文中の将来に関する事項は、原則として当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、施工不備問題により毀損した信頼の回復に向け、施工不備問題の解決、再発防止策の具体化やガバナンスの高度化に取り組んでおります。また、ノンコア・不採算事業からの譲渡・撤退をはじめ、抜本的構造改革に取り組んでまいりました。
2025年3月期は、経営方針の柱として、「施工不備への対応」「収益力の強化」「サステナビリティ経営の推進」「中長期的な成長に向けた体制作り」の4つを掲げ、経営基盤のさらなる強化を図ります。
(経営環境)
日本国内における一般世帯数は、2023年をピークにして減少に転じる一方、当社のターゲットである単身者の世帯数は、少子高齢化や人口減少の影響をダイレクトに受けるファミリーの世帯数と比較するとその減少幅は小さい傾向にあり、10年レベルのスパンで考えた場合、当社が主力としている単身者向けのアパートには一定の需要が発生し、急速なダウントレンドは生じないと想定しております。
2023年度の貸家の新設着工戸数は、3年ぶりの減少(前年度比2.0%減)となりました。わが国の賃貸住宅市場は、人口減少・少子高齢化により空き家数の増加が続いており、このような環境下で事業を継続していくためには、将来的にも高い入居率が見込める三大都市圏を中心に物件を供給するほか、外国籍入居者の増加、単独世帯の増加、高齢化といった社会の変化を捉えた商品の開発、適切なメンテナンスによる物件価値の維持・向上、不動産テックの導入による利便性と付加価値の高い入居者サービスの提供等による差別化戦略が重要となります。
賃貸事業を主な事業とする他社はファミリー層をターゲットにした長期間の居住を前提としたビジネスモデルであるのに対し、単身者向けに家具家電を備えたワンルームを短期利用でも可能な形で大都市圏に集中して提供している当社は、賃貸住宅市場において競合他社とは異なる独自のポジションを確立していると認識しております。
(対処すべき課題)
今後予測される改修戸数は、2024年4月末時点で約16,400戸を見込んでおります。
2024年末までの明らかな不備解消に向けて、入居中の部屋や他社が管理している物件に対する交渉を粘り強く進めるとともに、難航する場合には中立な第三者の意見を参考に調停を含めた対応も検討することにより、改修スピードの向上に努めてまいります。
エリア特性に合わせた柔軟な募集家賃の設定やマンスリープランの商品見直しにより、2024年3月期の成約家賃単価は、施工不備問題発覚前の水準まで回復いたしました。
2025年3月期においても、「収益最適化戦略」として、適正なプライシングによる稼働家賃単価の引き上げを図りつつ、入居率向上施策を実施することにより、さらなる収益拡大を目指してまいります。
スマートロックやオンライン契約、チャットボット対応等のDXの取り組みを進めておりますが、今後もDX戦略を強化してお客様の利便性向上と当社の業務効率化を実現することにより、不動産テック企業として持続可能な地位確立を目指します。
また、人的資本経営として、会社と従業員が連携して支え合う関係を築くことにより、当社が提供する付加価値を増大させ、顧客や社会へ大きく貢献できるように努めてまいります。
アパート等の建築受注再開に向けて、2024年5月より開発部門を新設しており、将来的に開発事業を再開できる体制の整備を進めてまいります。
また、施工不備問題によって毀損した当社ブランドの再構築を図るため、社内ブランディングの再構築による社員エンゲージメントの向上や、当社のパーパスである「住まいをテーマに新たな価値を創造しより良い暮らしを提供する」社会インフラ企業として、さまざまな施策を展開してまいります。
2025年3月期以降の目標とする経営指標は以下のとおりです。
(単位:百万円)
※ EPS=親会社株主に帰属する当期純利益÷発行済株式総数(自己株式控除後)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、取締役会の傘下にサステナビリティ委員会を設置し、取締役会が諮問するサステナビリティ経営に関する取り組みを事業の一環として推進すべく、3カ月ごとに会議を開催しております。
取締役会は、サステナビリティ経営の重要な課題として位置づける8つのマテリアリティについて検討・諮問を行うことで、サステナビリティ活動全般についての監督責任を果たしております。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティ担当役員を委員長とし、各部署・各グループ会社のサステナビリティ担当者で構成され、当社のマテリアリティ解決に向けた施策の審議・検討を行っております。
当社のサステナビリティ経営における重要な課題(8つのマテリアリティ)
当社はこれまでに、電子契約サービスやスマートロックの導入など、継続してDX推進に取り組んでおりますが、デジタル技術の進歩や労働人口の減少等、ビジネス環境が激しく変化する中において、さらなるDX推進によりサステナビリティ経営を実現すべく2022年に「DX戦略」を策定・公表し「DX認定」を取得いたしました。
今後につきましても、2025年の「DX銘柄」選定を目標として、「事業変革DX」「価値創造DX」「人材組織DX」の3つのテーマを中心に当社グループ全体でDX推進に取り組むことにより、顧客利便性の向上と業務効率化を通じた企業価値向上を目指してまいります。
(人的資本経営の取り組み)
当社グループの継続的な成長には人材育成が必要不可欠であり、人的資本経営の取り組みは最重要テーマの一つとして捉えております。
「会社と従業員が互いに影響し成長する関係を築く」ことを当社独自の人的資本経営の姿として据えており、「付加価値提供人材の支援」及び「多様な働き方の実現」により、"働きがい"と"働きやすさ"を高め、その両方が高位の水準にある「プラチナ企業」となることを目指してまいります。
働きやすく働きがいのある環境を整えることで、従業員満足度(Employee Satisfaction)を向上させ、お客様の満足度(Customer Satisfaction)向上に繋げ、企業としての社会的責任(Corporate Social Responsibility)を果たしてまいります。
人材戦略に関しては、代表取締役社長を委員長とする人事委員会にて、重要であり広範囲に関係する企画事項や、全社的事項である各部門間の協調または統制、人事処遇の公平性に関する審査・決定を行っています。さらには2024年3月期より、新たに経営戦略と人材戦略を連動させるための取り組みとして、役員・執行役員・監査役・人事各部門責任者による月次定例会議を設けております。
当社グループが求める人材像の特定から、人事制度の改廃、人員に関する計画、教育研修施策、ウェルビーイング経営に至るまで、進捗状況を共有し活発に議論を行うことで、一貫性を持たせた戦略を従業員へ展開し、多様な個人や組織の更なる活性化と企業文化の定着を目指してまいります。
人材育成方針については、下記の3つを掲げております。
・会社に関わる人と組織を「人材資本」として捉え、大切に育てていきます
・従業員一人ひとりの働く意欲を引き出し、それぞれの人生を豊かにします
・会社の理念に共感し、ともに前進し価値を創造し続ける人を応援します
また、人材育成方針に沿った各種施策により、「ELTV(従業員生涯価値)」の最大化を目指してまいります。当社が継続的に成長するためには、会社の理念に共感する従業員を獲得し長くいきいきと働いてもらうことはもちろんのこと、従業員一人ひとりが会社にもたらす価値を高めていくことが重要であると考えています。
ELTVの概念は人的価値貢献、平均勤続年数、従業員数の3つを向上させることにより従業員が会社に提供する価値が高まり、その総和が会社として社会に対する提供価値となるというものです。当社は人材資本に対する積極的な投資をさらに進め、従業員が主体的に働き、社会に対して新しい価値を創造し提供できる環境を整えてまいります。
ELTVを向上させるために、重点的に取り組む4つのテーマを設定しています。
未来のあるべき姿に向けて自ら解決すべき課題とKPIを定め、指標の定量把握、分析に継続的に取り組んでまいります。
○ 次世代リーダー育成 ○ キャリアオーナーシップの拡充
○ ウェルビーイング経営 ○ 付加価値創造人材の獲得・維持
○ 次世代リーダー育成
次世代を担う人材の育成は、当社が継続的に成長し、また新しい価値を創造し提供していくにあたって非常に重要なミッションの一つと認識しております。当社では各階層に昇格する際に候補者を選定し専門的なマネジメントについての育成及び選抜試験を行うトランジションプログラムを導入しており、2016年の導入以来、延べ758名がこのプログラムを通過しております。
また、未来の会社を担う若手非管理職社員に対する選抜育成プログラムも実施しており(昨年度受講修了者数85名)、一般的なビジネスモデルやバリューチェーンを他社事例から学んで実践的な知識やスキルを身につけるだけでなく、リーダーシップの考え方や価値観を醸成することも目的としております。
次世代リーダー育成の取り組みは、社員のモチベーション向上やキャリア開発の機会提供にも繋がっており、今後もこれらを継続・拡大して実施していくことで、会社として持続的な成長を実現してまいります。
社員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に考え、キャリアプランの実現に向けて自律的に行動し成長していくことが当社ビジョンの達成に不可欠だと考えており、個人のキャリアに対する考え方が多様化する中で、人事制度や教育研修などを通して社員の自律的なキャリア開発支援を行い、キャリアオーナーシップの拡充に取り組んでおります。
具体的には、当社では複線型人事制度を導入しており、従業員自身の価値観や志向を尊重し、キャリア選択の幅を広げているほか、従業員がキャリアプランをタレントマネジメントステムに登録し、定期的に上司との面談で擦り合わせることで、会社からの支援や配慮をタイムリーに受けられるようにしてまいります。
また、若手やミドル・シニア層など年代別のキャリア研修にも力を入れるとともに、従業員個々人の悩みについては社内キャリア相談窓口を設置することで対応しており、従業員一人ひとりに寄り添ったキャリア開発支援を通して、会社として持続的な成長を実現してまいります。
○ ウェルビーイング経営
当社は、企業理念である「新しい価値の創造」を実現するための土台として従業員の心身の健康が重要であると考え、2017年から健康経営に取り組んでおります。
2023年からは健康の保持増進に加え、従業員同士でのいきいきとしたつながりから創造される職場の活性化や顧客・取引先・株主等あらゆるステークホルダーとの良好な相互関係の実現に向けた「ウェルビーイング経営」を目指しております。
代表取締役社長自らが最高責任者となり、人事部をウェルビーイング推進部門と位置付け、各事業所や衛生委員会との連携も図りながら各種施策を実施し、2017年以降毎年「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されております。
今後もウェルビーイング経営を力強く推進し、会社として持続的な成長を実現してまいります。
○ 付加価値創造人材の獲得・維持
少子高齢化による労働人口の減少、優秀人材の獲得競争が激化するなか、当社が安定して成長し続けるために、人材採用においては新卒・キャリアの両軸で活動しております。
新卒採用は長期的な人材確保としてだけでなく、若手人材ならではの柔軟な視点やもたらすアイデアが組織の活性化に有効であると考えております。また、企業のビジョンや理念を受け継ぐ未来の幹部候補人材として大切に育ててまいります。
キャリア採用では、即戦力として活躍できる人材の確保だけでなく、豊富な知識やスキルを活かして企業にイノベーションを起こす人材を獲得し、競合他社との競争優位性を高めていくことが重要だと考えております。
既に今年度より成績優秀者に対する株式報酬制度の導入を決定していますが、働きやすさ・働きがいの両面で企業として求職者に訴求する魅力を確立してまいります(エンプロイヤーブランディング)。
今後も事業推進に寄与する人材の採用活動を継続し、会社として持続的な成長を実現してまいります。
③リスク管理
「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)リスク管理」に記載しております。
④指標及び目標
現段階では、昨年度より注視している以下KPIについて実績・目標数値を開示いたします。
今後、ELTVを構成する関連KPIについて詳細な実態把握・目標数値設定を行い人的資本の増強により一層取り組んでまいります。
※1)階層別研修、選抜型研修、360度フィードバック研修、キャリア開発研修における従業員参加総時間
※2)若手非管理職社員に対する選抜育成プログラムの受講修了者数(2024年3月期より導入)
※3)管理職トランジションプログラムの受講修了者数(2016年3月期より導入)
※4) 単一年度での年代別キャリア研修の受講者総数(2023年3月期は休止)
※5) 当社個別ベース
※6)同一労働の賃金に差はなく社員区分別・等級別人員構成の差によるもの
※7)サーベイツールGeppoによる調査結果(eNPS:従業員満足度指標。調査時点の一般企業平均は△62)
※8) シルバー事業部の介護施設(あずみ苑)採用を除く
■コンプライアンス強化
取締役会の諮問機関としてコンプライアンス委員会を設置、年12回の開催により当社グループのコンプライアンス体制強化を図っております。
特に、施工不備問題を発端として企業風土の抜本的改革に取り組んでおり、再発防止策については、当初計画を完了した後も風化させることなく、継続的な取り組みを実施しております。
また、各部門や関係会社における自走式のコンプライアンス推進の実現に向け、コンプライアンスに係わる施策を業務執行現場で積極的に実行する体制を構築しております。
それに加え、当期に第三者評価を受け、高度化のための課題を特定いたしました。今後も継続的改善に努め、コンプライアンスの高度化を図ってまいります。
なお、当社では、施工不備問題を風化させないため、毎年5月29日を「変革の日5.29」と定め、再び社会から信頼される企業になるためにグループ全役職員一人ひとりが自覚を高め、再発防止を誓う日としております。
全役職員向けに毎年実施している「コンプライアンス意識調査」では、2019年時点では「コンプライアンスを意識している」と回答した役職員が83%でありましたが、2024年時点では98%まで上昇しており、業務の中でコンプライアンスを意識している役職員が増えていることが確認されました。
コンプライアンスに関する取り組みの詳細については、弊社ウェブサイトをご覧ください。
(URL
当社グループでは、コンプライアンス違反の防止並びに早期発見及び是正を図ることにより、レオパレス21グループのコンプライアンス体制を充実・強化し、当社グループに対する社会からの信頼を確立することを目的として、法令に基づき内部通報制度を導入しております。
内部通報の受付件数(取引先ホットライン含む)は以下のとおりになります。
※取引先ホットラインは当社ホームページの受付フォームで受付しているため、件数はメールに算入。
■「環境に対する取り組み」
〇 特定したリスク・機会及びその事業/財務影響
影響度 大:売上高に対する影響額50億円以上 / 事業運営に重大な影響を及ぼすもの
中:売上高に対する影響額5億円以上50億円未満 / 事業運営に影響を及ぼすもの
小:売上高に対する影響額5億円未満 / 事業運営に軽微な影響を及ぼすもの
〇 主な対応策
移行リスクのうち、環境対応の遅れによる法人顧客からの取引忌避については、「レオパレスグリーンエネルギー」プロジェクトを通じ、管理物件で使用する電気・LPガスを順次CO2排出量実質ゼロのものに切り替え、全国約55万戸の管理物件に供給される電気・ガスのCO2排出量実質ゼロ化を進めてまいります。
これにより、当社管理物件を利用される法人顧客様のCO2排出量の削減に貢献できるほか、当社にとってもスコープ3の削減が実現する見込みです。
当社ではシナリオ分析を実施し、社内で気候変動リスク及び機会への対応策を検討した結果、1.5℃、4℃いずれのシナリオの社会が現実のものとなったとしても、レジリエンスを有していることが確認されました。
また、環境問題への対応策を講じることが当社の企業価値向上に寄与するものと結論づけました。
「環境に対する取り組み」に関する詳細な情報については、弊社ウェブサイトに公表されている情報をご参照ください。(URL
〇 スコープ1、2、3の目標と実績
当社グループでは、2016年度より事業活動を通じて排出されるCO2排出量の集計と開示を開始しており、当社関連施設からのCO2排出量のうち、スコープ1・2に該当する排出量を「2030年度までに2016年度対比46%削減※」することを2020年に目標として掲げております。
※日本政府の目標:地球温暖化対策計画(2021年10月22日閣議決定)
今後は、これまで実施してきた管理物件の照明器具のLED化に加えて、管理物件の入居者様が使用するLPガスに対して、CO2排出量実質ゼロのレオパレスグリーンLPガス導入等を促進することを通じて、スコープ3の削減施策をより一層強化してまいります。
スコープ1・2・3の実績
※1)2023年3月期実績よりスコープ3カテゴリ13のGHG排出量の計算方法を見直し、精緻化を行っております。
※2)スコープ3カテゴリ13の排出量÷賃貸セグメント売上高
(3)リスク管理
当社グループでは、リスクの定義を「当社に物理的、経済的または、信用上の損失、不利益を生じさせる可能性がある潜在的なもの」としており、それらのリスクを全社的に把握・管理するため取締役会の傘下にリスク管理委員会を設置し、全社的なリスクを統括的に把握・管理する仕組みを構築しております。
リスクは6つの大分類に基づき、評価・対応を進めております。
リスク分類表
サステナビリティ委員会及びリスク管理委員会にて特定もしくは、定期的に見直したサステナビリティ関連リスクを含む事業全般のリスクは、両委員会事務局間で相互に報告し、その後、全社的なリスクとして共有を図っております。
各リスクへの対応策はサステナビリティ委員会及びリスク管理委員会を中心に、関係部署と連携して検討・立案し、実行してまいります。
効果検証を含めたモニタリングも関係部署にて適宜実施し、その結果をサステナビリティ委員会及びリスク管理委員会にて報告し、その後、取締役会にも共有される仕組みです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 自然災害・気候変動に関するリスク
① 自然災害等
国内外で地震、台風・集中豪雨等の災害や、テロや政情不安等による大規模なデモ・紛争・内乱、感染症等の不測の事態が発生することにより、当社の事業運営に重大な被害損失を与える可能性があります。
重要な事業を中断させない、中断しても短い期間で復旧させるために、「社内被害」と「事業被害」を速やかに把握し、復旧活動・被害拡大抑止に向けた適切な事業継続計画(BCP)を策定しておりますが、自然災害等が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 気候変動
気候変動による移行リスクとしては、炭素税等の規制強化による運用コスト増加や新築物件の建築コスト増加、環境対応への遅れによる法人顧客からの取引忌避や投資家からの低評価が考えられます。物理リスクとしては、猛暑日増加に伴う工期の延長によるコストの増加等が想定され、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 情報セキュリティリスク
当社グループは、取引先から入手した個人情報などの多くの情報を保有しています。情報セキュリティ管理のための行動指針を定め、役員や社員への教育を行っていますが、サイバー攻撃や不正アクセス、情報漏洩などが発生した場合には、社会的信用の低下や損害賠償の発生などにより、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 財務関連リスク
① 需要・販売価格の変動リスク
当社管理物件は、社員寮など法人契約に基づく利用が多いため、景気や企業業績を背景とした雇用状況や出張ニーズ等の変動が、当社物件の利用状況に影響を与える可能性があります。
また、当社は、オーナー様との建物賃貸借契約に基づき対象物件の一括借上げを行い、当初契約時に定められた期間において、同じく定められた固定賃料をオーナー様にお支払いしています。従って、この期間中に当社管理物件の利用者から当社が受け取る家賃収入等に変動が発生した場合には、当社の収益性に影響が及ぶ可能性があります。
当社は、空室増加による損失リスクにあらかじめ備えるべく、合理的な見積可能期間内に発生が見込まれる損失の額に対して「空室損失引当金」を設定しております。空室損失引当金は、個別賃貸物件ごとの借上家賃及び将来予測入居率に基づいて算出しているため、これらの計数が悪化した場合、引当額の増加につながり、賃貸事業部門の業績に影響を与える可能性があります。
③ 有形固定資産及び投資有価証券の時価変動リスク
当社グループが保有している有形固定資産、投資有価証券及びその他の資産は、時価の下落等による減損又は評価損の計上によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
撤退方針としているグアムのリゾート事業に係る有形固定資産については、2023年3月期に鑑定評価額に基づく正味売却可能価額まで減損損失を計上しております。今後も定期的に鑑定評価を取得して減損処理の要否を確認してまいりますが、今後の不動産市況の動向等によっては、追加の損失処理が発生することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、アパートの入居契約時にお客様からお預りした退去時清掃費のほか、オーナー様からお預りした将来のアパート修繕費用を長期預り敷金保証金として計上しております。当社は、アパートの維持管理体制には万全を期しており、入居者様の退去に伴う清掃費や定期修繕費用についても綿密な長期計画に基づく予算化を行っておりますが、予想外の清掃費用や大規模修繕等が発生した場合には、当社の財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
また、リゾート事業に係るレオパレスリゾート会員権の預託金があり、1993年7月の開場以来、預託されているものであります。今後、予想外の預託金償還請求が発生した場合には、当社の財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(4) その他経営全般に係るリスク
① 当社取締役らに対する株主代表訴訟
2023年12月13日に公表したとおり、当社は、過去に当社と取引関係にあった法人株主である株式会社TENZANから当社取締役及び元取締役24名当社監査役及び元監査役5名の責任追及等の訴えに関する訴訟告知書を受領しました。当社は、本株主代表訴訟は不適法であるとの判断に至っていますが、本件に関連して社会的信用の低下等が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
2018年4月に公表した小屋裏界壁施工不備のほか、2018年5月、2019年2月及び2019年5月に公表したとおり、当社施工物件において、界壁等の施工不備があることが判明いたしました。
これらに関連して、補修工事の遅れによる信用低下などにより、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ その他
当社グループは、事業展開上、様々なリスクがあることを認識し、それらをできる限り防止、分散あるいは回避するように努めております。
しかしながら、当社グループが事業を遂行するにあたり、経済情勢、不動産市況、金融・株式市況、法的規制や災害及びその他の様々な影響が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況及び分析の内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(単位:百万円)
当連結会計年度における国内経済は、世界的な金融引締めや中国経済の停滞等の影響が懸念されるものの、雇用・所得環境が改善する下で、景気は緩やかな回復が続く状況で推移しました。
賃貸住宅市場においては、貸家の新設着工戸数は前年度比2.0%減少となりましたが、人口減少・少子高齢化により空き家数の増加が続く中で安定した入居率を確保するためには、今後も増加していくことが予想されている単独世帯に向けて、地域や顧客の特性に合った販売戦略、適切なメンテナンスによる物件価値の維持・向上、不動産テックの導入による利便性の高いサービスの提供等を進めていくことが重要と考えております。
このような状況の中、当社グループは、入居率及び家賃単価の上昇による収益力強化を図るとともに、選択と集中によるコストの最適化に注力することにより、収益構造と財務基盤の安定化に取り組んでまいりました。
売上高は、前連結会計年度比16,222百万円(4.0%)増加の422,671百万円となりました。
これは主に、家賃単価及び期中平均入居率の上昇により、賃貸事業売上高が前連結会計年度比16,050百万円(4.1%)増加の407,489百万円となったことによるものであります。
売上総利益は、前連結会計年度比15,549百万円(29.2%)増加の68,835百万円、売上総利益率は16.3%(前連結会計年度比3.2ポイント上昇)となりました。
これは主に賃貸物件の原状回復やメンテナンス関連の原価が増加した一方、家賃適正化の効果による家賃原価の減少等で収益性が向上したことによるものであります。
営業利益は、前連結会計年度比13,434百万円(136.0%)増加の23,313百万円となりました。
これは主に、貸倒引当金繰入額が1,154百万円減少した一方、業績連動賞与等の計上に伴い給料及び賞与が1,466百万円、支払手数料が2,000百万円それぞれ増加したこと等により、販売費及び一般管理費が前連結会計年度比2,114百万円(4.9%)増加したものの、収益性向上による売上総利益の増加がそれを上回ったことによるものであります。
なお、営業利益率は5.5%(前連結会計年度比3.1ポイント改善)となりました。
また、当連結会計年度のEBITDAは27,974百万円(前連結会計年度比70.1%増)となりました。
経常利益は、前連結会計年度比12,949百万円(198.4%)増加の19,476百万円となりました。
これは主に、支払利息3,622百万円や資金調達費用962百万円を計上したものの、売上増加とコスト抑制により営業利益が大幅に改善したことによるものであります。
なお、経常利益率は4.6%(前連結会計年度比3.0ポイント上昇)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比22,251百万円(112.3%)増加の42,062百万円となりました。
これは主に、資材価格の高騰や2024年末までの明らかな不備解消に向けた工事スケジュールの見直し等により補修工事関連損失2,730百万円を計上したものの、繰延税金資産の積み増しにより法人税等調整額(益)26,564百万円を計上したこと等によるものです。
なお、1株当たり当期純利益は130.91円(前連結会計年度比70.69円増加)となりました。
(単位:百万円)
賃貸事業においては、部屋探しから契約まで非対面で完結可能なWEB契約、スマートフォンでの家電操作や施錠が可能なスマートアパート化の推進、法人顧客の社宅ブレーンとしての地位確立、仲介業者との関係強化、顧客やエリアの特性・ニーズに合わせたきめ細やかな販売戦略の展開等により安定した入居率の確保を図るとともに、販売単価の見直し等による採算性の向上に努めております。
当連結会計年度末の入居率は88.03%(前期末比-0.80ポイント)、期中平均入居率は85.99%(前期比+1.33ポイント)となり、成約家賃単価(新規契約の平均家賃)は施工不備問題発覚前の水準まで回復いたしました。なお、管理戸数は554千戸(前期末比6.8千戸減)となりました。
また、DX戦略のもと、デジタル技術の導入による業務効率化を進めて拠点集約を実施した結果、当連結会計年度末の直営店舗数は72店(前期末比37店舗減)となりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は、家賃単価の上昇や期中平均入居率のベースアップにより、407,489百万円(前連結会計年度比4.1%増)、営業利益は、増収効果に加えて、コスト構造の適正化により収益性が向上したこと等により、30,386百万円(前連結会計年度比79.9%増)となりました。
シルバー事業においては、各種営業施策や原価抑制策の継続等により、売上高14,007百万円(前連結会計年度比0.5%増)、営業損失621百万円(前連結会計年度比587百万円損失減少)となりました。
なお、当連結会計年度末の施設数は85施設(前期末比2施設減)となっております。
グアムリゾート施設の運営等を行っているその他事業は、台風被害の復興作業員等の利用による一時的な稼働率上昇はあったものの、グアム入島者数はコロナ禍前の水準にはまだ遠く及ばず、リゾート施設の稼働率低迷が続いているため、売上高は1,175百万円(前連結会計年度比9.9%増加)、営業損失は2,391百万円(前連結会計年度比314百万円損失減少)となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)生産実績の著しい減少は、主に前連結会計年度に売却した株式会社もりぞうの生産実績が、当連結会計年度には含まれていないことによるものであります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記以外の事業につきましては、受注の形態を取っておりませんので記載しておりません。
2.総受注高の著しい増加は、主に水害復旧工事等に係る受注の増加によるものであり、受注残高の著しい減少は、主にアパート建築請負工事の解約によるものであります。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.当社グループの相手先は不特定の法人・個人であるため、主要な販売先の記載は省略しております。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(単位:百万円)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末比38,451百万円増加の205,000百万円となりました。これは主に機械装置及び運搬具(純額)が845百万円、有形固定資産その他(純額)が1,623百万円、無形固定資産その他が1,254百万円それぞれ減少した一方、現金及び預金が15,066百万円、繰延税金資産が26,577百万円それぞれ増加したことによるものであります。
負債の合計は、前連結会計年度末比305百万円減少の133,320百万円となりました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が560百万円、未払金が2,363百万円、空室損失引当金が1,093百万円増加した一方、前受金及び長期前受金が1,016百万円、補修工事関連損失引当金が2,243百万円、長期借入金が1,134百万円それぞれ減少したことによるものであります。
純資産の合計は、前連結会計年度末比38,757百万円増加の71,679百万円となりました。これは主に本年7月より開始した自社株買い等による自己株式の増加4,153百万円、連結子会社における非支配株主への自己株式取得代金及び配当金の支払等による非支配株主持分の減少989百万円があった一方、円安の進行に伴う為替換算調整勘定の増加1,212百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上42,062百万円があったことによるものであります。
なお、自己資本比率は、前連結会計年度末比16.7ポイント上昇し31.2%となりました。
(単位:百万円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、21,422百万円の収入(前連結会計年度比10,876百万円の収入増加)となりました。これは主に、前受金の減少額が1,016百万円、利息の支払額が4,080百万円、補修工事関連支払額が5,000百万円となった一方、税金等調整前当期純利益が17,005百万円、減価償却費が4,660百万円、補修工事関連損失が2,730百万円、空室損失引当金の増加額が1,093百万円となったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、851百万円の収入(前連結会計年度比55百万円の収入減少)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出と払戻による収入が純額で295百万円の支出となった一方、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入が1,165百万円あったことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、7,119百万円の支出(前連結会計年度比4,300百万円の支出増加)となりました。これは主に、長期借入による収入が30,000百万円あった一方、長期借入金の返済による支出が30,185百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出が654百万円、自己株式取得による支出が3,466百万円、資金調達による支出が962百万円、連結子会社における非支配株主からの自己株式取得による支出が940百万円、非支配株主への配当金の支払額が910百万円となったことによるものであります。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は68,143百万円となり、前連結会計年度末比15,282百万円増加いたしました。
また、フリー・キャッシュ・フローは22,273百万円となり、前連結会計年度末比10,821百万円増加いたしました。
(契約債務)
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
(財務政策)
当社グループは、設備投資計画に照らして、平常時においては、必要な資金を主に銀行借入や社債発行等により調達する方針としております。
当連結会計年度においては、借入金の借換(リファイナンス)を目的として、Fortress Investment Group LLC(以下「FIG」といいます。)の関連事業体である枇杷合同会社から30,000百万円の資金調達を行い、同じくFIGの関連事業体である楓合同会社からの借入金30,000百万円の期限前弁済を行いました。
翌年度以降については、賃貸事業の収益力強化並びにキャッシュ・フローの改善に努め、資金計画に基づき想定される需要に十分対応できる資金を確保してまいります。
なお、2024年3月31日現在、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)の残高は29,845百万円であります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
(金銭消費貸借契約)
当社は、2023年12月22日開催の取締役会において、2020年11月2日に、Fortress Investment Group LLC(以下「FIG」といいます。)の関連事業体である楓合同会社より調達した借入金300億円(以下「当初ローン」といいます。)のリファイナンスを目的に、下記の通り、枇杷合同会社との間で金銭消費貸借契約(以下「本ローン契約」といいます。)を締結することを決議し、同日付で締結いたしました。
本ローン契約の概要
(注)当初ローンは、いわゆる新株予約権付ローンとして、当社がFIGの関連事業体である千鳥合同会社に対して2020年11月2日に割り当てた第5回新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)に関し、本新株予約権の行使に際して金銭が出資された場合、当該金銭による出資額を、当初ローンに係る貸金元本債権及び利息債権の元本の期限前弁済として支払うとともに、本新株予約権の行使に際して当初ローンに係るローン債権が出資された場合、出資された当該ローン債権は、当該債権額の範囲内において、当該出資と同時に、弁済期が到来したものとみなされ、かつ混同により消滅するものとされていました。この度、枇杷合同会社と新たに締結する本ローン契約においても同様の内容が合意されており、本ローン契約に係る借入れも同様の新株予約権付ローンとなります。
該当事項はありません。