第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当連結会計年度末現在における経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境

 当社グループは、Open Doorという企業理念のもと、いまだ誰も突破できていない障壁のある生活に密着した分野で、誰よりも先んじて事業機会を創造し、事業を展開し、産業構造を変え、あるべき社会を実現すべく、様々な事業に取り組んでおります。当期の当社グループが事業を展開する日本及びフィリピンにおいては、新型コロナウイルス感染症の蔓延による移動制限などの悪影響から、コロナワクチンの接種の進展などにより脱却し、社会経済活動の正常化に向けた取り組みが始まってきております。

 当連結会計年度より、従来「国際通信事業」、「フィリピン通信事業」、「国内通信事業」、「メディカル&ヘルスケア事業」および「その他」の5つのセグメント区分について、事業の連携がこれまで以上に高まる「国際通信事業」、「フィリピン通信事業」と事業進捗管理が同じ部門である「その他」の区分を「国際通信事業」区分に統合し、「国際通信事業」「国内通信事業」および「メディカル&ヘルスケア事業」に報告セグメントを変更しており、以下の文章は変更後の報告セグメントにて記載しております。

 当社グループの中核事業である通信事業におきましては、社会経済活動の正常化に伴い事業活動が活発化し、通信需要が増加しており、特にフィリピンにおいては国際通信回線の受給の逼迫が続いております。当社グループでは、2020年5月にフィリピンとシンガポール・香港間を結ぶ国際回線(City-to-City Cable System、以下「C2C回線」という。)の使用権を取得して、フィリピンで3番目の国際通信キャリアとなり、2020年10月よりC2C回線と各国の陸上回線を併せた国際通信ネットワークの提供を開始しており、国際通信回線の供給能力が飛躍的に増加したことにより、従来のCATV事業者向けに加えて通信事業者向けの提供が可能となり、キャリアズキャリア(通信事業者のための卸売業者)としてのポジションを確立しております。キャリアズキャリア販売により、通信回線の取得や建設にかかる投資資金の早期回収が可能となることから、当社グループが推進している、フィリピン国内基幹網の増強や5Gの実用化推進等の通信基盤の整備と事業化において、よりスピード感のあるダイナミックな事業展開を進めていくことが可能となります。また、日本における通信事業においても、国内通信事業を分社化し、株式会社アイ・ピー・エス・プロを2022年7月に設立し、意思決定の迅速化及び機動的な企業運営を強化し、事業執行の確実性とスピード化を図っております。

 メディカル&ヘルスケア事業では、新型コロナウイルス感染症の対策を徹底することにより、レーシックの手術数が過去最高を更新するなど引き続き事業が拡大しております。Shinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation(以下「SLACC」という。)の提供する日本の技術やノウハウを導入した医療・美容サービスに対する顧客の評価は高く、引き続き高品質のサービスの提供を行ってまいります。また、予防医療分野への進出による事業拡大を図るため、人間ドック/健診センターを運営する子会社Shinagawa Healthcare Solutions Corporation(以下、「SHSC」という。)を設立し、人間ドック/健診センターShinagawa Diagnostic & Preventive Care Center(以下、「SDPCC」という。)の2023年5月に運営を開始いたしました。

 

① 国際通信事業

 本事業は、フィリピンのCATV事業者や通信事業者へのインターネットに接続するための国際通信回線やフィリピン国内での通信回線の提供及びマニラ首都圏経済集積地での法人向けインターネット接続サービスなどを行っております。

 国際通信回線の提供においては、2020年5月に、オーストラリア最大手通信事業者の海外部門子会社との間で、フィリピンとシンガポール・香港を結ぶC2C回線の一部の使用権を取得し、2020年6月にはISMO Pte. Ltd.(以下「ISMO」という。)を設立してシンガポールの通信ライセンスを取得し、上記3か国の陸上回線と併せた国際通信ネットワークを構築して同年10月に提供を開始しました。このC2C回線の使用権の取得および各国の国内通信ネットワークの構築により、当社グループはフィリピンにおいて、海底ケーブルの権利を保有して運用する大手通信事業者2社に次ぐ3番目の国際通信キャリアとなり、国際通信回線の供給能力が飛躍的に増加したことから、キャリアズキャリアとして通信事業者向けの販売を開始するなど事業が大きく拡大しております。

 また、フィリピン国内においても、2022年7月より、フィリピンの通信事業者2社と、ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶフィリピン国内海底ケーブルネットワークの共同建設を開始し、2023年12月に完成し、提供を開始しております。併せて、陸上回線の整備を行い、国際通信事業の拡大に必要なフィリピン国内基幹網の更なる整備を推進し、フィリピンの多くの地域に快適なインターネット環境の提供を図ってまいります。

 今後の国際通信事業の拡大には、フィリピン国内の通信網の整備による通信回線提供エリアの拡大が必要となることから、更なる国内基幹網を強化し、ミンダナオ島等をはじめとする新たなエリアのCATV事業者や通信事業者への通信回線の提供を開始し、事業を拡大してまいります。

 また、本事業の収益の柱であるマニラ首都圏経済集積地での法人向けブロードバンド接続サービスでは、新型コロナウイルス感染症の影響による外出制限等の実施により、マニラ首都圏での新規顧客の開拓が低調に推移いたしましたが、社会経済活動の正常化が進み、事務所への出勤者数が増加し、経済活動が活発化してきていること、さらに、PDSCNの完成によりフィリピン国内基幹網の整備がされたことにより、地方にも拠点を有する企業との取引も期待できるようになることから、営業員の増強などを図り、獲得の強化を行っております。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現には5Gの同時接続が必要になる等今後も通信環境の整備が進んでいくことが想定されます。2021年2月に、InfiniVAN, Inc.が、フィリピン共和国国家通信委員会(NTC)から、1.5GHzの周波数帯の割当を受けました。2020年に割当済の5G専用の周波数帯である3.7GHz、24GHzと併せて、従来の4G技術と新たな5G技術の併用も視野に入れてマニラ首都圏の商業地域において、5G無線ブロードバンドサービスの提供を目指して実証実験を進めます。

 

② 国内通信事業

 新型コロナウイルス感染症の拡大による在宅勤務やWeb会議の増加により、通信トラフィックが増加し、コールセンターシステムAmeyoJと秒課金サービスを合わせたコールセンターソリューションの売上が好調に推移いたしました。コールセンター向けのサービスでは、引き続き旺盛な需要が予想され、顧客管理とコールセンターの一元システムの構築等の包括的ソリューションの提供を進めてまいります。また、2025年1月に完全実施となる電話網のIP化(PSTNマイグレーション)に対応した通信サービスの構築、システムの開発などによる収益の拡大を図るとともに、それに対応した新たなサービスの提供などによる事業の拡大を図ってまいります。

 

③ メディカル&ヘルスケア事業

 メディカル&ヘルスケア事業では、近視矯正への旺盛な需要に対応して、2020年3月に眼科に特化した第3院を開院したものの、一時は新型コロナウイルス感染症の蔓延による人の移動制限の影響を受けましたが、前期は安全に運営するノウハウの蓄積に加え、3院となったことによるレーシック手術者数への対応力が増加したことから過去最高の手術者数となりましたが、当期は一部競争の激化もあり、手術件数が減少いたしました。今後も、SLACCの提供する日本の技術やノウハウを導入した医療・美容サービスに対する顧客の評価は高く、引き続き高品質のサービスの提供に努めるとともに、需要動向に応じた価格設定などきめ細やかなサービスの提供を図ってまいります。

 フィリピンでは予防医療の普及が遅れており、新たな医療事業として、日本の優れた画像診断技術を活用し、多くのフィリピン人の方々が適切な費用で利用出来る人間ドック・健診センターSDPCCの運営を2023年5月に開始し、予防医療の重要性の認知の拡大などを進め、利用者の拡大を図ってまいります。

 

(2)経営戦略

① 国際通信事業

 C2C回線の使用権を取得して当社グループの国際通信ネットワークを構築しております。これにより、国際通信回線の供給能力が飛躍的に増大して、従来のCATV事業者向けに加えて通信事業者向けの提供が可能となりました。一方で、国際通信事業の拡大には、フィリピン国内の通信網の拡大を始めとする通信基盤の整備が不可欠であり、新たなエリアでのCATV事業者や通信事業者への販売の拡大をはかるため、フィリピンの通信事業者2社と、ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶフィリピン国内海底ケーブルネットワークの共同建設が2023年12月に完成し、併せて、陸上回線の整備を行い、フィリピン国内基幹網の構築いたしております。これにより、フィリピンの多くの地域での通信サービスの提供が可能となり、さらなる事業の拡大を図ってまいります。

 新型コロナウイルス感染症後の社会経済活動の正常化により、フィリピン国内の通信需要が拡大しており、マニラ首都圏の法人顧客の需要は事務所への出勤者数の回復により法人向けインターネット接続サービスの新規獲得数が増加してきていることから、積極的に獲得の強化を図ってまいります。また、コロナウイルス感染症の影響で増加した在宅勤務などの就業形態が引き続き実施されていることもあり、個人向け通信市場も拡大していることから、レジデンシャル向けサービスの提供を強化してまいります。

 2021年2月に、InfiniVAN, Inc.が、フィリピン共和国国家通信委員会(NTC)から1.5GHzの周波数帯の割当を受け、2020年に割当済の3.7GHz、24GHzの周波数帯と併せて、従来の4G技術と新たな5G技術の併用も視野に入れ、5G無線ブロードバンドサービスの提供を目指して工業団地などでの実証実験を進捗させ、実用化に向けた取り組みの強化を図ってまいります。

 

② 国内通信事業

 新型コロナウイルス感染症からの社会経済活動の正常化により、引き続き通信トラフィックが堅調に推移し、コールセンター向けサービスにおいても安定的な需要が続くことが予想されます。コールセンターが必要としているニーズは多様化しており、従来の割安な電話サービスの提供に留まらず、SNS(注1)やAI(注2)によるコミュニケーションも含めた、顧客管理とコールセンターの一元システムの構築等、新しいコンセプトでの包括的ソリューションの提供を進めてまいります。また、会社分割により2022年7月1日に同事業を担う新会社として株式会社アイ・ピー・エス・プロを設立し、同社による新分野への事業展開等の検討を進めてまいります。

 

(注1) SNS

Social Networking Serviceの略称で、Web上で社会的ネットワーク(ソーシャル・ネットワーク)を構築可能にするサービスです。

 

(注2) AI

Artificial Intelligenceの略称で、人工知能と訳されます。コンピューターを使って、学習・推論・判断等人間の知能のはたらきを人工的に実現したものです。

 

③ メディカル&ヘルスケア事業

 メディカル&ヘルスケア事業の主力事業であるレーシックについては、一部競争激化の影響を受け、手術数が前期に比べ減少しております。引き続きSLACCの提供するサービスに対する高い評価や知名度を生かしつつ、競争激化に対応した提供価格の設定や新たなマーケティング手法の実施などにより顧客獲得の強化を図ってまいります。

 また、新規事業である予防医療事業分野では、予防医療の重要性の啓蒙活動を強化するとともに、日本の優れた画像診断技術を活用した、適切な費用で利用出来る人間ドック・健診センターの認知を高め、利用状況の改善を図ってまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 中長期経営戦略を推進するにあたり、優先的に対処すべき課題として下記のものがあります。

 当社グループは、フィリピンでの通信事業に主要な収益の機会を求めており、この事業は、CATV事業者や通信事業者に対して国際通信回線を提供する国際通信事業と、主にマニラ首都圏地域に通信設備を構築し、法人向けのブロードバンドサービス等を提供するフィリピン通信事業から成り立っております。フィリピンでは外資規制等により新規参入が困難であり、既存の大手事業者による寡占市場であること等の理由で、さまざまな収益機会がありましたが、通信事業が外資規制の対象から除外されたこともあり、今後新たな競合事業者の参入も想定されることから、これから数年間の投資が今後の事業拡大にとって重要であり、そのための人材や資金その他のリソースの確保が、最も重要であると認識しております。

 その他にも、下記の対処すべき課題があります。

 

① 国際通信事業

 2020年、2021年に使用権を取得いたしましたC2C回線は、順調に顧客への提供を積み上げており、さらなる安定的な供給のために新たな国際通信回線を確保していくことが必要となります。また、供給量確保の前提として、全体的な通信需要を適切に把握するとともに、通信事業者向け等の大口の顧客を開拓するなど新規顧客の獲得を進め、提供先を拡大することが求められます。

 フィリピンの通信環境を改善し、フィリピン各地の通信事業者やCATV事業者にも国際通信回線の提供など当社グループのサービスを提供するには、フィリピン国内基幹網の整備・拡充が必要となります。2022年7月に開始したフィリピン国内海底ケーブルネットワーク(PDSCN)の共同建設が2023年12月に完成し、陸上回線の敷設を行い、ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶフィリピン国内基幹網を構築しましたので、さらなる整備・強化を図ってまいります。

 また、マニラ首都圏における法人向けブロードバンドサービスの拡大を図るとともに、個人向けブロードバンドサービスの開拓等、市場の変化に合わせた新たな顧客の獲得による需要の確保も重要な課題であります。

 

② 国内通信事業

 2022年7月に会社分割により国内通信事業を分社化し、株式会社アイ・ピー・エス・プロを設立いたしました。分社化による意思決定の迅速化などのメリットを活かし、新たな通信サービスの提供を行うなど事業の拡大を図ってまいります。特に、2025年1月に完全実施となる電話網のIP化(PSTNマイグレーション)に対応した新しいサービスの提供などの業容の拡大を図ってまいります。

 また、国内通信事業において収益の大部分を担ってきました音声通信は、無料通話アプリの普及等により、国内での需要が減少しつつあります。そのような環境下、当社株式会社アイ・ピー・エス・プロが主力としているコールセンター向け通信サービスは、広くコンタクトセンターのソリューション提供に方針を変えることが求められております。当社が提供しているコールセンター向けソフトウエアの提供、自動書き起こしやAIによる応答等、多様なニーズに応えてまいります。

 

③ メディカル&ヘルスケア事業

 フィリピンの医療環境の改善を図るため、2022年6月に人間ドック・健診センターを運営する子会社SHSCを設立し、2023年5月に人間ドック・健診センターSDPCCの運営を開始しております。フィリピンの方々の予防医療についての認知を高め、SDPCCの運営を軌道に乗せ、早期の収益化を図ってまいります。

 また、主力であるSLACCが提供するレーシックについては、引き続き需要の拡大に対応し、マーケティング手法の強化などにより、来院者数の増加に努めてまいります。

 

④ 内部統制システムの強化・運用

 当社グループはこれまで継続的に内部監査体制を強化し、業務の改善、統制の強化に努めてまいりました。今後は、コーポレート・ガバナンスの強化を推進するとともに、さらにコンプライアンス遵守を社内に浸透させる施策を展開してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは事業拡大と企業価値の向上のために、売上高、営業利益を重要な指標としております。ただ下記の事業につきましては、投資が先行する新規事業であること等から、独自の尺度で経営上の目標の達成状況を判断しております。

 国際通信事業は、法人向けブロードバンドサービスに関して、課金済みの顧客件数及びその契約容量を事業成長判断の一つの基準としており、毎月集計して進捗の管理をしております。

 また、同サービスを利用できるようになった建物の件数も、事業成長判断の一つの基準としております。通信回線・通信機器を設置するまで、調整に時間がかかるものの、いったん設置した後は容易にサービス提供できるため、収益の可能性が高まるといえるからです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 当社グループは、当社取締役会において定めたサステナビリティ基本方針に基づき事業を推進するとともに、当社グループにおけるサステナビリティ関連のリスク及び機会の認識、各種施策の検討などを行うサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、当社代表取締役を委員長とし、委員会は各部門の部門長および重要な子会社の社長により構成され、各部門・各子会社が抱える課題等を検討し、その活動のモニタリングを行うなど、サステナビリティに関する取組を決定・推進いたします。また、気候変動に伴う事業遂行に悪影響を及ぼす事象などのサステナビリティ関連のリスク管理についてもサステナビリティ委員会にて対応いたしております。各事業分野の部門長が担当部門に関するリスク認識を共有し、当社グループとして必要な施策を迅速に講じております。さらに、重要な事案が生じた場合には適宜取締役会に報告し、その監視・監督のもとサステナビリティ経営を推進しております。

 サステナビリティに関する取組は、当社ホームページ(https://ipsism.co.jp/sustainability/)に記載しております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

 上記、ガバナンス及びリスク管理を通じて識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は、以下のとおりであります。

 ・人々の生活の質の向上(国際通信事業)

 ・健全な市場競争の推進(国際通信事業)

 ・人々の健康意識・予防意識向上(メディカル&ヘルスケア事業)

 それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 

①人々の生活の質の向上

 当社グループが事業展開しているフィリピンでは、通信インフラの整備が課題であり、都市部では災害や事故が起きても都市機能が麻痺しない通信インフラの構築を行い、地方では都市部との格差の解消につながる通信インフラの整備を行い、フィリピンの人々の生活の質の向上を目指します。

 そのため、フィリピン国内海底ケーブルネットワークを活用し、フィリピン国内において光ファイバー回線網の敷設を進めることで、フィリピン国内基幹回線網を整備・強化し、強靭な通信インフラの構築を図ってまいります。

 

②健全な市場競争の推進

 フィリピンとシンガポール、香港、米国などを結ぶ国際回線容量の提供を通し、各国事業者とパートナーシップを強化し、協業も行いながら地域の通信環境を改善し、通信サービスの選択肢を増やすことで市場の健全な競争状態の推進を目指します。

 

③人々の健康意識・予防意識向上

 日本品質の技術を導入したメディカル&ヘルスケアサービスを手頃な価格で提供することで、医療へのアクセスを容易にし、フィリピンの人々の健康意識・予防意識の向上や生活習慣病の抑制を目指します。

 そのため、日本規格の予防医療に特化した人間ドック・健診センターを開院いたしました。

 

 当社グループでは、女性の役員の就任、女性・外国人・中途採用者の管理職の登用等を積極的に行うなど、属性などに関係なく中核人材を積極的に採用することで、その多様性の確保を図っております。さらに、社員一人一人の成長が実感できるような取り組みを進めるとともに、海外子会社への社員の派遣などを行うことにより多様な人材の育成を図っております。当連結会計年度末現在の当社の女性の役員の比率は33%です。また、管理職に占める女性労働者の割合などについて当社及び国内連結子会社は法律の規定による公表義務の対象でなく、小規模な組織のため、具体的な目標は定めておりませんが、今後も女性・外国人・中途採用者の登用等を積極的に行い、人材の多様性の確保を図り、女性管理職の比率などを高めてまいります。

 また、海外子会社についても同様の方針で採用し、人材の多様性を高めてまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。

 また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、本株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。

 なお、本書に記載されている将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが入手可能な情報から判断したものであります。

 

(1)海外事業に関わるリスク

 当社グループは、主に日本国内のほかフィリピン、シンガポール及びアメリカ合衆国に事業拠点を設置し、事業を展開しております。このため当該状況に係るリスクとして以下の3つの事項をあげることができます。

 

① 経済動向について

 当社グループと共に、当社グループの取引先も日本国内に留まらず海外においても事業を展開しております。このため、当社グループが事業拠点を設置している4か国のほか、取引先企業が事業展開を行っている国々や地域の経済環境や社会環境の変化及び景気動向の影響を受ける可能性があり、その結果、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

② 海外での事業展開について

 当社グループの海外での事業展開において適用を受ける関連法令・規制・税制・政策の制定、改正又は廃止、解釈・実務上の取扱いの相違・変更、行政の運用の変更、政治経済情勢・外交関係の変化、電力・輸送・通信等のインフラの停止・遅延、人件費の上昇、テロ、戦争、伝染病等が発生した場合や、日本との商習慣の違いから取引先等との間で紛争が生じ、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

③ フィリピンのカントリーリスクについて

 当社及びグループ会社8社は、フィリピンにおける事業を展開しております。このうち、KEYSQUARE, INC.は国際通信事業のバックオフィス業務や在留フィリピン人向けのコールセンターの運営等を行っているほか、SLACCはマニラ市内に3つのクリニックを運営し、レーシック(近視矯正手術)、美容、矯正歯科等の施術を行う医療・美容事業を行っております。また、2015年にはフィリピン国内での通信事業展開を企図してInfiniVAN, Inc.を設立し、フィリピン国内にて通信事業を行っております。CorporateONE, Inc.はInfiniVAN, Inc.の発行済み株式の44.8%を保有する持株会社として機能しております。BBIX Philippines Inc.は、2023年11月に設立され、フィリピン国内にてインターネットエクスチェンジ(IX)サービスを提供しております。シンガポールにあるISMO Pte. Ltd.はフィリピンのCATV事業者や通信事業者に国際通信回線を提供しております。Carrier Domain, Inc.はフィリピンのCATV事業者などに通信機器の販売を行っております。さらに、SHSCは、人間ドック・健診センターの運営を行っております。

 近年のフィリピンは、賃金水準が向上し、当社グループが希望する人材の確保が想定どおりにできない可能性があります。また、台風や火山の噴火等といった自然災害により通信システムの障害等が生じ都市機能が麻痺する場合や、反政府組織によるテロ活動等により治安が悪化した場合は、当社グループの事業活動を期待どおりに展開できない可能性や、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(2)国際通信事業に関わるリスク

 当社グループの国際通信事業は、①当社によるフィリピンと香港・シンガポール等を結ぶ国際通信サービスの提供と②InfiniVAN, Inc.によるマニラ首都圏を中心とした地域内での法人向けインターネット接続サービスの提供及びフィリピン国内通信回線の提供になります。前者①は、当社が、フィリピンと香港、シンガポール、東京、北米との間の国際通信回線(フィリピン国内区間を含みます)の長期使用権(IRU)(注1)又は賃借権を、実質的な所有者である通信回線事業者から取得し小口化して、フィリピンでインターネット接続サービスを提供しているCATV事業者等に対して提供しております。また後者②は、InfiniVAN, Inc.がマニラ首都圏を中心とした地域で法人向けにインターネット接続サービスを提供するとともに、自社で敷設した通信回線を他の通信事業者等にIRU契約又はリース契約により提供しております。当社グループの国際通信事業には、以下のようなリスクがあります。

 

(注1) IRU

「Indefeasible Right of Use」の略称で、当事者間の合意がない限り破棄又は終了させることのできない長期的・安定的な通信回線使用権のこと。当社は、主に長期のIRU契約を締結して国際通信回線使用権を仕入れ、販売しております。

 

① 当社による国際通信事業

A フィリピンにおける当社の通信事業サービスの提供の形態等について

 当社は、フィリピン国内外の通信事業者から取得したフィリピンと香港・シンガポール等を結ぶ大口の国際通信回線を小口化し、フィリピン国内のCATV事業者や通信事業者等の顧客に提供しておりますが、フィリピン領土内における通信事業については、フィリピンでの通信事業に適用されるRepublic Act No.7925 AN ACT TO PROMOTE AND GOVERN THE DEVELOPMENT OF PHILIPPINE TELECOMMUNICATIONS AND THE DELIVERY OF PUBLIC TELECOMMUNICATIONS SERVICES(以下「R.A.7925」という。)の規制を受けております。R.A.7925により、フィリピン国内の通信事業は、フィリピン国内の通信事業の認可を得た事業者のみが行なうことができます。また、フィリピン国内の規制により、当社が単独でフィリピン国内に通信設備を設置・運用することが認められておりません。そのため、当社の子会社であるInfiniVAN, Inc.は、下記「② InfiniVAN, Inc.による通信事業について」「A フィリピンにおける規制等について」に記載のとおり、フィリピン国内で通信回線を敷設して通信事業を行う為に必要なCPCN(通信事業者適格)のProvisional Authority(仮免許)を有しております。当社は、InfiniVAN, Inc.との間で、通信回線の相互接続を内容としたMutual Business Cooperation Agreementを締結し、InfiniVAN, Inc.はフィリピン国内のCATV事業者及び通信事業者に対して、フィリピン国内にある通信回線等の通信用設備のリースを行っております。さらに当社がIRU等を取得している国際通信回線は、この提携により、InfiniVAN, Inc.が保有するフィリピン国内の通信回線と接続され、フィリピン国内の顧客は、当社及びInfiniVAN, Inc.からそれぞれ個別に提供される通信回線によって、シンガポール、香港、北米、東京にあるサーバー等と接続することができます。このような事業環境であるため、InfiniVAN, Inc.の保有するCPCNのPAの更新が認められない事象が生じた場合には、当社グループの事業展開や財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性はあります。

 

B 他社との競合について

 フィリピン国内においては、大手2社(PLDT,Inc.及びGlobe Telecom,Inc.)が、主に携帯通信と地域間通信に係るサービスを寡占した結果、当該サービスについては、競争が不十分で料金が高止まりし、また、人口の少ない地域等では携帯電話を利用できない等の弊害が生じています。このような弊害への対応として、フィリピン政府が主導して、3番目の携帯電話事業者(Dito Telecommunity Corporation。以下「Dito社」といいます。)を立ち上げました。現在、当社グループはPLDT,Inc.及びGlobe Telecom,Inc.より国際通信回線の提供を受けており、また、当社グループからも一部国際通信回線を提供しており、これらの競合他社とは取引関係があります。また、当社はCATV事業者向け卸売り、上記の競合他社は携帯電話を中心とした小売りとマーケットでの棲み分けもできておりますが、今後、これら競合他社が、その資本力、サービス・商品、顧客基盤、営業力、ブランド、知名度等において、その優位性を現状以上に活用してサービスや商品の販売に取り組んだ場合や、他の通信事業者を更に買収して寡占化が進む場合、当社グループが価格競争等で劣勢に立たされ、当社グループが顧客を獲得・維持できないことも考えられます。

 

C 特定の仕入れへの依存について

 当社グループの国際通信事業の遂行にあたっては、現在、当社が、フィリピンとアメリカ間、フィリピンとアジア地域(香港・シンガポール・東京)間の国際通信回線のIRU又は賃借権を、それぞれの回線ごとに別々の事業者より調達しており、調達先は①Telstra International Limited(香港)、②Telekom Malaysia Berhad(マレーシア)、③PLDT, Inc.(フィリピン)及び④Globe Telecom, Inc.(フィリピン)の4社となっております。これら国際通信回線の調達において、供給停止、納入遅延、不具合等の問題が発生し、調達先や回線の切り替えが適時にできない場合、品質維持のために必要な保守・点検が打ち切られた場合、又は、大幅な値上げを要求される場合、当社グループのサービスの提供に支障をきたし、顧客の獲得・維持が困難になる可能性や調達先の変更のために追加のコストが生じる可能性があります。その結果として、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

D サービスの構成について

 これまで当社は、国際通信事業において、国際通信回線のIRU又は賃借権を、当該回線の実質的な所有者である国際通信回線事業者から取得し、主にそれを小口化してフィリピンのCATV事業者に長期のIRU契約により提供してまいりました。しかし伝送技術の発達による既存通信回線の高速化や新規通信回線の設置計画等により、国際通信回線の価格が低下傾向であり、フィリピンのCATV事業者が長期のIRU契約から短期リースの契約にシフトする動きが顕著になっております。

 従来、国際通信回線の卸売りにおいて、PLDT, Inc.及びGlobe Telecom, Inc.以外の競合事業者がおらず、長期にわたって収益が見込めるマニラ以外の地域、地方都市において、CATV事業者向けの卸売事業を拡大してきました。2023年12月にサービスを開始したフィリピン国内海底ケーブル・ネットワーク(PDSCN)により、当社グループがサービスを提供できる地域が大幅に増加することが見込まれます。しかしながら、下記「② InfiniVAN, Inc.による通信事業について E 地方へのネットワークの拡大について」に記載のとおり、競合他社においても競争力の強化策を進めており、競争の激化が当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 また、当社の仕入先である①Telstra International Limited(香港)、②Telekom Malaysia Berhad(マレーシア)、③PLDT, Inc.(フィリピン)及び④Globe Telecom, Inc.(フィリピン)の4社の国際通信回線事業者が、当社の販売先である中堅CATV事業者等に国際通信回線を販売する場合には競争が激化するなど、当社グループのサービスの提供に影響を及ぼし、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 

E ケーブルテレビの市場環境

 動画配信利用者の増加や、それに伴うテレビの視聴時間の減少、更に動画配信プラットフォームを経由したコンテンツの視聴時間の増加等のライフスタイルの変化により、有線放送を取り巻く環境は厳しく、米国をはじめとして、各国のCATV事業者は、収益の柱を有線放送からインターネットサービスプロバイダー事業に移行させることを試みております。ただし、そのためには、CATV事業者のインターネット接続サービスのほうが、通信事業者のサービスよりも魅力的であると市場が認知するだけの、通信設備や回線への投資が不可欠となります。一方、こうした動きに対応して、米国ではいち早く5Gによる家庭向けインターネット接続サービスが通信事業者によって提供される等、通信業界とCATV業界の競争が激化しております。また、フィリピンでも、これまでDSLサービス(注3)しか提供してこなかった大手通信事業者が、地方でもFTTH(注4)の提供を開始し、ポケットWi-Fi等の提供を始め、家庭用インターネット接続サービスに積極的に取り組むようになっています。こうした状況下、CATV事業者では、インターネット接続サービスで優位性を保つために、通信回線の光ファイバー等への置き換え等を行う必要があり、こうした投資に後れを取った場合、CATV事業者がインターネット接続サービスで収益を上げることができなくなる可能性があり、ひいては当社が取得した下記「③ その他全般に関わること A 国際海底ケーブルの使用権の取得について」に記載のC2C回線の収益に影響を及ぼし、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(注3) DSLサービス

電話回線等のアナログ回線を利用した高速なデータ通信を行う技術を使ったデータ通信サービスのこと。既存の設備を使って高速通信ができるとして日本でも普及したが、距離に応じて通信速度が落ちることもあり、日本では下記のFTTHサービスに置き換わっている。東日本電信電話株式会社(NTT東日本)・西日本電信電話株式会社(NTT西日本)は2026年1月にサービスを終了と公表。

 

(注4) FTTHサービス

「Fiber To The Home」サービスの略称であり、光ファイバーを使った高速データ通信サービス。東日本電信電話株式会社(NTT東日本)・西日本電信電話株式会社(NTT西日本)が提供する「フレッツ光」が有名。

 

F 特定の顧客及び委託先への依存について

 当社グループの国際通信事業では、国際通信回線の案件開拓等の、営業活動の一部をフィリピン国内の事業者に委託しております。特にAmerille Management Consultancy社を通じた2024年3月期の売上は2,104百万円で国際通信事業の売上の24.9%となっております。現在、同社との関係は良好でありますが、仮に同社との関係が悪化し、同社を介した売上がなくなった場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 

② InfiniVAN, Inc.による通信事業について

A フィリピンにおける規制等について

 当社は、当社グループによるフィリピン国内の通信回線の提供を目的として、当社子会社であるInfiniVAN, Inc.を設立しております。2016年6月に同社に通信事業を行う権利(Franchise)を付与する法律AN ACT GRANTING THE INFINIVAN, INC. A FRANCHISE TO CONSTRUCT, INSTALL, ESTABLISH, OPERATE AND MAINTAIN TELECOMMUNICATIONS SYSTEMS THROUGHOUT THE PHILIPPINES(以下「R.A.10898」という。)が制定され、同社は、2017年7月にフィリピン国内に自ら通信回線を敷設することなく通信事業を行う為に必要となるValue Add Service Provider (付加価値サービス。以下「VAS」という。)の登録を行ったほか、2017年11月にNational Telecommunication Committee(国家通信委員会)から、フィリピン国内に通信回線を敷設して通信事業を行う為に必要な、Certificate of Public Convenience and Necessity(通信事業者適格。以下「CPCN」という。)のProvisional Authority(仮免許。以下「PA」という。)を取得いたしました(Case Number 2016-227)。PAを同社に付与する命令書(Order)では、PAの有効期間は2017年11月10日から18か月間とされ、InfiniVAN, Inc.はPAの取得後1年以内に約305百万ペソ以上の増資を行うこと等の義務を負い、増資義務に違反した場合には、PAの更新及び期間延長ができない旨が条件として規定されております。また、同社は、2018年9月11日に、ビサヤ・ミンダナオ地域でのCPCNのPAが認められました(Case Number 2017-011)。この2つのPAによって同社に課された増資義務はすでに履行済みであり、各PAは更新されております。また、ルソン島のCPCNのPAの有効期限は2023年5月10日となっており、ビサヤ・ミンダナオ地域のCPCNのPAの有効期限は2023年3月10日となっており、現在、再更新の申請済みとなっております。

 事業開始後5年内に同社株式の30%以上を売り出すことを定めたR.A.10898の適用については、適用時期の延長をフィリピン国会に申請済みとなっております。また、Public Service Act(以下「公共サービス法」という。)の改正により、電気通信事業が公益事業ではなくなったことを受け、R.A.10898の規制対象から除外することも議論されています。 InfiniVAN, Inc.が当該法令に違反する行為を行った場合、行政機関からVASの登録やCPCNを取り消されたり、当社グループの取引先から契約を解除される可能性があります。上記のような事態が発生した場合、当社グループが想定している当社グループの国際通信事業の展開に支障が生じ、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 

B フィリピンにおける外国資本の出資規制について

 フィリピンでは、同国の憲法において、外国資本がPublic Utility(以下「公共事業」という。)に出資できる上限を40%と定めており、公共サービス法において、フィリピン国内の電気通信事業を公益事業の一つとして規制の対象にしていました。2022年3月に同法が改正され、フィリピン国内の電気通信事業は公共事業の対象ではなくなり、外資規制の適用を受けなくなりました。InfiniVAN, Inc.では増資の申請を行い、フィリピン電気通信委員会(National Telecommunications Commission)の承認を経て、2024年3月にフィリピン証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)の承認を取得し、当社名義の株式保有比率は55.2%となりました。これにより、当社がより積極的にフィリピンの通信事業に投資できるようになる半面、他の外国資本の参入による競争の激化が、当社グループの事業や財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

C フィリピン国内通信回線整備について

 当社グループでは、InfiniVAN, Inc.がマニラ首都圏地域内で通信回線敷設を行っております。マニラ首都圏地域内に通信回線を敷設するためには、Local Government Unit(LGU 地方自治体)、Department of Public Works and Highways(DPWH 公共事業及び高速道路省)の許可も必要となります。しかしながら、通信回線の敷設工事に必要なこれらの許認可、住民の同意が想定どおりに整わなかったときは、事業の進捗に遅れが生じ、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 また、マニラ首都圏地域内は幹線道路の慢性的な渋滞等により、回線敷設工事の実施が困難であり、工事が遅延するケースも予想され、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

D 地方のCATV事業者との取引拡大について

 当社及びInfiniVAN, Inc.は、インターネット環境が十分ではなくCATV事業者が廉価な国際通信回線を必要としているビサヤ・ミンダナオ地域で通信回線の敷設を進め、CATV事業者に対して国際通信回線のIRUを提供することを計画しております。ただし、小規模なCATV事業者にとってIRU代金の一括支払いは負担が大きいことから分割払いを認める予定であり、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、ビサヤ・ミンダナオ地域は、当社グループの拠点の所在地であるマニラ首都圏からは距離があり、通信回線に障害が発生した場合の対応に時間を要する可能性があります。従って、天災や障害が発生した場合に損害が拡大する可能性があり、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

E 地方へのネットワークの拡大について

 マニラとルソン島以外の地域とを結ぶ国内通信回線はPLDT,Inc.及びGlobe Telecom,Inc.が寡占しており、これまで他の事業者によるルソン島以外の地域での通信サービスの提供は限られておりました。当社グループのInfiniVAN, Inc.は、フィリピンの通信事業者2社と共同で、ルソン島とビサヤ諸島・ミンダナオ島を結ぶ海底ケーブルの建設工事を進め、2023年12月に主要ルートのサービスの提供を開始しましたが、Converge ICT Solutions, Inc.と3番目の携帯電話事業者であるDito社との通信ケーブルの共同利用など、競合他社においても競争力の強化が進められており、競争の激化が当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

③ その他全般に関わること

A 国際海底ケーブルの使用権の取得について

 当社は、2020年5月にフィリピンと香港・シンガポールを結ぶTelstra International Limited(香港)が保有するC2C回線のIRUを取得する契約を締結し、同年10月にフィリピン国内のCATV事業者や通信事業者に対する当該回線の提供を開始いたしました。IRUは一種のリースであり、所有者としての責任を第三者に対して負うものではありませんが、伝送技術の進化又は新たな海底ケーブルの敷設により、今後も1Mbps(メガビット)あたりの料金は年々下落することが予想され、C2C回線の販売における事業性の悪化が、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 

B 減損損失について

 当社は、国際通信回線の取得価額を無形固定資産である通信回線使用権として計上しておりますが、フィリピンのCATV事業者等に提供できない期間が長引き、将来キャッシュ・フローを創出しないと判断された場合には、会計上、当該通信回線使用権について減損損失を計上することになります。現状において、保有する通信回線使用権の減損処理を必要とする事象は生じていませんが、顧客への提供が順調に進まなかった場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 

C 技術革新への対応について

 データ通信業界では、伝送技術の進化により、通信速度の高速化が進み、1Mbps(メガビット)あたりの料金は年々下落する傾向にあります。仕入れ方法の多様化を進めてリスクの分散を図っているものの、当社は国際通信事業において、国際通信回線を長期契約で調達していることから、当該調達に係る費用を上回るIRU料金・ リース料で新規に契約する顧客がいなくなる可能性、さらには、当社が調達している国際通信回線が陳腐化し、ニーズがなくなる可能性があり、その場合、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

D 自然災害等の予測困難な事情について

 当社が国際通信事業において展開する国際通信回線使用権の販売においては、海底ケーブルが重要な構成要素となっております。万が一、地震や事故等で海底ケーブルが切断された場合、当社のネットワークは迂回路を構築しておりませんので、再度接合されるまでは、サービスの提供に支障をきたす可能性があります。当社では、そのような場合に当社の顧客に対する責任額を一定限度に制限する旨の契約を締結し、損失額を限定しておりますが、一定金額の費用負担が発生する可能性があります。また、復旧に相当時間を要した場合、当社の信頼性や企業イメージが低下し、顧客の獲得・維持が困難になる可能性があります。また、通信サービスを復旧させるために追加の費用負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(3)国内通信事業に関わるリスク

 当社では、意思決定の迅速化及び機動的な企業運営を強化し、事業執行の確実性とスピード化を図るため、2022年7月に当社子会社として株式会社アイ・ピー・エス・プロ(以下「IPSP」という。)を設立し、IPSPが会社分割により国内通信事業を承継しております。IPSPは、主に、秒課金サービス等の音声通信サービス、及びコールセンターシステムを提供しております。国内通信事業による売上高は、当連結会計年度の売上高の29.2%を占めておりますが、以下のようなリスクがあります。

 

① 日本における規制等について

 IPSPは、国内通信事業について電気通信事業法及び有線電気通信法等の関連法令・業界慣行による規制の適用を受けており、同社は総務大臣に電気通信事業者として届出(電気通信事業届出A-04-19836、届出の有効期限なし)を行い、これらの関連法令の遵守をしております。

名称

所轄官庁

登録の

有効期限

関連法令

電気通信事業者届出A-04-19836

総務省

なし

電気通信事業者法

昭和59年法律第86号

 IPSPが、その事業運営が適正かつ合理的でないために電気通信の健全な発達又は国民の利便の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、総務大臣より業務改善命令を受けることがあります。当該法令や命令に違反する行為がある場合には、罰金等の処分を受けたり、又は当社の取引先から契約を解除されたりする可能性があります。かかる事態が発生した場合には、当社グループの信頼性の低下や事業展開に支障が生じたりする可能性があるほか、金銭的負担の発生により、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。また、これらの法令の変更やその解釈変更、新たな法令の施行、国内の情報通信政策等の変更・決定、これらに伴う規制の見直し・整備、業界慣行の変更が行われた場合、IPSPの事業展開や当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

② 技術の進展等について

 IPSPが展開する国内通信事業においては、技術革新のスピードが速く、新技術によるサービスの導入により、音声通信需要は減少傾向にあります(2010年-2019年 総務省・経済産業省「情報通信基本調査」)。現状において、国内通信事業の音声通信による売上比率は、当連結会計年度の国内通信事業の売上の約9割を占めており、当社は、コールセンターシステムやデータセンターでのコロケーションサービス等の音声通信に依存しない事業構造へ切り替えを進めておりますが、今後想定を上回る速度での技術革新が起こったり、新技術が出現したり、事業構造の切り替えが想定どおりに進まない場合には、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

③ 他社経営資源への依存について

 IPSPは、国内通信事業に係る通信サービスの提供に必要な通信ネットワークを構築する上で、他の事業者が保有する通信回線設備等を一部利用しています。今後何らかの事情により、当該設備等を継続して利用することができなくなった場合、又は当該設備に係る接続料(他の通信事業者に支払う必要のあるネットワークの利用料になります。)等が引き上げられた場合、当社の事業展開や当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。また、この接続料の算定にあたっては、年度開始時の4月には単価を定めず、翌年の2月頃に利用実績を見て決定し、年度開始時の4月に遡って適用するというルールを取っている事業者もあります。そのため精算が行われる第4四半期の収支や損益が他の月に比べて大きく振れる可能性があります。

 

④ 環境の変化について

 IPSPが主力とする音声通話サービスは、チャット、メール、SNSその他通信手段の普及により、需要は減退しております。また、当社のコールセンター事業者向けサービスの主なユーザーであるコールセンター運営事業者も、スタッフ確保が難しくなっていることから、チャットロボ等への移行を積極的に取り組んでおります。中長期的には、音声通信の市場が縮小する可能性は高く、特に音声通話に依存した通信事業を行うことは、当社の財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 特定の仕入先への依存について

 IPSPの国内通信事業におけるサービスの一つであるコールセンターシステム「AmeyoJ」は、Drishti-Soft Solutions Pvt. Ltd.(現 Exotel社)が開発し、IPSPは同社より日本国内での販売代理権を付与され、またライセンスを仕入れております。同社との契約は、更新の規定はなく、また当事者の3か月前の通知により、いつでも解約ができる規定となっております。同社との契約が解約され、又は更新されない場合や、同社に不測の事態があった場合、代替の仕入先は存在せず、当社は当該サービスを提供できなくなることにより、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 個人情報及び情報セキュリティについて

 IPSPは、国内通信事業の遂行にあたり、顧客の企業情報や顧客が保有する個人情報等、様々な機密情報に接する機会があります。通信事業者として通信の秘密の保護を遵守するとともに、それらの情報管理やセキュリティ管理に対しては個人情報保護規程や情報管理・秘密保持規程を整備し、利用権限の確認の強化、アクセスログの保存等の外部ネットワークからの不正侵入を防止する方策を実施する等、情報の適正な取り扱いと厳格な管理を行っております。しかしながら、外部の侵入や内部での人為的なミス等により、これらの情報が外部に漏洩した場合には、当社の信用低下や損害賠償責任の負担等を通じて、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。また社会情勢の変化等により、情報の保護、通信の秘密の保護に要するコストが増加したときは、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑦ システムトラブルや人為的なミスによるサービスの中断・品質低下について

 IPSPが提供する国内通信事業に係る通信サービスにおいて、IPSP及び他の通信事業者の人為的なミスや設備・システム上に障害等が発生した場合、通信回線の遮断等が生じて各種サービスを継続的に提供できなくなること、又は各種サービスの品質が低下すること等の重大なトラブルが発生する可能性があります。サービスの中断・品質低下による影響が広範囲にわたり、復旧に相当時間を要した場合、顧客から損害賠償を請求される可能性、当社の信頼性や企業イメージが低下し、顧客の獲得・維持が困難になる可能性があります。その結果、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑧ サービスの不適切利用について

 IPSPの国内通信事業に係る電話サービスが、振り込め詐欺をはじめとする犯罪行為の道具として利用された場合、当社の信頼性や企業イメージが低下することにより、事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(4)メディカル&ヘルスケア事業に関わるリスク

 当社の海外子会社SLACCでは、フィリピンでレーシック(近視矯正手術)、美容、矯正歯科等の施術を行う医療・美容事業を行っております。また、フィリピンにおいて、予防医療事業を行っております。これら事業には、以下のようなリスクがあります。

 

① フィリピンにおける規制等について

 当社の海外子会社であるSLACCは、医療法人社団翔友会理事長との合弁会社でありフィリピンのマニラ首都圏地域で、3つのクリニックを運営し、レーシック(近視矯正手術)、美容及び矯正歯科等の施術を行う医療及び美容事業を行っております。また、SLACCの子会社であるSHSCについては、当社と医療法人社団翔友会理事長が出資し、人間ドック・健診センターを運営しています。フィリピンでは民間企業による医療施設の開設及び運営が認められており、SLACCとSHSCはHospital Licensure Act(R.A4226)に基づいて医療施設開設の許可及び運営の免許を取得しております。また、医療機器の使用許可により規制されております。当社グループは許可等の取得・更新を行い、法令遵守を徹底しておりますが、法令の改正若しくは新たな法令の施行又は法令の解釈の変更により、当社グループの期待どおりにメディカル&ヘルスケア事業を展開できなくなる可能性があります。

 なお、フィリピンでは、日本における医療広告のような規制はありませんが、消費者保護を目的とするConsumers Act of the Philippines(R.A7394)により、値引き等の広告をする場合には、所轄官庁(Department of Trade and Industry:取引産業省)の事前の許可が必要です。当社グループは、被施術者獲得に関する法令を遵守しておりますが、法令の改正若しくは新たな法令の施行又は法令の解釈の変更により、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

② 他社との競合について

 フィリピンではメディカル&ヘルスケア事業に進出する会社が増加してきており、今後品質・価格・サービス競争が激化するものと認識しております。このため、当社グループが品質・価格・サービス競争に適切に対応できず、競合他社が当社グループの施術・サービスと同等又はより優れたものを導入する場合には、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

③ 合弁事業であることのリスク

 SLACCは当社及び医療法人社団翔友会理事長との合弁会社(当社の議決権所有割合は緊密者を含め約50.5%)であり、SLACCは医療機器の選定や医師の研修等を翔友会グループに委託しており、翔友会グループは当社グループの医療・美容事業の運営上重要な役割を果たしております。当社グループと翔友会グループとは、これまで円満な関係を維持しておりますが、状況の変化により、合弁関係が解消されるに至ったときは、SLACCによるメディカル&ヘルスケア事業が継続できず、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

④ 医療行為の安全性について

 SLACCが行う医療行為のうちレーシック(近視矯正手術)に関しましては、1995年にアメリカの食品医薬品局(FDA)がエキシマレーザーを使用した視力矯正術を認可し、日本でも2000年に厚生労働省が認可されております。レーシック(近視矯正手術)の安全性については、歴史が比較的浅く、後遺症の有無等の長期にわたる安全性は実証されていないという意見もあり、こうした懸念が広がった場合、当社グループの顧客の獲得・維持が困難になり、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 なお、SLACCで行う美容整形の施術は、全身麻酔を必要とするような外科的手術は行っておりません。またSLACCの合弁先である翔友会グループに対して医師の研修実施を委託し、医師が施術前の問診を徹底して行うこと等により医療事故の抑止に努めておりますが、万が一医療事故が発生した場合、当社グループの信用低下や、損害賠償責任の負担等を通じて、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑤ フィリピンにおけるレーシック(近視矯正手術)の業界について

 近年は、フィリピン国内においてPCの操作、スマートフォンの操作の機会が増える等により近視になる要因が増えており、それに伴ってレーシック(近視矯正手術)の知名度の向上やレーシックの需要は拡大するものと考えております。しかしながら医療技術の未熟な医師による手術や、衛生管理が不徹底な医院での手術により、眼病の疾患が発生する等、レーシックへの信頼性が損なわれた場合等においては、レーシックに対する需要が減少し、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 拠点展開方針と設備投資方針

 当社グループは、メディカル&ヘルスケア事業において、今後も需要動向を見極め、フィリピン国内で分院の開設を進めていく予定です。新規分院の開設にあたって開設する地域の市場調査を十分に行った上で開設しますが、顧客や診療件数の増加が想定を下回り、開設からある程度の期間は、損失を計上する可能性があります。また、既存のクリニックにおいても、今後の顧客増加への対応、あるいは医療サービスの品質の向上を図るため、継続的な医療技術の向上、医療機器等の設備投資が必要であると認識しています。設備投資を行ったものの、顧客や診療件数の増加が想定を下回った場合には、稼働率が低下することになり、減価償却費等の費用を超える収益を確保できず、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 医療スタッフの確保

 当社グループは、専門医をはじめとしたスタッフの確保は、メディカル&ヘルスケア事業の拡大にとって重要であるため、優秀なスタッフが就業・定着するように、積極的な採用活動のほか研修等を実施しております。しかしながら、こうしたスタッフの採用ができない、定着しない等、人材の確保に支障をきたすときは、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 新規事項に関するリスク

 当社グループでは、人間ドック・健診センターを運営する会社SHSCを設立し、2023年5月に人間ドック・健診センターSDPCCの運営を開始しております。当該人間ドック・健診センターは、設備の先行投資が必要となる事業であり、顧客数や稼働率が計画を下回った場合には、減価償却費等の費用を超える収益を確保できず、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑨ 個人情報等の流出等について

 当社グループでは、メディカル&ヘルスケア事業の遂行に当たり、顧客の氏名・住所・電話番号等の個人情報を取り扱っております。当社グループでは、それらの情報管理やセキュリティ管理に対しては個人情報保護規程や情報管理・秘密保持に関する規程を整備し、情報の適正な取り扱いと厳格な管理を行っております。しかしながら、外部からの不正な手段によるサーバー内の侵入等の犯罪や従業員の過誤等により個人情報が漏洩する可能性はあります。そのような場合、当社グループに対する信用低下や損害賠償責任の負担等を通じて、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 

(5)組織体制に関わるリスク

① 特定の人物への依存について

 当社の創業者であり、代表取締役の宮下幸治は、当社グループの経営方針や経営戦略の策定、当社事業の推進に重要な役割を果たしております。当社グループでは、同氏に過度に依存しないように経営体制を整備し、権限の委譲と人材の育成・強化を通じてリスクの軽減を図っておりますが、何らかの理由により同氏に不測の事態が生じた場合、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

② 人材の確保と育成について

 当社グループは、経営理念の実現に向けて高い能力と志をもった人材を集めることに注力してまいりましたが、中核となる社員が予期せぬ退社をした場合には、当社グループの事業展開及び経営成績等業績に重大な影響を与える可能性があります。このような事態を防ぐために、今後も事業拡大に伴い、積極的に優秀な人材を採用・教育し、また、魅力的な職場環境を整備していく方針ですが、そうした人材を獲得できないときは、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

③ 小規模組織における管理体制について

 当社は、2024年3月31日現在、取締役6名(内2名が社外取締役)、監査役3名(内3名が社外監査役)、従業員数は33名と小規模組織にて運営しており、また海外子会社を含めた連結ベースでは従業員557名となりますが、グループ全体の管理も当社が行っております。内部管理体制もこの規模に応じたものになっております。当社では、今後、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充を図る予定です。しかしながら、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充が順調に進まなかった場合には、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 

(6)その他

① 為替相場の変動について

 当社グループは日本国内のほかフィリピン及びその他の国や地域において通信サービスの仕入及び販売を行っております。通信サービスの仕入及び販売に関する契約締結時と決済時の為替変動や、IRU取引に関連するリース投資資産(2024年3月末残高:5,789百万円)及び外貨建ての借入金(2024年3月末残高:6,490百万円)についての為替変動に伴う評価替えの結果、生じる為替差損益が当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。また、連結財務諸表を作成するにあたっては外貨を円換算する必要があり、換算時に使用する為替レートによっては当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

② 潜在株式について

 当社は、役職員の会社業績向上に対する意欲や士気を高めることを目的として、新株予約権を利用したストックオプション制度を導入しております。また、2019年8月には、より一層役職員に対して会社業績の向上への意識を強くさせるため、一定の営業利益に到達しないと新株予約権が交付されない信託を用いたインセンティブプランを導入しております。これらの新株予約権が行使された場合は、新株式が発行され、当社の1株当たりの株式価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。2024年3月31日現在、これらのストックオプションによる潜在株式数は581,700株であり、発行済株式総数12,867,800株の4.52%に相当しております。

 

③ 配当政策について

 当社は現在成長過程にあり、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を目指すため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立より2020年3月期まで配当は実施しておりませんでした。しかしながら、株主利益の最大化を重要な経営目標の一つとして認識しており、2020年12月25日の東京証券取引所市場第一部への上場市場変更を記念して、2021年3月期の期末配当において1株当たり10円の記念配当を実施いたしました。また当社は、株主への還元について、将来の事業展開と財務体質の強化のために必要な内部留保の確保を図りながら、達成した業績を反映した適切な配当を、継続して実施することを基本方針とすることといたしました。これにより2022年3月期の期末配当において1株当たり25円の普通配当を実施いたしました。2023年3月期の年間配当金は、1株当たり35円(中間配当17.5円、期末配当17.5円)の普通配当を実施いたしました。2024年3月期は、1株当たり17.5円の中間配当を実施し、期末配当として1株当たり19.5円の普通配当を実施いたしました。これにより今期の年間の配当金は1株当たり37円となります。

 今後の株主への利益配当につきましては、業績の推移・財務状況、今後の事業・投資計画等を総合的に勘案し、内部留保とのバランスをとりながら達成した業績を反映した適切な配当の実施を検討していく方針です。

 

④ 個人情報等の流出等について

 当社グループでは、事業の遂行にあたり、顧客の氏名・住所・電話番号等の個人情報を取り扱っております。当社グループでは、それらの情報管理やセキュリティ管理に対しては個人情報保護規程や情報管理・秘密保持に関する規程を整備し、情報の適正な取り扱いと厳格な管理を行っております。しかしながら、外部からの不正な手段によるサーバー内の侵入等の犯罪や従業員の過誤等により個人情報が漏洩する可能性はあります。そのような場合、当社グループに対する信用低下や損害賠償責任の負担等を通じて、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 自然災害等の大規模災害による被害について

 台風、地震、津波等の自然災害や火災等の事故及び情報システムの停止等により、当社グループの事業活動が停滞又は停止するような被害を受けた場合には、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 新型コロナウイルス感染症等の影響について

 新型コロナウイルス感染症等の伝染病の流行により、当社グループが事業を行う国又は地方自治体等が事業停止命令、外出禁止命令又は休業要請等を行うような場合、当社グループの事業活動が停滞又は停止する可能性があります。その場合当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 知的財産権について

 当社グループが意図せずに第三者の知的財産権を侵害した場合、権利侵害の差し止めや損害賠償、商業的に妥当ではないライセンス使用料の請求を受ける可能性があります。その結果、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 訴訟について

 当社は、新たに法的な紛争が発生しそれに対する訴訟等が提起された場合、その内容及び結果によっては、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑨ 有利子負債依存度、支払利息の増加

 当社グループは、設備投資等のための資金調達を主に金融機関からの借入金に依存しており、2024年3月末現在における連結総資産に占める有利子負債依存度は30.1%であります。今後、フィリピンでの通信事業を展開するために当社グループは設備投資を行う予定ですので、さらに有利子負債の依存度は高まる可能性があります。そのため、借入金の増加による財務体質の悪化や、借入金利の上昇により支払利息が増加した場合には、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、Open Doorという企業理念のもと、いまだ誰も突破できていない障壁のある生活に密着した分野で、誰よりも先んじて事業機会を創造し、事業を展開し、産業構造を変え、あるべき社会を実現すべく、さまざまな事業に取り組んでおります。特に、新しいIT技術を活用した通信環境の提供によりフィリピンの社会課題を解決し、SDGsに貢献しつつ、事業の拡大を図っております。

 

 当連結会計年度におきましては、欧米を中心にインフレ鎮静化のための金融の引き締めが行われるとともに、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化やパレスチナ・ガザ地区での衝突など、経済の先行きに対する不透明な状況が続いております。日本においては、為替相場での円安が長期化し、商品価格・エネルギー価格の高騰などの影響を受け物価が上昇する一方、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ分類に引き下げられ、社会経済活動の正常化が進み、インバウンド需要や設備投資の増加などにより景気は緩やかに回復しております。当社グループの主要市場の一つであるフィリピンにおいては、財政健全化を目指した結果、政府支出の伸びが低調となったものの、商品価格の高騰や米国の金融引き締めの影響を受けた高い政策金利が続く中でも、2023年のGDP成長率は5.6%とアジア諸国内で高い成長率となっております。

 新型コロナウイルス感染症の影響をきっかけに、人々の新しい生活様式、リモートワークを前提とした新しい働き方への変化など、社会の変化が急速に進んでおり、通信回線を介してのコミュニケーションの重要性がさらに増大しています。社会を支える生活基盤としての通信回線の整備・拡充は、日本・フィリピンを始め世界中において急務となっており、今後とも積極的に事業の拡大を図ってまいります。

 当社グループでは、フィリピンとシンガポール・香港を結ぶ海底ケーブル(City-to-City Cable System、以下「C2C回線」)の使用権の一部及び各国の陸上回線から成る国際通信ネットワーク(以下「国際通信ネットワーク」)を取得して、キャリアズキャリア(通信事業者のための卸売業者)としてのポジションも確立し、拡大する通信需要に応えるとともに、フィリピン国内海底ケーブルネットワーク(以下「PDSCN」)の建設が2023年12月に完成し、フィリピン国内基幹網の拡充を図ることで、さらなる事業の拡大に努めております。

 日本においては、通信トラフィック需要が増加しているコールセンター事業者向けを中心に、ソフトウェア、通信回線及びコンサルテーションを顧客毎に最適化したサービスの提供が拡大しております。

 メディカル&ヘルスケア事業においては、引き続きShinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation(以下「SLACC」)によるレーシックの安定的な提供を行うとともに、Shinagawa Healthcare Solutions Corporation(以下「SHSC」)が昨年4月に開院した日本基準の健診センター・フィリピン初の最新設備の人間ドックである「Shinagawa Diagnostic & Preventive Care Center」(以下「SDPCC」)を通じて、フィリピンにおける予防医療の普及を図っております。

 

 以上の結果、当連結会計年度における売上高は14,117百万円(前期比14.4%増)、営業利益は3,894百万円(同17.6%増)となりました。また円安の進行に伴い為替差益を730百万円計上したことにより経常利益は4,427百万円(同27.8%増)となり親会社株主に帰属する当期純利益は2,835百万円(同23.7%増)となりました

 

セグメント別の業績は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、「国際通信事業」「フィリピン通信事業」「国内通信事業」「メディカル&ヘルスケア事業」および「その他」の区分について、事業の連携がこれまで以上に高まる「国際通信事業」「フィリピン通信事業」と事業進捗管理が同じ部門である「その他」の区分を「国際通信事業」区分に統合し、「国際通信事業」「国内通信事業」および「メディカル&ヘルスケア事業」に報告セグメントを変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

 

(国際通信事業)

 当期における国際通信事業は、引き続きフィリピンの経済成長に伴い、通信回線の需要が増大していることに対応し、積極的な投資を行い、事業の拡大を図りました。フィリピン国内基幹網を整備するために、2022年7月より建設を行っていたPDSCNが2023年12月に完成し、フィリピン全土への通信サービスの提供が可能となりました。これに伴い、PDSCN自体の販売はもとよりPDSCN関連サービスなどの提供も大幅に拡大いたしました。また、営業員などを増強し販売を強化しているマニラ首都圏での法人向けインターネット接続サービスの課金件数は、2022年12月末658件だったものが、2023年12月末には1,038件と大幅に増加いたしました。さらに、当社グループが使用権を保有する国際通信ネットワークC2C回線などの販売を強化したことから、通信回線提供のストック型ビジネスも順調に拡大いたしました。

 その結果、当期の国際通信事業の売上高は8,440百万円(前期比32.3%増)、セグメント利益は2,901百万円(同55.5%増)となりました。

 

(国内通信事業)

 当期における国内通信事業は、引き続き日本国内の販売代理権を有する、インドのDrishti-soft Solutions Pvt. Ltd.(現 Exotel社)が開発したコールセンターシステム「AmeyoJ」と、大手電気通信事業者が提供している電話回線を大量に仕入れて、コールセンター事業者向けに秒単位の課金体系で販売する秒課金の電話サービスを組み合わせたコールセンター向けソリューションを主力として事業を推進いたしました。前期に計上されていた新型コロナウイルス感染症関係のトラフィックが大きく減少となり収益に大きな影響がありましたが、コールセンター向けソリューションの新規顧客開拓の強化や、2025年1月に完全実施となる電話網のIP化(PSTNマイグレーション)に対応した通信サービスの構築、システムの開発などによる収益の計上がありました。

 この結果、売上高は4,116百万円(前期比3.7%減)、セグメント利益は925百万円(同0.6%増)となりました。

 

(メディカル&ヘルスケア事業)

 当期におけるメディカル&ヘルスケア事業は、SLACCにおいて、主力であるレーシックにおいて一部競争の激化や物価の上昇によるコスト増加の影響を受けました。

 また、SHSCにおいて、画像診断など日本が得意とする技術を導入した高品質の人間ドック・健診センターSDPCCを2023年4月に開院いたしました。フィリピンにおいては、予防医療の認知が低いことから定期健診の重要性を理解していただくための啓蒙活動期間であると考えて活動しており、法人の定期健診の利用促進を行い、受診していただいた企業には非常に好評をいただいております。また、InfiniVAN, Inc.の法人営業とのシナジーがあることから、時間はかかるものの着実に認知が高まっています。

 この結果、売上高は1,561百万円(前期比7.6%減)、セグメント利益は67百万円(同87.5%減)となりました。

 

 また、財政状態は次のとおりであります。

(資産の状況)

 当連結会計年度末の流動資産は17,864百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,594百万円増加いたしました。これは主に、売掛金が2,901百万円リース投資資産2,586百万円その他が1,004百万円それぞれ増加した一方現金及び預金が2,646百万円減少したことによるものです

 

 また、有形固定資産は11,565百万円となり前連結会計年度末に比べ3,393百万円増加いたしました。これは主に機械装置及び運搬具(純額)が5,572百万円建物及び構築物(純額)が398百万円それぞれ増加した一方建設仮勘定が2,607百万円減少したことによるものです無形固定資産は2,865百万円となり前連結会計年度末に比べ1,104百万円増加いたしましたこれは主に通信回線使用権が968百万円増加したことによるものですこの結果資産合計は33,529百万円となり前連結会計年度末に比べ8,400百万円増加いたしました

 

(負債の状況)

 当連結会計年度末の流動負債は12,532百万円となり、前連結会計年度末に比べ281百万円増加いたしました。これは主に、繰延延払利益が1,885百万円一年以内返済予定の長期借入金が1,424百万円それぞれ増加した一方短期借入金が3,006百万円それぞれ減少したことによるものです

 

 また、固定負債は5,814百万円となり前連結会計年度末に比べ4,799百万円増加いたしましたこれは主に長期借入金が4,753百万円増加したことによるものです

 この結果負債合計は18,346百万円となり前連結会計年度に比べ5,081百万円増加いたしました。

 

(純資産の状況)

 当連結会計年度末の純資産は15,183百万円となり前連結会計年度末に比べ3,319百万円増加いたしましたこれは主に非支配株主持分1,371百万円の増加親会社株主に帰属する当期純利益2,835百万円の計上配当金の支払額435百万円の減少によるものであります

 この結果、自己資本比率は33.7%(前連結会計年度末は37.2%)となりました

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,646百万円減少し、当連結会計年度における残高は4,234百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動において使用した資金は574百万円(前年同期は2,636百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が4,425百万円あった一方、売上債権の増加2,746百万円、法人税等の支払い1,293百万円、仕入債務の減少1,202百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動において使用した資金は4,735百万円(前年同期は5,506百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出3,327百万円、無形固定資産の取得による支出1,297百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動において獲得した資金は2,315百万円(前年同期は3,578百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の純増減額が3,139百万円、非支配株主からの払込みによる収入が277百万円あった一方、長期借入金の返済による支出769百万円、配当金の支払額435百万円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

 当社の国内通信事業及び国際通信事業においては、提供するサービスの性質上、有形の物品ではなく無形の資産(通信回線の使用権)に対しての支払が原価の大部分を占めておりますため、これらを仕入と見做します。

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

国際通信事業

3,010

106.5

国内通信事業

2,601

95.6

メディカル&ヘルスケア事業

967

150.5

合計

6,580

106.3

(注)1.セグメント間取引は相殺消去しております。

2.金額は、仕入価格によっております。

 

c.受注実績

 当社グループは受注生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

国際通信事業

8,440

132.3

国内通信事業

4,116

96.3

メディカル&ヘルスケア事業

1,561

92.4

合計

14,117

114.4

(注)1.セグメント間取引は相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

Sky Cable Corporation

1,401

11.3

1,996

14.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 

1)財政状態及び経営成績の分析

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度末のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概況 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 当社グループは、国際海底ケーブルを利用する通信トラフィックをフィリピン各地で獲得するために、フィリピン国内の通信回線網の強化のための投資が必要となり、前期よりフィリピン国内海底ケーブルネットワーク(PDSCN)の共同建設などを行いました。当社グループによる回線構築にあたっては、他の事業者と共用できるように事前に他の事業者と調整する等、当社グループの負担額を抑えることに努めておりますが、PDSCNが完成したものの、引き続き通信回線網の強化のための投資が必要となります。投資に振り向ける資金の調達は、営業キャッシュ・フロー、銀行からの長期借入金を充てることを想定しております。手許資金については、今後少なくなることが見込まれますが、銀行からの当座貸越枠の設定・拡大等を通じて対応していく計画です。

 フィリピン国内の通信回線網への投資が落ち着き、収益が安定したときは、手許資金を積極的に株主に還元していくことを予定しております。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 当社グループは、過去の実績や取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産、負債の帳簿価額及び収益、費用の全般に反映して連結財務諸表を作成しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。なお、本項に記載した予想、見込み、見通し、方針等の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来に関する事項には、不確実性があるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

③ 経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループが今後も持続的に成長していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の様々な課題に対応していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するために、経営者は常に外部環境の構造や変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を確認し、その間の課題を認識すると同時に最適な解決策を実施していく方針であります。

 

(3)資金調達と資金の流動性についての分析

 当社グループの資金調達は、金融機関からの借入による間接調達及び資本市場からの調達による直接調達で構成されております。

 長期運転資金及び設備投資資金につきましては、営業活動により得られたキャッシュ・フロー、金融機関からの長期借入やリースによる間接調達及び株式発行による直接調達を基本としております。

 短期資金需要につきましては、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び当座貸越契約の融資枠の利用を含めた金融機関からの短期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は10,102百万円、現金及び現金同等物の残高は4,234百万円となりました。

5【経営上の重要な契約等】

(1)国内通信事業

契約会社名

相手先の名称

相手先の

所在地

(国名)

契約締結日

契約期間

契約内容

株式会社テレグローブ・ジャパン(後に株式会社アドベントへ社名変更した上で当社が営業譲受。会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

東日本電信電話株式会社

東京都新宿区

1999年7月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アドベント(後に当社が営業譲受。会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

西日本電信電話株式会社

大阪府大阪市

2003年3月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

株式会社NTTドコモ

東京都千代田区

2008年11月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

KDDI株式会社及び沖縄セルラー電話株式会社

東京都新宿区及び沖縄県那覇市

2009年3月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社

東京都千代田区

2011年4月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

ソフトバンクモバイル株式会社(後にソフトバンク株式会社へ社名変更。)

東京都港区

2013年6月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

楽天モバイル株式会社

東京都世田谷区

2019年7月

定めなし

音声通信回線の相互接続

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社

東京都千代田区

2015年3月

定めなし

IP電話網サービス及び電話等サービスに係る提供

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

KDDI株式会社

東京都新宿区

2011年12月

定めなし

卸売通信役務の提供

株式会社アイ・ピー・エス(会社分割により株式会社アイ・ピー・エス・プロが承継。)

Drishti-Soft Solutions Private Limited

インド

2013年3月

定めなし

コールセンターシステム「AmeyoJ」のライセンス提供

 

 

 

 

 

 

(2)国際通信事業

契約会社名

相手先の名称

相手先国名

契約締結日

契約期間

契約内容

株式会社アイ・ピー・エス

Telekom Malaysia Berhad

マレーシア

2011年11月

2011年

11月30日から

2026年

11月29日まで

国際通信回線(10Gbps)の使用権に関する合意

株式会社アイ・ピー・エス

Telstra Corporation Limited

(締結時)Pacnet Services Asia Pacific Commercial Limited(香港)

豪州

2013年9月

2013年

9月2日から

2028年

9月1日まで

国際通信回線(10Gbps)の使用権の合意

株式会社アイ・ピー・エス

Sky Cable Corporation

フィリピン

2014年10月

2014年

11月10日から

2028年

11月9日まで

国際通信回線(2.5Gbps)の使用権に関する合意

株式会社アイ・ピー・エス

Philippine Telegraph & Telephone Corporation

フィリピン

2012年1月

通知後180日を経過したときに終了する

Cooperation

Agreement

相互接続、提携の合意

株式会社アイ・ピー・エス

Philippine Telegraph & Telephone Corporation

フィリピン

2016年

2月18日

2021年

2月18日から

2026年

2月17日まで(原契約を5年間更新)

Facility

Management

Agreement

フィリピンにある当社通信設備の運用・保守の合意

株式会社アイ・ピー・エス

INNOVE COMMUNICATIONS, INC.

フィリピン

2018年9月

2018年9月30日から

回線開通日から15年を経過したとき

当社が、開通後10年を期間とするIRU回線と開通後15年を期間とするIRU回線を取得する合意

株式会社アイ・ピー・エス

InfiniVAN,Inc.

フィリピン

2018年1月

2018年

1月30日から

2033年

1月29日まで

相互接続、当社が設置した機器の運用、通信サービスを共同して営業を行うことの合意

株式会社アイ・ピー・エス

Telstra International Limited

香港

2020年5月

対象となるダークファイバーの検収後、15年を経過した日

Telstra社による破棄しえない使用権の設定

株式会社アイ・ピー・エス

Sky Cable Corporation

フィリピン

2020年5月

対象となる通信設備の検収後、15年を経過した日

当社による破棄しえない使用権の設定

InfiniVAN, Inc.

Innove Communications, Inc.

フィリピン

2020年5月

対象となるダークファイバーの検収後、15年を経過した日

Innove社による破棄しえない使用権の設定

株式会社アイ・ピー・エス

Innove Communications, Inc.

フィリピン

2020年11月

対象となる通信設備の検収後、15年を経過した日

当社による破棄しえない使用権の設定

株式会社アイ・ピー・エス

GlobeTel Singapore Pte. Ltd.

シンガポール

2020年12月

対象となる通信設備の検収後、15年を経過した日

当社による破棄しえない使用権の設定

ISMO Pte. Ltd.

Telstra Singapore Pte. Ltd.

シンガポール

2021年11月

14年間

Telstra Singapore社による破棄しえない使用権の設定

ISMO Pte. Ltd.

Globe Telecom, Inc.

フィリピン

2021年12月

14年間

ISMO Pte. Ltd.による破棄しえない使用権の設定

InfiniVAN, Inc.

Kokusai Cable Ship Co., Ltd.

Philippines Branch

フィリピン

2021年12月

2022年6月~2023年1月

InfiniVAN, Inc.によるフィリピン国内海底ケーブル・ネットワーク・システムの建設

InfiniVAN, Inc.

NTT World Engineering Marine Corporation Manila Branch

フィリピン

2022年11月

2022年11月~2023年4月

InfiniVAN, Inc.によるフィリピン国内海底ケーブル・ネットワーク・システムの建設

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。