計画に組み込んだビジネスプロセスを運用することにより、財務・非財務の両面で経営の質を向上させ、事業と社会の持続可能な成長を目指しています。
長期ビジョン、中期経営計画の詳細は、「当社グループHP
マテリアリティの特定プロセス
●ステップ1:CSR方針に係るリスク及び機会の抽出
サステナビリティ経営方針に基づいて策定した中期経営計画の重要課題を考慮に入れて、CSR方針に係るリスク及び機会を抽出しています。リスク及び機会を抽出する際には、責任ある企業行動に係る国際的なガイドラインを参考にしています。
●ステップ2:CSR方針に係る重要なリスク及び機会の特定
ステップ1で抽出したリスク及び機会に対するスコアリング評価を実施して、事業影響の大きなリスク及び機会を特定しています。次に、事業影響の大きなリスク及び機会に対して、当社グループの事業活動が社会に与える影響を評価して、CSR方針に係る重要なリスク及び機会を特定しています。
CSR方針に係る重要なリスク及び機会を特定する領域(CSRの重点領域)

●ステップ3:マテリアリティの決定
ステップ2で特定したリスク及び機会を分析して、CSR方針に関連する重要なサステナビリティ課題(マテリアリティ)を決定しています。なお、マテリアリティの適切性を確保するために、外部有識者などのステークホルダーの意見を取り入れて、マテリアリティを決定しています。
当社グループは、2023年度を初年度とする中期経営計画を展開する際に、当該計画におけるサステナビリティ課題を組み込んだ新たなマテリアリティ対応計画を策定しました。2022年度のマテリアリティ対応計画の総括やマテリアリティの見直しを行った上で2023年度以降のマテリアリティ対応計画を策定しています。本計画では、指標や目標を設定してサステナビリティ課題における社会への影響を管理するだけでなく、事業への影響を把握する財務的な指標を用いて計画の達成状況を評価しています。
マテリアリティについては、測定可能な目標管理や管理基準に基づく運用管理などを実施して、継続的な改善や効果的な維持管理を図っています。なお、策定した計画内容については、サステナビリティ課題やステークホルダーのニーズ・期待の変化に応じて、必要な見直しを行っています。
当社グループのマテリアリティに対応する計画の概要と本計画が社会及び事業に及ぼす影響については、「
当社グループは、気候関連課題が重要な経営課題の1つであると認識しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を2019年12月に表明し、TCFDフレームワークに基づく気候関連の情報開示に取り組んでいます。
詳細は、
当社グループでは、中核事業会社である㈱GSユアサにおいて、気候変動への対応策を立案・実施しており、当社(㈱ジーエス・ユアサ コーポレーション)は取締役会において、㈱GSユアサから定期的にこれらの進捗の報告を受け、必要に応じて指導するなどし、グループ全体を統括しております。
㈱GSユアサでは、環境関連の方針/目標や重要項目は、サステナビリティ推進委員会で立案/協議され、取締役社長が責任者を務める経営ヒアリング・経営会議へ報告されます。このようなガバナンスの下、これまでに、「TCFD提言」への賛同や、「GY環境長期目標2030」を公表し、気候関連課題への取組みを進めてきました。また、2023年4月に発表した「Vision2035」にて2050年カーボンニュートラル宣言を行いました。
当社グループでは、㈱GSユアサの各事業部及び本社部門によるプロジェクトチームにて、全社横断的にシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では、1.5℃及び3℃の気温上昇を想定し、IPCCやIEA等の国際機関のシナリオを参照しています。また、シナリオ分析の終了年は、短期(2025年)、中期(2030年)、長期(2050年)と設定しました。
シナリオ分析実施の結果、例えば、1.5℃シナリオにおける重要な移行リスクとして、「炭素税の上昇、再エネ導入対応に伴うコスト増」、「自動車市場の変化(ガソリン車市場の縮小、電動車市場の拡大)」を特定しています。また、3℃シナリオにおける重要な物理的リスクとして、「風水害による施設損害、事業停止による利益損害の増加」、「激甚災害対策のための非常用電源の需要拡大」を特定しています。また、特定した重要なリスク・機会に対して、対応策を検討し取組を進めています。
気候変動によるリスクを完全に予測することは困難ではありますが、1.5℃、3℃それぞれのケースにおけるリスク・機会を認識し、適切に対応することで、レジリエンスを高めてまいります。
当社グループでは上記ガバナンス体制の下、以下のとおり、気候関連のリスク・機会の特定及び評価を実施しています。

また、シナリオ分析の実施により特定した重要なリスクと機会は、上記のガバナンス体制の下で管理しています。
当社グループでは、2021年5月に「GY環境長期目標2030」(2030年度CO2排出量を2018年度比30%以上削減)を公表し、CO2の削減を推進しています。そして、2050年までにカーボンニュートラル達成を目指します。
また、2022年3月にはインターナルカーボンプライシング(ICP)制度の導入を公表しています。2024年度には価格設定を8,600円/t-CO2から15,000円/t-CO2に改定し、CO2排出量に影響を及ぼす設備投資へ活用し、事業活動におけるCO2削減を推進します。
●人的資本に対する考え方
創業以来、企業理念である「革新と成長」と100年にわたり磨き上げた蓄電池技術の持続的な発展という技術革新へのこだわりは、今後も変えてはならないものです。
今後も当社が「革新と成長」を続け、社会課題を解決し長期ビジョン「Vision2035」を実現していくためには、未来を創る人材の力が必要であり、様々な環境変化や新たな価値提供に向けた事業構造・技術変革に挑戦していく柔軟性と強靭性が重要となります。
当社では、多様性こそ競争力の源泉であると考え、経営課題の一つとしてダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)を掲げています。人事領域においても、人事部基本方針として、「当社で働く一人ひとりの個性・能力を尊重し、いきいきとやりがいを持って働ける環境を提供する」ことを掲げ、第六次中期経営計画では、「DE&Iの推進」と「経営戦略との連動」を人事戦略の大きな柱としています。
人事戦略の実行により、いきいきとした組織が増え、誰もが今後の「革新と成長」をリードする自律型人材となり、生産性向上とイノベーション創出を加速していくために戦略的な人的資本への投資を実施しています。
●「Vision2035」の実現に向けて
「Vision2035」を実現し得る人的資本のありたい姿として、「革新と成長」をし続けるために、誰もが持てる自身の価値観、経験、技術、知識を最大限に発揮できる挑戦の機会が与えられており、個人と会社がともに成長している実感が持てるウェルビーイングな状態(※)でありたいと考えています。
※選択可能であること、個人にとっても、会社にとっても良い状態になっていること
そのための戦略として、人材の成長・活躍の仕組みとなる人材育成方針と多様性発揮のための社内環境整備の二軸で取り組みを展開しています。
当社グループでは、中核事業会社である㈱GSユアサにおいて、人的資本・多様性への対応を立案・実施しており、当社(㈱ジーエス・ユアサ コーポレーション)は取締役会において、㈱GSユアサから定期的にこれらの進捗の報告を受け、必要に応じて指導するなどし、グループ全体を統括しております。
㈱GSユアサでは、人的資本関連の方針/目標や重要項目は、サステナビリティ推進委員会で立案/協議され、取締役社長が責任者を務める経営ヒアリング・経営会議へ報告されます。
◆人事戦略体系図

人材育成方針
企業理念である「革新と成長」を体現する「自律型人材」を育成し、多様な人材が活躍できる仕組みを構築するためのフローを描き、施策を展開しています。
また、自律型人材である成長意欲の高い人材により積極的に投資していきます。誰もが、自己革新のための主体的に学べる機会を得られる教育体系を整備しており、年齢や経験年数に関係なく重要な役割・仕事に就き、仕事の成果に見合った評価ができる人事制度の導入を検討しています。
これらの取り組みにより、社内の人材の流動性を高め、社員自身が選択し、成長していくことで、エンゲージメントを高め、新たな価値創造を加速させます。
また、持続的な当社グループの成長には、グローバルな視点でのリーダー育成が重要です。事業間の人材の流動性だけではなく、次世代を担う人材への教育とタレントマネジメントによる計画的な育成を推進していきます。
<人材情報の一元管理の開始>
経営戦略と連動した適所適材の人材配置の実現のために人材情報の一元管理を行います。タレントマネジメントの活用推進により、グローバルな革新と成長をリードする次世代リーダーの育成と事業を取り巻く環境の変化に合わせたスムーズな社内の人材の流動性を確保し、経営戦略にスピーディーに対応することができると考えています。
また、従業員の視点では、自身のスキル・能力の伸長度合いを把握し、成長実感を持つことにより、自己革新に対する意欲とエンゲージメントが高まり、自律型人材の育成に寄与すると考えています。
<人事処遇制度の改定>
管理職へのジョブ型人事制度の導入を目指しています。これまでの制度よりも、年齢や経験年数に関係なく、より役割・仕事に求められる専門性に紐づいた処遇を行うことで、従来よりもチャレンジングな役割・仕事への挑戦をしやすくすることで、自律的なキャリア形成と経営戦略へのスピーディーな対応を実現します。
<多様な研修体系の整備>
従業員一人ひとりが描くキャリアビジョンの実現と会社の新たな価値創造を両立させるための研修体系を整備しています。従業員の多様なキャリア開発を支援するために、これまで実施してきた階層別のキャリア開発研修に加え、キャリア自律のための階層別・年齢別のキャリアデザイン研修を導入しました。また、キャリア面談を有効に実施していくための管理職に向けたサポート研修も取り入れ、従業員のキャリア自律を支援しています。
経営戦略と連動したスキル習得に向けては、今後の事業の競争力を生み出す上で重要となるDX人材育成を目的とした「育成道場」を立ち上げました。今後は、個々の業務に応じて必要となる技術・技能習得など学べるビジネススキル研修や新規事業創出に活かすための発想力研修など従業員自身が選択して受講できる仕組みを導入する予定です。また、獲得したスキルを発揮する場のひとつに、新規事業創出のチャレンジ活動である「Bizチャレ」を立ち上げています。「Bizチャレ」は、全従業員を対象とした新規事業のアイデア創出・提案ができる仕組みであり、当社の誰もがこれからの「革新と成長」のための機会を生み出すことができます。
<社内公募制の導入>
キャリア開発については、自己申告制度を用いたキャリア形成に関するレビューと、各階層へのキャリア開発研修を展開し個人のキャリア形成を支援しています。個人が目指すキャリアをサポートする仕組みとして、社内公募制を導入し、自律的なキャリア形成を促進しています。
◆人材育成の基本

◆研修体系

※㈱GSユアサにおける人事部が主催する研修の体系
◆人材育成に関する研修時間(2023年度)
※ ㈱GSユアサにおける人事部が主催する研修の実績です。
※ 対象期間は2023年4月から2024年3月までです。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
※ 有期労働者には、契約社員、再雇用社員、嘱託社員を含み、派遣社員は除きます。
環境整備方針
人事部基本方針に基づき、一人ひとりの個性・能力を尊重し、いきいきとやりがいを持って働ける環境を提供するために、働きやすさと働きがいを重視した取り組みを実施しています。
いきいきと働くことができる働きやすさと働きがいを生み出すために、社員一人ひとりのライフステージに応じた柔軟な働き方ができる仕組みと、多様性の拡大や理解推進のための教育機会の提供、エンゲージメントを高めることができる組織風土の醸成に積極的に取り組んでいます。
<メンタリティ・マネジメント診断結果を活用した組織改善活動>
当社では、従業員が能力を十分に発揮し、心身ともに健康で働き続けられる環境を整備することが、労働生産性の向上、イノベーションの創出、多様な人材の確保に寄与すると考えています。
そして、従業員・組織の状態をモニタリングするために、エンゲージメントとメンタルヘルスを掛け合わせたメンタリティ・マネジメント診断を導入し、年1回測定しています。
測定結果については、集団分析結果を用いた組織改善活動を展開し、ワークエンゲージメントとメンタルヘルスの双方が良好な「いきいき組織」づくりを推進するほか、様々な人事施策の効果を確認するために、個人のキャリア自律に対する捉え方、上司・同僚などの信頼関係や心理的安全性の担保、ダイバーシティへの対応状況などの結果を複合的な視点で分析し、施策の効果検証と改善に活用しています。
当社の中核事業会社である㈱GSユアサにおいては、経営課題および人事部基本方針としてDE&Iを積極的に推進しています。2018年度に「GYみらいプロジェクト」を発足し、多様な人材の採用と育成、および一人ひとりが最大限能力を発揮できる環境整備を推進しています。一人ひとりの特性を活かし、多様な働き方やキャリアビジョンの価値観が尊重され、ウェルビーイングな状態であり続けることを支援しています。
<多様な人材の確保>
●キャリア採用の強化
多様な専門性、バックグラウンドを持つキャリア人材の採用を積極的に行っています。また、キャリア人材がこれまで培ってきた個性・能力を早期に最大限発揮できるよう、キャリア入社者同士の相互の人材交流や、歴史を知るための研修を開催しています。
◆新規雇用者の人数と比率(2023年度)
※ ㈱GSユアサにおける全労働者の実績です。
※ 全労働者には正規雇用労働者と有期労働者を含みます。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
※ 有期労働者には、契約社員、再雇用社員、嘱託社員を含み、派遣社員は除きます。
●外国人雇用の取り組み
技術・専門知識を有する外国人を国籍問わず採用できる活動を推進しています。また、それぞれの国の慣習、文化的価値観、宗教などを理解し尊重することが、良好な関係を築き、事業運営を効果的に進めることに繋がると考えています。
●障がい者雇用の促進
特例子会社の株式会社GSユアサ ソシエは、障がい者の雇用を積極的に行っています。全国の様々な企業との情報交換や交流を積極的に行っており、障がいの有無にかかわらず、いきいきとやりがいを持って働ける環境づくりにも力を入れています。また、障がい者採用サイトを新設し、雇用慣行データの開示や働く従業員、安心・安全で働ける環境についても情報を開示しています。
<柔軟な働き方の整備>
ライフステージやライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができる仕組みを導入しています。
在宅勤務の推進やフレックスタイム制度など自己裁量による生産性向上を意識した制度や、育児・介護と仕事との両立を支援しています。今後は、さらに働き方に関する考え方の多様化が広まっていくと考えられ、多様な人材を確保する上でも、従業員のニーズを踏まえ、いきいきと働ける多様な働き方を検討・展開していきます。
●環境基盤づくり
仕事と家事・育児・介護等の両立支援により、長時間労働の削減と年休取得率が向上しました。また、男性の育児休業取得者が増加し、両立に対する理解が全社に浸透してきました。
◆年間平均総労働時間の推移
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者の実績(休職者・海外駐在員除く)です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
※ 正規雇用労働者のうち管理職を除く一般社員のみのデータです。
※ 所定労働時間から休暇取得時間および不在時間(遅刻、早退など)を差し引いた時間です。
※ 毎年度1月から12月
◆年次有給休暇取得率の推移
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者の実績(休職者・海外駐在員除く)です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
※ 正規雇用労働者のうち管理職を除く一般社員のみのデータです。
※ 法定付与日数に対する取得率(2022年度): 100.9%
※ 毎年度 当年9月から翌年8月
◆育児支援制度の活用状況(育児休業)
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者の実績です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
<女性活躍推進>
DE&I推進は、全従業員の「キャリア形成」と「仕事とライフイベントの両立」の二軸で進めており、スローガンに3つのL「Link:従業員のつながりを強化して」「Life:仕事とライフイベントの両立を支援し」「Lead:自律と成長の機会へ導こう」を掲げております。更なる多様な人材の活躍による新たな価値創出と生産性向上こそが競争力強化と企業価値向上に繋がるものであり、とりわけ女性活躍推進を最重要課題と位置づけております。
女性活躍推進や従業員エンゲージメントなどの項目で構成される当社独自のESG指標を、中核子会社である㈱GSユアサの役員の短期業績連動報酬算定の評価要素としております。
●経営層との対話
女性活躍推進を「経営戦略」の最重要課題と位置づけ、経営トップが旗振り役となり進めています。また人材の多様性を活かした持続的成長の実現には、中長期の目標や組織の意思決定に関わる女性幹部社員の増員が課題であり、経営層との対話を行いながら取り組んでいます。
女性活躍推進におけるKPIは、事業戦略へと組み込み、取締役会やサステナビリティ委員会において取り組みの状況及び投資家からの意見を報告し、経営層との議論を定期的に行うことによりコミットメントを高めています。
●従業員との対話
女性活躍推進の取り組みを進める中で、当社中核子会社である㈱GSユアサの女性社員の現状を把握すべく、意見交換会を実施しました。若手層、中堅層でそれぞれ異なる課題が浮き彫りになり、人事管理上のサポート、能力発揮を促す環境整備、キャリア意識向上のサポートに対する打ち手を展開してきました。
●「GYみらいプロジェクト」の取り組みと成果
当社中核子会社である㈱GSユアサは2004年に仕事と育児の両立支援を開始、育児をする女性も働き続けられる環境作りからスタートし、2015年からは男女問わず能力を発揮できる環境作りを進めました。2018年GYみらいプロジェクトを発足、ダイバーシティ2.0ガイドラインに沿った活動を加速するために、女性活躍推進ロードマップとKPIを策定し、着実に取り組みを進めております。
●人材の多様化
採用面接官の女性比率を向上させ、ロールモデルを意識できることで獲得人材の多様化に繋がりました。
現在では、女性従業員の配属先職場数の拡大により職場の人材が多様化しています。
●人材能力開発
女性キャリア開発研修と上司マネジメント研修を継続開催しており、女性のキャリア意識の向上と上司の多様な人材のマネジメント力の向上を図っています。
●エンゲージメント向上
全従業員を対象に実施しているメンタリティ・マネジメント診断を年1回実施しており、取り組み指標として「ダイバーシティ」「キャリアへの配慮」「ワークライフバランス」のスコアを検証しています。様々な女性活躍推進の取り組みの結果、男女とも平均以上のスコアであり、直近では各項目とも2021年度より0.2ポイント上昇しました。
●外部評価実績
2017年に「くるみん」の認定を受けました。その後、さらなる両立支援の促進とその効果の拡充を図るための行動計画を策定し、育児短時間勤務制度の対象期間の拡大や育児を対象とする在宅勤務制度の導入などをはじめとした環境整備を実現したことで、2020年度に「プラチナくるみん」の認定に至りました。
また、2022年3月に経済産業省と東京証券取引所が共同で主催する「なでしこ銘柄」に選定されました。
●リーダーポジションの多様化
女性活躍推進の取り組みにより、女性従業員の増加、キャリア開発研修の拡充などの人材開発の強化とライフステージに応じた柔軟な働き方ができる仕組みの導入など、キャリア形成のための環境整備を進めてきました。その結果、リーダーポジションにおける若手の女性リーダーが増加し、2015年度比で30代の女性リーダーは約2倍となっています。(2015年度:17.9% → 2023年度:30.2%)
今後も全社的なDE&Iの取り組みの強化とエンゲージメント向上に取り組むことで、多様性に富んだリーダーが育ち、活躍する環境づくりを行っていきます。
●DE&IのNextステップ
GYみらいプロジェクトの活動により培った、誰もが働きやすい環境と個々に合った働き方を尊重する風土が基盤として構築され、更に次のステップである多様な人材が持つ能力、価値観、経験などを最大限発揮し、競争力を向上させていくためには、社員のキャリア自律を促進する必要があると考え、2023年にキャリア自律サポートプログラムを導入しました。各階層・年代別に体系化したキャリア開発研修を全社員に展開し、さらには管理職全員対象にキャリア面談のスキル向上研修を実施しています。社員自らが自分の仕事とライフ、ありたい姿を考え、上司と話し合い、意欲を持って仕事に取組めるよう支援し、個の力と相互の関係性をたかめる力の相乗効果により組織力の強化を図っています。
DE&Iの推進による自律型人材の育成加速と、いきいき組織の増加により、生産性向上とイノベーション創出を加速します。
(c) 健康経営の推進
当社グループでは、健康経営方針として以下を掲げています。「GSユアサは、すべての従業員と企業の「革新と成長」の実現のために、健康保険組合と連携しながら、従業員およびその家族の健康に向き合い、従業員一人ひとりがいきいきとやりがいをもって働けるよう『健康づくり』を推進します。」
健康経営の推進体制として、本社に統括産業医(専属産業医)と主要な事業所に産業医を選任し、全国に看護師・保健師が常勤しています。また、健康保険組合と協働して、健康管理管掌役員(健康保険組合理事長を兼任)や労働組合幹部が出席する健康管理推進委員会を開催し、従業員の健康課題に対する施策を推進しています。なお、本社及び一部の事業所では、臨床心理士のカウンセリングを受けることができる環境を整備しています。
<健康づくり管理指標の目標設定>
健康経営の取り組みは、心身の不調予防、両立支援、健康保持・増進の3つに基づいて展開しており、「健康づくり」に対する目標値を設定してPDCAサイクルを回しています。働き方改革、DE&I推進の取り組みとも連携しながら、従業員一人ひとりがいきいきとやりがいを持って働けるよう健康づくりを支援しています。今後は、より全社一丸となった活動の推進に向け、全社共通の指標や事業部ごとに設定した指標の状況を踏まえた活動を展開するため、推進体制の強化とデータを活用した戦略的な健康経営を推進していく予定です。
当社グループでは、上記において記載した社内環境整備に関する方針について、以下の指標を用いております。なお、主要な事業を営む会社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行なわれているものの、連結グループに属する全ての会社では行なわれてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む会社のものを記載しております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
◆メンタリティ・マネジメント診断の重要な管理指標
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者および他社からの出向者の実績です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含みます。
※ 数値は偏差値を表しております。
※ ワークエンゲージメントは、主体的に仕事に取り組んでいる心理状態を示しています。
※ メンタルタフネス度は、ストレス反応・エンゲージメントの双方に相関する指標です。メンタルタフネス度を高めるとストレス耐性とエンゲージメントが向上します。
(b) 多様性を活かす風土醸成
<多様な人材の確保>
◆障がい者雇用率の推移
※ ㈱GSユアサ・㈱GSユアサ ソシエにおける正規雇用労働者の実績です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます
<柔軟な働き方の整備>
◆男性の育児休業取得率 管理指標
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者の実績です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
<女性活躍推進>
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者の実績です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
◆「健康づくり」に対する目標値及び実績値
※ ㈱GSユアサにおける正規雇用労働者の実績(休職者・海外駐在員除く)です。
※ 正規雇用労働者には、他社への出向者を含み、他社からの出向者は除きます。
※ 総合健康リスクとは現状のストレス状態が労働者の健康にどの程度影響を与えるかを判断するための指標で、全国平均を100として、この数値が低いほど労働者の健康リスクが低い状態であることを示しています。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社が判断したものであります。
当社グループは、リスク管理の推進とリスク管理に必要な情報の共有化を図るため、取締役社長を委員長とする「グループリスク管理委員会」を設置し、当社グループ内のリスク管理推進施策を決定し、その推進状況を点検しております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループの主要製品である鉛蓄電池は、主要原材料に鉛を使用しておりますが、鉛相場が変動した場合もただちに製品価格に反映することができず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても常にあるものと認識しております。当社グループでは、生産体制の全体最適を推進し、さらなるコストダウンを目指すとともに、最適な供給体制を構築していきます。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、各事業を展開するそれぞれの市場において激しい競争にさらされており、当社グループにとって有利な価格決定をすることが困難な状況になっております。国内の同業他社に加え、低コストで製品を供給する海外の会社も加わり、競争が激化しているため、将来的に市場シェアの維持、拡大、収益性保持が容易でない可能性があります。これにより事業の収益性が低下した場合、固定資産の減損リスクなど当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても常にあるものと認識しております。当社グループでは、当該リスクへの対応策としてあらゆるコスト削減、営業力強化のための諸施策を推進しております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、日本、アジア、北米、欧州等で事業を行っております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループが生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における製造と調達のコストを押し上げる可能性があり、中長期的な通貨変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても常にあるものと認識しております。当社グループでは、通貨ヘッジ取引を行い、為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは生産及び販売活動を日本、アジア、北米、欧州等で行っております。これらの海外市場での活動には以下に掲げるようなリスクが内在しており、これらの事象は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
① 予期しない法律又は規制の変更
② 人材の採用と確保の難しさ
③ 未整備の技術インフラが、製造等の当社グループの活動に影響を及ぼす、又は当社グループの製品に対する顧客の支持を低下させる可能性
④ テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しております。当社グループとしては、本部と各拠点間におけるコミュニケーション強化により、世界各地のニーズに沿った製品やサービスを迅速に提供できる仕組みを構築してまいります。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、将来の事業拡大においてM&Aは重要かつ有効な手段であると考えております。M&Aを実施する場合においては、対象企業の財務状況等の調査や当社グループの事業への相乗効果など、様々な観点から十分に検討しております。しかしながら、事業環境の著しい変化等により、買収事業が当初の計画どおりに推移せず、投資資金の回収ができない場合やのれんに減損損失が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性を、相応に認識しておく必要があります。当社グループでは、業績モニタリングを毎月実施しております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
気候変動は国や地域を超えて大きな影響を及ぼす問題であり、世界共通の解決すべき社会課題であります。当社グループは、気候関連課題が重要な経営課題の1つであると認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明するとともに、事業活動における温室効果ガス排出量の削減を進めています。しかしながら、将来、環境規制への適応が極めて困難な事象や不測の事態が発生する場合には、想定以上の環境対応に関するコストの増加や風水害等による施設損害、事業活動の制限など、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
気候変動によるリスクは完全に予測することは困難ではありますが、当社グループの蓄電池技術を用いた再生可能エネルギー普及等により、社会全体の温室効果ガス排出量の削減に努めるとともに、今後はTCFDの提言に沿った情報開示をさらに推進してまいります。
気候変動への対応の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動への対応」に記載しております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
地震・風水害・大雪等の自然災害や当社グループの事業所において火災・爆発・損壊等の事故が発生した場合、不測の事態が発生するリスクが考えられます。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても常にあるものと認識しております。当社グループでは、当該リスクへの対応策として、地震・水災・大雪対応マニュアルの構築及び「防火管理」「防災管理」の充実化に取り組んでおります。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループの有利子負債には、金利変動の影響を受けるものが含まれております。したがって、金利上昇により資金調達コストが増加する可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しております。当社グループでは、第六次中期経営計画においては、成長投資を積極化するために有利子負債は増加することを想定しておりますが、債務償還年数については3年以内にとどめ、成長と財務規律の両立に努めてまいります。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、事業を遂行する上で、取引先や第三者から訴訟等が提起され、又は規制当局より法的手続がとられるリスクを有しております。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しております。当社グループでは、他社権利及び特許等の調査を継続実施し、社内での情報共有強化によりリスクの極小化に努めております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループの製品の需要は当社グループが製品を販売している様々な市場における経済状況の影響を受けます。したがって、日本、アジア、北米、欧州を含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しております。当社グループとしては、品質重視の基本姿勢に基づいた事業運営によりお客様に安心と信頼を提供するとともに、「革新と成長」の企業理念のもと、企業価値の向上と将来の持続的成長に向けた事業基盤の構築に努めてまいります。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、日本、アジア、北米、欧州等で事業を行っており、これらの事業の売上及び損益は各国の市場環境や景気動向に大きく影響を受けます。当社グループはトルコ共和国に連結子会社を有しておりますが、トルコ共和国では、大幅なインフレやトルコ・リラ安が進行しております。今後、インフレの継続等により、トルコ・リラ安が進行した場合、現地における海外販売、調達による債権債務・取引高のバランスによっては多額の為替差損が発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しております。当社グループは、本部と拠点間における情報共有強化に努め、市場環境の変動リスクに対して迅速かつ柔軟に対応してまいります。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、日本、アジア、北米、欧州等で事業を行っており、サプライチェーンもグローバルに展開しております。各国・各地域におけるサプライチェーンが混乱することにより、部材の調達や、販売が滞り、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、常にあるものと認識しております。当社グループとしては、本部と各拠点間におけるコミュニケーションの強化、生産体制の全体最適を推進し、最適な供給体制を構築していきます。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、事業活動において技術や経営、営業情報等の重要、機密情報を保有しております。情報機器の不適切な取り扱いによる情報漏えいや、外部からのサイバー攻撃による情報流出、改ざんがあった場合、事業活動の停止につながる恐れがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、常にあるものと認識しております。当社グループでは、エンドポイントのマルウェア感染などを防止すると共に、万が一に備えて、迅速に検知、対応できる体制を強化しております。また、通信の常時監視や不正接続検知システムで、不正アクセスを防止しております。従業員に対しては社内規則を遵守するよう啓発活動、教育を行う等、従業員の情報セキュリティレベルを向上するための取組みを実施しております。海外グループ会社に対しては国内の基準をもとにセキュリティ対策状況を調査し、脆弱な部分の指導に努めております。
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、品質基本方針に基づき、グループ全体でお客様に提供する製品とサービスの質向上を目指した活動を推進しています。しかしながら万が一、当社グループの製品あるいはサービスに欠陥が発生した場合、その欠陥に起因した損害に対して当社グループは賠償責任を負う可能性があり、また、その欠陥に対して多大な対策費用が発生する可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しております。当社グループは、ISO9001をベースにした「GSユアサ品質マネジメントシステム」を定め、事業部門を横断した品質マネジメント体制を経営トップ主導で推進し、製品・サービスの質向上につなげています。
(15) BEV用電池開発及び生産について
・リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
当社グループは、2027年度よりBEV用リチウムイオン電池の生産ラインを稼働し量産体制に入ることを目標としておりますが、BEV用リチウムイオン電池は未だ開発段階にあり生産を開始しておらず、現時点で同年度に量産が開始される保証はなく、BEV市場全体の動向及び市場内での競合状況にも左右され、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
・リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応にあるものと認識しておりますが、当社グループは、2023年4月に策定した「第六次中期経営計画」においてBEV用電池開発を事業構造変革に向けた施策の一つとして掲げており、2023年8月より高容量・高出力なリチウムイオンバッテリーの研究開発を目的として設立した株式会社Honda・GS Yuasa EV Battery R&Dがその事業を開始しております。HEV、PHEV及びEV用リチウムイオン電池で培った知見を活用し、新たな成長戦略の柱として、競争力のあるBEV用リチウムイオン電池の開発を推進してまいります。また、当社グループ及び本田技研工業株式会社の共同出資並びに政府による補助金の活用によりBEV用電池の生産工場を建設し、早期の生産ラインの稼働と生産能力の拡大を目指しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における世界経済は、サプライチェーンの回復が進み、自動車生産台数が回復に向かう等、緩やかに持ち直しの動きが見られました。一方で、ウクライナや中東等の地政学リスク、世界的な金融引締め政策やインフレに伴う景気下振れリスク、金融市場の変動等、先行き不透明な状況が続いています。
このような経済状況の中、当社グループでは、主としてハイブリッド車用リチウムイオン電池及び蓄電(ESS(注))用リチウムイオン電池の販売数量が増加していることや、販売価格是正の取組等を進めていることにより、当連結会計年度の売上高は、5,628億97百万円と前連結会計年度に比べて451億62百万円増加(8.7%)しました。これに伴い、営業利益は415億95百万円(のれん等償却前営業利益は422億29百万円)と前連結会計年度に比べ100億95百万円増加(32.0%)しました。経常利益は持分法による投資損益の改善や正味貨幣持高による利得の増加等により、439億81百万円と前連結会計年度に比べて197億67百万円増加(81.6%)しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、320億64百万円と、前連結会計年度に比べて181億38百万円増加(130.2%)しました。
(注)電力貯蔵システム(Energy Storage System)
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度より、一部の連結子会社のセグメントを変更しており、前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。
(自動車電池)
国内における売上高は、新車販売台数の回復に伴い、新車用電池の販売数量が前年同期を上回ったことに加え、販売価格是正の取組等を進め、940億47百万円と前連結会計年度に比べ62億44百万円増加(7.1%)しました。セグメント損益は、80億71百万円と前連結会計年度に比べて15億24百万円増加(23.3%)しました。
海外における売上高は、販売価格是正の取組等により、2,528億63百万円と前連結会計年度に比べて55億34百万円増加(2.2%)しました。セグメント損益は、151億19百万円と前連結会計年度に比べて17億73百万円増加(13.3%)しました。
これにより、国内・海外合算における売上高は、3,469億10百万円と前連結会計年度に比べて117億78百万円増加(3.5%)しました。セグメント損益は、231億90百万円と前連結会計年度に比べて32億97百万円増加(16.6%)しました。
(産業電池電源)
売上高は、蓄電(ESS)用リチウムイオン電池の販売増加や販売価格是正の取組等により1,096億68百万円と前連結会計年度に比べて120億57百万円増加(12.4%)しました。セグメント損益は、131億82百万円と前連結会計年度に比べて46億33百万円増加(54.2%)しました。
(車載用リチウムイオン電池)
売上高は、ハイブリッド車用リチウムイオン電池の販売数量が増加したこと等により、847億87百万円と前連結会計年度に比べて194億31百万円増加(29.7%)しました。セグメント損益は、26億49百万円と前連結会計年度に比べて6億62百万円増加(33.4%)しました。
(その他)
売上高は、航空機用電池の販売が好調に推移し、215億31百万円と前連結会計年度に比べて18億95百万円増加(9.7%)しました。全社費用等調整後のセグメント損益は、32億7百万円と前連結会計年度に比べて15億61百万円増加(94.8%)しました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は603億7百万円と前連結会計年度末に比べて242億80百万円増加(67.4%)しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主たる要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加、棚卸資産の増加、法人税等の支払がありましたが、税金等調整前当期純利益や減価償却費、仕入債務の増加などにより、631億80百万円のプラス(前年同期は283億30百万円のプラス)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得などにより、461億92百万円のマイナス(前年同期は265億67百万円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や社債の償還、配当金の支払がありましたが、株式の発行による収入により、34億80百万円のプラス(前年同期は88億26百万円のプラス)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.当連結会計年度より、製品を軸としたセグメント業績をより適切に把握するために、組織の管理区分の見直しを行った結果、従来「産業電池電源」に含まれていた一部の連結子会社について、「その他」にセグメントを変更しております。生産実績の前年同期比は、変更後の報告セグメント区分により算定しております。
当社グループは、大型蓄電池及び大型電源装置等の一部を除き、主として見込生産を行っておりますので、受注高及び受注残高について特記すべき事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
3.当連結会計年度より、製品を軸としたセグメント業績をより適切に把握するために、組織の管理区分の見直しを行った結果、従来「産業電池電源」に含まれていた一部の連結子会社について、「その他」にセグメントを変更しております。販売実績の前年同期比は、変更後の報告セグメント区分により算定しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(経営成績)
当連結会計年度の経営成績の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(財政状態)
総資産は、公募及び第三者割当による新株式発行並びに当社株式の売出しにより現金及び預金が増加したこと、また土地取得による増加や保有株式の時価評価による増加、退職給付に係る資産の増加等により、6,566億63百万円と前連結会計年度末に比べて1,157億56百万円増加しました。
負債は、借入金の返済や社債の償還があったものの、仕入債務及び設備関係電子記録債務、コマーシャル・ペーパー、繰延税金負債の増加等により、2,827億83百万円と前連結会計年度末に比べて127億66百万円増加しました。
純資産は、配当金の支払がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益による増加や公募増資等による払込み等により、3,738億80百万円と前連結会計年度末に比べて1,029億90百万円増加しました。
(経営成績に重要な影響を与える要因について)
当社グループを取り巻く経営環境は緩やかな回復が見られるものの、各事業分野での激しい価格競争が続いております。また、当社グループの主要製品である自動車用鉛蓄電池の販売数量は、季節の変化、特に(冷夏、暖冬など)気候の変化による影響を大きく受けます。一方、コストの面では、当社グループの主要製品である鉛蓄電池は、主要原材料に鉛を使用しておりますので、この鉛価格の変動は製造コストに影響を与えます。
また、インフレが継続することや地政学リスクへの警戒により、不透明な状況が継続すると見込まれます。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況 」に記載のとおりです。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資・出資などの長期資金需要と製品製造のための材料及び部品購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化を図ることを財務方針としております。
営業キャッシュ・フロー及び手元資金を中長期的な成長のための投融資、成長を支えるための財務基盤の強化、適正な株主還元、これらにバランス良く配分し企業価値の向上を図ってまいります。
なお、当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりであります。
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成の状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは、「第六次中期経営計画」において連結売上高6,100億円以上、営業利益410億円以上(のれん等償却前)、ROE(のれん等償却前純利益)8%以上、ROIC10%以上(注)、総還元性向30%以上を2026年3月期最終目標に設定し収益性や資産効率の向上に取り組んでおります。
当年度における進捗状況は、連結売上高5,628億円、営業利益422億円(のれん等償却前)、ROE(のれん等償却前純利益)11.6%、ROIC13.7%(注)、総還元性向20.6%であり、営業利益につきましては、第六次中計最終年度である2025年度の目標値410億円を当年度で既に達成しております。そのため、各セグメントの実績、市場動向などを改めて検証し、2025年度の目標値がどうあるべきかを精査をしております。変化の激しい市況のなか、見通しが難しいところではございますが、当初の計画を上回る目標値をお示しできるよう見直しを進めてまいります。
(注)ROICは、のれん等償却前営業利益÷投下資本(固定資産(のれん等除く)+運転資本)で算出しております。投下資本は期首と期末の平均値によっております。
(セグメント別の状況)
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(合弁会社の設立)
当社の連結子会社である株式会社 GSユアサ(以下、GSユアサ)は、2023年4月24日開催の取締役会決議に基づき、本田技研工業株式会社(以下、Honda)との間で、合弁契約を締結し、2023年7月3日に次のとおり合弁会社を設立いたしました。
(1) 合弁会社設立の目的
両社の合弁による新会社は、急速に拡大するバッテリー需要に対応するため、グローバルレベルで高い競争力を持つリチウムイオンバッテリーとその製造方法を研究開発するとともに、主要原材料のサプライチェーンや効率的な生産システムを構築することを目指します。
(2) 設立した合弁会社の概要
(子会社出資金の一部譲渡)
当社は、2023年7月25日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるGSユアサが、同社の中国に所在する子会社である天津杰士電池有限公司(以下、TJGS)及び湯浅蓄電池(順徳)有限公司(以下、YBSD)それぞれの持分70%をLeoch International Technology Limitedの100%子会社である中国事業会社Leoch Battery Company Limited(以下、Leoch Battery)に譲渡することを決議し、同日付でLeoch Batteryと持分譲渡契約、合弁契約を締結しました。また、2023年9月25日付で譲渡予定日を2023年10月に変更する変更契約を締結しております。
これに基づき、2023年10月31日に持分譲渡を実施いたしました。なお、本件持分譲渡に伴い、TJGS及びYBSDは第3四半期連結会計期間以降当社の連結子会社から持分法適用関連会社となっております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
(共通支配下の取引等)
当社の連結子会社であるGSユアサは、2024年3月12日開催の取締役会において、同社子会社である株式会社リチウムエナジー ジャパン(以下、LEJ)の事業を譲受するために事業譲渡契約を締結することを決議し、2024年3月31日に事業譲受を実施いたしました。
なお、GSユアサは、2023年12月11日開催の取締役会において、三菱商事株式会社(以下、三菱商事)及び三菱自動車工業株式会社(以下、三菱自動車)が保有するLEJの全株式を取得することについて決議いたしました。同決議に基づき、三菱商事と2023年12月15日付で株式譲渡契約を締結し、2023年12月21日付で三菱商事が保有するLEJの発行済株式の46.4%を取得しております。また、三菱自動車と2024年2月6日付で株式譲渡契約を締結し、2024年2月16日付で三菱自動車が保有するLEJの発行済株式の2.6%を取得し、LEJを完全子会社としております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
当社グループは、自動車電池、産業電池電源、車載用リチウムイオン電池、その他の事業について、基盤技術から製品・製造技術に至るまで、積極的な研究開発活動を行っております。
自動車電池の研究開発は、国内においては、㈱GSユアサの技術開発部門、自動車電池技術部、㈱GSユアサ エナジーの技術開発部門などがそれぞれ実施しております。また、海外においては、海外生産拠点の技術開発部門、㈱GSユアサの技術開発部門、自動車電池技術部、GS Yuasa Asia Technical Center Ltd.などがそれぞれ実施しております。産業電池電源の研究開発は、㈱GSユアサの技術開発部門、産業電池生産本部技術部、電源システム開発本部、電源システム生産本部技術部、㈱GSユアサ ライティングサービスなどがそれぞれ実施しております。車載用リチウムイオン電池の研究開発は、㈱GSユアサの研究・技術開発部門、㈱ブルーエナジーの技術開発部、株式会社Honda・GS Yuasa EV Battery R&Dなどがそれぞれ実施しております。その他事業の研究開発は、㈱GSユアサの研究・技術開発部門、㈱ジーエス・ユアサ テクノロジーの技術部、㈱GSユアサ メンブレンの技術生産部などがそれぞれ実施しております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は14,002百万円(連結グループ全体の研究開発費
当連結会計年度における各事業別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりであります。
(1) 自動車電池
自動車電池においては、国内、海外における自動車用鉛蓄電池、二輪車用鉛蓄電池に関する研究開発を実施しております。
自動車用鉛蓄電池の国内においては、拡大しているHEV、BEV補機用途電池の開発を継続的に進めております。補修市場向けのEN電池シリーズにおいては、更なる減液抑制を達成できる技術を開発し、補水メンテナンスの軽減と耐久性向上を実現した電池を2023年6月に発売しました。これはGOA社と共同開発した触媒付液栓(GRテック液栓Ⓡ)によって、水の電気分解で発生した水素と酸素を再結合させるという独自技術によるものです。
海外においては、欧州を中心としたモビリティの電動化需要を見据え、駆動用リチウムイオンと並行して需要のある補機・バックアップ用鉛蓄電池の国際規格化への参画、および、この規格に適合するVRLA(AGM)電池開発を、トルコのInci GS Yuasa Aku Sanayi ve Ticaret Anonim Sirketiと開始しました。
二輪車用鉛蓄電池の分野では国内海外とも、レジャー用バイク、一般生活用のコミューターバイクなどに加え、自動車用補機用途など車両ニーズに適応した新技術の開発を進めております。二輪車においてもアイドリングストップ車やハイブリッド車などの環境対応車両への関心が高まってきており、当社グループの高い耐久性能と充電受入性能を実現した二輪車用鉛蓄電池が採用されております。
欧州市場において自動車用補機電池(12V電源用途)が拡大しており、GYAUXシリーズとして品種拡大/市場投入を推進しております。今後も大きな成長が見込まれるインド市場向けには、アイドリングストップ車用に加えて、ハイブリッド車用の制御弁式鉛蓄電池を開発し、品種の拡大と新車提案を進めております。また、性能面で選ばれるGY電池という市場イメージに加えて、原材料費変動に強く生産効率にも優れた、コスト競争力のある製品開発についても推進しております。更に、カーボンニュートラル達成に向け、製造時の充電方法の改良による省エネルギー化も推進しております。
この分野に係る研究開発費は、
産業電池及び電源装置事業では、産業用鉛蓄電池、電源装置、産業用リチウムイオン電池、照明に関する研究開発を実施しております。
産業用鉛蓄電池の分野では、カーボンニュートラルへの貢献として、3R(リサイクル・リユース・リデュース)を軸とした環境配慮商品の推進に取り組んでおります。鉛蓄電池の優れたリサイクル性を活かした再生部材の適用率向上や接続部材リユースによる更なる循環性の向上、リデュースに関しましては、新技術や新製造手法による生産エネルギーの大幅削減や、データセンタ用途向けなど高温耐久性向上による蓄電池設備の空調節電を可能とする商品開発を国内外の工場にて目指しております。現在、量産化に向けて試作および評価を進めており、今後、商品ラインナップの拡充を計画していきます。
また、国内外における通信・UPS用途や太陽光併設などの再生可能エネルギー用途の分野では、新技術による短時間バックアップ性能やサイクル性能を大幅に向上させた商品を展開し、更なる顧客獲得を目指しております。
電気車用途の分野では、バッテリー式フォークリフトの需要が増加しているASEAN地域への拡販を目指しており、タイ工場において、新技術や新部材の活用による市場ニーズに適した商品開発に取り組んでおります。今年度より、順次、量産を開始予定であり、今後、更なる商品ラインナップの拡充を計画していきます。
電源装置分野では、蓄電システム併設用大容量PCSの開発に着手しました。2022年の電気事業法改正により、「蓄電所」における系統用蓄電池用PCS需要の高まりを見据え、2024年度内に500kW機/1MW機 2機種のリリースを予定しています。蓄電池とPCSを列盤構成とすることで設置面積の低減、蓄電池とPCSとの外部接続ケーブルレス化が実現でき、施工面でのメリットも生まれます。また、蓄電池メーカーならではの蓄電池を最大限に利用するための最適なPCS運転制御を実現し、2025年度には需要家向けのBCP用途に自立出力の機能追加も計画しています。
加えて電源装置分野では、中長期を見据えカーボンニュートラルの観点から環境負荷を減らすため「小型化・高効率」をテーマに変換効率99%の電力変換器の回路技術、電力会社との共同研究による制御技術を開発しており、更なる小型化とお客様の利便性を向上させるための電源の筐体・構造に関する新技術の検討を進めています。開発効率の向上と共通部材の使用率の向上をするために、最新のシミュレーション技術を導入したフロントローディング設計やモジュラー設計にも取り組んでいます。以上のような技術を取り入れ、2023年度はユニット並列冗長方式UPS、MLUシリーズにおいてリチウムイオンバッテリー対応版や屋外型常時商用1kVA UPS,SGU-Aにおいて1kVA~5kVAまで並列増設を可能にした製品を発売しました。
産業用リチウムイオン電池分野では、蓄電システム向けに屋外用蓄電盤の開発に着手しました。蓄電池盤タイプとすることで国内狭小地への施工、一般貨物輸送が可能となり、小・中規模の蓄電システムへの適用増加を狙います。1システム当たり、最大16面の蓄電池盤が接続でき、前述の大容量PCSと組み合わせることで柔軟な蓄電システムの構成が可能となります。また、弊社独自の遠隔監視による解析・診断、保守・保全、容量保証の各種サービスを取り揃えた「STARELINK®サービス」にも対応しており、2024年度内のリリースを予定しています。
照明分野では、「省エネ」+「省資源」をキーワードに独自性のある研究開発を進めています。2023年度は、LEDの普及が遅れている市場向けに、マーケットイン型の製品開発に取り組みました。2024年度の商品化を計画しています。
この分野に係る研究開発費は、
車載用リチウムイオン電池事業では、㈱ブルーエナジーで生産を行うHEV(ハイブリッド車)用リチウムイオン電池、GSユアサ栗東工場で生産を行うBEV(電気自動車)用、PHEV(プラグインハイブリッド車)用、車載12V用のリチウムイオン電池があります。
HEV用リチウムイオン電池においては、新車メーカーへ納入する次期モデルのセル・モジュールの開発推進を行いました。また、この開発の中で、負極の素材変更による高出力低コスト化を実現しました。
PHEV用リチウムイオン電池においては、高容量のNCM系正極材料を適用して、エネルギー密度を従来電池よりも40%以上アップし、かつ高出力/長寿命性能を有する新型電池LEV65の開発を進めております。量産準備段階まで開発が進んでおり、2024年6月から量産開始を予定しております。
BEV用リチウムイオン電池においては、本田技研工業株式会社との合弁による新会社「株式会社Honda・GS Yuasa EV Battery R&D」で、拡大するバッテリー需要に対応するため、電極材料や構造設計によりグローバルレベルで高い競争力を持つ高入出力性能と長寿命性能を有したリチウムイオンバッテリーの製造方法と研究開発を進めております。加えて、主要原材料のサプライチェーンや効率的な生産システムの構築も進めております。
車載12V用リチウムイオン電池においては、始動用12Vリチウムイオンバッテリーで培った優れた低温出力特性を損なうことなく、新品時の出力特性が車両寿命末期まで維持できる高耐久の次世代BEV用補機電池開発を進めております。
将来の車載用電池事業に向けたポストリチウムイオン電池の研究開発については、高容量なシリコン系負極を用いた電池開発に取り組んでいます。高エネルギー密度と長寿命性能を両立するシリコン系負極電池の開発成果を2023年6月発行のGSユアサテクニカルレポートに掲載しております。
全固体電池については、2022年にNEDO「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発」に採択された補助金を活用し、当社独自の固体電解質技術をベースに高エネルギー密度化を目指して、特徴ある電池を開発しております。全固体電池の実用化に向けて今後もさらに研究開発のスピードを加速させていきます。
この分野に係る研究開発費は7,595百万円(セグメント全体の研究開発費
その他事業では、航空宇宙用リチウムイオン電池に関する研究開発を実施しております。
航空用途では、米国ボーイング社787型機に搭載されるリチウムイオン電池を納入中です。宇宙用途では、液体燃料ロケット「H-ⅡA」および「H3」に、当社グループのロケット用リチウムイオン電池を納入しております。また、人工衛星用途では、宇宙ステーションの電源をはじめとし、X線分光撮像衛星「XRISM」、準天頂衛星システム「みちびき」、宇宙ステーション補給機「シグナス」など、数多くに搭載されております。当社グループの電池は現在までに250機以上の人工衛星や宇宙ステーション補給機などの宇宙機に搭載されており、軌道投入容量で世界トップクラスを維持しています。
2019年から継続実施しているNEDO航空機用先進システム実用化プロジェクトにおける軽量なリチウム硫黄電池の研究開発については、5年間の研究開発に取り組み、質量エネルギー密度500Wh/kgのセル開発に成功しました(現行のリチウムイオン電池の2倍以上のエネルギー密度)。本プロジェクトはおおよそのプロジェクト目標を達成し、2023年度末に完了しました。
膜分野においては、鉛蓄電池のセパレータ技術を応用した分離・精製・浄化などを目的とした膜を開発しております。環境関連機器の分野では、固液分離システムの小型化に取り組んでおり、これまでコストやスペースの都合で導入が進んでこなかった小規模工場や植物工場などに向けた小型、省エネルギーの膜分離ユニットの実証試験を進めています。また、気体分離においてもカーボンニュートラル推進に寄与する新規膜製品の開発を進めており、環境負荷低減に貢献する製品の拡充を進めております。
この分野に係る研究開発費は、