文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社グループは、ヘルスケア領域にこれまでにない新しい価値を提供する、との経営方針のもと、調剤薬局、医療機関、介護施設などの顧客の収益と生産性向上に貢献すること、個人ユーザー(患者)にこれまでにない利便性を提供することを念頭に置き、各種事業を展開しております。当社グループでは、これまでEPARKサービスにおける薬局分野としてスタートした調剤薬局の検索及び処方箋予約に始まり、電子お薬手帳、独自の事業として展開を開始した薬局不動在庫の売買プラットフォーム、医薬品共同仕入れ、オンライン診療支援システムなど、調剤薬局をはじめとする顧客と個人ユーザー向けにサービスを拡大してまいりました。今後も、提供するサービスの質を一段と向上させ、顧客からの信頼をさらに高めながらサービスの一層の充実を図ってまいります。
(2)経営戦略
当社グループは、調剤薬局、医療機関、介護施設などの顧客、個人ユーザー、医薬品卸売事業者などの医療関係者をつなぐ医療プラットフォームの形成を戦略として掲げております。医療関係者に対してより大きな価値を提供できるサービスを取り揃えることで、医療関係者は生産性の一段の向上と経営効率、収益の改善を、また個人ユーザー(患者)はより高い利便性を実現し、下記の当社グループのサービスを活用していただくことで医療関係者からもたらされる蓄積された情報をもとに、当社グループから医療関係者へあらたな価値を提供していく双方向の関係を構築し、当社グループが医療関係者にとってなくてはならないプラットフォームとなることを目指します。
調剤薬局:レセプトコンピュータ、電子薬歴システム、医薬品共同仕入れ、医薬品売買のマッチングサービス
医療機関:医療事務コンピュータ、電子カルテシステム、順番待ちシステム
介護施設:介護請求システム、介護費用システム
個人ユーザー(患者):調剤薬局の検索及び処方箋予約、電子お薬手帳
医薬品卸売事業者:医薬品共同仕入れ
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、調剤薬局をはじめとする医療関係者にとって、なくてはならないプラットフォームになることを目指しており、下記の事項を重要な経営指標としています。
①「EPARKくすりの窓口」予約件数
②医薬品受発注在庫管理システムによる流通金額
③医科、薬局、介護の各業界基幹システム利用数
(4)経営環境
①市場環境
我が国の経済においては、ウクライナ情勢等による地政学的リスクとそれに伴うエネルギー価格など物価の高騰も引き続き懸念されると同時に、円安の継続もあり不透明な状況が続くと想定されます。
② 顧客基盤と動向
わが国では、急速な高齢化の進展により医療費が増加しています。このため、中長期的には市場の拡大が見込まれる一方で、薬価・調剤報酬改定等を通じた医療費削減など現在の医療体系の変革が急務となっております。当社グループの主要顧客であり全国に約6万店ある調剤薬局は一部大手チェーンが展開する店舗と個人事業主等が経営する中小店の二極化が見られますが、いずれも一層の経営効率化を求められる状況にあります。また、新型コロナウイルスの広がりも契機となってオンライン診療、オンライン服薬指導等の非対面型医療サービスへのニーズも高まる方向にあり、当社グループによるプラットフォームが必要とされる場面が増えると想定されることから、ニーズに対応できる体制を一層強化してまいります。
③ 競合他社の動向と競争優位性
当社グループが提供しているサービス分野においては、異業種も含めた他社が類似サービスによって参入してくることもあり、今後競争が激化することも考えられます。従いまして、競合他社とのサービスの内容や特徴等の差別化が課題となりますが、当社グループは、「EPARKくすりの窓口」を利用する個人ユーザー(患者)の獲得と主要顧客である調剤薬局へのサービス展開で先行し、参入障壁が高いヘルスケア分野で事業基盤を有していること、また高い専門性を有し、顧客のニーズを速やかに反映できる開発力を当社グループ内に有していることを強みとした競争優位性があると考えております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
①顧客基盤の拡大とサービス利用の深耕
当社グループの主要顧客は調剤薬局であり、顧客数と個人ユーザー数を拡大することが一義的な課題です。薬局ポータル処方箋予約サービス「EPARKくすりの窓口」では、掲載薬局数や掲載情報が多ければユーザーのご希望に叶う薬局、ご希望のお薬を探せる機会が増え、医薬品価格交渉・共同購入サービス「みんなの共同仕入れサービス」では、加盟薬局数が増えることで、価格交渉力強化による生産性向上が期待でき、医薬品不動在庫売買プラットフォーム「みんなのお薬箱」では、加盟薬局数が増えれば売買取引の機会が増えるなど、当社サービスは、利用する顧客やユーザーが増え、利用頻度が上がることでより利便性を増すものとなっております。そのため多くの調剤薬局に当社サービスにご加盟頂き、また積極的にご活用いただくことが、「医・薬・介護、個人ユーザー(患者)をつなぐプラットフォーム」という経営戦略を実現していくための当社の主たる課題となります。また、加盟数及び活用の増加は、直接的な収益のみならず、広告収入や、一般消費者に対する間接的な他サービスの提供など、副次的な収益の基盤ともなるものです。
②医療分野及びヘルスケア分野への展開
当社グループは、調剤薬局を主要対象業種として事業展開を行っておりますが、処方箋予約と併せ、オンライン診療又はオンライン服薬指導の予約サービスを取扱う、電子お薬手帳の情報を個人ユーザーの健康管理にご活用頂く、など、医療分野及びヘルスケア分野との関りを強化していくことが顧客及び個人ユーザーの利便性向上に不可欠です。当社グループは、「医療とユーザーを繋ぐプラットフォーム」とのコンセプトのもと、医療分野及びヘルスケア分野への展開、個人ユーザーの利便性向上を企図しており、同分野においても、業界内の確固たる地位を築くことを課題としております。
③競合との差別化
当社グループが提供しているサービス分野においては、異業種も含めた他社が類似サービスによって参入してくることもあり、今後競争が激化することも考えられます。処方箋ネット予約、電子お薬手帳、オンライン診療及び服薬指導等、従前であれば、いわゆるDX化を行うだけでも価値が認められましたが、これらが当たり前となる今後の事業環境においては、競合他社とのサービスの内容や特徴等の差別化が課題と考えております。
④新サービス開発、提供のスピード
競争激化が予想される事業環境において競合サービスに対抗していくためには、差別化されたサービスを迅速に提供し、拡大していくことが不可欠と考えております。当社グループは専門性の高いグループ企業群を有しており、顧客のニーズを速やかにサービスに反映できる自社開発力が強みのひとつであると考えておりますが、顧客及び個人ユーザーのニーズ及びウォンツを汲み取り、最適なサービスの企画を立て、短期間に開発を行い、市場に展開し、また改善を加えていく、というPDCAサイクルをいかに迅速かつ適切に回していくかが調剤薬局をはじめとする医療関係者に新たな価値を提供していくための当社グループの課題と考えております。
⑤社内体制の整備について
当社は、外部委託していた受発注や代金請求業務その他の管理業務を第17期連結会計年度(自2020年4月1日至2021年3月31日)より順次内製化し、社内体制の整備強化に努めておりますが、これらの業務の効率化及び適正化や、そのための継続的なシステム構築も課題と考えております。
⑥人材の確保及び育成
当社グループが成長を継続し、事業基盤を強化していくためには、サービス、システムの開発や営業などの各部門において優秀な人材を確保、育成し、性別、国籍、人種等にとらわれない多様性のある人材を登用していくことが当社グループの経営戦略を進めていくうえで必要と考えております。そのため、各種情報発信による採用活動の継続、社内研修制度の充実、適切な人材配置、人事評価の実施等を行い、更なる組織の強化に努めてまいります。
⑦流動比率について
第20期連結会計年度における流動比率は114.3%となっております。当社は「みんなの共同仕入れ」サービスにおいて関連会社グローバル・エイチ株式会社を通じて医薬品卸事業者から薬局への請求代行業務を代行しており、医薬品の売買代金の授受における回収と支払のサイト差による資金余剰ができるスキームを構築していることがその要因です。そこで、資金余剰額を常時管理し、さらに複数の取引銀行に当座貸越極度を設定し、スキームの安定運用を図っております。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは事業を通して社会課題の解決に貢献する新たな価値を創造し、持続的な成長を目指すサステナビリティ経営の重要性を強く認識しております。わが国は人口動態の変化(少子化、高齢化、人口減少)、経済成長の鈍化、医療費の増大、財政の危機的状況等の課題に直面しており、とりわけ当社グループが事業展開するヘルスケア領域では、急速な高齢化の進展で増大する医療費を削減することなど医療体系の変革が急務となっています。当社グループが調剤薬局、医療機関、介護施設、医薬品卸売事業者などの医療関係者と患者をつなぐ医療プラットフォームを提供する社会的な使命を維持し、事業を通して社会に貢献し続けていくためには、サステナビリティ経営に継続的に取り組んでいくことが必要であると考えております。
当社グループは、ヘルスケア領域にこれまでにない新しい価値を提供する、との経営方針のもと、調剤薬局、医療機関、介護施設などの生産性の一層の向上と経営効率、収益の改善に貢献すること、ユーザー(患者)にこれまでにない利便性を提供することを念頭に置き、各種事業を展開しております。サステナビリティの観点においては、サステナビリティの3つの柱の中でもとりわけ医療、衛生、社会福祉といった社会サービスの改善・発展を含む社会開発の分野で大きく貢献できるものと考えております。事業を通じて社会的な課題の解決に貢献する新たな価値を提供することは、当社グループの企業価値の向上にもつながるものと考えております。また、当社グループの事業は環境に与える負荷が小さい他、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響が少ないことも特徴として挙げられます。
当社は、サステナビリティに関する取り組みに重点を置き、株主、顧客(調剤薬局、医療機関、介護福祉施設)、個人ユーザー(患者様)、債権者、従業員、地域社会等のステークホルダーから継続的に信頼と評価をいただける経営を目指し、適切なガバナンス体制の確立と経営の健全性、透明性の確保に努めております。
ガバナンス体制をさらに強化するため、社外取締役についても、医師としての経験と大学教員としての知見を有する山本純偉と大手電機メーカーのヘルスケア部門および厚生労働省において医療技術参与として医療DXに取組んだ経験のある村岡丈到の二名を選任し、取締役会において企業統治等の観点から客観的な意見の陳述及び助言を行うことにより業務の執行を監督する体制を構築しております。
当社がステークホルダーから継続的に信頼や評価をいただける経営を実現するためには、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、有効に機能させることが不可欠であり、継続的に整備・強化を行う他、当社の成長ステージや経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できるよう随時見直しを図っていく所存であります。
弊社のガバナンスに関する取り組みの詳細は、
サステナビリティ活動を支える当社グループの事業戦略
当社グループは、調剤薬局をはじめとする医療関係者をつなぎ、媒介としてなくてはならないプラットフォームとして医療分野で社会課題の解決に貢献していくことを目指しています。
処方薬受取りの予約機能を持つ調剤薬局の検索サイト/アプリ「EPARKくすりの窓口」は、薬局で処方する医薬品の準備が予めできるため、待ち時間の短縮により新型コロナウイルス感染症が流行する環境下で薬局店舗内の密を防止できるなど、薬局と患者の双方にメリットを生みだします。また電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」は、飲み忘れ防止のためのアラーム発信機能、血圧値や体温の登録などPHR(Personal Health Record)管理機能等を有し、患者の健康管理に役立つサービスを提供しています。これらの事業は「医療と患者をつなぐプラットフォーム」をコンセプトとしております。限りある医療資源を効率的に機能させ持続可能な医療体制と社会保障を維持するには、今後「未病」(発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態)への対応が重要性を増していくものとみられます。当社グループの「医療と患者をつなぐプラットフォーム」は、病気を未然に防ぎ疾病の重症化を防ぐ「未病」対策を医療機関等が進めていくうえで、その機能を通じて大きく貢献していけるものと考えております。
また、当社グループは、「卸と薬局をつなぐプラットフォーム」として、個々の薬局等が単独で仕入れを行うのと比較して条件面でのスケールメリットを享受することを目的とした共同購買のスキーム、医薬品の在庫管理システム及び自動発注システムの機能を提供しております。また、不動在庫となった医薬品を譲渡したい薬局と、不足している医薬品を購入したい薬局のニーズをマッチングさせ、売買を仲介することで全国の薬局の不動在庫を有効利用して医薬品の廃棄ロスを削減し、各薬局においては収益の改善につなげることを目指したサービスを提供しております。これらの事業を通じて、医療費の削減など医療体系の変革を最前線で担う調剤薬局、医療機関等の業務効率化と収益改善を支援し、また医療資源の有効活用の場を提供することで、社会課題の解決に貢献していけるものと考えております。
また、「医療機関、薬局、介護のデータ連携プラットフォーム」をコンセプトに、「医・薬・介護、個人ユーザー(患者)をつなぐプラットフォーム」を実現するためのラインナップの充実を企図し、医療機関、薬局、介護施設に必要な事務処理システムや情報システム等を販売しております。
将来的には、以上の事業を通じて、当社グループのサービスを活用していただくことで医療関係者からもたらされる情報の蓄積をもとに、当社グループから医療関係者へ新たな価値を提供していく双方向の関係を構築していくことを目標としています。このような将来像を持つ当社グループにとって、展開する事業そのものがサステナビリティ活動を構成する大きな要素であると考えております。
(参考)当社グループの中期成長戦略のイメージ図
蓄積されたデータを活用し顧客満足度の高いサービスに転換させていきます。利用者が広がりデータが集まるほどサービス価値が向上します。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループが成長を継続し、事業基盤を強化し、サステナビリティ経営に継続的に取り組んでいくためには、サービス、システムの開発や営業などの各部門における優秀な人材を確保、及び育成し、性別、国籍等にとらわれない多様性のある人材を登用していくことが必要と考えております。そのため、各種情報発信による採用活動の継続、社内研修制度の充実、適切な人材配置、人事評価の実施等を行い、更なる組織の強化に努めてまいります。
当社は、サステナビリティ経営に取り組むうえで、様々なリスクを適切に評価し管理することは極めて重要であると認識しております。
「リスク管理会議規程」に基づいて原則として毎月開催され、代表取締役社長 堤幸治他全部門長が出席するリスク管理会議において、営業系リスク、レピュテーショナルリスク、事務リスク、情報漏洩リスク、システムリスク、人事労務リスクなど様々なリスクを管理する体制としております。それぞれのリスクに関する定期モニタリング項目を出席者間で共有し、リスクが顕在化しているものだけでなく、潜在的なリスクも含めてチェックしております。当社グループは個人情報の中でも機微な医療、健康分野における情報を取り扱っていることから、リスク管理会議においては、情報セキュリティの確保を特に重視し、またシステム障害によってサービスの提供に支障が生じることがないようシステム障害発生状況もモニタリングしております。議長である代表取締役社長から指示があった対応事項・要改善事項については、議事録に記録のうえ、次回以降のリスク管理会議における報告対象となり、フォローアップされます。
また当社は、リスク管理会議及びグループ会社会議の上位組織としてリスクマネジメント委員会を設置し、原則として3ヶ月に1度の定期開催と必要に応じて臨時開催を行っております。情報管理、労務管理、ハラスメント防止、不正防止等のリスクやコンプライアンスに関する方針を検討・協議することを目的とし、代表取締役社長 堤幸治、取締役管理本部長 外間健、常勤監査役 大木弘明、内部監査室長、法務統括部長が出席します。ここで協議された方針に基づき、リスク管理会議及びグループ会社会議でモニタリングする事項が決定されます。また、重要な内容について取締役会に報告が行われます。
当社のリスク管理に関する取り組みの詳細は、
人材の採用、育成及び社内環境整備に関する指標と目標
当社グループでは、人材の採用、育成及び社内環境整備に関する数値目標は設定しておりませんが、当社グループ事業においては、競合他社と差別化された新たなサービスを継続的に提供していくことがサステナビリティ経営に取り組み続けるうえで必要であり、性別、国籍、人種等にとらわれない多様な人材を確保し育成していくことが重要であると考えております。
従来から取り組んでまいりましたインセンティブ制度や教育の強化に加え、第20期連結会計年度(自2023年4月1日至2024年3月31日)からは入社時研修を一段と拡充し、加えてその後の各部門配属後の現場OJTをより明確に体系化させることで、研修教育体制の一層の充実を図っております。成果の評価を行える段階には至っておりませんが、モニタリングと分析を継続して行い、教育研修体制の強化と質の向上を図っていく考えです。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
また、当社グループはリスク管理のための機関として、リスクマネジメント委員会、リスク管理会議、グループ会社会議を設置し、各種リスク事項のモニタリングとそれに応じた対策の検討を行い、リスク顕在化の予防を図っております。詳細については、「第4 [提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。
1.市場環境に関するリスク
(1)市場環境の変化について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループの顧客は、調剤薬局、医療機関、介護施設などであり、急速な高齢化の進展により医療費削減など医療体系の一層の変革を求められる状況にある顧客のニーズにマッチしたサービスの提供に努めておりますが、当社サービスに対するニーズは顧客のIT投資意欲の影響を受ける面があります。経済環境の悪化や景気低迷等により、急激な環境変化が発生し、顧客のIT投資意欲が減退した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2)技術革新の影響について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループが事業を展開するITサービス業界では、絶えず新しい技術が開発され、それに伴う新しいサービスの提供も頻繁に行われております。当社グループにおいては、顧客に対するサービス向上のため、継続的にシステムの開発を行うなどして技術革新への対応を講じておりますが、何らかの理由で技術革新への対応が遅れた場合、あるいは想定していない新技術・新サービスが登場した場合、当社の技術や競争力が低下する事も考えられ、その結果、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(3)競合他社による影響について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、調剤薬局、医療機関、介護施設等を対象にITサービスを提供しておりますが、各サービスにおいてそれぞれ競合する企業があります。そのため当社グループにおいては、顧客に対するサービス向上やサービスラインナップの充実に継続的に努めております。しかしながら、競合事業者のサービス向上や優れた競合事業者の登場などによって当社グループの競争力が低下する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
2.事業内容に関するリスク
(4)情報セキュリティについて
(発生可能性:低/影響度:大/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループでは、情報セキュリティにおける国際標準規格ISO/IEC27001(通称ISMS)、日本工業規格JIS Q 15001(通称プライバシーマーク)の認定を受けるなど、情報管理体制の整備強化に努めておりますが、個人情報の中でも機微な医療、健康分野における情報を取り扱っていることから、これらが漏洩するような事態が生じると当社グループの経営成績や財務状態に影響を与える可能性があります。また、当社システムにおいても、十分な検査を行うよう努めておりますが、不具合等が生じるとこちらも当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(5)システム障害について
(発生可能性:低/影響度:大/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループが提供するサービスは、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、社内管理体制を充実させ、情報技術の進歩に応じた対応ができるよう努めております。しかしながら、自然災害やシステム運用の誤り等偶発的な事由によりシステム機能が低下し、サービスの提供に支障が生じる可能性があります。また、外部からの不正な手段によってコンピュータ内に侵入され、重要なデータを不正利用、消去されたり、コンピュータウイルスの感染によってシステムが機能停止となる可能性があります。こういった状況を回避するため、ウイルス対策ソフトの導入やインターネット接続境界へのファイアーウォール設置などの対策を重ねて講じておりますが、重大なシステム障害が発生した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(6)クレーム・訴訟について
(発生可能性:中/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、本書提出日現在において重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておりませんが、今後、調剤薬局や医療機関などの顧客との間で予期せぬトラブルが発生し、クレームや訴訟に発展する可能性があります。当社はコールセンターを設置し、クレームに個別に対応して解決を図る他、何らかのトラブル発生時には再発防止策を検討し、類似のトラブル再発を回避することに努めておりますが、クレーム・訴訟等の内容や結果によっては、多大な対応費用の発生や企業イメージの悪化などにより、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(7)風評リスクについて
(発生可能性:中/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは広く一般の個人をユーザーとし、全国の調剤薬局、医療機関、介護施設を顧客としているため、SNS等に当社グループに対する評価や意見が投稿されることがあります。当社グループではそれらについてモニタリングを行い、必要に応じて事実確認を行ったり、サービスの改善に取り組むなどしております。しかし、当社グループに対して何らかの否定的な風評が広まった場合等には、その内容の真偽に関わらず、当社グループに対するユーザーや顧客からの信頼が低下し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
3.法的規制に関するリスク
(8)法令、業界規制の改正について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
a.診療報酬改定の動向
厚生労働省により、通常2年に1度診療報酬の改定が実施されますが、予期しない大幅な改定が行われるなどした場合には、当社グループのオンライン診療・服薬指導システム、医薬品価格交渉・共同購入サービス「みんなの共同仕入れサービス」の利用ニーズを低下させ、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
b.広告等に関する規制
当社グループが調剤薬局等に対してサービスを説明する際に使用する広告は、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」「保険医療機関及び保険医療養担当規則」「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」などの法令の規制対象となり、誇大表現や誤認させるような表現の禁止他、様々な遵守すべき事項が規定されております。当社グループでは、これらの規制を遵守するために、広告や説明資料について事前に法務部門の点検を実施しておりますが、法令の改正等によって広告等の記載内容が大幅に制限されるなどがあった場合は、営業戦略の変更を余儀なくされ、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
c.上記以外の医療、ヘルスケア分野における政策、規制事項等
上記の他、医療、ヘルスケア業界においては、オンライン資格確認、電子処方箋など様々な取り組みが開始されており、医療、ヘルスケア分野におけるIT化を進めてきた当社グループにとって好機と捉えられる反面、これらの内容や条件によっては、当社サービスにマイナスの影響を及ぼすことも想定されます。当社グループでは、これら政策や法規制等を把握し迅速にサービスに反映させるよう努めておりますが、その内容や条件によっては、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(9)許認可事業について
(発生可能性:低/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社が運営する医薬品売買ニーズマッチングサイト/アプリ「みんなのお薬箱」においては、当社子会社の株式会社ピークウェルが不動在庫となった医薬品を薬局から買取り、他の薬局に販売しています。同社は東京都による医薬品販売許可を取得しており、医薬品販売事業者が遵守すべき事項を全て遵守したうえで同サービスを展開しておりますが、何らかの理由により許認可が取り消された場合、同サービスを継続することが難しくなり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(10)知的財産権について
(発生可能性:低/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、顧客ニーズに基づくサービス開発の過程において得た技術・ノウハウ等について、積極的に特許等をはじめとした知的財産権を確保するよう努めております。また、当社が他社の知的財産権を侵害しないよう十分に留意し、疑義ある場合には弁理士に調査を依頼するようにしております。第三者により当社グループの知的財産権が侵害された場合や権利侵害を当社グループが行ったとして係争を起こされた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
4.事業運営体制に関するリスク
(11)グローバル・エイチ株式会社との関係について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社は「みんなの共同仕入れサービス」においてグローバル・エイチ株式会社と業務提携を行っております。同社は当社が49%、I&H株式会社が51%を出資する当社の持分法適用会社です。同社が医薬品卸事業者との価格交渉を行い、当社が同サービスの販売を行うという関係にあり、重要な事業パートナーです。今後も同社との提携継続により同サービスを拡大していく方針ですが、何らかの理由により同社との取引や提携関係が継続できない場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(12)株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ会社との関係について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社は、株式会社光通信の子会社である株式会社EPARKが展開する多様な業種業態への予約サービスの薬局業種向けの調剤予約、処方箋送信サービスを会社分割により譲受して事業開始しております。また、事業開始にあたり、株式会社光通信が子会社として保有していた休眠会社を社名変更したうえで利用したのが当社の起源です。その後、当社株式は株式会社光通信から株式会社EPARKに譲渡されました。このように当社の事業開始には、株式会社光通信と株式会社EPARKが密接に関わっております。現在は、以下の関係があります。
a.オフィシャルパートナーシップ契約と共通サービスプラットフォーム利用について
当社は、EPARKサービスを提供するに際し、株式会社EPARKとオフィシャルパートナーシップ契約を締結し、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業とEPARKサービス共通の会員、予約に関するサービスプラットフォームを共有しております。また、当該契約に基づき株式会社EPARKに対して主に下表の通りロイヤリティ及びサービスプラットフォーム利用料等を支払っております。これらの取引により、EPARKサービスの薬局分野である当社メディア事業において、EPARK会員という数千万人のユーザー基盤を活用できるという大きなメリットがある他、それら会員情報に係るセキュリティを確保しつつ事業推進していくために必要不可欠の取引であります。取引条件については、両社の協議に基づき決定されており、適宜見直しを行って適正な水準を維持することとしております。
EPARKサービスに関する事業の売上の割合は、当事業年度において35.1%となっておりますが、同社またはその親会社である光通信の意向により、同社との契約に予期しない変更や解約がなされた場合、同社グループとの共通サービスプラットフォームを利用できず、EPARKサービス事業の展開に支障を来すなど、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(単位:千円)
b.当社株式の保有について
株式会社EPARKは、当事業年度末日現在、当社株式の28.6%を保有しており、当社は同社の関連会社に該当します。また、NBSEヘルステック投資事業有限責任組合への出資を通じた間接保有を合わせると、同社の持株比率は39.8%となります。同社における今後の当社株式保有方針は未定でありますが、仮に株式売却により当社が関連会社でなくなった場合にも、オフィシャルパートナーシップ契約に基づく取引が継続されることを確認しております。
しかし、同社またはその親会社である株式会社光通信の意向により、株式市場で当社株式が売却された場合、短期的に株式の需給バランスの変動が生じる可能性があり、当社の株価に影響を与える可能性があります。
c.独立性の確保について
当社は、株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業から役員もしくは出向社員の受入れはなく、今後も行わない方針です。また、EPARKサービス共通会員に対する各種施策の実施については株式会社EPARKの承認が必要となりますが、それ以外の当社グループの経営上の決定事項について株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業に対する事前承認事項や事前協議事項はありません。このように、当社は自らの意思決定により独立した事業展開を行っており、株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業によるグループ経営の対象に含まれておりません。また、EPARKグループにおいて調剤薬局の予約サービスを行う企業はなく、競合関係もありません。しかし、株式会社EPARKについては、前述のように当社事業における重要な取引関係がある他、間接保有分と合わせると実質筆頭株主としての影響力がある資本関係を有していることから、当社グループと株式会社EPARKまたはその親会社である株式会社光通信との関係に変化が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(13)業務提携、資本提携、M&Aに関するリスクについて
(発生可能性:低/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、企業価値向上の有効な手段のひとつとして、引き続き、他社との業務提携、資本提携、M&Aを検討していく方針であります。そうした案件を進める際には、第三者による相手方の調査や事業計画の検証などを行い、可能な限りの対象会社の情報収集に努めておりますが、提携等により期待した効果が得られなかった場合、対象会社の財務状況等により提携等の維持が困難になった場合などは、保有株式やのれんの減損処理を行う可能性があり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(14)人材の確保及び育成について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループ事業においては、競合他社と差別化された新たなサービスを継続的に提供し続けていく必要があることから、それらの能力を持った人材を確保し育成していくことが課題と考えております。具体的には、新たなサービスを具現化するシステム開発人員とそれに対する営業人員の採用と教育が大きなポイントとなります。そこで、インセンティブ制度や教育の強化を推進しながら採用活動に取り組んでおりますが、情報通信分野は人材の流動性が高く、当社の計画通りに十分な人員の確保ができない場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(15)特定人物への依存について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社の代表取締役社長である堤幸治は、株式会社EPARKにおける飲食業向け予約サービスや当社の調剤薬局向け予約サービスの開始に携わり、現在は、調剤薬局向けサービスにとどまらず、当社事業全体の業務執行を牽引しております。また、当社の代表取締役会長である田中伸明は、フリービット株式会社の起業をはじめとしたこれまでのアントレプレナーとしての豊富な経験に基づき、当社の将来を見据えた舵取りを行っております。このように両氏は、当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行について重要な役割を果たしております。現在当社は、事業拡大に伴って権限委譲や業務分掌の明確化に取組み、両氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指しておりますが、何らかの理由により両氏のいずれかまたは双方が当社の業務を継続することが困難となった場合には、当社の事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。
5.財務状況等に関するリスク
(16)投資事業組合の当社株式保有割合について
(発生可能性:高/影響度:小/発生可能性のある時期:1年以内)
当事業年度末日現在において、2つの投資事業組合が当社株式を5,005,400株保有しており、発行済株式数の45.6%を占めております。SBIイノベーションファンド1号は、業務執行組合員であるSBIインベストメント株式会社が当社の将来性を評価し、2016年2月に当社株式1,250株及び当社新株予約権付社債2,300株相当、同年11月に当社新株予約権付社債6,000株相当を取得しました。それら新株予約権の行使等により、当事業年度末日現在の持株比率は17.0%となっております。また、NBSEヘルステック投資事業有限責任組合は、当社株式を10,600株保有していたフリービット株式会社による全株売却の意向を受け、代表取締役会長である田中伸明によってその受け皿として設立され、2020年10月に当社株式10,600株を取得しました。その結果、当事業年度末日現在の持株比率は28.6%となっております。同投資事業組合には田中伸明が議決権の100%を保有する日本事業承継アントレプレナーズ株式会社が10.5%の出資を行っており、当社持株比率に換算すると3.0%程度となりますが、田中伸明は同投資事業組合の無限責任組合員である日本事業承継アントレプレナーズ株式会社の代表取締役として全株式に関する議決権行使を単独でできる状態にあります。
これらの投資事業組合がキャピタルゲインを目的に市場で当社株式を売却した場合、短期的に株式の需給バランスの変動が生じる可能性があり、当社の株価に影響を与える可能性があります。
(17)当社株式の流動性について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社は、上場時の公募増資及び売出しによって当社株式の流動性の確保に努めましたが、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25%であるところ、流通株式比率は当事業年度末日現在において25.5%程度であります。今後は、大株主への一部売出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)配当について
(発生可能性:高/影響度:小/発生可能性のある時期:1年以内)
当社は、財務基盤強化を目的とした内部留保の充実を図っており、事業開始以来配当を実施した実績はありません。当事業年度においても、当社の成長を継続させるとともに、さらなる財務面の健全性を強化することが中長期的に株主の利益に資すると考え、無配と致しました。しかしながら、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しており、早期の配当実施を目指してまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、世界的な原材料価格高騰、為替不安等の影響を受けており、先行きが不透明な状況が続きました。
医療情報システム業界におきましては、オンライン診療、服薬指導等の診療報酬上の特例措置(通称0410対応)が終了し、患者の保険資格に係るオンライン資格確認導入に加え、電子処方箋の取り組みも開始されました。また、一部の医薬品の供給が滞る医薬品出荷調整の影響が続く中、地域毎の医薬品を融通し合うことによる診療報酬上の特例措置が始まることとなりました。
このような市場動向は、医療及び健康管理分野に対してITを利用した様々なサービスを展開している当社にとっては好機と捉え、顧客拡大と、一般消費者に対するサービスの認知向上に努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度においては、売上高は8,721,460千円となり、前連結会計年度に比べて1,300,667千円(前年同期比17.5%増)増加、営業利益は1,370,005千円となり、前連結会計年度に比べて319,984千円(同30.5%増)増加、経常利益は1,325,879千円となり、前連結会計年度に比べて387,075千円(同41.2%増)増加しております。また、親会社株主に帰属する当期純利益は870,921千円となり、前連結会計年度に比べて479,469千円(同122.5%増)増加しました。
当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
また、財政状態については次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末の流動資産は18,241,361千円となり、前連結会計年度末と比べて9,689,550千円増加となりました。これは主に短期借入金及びみんなのお薬箱事業において生じる未払金の支払いサイトの影響により現金及び預金が8,644,297千円増加したこと、受取手形、売掛金及び契約資産が960,430千円増加したことによるものであります。固定資産は4,830,331千円となり、前連結会計年度末に比べて1,163,065千円増加となりました。これは主にのれんが340,912千円、ソフトウエアが825,537千円増加したことによるものであります。この結果、総資産は23,071,692千円となり、前連結会計年度末と比べて10,852,616千円増加となりました。
(負債)
流動負債は15,957,694千円となり、前連結会計年度末と比べて6,832,207千円増加となりました。これは主に短期借入金が5,000,000千円増加したこと、みんなのお薬箱事業の共同仕入サービスにおける支払期間と回収期間の差の一時的な影響により未払金が1,169,397千円増加したこと、未払法人税等が291,507千円増加したことによるものであります。固定負債は693,539千円となり、前連結会計年度末に比べて393,523千円増加となりました。これは主に子会社の買収により長期借入金が287,017千円増加したことによるものであります。この結果、負債合計は16,651,234千円となり、前連結会計年度末と比べて7,225,731千円増加となりました。
(純資産)
純資産は6,420,458千円となり、前連結会計年度末と比べて3,626,885千円増加となりました。これは主に東京証券取引所グロース市場新規上場に伴う新株発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,407,600千円増加したこと、利益剰余金が858,889千円増加したことによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,644,297千円増加し、14,590,947千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,627,199千円(前年同期は3,096,744千円の資金の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,306,579千円、減価償却費978,643千円の計上に加え、未払金の増加1,121,072千円、その他の負債の増加370,202千円、売掛債権の増加額926,935千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は1,794,569千円(前年同期は1,537,495千円の資金の支出)となりました。これは主に無形固定資産(ソフトウエア等)の取得による支出1,609,444千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は7,811,667千円(前年同期は635,391千円の資金の支出)となりました。これは主に短期借入金による収入30,000,000千円、短期借入金の返済による支出25,004,126千円、新株発行による収入2,815,200千円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の状況
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
当連結会計年度におけるサービスごとの販売実績は次のとおりであります。
なお、当社グループは、医療向けソリューションの開発および販売の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、サービス別に記載しております。
(注) 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。課税所得の見積りにあたって当該見積りの基礎となる次年度予算ならびに中期経営計画といった将来の利益計画は、計画の策定時点で得られる情報に基づいており、これらの情報により市場環境及び顧客の獲得動向や継続状況などを考慮した上で将来の売上高を見積り、これに対するサービスの拡充やシステムの開発状況を考慮して原価又は費用の見積りを行っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は「1経営方針、他経営環境及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、適正な売上高を確保し、適正かつ効率的なコストにより利益を確保していくことを実現するために、メディア事業では「EPARKくすりの窓口の予約件数」、みんなのお薬箱事業では「医薬品受発注在庫管理システムによる流通額」、基幹システム事業では「医科、薬局、介護の各業界における基幹システムの利用数」を重要指数としております。
2023年3月期のメディア事業は、EPARKくすりの窓口の保有数の増加と店舗当たり予約数の増加に伴い、予約件数が416万件(前期比:139%)と増加しております。ポータルサイトであるEPARKくすりの窓口の利用促進により新規利用者を増やすとともに、EPARKお薬手帳アプリでリピート促進をすることで予約の最大化を図っております。
みんなのお薬箱事業は、継続的な獲得により保有数が増え医薬品流通額が年間1,990億円(前期比128%)と増加しております。医薬品の在庫管理システム(eオーダーシステム)も提供しており、調剤薬局の在庫適正化によるコスト削減と医薬品卸の急配や返品を減らし医薬品の流通改善に取組んでおります。
基幹システム事業は、当社の営業ノウハウを子会社へ展開し、子会社を通じて医科、薬局、介護の基幹システム(レセコンや電子カルテ、介護記録システムなど)の獲得を進めております。2024年3月末時点で当事業に関わる保有数は4,421施設(前期比118%)となっております。
引き続き各事業の利益最大化を図るために獲得の強化と顧客ニーズにあった商品開発を継続してまいります。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、8,721,460千円(前年同期比17.5%増)となりました。これは主に、メディア事業において契約施設数と処方箋ネット受付予約数が順調に伸び予約手数料収入が増加したこと、みんなのお薬箱事業において契約施設数と医薬品流通額が着実に増加し手数料収入が増加したこと、そして基幹システム事業でハイブリッジ株式会社、株式会社ホスピタルヘルスケア、キューブイメージング株式会社が新たに子会社に加わったことにより売上が増加したものであります。
(売上原価及び売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は、3,788,605千円(前年同期比13.2%増)となりました。これは主に、みんなのお薬箱事業における医薬品流通量増加に伴い支払手数料が増加したこと、業績の拡大と連結子会社の増加によりシステム開発のための業務委託費が増加したこと等によるものであります。この結果、売上総利益は4,932,855千円(前年同期比21.1%増)となりました。
(販売費及び一般管理費及び営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、3,562,849千円(前年同期比17.8%増)となりました。これは主に、従業員の新規採用に係る求人費が増加したこと、また新規採用による増員に加え、新たに子会社となった従業員の増加もあり給与手当が増加したことによります。この結果、営業利益は1,370,005千円(前年同期比30.5%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、営業外費用として上場関連費用を53,680千円計上したことにより、1,325,879千円(前年同期比41.2%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度において法人税等を432,156千円計上しました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は870,921千円(前年同期比122.5%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 [事業の状況] 4 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
④ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの資金需要のうち主なものは、システム・ソフトウエア開発費であります。必要な資金は営業活動により獲得した自己資金を充当することを基本方針としております。今後につきましても更なるサービス向上のための開発投資を引き続き行っていく想定であります。こうした資金需要はこれまでと同様に自己資金で賄うことを原則としてまいりますが、中長期における資金需要並びに金利動向等を注視したうえで必要に応じて機動的に金融機関からの借入やエクイティファイナンスによる資金調達を行い、財務の健全性を維持する方針であります。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 [事業の状況] 3 [事業等のリスク] 」に記載のとおりであります。
⑥経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 [事業の状況] 1 [経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] 」に記載のとおりであります。
⑦中長期的な経営戦略
中長期的な経営戦略につきましては、「第2 [事業の状況] 1 [経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] 」に記載のとおりであります。
(注)1. EPARKサービスの薬局分野である当社メディア事業において、EPARK会員という数千万人のユーザー基盤を活用できるという大きなメリットがある他、それら会員情報に係るセキュリティを確保しつつ事業推進していくために必要不可欠な契約です。当社は、同契約に則り、EPARKサービスの展開に必要なブランド、プラットフォームシステム等の使用料、ロイヤリティを支払っております。
2. グローバル・エイチ株式会社は調剤薬局の運営等を行うI&H株式会社との合弁会社であり、当社単独の信用力では難しい医薬品卸事業者との価格交渉を担っていることから、当社が「みんなの共同仕入れサービス」を展開するにあたり必要不可欠な契約です。当社は、同契約に則り、「みんなの共同仕入れサービス」を通じて得られた収益の分配額を支払っております。
該当事項はありません。