第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「画像一筋」を企業理念とし、以下の経営方針を定めております。

・画像処理技術を広めることにより豊かな社会作りに貢献する。

・顧客満足度の高い画像ビジネスのトータルソリューションを創造し、画像処理システムクリエイターとなる。

・究極の画像処理システムを追求する。

これら基本方針のもと、当社グループは、「人間の目の代わりになる検査技術の確立」を基本コンセプトとした画像処理検査アルゴリズムの開発を進めるとともに、これまで培ってきた画像検査の経験・知見とを組み合わせたソリューションサービスの提供を行うことにより、独自のビジネスモデルによるサービス提供を進めて参ります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループが目標とする経営指標は、連結営業利益率15%以上、自己資本当期純利益率(ROE)15%以上としております。当社グループの製品である画像処理検査装置は、国内外の5G関連スマートフォン向けコネクタ及び自動車コネクタやMEMS等の電子部品の画像検査設備への売上構成比が高い傾向にありますが、そのコネクタ・電子部品の画像検査用途も、多様化とともにニーズも国内外問わず増加していくと予想しています。また、他分野においての新規顧客の開拓にも注力しており、安定的な利益率の確保を目指して参ります。また、株主価値の最大化のため、強固な財務体質の維持に注力して参ります。目標とする経営指標の実績推移は以下のとおりとなります。

 

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

営業利益率

13.4%

17.3%

16.9%

6.5%

自己資本当期純利益率(ROE)

12.2%

15.7%

14.8%

3.0%

(注)2024年3月期は営業損失及び親会社株主に帰属する当期純損失のため、「-」を記載しております。

 

(3)経営環境

今後の事業環境につきましては、地政学リスク懸念や為替変動等、不透明な世界情勢は依然として存在するものの、半導体の供給不足懸念は解消されつつあり、車載向け電子部品需要の堅調な推移及び中国市場における携帯機器の生産設備投資が徐々に回復傾向を示していることから、画像処理検査装置の需要も併せて回復していくものと見込まれます。

このような経営環境の中、当社グループは市場や顧客の動向を注視しながら、今後の事業機会を確実に獲得していくため、当社グループは国内外における販売体制の強化、及び研究開発のスピードアップに一層注力して参ります。

 

 

(4)経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

上記経営方針のもと、当社グループは、中期経営計画を策定しております。計画を達成するための戦略として、以下の事項を対処すべき課題と認識し、持続的かつ健全な成長を目指して重点的に取り組んで参ります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 新規市場の顧客開拓及びアライアンス体制の構築

当社グループの製品である画像処理検査装置は、コネクタ部品や半導体及び電子部品(セラミック部品・MEMS(Micro Electro Mechanical System)等)の画像処理検査に利用されるケースが多く、当社グループは、それらの部品を製造する電子部品メーカーに対する販売が売上高の多くを占めております。当社グループは、今後持続的な成長を志向するにあたり、電子部品(コネクタ部品を含みます)の画像処理検査で培ってきたノウハウをもとに、コネクタ・セラミック部品・MEMS以外の電子部品、及び当社製品の活用が可能な自動車電子制御部品、半導体メーカー等、又それら以外の業種の新規顧客の開拓が必要であると考えております。

そのため、当社グループは、各業種の関係メーカー及び設備メーカー、ロボットメーカーとのアライアンス体制を構築することや、既に当社製品を採用している顧客についても、製品の採用工程の拡大を推し進めるといった追加需要を発掘するための対策を取ることによって、持続的な成長基盤の確立に取り組んで参ります。

 

② 開発力の強化

当社グループは、顧客ニーズに沿った製品リニューアルやモデルラインナップ拡充、製品の機能拡張による高付加価値化の実現、及び、大型電子部品の外観検査自動化をはじめとする市場ニーズを先取りした開発を進める等、経営方針に定める究極の画像処理システムを追求するための開発力強化の為、新卒を含む人材採用と育成に取り組んで参ります。

 

③ 経営環境の変化への対応

当社グループの属する画像処理検査装置業界は、アジア諸国の製造業において、目視検査の限界から画像処理検査装置の導入が進み、人による作業から機械化、自動化へシフトする動きが加速しており、今後、すでに機械化、自動化が進んでいる欧米諸国同様に安定的な需要が見込まれます。

当社グループは、このような経営環境の変化をビジネスチャンスと捉え、海外拠点を中心に、東アジア、東南アジア諸国、及び米国の市場へ向けてビジネスを展開して参ります。

 

④ 知名度の向上

当社グループは、事業計画を達成するうえで、知名度の向上が重要であると認識しております。そのために展示会やWEB広告、セミナー等への積極的な出展のほか、プライベートショーを開催し、知名度の向上を図って参ります。また、業界を代表するリード役として、日本の電子情報技術産業の発展と普及を促進するために、業界団体においても積極的な活動を行っております。

 

⑤ 営業力の強化

当社グループの営業部門は高度な画像処理ソリューションを提供する少数精鋭の人員体制で運営されており、コネクタを含む電子部品・半導体市場で培ってきたノウハウを活かしたソリューション提案、企画等により、営業活動を推進して参りました。

今後は、新規市場の顧客開拓・製造工程の自動化により、さらに受注機会が増加することが予想されることから、営業意識の改善、状況に応じた組織体制変更、営業人員の育成に注力するとともに、即戦力となる営業人員の採用を行い、営業力の強化を図って参ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在に於いて当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス

① サステナビリティ基本方針

当社グループはあらゆるステークホルダーの期待を受け止め企業理念に掲げる「画像一筋」に従い事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

② ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ基本方針の実現に向けて、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するために下記のガバナンス体制を構築しております。

 

管理本部が、当社グループ全体のサステナビリティ推進活動を行っております。サステナビリティに関する全てのステークホルダーの意向や動向を確認し、以下の取組みを行います。

a) 中長期的な視点から、当社グループにとって重要なサステナビリティの課題を抽出すること

b) サステナビリティの重要課題に関するリスク及び機会を識別すること

c) 上記b)に対する対応の基本方針を策定、実施すること

d) 上記a)-c)のサイクルを定期的に回していくこと

 

取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しております。管理本部から協議した重要な内容について報告を受け、当社グループのサステナビリティのリスク及び機会への対応方針及び実行計画についての監督を行っております。

 

(2)戦略

① サステナビリティ重点課題

当社グループは、当社製品・サービスをご提供することで、産業革新の促進、工場等の生産性や効率性の向上、働く人々の安心安全な労働環境確保を追求し続けて参ります。

また、活発で多様性のある組織づくりを目指し、従業員の「幸せ」を追求するとともに、平和で公正な社会の実現に向けて事業活動を続けて参ります。

 

② リスクと機会

当社グループでは、サステナビリティ重点課題に対応するため、サステナビリティ関連の重要なリスクと機会及び主な取組みを以下の通り識別しております。

 

(リスク)

・製品の品質低下によるブランド力の低下

・予見できなかった製品の不具合の発生による信頼性の低下

・優秀な人材の流出

 

(機会)

・製造現場での人材不足、人件費高騰に伴う省力化へのニーズの高まりに応じた、画像処理検査装置の需要増

・画像処理検査に係る新技術の開発及びソリューションの提供によるシェア向上

・職場環境の整備による優秀な人材の確保

 

(主な取り組み)

・研究開発体制の維持・強化

・安全な職場環境の維持

・従業員の能力の適切な評価及び当該評価に基づく人材採用・育成施策の実施

・育児休業の取得促進

 

 

③人的資本の活用

当社グループは、企業価値を持続的に向上させる観点から人的資本の育成・活用を重要な課題と認識しております。

当社の重要な財産である人材につきましては、社員一人ひとりを尊重し、働き甲斐と個々の能力を十分発揮できる職場づくりを目指し、独創性のある発想力と柔軟な対応力に磨きをかけられるような人材育成に取り組んでおります。そのために「多様性の尊重」を重視して運営しております。国籍、性別、年齢に関わらず活躍できる社内風土の醸成や働き甲斐の向上に繋がる社内環境の整備に努めながら、当社グループの経営方針に共感できる人材を採用して参ります。

人的資本の活用に関する主な取組みにつきましては、「(2)戦略 ②リスクと機会」に記載の通りです。

 

(3)リスク管理

リスク管理については、上記「(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス ②ガバナンス」に記載の通り、管理本部において、サステナビリティに関する重要課題、リスクと機会、及び対応策について協議が実施される過程でリスク管理を実施しております。

重要なリスクと機会については「(2)戦略 ②リスクと機会」に記載の通りであり、適宜取締役会に報告され、監督が行われております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(2)戦略」を推進するためには人的資本の活用により開発力及び営業力を確保することが最も重要と考えております。

 社内環境整備に関する方針については、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

男性労働者の育児休業取得率

100.0

100.0

(注)海外子会社については雇用環境が異なることから、連結グループとしての目標設定及び記載が困難であるため、当社単体の比率を記載しております。

 

 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針については、従業員の能力を適切に評価し、その評価に基づく人材採用・育成施策を随時実施することが重要であると考えているため、数値指標を設定しておりませんが、業務上必要とされる語学に通じている人材については国籍、性別、年齢を問わず採用しており、新入社員研修及び社員の能力開発のための各種研修も随時実施しているため、今後も継続して参ります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来や想定に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが認識できる範囲内で判断したものであります。将来や想定に関する事項には、不確実性を内在しているため、実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 

(1)経済環境及び景気動向について

 当社グループの製品の需要は、主要顧客であるコネクタや電子部品(MEMS(Micro Electric Mechanical System)・セラミック部品等)を製造するメーカー等の設備投資動向の影響を受けております。このため、経済環境及び景気動向の変化等を通じ顧客の設備投資動向が変動した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)業績の変動について

 当社グループは、画像処理検査装置の製造販売を事業として展開しており、主たる顧客である電子部品メーカー等が新たな製造設備を新設する際に当社の製品が導入されることとなるため、顧客の設備投資時期の変動があった場合には、当社グループの業績が特定の時期に集中する可能性があります。

(単位:千円)

 

上半期

下半期

合計

2022年3月期

売上高

1,494,598

1,579,079

3,073,678

営業利益

149,177

162,298

311,475

2023年3月期

売上高

1,207,368

1,478,384

2,685,753

営業利益

△101,468

72,844

△28,623

2024年3月期

売上高

1,100,471

1,544,304

2,644,775

営業利益

△210,867

62,971

△147,896

(注)1.上記の数値については、提出会社の決算数値を記載しております。

2.上記の上半期及び下半期に係る数値については、EY新日本有限責任監査法人による監査を受けておりません。

 

(3)他社との競合について

 当社グループが属する画像処理検査装置業界には、複数の競合メーカーが存在し、激しい競争にさらされています。

 当社グループは、豊富な画像処理検査に関する技術経験の下で、装置本体の販売に留まらず、画像処理検査装置を構成する照明や光学機器の選定を含めた最適なシステムの提案を行うといった、お客様の求める画像検査を実現させるためのコンサルティング能力を活かしつつ、新たな画像処理技術を他社に先駆けて製品化し市場投入することで、他社との差別化を図り、競争力の維持を図っております。しかしながら、他社が同様の技術あるいは当社グループの製品を上回る性能を発揮するシステムを開発すること等により、当社製品の技術優位性が失われたものと評価された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)棚卸資産の評価損失について

 当社グループは、受注生産を基本として、部品については、保有すべき適正在庫量を算出した上で、発注手続きを行っております。また、保有すべき部品の適正在庫量は、滞留在庫の発生、棚卸資産の陳腐化、評価損失の発生リスク低減を図るため、製品の受注から出庫までのリードタイムを勘案し、必要に応じて在庫量を調整しております。しかしながら、出荷を予定していた製品について失注する等の事象により、滞留在庫が発生し、棚卸資産の評価損失が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外展開について

 当社グループは、顧客の製造拠点のグローバル化に対応するため、販売拠点を海外に有しており、今後も積極的な海外展開を行う方針であります。このため、為替変動、進出国の経済動向、政情不安、法規制の変更等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)特定の販売先への依存について

 当社グループの製品である画像処理検査装置は、コネクタ部品を含む電子部品製造メーカーの画像処理検査に利用されるケースが多く、電子部品メーカーに対する販売が売上高の多くを占めております。

 当社グループは、特定の販売先への依存を回避すべく、他の電子部品メーカー及び当社製品の活用が可能な半導体メーカーを中心に新規顧客の開拓を進めております。また、既存顧客についても、当社製品の採用工程の拡大を図るなど追加需要を発掘するための対策を講じております。しかしながら、これらの対策が効を奏しない場合や特定顧客からの受注状況が悪化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)財政構造について

 当社グループは、売上債権の回収期間と比較して仕入債務の支払期間が短くなっております。そのため、売上の増加に伴い運転資金の需要が発生し、この運転資金を金融機関等外部から調達する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績は、今後の当社グループの販売動向、金利動向及び金融諸情勢により影響を受ける可能性があります。

 

(8)特定の部品調達先への依存について

 当社グループは、ファブレスで製品の製造を行っており、自社で生産部門を持たないため、製品を構成する部品は外部からの調達となります。各部品について複数の調達先を確保しておりますが、調達先の原材料不足・経営状況の悪化等により、部品供給が不安定となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権について

 当社グループは、これまで他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し、自社が保有する技術等について特許権等を取得することによって知的財産権の保護を図っております。また、製品開発にあたっては、開発責任者を中心として、弁護士や弁理士等の専門家からの助言も受けながら他社の知的財産権を侵害することのないように製品開発に取り組んでおります。しかしながら、司法の判断等により、当社グループが現在販売している製品、あるいは今後販売する製品が第三者の有する知的財産権を侵害する可能性を完全に否定することはできず、また、当社グループが認識していない特許権等が成立することにより、第三者から損害賠償等の訴えを起こされる可能性があります。その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)品質管理について

 当社グループの製品については、製品のリリース前に、当社品質管理部門による検査を十分に行うとともに、出荷時検査を全数に実施することにより品質管理を徹底しております。また、出荷後1年間について使用上の不具合があった場合には、無償で部品交換及び修理対応を行っております。しかしながら、これらの品質管理等にかかわらず、あらかじめ予見できなかった不具合が発生して、当社製品が信頼性を損なった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)自然災害等に関する影響について

 当社グループは、国内外に拠点を有し、事業展開するうえで、自然災害やコンピュータ・ウイルス等によって被害を受けるリスクを有しております。このため、保有する設備や社内情報システム等に対してバックアップ体制を構築しておりますが、大規模な自然災害等が発生した場合には、損害を完全に回避できる保証はなく、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報セキュリティについて

 当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の秘密情報を保有しております。当社グループは、当該情報の盗難・紛失などを通じて第三者が不正流用することを防ぐため、情報の取扱いに関する管理を強化しております。しかしながら、不測の事態によってこれらの情報の漏洩やインシデントが発生する可能性があり、その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)優秀な人材の確保について

 当社グループは、持続的な成長を果たし、競争力を向上させるためには、最先端かつ高度な画像処理技術を開発しなければならず、これに対応可能な優秀な人材の確保及び育成が重要と認識しております。このため、タイムリーに必要な人材の確保や育成が十分にできない場合や、優秀な従業員が多数離職した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)製品開発等の先行投資について

 当社グループは、既存製品である「VTV-9000」を顧客からのニーズ及び当社からのシーズに基づき適宜改良を行っております。また、さらなる高速処理を実現するための新型筐体、高輝度照明、及び次世代画像処理製品の開発等、他社に先駆けた製品開発のための投資を行っております。しかしながら、事業環境の変化等により、その成果が収益の獲得に繋がらない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、米国経済は金融引き締めの影響を受けながらも底堅く推移しましたが、中国経済は引き続き力強さを欠きました。一方、わが国では物価上昇が続く中でも、賃金引上げを背景にしたサービス消費やインバウンド需要に支えられ、景気は緩やかに回復しました。また、為替については日銀の政策見直し等の動きが見られましたが、依然として円安基調が続きました。

当社グループの関連するエレクトロニクス市場においては、自動車市場は半導体供給不足の解消により堅調に推移しましたが、携帯機器市場では需要低迷が継続したほか、産業機器市場も、前連結会計年度後半から続く受注調整に加えて、中国での設備投資減少の影響を受けて一段と減速しました。

このような市場環境のもと、当社グループは顧客のニーズに対して、より柔軟かつ迅速に応えるため、前連結会計年度から引き続き、市場拡大のための販売協業推進、AI製品をはじめとする共同開発等、新たな商品体系を充実させた営業基盤の強化に努め、特に車載用及び民生機器用の電子部品検査用途を中心とした新規・既存を含めた受注獲得に注力して参りました。

しかしながら、注力市場である携帯機器市場及び産業機器市場での需要低迷及び中国市場における設備投資減少等の影響を受けました。

その結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は4,250,771千円となり、前連結会計年度末に比べ58,768千円(1.4%)増加いたしました。これは主に、売上債権の回収に伴い受取手形及び売掛金が109,375千円減少、製品、原材料及び貯蔵品が9,174千円減少した一方で、現金及び預金が207,274千円増加したことによるものであります。

当連結会計年度末における固定資産は286,999千円となり、前連結会計年度末に比べ150,203千円(34.4%)減少いたしました。これは主に、減価償却及び減損損失の計上により有形固定資産及び無形固定資産が140,551千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は921,599千円となり、前連結会計年度末に比べ41,733千円(4.3%)減少いたしました。これは主に、販売在庫の引当により買掛金が93,703千円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が118,076千円減少したことによるものであります。

当連結会計年度末における固定負債は314,281千円となり、前連結会計年度末に比べ232,108千円(282.5%)増加いたしました。これは主に、長期借入金が193,899千円増加、繰延税金資産の取崩しに伴い繰延税金負債が44,130千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計額は3,301,889千円となり、前連結会計年度末に比べ281,809千円(7.9%)減少いたしました。これは主に、為替換算調整勘定が58,032千円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失168,567千円を計上、配当金支払により利益剰余金が49,131千円減少及び自己株式の市場買付並びに譲渡制限付株式報酬としての自己株式処分等により自己株式が138,672千円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は69.6%(前連結会計年度末は73.6%)となりました。

 

 

 

b. 経営成績

連結売上高は3,203,968千円(前年同期比9.1%減)、売上総利益は1,895,002千円(同8.1%減)、営業損失は91,033千円(前年同期は営業利益229,845千円)、経常損失は4,791千円(前年同期は経常利益244,622千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は168,567千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益102,131千円)となりました。

なお、当社グループは、画像処理検査装置事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、税金等調整前当期純損失の計上111,238千円(前年同期比は税金等調整前当期純利益244,287千円)、有形固定資産及び無形固定資産の取得、自己株式の取得等の減少要因があった一方で、減価償却費の計上、売上債権の減少、仕入債務の増加、及び長期借入等の増加要因があったことにより、前連結会計年度末に比べ204,333千円増加し、当連結会計年度末には2,606,083千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、392,887千円(前年同期比1.9%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失111,238千円があった一方で、減価償却費の計上171,424千円、売上債権の減少額124,300千円、及び仕入債務の増加額89,563千円の増加要因があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、115,755千円(同11.6%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出32,276千円、無形固定資産の取得による支出90,488千円の減少要因があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、139,422千円(同4.6%増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入330,000千円があった一方で、長期借入金の返済による支出254,177千円、自己株式の取得による支出149,974千円、及び配当金の支払額49,095千円の減少要因があったことによるものであります。

 

 

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループの事業は、画像処理検査装置事業の単一セグメントであります。

 

a. 生産実績

 当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

画像処理検査装置事業(千円)

1,243,989

102.2

(注)金額は、製造原価によっております。

 

b. 受注実績

 当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

画像処理検査装置事業

3,040,024

83.3

337,293

68.5

 

c. 販売実績

 当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

画像処理検査装置事業(千円)

3,203,968

90.9

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等)

a. 財政状態の分析

 財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b. 経営成績の分析

 (売上高)

 当連結会計年度の連結売上高は3,203,968千円(前年同期比9.1%減)となりました。前連結会計年度から引き続き、市場拡大のための販売協業推進、AI製品をはじめとする共同開発等、新たな商品体系を充実させた営業基盤の強化に努め、特に車載用及び民生機器用の電子部品検査用途を中心とした新規・既存を含めた受注獲得に注力して参りましたが、注力市場である携帯機器市場及び産業機器市場での需要低迷及び中国市場における設備投資減少等の影響により、減収となりました。

(単位:千円)

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減率

国内売上高

2,006,942

2,047,662

2.0%

海外売上高

1,517,972

1,156,305

△23.8%

うち、アジア地域

1,511,974

1,135,662

△24.9%

うち、その他地域

5,998

20,643

244.1%

合   計

3,524,915

3,203,968

△9.1%

 

 国内売上高は、2,047,662千円(前年同期比2.0%増)となりました。半導体供給不足の解消に伴い車載関連電子部品向けは堅調に推移しましたが、携帯機器市場及び産業機器市場での需要低迷の影響により、前年同期比で概ね横ばいとなりました。

 

 海外売上高は、1,156,305千円(前年同期比23.8%減)となりました。主に中国市場における設備投資需要の減少が影響し、売上高が減少しました。

 

 (売上原価、販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度における売上原価は、1,308,965千円(前年同期比10.6%減)となりました。売上減少に伴い仕入等の変動費が減少したことによるものであります

 販売費及び一般管理費は、1,986,036千円(前年同期比8.5%増)となりました。海外子会社の設立を含む営業・開発力強化のための継続的な人的投資に伴う人件費の増加、及び新型コロナウイルス感染症に係る行動制限の緩和に伴い、海外を含めた営業活動に係る旅費交通費等が増加したことにより、売上高に対する比率は前年同期の52.0%から62.0%へ増加しました。

 以上の結果、営業損失は91,033千円(前年同期は営業利益229,845千円)となりました。

 

 (営業外収益、営業外費用)

 営業外損益は、受取利息、助成金収入、開発負担金収入等93,277千円の営業外収益を計上し、支払利息、支払手数料等7,035千円の営業外費用を計上した結果、経常損失は4,791千円(前年同期は経常利益244,622千円)となりました。

 

 (特別利益、特別損失)

 特別損益は、主として減損損失106,270千円の特別損失を計上した結果、税金等調整前当期純損失は111,238千円(前年同期は税金等調整前当期純利益244,287千円)となりました。

 

 

 

 (法人税等、法人税等調整額)

 法人税、住民税及び事業税は、9,339千円(前年同期比86.9%減)となりました。一方で、法人税等調整額は、繰延税金資産の取崩し69,911千円により、44,130千円(損失)(前年同期比48.0%増)となりました。

 その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は168,567千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益102,131千円)となりました。

 

c. 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析)

 キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 資金需要は、主にデモ機作成等の設備投資、製品・ソフトウエアの開発、人材の採用・増員に伴う人件費の増加、及び業容拡大に伴う運転資本の確保から発生しております。現在の経営環境及び経営方針を考慮した場合、上記の資金需要については、従来どおり内部資金を中心とした調達で対応可能と認識しております。

 

(当社グループの資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループは、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としております。

 当社グループの資金調達を当社で一元化し、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、当社グループ内の運転資金管理の効率化を図っております。当社は、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の主な源泉と考えております。

 また、資金需要に応じて株式の発行及び金融機関からの借入により資金を調達することが可能であります。

 設備投資、製品・ソフトウエアの開発及び営業人員の採用のための資金については、主として内部資金により充当することとしておりますが、必要に応じて株式の発行や借入により資金を調達することとしております。当社は、資金需要に応じた効率的な資金調達及び流動性確保のため、取引銀行3行と総借入限度額900,000千円のコミットメントライン契約を締結しております。

 なお、当連結会計年度末におけるコミットメントライン契約に係る借入未実行残高は700,000千円であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)1.繰延税金資産の回収可能性」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度は、高付加価値製品の開発を主体に研究開発をして参りました。具体的には、より広い業種への製品展開を目指した画像処理製品であるVTV-Edgeの機能改善を行いました。また、高輝度LED照明ラインアップの拡充及び画像処理検査装置を遠隔で一元的に管理・監視するためのツールであるVTV-QCSの高機能化により、光学系の分野においてさらに他社との差別化を図っております。今後も当社グループ製品の強みを更に強化すべく、「既存技術にとらわれない技術開発」「人間に近い外観検査」をテーマに研究開発活動を推進して参ります。

 当連結会計年度における研究項目別の研究目的及び研究成果は次のとおりであり、研究開発費の総額は198,747千円となりました。

 なお、当社グループの事業は画像処理検査装置事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

「既存技術にとらわれない技術開発」

 

(1)VTV-Edgeの機能改善

 様々な業界の生産現場の検査に特化した画像処理検査装置VTV-Edgeについて、ユーザーニーズに沿った機能改善を引き続き行いました。これにより、当社の販売中心であるコネクタ・電子部品・半導体分野以外の市場への拡販力の向上を図っております。

 

(2)高輝度LED照明装置のラインアップ拡充

 従来よりラインアップ充実を図っていた高輝度LED照明装置について、形状や発行色等のラインアップを拡充しました。本製品により、様々な検査対象に最適な検査画像を短時間露光で得ることが可能となるため、検査精度・処理速度の向上を図ることができますが、ラインアップを拡充することにより、多様化する検査対象及び検査条件へのニーズに適合した照明装置を選定することが可能となります。

 

(3)VTV-QCS(Quality Control System)の高機能化

 画像処理検査装置VTV-9000を遠隔で一元的に管理・監視するためのツールについて、ユーザーニーズに沿った機能改善を引き続き行いました。

 これにより、生産現場に行かずにVTV-9000の検査画面をリモートで確認し、過去に実行された検査を高度な条件検索機能で閲覧できます。また、リモートで複数台の画像処理検査装置を使った検査工程の監視を行ったり、検査条件やタスクを切り替えたりする機能、画像保存によるトレーサビリティ管理が可能となり、より効率的な製造現場における検査工程の無人化を、ユーザーニーズに沿って支援することが可能となります。

 

「人間に近い外観検査」

 

(1)AIとルールベース画像処理とのハイブリッド画像処理検査製品のリリース

 FA画像処理検査では、定量的な良否判別基準が要求されますが、このような要求に対応するため、検査プロセス前段においてAIを用いて曖昧な要素でも検査対象を判別、検査プロセス後段においてルールベースによる画像処理検査を行うハイブリッド画像処理検査装置の機能強化を以下の通り推進しました。

・画像解析技術「高次局所自己相関(HLAC : Higher-order Local Auto Correlation)特徴量抽出法」を活用した機械学習ベースの外観検査AIによる推論実行機能をVTV-9000シリーズに搭載

・少量・良品・高速学習を繰り返し行えるAI外観検査ソフトウエアの推論実行機能をVTV-9000シリーズに搭載

 これにより、新たな顧客ニーズを満たす画像処理検査装置を提案しております。

 

(2)産学共同での新たな画像処理研究の取り組み

 検査対象を多視点から観察し、対象の三次元形状を復元する研究を推進しました。また、画像生成AIによる文字・形状認識の制度を向上させる研究を引き続き推進しております。