第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

1.経営方針

 当社は、「夢をはぐくむひとりひとりに、快適で美しいくらしを提供します」の基本理念のもと、常に時代の先を読み、お客様のニーズに応えられる新たな「空環(空間と環境)」創りを目指すために、「空環創造宣言」を掲げ、世の中に生きる人々、ひとりひとりの「空環創造」を支援することをミッション(使命)としております。

 また、技術力、製品力、企画力及び提案力をみがき、高品質なマットレス及びベッドフレーム・リビングソファ・インテリア用品をお客様に提供することで、日常生活の中で暮らしを支え社会に貢献するとともに、売上・利益の増大と経営効率の向上を図ることを経営方針としております。

 

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2.中長期的な会社の経営戦略

 当社が事業内容とするベッド・リビングソファ・インテリア用品等の業界においては、少子高齢化・人口減少に伴い、新規・買替え需要の顧客獲得をかけた競争が激化しており、さらに製造小売業(SPA)の台頭も加わり、持続的発展のため、より一層の競争力強化の施策を進めていくことが必要となっております。

 そのため当社は将来の需要増に備えた生産能力の増強、デジタルマーケティング等の継続的投資及びノウハウの蓄積、東京ショールームリニューアル、ECモールへの出店等の各取組みにより、経営基盤の強化を着実に進展させてまいりました。

 当社は、原材料の高騰、消費者動向が飲食、旅行、サービス支出等へ変化したのに伴う集客の伸び悩みによる売上減少、生産能力増強による償却費等将来に向けた費用増により利益減少となりましたが、今後はコロナ終息に伴うインバウンド需要の回復見通し、2025年大阪万博に伴う宿泊需要増への期待、高付加価値商品を求める消費者動向の多様化、眠りの質への関心の高まり等の市場環境の好転から、今後の方向性として、コロナ以前の利益水準への回復と、多様な顧客ニーズに応える商品展開でさらなる成長路線を目指すものです。

 

 このような市場環境下において、以下の業界ポジションから当社の強みを活かしたビジネスモデルを展開してまいります。

①主要ブランドの業界におけるポジション

 当社は中価格帯から高価格帯の幅広いマルチブランド商品層を保有する、業界内でも特徴的な企業であり、主要ブランドの業界におけるポジションは次のとおりであります。今後現有ブランドのさらなる市場シェア拡大とともに新たなブランド発掘にも取り組んでまいります。

 

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②当社の強みとビジネスモデル

 当社の強みは幅広いマルチブランド商品層を保有しているところにあり、そのマルチブランドによる幅広い商品層を核に、商業施設向けと一般消費者向けの相乗効果で売上・利益の極大化を図るというビジネスモデルを展開してまいります。

 

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③中期経営計画「Dreambed2025 Change & Challenge Plan」

 当社は長期ビジョンとして2031年までに空環創造宣言企業としての完成を目指し、そこからバックキャストして、このたび2023年度~2025年度(2024年3月期~2026年3月期)までの3年間を対象とした中期経営計画「Dreambed2025 Change & Challenge Plan」を2023年5月11日に公表いたしました。

 企業ミッションである空環創造宣言の完成に向け、変革と挑戦に着手し基盤整備を行ってまいります。

 

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3.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、持続的な成長による企業価値の向上を目的として、収益力を高め、経営の効率化を図るため、これまで売上高及び売上総利益率を重要な経営指標と位置づけてまいりましたが、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、営業利益、EBITDA、ROE、配当性向を新たに指標といたします。今後は中期経営計画「Dreambed2025 Change & Challenge Plan」の施策実行により、これら各指標の向上を目指してまいります。

 

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4.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として、主力「Serta(サータ)」ブランドの継続的な強化、ドリームベッドブランドの再構築、ショップ/ショールームのさらなる展開、並びに総合的な人事政策の実現が課題であると認識しております。

 従い、これら課題に対して中期経営計画「Dreambed2025 Change & Challenge Plan」に基づき、次のとおり成長施策として①~③を、基盤整備施策として④~⑤に重点的に対処してまいります。

①マルチブランド戦略の強化拡大

②販売チャネルの強化拡大

③生産技術・能力・機能の拡充

④戦略遂行を支える財務・投資戦略

⑤ES(Employee Satisfaction)・エンゲージメント向上・サステナビリティ経営の実現

 

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(1)マルチブランド戦略の強化拡大

 当社の強みは、米国Serta(サータ)ブランドの国内独占販売権を有して、これを当社の高い技術力と製造力で支えることによって、マルチブランド戦略を展開して幅広い商品群を販売しているところにあります。

 マルチブランド戦略を更に強化拡大することにより、Serta(サータ)ブランドの更なる収益拡大、他のブランドの収益力強化を図り、さらには新たなブランドの発掘に取り組むことで、事業の強化拡大を図ってまいります。

 マルチブランド戦略は主に製品戦略とプロモーション戦略に分けられます。

 製品戦略として、2024年3月期に好調であったラグジュアリーホテルとのコラボレーション企画のマットレス販売を、2025年3月期も継続いたします。また2024年1月に発売を開始したオーダーメイドマットレスの拡販、さらにマーケットリサーチに基づいて自社ブランドの海外展開の開始、加えてligne roset(リーン・ロゼ)ブランドにおけるジャパンフィットしたモデルやトータル提案商品の市場投入に、それぞれ取り組むものです。

 またプロモーション戦略として、継続的に実施しているデジタルマーケティング(SNS広告)の広告効果を最大化して、ブランド価値を伝えるとともに、CRM(顧客関連管理)の導入により、顧客との良好な関係を構築・促進して、より一層のBtoBtoC構築を進めてまいります。

 さらに物流サービスにおいて、運送業務と積込み業務を分離して業務の平準化を図り、ラストワンマイルの物流サービスの向上に、それぞれ取り組んでまいります。

 

(2)販売チャネルの強化拡大

 次の取組みにより、販売チャネルの強化による売上拡大を図ります。

 2024年6月にはリーン・ロゼ名古屋を開設しており、今後もショップ/ショールームのいずれかを全国主要都市に年間1店舗ずつ新設します。また、2023年12月に首都圏にある各営業所、商業施設向け販売を担うコントラクト事業部門、及びハウスメーカー向け販売を担うハウジング営業部門を東京ショールームと統合のうえ、東京支社として営業拠点を設置しましたので、継続的にそれぞれの販売営業力を活かしたシナジー効果を創出してまいります。

 

(3)生産技術・能力・機能の拡充

 次の取組みにより、生産技術・能力・機能の拡充を図ります。

 縫製完成棟が2024年1月に稼働したことにより、製品優位性をさらに高め、生産能力及び生産効率の向上を図ります。また、社長直轄の品質保証室が主管して、TQC(全社的品質管理)を展開してさらなる品質向上に努めるとともに、オーダーメイドマットレスの取扱いを契機に取り組みをスタートした産学連携をさらに推し進めて、コイルその他の新技術の開発や製品単位当たりの原価低減に、それぞれ取り組むものです。

 

(4)戦略遂行を支える財務・投資戦略

 ショールームやショップ等、事業展開のための積極的な戦略投資、自己株式取得や自己資本利益率の向上による株主還元の充実、さらに内部留保を増やしつつ自己資本比率を向上する等、成長及び基盤整備施策を支える財務投資戦略を展開してまいります。

 

(5)ES(Employee Satisfaction)・エンゲージメント向上・サステナビリティ経営の実現

 Employee Satisfaction(従業員満足度、ES)のための働き方改革、処遇改善や健康経営推進による自社の人的資本への投資のほか、環境に配慮したサステナビリティ商品の開発やマットレスリサイクルシステムの推進によって、サステナビリティ経営の実現を目指します。

 具体的には、ES・エンゲージメントにおいて、2024年3月期に調査を始めました人事制度改革の進捗効果モニタリング、従業員よりの申告書を活用しての人事戦略への反映、残業時間の削減、女性管理職比率向上に向けた研修の充実、男性育児休業取得率の向上維持、男女間賃金格差の軽減、及び完全週休二日制導入の準備等に、それぞれ取り組みます。

 また、サステナビリティにおいて、解体しやすいマットレス(Dream Refine)に続く環境に配慮した商品開発、及びマットレス廃棄問題の解消や顧客利便性向上等のためのマットレス回収リサイクルシステムの構築、並びにCO2削減に向けた取組みにより、今後も持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 1950年に創業した当社のルーツは、戦後の社会奉仕事業にあります。

当社は「夢をはぐくむひとりひとりに、快適で美しいくらしを提供します」の基本理念のもと、お客様のニーズに応えられる新たな「空環(空間と環境)」創りに取り組んでまいりました。

 2021年6月に東証市場第二部(現スタンダード市場)へ上場し社会的責任を果たすべく、①快適で美しい暮らしの提供、②環境への配慮、③地域と社会への貢献、④公正かつ適切な経営の実現、⑤働きやすい組織づくり、を同年12月にSDGs宣言として掲げました。

 なかでも②環境への配慮に対してはTCFDフレームワークに基づき、気候変動問題の他、持続可能な社会の実現に向け取り組んでおります。

 

(1)ガバナンス

 当社はサステナビリティ委員会を設置し、代表取締役社長を委員長とし、事務局として経営企画部内にサステナビリティ室を設けております。2021年12月に掲げましたSDGs宣言にそれぞれ数値目標を設定し、今後も持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

[リスクと機会についての取締役会による監視体制]

 サステナビリティ委員会委員長のほか、当社の取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員を構成員として、常勤監査役及び社外役員はオブザーバーとして出席できるものとしたサステナビリティ委員会を、四半期に1回開催しております。その内容は定期に担当取締役より取締役会へ報告しております。

 

[リスクと機会を評価管理する上での経営の役割]

 当社が認識するリスクにおいて、そのリスクと評価を管理していくことが当社経営の役割と考えております。例えば異常気象による災害に対しては、河川氾濫防止のため当社工場地下の貯水槽への一時貯水体制を取っております。さらにマットレス廃棄やCO2問題等に対しては、リサイクル回収の事業化やCO2削減のための物流効率の向上での対応を図っております。

 

(2)戦略

①サステナビリティに関する戦略

 当社は想定される気候変動リスク及び機会を下記のとおり特定し、リスクにおいてはそれぞれに関連する「事業等のリスク」を当てはめ、さらに中長期における当社への影響度を評価しております。なお、リスクへの対応策並びに当社の取組みにつきましては、19ページ記載の「事業等のリスク」をご参照ください。

 

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②人的資本に関する戦略

人材育成に関する方針

 当社はSDGs宣言において、「働きやすい組織づくり」を掲げており、安全で健康に働くことのできる労働環境整備のもと、積極的な人材育成と働き方改革の実践により、誰もが働きやすくやりがいを持てる組織を目指しています。

 

[人材育成方針]

 当社の基本理念を実現するために、人材育成方針として夢をはぐくむひとりひとり(個客)に支えられる最適組織・人材が「組織・人材ビジョン」との考えから、組織として大事にすべきことを4つのキーワードであらわし、その頭文字と個客志向を標榜する「CS(Customer Satisfaction)」を掛け合わせDCS組織(D:double)としました。

当社の考える「人材」「ソウルフル」「こだわり」とは次のとおりです。

・「人材」とは内面のスピリットと挑戦する姿勢を兼ね備えた人材像を表現。

・「ソウルフル」とは誠意、情熱、パイオニアスピリッツを兼ね備えていること。

・「こだわり」とはプロ意識(自信と結果)を指す。

 

[プロセスが可視化できるDCS組織]

・コミットメント(Commitment)

・コラボレーション(Collaboration)

・シンプル(Simple)

・スピード(Speed)

 

③社内環境整備に関する方針

 当社が今後ありたい組織像の実現に向けて、健康経営体制の推進を基盤として取組み、人事制度改革を通じて人的資本投資を中心とした次の3つの人材戦略を展開していきます。

1)働きやすい環境づくりとして、職場環境の整備・長時間労働の削減・有給休暇取得の促進等の働き方改革や健康経営の実現に向けた取り組みを強化します。

2)求める人材像や要員数等、現状とのギャップを埋める人材採用・人材育成施策として、教育研修体系・自己啓発環境の充実等への取り組みを強化していきます。

3)役割・成果等の組織貢献度に応じた、等級・評価・報酬制度への見直しを軸とする新人事制度を2024年3月期より導入しており、今後はその効果を測定のうえ検証してまいります。

 

④社内環境整備に関する指標の内容及び当該指標を用いた目標

 当社は、Employee Satisfaction(従業員満足度、以下「ES」という)とEngagement(エンゲージメント、以下「EG」という)が相互に高まっていくことで、社員目標と会社目標のベクトルが合い、一体感をもった取り組みにつながり、ひいては会社業績を押し上げる原動力になるものと考えており、中期経営計画「Dreambed2025 Change & Challenge Plan」においてESの向上に取り組むものです。

 具体的には「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております女性管理職比率の向上、男性育児休業取得率の向上、及び男女間給与格差是正等とともに、処遇改善、人事評価制度の効果測定、人材育成研修の充実、完全週休二日制導入検討に加え、ES及びEGの独自指標をそれぞれ社内目標として設定し、ESの向上を推進してまいります。

 そこから長期ビジョンである「マルチブランドを活かし、マットレス、ソファ、寝装品から周辺家具まで幅広く取り扱うことで空環創造宣言を完成」のために、当社の目指す組織像に向けてES×EGの両輪を回して、新規事業に主体的に取り組む気運を社内に醸成するよう、人材育成を図ります。

 

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(3)リスク管理

[気候関連リスクの識別・評価プロセス]

 各事業部よりリスク及び機会をリスク・コンプライアンス委員会及びサステナビリティ委員会へそれぞれ報告し、両委員会のなかで気候関連リスクを識別し、当社戦略への影響等を評価しております。

 

[気候関連リスクの管理プロセス]

 両委員会で識別・評価された結果をもって、具体的取組みをリスク・コンプライアンス委員会の所管である総務部、並びにサステナビリティ委員会の所管である経営企画部サステナビリティ室より各事業部へ指示し、また両委員会へ報告するという循環でもって管理しております。

 

[気候関連リスクに対する総合的リスクへの統合プロセス]

 代表取締役社長を委員長とする両委員会が情報を共有し協働することで、気候関連リスクを識別・評価し、担当取締役によりその状況を取締役会へ報告しております。

 

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(4)女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金格差について

①女性管理職比率

 当社は、育児、介護、配偶者の転勤等に伴う多様な働き方を支援する制度を導入するとともに、従業員が身につけるべきスキルを明確にして、それに必要な人材の育成・確保・維持のための施策を講じることで、女性従業員のさらなる活躍と管理職への登用を推進しており、2024年3月期からの10年以内に全管理職の10%程度を女性管理職へ登用することを経営目標として掲げております。

 現在当社における男女構成比率は男性7:女性3ですが、そのなかから会社貢献度の高く今後もその期待が大きく望まれる社員を管理職候補として選抜し、比率数値ありきではなく年1回全社員より提出される自己申告書※における本人のキャリア志向調査も踏まえたうえで、各事業部門において養成し研修も実施いたします。

 

※自己申告書の提出

 年に1回、全社員より自己申告書の提出により社員の自己キャリア、健康面、家庭事情、異動希望、会社に対する要望を申告できる仕組みを構築しております。

 

②男性育児休業取得率

 従前は1.0%に満たない実績でしたが、属人的業務とならないように業務のマニュアル化を進め情報の共有化を図り男性育児休業の取得を促進した結果、2024年3月期には16.6%まで大幅に向上いたしました。

 引き続き男性の育児休業取得の社内周知及び啓蒙を定期的に実施のうえ、安心して取得できる環境づくりを行い、さらに向上させるよう取り組んでまいります。

 

③男女間賃金格差

 全従業員における男女の賃金の差異は、正規従業員の男女の人数比率が影響しており、非正規従業員も含めた全従業員の男女の人数比率は男性7:女性3のところ、正規従業員の男女の人数比率は男性8:女性2であり、かつ、その2割のうち女性管理職比率が「第1 企業の概況 5 従業員の状況」のとおりであるため役職手当分の差異が生じております。この格差是正を推進するために、男女間構成比率における女性比率、並びに女性管理職比率の向上を目指すものです。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると判断している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社の経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため、記載しておりません。

 なお、文中の将来に関する事項の記載については、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであり、当社の事業に関連するすべてのリスクを全て網羅するものではありません。

 当社は、リスク・コンプライアンス委員会を定期的に開催して、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、法規制等の定期的なモニタリングを実施して、その検証・評価を行っております。また、事業継続計画を定め、初動対応、安全確保と事業の早期復旧・継続のための体制の構築・整備に尽力いたしております。

 なお、当事業年度の財政状態・経営成績に影響を及ぼしたと考えられる事項については、検証・評価を行い、具体的取り組みについて検討しております。

 

1.国内景気及び個人消費の動向について

 当社が営むホームファニシング事業は、家具・インテリア業界を主たる販売先としており、同事業による売上高は、国内景気や個人消費の動向の影響を受けやすい傾向にあります。企業活動の停滞、雇用情勢の悪化、個人消費の低迷等により、市場の需要が減少した場合には、売上高の減少、販売価格の下落等による利益の減少等の可能性があります。

 そこで当社では、マルチブランド戦略により多様な消費者のニーズを捉えた付加価値の高い製品・サービスを提供してまいります。さらに、海外市場の展開に向けた調査・検討を行っております。

 

2.競争激化について

 当社は、家具販売店を主要顧客として事業を展開しております。家具・インテリア業界では販売ルートが多様化しており、競争激化により市場環境は一層厳しさを増しております。

 そこで当社では、自社製造にこだわった製品を供給することによって質的な差別化を図るとともに、家具販売店内におけるインショップ(Serta Sleep Site)による発信や、ショップ・ショールームの新たな出店、ECモールへの顧客訴求商品の展開等、販売チャネルの強化を図っております。

 

3.ホテル業界の動向について

 当社では、ホテル向けの売上高を「商業施設向け」に分類しており、ホテルの新規及びリニューアル案件の獲得に注力しております。

 ホテル業界は旅行需要や訪日外国人の動向に左右されることから、当社のホテル向け新規及びリニューアル案件の受注獲得に対して、注文の中止や先送りなどの影響を与える可能性があります。そのため、設計・デザイン事務所等を介した商業施設向け需要開拓、周辺家具等への商材拡大と営業・提案力強化により、リスク分散を図っております。

 

4.他社とのライセンス契約について

 当社は、自社ブランド製品だけではなく「Serta(サータ)」、「ligne roset(リーン・ロゼ)」及び「ruf(ルフ)」等の海外ブランドとのライセンス契約を締結し、自社製造を行っております。ライセンス契約において製造、販売が可能となる製品や地域の他、契約期間、契約を自動更新するための最低販売金額、ロイヤリティ金額及び広告費用の最低支出金額等が規定されております。契約内容は「第一部 企業情報 第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであります。また、当該ロイヤリティの金額は、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 ②損益計算書 製造原価明細書」に記載の「技術使用料」に含まれております。

 海外提携ブランド各社とは、長年に亘り良好な信頼関係の構築に努めており、有価証券報告書提出日現在において契約継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、今後、何らかの事情によりライセンス契約を解消することになった場合、または、ロイヤリティ料率等の契約条件が大幅に変更されることとなった場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

 

5.製品品質について

 当社は、お客様の満足と信頼を得るために、デザイン開発、製造、販売を一貫して行っており、製品の品質管理には万全の態勢を整えておりますが、万一製品に欠陥が生じた場合には、リコールの実施を含む製品の安全確保のためのコスト、ブランド価値の毀損を招くことになります。

 そこで当社では、製造部門において品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001」が継続的に適合して、有効に機能していることを維持するため、管理体制を強化して定期的にチェックするとともに、開発部門においても商品開発時に社内基準に基づく試験等を実施し、製品の品質向上に努めております。

 

6.知的財産権について

 当社は、当社が取り扱う製品及び広告宣伝物について、第三者の特許権・商標権その他の知的財産権に抵触するような事態を招き、法廷の内外で相応の損害賠償金等を請求される可能性があります。

 そこで当社では、担当部門において知的財産権に抵触しないように月次チェックを実施するともに、知的財産権に係る専門知識習得のための社員教育等を行うことにより第三者の知的財産権の侵害を未然に防止してまいります。

 

7.原材料等の調達について

 当社は、原材料及び商品の一部を国内だけでなく、海外からも調達しております。特殊な資材等の調達については、少数特定の仕入先からのみ入手可能のものや、仕入先や供給品の代替が困難なものがあります。市場において、競争優位性を作り出すために、ライセンス元におけるオリジナルの原材料や素材メーカーとの共同開発にて実現した当社のオリジナルの原材料を仕入れております。気候変動や国際的な需要拡大、地政学リスク等による需給動向の変化に伴い、調達競争が激化し、購入価格の高騰や資材の供給の遅延、中断が生じた場合、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 そこで当社では、各担当部門において仕入価格表の管理、複数社購買による適正価格維持、新規調達先検討・開拓、資材価格の変動状況把握などにより、原材料の安定的な調達に努めております。

 

8.為替リスクについて

 当社は、海外から原材料、商品の一部を仕入れております。為替リスクにつきましては、必要に応じて為替予約などを通じたリスクヘッジを検討してまいりますが、これらのリスク回避策を超える急激な為替相場の変動が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

9.運賃、光熱費、加工費の高騰について

 当社の製品・商品はベッドに代表されるように大きさと重量の素材的特性から運賃が営業コストの相当部分を占めており、運送会社における人材不足等からの運賃の値上げ等が予想されます。当社は、物流の2024年問題への対応にあたり、運送各社と良好な関係を築くとともに、積載効率向上によるトラックドライバーの負担軽減に取り組み、輸送能力の確保に努めております。

 また、当社は工場をはじめとして各拠点において電気やガスを利用しており、光熱費の高騰等が予想されるため、工場や本社において節電対策の実施や社員に対する節電意識の醸成などによりエネルギー省力化への取り組み等コスト削減に注力しております。

 さらに、当社は当社製品の一部を外部の協力工場に生産を委託しており、協力工場における人材不足等からの加工費の値上げ等が予想されることから、協力工場の人材育成に注力するとともに、協力工場との情報交換や対応策の協議を継続的に実施しています。

 

10.法的規制等について

 当社は、事業活動を行う上で、家庭用品品質表示法、景品表示法、電気用品安全法、消費生活用製品安全法、容器包装リサイクル法、下請法、個人情報保護法等の様々な法規制の適用を受けており、法令遵守を重視した事業活動を行っておりますが、取引先企業等を相手方とする各種クレームの発生、訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。これらの法的手続に関連して多額の費用を支出し、また、事業活動に支障をきたす恐れがあり、万が一、当社に不利な司法判断等がなされた場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 そこで当社では、内部統制システムの基本方針及びリスク管理規程を制定し、取締役会、監査役会、リスク・コンプライアンス委員会を中心として、コンプライアンス体制の強化・推進と各種クレームの発生、訴訟、係争等の発生可能性の低減に取り組んでおります。また各種契約の締結においては法務部門による確認を行っているほか、弁護士等と顧問契約を締結し、必要に応じて迅速に相談できる体制を整備しております。

11. 自然災害・事故・感染症の発生等について

 自然災害、火災、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、感染症流行、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が発生した場合、事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 そこで当社では、自然災害、火災、感染症の流行等によって通常の業務運営が困難となった場合に備え、事業継続計画を策定して、関連マニュアルの整備、役職員の安否確認連絡体制の構築、定期的な訓練の実施等により、役職員の人命・安全確保と事業の早期復旧及び継続を図るための体制構築・整備に尽力しております。

 また、緊急事態の発生時には、必要に応じて事業継続計画(BCP)運用体制の見直しを行い、実効性の確保・維持・向上を図っております。

 

12.人材の確保及び育成について

 当社では、今後の事業の成長・拡大のため、優秀な人材の確保と育成が不可欠であります。しかしながら、少子高齢化により今後若年層の人材確保がさらに困難になることが予測され、さらに人件費の上昇や人材の社外流出により、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社は、中期経営計画「Dreambed2025 Change & Challenge Plan」において、「ES・エンゲージメント向上・サステナビリティ経営の実現」として「働き方改革、処遇改善及び健康経営推進」を掲げており、当該戦略の実現により、企業価値を高めることで優秀な人材の定着を確保して、また研修制度の充実により人材育成を強化してまいります。

 

13.情報システム・情報管理について

 当社は個人情報を含め多くの情報を有しており、各種の情報システムを利用して業務を遂行しているため、システムの機能停止や機能障害等のインシデントが発生した場合は、効率的な業務を妨げる可能性があります。また、情報漏洩が発生するような場合には、当社の信用を毀損する可能性があります。

 また、当社は、お客様や取引先の個人情報あるいは機密情報を入手することがあります。これらの情報管理につきましては、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生する可能性があります。また、技術、契約、人事等に関する当社の機密情報が第三者に漏えい、不正使用された場合も、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 そこで当社では、情報管理について、情報セキュリティ管理規程及び情報セキュリティポリシーに則り、ウイルス感染やサイバー攻撃等による対策を強化して、適切な技術対策や社内管理体制の整備、社員の情報リテラシーを高めるための教育等の対策を講じてセキュリティの強化に努めております 。

 

14.財務制限条項の付された借入契約について

 当社は縫製完成棟(2024年1月稼働)を建設のため、2022年12月27日付にて(株)広島銀行をエージェントとするタームローン型シンジケートローンを締結しており、当該契約には一定の財務制限条項が付されております。なお、2019年3月28日付で締結しておりました、(株)広島銀行をエージェントとするタームローン型シンジケートローンは2024年3月31日をもって契約期間が満了しております。

 当事業年度末日現在においては財務制限条項に抵触しておりませんが、予測できない業績の変動によっては、財務制限条項に抵触することにより期限の利益を喪失し、期限前に返済が必要となり、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、長期借入金の金利変動リスクにつきましては金利スワップ等の施策を実施しております。

 財務制限条項の詳細は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであります。

 

15.固定資産について

 当社は、工場、営業所等に係る固定資産を自社所有しており、「第一部 企業情報 第3 設備の状況 1設備投資等の概要」に記載のとおり八千代第一工場の建て直しが2023年12月に完了するなど固定資産が増加しております。今後の収益悪化や地価の下落にともなう減損損失の発生、また競合他社の環境適応型商品への対応や、同適応型商品のための設備義務化等により、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

16.社会的信用について

 当社は、製品のデザイン、生産、販売の一貫体制を敷くことによって、消費者ニーズに適合する製品の開発に注力し、こうした事業展開を行うことを通して、当社のブランドイメージをより一層高め、社会的信用の獲得に努めておりますが、前項までに記載した主要なリスクが顕在化した場合には、ブランドイメージが毀損したり、風評に晒されること等によって、当社に対する社会的信用が失われ、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社は、上記のリスクが顕在化して当社の財政状態や経営成績に重要な影響が及んだ場合には、その発生プロセスを明らかにして、経済的被害につながらないよう、適時・適切な情報開示に努めます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項の記載については、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

(1) 経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は4,064,775千円となり、前事業年度末に比べ25,667千円増加いたしました。これは主に現金及び預金の増加164,170千円等によるものであります。一方で、その他における未収消費税等の減少141,698千円がありました。未収消費税等の減少は前事業年度における八千代第一工場の新設及び増改築に係る建設仮勘定の振替に伴って、前事業年度末において未収消費税等を計上したことによるものであります。また、固定資産は6,697,102千円となり、前事業年度末に比べ1,089,852千円増加いたしました。これは主に建物(純額)の増加1,310,395千円、構築物(純額)の増加86,486千円及び機械及び装置(純額)の増加64,370千円等によるものであります。なお、建物は1,393,314千円、構築物は98,360千円が八千代第一工場の建て直しに係るものであります。一方で、建設仮勘定の減少505,194千円がありました。建設仮勘定の減少は主に八千代第一工場の建て直しに係る振替によるものであります。

 この結果、総資産は10,761,877千円となり、前事業年度末に比べ1,115,520千円増加いたしました。

(負債)

 当事業年度末における流動負債は4,231,934千円となり、前事業年度末に比べ56,543千円増加いたしました。これは主に未払金の増加191,175千円、前受金の増加53,019千円、未払費用の増加43,505千円及び短期借入金の増加38,000千円等によるものであります。一方で、支払手形の減少148,470千円及び1年内返済予定の長期借入金の減少140,000千円がありました。また、固定負債は2,308,339千円となり、前事業年度末に比べ887,839千円増加いたしました。これは主に長期借入金の増加800,000千円等によるものであります。長期借入金の増加は八千代第一工場の建て直しに係る資金調達として1,000,000千円のシンジケートローンによる借入を実行したことによるものであります。

 この結果、負債合計は6,540,273千円となり、前事業年度末に比べ944,383千円増加いたしました。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は4,221,603千円となり、前事業年度末に比べ171,137千円増加いたしました。これは主に当期純利益の計上により繰越利益剰余金が254,930千円増加したこと、その他有価証券評価差額金が39,223千円増加したこと及び社外取締役を除く取締役に対する譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブとしての自己株式の処分に伴い、その他資本剰余金が2,527千円増加し、自己株式が16,648千円減少したこと等によるものであります。一方で、期末配当金及び中間配当金の支払いによる繰越利益剰余金の減少127,307千円、自己株式の取得14,885千円がありました。

 この結果、自己資本比率は39.2%(前事業年度末は42.0%)となりました。

 

②経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が2類から5類へ感染症法上の位置づけが移行し

たのに伴い、経済活動が一段と正常化に向かい回復基調にあります一方で、急激な為替相場の変動、並びにロシア

によるウクライナへの侵攻、中東における紛争、中国経済の減速等、依然として不透明な状況が続いております。

 

このような経済環境下において、当社の各販売経路別の売上高の状況は以下のとおりです。

「家具販売店向け」は、ligne roset(リーン・ロゼ)商品のキャンペーンや同商品の法人向け需要の増加、ま

たマットレスのラグジュアリーホテル企画が好調に推移し、さらに当第4四半期における最需要期に例年を上回る

受注がありましたが、当第2四半期よりの消費者動向が飲食、旅行、サービス支出等へ変化したのに伴う家具販売

店における集客の伸び悩みによる影響が大きく、前事業年度と比して209,187千円減少しております。

「商業施設向け」は、ホテル業界の宿泊稼働率がコロナ禍前まで改善し、マットレスのリニューアルや新規案件

への投資需要は回復基調にあり、当社足元案件も対前年同期比で増加しております。不動産各社や外資系ホテルが

インバウンド消費を見込んだ投資計画を相次ぎ発表しているなかで、当社は現時点で既に2024年3月期年間売上高

に匹敵する問い合わせを受けているものの、同投資需要は来期にずれ込むことから、前事業年度と比して147,708

千円減少しております。

「ショップ/ショールーム」は、ROSETTogo(ロゼトーゴ)発売50周年を記念したキャンペーンが奏功し、その

後に続く同キャンペーン第二弾もあり来店数が増加しております。加えて法人向け営業販売やデジタルプロモーシ

ョンを活用したEC販売も寄与したことで全般的に好調に推移し、前事業年度と比して262,023千円増加しておりま

す。

「ハウスメーカー向け」は、ハウスメーカーによる催事の開催が回復途上にありますが、今期年間を通して開催

数が減少したこともあり、前事業年度と比して3,237千円の増加に留まっております。

 

このような状況の中、当社は2023年5月11日に発表いたしました中期経営計画「Dreambed2025 Change &

Challenge Plan」に掲げております各施策を、2024年3月期は次のとおり遂行してまいりました。

 

1)マルチブランド戦略の強化拡大

製品戦略

・Serta(サータ)ブランド

Serta(サータ)史上最高級モデルのSerta Sirius(サータシリウス)の販売を開始し、全国各販売店への

拡販は順調に進んでおります。加えてSerta(サータ)ブランドにおいて、ラグジュアリーホテルとのコラボ

レーション企画は好調のうちに年間目標を達成しました。

・ドリームベッドブランド

2024年1月に専用のデジタル立位測定器で計測する精密なデータと、独自のアルゴリズムから導き出された

寝心地をその場で体験いただけるフィッティングマットレスを設置し、ひとりひとりに理想の寝姿勢、寝心地

のオーダーメイドマットレス「The Dream」の販売を開始しました。

・新ブランドの確立

2023年10月家具ブランドであるマスターウォールとコラボレーションしたLunara+(ルナーラ)の発売を開始

し、同月開催の個展を契機として商品ラインナップを見直しSerta Suite Series「サータスイートシリーズ」

等の新商品を発表しました。

プロモーション戦略

・ラストワンマイルまでのロジスティクス機能強化

輸送業者とともに2023年7月より「ブランド専用車」として、より丁寧に、より速く、より質の高い配送の

ため、お客様に安心いただけるドライバー育成に注力し、ドライバーの輸送業務と積込み業務を分離しての

業務平準化により、2024年問題にも対応済みです。

 

2)販売チャネルの強化拡大

2023年8月に名古屋ショールームを開設し、さらに2023年12月に東京ショールームを渋谷から日本橋へ移転

するとともに首都圏営業の強化のため関連部署を集約し、東京支社を開設いたしました。

2024年6月には高集客、高収益が望める名古屋エリアに、リーン・ロゼ名古屋を開設しております。

 

3)生産技術・能力・機能の拡充

2023年12月に新工場建設における縫製完成棟が竣工し、2024年1月より稼働いたしました。

 

4)戦略遂行を支える財務・投資戦略

株主還元の一環として、2024年3月12日~2024年8月9日の期間で、自己株式の取得50,000株(上限)、

45,000千円(上限)を公表いたしました。

 

5)ES・エンゲージメント向上・サステナビリティ経営の実現

2023年5月に役員向け譲渡制限付株式報酬制度の導入を決議したのに続き、2023年8月に従業員持株会向け譲渡

制限付株式インセンティブ制度の導入を決議しております。

 

 以上の結果、当事業年度の業績は、売上高9,708,610千円(前年同期比1.3%減)、営業利益191,235千円(同55.2%減)、経常利益307,164千円(同33.1%減)、当期純利益254,930千円(同42.3%減)となりました。

 なお、当社はホームファニシング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ164,169千円増加し、656,329千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローとそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、1,080,680千円(前年同期比120.1%増)となりました。これは主に税引前当期純利益421,900千円、減価償却費337,360千円等によるものであります。一方で、仕入債務の減少額176,698千円、法人税等の支払額87,368千円等による資金の減少がありました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、1,468,215千円(同24.3%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1,356,319千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は、551,705千円(同38.2%減)となりました。これは主に長期借入れによる収入1,000,000千円及び短期借入金の純増加額38,000千円によるものであります。一方で、長期借入金の返済による支出340,000千円及び配当金の支払額127,307千円による資金の減少がありました。

 

④生産、受注及び販売の実績

a-1.生産実績

当事業年度における生産実績を商品分類別に示すと、次のとおりであります。

商品分類の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

マットレス

1,931,196

100.8

ベッドフレーム

308,618

94.9

ソファ

497,000

116.9

寝装品

161,560

102.1

その他

192,658

77.5

合計

3,091,035

100.6

(注)金額は製造原価によっております。

 

a-2.仕入実績

当事業年度における仕入実績を商品分類別に示すと、次のとおりであります。

商品分類の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

マットレス

105,289

96.5

ベッドフレーム

1,225,190

88.4

ソファ

28,078

98.5

寝装品

156,130

73.4

その他

171,791

118.4

合計

1,686,480

89.6

(注)金額は仕入価格によっております。

 

b.受注実績

当事業年度における受注実績を商品分類別に示すと、次のとおりであります。

商品分類の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

マットレス

4,022,756

94.8

405,635

122.1

ベッドフレーム

2,521,545

89.8

204,524

86.9

ソファ

2,259,726

150.8

415,708

209.9

寝装品

479,805

86.8

37,664

86.3

その他

748,923

128.8

143,207

195.1

合計

10,032,758

103.6

1,206,740

136.7

 

c-1.販売実績(商品分類別)

当事業年度における販売実績を商品分類別に示すと、次のとおりであります。

商品分類の名称

当事業年度
(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前事業年度
(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

前年同期比

金額(千円)

金額(千円)

(%)

マットレス

3,949,371

4,319,856

91.4

ベッドフレーム

2,552,278

2,858,182

89.3

ソファ

2,042,094

1,482,329

137.8

寝装品

485,762

571,526

85.0

その他

679,103

603,387

112.5

合計

9,708,610

9,835,281

98.7

(注)主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

c-2.販売実績(販売経路別)

当事業年度における販売実績を販売経路別に示すと、次のとおりであります。

販売経路の名称

当事業年度
(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前事業年度
(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

前年同期比

金額(千円)

金額(千円)

(%)

家具販売店向け

7,202,849

7,412,036

97.2

商業施設向け

801,473

949,181

84.4

ショップ/ショールーム

1,317,000

1,054,977

124.8

ハウスメーカー向け

271,348

268,110

101.2

その他

115,939

150,975

76.8

合計

9,708,610

9,835,281

98.7

(注)主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

(売上高)

 当事業年度の売上高は、9,708,610千円(前年同期比1.3%減)となりました。これは主にショップ、ショールームの売上増加等がありつつも、家具販売店における集客の伸び悩みによる売上減少等によるものであります。

 

(売上原価)

 当事業年度の売上原価は、4,741,339千円(同2.9%減)となりました。これは主に売上高の減少に伴うものであります。

 

(販売費及び一般管理費)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、4,776,034千円(同5.5%増)となりました。これは主に販売促進費、給料及び手当等の増加によるものであります。

 

(営業利益)

 上記の結果、営業利益は191,235千円(同55.2%減)となりました。

 

(営業外収益)

 当事業年度の営業外収益は、150,044千円(同100.9%増)となりました。これは主に保険解約返戻金の増加等によるものであります。

 

(営業外費用)

 当事業年度の営業外費用は、34,115千円(同20.1%減)となりました。これは主に前事業年度に発生した支払手数料21,400千円が当事業年度には発生しなかったこと等によるものであります。

 

(経常利益)

 上記の結果、経常利益は307,164千円(同33.1%減)となりました。

 

(特別利益)

 当事業年度の特別利益は、200,149千円(同16.2%増)となりました。これは主に八千代第一工場縫製完成棟に係る助成金200,000千円等によるものであります。

 

(特別損失)

 当事業年度の特別損失は、85,414千円(前年同期比752.4%増)となりました。これは固定資産除却損の増加75,394千円によるものであります。

 

(当期純利益)

 上記の結果、当期純利益は254,930千円(同42.3%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 

(有利子負債)

 

年度別要支払額(千円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

1,793,000

1,793,000

長期借入金

2,000,000

200,000

400,000

400,000

1,000,000

リース債務

11,918

3,146

3,451

3,451

1,869

上記の表において、貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

 

(財政政策)

 当社の運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備等の長期資金は長期借入金で調達することを基本としております。

 なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,804,918千円となっております。また当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は656,329千円となっております。

 

(経営成績に重要な影響を与える要因)

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、営業利益、EBITDA、ROE、配当性向を重要な経営指標として位置づけております。

 前事業年度並びに当事業年度の経営指標は、次のとおりであります。

 

 

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比

金額(千円)

金額(千円)

(%)

売上高

9,835,281

9,708,610

98.7

営業利益

427,180

191,235

44.8

EBITDA

689,828

528,596

76.6

ROE(自己資本利益率)

11.3%

6.2%

 

配当性向

27.9%

51.6%

 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社が技術援助等を受けているライセンス契約は下記のとおりです。

①Serta Simmons Bedding,LLC

国名

アメリカ合衆国

主な契約内容

日本国内における同社ブランドのマットレスの製造、販売及び商標等の使用許諾に関する独占的ライセンス契約

契約締結日

1978年12月28日

契約期間

2020年1月1日~2024年12月31日(左記期間中の基準売上高を達成している場合、更に5年間自動更新)

ロイヤリティ

同社ブランド製品の販売実績に応じた料率を乗じた金額、もしくは販売計画金額に一定率を乗じた金額を最低金額として支払っております。

その他

広告費用について、年間の販売計画金額に一定率を乗じた金額、もしくは一定の最低金額を支出することが定められております。

②ROSET S.A.

国名

フランス共和国

主な契約内容

日本国内における同社ブランドの椅子、肘掛け椅子及びソファの製造、販売及び商標等の使用許諾に関する独占的ライセンス契約

契約締結日

ソファ:1981年5月25日

家具 :1997年5月6日

契約期間

ソファ:2023年5月25日~2024年5月24日(1年ごとに自動更新)

家具 :2023年5月6日~2024年5月5日(1年ごとに自動更新)

ロイヤリティ

同社ブランド製品の販売実績に一定率を乗じた金額、もしくは一定額を最低金額として支払っております。

その他

③RUF-BETT INTERNATIONAL GMBH & CO.KG

国名

ドイツ連邦共和国

主な契約内容

日本国内における同社ブランドの各種ベッド、マットレス、付属品家具、ランプ、テーブル、カットボード等の一部の製造、販売に加え、商標の使用許諾や同社の有する技術面での協力関係を構築すること等を目的とした独占的ライセンス契約

契約締結日

(発効日)

2007年8月1日

契約期間

2023年8月1日~2024年7月31日(1年ごとに自動更新)

ロイヤリティ

同社ブランド製品の販売実績に一定率を乗じた金額、もしくは一定額を最低金額として支払っております。

その他

(注)1.上記は当事業年度末現在における契約に基づく内容を表示しております。

2.上記契約の解除事由は個々の契約により異なりますが、概ねその基本的な規定事項としては、破産、解散、差押え、仮差押え、仮処分、会社更生、債務不履行、契約不履行、機密保持義務違反、反社会的勢力取引にあたる等に該当する場合となっております。

 

 当社が締結している資金調達に関する契約

相手方の名称

契約締結日

契約期間

内容

株式会社広島銀行

(兼エージェント)

株式会社もみじ銀行

株式会社商工組合中央金庫

2019年3月28日

2019年4月1日から2024年3月31日まで

借入金額:1,700,000千円

適用利率:0.5%

借入目的:当社が2019年4月1日に甲種種類株式を取得するための資金調達

契約形態:株式会社広島銀行をエージェントとするタームローン型シンジケートローン

以下の財務制限条項が付されています。

a) 2019年3月期以降、各年度の決算期末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%以上に維持すること

但し、甲種種類株式の全部または一部について、取得、処分及び消却した場合、それらがなされなかったものと仮定して純資産の部の金額を計算するものとする

b) 2019年3月期以降、各年度の決算期における単体の損益計算書に示される経常損益が、2期連続して損失とならないようにすること

(注)本契約は、契約期間の満了により2024年3月31日をもって終了しました。

 

相手方の名称

契約締結日

契約期間

内容

株式会社広島銀行

(兼エージェント)

株式会社もみじ銀行

株式会社商工組合中央金庫

株式会社山陰合同銀行

株式会社百十四銀行

2022年12月27日

2022年12月30日から2034年3月31日まで

借入金額:2,000,000千円(2022年12月30日1,000,000千円、2023年6月30日500,000千円、2023年12月29日500,000千円)

適用利率:基準金利+スプレッド

借入目的:当社が縫製完成棟(2024年1月稼働)を建設するための資金調達

契約形態:株式会社広島銀行をエージェントとするタームローン型シンジケートローン

以下の財務制限条項が付されています。

a) 2023年3月期以降、各年度の決算期末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%以上に維持すること

b) 2023年3月期以降、各年度の決算期における単体の損益計算書に示される経常損益が、2期連続して損失とならないようにすること

 

6【研究開発活動】

 当社の研究開発活動は、年1回の展示会(10月)及びドリーム会(取引先共栄会であり、7月に総会を実施)に向けた新商品の開発、大型ボランタリーチェーンに向けたOEM商品の開発及びライセンス生産品の日本仕様への変更の3つに区分されます。

 当社は、商品開発の専門部署である商品企画部を有しており、デザイン設計担当者7名、知財・技術担当者1名、市場調査担当7名の体制でデザインの原案作成から最終の商品の仕上がりのチェックまで、単一の部署で行っております。今後も、当社の有する知的財産権の保護、他社の有する知的財産権の侵害未然防止について取り組んでいくとともに、市場に選ばれる魅力的な商品を生み出し続けるべく研究開発活動に注力してまいります。

 なお、当社は、ホームファニシング事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載を省略しています。

 当事業年度における研究開発費の総額は、78,572千円となりました。

 主な研究開発活動を下記に記載しております。

 

(1)展示会及びドリーム会向け商品開発(定期開発)

①展示会向け

 開発課所属のデザイナーが決められた試作数の枠に対して5倍から10倍のスケッチ案を出し、その中から選ばれた商品を試作品として製作しております。商品企画部内で複数回の内見会及び、営業社員向け内見会を経て最終的に選抜された試作品を、展示会に出展します。

 なお、設計・品質・構成パーツ等の調達資材及び調達取引先については協力工場と連携しコストやクオリティを協議します。デザイン及び機能、商品名については、特許、商標、意匠等、知的財産権に関する検討、調整を実施しています。

 そして展示会にて、取引先からいただいた評価をもとに、量産に対する最終の採用・不採用を商品企画部にて決定しています。量産化に際しては、あらためて知的財産権チェックを行っています。

 商品の本格リリースまでに複数の段階を経ることで、採用可能性の低い商品については早期に不採用にし、より採用可能性の高い商品をリリースするよう取り組んでおります。

 10月の展示会では、ベッドフレーム24台、マットレス16種類、その他(※)19種類のリリースを決定いたしました。

(※)その他は、ベッドフレーム、マットレス以外の寝装品、ナイトテーブル等の家具、生地やクッション等が該当します。

 

②ドリーム会(取引先共栄会)向け

 当社は、ドリーム会に加盟いただいている取引先に対して、ドリーム会加盟取引先限定のベッドフレーム、マットレスを開発することにより競争力アップのサポートを行っております。開発する商品は、主に既存の売れ筋商品のデザインに沿った値ごろ感のある商品を意識しております。

 

(2)OEM商品の開発(不定期開発)

 昨今、小規模販売店の廃業等が増加しており、大型ボランタリーチェーンとの取引が増加しています。その中で、当社は、大型ボランタリーチェーンとの共同で商品開発を行い、取引先ブランドのOEM商品として供給をしております。取引先の要望を中心とした商品の開発となりますので、営業担当と開発担当が折衝にあたっており、OEM商品開発としてベッドフレーム8台、マットレス17種類の商品開発を行いました。

 

(3)ライセンス生産品の日本仕様への変更

 「ligne roset(リーン・ロゼ)」ブランドにおけるライセンス生産品が該当します。当社が、日本国内市場に商品を展開する上で、日本人の生活様式や体格にあった使い心地を実現するため、ソファのウレタンや家具底面に使用する素材等を選別して、試作品を繰り返し制作しております。

 日本市場への新作としてソファ2種類、その他アイテム1種類を発表し、当社工場及び協力工場にてライセンス生産を行いました。