第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 当社グループを取り巻く経営環境

 当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの影響縮小に伴う需要回復、観光・インバウンドの活況等により、足元の鉄道のご利用等は想定を上回るペースで回復しています。一方、自然災害の激甚化、コロナ禍を契機とした行動変容に加え、人口減少に伴う市場の縮小や人財獲得競争の激化、賃金・物価・金利の上昇、顧客ニーズの多様化、生成AI等の革新的技術の急速な進化等、これからの変化を想像することが難しい状況になってきています。

 

(2) 経営の基本方針

 当社グループは、「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という確固たる決意のもと、被害に遭われた方々への真摯な対応、安全性向上に取り組んでいきます。

 2023年4月には、未来社会におけるJR西日本グループの存在意義を見つめなおし、めざす姿として「私たちの志」を策定しました。この「私たちの志」をグループ全体の羅針盤として、グループ一丸となって取り組んでいます。

 

私たちの志

人、まち、社会のつながりを進化させ、

心を動かす。未来を動かす。

私たちは、

これからも安全、安心を追求し、高め続けます。

人と人、人とまち、人と社会を、リアルとデジタルの場でつなぎ、

西日本を起点に地域の課題を解決します。

そして、持続可能で活力ある未来を創り、その先の一人ひとりが思い描く暮らしを

様々なパートナーと共に実現していきます。

 

 これまで、鉄道や駅を中心に人と人、人とまちをつなぎ、安全で豊かな社会づくりに貢献できるよう努力を積み重ねてきましたが、インフラを担う企業として、未来においても社会づくりに貢献する役割を果たし続けていくため、大きな転換期を迎えているこれからの社会の課題と向き合い、求められる価値を、事業活動を通じて提供していきます。

 とりわけ、一人ひとりの暮らし、まち、社会全体が直面する課題に着目したとき、安全を基盤に広域で人と人、まち、社会をつなぐインフラサービスを提供し、またグループ全体で多くのお客様との接点、地域とのつながりを持つ当社グループは、これまで以上にお客様視点で「つながりを進化させる」ことで、大きな役割を果たしていくことができ、それこそが、未来の社会における私たちの存在意義と考えます。

 引き続き、鉄道の安全性向上に向けた不断の取り組みを積み重ねていくことを基盤としつつ、様々なパートナーとの共創とイノベーションにより、「地域共生企業」として事業を通じて社会や地域の課題解決に貢献することで、社会的価値と経済的価値を合わせて創出し、よりよい未来を創り上げていきます。

 

(3) 中長期的経営戦略

 当社グループは2023年4月に、「私たちの志」の実現に向け、10年後にありたい姿として「長期ビジョン2032」(以下、「長期ビジョン」)を策定しました。重点的に向き合う社会課題を、「安全、安心で、人と地球にやさしい交通」、「人々が行きかう、いきいきとしたまち」、「一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし」及び「持続可能な社会」の4つに設定しました。

 

 <安全、安心で、人と地球にやさしい交通>

  交通全体がシームレスなサービスとして認識され、定着している未来

 <人々が行きかう、いきいきとしたまち>

  地域の魅力が高まり、定住・交流・関係人口が増加していく未来

 <一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし>

  リアルの良さとデジタルの組み合わせで、個客体験が大きく高まる未来

 <持続可能な社会>

  様々なパートナーとの連携を通じて、持続可能な社会システムが構築されている未来

 

 この「長期ビジョン」の実現に向け、鉄道の安全性向上に向けた不断の努力に加え、鉄道を中心としたモビリティサービス分野の活性化、ライフデザイン分野の拡大に挑戦し、最適な事業ポートフォリオを構築することで、将来にわたって持続的に価値創造を実現する企業グループに成長していきます。具体的には、北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業やなにわ筋線開業、大阪・広島・三ノ宮エリアでの駅ビル開発等のプロジェクトや、大阪・関西万博等の機会を活用し、関西都市圏ブランドの確立や西日本各エリアのさらなる活性化に貢献していきます。

 「JR西日本グループ中期経営計画2025」(以下、「中期経営計画2025」)では、「長期ビジョン」実現に向けた第一ステップとの位置づけのもと、早期のコロナ前水準への回復に向けて、足元の機会を最大限活かした成長を加速するため、5つの重点戦略を掲げました。

 

①鉄道の安全性向上

②主要事業の活性化と構造改革(鉄道事業・グループ事業)

③不動産・まちづくりのさらなる展開

④デジタル戦略による多様なサービスの展開

⑤新たな事業の創出

 

①鉄道の安全性向上

〇福知山線列車事故を原点とし、安全を追求し続け、弛まぬ努力を継続

・被害に遭われた方々への真摯な対応

・「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2027」(以下、「安全考動計画2027」)の推進

<ホーム安全>

・ホーム柵やホーム安全スクリーンの整備を推進

<踏切安全>

・大型車が踏切に停滞していることを列車の運転士に音声で知らせる装置の整備を推進

<地震対策>

・地震発生時の安全性向上に向けて、耐震補強や逸脱防止対策を推進

<安全最優先の風土の醸成>

・「現場の判断を最優先するマネジメント」の確立

・「お客様を想い、ご期待にお応えする」考動

<組織全体で安全を確保する仕組みの充実>

・リスクアセスメントの質の向上

・「心理的に安全なチーム」づくり

・現場起点の考動による課題解決への挑戦

<一人ひとりの安全考動の実践>

・「大切にしたい5つの価値観」の共有、主体的な実践

<ハード・ソフトの機能向上>

・ハード・ソフト両面の改良・改善による安全性向上

・安全で安定的な輸送の提供(輸送の質の向上)

<社会とつながり、社外から学ぶ>

・関係機関との自然災害等の事象発生時の対応に関する対話

・他鉄道事業者等から安全対策を学び、採り入れる取り組みの推進

 

②主要事業の活性化と構造改革(鉄道事業・グループ事業)

ア.鉄道事業

〇「お客様を想い、ご期待にお応えする」ことを強く意識し、CSを戦略の根幹とした顧客起点の経営を実現

〇新幹線を基軸とした鉄道ネットワークの充実と、交流人口・関係人口の創出に挑戦

・山陽新幹線各エリア:利便性の向上によるご利用促進等

・北陸エリア:北陸新幹線金沢・敦賀間開業、北陸デスティネーションキャンペーン(2024年秋)を契機とした、観光素材の磨き上げと周遊ルートの整備等

・山陰エリア/南紀エリア:新型車両投入による旅の魅力向上等

・デジタルの活用

・多様化するニーズに対応した営業施策

〇関西国際空港とのアクセス向上と、2025年の大阪・関西万博を契機とした取り組みを通じて、国内外の様々なお客様が行き交う魅力的な関西都市圏を実現

・近畿エリア全体の魅力向上

・関西国際空港とのアクセス整備

・大阪・関西万博を契機とした取り組み(会場アクセス整備・駅改良の推進等)

・インバウンド受け入れ体制整備

 

 

〇技術戦略に基づき日々の業務プロセスを変革し、鉄道事業の活性化を支える生産性向上と持続可能なシステム構築、価値創造を実現

・お客様サービスの変革

・運行オペレーションの変革

・保守メンテナンス手法の変革

イ.物販・飲食事業

〇お客様のデイリーニーズへのきめ細やかな対応力を磨き上げて、一人ひとりにやさしく便利で豊かな暮らしを実現

・外部提携による競争力向上

・既存店舗の磨き上げ

・ヴィアインのブランド再構築

ウ.ホテル事業

〇旅の魅力や人々のつながりを創り、最高の笑顔とチームワークでおもてなしを提供し、まちの価値向上に貢献

・「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」の新規開業

・既存ブランド価値の再構築

・「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」の新規開業

エ.ショッピングセンター事業

〇強みであるリアルを軸に、デジタルでもお客様とテナントをつなぎ、「地域一番のエリアプラットフォーマー」を実現

・変化する消費に応えるリアルコンテンツの充実

・リアル・デジタルによるお客様接点の拡大・強化

・地域特性を捉えた館づくり

 

③不動産・まちづくりのさらなる展開

〇地域の皆様と連携して安心して暮らし・過ごせるコミュニティを形成し、地域・社会の課題解決に貢献

・駅からはじまるまちづくりの推進

・展開領域のさらなる拡大

・マネジメント分野の強化と資産効率向上

〇拠点駅の大規模開発と周辺まちづくりの促進、エリアマネジメントの推進により、人々が訪れたくなる、いきいきとしたまちを創出

・拠点駅開発(大阪、広島、三ノ宮)

・まちなかの体験価値向上

 

④デジタル戦略による多様なサービスの展開

〇データやデジタル技術を駆使し、お客様一人ひとりとグループの多様なサービスをつなぐことで心を動かし、いつまでも住み続けたい・また来たいと感じる「WESTER体験」を提供

・「WESTER体験」における3つの進化を推進(お客様とのつながりの進化、「たまりやすい、つかいたい」ポイントへの進化、グループマーケティング力の進化)

 

⑤新たな事業の創出

〇西日本を舞台に「つながり」を生み出し、新決済とポイント、データが「つなぐ」未来型のまちづくりに挑戦

・「WESTER体験」を支える新たな決済サービスの導入

・「よこてん」(内部向けに開発したデータソリューションの他鉄道会社等への横展開)で広がるデータソリューション事業

〇地域・社会とともに持続可能性を高める事業を進めることで、人、まち、社会の未来を動かす

・持続可能な暮らしを実現する「総合インフラマネジメント事業」

・地域課題ソリューションビジネスの推進

・未来を動かすビジネスチャレンジ

 

 また、サステナビリティ経営の実現に向けて、地域共生、地球環境、人的資本経営、ガバナンス・リスクマネジメント・人権に重点的に取り組みます。

 

①地域共生

〇ウェルビーイングな暮らしの実現、地域の課題解決と持続可能で豊かな地域づくりに貢献

・持続可能で豊かな地域づくりの推進

・ご利用しやすい持続可能な交通体系を地域とともに推進

 

②地球環境

〇社会インフラを担う企業グループとして、地球環境保護の取り組みを通じて社会全体の持続可能性を向上

・地球温暖化防止・気候変動対策

・循環型社会構築への貢献

・自然との共生

 

③人的資本経営

〇自ら変革し成長する人財こそが「長期ビジョン」実現の原動力と認識し、成長を支援し、多様性と働きがいを高め、変化対応・創出力のある人財を創出

・人財育成

・ダイバーシティ&インクルージョン

・ワークエンゲージメント

 

④ガバナンス・リスクマネジメント・人権

〇「長期ビジョン」実現に向けて、適切なリスクテイクによる企業価値向上を図るガバナンスを一層充実

・コーポレート・ガバナンスのさらなる強化

・リスクマネジメントの充実

・企業倫理・人権尊重の取り組み

 

(4) 対処すべき課題

 「中期経営計画2025」の初年度である2023年度は、機会を捉えた需要獲得策や事業構造改革等が実を結び、計画を超える業績回復を実現できた一方、鉄道事業等の持続的運営を脅かす労働力不足の顕在化、ライフデザイン分野等の新たな価値創造を牽引する人財確保に向けた競争激化、インフレ社会の到来等、急速な経営環境の変化に直面しました。これらの変化は中長期的に経営へ影響を与え続ける構造的なものと認識しています。

 以上の急速かつ構造的な経営環境変化に対して、「中期経営計画2025」に掲げた重点戦略に基づく施策の具体化に加え、将来に向けて持続的に価値を創出し続けるために、鉄道事業の安全性向上・持続的進化、グループ一体となった価値創造、及びそれらを実現するための原動力となる変化対応・創出力の向上等、先手を打った対応を図っていくことが重要な経営課題です。

 これらの経営課題に対応するため、2024年4月に「中期経営計画2025」のアップデートを行いました。アップデートを行った「中期経営計画2025」を基に、鉄道事業の安全性向上を基盤としながら、様々なパートナーとの共創とイノベーションにより、鉄道事業を中心としたモビリティサービス分野の活性化と構造改革を図るとともに、ライフデザイン分野における新たな事業の創出等の事業活動を通じ、「私たちの志」、「長期ビジョン」の実現を加速し、社会的価値と経済的価値を創出していきます。

 

 なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものであります。

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、本項目に記載しているほか、「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」に記載のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 当社グループは、広域でインフラサービスをはじめとした様々な事業を提供しており、多くのお客様や地域の方々とのつながりを持っております。未来社会を見据えた当社グループの存在意義である「私たちの志」のもと、こうしたつながりを進化させ、事業活動を通じて社会的価値と経済的価値を創出することで、持続可能な社会づくりと企業グループの持続的な発展につなげ、SDGsの達成にも貢献していきます。

 当社グループは、サステナビリティに係るリスクや機会、取り組み等を審議するための体制として、「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は、代表取締役社長を委員長として、本社部門を所管する業務執行取締役や、サステナビリティの取り組み推進及び情報開示を所管する関係部門の長等で構成し、原則年2回開催しております。その審議内容は取締役会に付議・報告を行っており、社外取締役を含む取締役会において議論を重ねることにより、取り組みの透明性を高めております。さらに、同委員会は「私たちの志」の実践と「長期ビジョン」の実現についての取り組みの状況や課題について、社外からの評価や目標への到達度等も踏まえて俯瞰的に総合評価し、具体的なPDCAを推進する主体部署等に必要なフィードバックを行うこととしております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

 当社グループは、社会課題のうち社会的価値(社会への影響度)と経済的価値(当社への影響度)が共に高い課題を抽出し、重点的に向き合う4つの課題設定(=長期ビジョン)と、その実現を支える「地球環境」、「価値創造の源泉であるひとづくり」の課題とあわせて、6つのマテリアリティを設定しました。

 そのうち、「地球環境」に係る「気候変動」、「価値創造の源泉であるひとづくり」に係る「人的資本」については、次に記載のとおりであります。

 なお、サステナビリティ全般に係る取り組みの詳細は、「JR西日本グループ統合レポート2023」(以下、「JR西日本グループ統合レポート」)及び当社ホームページ等で開示しております。
 ・「JR西日本グループ統合レポート」
  (参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/csr_report/)
 ・当社ホームページ(サステナビリティ)
  (参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/)

 

(3)気候変動

 当社グループは、地球環境保護を重要な経営課題と認識しており、「地球温暖化防止・気候変動対策」、「循環型社会構築への貢献」、「自然との共生(生物多様性、水資源の保護等)」の3つを取り組みの柱とする「JR西日本グループ環境基本方針」を定め、長期的な観点で検討を深め、取り組みを進めております。

参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/env/

 なかでも気候変動については、当社グループが事業全体として、多くのCO2を排出しているという事実認識を踏まえ、気候変動への対応を将来にわたっての事業継続のための重要な経営課題であると認識し、気候変動から生じる、さまざまなリスクと機会の把握に努めております。

 また当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、気候変動のリスクと機会並びにその分析について、適切な情報開示を進めていきます。

 なお、気候変動に関するリスクと機会並びにその分析については、当社グループの事業のうち、主要な事業部門を構成する、鉄道、物販・飲食、ホテル、ショッピングセンター及び不動産の各事業を対象としております。

 

①ガバナンス

 当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、長期にわたり持続的に発展していくため、地球環境保全の取り組みを推進しております。その推進体制として、代表取締役社長を委員長とし、本社部門を所管する業務執行取締役や主な部門長で構成する「地球環境委員会」を設置し、原則年2回以上、地球環境保護のグループとしての基本方針や環境に係る中長期の計画及び目標設定についての審議のほか、計画や目標に向けた具体的な取り組みの進捗状況の監視をしております。

 なお、地球環境委員会の審議事項は、必要に応じてサステナビリティ委員会やグループ経営会議、取締役会に付議・報告しております。

<地球環境委員会の構成員及び体制図>

 委員長:代表取締役社長

 副委員長:代表取締役副社長

 委 員:本社部門の執行役員を兼ねる取締役、経営計画、設備投資、財務、ガバナンス、

    サステナビリティ、地球環境、BCP、情報開示を所管する部門の長及び各カンパニー長

 

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※取締役会に付議した案件の例:環境長期目標の策定、気候変動関連のリスクと機会の分析、TCFD提言に基づく情報開示の内容等

 

②戦略

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオに照らした気候変動の影響や社会経済シナリオに基づき、気候変動に関連する事業へのリスクと機会を分析しました。

 我が国におけるカーボンプライシング導入による費用負担の増加、また台風・洪水の発生頻度増加による被害の増加といったリスクを認識しております。一方、鉄道の環境優位性が評価され、MaaS普及等による利便性向上も通じてご利用増加の機会を得ることも分かりました。

 具体的な分析内容は「JR西日本グループ統合レポート」60~62ページに記載のとおりであります。(分析は社会が気候変動に積極的な緩和策を実施し気温上昇が抑制されるケースを1.5℃シナリオ(RCP※1.9)及び2℃シナリオ(RCP2.6)として、一方、緩和策が不十分で気温上昇が抑制されないケースを4℃シナリオ(RCP8.5)として行いました。なお、定性的な分析内容は社会が気候変動に積極的な対応を実施する1.5℃シナリオ(RCP1.9)・2℃シナリオ(RCP2.6)に基づいております。)

※RCP(Representative Concentration Pathways)…代表濃度経路シナリオ

(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/csr_report/2023/pdf/report2023_18.pdf)

 当社グループは、環境長期目標「JR西日本グループ ゼロカーボン2050」を策定し、その目標として、グループ全体のCO2排出量(スコープ1及びスコープ2排出量(連結))を2050年に「実質ゼロ」、その達成に向けた中間目標として、2025年度に35%削減、2030年度に50%削減(いずれも2013年度比)することを掲げております。また、サプライチェーン上の排出量となるスコープ3排出量についても、より正確な把握と削減の取り組みを推進していきます。

 目標達成に向け、「長期ビジョン」及び「中期経営計画2025」における地球環境保護の取り組みとして、省エネルギー型鉄道車両の導入等による省エネルギーのさらなる推進、再生可能エネルギー由来電力の導入や次世代バイオディーゼル燃料の実装等再生可能エネルギーの活用の推進に取り組みます。併せて、MaaS等を通じた鉄道・公共交通の利便性向上や都市圏・都市間輸送における鉄道の環境優位性の訴求強化を通じて旅客輸送のモーダルシフトを推進するなど、地域・社会と連携し、社会全体の脱炭素化に取り組んでいきます。

(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/env/warming/)

 今後、当社グループは、認識したリスクと機会に対して適切な対処を講じることで、社会インフラを担う企業グループとして長期持続的な企業価値向上を図りつつ、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

③リスク管理

 当社グループでは、気候変動によるリスクと機会並びにその対処について、経営環境の変化や公的機関による各種将来予測の公表、更新といった情報をもとに分析内容の更新を行います。そして、分析内容や、環境長期目標の達成に向けた取り組みの進捗状況を定期的に地球環境委員会で審議・監視しております。

 また、地球環境委員会に付議された内容は必要に応じて、サステナビリティ委員会やグループ経営会議、取締役会にも付議・報告し、経営マネジメントにおいて、気候変動に関するリスク等を重要な経営課題として共有し、管理しております。

 

④指標及び目標

 当社グループは、環境長期目標「JR西日本グループ ゼロカーボン2050」を策定し、その目標として、グループ全体のCO2排出量を2050年に「実質ゼロ」、その達成に向けた中間目標として、2025年度に35%削減、2030年度に50%削減(いずれも2013年度比)とすることを掲げております。

 なお、この目標はパリ協定においてめざす、産業革命期からの気温上昇1.5℃未満や同2℃未満の目標達成並びに我が国が掲げるCO2排出削減目標の達成にもつながる水準の目標であると認識しております。

 指標とするCO2排出量の直近集計年度(2023年3月期)の実績については、「JR西日本グループ統合レポート」91~92ページに記載しております。

参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/csr_report/2023/pdf/report2023_26.pdf

 なお、2024年3月期の実績については、2024年度に発行するグループ統合レポート等により別途公表いたします。

 当社グループは、CO2排出削減の取り組みを推進し、環境長期目標「JR西日本グループ ゼロカーボン2050」の達成に向けた取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

(4)人的資本

 「私たちの志」の実現に向けて、当社グループは「長期ビジョン」及び「中期経営計画2025」を策定し、鉄道をはじめとする「モビリティサービス分野」のブラッシュアップに加えて、「ライフデザイン分野」を中心に幅広い事業にチャレンジしていく方針を掲げています。このチャレンジの主体は当社グループの「人財(注1)」であり、「中期経営計画2025」と連動した人財戦略の策定・実行を通じて従来の既存分野・既存スキルを中心とした同質性の高い人財ポートフォリオから、多様性のある人財ポートフォリオへの転換を図ります。

 当社グループでは、能力や経験、イノベーションの意欲等を備えた新たな価値創出に挑戦する人財を「変革人財」と定義し、「変革人財」の蓄積こそが当社グループにおける人的資本の充実であると考えています。

 人的資本の充実に向けて、多様性と働きがいを高める環境を整備し、社員が主体的に学び、挑戦できる機会を豊富に提供することで、「変革人財」の育成と蓄積を推進します。

 これらを通じて、グループ全体で変化対応力と変化創出力を備えた多様な人財によりポートフォリオの転換を実現し、当社グループの持続的成長と安定した利益の生み出しに貢献することで、「私たちの志」や「長期ビジョン」の実現につなげていきます。

 

①ガバナンス

 人的資本に係る戦略については、経営戦略本部人財戦略部長のもと人財戦略部が所管し、必要の都度、人財戦略やその進捗状況を取締役会へ付議・報告しております。

 特に「変革人財」については、各部門の人財育成責任者と人財戦略部で「人財育成ミーティング」を開催し、その育成状況を定期的にモニタリングしております。

 また、「変革人財」のうち「経営人財」については、人事等の公正性及び信頼性を確保することを目的に、代表取締役及び人財戦略部長を委員とする総合人事委員会を設け、人財の育成や適正な処遇を実現できるよう検討、審議しています。

 

②戦略

 当社グループの人財戦略は、モビリティサービス分野を中心とした既存分野における事業の質を確保していく一方、ライフデザイン分野の拡大をめざした取り組みを推進することで、同質性の高い人財で構成されるポートフォリオから、多様性のある人財で構成されるポートフォリオへの転換を図り、持続的に価値創造していく企業グループへの成長に貢献していきます。

 人財ポートフォリオの転換に向けては、「人財育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」及び「ワークエンゲージメント」を3本柱として掲げ、実現に向けた取り組みを推進していきます。

 なお、「変革人財」は①グループ全体の価値創出を担う「経営人財」、②各部門の価値創出を担う「系統人財」、③地域における価値創出を担う「地域人財」の3つの類型に分類し、責任あるポストでの業務経験や他部門と連携した価値創出の経験を通じて、育成を進めていきます。

 

ア.人財育成

 当社グループでは、社員が有する多様なスキルや経験がイノベーションの創出や変化対応力の向上につながると考えています。社員一人ひとりが積極的かつ自律的にキャリア開発に取り組むことができる制度の導入・環境整備をすることで、多様なスキルや経験を有する人財を多く生み出し、個の力と組織の力を最大化していきます。

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イ.ダイバーシティ&インクルージョン

 国籍、年齢、障がいの有無、性別や性指向、価値観、育児や介護、社内外での経験等を社員一人ひとりが有する大切な“個性”と捉え、多様な“個性”を認め合うことにより、新たな価値創出につなげます。

 また、今後も女性活躍推進を重要課題に位置付け、女性社員が自身の描くキャリアを実現できるよう、「成長支援」、「環境整備」、「キャリア開発」の観点で取り組みを推進していきます。

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ウ.ワークエンゲージメント

 人財は「心をもつ資本」であり、社員一人ひとりのパフォーマンスは会社やチームとの関係性によって大きく変化します。社員と会社が共通の価値観として「私たちの志」を共有し、理想とするキャリアにつながる実感を仕事を通じて得ることで、いきいきと働くことができる組織風土や文化の醸成、定着を推進しています。これにより、社員一人ひとりが高いワークエンゲージメントのもと、仕事を通じた成長を目指し、実感できるよう取り組みを推進していきます。

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③リスク管理

 「3[事業等のリスク](4)人財の確保」に記載しています。

 

④指標及び目標

 「長期ビジョン」及び「中期経営計画2025」と連動した人財戦略を推進するため、戦略の3本柱である「人財育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」及び「ワークエンゲージメント」の取り組みごとに、グループ及び単体の2027年度KPIを設定しています。

 

ア.指標

(ア)人財育成

 

指標

2023

目標

2023

実績

2025

目標

2027

目標

単体

KPI

全社員

キャリア形成を支援する各種制度の利用者数

1,726名

3,099名

2,322名

2,880名

次世代

経営人財

準備率(注5)

220%

211%

330%

400%

そのうち、「移動に連動しない事業」に係るスキル保有者の割合

18%

30%

28%

40%

管理職

登用候補

複数の専門性獲得者の割合

30%

48%

30%

30%

次世代

地域人財

地域人財数

地域人財準備人数

10名

20名

30名

60名

次世代

系統人財

系統人財数

系統人財準備人数

10名

20名

30名

60名

グループ

KPI

プロパー役員比率(注6)

20

26

30%

 

(イ)ダイバーシティ&インクルージョン

 

指標

2023

目標

2023

実績

2025

目標

2027

目標

単体

KPI

リーダーに占める女性の割合

6.1%

6.7%

8.0%

10%

管理職に占める女性の割合

3.3%

3.3%

5.5%

10%

障がい者雇用率

2.95%

2.94%

(+40.2カウント)

2.8%

(+67カウント)

グループ

KPI

女性プロパー管理職比率(注7)

5.3

8.1

10%

参考

(単体)

リーダー候補育成数(累計)

200名

管理職候補育成数(累計)

110名

 

(ウ)ワークエンゲージメント

 

指標

2023

目標

2023

実績

2025

目標

2027

目標

単体

KPI

いきいき職場率(注8)

 

68%

60%

77%

88%

グループ

KPI

社員意識アンケートに関する指標(注9)

①やりがい

6.2点

6.6点

7.0点

②誇り

5.7点

6.3点

7.0点

③志

4.3点

5.7点

7.0点

 

イ.KPI等の体系

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(注)1 当社グループではグループ社員を重要な経営資源と考え、「人財」と表現しております。

2 全社員を対象に新規事業やプロジェクトを担う人財を募集する制度。

3 当社グループの全社員を対象に、新規事業及び既存事業でのイノベーションの創出をめざすビジネスアイディア公募制度。

4 職場や社員個人による健康活動を支援する5ヶ年の行動目標。

5 重要ポストを担うことができる候補者の準備率。

6 物販・飲食カンパニー、ホテルカンパニー、SCカンパニー、不動産カンパニーを構成するグループ会社を対象範囲としています。

7 当社及びグループ会社を対象範囲としています。

8 全職場数に占める、低ストレスかつ高ワークエンゲージメント職場数の割合。

9 グループ会社を対象範囲としています。

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループでは、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」のもと、新たな価値創造へ積極的に挑戦していく観点から、「全社的リスクマネジメント体制」を構築し、当社グループにおける経営上の重要リスクとその管理状況をモニタリングしております。具体的には、当社内(コーポレート)の各部門及びグループ各社(カンパニー・その他グループ会社)が抽出・選定したリスクのうち、経営上対処すべき重要リスクについて、代表取締役社長を委員長とする「グループリスクマネジメント委員会」において集約・一覧化し、モニタリングしていく取り組みを行っております。

 特に経営環境に関する重要リスクの抽出・選定にあたっては、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」に関するPDCAサイクルの一環として、未来の社会像に関する洞察を行い、バックキャストの視点から採るべき戦略の方向性の確認・検証を行っております。

 また、同委員会を通じて確認したリスク管理状況や議論等を踏まえ、必要な改善措置に繋げるための総括として、「リスクマネジメントレビュー」を発信し、次年度のリスク管理の取り組みに反映するとともに、委員会の議論状況を取締役会へ報告することとしております。

 

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 なお、鉄道安全、気候変動、人権等のリスクは、専門的な個別の委員会等を設置し、より具体的かつ実効性向上を目的とした議論をしております。

 これらの委員会等での議論のもと、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」の実現に大きな影響を及ぼすリスクを以下に記載します。

 なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 安全の確保

 鉄道事業においては、事故が発生した場合、お客様の生命・財産に大きな被害をもたらすことがあり、これに伴うお客様への補償及び事故後の事業中断等により経営に対しても甚大な影響を及ぼすことがあります。鉄道を基幹事業とする当社グループにおいては、安全で安心され信頼される質の高い輸送サービスを提供していくことが最重要課題であると考えております。

 当社グループは、「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という確固たる決意のもと、福知山線列車事故の教訓である「安全の実現に欠かせない視点」に照らしてこれまでの取り組みについて確認した上で、「安全考動計画2027」を2023年3月に策定し、より一層の安全性向上をめざし、重大な事故や労働災害の未然防止に向けて取り組んでおります。

 具体的には、ホームの安全対策として、バリアフリー料金制度対象駅のうち、乗降10万人以上の駅にはホーム柵を整備し、乗降10万人未満の駅にはホーム柵又はホーム安全スクリーンを整備する方針としており、10年以内の完了をめざします。なお、このうち2027年度までの5年間で約400億円の整備費を見込んでおります。

 踏切の安全対策として、関係行政機関と協議・連携の上、立体交差事業等による踏切の解消を実施しているほか、大型車の通行が多い踏切を対象に重点的にハード整備を実施します。踏切内に自動車が停滞している場合、運転士に音声で知らせる装置を新たに追加し、10年以内の完了をめざします。また、第4種踏切においては、恒久対策(廃止や格上げ)に加えて、踏切ゲートの設置を進めております。

 こうしたハード対策に加えて、ソフト対策として「組織全体で安全を確保する仕組み」を充実させ、その仕組みのもとで「一人ひとりの安全考動」を積み重ねていきます。これらの営みを通じて「安全最優先の風土」を育み、さらなる「仕組み」の構築・改善や「一人ひとりの安全考動」につながり、このサイクルを回し続けることで、継続的な安全性の向上を実現します。

 

(2) 自然災害等の発生

 地震、台風、地すべり、洪水等の自然災害によって、当社グループの事業及び輸送網インフラは大きな被害を受ける可能性があります。

 これに対し当社グループは、将来においても事業にもたらす影響の大きな自然災害等による被害を最小限のものとするよう、防災や減災に努めております。

 具体的には、地震対策として、阪神・淡路大震災以降、地震発生確率や活断層の観点から優先順位をつけて構造物の耐震補強対策や逸脱防止ガードの整備等の地震対策を進めてきたところですが、近年、大規模地震が複数発生していることを踏まえ、地震対策を山陽新幹線全線に拡大し、30年以内の対策完了をめざします。なお、30年間で約3,000億円の整備費を見込んでおり、在来線についても、計画に基づき着実に整備を進めております。

 津波対策としては、避難誘導標等を整備し、「津波避難誘導心得」を制定するなど、速やかな避難・誘導等に向けた取り組みを進めるとともに、実践的訓練を行っております。

 また、近年、短期間に集中化する豪雨等の激甚化する災害に対して、防護設備等を整備するなど、重大な被害の発生を可能な限り回避するための取り組みを推進していきます。

 なお、当社ではこれらの自然災害等に備えるため、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントラインを金融機関から導入するとともに、主な鉄道施設を対象とする地震保険を含めた損害保険に加入しております。

 

(3) 経営環境の激変

 当社グループは、日本経済の情勢の中でも、主な営業エリアである西日本地域における景気動向の影響を特に受けており、人口減少・少子高齢化や新型コロナウイルス感染症がもたらした社会行動変容、円安・物価高騰等が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 とりわけ人口減少・少子高齢化の進展は最大の経営上のリスクと考えており、中長期的なお客様のご利用の減少に加え、当社グループの事業の運営、事業領域の拡大、新しい分野への挑戦に必要な人財の確保が一層困難となることで、当社グループの事業継続性や戦略遂行に支障をきたす可能性があります。なお、人財確保に関するリスク認識の詳細については、後述の「(4)人財の確保」に記載のとおりであります。

 また、円安・物価高騰、金利上昇等が長期化し、インフレーションが進展すれば、事業に係る費用の増加が見込まれますが、後述の「(10)特有の法的規制」の影響等も相俟って、適正な価格転嫁が行えない場合、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。

 さらに、海外の景気動向や政治情勢等が訪日外国人の動向、サプライチェーン等に影響を及ぼす可能性があるほか、感染症等さまざまな要因により鉄道のご利用に影響を及ぼす事象が発生した場合、これに連動してグループ全体の経営成績に影響を与える可能性があります。

 一方で、当社グループは、鉄道事業においては対抗輸送機関と、鉄道以外の事業においても各業種業態の事業者と競合関係にありますが、近年ますます競争が激化しており、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。

 さらに、デジタル化の加速等に伴う革新的な技術の発達や、新たなビジネス・価値提供の仕組みの普及が、当社グループの収益に極めて大きな影響を与える可能性があります。

 加えて、地球環境保護や気候変動問題対応への社会的な要請の高まりや、気候変動による災害激甚化が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 今後の社会構造等を中長期的に見据えると、過疎化の進展や都市構造の変容により都市や地域間の格差が拡大していくこと、個人の価値観や消費行動の多様化に加え、格差の拡大により消費活動の二極化が進展していくことが想定されます。これらが顕在化した場合、大量輸送を特長とする鉄道事業が中心となる当社グループの収益に大きな影響を与える可能性があります。

 以上のような経営環境に関するリスクも踏まえ、「私たちの志」、「長期ビジョン」の実現を加速させるべく、「中期経営計画2025」をアップデートし、重点戦略の施策の具体化・追加を行いました。引き続き安全性の向上を最優先としつつ、鉄道を中心としたモビリティサービス分野の活性化と、ライフデザイン分野の拡大を通じて事業ポートフォリオを最適化し、未来社会においても価値を創造し続ける企業グループとなるよう、取り組みを推進しております。

 ・「中期経営計画2025」

  (参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/info/plan/pdf/plan_2025.pdf)

 ・「中期経営計画2025アップデート」

  (参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/info/plan/pdf/plan_2025_update.pdf)

 

(4) 人財の確保

 当社グループの営業エリアである西日本地域においても、今後生産年齢人口の減少が進展することが予測されており、当社グループの事業運営を支える人財の確保が困難になる可能性があります。

 「長期ビジョン」をはじめとした経営戦略を実現していく上で、事業領域の拡大、新しい分野への挑戦に必要な人財を確保、育成することが不可欠であり、こうした取り組みが停滞することがあれば、当社グループの事業継続性や戦略遂行に支障をきたす可能性があります。

 これに対し当社グループでは、人財確保のチャネル拡大と人財戦略の推進により、人財の確保及びリテンションに努めております。

 

 人財確保のチャネル拡大については、新卒採用以外にも、社会人採用やカムバック採用の拡充、65歳以上の再雇用制度の新設等に取り組んでおります。また、グループ全体の人財を確保する観点から、グループ合同での応募窓口の設定等、効率的かつ効果的な採用活動を進めるほか、特に変化対応・創出力を備えた人財については、「株式会社TRAILBLAZER」を設立し、JR西日本グループのデジタル変革を推進する専門人財の確保等に努めております。

 人財戦略の推進については、多様性の確保やさまざまな挑戦の機会を用意することが重要との認識のもと、「人財育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」及び「ワークエンゲージメント」の取り組みを中心に進めております。詳細は「2[サステナビリティに関する考え方及び取組](4)人的資本」に記載のとおりであります。

 

(5) サプライチェーンの確保

 当社グループは、鉄道の持続的な運行に必要な工事・保守関係業務を委託する協力会社をはじめ、多種多様な部品・材料等を製造・調達する取引先等、さまざまなパートナー企業に支えられてサプライチェーンを構築し、事業を推進しております。当社グループのサプライチェーンを支えるパートナー企業の操業停止や少子化に伴う労働力の減少、部品・材料等の調達ルートの寸断、需要急増等による資材調達の停滞等があった場合、鉄道運行に必要な技術力や部品・材料の提供が円滑に得られず、事業の継続に支障をきたす可能性があります。

 当社グループでは、工事・保守関係業務に係る施工の平準化や労働環境の更なる向上を通じてパートナー企業への安定的な業務委託に努めるとともに、中長期的な老朽取替計画に基づく前広な予備品の発注や代替品への置換等を進めております。

 また、ビジネスにおける人権、環境問題への関心が世界的に高まっており、当社グループは、取引先の皆様とともに相互に遵守していきたい基本的な考え方と行動原則をまとめた「JR西日本グループサプライチェーン方針」を制定し、取引先の皆様に周知しております。

 

(6) 情報セキュリティ、情報管理

 当社グループでは、列車運行や乗車券販売等の鉄道に関わるシステムに始まり、流通、不動産、旅行・地域ソリューション等の各事業分野全般にわたってコンピュータシステムを用いております。また、当社グループと密接な取引関係にある他の会社ともコンピュータシステムを連携しており、それぞれ重要な役割を果たしております。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組んでおり、これによりコンピュータシステムが当社グループの事業運営において益々重要な役割を果たすようになっております。

 このようなコンピュータシステムにおいて、当社及び相互に連携するシステムへのサイバー攻撃や自然災害、停電・通信障害、人的ミス等の要因によりシステム障害が生じた場合、事業の遂行に支障をきたす可能性があります。

 また、情報管理不備等により個人情報、営業秘密等の機密情報が流出し、第三者や競合事業者に利用又は悪用された場合、お客様や取引先への被害はもとより、競争優位性の喪失や当社グループの社会的な信用低下等、収益に影響を与える可能性があります。

 これらのリスクに備えるため、当社グループでは、情報セキュリティ対策状況を定期的に点検し、自社システムへの継続的な対策の見直しを行うとともに、研修の実施等による役員・従業員のITリテラシー向上を進めております。また、システム障害や情報漏えい事故及びサイバー攻撃被害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、初動体制の整備と平時における訓練に努めております。

 加えて、個人情報の取得・利活用や機密情報管理に関するデータガバナンス体制等を整備し、適正な業務執行と法令遵守に努めております。

 

(7) 重大な犯罪行為・テロ等の発生

 重大な犯罪行為やテロ活動、武力攻撃等により当社グループの施設・設備等が被害を受けた場合、事業の継続に支障をきたす可能性があります。

 当社では、これらに備え、不審者及び不審物への警戒警備の強化や防犯対策訓練の実施、防護装備品の配備等の各種対策を行っております。特に大規模イベント時においては、当社グループ全体で警戒警備体制の強化を図り、駅・列車・重要施設における巡回強化や、最新技術を取り入れたセキュリティ対策等を実施しております。

 また、国民保護法に基づく、武力攻撃事態等における対処については、的確かつ迅速な体制の確立等、具体的な取り扱いを定めているほか、自治体からの要請に基づき、緊急避難を目的とした利用に当社グループ施設の一部を供することとしております。

 

(8) 感染症の発生・流行

 感染症が発生・流行した場合において、お客様の外出自粛や社員の感染等により、鉄道運行をはじめとした当社グループの事業継続が脅かされ、経営成績に甚大な影響を与える可能性があります。

 新型コロナウイルス感染症が発生・流行したコロナ禍において当社グループは、過去の感染症拡大に伴い整備したマスク等医療物資の備蓄や鉄道運行に関するBCPダイヤを活用し、事業継続の面においては、最小限の影響に止めることができました。

 今後も重大な感染症の発生等のリスクに対しては、これまでの知見を活かしつつ、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく指定公共機関として、当社が定める「西日本旅客鉄道株式会社新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」に基づき、政府関係機関や各自治体等と緊密に連携しながら、社会インフラとしての鉄道輸送サービスの継続に万全を期していきます。

 

(9) コンプライアンス

 コンプライアンスは、単に法令等を遵守するだけでなく、世の中の基準に照らして、その期待に誠実に応え、当社グループの事業に対して信頼をいただく取り組みであると認識しております。

 当社グループは、事業活動を営む上で、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、下請法、景品表示法、個人情報保護法、不正競争防止法等、一般に適用される法令に加え、鉄道事業法等の業態ごとに適用される法令の規制を受けるほか、事業種別に応じた規制当局の監督を受けております。これらの法的規制等に違反があった場合、行政処分を受け当社グループの社会的な信用低下を招く可能性があるほか、関連諸法令の改正やガイドラインの制定等により、既存の規制が強化された場合、当社グループの事業運営や経営成績に影響を与える可能性があります。

 また、法令等違反以外にも社会規範や企業倫理にもとる事象や人権を侵害する問題が発生した場合、当社グループの社会的な信用低下を招き、お客様のご利用や人財の確保に影響を与える可能性があります。

 これに対し当社グループでは、グループ全体で法令遵守・コンプライアンスに関する教育・啓発を行うとともに、代表取締役社長を委員長とする「企業倫理・人権委員会」を開催し、法令等の遵守や人権に関する経営上重大な事項等について審議を行い、その議論状況を取締役会に報告することとしております。

 また、内部通報窓口として設置している「JR西日本グループ倫理・人権ホットライン(倫理相談室)」や社外相談窓口の対応充実・信頼性向上を図り、グループ全体のコンプライアンス向上に取り組んでおります。

 

(10) 特有の法的規制

 鉄道事業は公益的な性格を持つことから、公的サービスにおける官民の役割分担に対する政府の考え方によって、さまざまな影響を受ける可能性があります。

① 鉄道事業に対する法的規制

 当社は、「鉄道事業法(1986年法律第92号)」の定めにより、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、運賃及び一定の料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。これらの手続きや許認可の基準が変更された場合、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。2024年4月には、鉄道運賃水準の算定の根拠となる「総括原価」の算定方法を定める「収入原価算定要領」について、持続可能な鉄道輸送サービスに資する設備投資の促進、人財確保、自然災害の激甚化等への対応を念頭に、鉄道事業の安定的・持続的な運営等を確保していく観点から見直しが行われました。

 事業運営にあたっては、株主に対する配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする適正な利潤を確保することが必要であると考えており、収益の確保と経費削減を進め効率的な経営に努めていますが、「(3)経営環境の激変」で前述したように、人口減少による収益の減少、インフレによる費用の増加等により適正な利潤を確保できない場合は、「収入原価算定要領」の見直し内容も踏まえ、将来を見据えた安全やサービス向上の設備投資を行うなど、持続的な進化を図っていくために、適切な時期に運賃改定を実施する必要があるものと考えております。

 なお、当社をJR会社法の適用対象から除外するJR会社法改正法が2001年12月1日に施行されました。すなわち、当社においては、JR会社法に定められる発行する株式等の募集及び長期借入金の認可(第5条)、重要な財産の譲渡等の認可(第8条)等の全ての規定の適用から除外されております。

 一方で、本法附則により、国土交通大臣が指定するものがその事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針として以下の3点について定めることとされております。この指針は2001年11月7日に告示され、2001年12月1日から適用となっております。

〈指針に定められる事項〉

・会社間における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項

・日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項

・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項

 

② 整備新幹線

ア.整備新幹線の建設計画

 1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法に基づき整備計画が決定された路線のうち、当社は北陸新幹線(上越市-大阪市)の営業主体となっており、建設主体である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設・保有する新幹線施設の貸付けを受けて営業することとなっております。

2015年3月:北陸新幹線(長野-金沢間)開業

2024年3月:北陸新幹線(金沢-敦賀間)開業

 

イ.整備新幹線建設の費用負担

 整備新幹線の建設費は、全国新幹線鉄道整備法及び関連法令に基づいて「国、地方公共団体及び旅客会社が負担すること」、「旅客会社の負担は、整備新幹線の営業主体となる旅客会社が支払う受益の範囲を限度とした貸付料等をあてること」と定められております。

 なお、整備新幹線の営業主体である旅客会社が支払う貸付料の額については、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令」第6条において、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額(定額部分)に、貸付けを受けた鉄道施設に関して同機構が支払う租税及び同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされております。

 北陸新幹線上越妙高-金沢間の貸付料につきましては、同機構により算定された定額部分の年額80億円が当該新幹線開業に伴う当社の受益の範囲内にあると判断し、2015年3月に同機構との合意に至るとともに、当該貸付料の額について、同機構は2015年3月に国土交通大臣の認可を受けております。北陸新幹線金沢-敦賀間の貸付料につきましては、同様の手続きにて年額93億円とし同機構は2024年3月に国土交通大臣の認可を受けております。

 

ウ.北陸新幹線に対する当社の考え方

 敦賀以西区間については、新幹線整備により大幅な時間短縮効果が見込まれることから、早期の大阪までの全線開業が望ましいと考えております。現在、2017年3月に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームより出された結論に基づき、「小浜京都ルート」(敦賀駅-小浜市(東小浜)附近-京都駅-京田辺市(松井山手)附近-新大阪駅)の環境影響評価の手続きが進められております。

 なお、全線開業に向けた着工区間の延伸に際しても「当社の負担は受益の範囲内であること」や「並行在来線の経営分離」という従前からの基本原則が守られる必要があると考えております。

 当社としては、引き続き今後の動向を注視していきます。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響の縮小に伴い、お客様のご利用や個人消費が回復するとともに、インバウンド需要も好調に推移しました。

 その結果、営業収益は前期比17.2%増の1兆6,350億円、営業利益は同114.1%増の1,797億円、経常利益は同127.4%増の1,673億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度の事業適応計画に基づく税制特例の反動があったものの同11.6%増の987億円となりました。

 今後とも、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」に基づき、鉄道の安全性向上を最優先に、外部環境の変化を捉えた需要喚起策を講じるとともに、事業構造改革を着実に推進していきます。また、北陸新幹線金沢・敦賀間の開業効果を最大化するとともに、令和6年能登半島地震の被災地の復旧・復興が加速するよう、引き続き地域の皆様と連携して取り組んでいきます。

 

 これをセグメント別に示すと次のとおりとなります。

 なお、当連結会計年度より、セグメント区分及びその集計方法の一部を変更しており、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後のセグメント区分に基づき作成したものを記載しております。

 

① モビリティ業

 当社グループは、2005年4月25日に福知山線列車事故を発生させたことを踏まえ、引き続き、被害に遭われた方々へ真摯に対応してまいります。また、昨年4月にスタートした「安全考動計画2027」に基づき、「お客様を想い、ご期待にお応えする」ことを強く意識して安全性の向上に取り組むよう、安全に対する向きあい方を深め、組織風土として醸成すること等に取り組んでいます。

 当連結会計年度においても、ホームの安全対策として、在来線のご利用の多い駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進め、三ノ宮駅、西明石駅の一部ホームでホーム柵の使用を開始しました。また、京橋駅の一部ホームでホームと車両の段差や隙間を縮小する整備を実施し、芦屋駅、新大阪駅等ではホーム安全スクリーンの使用を開始しました。加えて、さらなる安全性の維持、向上のため、車両側面カメラの映像から列車に接近するお客様を自動で検知し、運転士に通知するシステムの検証を開始しています。

 激甚化する自然災害への対策としては、斜面防災対策や降雨時運転規制へのレーダー雨量活用をはじめとした豪雨対策を引き続き実施しました。山陽新幹線における地震対策については、耐震補強対策及び逸脱防止対策を全線に拡大すべく、主要な対策は2027年度末までの完了をめざし、着実に整備を進めました。在来線における建物・高架橋等の耐震補強等についても、計画に基づき着実に整備を進めました。

 さらに、環境負荷軽減のため鉄道運行への再生可能エネルギー導入によるCO2排出量削減の取り組みを進めるとともに、水素利活用(駅等の鉄道アセットを活用した総合水素ステーションの設置、線路敷を活用したパイプラインによる水素輸送等)の検討を開始しました。

 当連結会計年度における、需要創出及び新たな価値創造へ向けた主な具体的取り組みは以下のとおりです。

 

・コワーキングスペース等の予約プラットフォーム「+PLACE」のサービス開始(4月)

・「サイコロきっぷ」の発売(5月、8月及び12月)

・「Apple PayのICOCA」のサービス開始(6月)

・兵庫デスティネーションキャンペーンにおけるデジタルパスの発売(6月)

・自動運転・隊列走行BRT開発プロジェクトの専用テストコースでの実証実験完了(7月)、公道実証実験の実施(11月~2月)

・国内初の鉄道事業者連携による広域型MaaSアプリ「KANSAI MaaS」のリリース(9月)

・新たなEXサービスの導入(「EX旅先予約」、「EX旅パック」、新幹線の1年前予約)(10月)

・着座サービスの拡充(大和路線・おおさか東線における「快速 うれしート」の導入(10月)、通勤特急「らくラクやまと」の運行開始(3月))

・年末年始期間の東海道・山陽新幹線「のぞみ」号全席指定席化(12月~1月)

・令和6年能登半島地震を踏まえた北陸を応援する取り組み(「北陸おでかけtabiwaパス」の利用条件緩和・特別価格での発売(2月)、北陸駅ナカキャンペーンの実施(3月~))

・定期券WEB申込サービス「マイ・テイキ」の開始(3月)

 

 上記のほか、当社グループの技術、ノウハウをベースにしたビジネスの拡大にも取り組んできました。

 

 モビリティ業セグメントでは、鉄道需要の回復によりご利用が増加したことに加え、インバウンド需要が好調に推移したこと等から、営業収益は前期比18.3%増の9,864億円、営業利益は同244.3%増の1,144億円となりました。

 

② 流通業

 流通業セグメントでは、スターバックス コーヒー ジャパン㈱とのライセンス契約1号店「スターバックス コーヒー JR京都駅 西口店」を10月にオープンしました。また、11月には大阪・関西万博オフィシャルストアを「エキマルシェ新大阪」内にオープンしました。3月には、北陸新幹線金沢・敦賀間開業に合わせ、新たに整備された小松駅から敦賀駅までの6駅において駅ナカ店舗を開業しました。

 流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」については、9月に「ヴィアインプライム札幌大通<鈴蘭の湯>」を開業しました。

 流通業セグメントでは、コンビニエンスストアや土産店、「ヴィアイン」のご利用が好調であったことや、構造改革の進捗等により、営業収益は前期比18.7%増の1,970億円、営業利益は同138.1%増の130億円となりました。

 

③ 不動産業

 不動産業セグメントのうちショッピングセンター運営業では、「ルクア大阪」や「京都ポルタ」、「天王寺ミオ」等の商業施設において、店揃えやコンテンツを強化するリニューアルを行いました。また、3月には、北陸新幹線金沢・敦賀間開業に合わせ福井駅に商業施設「くるふ福井駅」を開業したほか、大阪駅(うめきたエリア)地上部施設名称を「うめきたグリーンプレイス」に決定し、2025年春の開業に向け準備を進めています。

 不動産販売・賃貸業では、不動産アセットマネジメント分野の強化のため、9月にJR西日本プライベートリート投資法人の運用を開始しました。また、10月には、不動産管理運営の強化のためJR西日本不動産マネジメント㈱を設立しました。さらに、収益用不動産の取得、販売や海外不動産事業の強化等にも努めました。

 ホテル業では、「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」の開業準備を推進するとともに、新しい広島駅ビルに開業するホテルの名称を「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」に決定しました。

 不動産業セグメントでは、ショッピングセンター運営業、ホテル業においてご利用が堅調に推移したこと等により、営業収益は前期比6.2%増の2,177億円、営業利益は同17.5%増の406億円となりました。

 

④ 旅行・地域ソリューション業

 旅行・地域ソリューション業セグメントのうちツーリズム事業では、楽天グループ㈱が運営する「楽天トラベル」と提携し、1月に「JR楽パック赤い風船」の販売を開始しました。ソリューション事業では、地域の社会課題の解決への取り組みの一環として、㈱トータルブレインケアと生涯現役社会の実現に向けた資本業務提携契約を締結しました。

 旅行・地域ソリューション業セグメントでは、旅行需要の回復、各地域の誘客事業等の受託等により、営業収益は前期比26.4%増の2,060億円、営業利益は同29.1%増の78億円となりました。

 

 モビリティ業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。

ア.輸送実績

 

区分

単位

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

前事業年度比

営業日数

366

キロ程

新幹線

キロ

937.7

812.6

 

在来線

キロ

(28.0)

3,959.8

(28.0)

4,090.5

 

キロ

(28.0)

4,897.5

(28.0)

4,903.1

 

客車走行キロ

新幹線

千キロ

553,348

104.5

在来線

千キロ

763,251

102.2

 

千キロ

1,316,599

103.2

 

輸送人員

定期

千人

1,063,247

101.8

 

定期外

千人

668,488

111.9

 

千人

1,731,736

105.5

 

新幹線

定期

千人キロ

917,691

105.6

 

定期外

千人キロ

19,175,193

124.3

 

千人キロ

20,092,884

123.3

 

定期

千人キロ

16,574,683

101.9

 

定期外

千人キロ

10,066,940

117.9

 

千人キロ

26,641,623

107.4

 

定期

千人キロ

3,504,664

100.0

 

定期外

千人キロ

3,796,928

115.2

 

千人キロ

7,301,592

107.4

 

定期

千人キロ

20,079,347

101.6

 

定期外

千人キロ

13,863,868

117.1

 

千人キロ

33,943,216

107.4

 

合計

定期

千人キロ

20,997,039

101.8

 

定期外

千人キロ

33,039,062

121.2

 

千人キロ

54,036,101

112.8

 

乗車効率

新幹線

46.5

39.4

 

在来線

35.5

33.8

 

38.9

35.5

 

(注)1 キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。

2 客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。

3 輸送人キロ欄の近畿圏は、京都府(南部)、大阪府(一部を除く)、兵庫県(南部)、滋賀県、奈良県(一部を除く)及び三重県(一部)について記載しております。

4 乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。

なお、乗車効率は次の方法により算出しております。

乗車効率 =

輸送人キロ

客車走行キロ × 客車平均定員(標準定員)

 

イ.収入実績

 

区分

単位

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

前事業年度比

新幹線

定期

百万円

11,703

104.6

定期外

百万円

436,039

128.1

 

百万円

447,743

127.3

 

定期

百万円

105,875

104.3

 

定期外

百万円

188,393

121.3

 

百万円

294,268

114.6

 

定期

百万円

21,928

101.2

 

定期外

百万円

76,654

119.0

 

百万円

98,582

114.5

 

定期

百万円

127,803

103.7

 

定期外

百万円

265,047

120.7

 

百万円

392,851

114.6

 

合計

定期

百万円

139,507

103.8

 

定期外

百万円

701,087

125.2

 

百万円

840,595

121.0

 

荷物収入

百万円

1

80.5

 

合計

百万円

840,596

121.0

 

鉄道線路使用料収入

百万円

4,713

102.9

 

運輸雑収

百万円

70,491

108.3

 

収入合計

百万円

915,801

119.8

 

(注) 旅客収入欄の近畿圏は、京都府(南部)、大阪府(一部を除く)、兵庫県(南部)、滋賀県、奈良県(一部を除く)及び三重県(一部)について記載しております。

 

(2) 資産、負債及び純資産の状況

 当連結会計年度末の総資産額は、3兆7,779億円となり、前連結会計年度末と比較し424億円増加しました。これは主に、固定資産の増加によるものです。

 負債総額は、2兆5,529億円となり、前連結会計年度末と比較し382億円減少しました。これは主に、社債の減少によるものです。

 純資産総額は、1兆2,249億円となり、前連結会計年度末と比較し806億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ566億円減の2,332億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税金等調整前当期純利益が増加したこと等から、営業活動において得た資金は3,183億円(前連結会計年度は2,739億円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 固定資産の取得による支出が増加したこと等から、投資活動において支出した資金は2,436億円(前連結会計年度は2,149億円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 社債の償還を行ったこと等から、財務活動において支出した資金は1,316億円(前連結会計年度は887億円の支出)となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

 当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント別経営成績に関連付けて示しております。

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かしたさまざまな施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてきました。

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響の縮小に伴い、お客様のご利用や個人消費が回復するとともに、インバウンド需要も好調に推移したことにより営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加しました。

ア.営業収益

 営業収益は、前連結会計年度に比べ17.2%、2,394億円増加の1兆6,350億円となりました。

 モビリティ業セグメントについては、当社の運輸収入が、鉄道需要の回復に伴い増加したこと等により、営業収益は前連結会計年度に比べ18.3%、1,526億円増加の9,864億円となりました。

 このうち、新幹線については、前連結会計年度に比べ27.3%、960億円増加の4,477億円となりました。

 在来線については、前連結会計年度に比べ14.6%、499億円増加の3,928億円となりました。

 流通業セグメントについては、コンビニエンスストアや土産店、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」のご利用が好調であったことに加え、構造改革の進捗等により、前連結会計年度に比べ18.7%、310億円増加の1,970億円となりました。

 不動産業セグメントについては、ショッピングセンター運営業、ホテル業においてご利用が堅調に推移したこと等により、前連結会計年度に比べ6.2%、128億円増加の2,177億円となりました。

 旅行・地域ソリューション業セグメントについては、旅行需要の回復、各地域の誘客事業等の受託等により、前連結会計年度に比べ26.4%、430億円増加の2,060億円となりました。

イ.営業費

 WESTER関連経費や発売手数料等の業務費の増加等により、前連結会計年度に比べ11.0%、1,437億円増加の1兆4,552億円となりました。

ウ.営業利益

 営業利益は、前連結会計年度に比べ114.1%、957億円増加の1,797億円となりました。

エ.営業外損益

 営業外損益については、雇用調整助成金の受入の減少等により、前連結会計年度に比べ20億円減少し、123億円の損失となりました。

 

オ.経常利益

 経常利益は、前連結会計年度に比べ127.4%、937億円増加の1,673億円となりました。

カ.特別損益

 特別損益については、線区整理損失引当金の繰入等により、前連結会計年度に比べ214億円減少し、222億円の損失となりました。

キ.親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ11.6%、102億円増加の987億円となりました。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因

ア.収益に影響する要因

[モビリティ業]

 モビリティ業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。

 新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向等に影響を受けます。

 近畿圏の収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。

 その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。

[流通業]

 流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。

[不動産業]

 不動産業セグメントの収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売、ホテル業により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するほか、ホテル業の収益は、宿泊料金や他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されるものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。

[旅行・地域ソリューション業]

 旅行・地域ソリューション業セグメントの収入は、主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロ等旅行を妨げる状況により影響を受けます。

 

イ.費用に影響する要因

[人件費]

 当社は、構造改革を推進しつつ、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,044億円となっております。

 人財確保については、新卒採用だけでなく、近年の雇用の流動性の高まりが今後も継続することを念頭に、社会人採用の拡充やカムバック採用の導入等、幅広いチャネルを設定することで、さらに多様性のある人財ポートフォリオへの転換を図ります。当事業年度においては新卒採用及び社会人採用等合計約1,100名の採用を行いました。

 また、年齢構成により退職者数が多い中で、一層円滑な技術継承を図ること等の観点から、従来の定年退職後の再雇用制度に加え、2023年度から新たに65歳以上の再雇用制度も実施しております。

[物件費]

 当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良等により、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。

 しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性を重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。

 また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化等による費用の増加も想定されます。

 さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。

[線路使用料等]

 当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2021年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は105億円となっております。

[支払利息]

 営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については201億円となり、前連結会計年度に比べ7億円減少しております。

 

③ 流動性と資本の源泉

ア.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

イ.資本需要と設備投資

 当社グループは、当連結会計年度において総額2,611億円の設備投資を実施し、そのうちモビリティ業では1,699億円、流通業、不動産業、旅行・地域ソリューション業及びその他では、26億円、856億円、7億円及び21億円をそれぞれ実施しました。モビリティ業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業、旅行・地域ソリューション業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。

 さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性を重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後もさまざまな検討を行うこととしております。

 

ウ.資金調達

 資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのフリー・キャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金等、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。

 また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債やコミットメントライン等で賄うことを基本としております。

 なお、コミットメントラインについては、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能な契約内容となっております。

 

エ.流動性

 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、早め厚めの資金調達を行ってきたことに加え、当連結会計年度においては経営状況が改善したことにより日々の収入金も確保していることから、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。

 一方で、資金効率向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 当社は、乗車券類等の相互発売等旅客営業に係る事項、会社間の運賃及び料金の収入区分並びに収入清算の取扱い、駅業務並びに車両及び鉄道施設の保守等の業務の受委託、会社間の経費清算の取扱い等に関して、他の旅客会社との間に契約を結んでおります。

 なお、上記の契約では、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金の算出に当たっては、通算できる制度によることとし、かつ、旅客運賃については、遠距離逓減制が加味されたものでなければならないこと、また、旅客会社において、他の旅客会社に関連する乗車券類を発売した場合は、当該他の旅客会社は、発売した旅客会社に販売手数料を支払うものとされております。

 

(2) 当社は、貨物会社が、当社の鉄道線路を使用する場合の取扱い、駅業務並びに車両及び鉄道施設の保守等の業務の受委託、会社間の経費清算の取扱い等に関して、貨物会社との間に契約を結んでおります。

 

(3) 当社は、旅客会社6社共同で、列車の座席指定券等の発売を行うためのオンラインシステム(マルスシステム)の使用、各旅客会社間の収入清算等の計算業務の委託等に関して、鉄道情報システム株式会社との間に契約を結んでおります。

 

6 【研究開発活動】

 モビリティ業における研究開発活動につきましては、鉄道事業の存立基盤である安全の確保やお客様へのサービス向上に向けた継続的な取り組みに加え、ヒューマンファクターの観点から安全性向上に資する研究を行うとともに、将来の経営環境を見据え、持続的に鉄道・交通サービスを提供していくため、さまざまなパートナーとともに日々イノベーションを追求しています。また、新たな価値創造にチャレンジする「JR西日本技術ビジョン」を策定し、研究開発活動を推進しております。

 その中で、鉄道固有の技術に関する基礎的課題の解明、最先端技術の基礎研究等については、特に公益財団法人鉄道総合技術研究所と密接な連携を図り効率的な研究開発を推進しております。同研究所には、「研究開発等に関する協定」に基づき、運営費として当連結会計年度は24億円を支払っております。

(当連結会計年度 研究開発費総額76億円)

 当連結会計年度の主な研究開発は、次のとおりであります。

(1) さらなる安全と安定輸送の追求

 技術の開発や応用を通じ、列車の運行に必要な設備の安全性を向上させるとともに、ホームや踏切の安全対策、防災・減災、労働災害防止等の設備がより効果的なものとなるよう研究・開発を進めております。

・将来に向けた新しい保安システムの検討・開発

・ワンマン運転におけるホーム安全確認(画像認識)技術の開発

・自動加減速制御システムの開発

(2) 魅力的なエリア創出の一翼を担う鉄道・交通サービスの提供

 お客様お一人おひとりと、また、さまざまな事業者や地域の方々とつながり、技術を活用することで、多様なお客様へのシームレスできめ細かいサービスの提供をめざしております。

・駅設備等の当社既存アセットと連携したアプリによる新サービス実現にむけた技術開発

・大阪駅(うめきたエリア)を中心とした顧客体験の再構築と未来駅の実現(フルスクリーンホームドア、顔認証改札、インタラクティブ空間等、カメラ技術を活用した新サービス等の推進)

・自動運転・隊列走行BRTの技術確立、自治体等との連携による実用化検討

(3) 持続可能な鉄道・交通システムの構築

 IoTやAI等新しい技術を活用し、働き方改革と生産性向上を進め、人口減少時代にも持続可能な、地球にもやさしい鉄道・交通システムの構築をめざしております。

・CBMの実現に向けた各種センサー開発及びプラットフォームの構築

・地上検査の車上化及び設備の状態保全に向けた技術開発

・工事の省力化や安全性向上に向けた多機能鉄道重機の開発

・カーボンニュートラルにむけた次世代技術開発(水素・バイオディーゼル燃料の利活用)

(4) ヒューマンファクターに関する研究

・心理的安全性が安全行動に与える影響に関する研究

・リスク感度向上に向けた研究

・検修作業における最適な照明に関する研究

・職場における適切なリーダーシップ行動に関する研究

・鉄道現場における思い込み事例の分析と対策案の検討

・加齢(高齢化)が鉄道係員の業務に与える影響に関する研究

 

 なお、流通業、不動産業及び旅行・地域ソリューション業につきましては、特記すべき事項はありません。