(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」を使命として定め、長期スパンで沿線・地域の発展に貢献してまいりました。今般新しい経営ビジョンを経営の意思として、名鉄グループが提供したい価値・変革の方向を示すものと定義し、「私たちは、信頼の源泉となる『安全』を基盤として、『驚き』から『感動』、そして『憧れ』につながる名鉄グループならではの価値を提供し続けます」といたしました。
この経営ビジョンには、これからも、最優先である「安全」を確保し、お客さまに「安心」していただけるサービス・商品の提供に努めていく、そして築いてきた「信頼のトップブランド」をさらに磨き上げ、新しいことにも挑戦し、「名鉄、すごいね!」と思っていただけるような価値を提供し続ける、そんな企業集団に変わっていくという決意を込めております。
(2) 目標とする経営指標・中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
当社グループでは、コロナ禍を経て、ライフスタイル、企業行動、社会情勢の変化が加速していることに加え、人口減少社会、少子高齢化が確実に進展していく中においても、使命・経営ビジョンを実現し、当社グループが持続的に成長し、企業価値の向上を実現していくため、中長期的に名鉄グループが目指していく方向性やその戦略として「名鉄グループの2040年のありたい姿」及び5つの重点テーマからなる「名鉄グループ中長期経営戦略」を策定いたしました。また、名鉄グループ中長期経営戦略に基づき、2024年度を初年度とする3ヵ年を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置付けた「名鉄グループ中期経営計画」(2024年度~2026年度)を策定いたしました。
■名鉄グループの2040年のありたい姿
「地域」を創る、「社会」を支える、そして「まち」を彩る
~リーディングカンパニー~
■名鉄グループ中長期経営戦略
―魅力ある地域づくり・まちづくり
「リニア中央新幹線開業」、「セントレア滑走路増設」を千載一遇の機会と捉え、沿線・地域に国内外から人を呼び込むため、都市としての名古屋の魅力を高めグループ成長の起爆剤ともなる「名鉄名古屋駅地区再開発」をはじめ、観光活性化や定住促進につながる魅力ある地域づくり・まちづくりを地域とともに推進する。
―公共交通を中心とするモビリティネットワークの実現
人口減少・少子高齢化時代に対応したコンパクト・プラス・ネットワーク型の地域構造や持続可能な社会を築くことに貢献するため、名鉄名古屋駅をはじめとする交通拠点整備や、エリア版MaaSの進化・展開などを通じて、公共交通を中心とするモビリティネットワークを実現する。
―稼ぐ力の強化・構造改革の推進
需要に応じた構造改革を継続的に推進するとともに、成長市場に向けた事業展開、競争優位となる戦略構築、提供商品・サービスの高付加価値化、当社グループのブランドアップに注力し、グループ全体の収益力の向上を図る。
―攻守両立による経営の強靭化
資本コストや資本収益性、ならびに財務健全性を意識したうえで、将来の成長に資する設備投資や人的資本への投資、事業ポートフォリオの見直し等の取組みを推進することにより、適切な経営資源の配分を行い、経営の強靭化を図る。
―人的資本の充実
中長期経営戦略を実現するための源泉は「人財」であり、人財投資による当社グループで働く人々のウェルビーイング向上を通じて、人財の確保・育成など人的資本の充実を図る。
■名鉄グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)
基本方針
沿線・地域に国内外から人を呼び込む起爆剤となる「名鉄名古屋駅地区再開発計画」を推進し、2030年代以降も名鉄グループが持続的な成長を実現していくために、本中計策定期間を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置付け、今後の成長に向けた基盤の構築に引き続き取組むとともに、収益力の早期回復・強化を図る。
なお、重視する経営指標としては、「営業利益」、「純有利子負債(※)/EBITDA倍率」、「ROE(純利益/自己資本)」を定めております。それぞれの重視する経営指標の中長期的な目標につきましては、2024年度に事業の方向性を判断することとしている「名鉄名古屋駅地区再開発計画」の公表と合わせ、開示することとしたいと考えております。
※純有利子負債:有利子負債-現預金・短期有価証券
当社グループは、2021年9月に「名鉄グループ サステナビリティ基本方針」を策定し、持続可能な社会の実現を目指していくことを宣言いたしました。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
■「名鉄グループ サステナビリティ基本方針」
―私たち名鉄グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という使命のもと、地域を活性化し、 また社会を支える事業活動を通じて、持続可能な社会の実現を目指します。
(1) サステナビリティ全般に関する取組
(ガバナンス)
当社は、2021年7月に当社グループのサステナビリティに関する取組みを包括的に推進する機関として、「ESG推進委員会」を設立いたしました。本委員会は、当社の代表取締役社長を委員長とし、委員である総括役員及びESGに関係する部署の担当役員、オブザーバーである常勤監査役により構成されております。本委員会では、グループ全体のサステナビリティに関する取組みを検討、推進するとともに、必要に応じて取締役会へ上程・報告を行っております。一方、取締役会はESG推進委員会を監督しており、サステナビリティに関する取組み全般におけるガバナンス体制を構築しております。

2023年度におけるESG推進委員会の活動状況は以下のとおりです。
(リスク管理)
当社グループでは、持続可能な社会の実現につながる取組みを推進するにあたり、2022年4月に名鉄グループのサステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。
① 重要課題(マテリアリティ)特定のプロセス
社内外からみた名鉄グループに関連のある社会課題を洗い出し、その中から重要度の高いものを選定し、重要課題(マテリアリティ)を特定しました。

② 重要課題(マテリアリティ)
上記のプロセスを経て5つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、持続可能な社会の実現につながる取組みを推進していきます。また、それぞれの重要課題(マテリアリティ)にKPIを設定し、定期的にESG推進委員会にて確認、取締役会へ報告することでリスク評価・管理を実施しております。
1. 環境保全への貢献
当社グループでは、持続可能な社会の実現を目指して、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたCO2排出量削減の取組みをはじめ、「環境保全への貢献」に取組んでまいります。
2. 安全・安心の確保
安全の確保は、多様な交通サービスを有する当社グループにおいて何よりも優先すべき社会的な責任であると考え、お客さまに安心してご利用いただけるよう「安全・安心の確保」に取組んでまいります。
3. 地域価値の向上
当社グループは、地域社会の発展とグループの発展は不可分であるとの認識のもと、「持続可能な社会の実現」に真摯に向き合い続けてきました。これからも、地域を活性化する事業や社会を支える事業を通じて、「地域価値の向上」に努め、永く社会に貢献してまいります。
4. 誰もが活躍できる職場づくり・人づくり
従業員は当社グループの持続的な成長に必要不可欠な財産です。個性や能力を発揮でき、心身共に健康で活き活きと働ける「誰もが活躍できる職場づくり・人づくり」に取組んでまいります。
5. ガバナンスとリスクマネジメントの強化
当社グループでは、コーポレートガバナンスの充実と的確なリスク管理を重要な経営課題の一つとして認識しています。適正な組織体制を整備し、経営の健全性や透明性、効率性の確保と充実に努めることにより、「ガバナンスとリスクマネジメントの強化」に取組んでまいります。
(2) 気候変動への対応
当社グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という使命のもと、地域を活性化し、また社会を支える事業活動を通じて、持続可能な社会の実現を目指しており、中でも名鉄グループのサステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)の1つとして「環境保全への貢献」を位置付けております。
2022年4月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFDという。)」提言への賛同を表明しており、今後、TCFD提言に基づく情報開示を進め、気候変動への対応をはじめとした環境保全への貢献に取組んでまいります。
(ガバナンス・リスク管理)
「(1) サステナビリティ全般に関する取組」に記載しております。
(戦略)
① シナリオ分析における大枠(世界観)の設定
産業革命前からの世界の平均気温上昇が2℃を十分に下回る場合(2℃シナリオ)と成り行きの4℃の場合(4℃シナリオ)を想定し、国際機関が想定している情報を基に世界観を設定しました。
[想定する世界観]
(注)IEA International Energy Agency(国際エネルギー機関)
WEO2021 World Energy Outlook 2021(世界のエネルギー見通し2021)
IPCC Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)
SDS Sustainable Development Scenario (持続可能な開発シナリオ)
STEPS Stated Policies Scenario (公表政策を基にしたシナリオ)
RCP Representative Concentration Pathways (代表濃度経路シナリオ)
② 気候変動リスク・機会による事業影響評価
当社グループの交通、運送、不動産、レジャー・サービス、流通、航空関連サービス、その他の各セグメントを対象とし、TCFDの枠組みに基づいて当社グループ事業に影響のあるリスク・機会項目を抽出しました。抽出したリスク・機会項目に対して、ESG推進委員会にて重要度を審議し、重要度の高いリスク5項目、機会5項目を選定するとともに、2℃、4℃シナリオに基づき影響度を評価しました。このうちリスク項目については、各シナリオに基づいて財務への概算影響額を試算しました。気候変動による影響を分析した結果、2℃シナリオにおいては、炭素税の導入による大幅なコスト増加が見込まれる一方、CO2排出量の少ない交通手段の需要増やMaaSの拡大、DX推進などにより、収益機会の増加や業務効率向上によるコスト低減を期待できることが分かりました。
また、4℃シナリオにおいては、燃料費の高騰によるコスト増加による影響を大きく受けることに加え、保有資産の洪水被害による損壊額の増加や風水害による鉄道営業停止に伴う収益減少のリスクが増大することが分かりました。
当社グループが長期にわたり安定的な経営を続け、持続可能な社会の実現に貢献するために、連結会社を対象にインターナルカーボンプライシング制度を導入し、各社の省エネ設備投資を促進するための体制を構築しました(2024年4月以降の設備投資を対象とする)。省エネ設備投資等を漸次進めて、化石燃料の使用量を順次減らしていくことなど、気温上昇が2℃を十分に下回る世界の実現に向けた取組みを進めてまいります。
[事業影響評価]
(指標及び目標)
当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度のCO2排出量(Scope1+2)について、連結会社全体では2020年度比25%削減、名古屋鉄道の鉄軌道事業においては2013年度比46%削減を目標に掲げています。
当社グループは、省エネ設備投資や再生可能エネルギーの活用等のCO2排出量削減に向けた取組みを進めることによって、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
[カーボンニュートラル目標]
(今後対応を検討する項目)
気候変動への対応を含めたサステナビリティ活動の品質向上を引き続き目指してまいります。具体的項目としては、上記のとおり開示をしているCO2排出量(Scope1+2)に加え、サプライチェーンにおける排出量であるCO2排出量(Scope3)についても、算定・開示を進めてまいります。また、CO2排出量(Scope1+2)につきましては、データの客観性・正確性を確保するため、第三者による検証(第三者保証)の取得を進めてまいります。
(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
(戦略)
当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。
■「名鉄グループ人財育成・社内環境整備方針」
―当社グループは、大きく変化する社会の中においても「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」企業グループであり続けるため、多様な人財の活躍の実現を目指し、従業員の採用・能力開発・専門性向上に取組んでまいります。また、心身ともに健康にその能力を最大限に発揮し、自律・挑戦できる環境を整えてまいります。
また、中長期経営戦略の重点テーマの一つとして「人的資本の充実」を掲げ、人財投資による当社グループで働く人々のウェルビーイング向上を通じて、人財の確保・育成など人的資本の充実を図るとともに、中長期経営戦略と連動する形で、以下の人事ビジョン・人事戦略を推進してまいります。
■人事ビジョン
―「あなたらしく、そしてその先へ」
・「あなた」は、グループ従業員として、「従業員個人らしく」(自己実現・あなたらしい生き方)
・「その先」は、グループ従業員として、「従業員個人の前進」 (自己成長・ひと回り大きくなる)
⇒名鉄グループ人財の「ありたい姿」を表現
■人事戦略
―「人財投資を通じた『人財力』の向上」
・人財投資に積極的に取組み、「人財力※」を向上させることで、名鉄グループの使命に共感する多様な人財が、個々の持てる能力を存分に発揮して新しい価値を創造し、中長期経営戦略ひいては経営ビジョンの実現につなげていく
(※)人財力の3要素 ⇒「挑戦・創意工夫」「成長・能力発揮」「DE&I」
・待遇改善、職場環境改善、福利厚生、採用などの人に関わる支出を「人財投資」と定義し、グループ内で意義や目的を共有することで、積極的な「人への投資」につなげるとともに、人財投資の計画的・戦略的な推進と、中長期の人事施策立案・実行につなげていく
(参考)人事戦略推進のイメージ

(指標及び目標)
当社グループでは、上記 (戦略)に関する指標として、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(注)1 当社においては、上記指標のデータ管理及び具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属するすべての会社では行われていないため、連結会社ベースの記載は困難であります。従って上記の指標に関する目標及び実績は、従業員エンゲージメントを除き、当社及び主要な連結子会社(「4 関係会社の状況」に記載する連結子会社38社)を対象にしております。
2 育児休業取得状況の2023年度実績につきまして、男性は48.6%、女性は100.0%であります。
3 従業員エンゲージメントは、外部の調査専門会社が提供するエンゲージメント調査サービスにおける評価指標で、当社単体の社員(鉄道現業部門及び本社部門)を対象とした調査結果を点数化したものであります。
当社グループ各社の事業に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のとおりであります。当社グループは、「名鉄グループリスク管理運用規則」に基づき、当社社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、原則として年1回、グループ全体のリスク管理の状況を把握するとともに、事態の発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。
リスク把握の具体的な方法としては、リスクの棚卸調査を定期的に実施し、グループ会社ごとに想定されるリスクを網羅的に洗い出し、影響度及び発生頻度の2つの観点から評価を行い、リスクマップを作成しております。加えて、グループ各社の調査結果を集約し、グループ全体のリスクマップを作成したうえで、優先的に対処すべきリスクについて、リスク管理委員会で協議しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判明したものであります。また、これらのリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1) 自然災害・感染症のリスク
鉄軌道事業、不動産事業など多種多様な事業を展開する当社グループは、多くの設備等を保有しております。耐震補強工事の実施等により被害の軽減対策に努めるほか、大規模災害を想定した事業継続計画(BCP)を策定するなど事前対策に取組んでおりますが、南海トラフにおける巨大地震の発生等により施設や設備等に大きな被害が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、感染症のリスクについては、新型インフルエンザ等の感染症が大規模に流行した場合や、新型コロナウイルス感染症の感染が再拡大した場合、交通事業、レジャー・サービス事業、流通事業を中心に、幅広いセグメントで影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、鉄軌道・バス等の交通事業、トラック等の運送事業を営んでおり、常に輸送の安全の確保に取組んでおりますが、人為的なミスや不慮の事故等により重大な事故が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このほか、テロ等不法行為、火災などの事故によって、当社グループの施設・設備等への被害が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、流通事業及びレジャー・サービス事業において、当社グループが販売する商品の品質及び食品の安全性に関わる信用毀損が発生した場合、減収等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主要な事業である交通事業及び運送事業では、大量の電力を消費するほか、営業用車両及び船舶の燃料として軽油等を使用しております。これらの価格やその他原材料費等が大きく上昇した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、交通事業・運送事業・不動産事業等において、鉄道事業法、道路運送法、建築基準法等の関連法令等を遵守して事業運営を行っておりますが、安全・バリアフリー化をはじめ、各種法的規制が強化された場合や新たな法的規制が追加された場合には、これらの規制を遵守するために費用が増加する可能性があるほか、一方で規制が緩和された場合には、それぞれの事業で他企業との競争が激化することにより、グループが展開する各事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、鉄軌道事業をはじめとする各種事業において、継続的に設備投資を行っており、借入金や社債等により資金を調達しています。市場金利が上昇した場合や格付け機関による当社格付が引き下げられた場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、不動産や株式などの固定資産及び棚卸資産を多く保有しております。これらの時価が著しく下落した場合、減損損失または評価損等の計上により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、中部圏を基盤に交通事業を中心とした各種サービス事業を展開しております。同地域の経済状況、消費動向及び人口動態の変化、他事業者との競合等、これらの経営環境の悪化が今後当社グループの見込みを上回るペースになった場合、グループの収益性低下の要因となるなど、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、交通事業を中心とした各種サービス事業を展開しており、事業運営に必要な人材の確保・育成、働きやすい職場環境や健全な労働環境の維持に努めておりますが、これを達成できない場合、グループ各事業の運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、鉄軌道事業やバス事業におけるICカード発行等、また百貨店業、ホテル業及び情報処理業などの各種事業において個人情報を保有しております。こうした個人情報は、情報セキュリティポリシーや個人情報保護規則、特定個人情報取扱規則を制定して情報管理体制を整備して厳重に管理しておりますが、万一漏洩した場合、社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償による費用の発生等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、各種事業において多くの情報システムを使用しており、様々な業務分野で重要な役割を果たしております。これらの情報システムが、自然災害、人的ミス、コンピュータウィルス、サイバーテロなどにより故障・停止等した場合、事業運営に支障をきたすおそれがあるほか、システムの復旧等に係る費用の発生や営業収益の減少などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、交通事業を中心とした各種事業を展開していますが、各事業における関連法令等を遵守し、企業倫理に従って事業運営を行っております。また、「名鉄グループ企業倫理基本方針」に基づき、コンプライアンス遵守に関する教育を定期的に実施するなどの啓発活動に努めておりますが、役職員等による重大な不正・不法行為、不祥事等が発生した場合、当社グループの社会的信用が低下するとともに、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化が進んだことなどにより、緩やかな回復の動きが見られました。一方、海外景気の下振れ懸念のほか、物価上昇等の要因により個人消費等が力強さを欠くなど、先行きは不透明な状況が続いています。
このような状況のもと、当社グループでは、安全を最優先にした事業運営の継続と収支改善等に努めるとともに、当期を最終年度とする名鉄グループ中期経営計画「Turn-Over 2023 ~反転攻勢に向けて~」に基づく諸施策を推進しました。その結果、営業収益は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴うレジャー・サービス事業の需要回復や交通事業の鉄軌道輸送人員の増加などにより601,121百万円(前期比9.0%増)となりました。営業利益は、商製品売上原価や人件費が増加したものの、増収により34,750百万円(前期比52.9%増)となりました。経常利益は、営業外損益は悪化したものの、営業増益により37,544百万円(前期比42.4%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、助成金返還損を計上したことなどにより特別損益が悪化したものの、経常増益により24,400百万円(前期比29.4%増)となりました。
セグメント別の主な取組み及び経営成績は、次のとおりであります。
(交通事業)
〔主な取組み〕
鉄軌道・バス・タクシーの各事業においては、今後も事業継続に不可欠な投資を継続的に行っていく必要性等を勘案し、当社をはじめ多くの会社で運賃等の改定を実施しました。
鉄軌道事業では、当社は、東海市の要請に基づき、河和線高横須賀駅と南加木屋駅の間に加木屋中ノ池駅を開業し、地域住民の利便性向上や交通円滑化を図りました。このほか、安全対策推進のため、都市計画事業の一環として高架化工事を4ヵ所で進め、知立駅付近の工事では、三河知立駅の豊田市駅方面への移設が完了しました。
また、輸送面では、利便性の向上や輸送体制の効率化を目的にダイヤ改正を行い、営業施策面では、鉄道利用促進や沿線地域の活性化に向け、企画乗車券の発売や沿線自治体等と連携したイベント・キャンペーンを実施しました。
さらに、キャッシュレス・チケットレス改札の取組みとして、当社の一部駅では、エリア版MaaSアプリ「CentX(セントエックス)」等で購入したデジタルチケットのQRコードやクレジットカード等のタッチ決済を活用した改札通過の実証実験を開始するなど、新たな技術の活用にも取組みました。
バス事業では、名鉄バス㈱は、北陸新幹線の延伸に伴う直通需要の増加を取り込むため、高速バス「名古屋-福井線」の増便を実施しました。
〔経営成績〕
交通事業の営業収益は、鉄軌道事業やバス事業における輸送人員の増加などにより146,582百万円(前期比10.6%増)となり、営業利益は、人件費や修繕費の増加があったものの、タクシー事業が黒字化するなど、増収により12,980百万円(前期比181.3%増)となりました。
(業種別営業成績表)
※バス事業の営業利益増減率(%)は、増加率が1,000%以上のため表記しておりません。
(提出会社の運輸営業成績表)
鉄軌道事業
2 鉄道と軌道との乗車人員は重複しておりません。
〔主な取組み〕
トラック事業では、名鉄運輸㈱は、様々な輸送ニーズに応える複合拠点として、同社最大規模のトラックターミナルと倉庫を一体化した総合物流施設「名鉄トラックターミナル中部」を江南市に開設しました。
また、名鉄運輸㈱は、資本業務提携先である日本通運㈱と、輸送ネットワーク共同化の拡充など経営資源の相互活用をより深化させ、特別積合せ運送事業(※)の拡大及び強靭化を図るため、同社の当該事業及び子会社であるNXトランスポート㈱の統合を決定しました。
(※)不特定多数の荷主の貨物をまとめて積載し、全国規模のネットワークで運ぶ運送形態
〔経営成績〕
運送事業の営業収益は、トラック事業における運賃単価の上昇に加え、海運事業の増収もあり138,308百万円(前期比1.0%増)となりました。一方、営業利益は、人件費や燃料費の増加により1,792百万円(前期比47.3%減)となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
不動産賃貸業では、当社は、名古屋市熱田区にデータセンターを竣工し、新たに賃貸を開始したほか、神宮前駅・東岡崎駅での商業施設の建設など、沿線拠点駅での開発を進めました。また、名鉄都市開発㈱では、名古屋市内を中心に賃貸物件を積極的に取得し、収益力の強化に努めました。
不動産分譲業では、名鉄都市開発㈱は、「エムズシティ鳴子プレディア(Ⅱ工区)」や「メイツ新川崎」(神奈川県)の販売を行うなど、積極的な営業活動に努めたほか、同社分譲マンションの最上位ブランドとなる「FUDE(フューデ)」を発表し、第一号物件「橦木町レジデンス ザ・フューデ」の開発を進めました。
〔経営成績〕
不動産事業の営業収益は、不動産分譲業で高価格帯のマンション販売が寄与したことに加え、不動産賃貸業の増収もあり107,906百万円(前期比11.6%増)となり、営業利益は、増収により15,967百万円(前期比15.5%増)となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
ホテル業では、関東・関西地区を中心とするインバウンドの増加等をうけ、各ホテルにおいて、適切な価格設定と需要の取り込みにより、収益力の向上に努めました。
観光施設事業では、㈱名鉄インプレスは、「日本モンキーパーク」に、当社グループ各社の乗り物体験コンテンツを取り揃えたアトラクション施設『名鉄グループのりもの館「モンキーパーク駅」』を開業するなど、施設の魅力向上を図りました。
〔経営成績〕
レジャー・サービス事業の営業収益は、観光需要の回復により98,772百万円(前期比21.9%増)となり、営業損益は、ホテル業が黒字化するなど、増収により前期に比べ3,046百万円収支改善し2,671百万円の利益となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
雑貨店運営会社の㈱オンセブンデイズは、駅ナカ初出店となる新店舗「オンセブンデイズ ミュープラット金山店」をオープンするなど、積極的な営業活動に努めました。
なお、長らくご愛顧いただきました「名鉄百貨店 一宮店」は、2024年1月31日をもって閉店しました。
〔経営成績〕
流通事業の営業収益は、百貨店業の増収に加え、その他物品販売業で前期に連結加入した㈱オンセブンデイズの収入が通期で寄与し66,676百万円(前期比0.6%増)となりました。一方、営業損失は、輸入車販売業の収支悪化などにより前期に比べ221百万円収支悪化し2,697百万円となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
中日本航空㈱は、国内最多となる14ヵ所でのドクターヘリの運航経験を活かし、愛知県で2機目となるドクターヘリの運航を藤田医科大学病院から受託するなど、収益力の強化に努めました。
〔経営成績〕
航空関連サービス事業の営業収益は、機内食事業や航空整備事業の受注増加により26,278百万円(前期比2.7%増)となりました。一方、営業利益は、業務委託料や人件費の増加などにより1,087百万円(前期比19.2%減)となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
当社は、地域の多様な建築ニーズに機動的に対応し、より強固なまちづくりを推進する体制を構築するため、東海地区で建築業を営む「六合㈱」及び「㈱六旺エステート」を子会社化しました。
〔経営成績〕
その他の事業の営業収益は、設備工事やシステム関連の受注増加などにより56,383百万円(前期比12.6%増)となり、営業利益は、増収により3,299百万円(前期比25.9%増)となりました。
(業種別営業成績表)
<財政状態>
当期末における総資産は、設備投資等による有形固定資産の増加や、保有上場株式の時価上昇による投資有価証券の増加などにより、前期末に比べ71,826百万円増加し1,303,205百万円となりました。
負債は、鉄道高架化工事等に関する工事負担金の前受金や有利子負債の増加などにより、前期末に比べ37,383百万円増加し839,672百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前期末に比べ34,443百万円増加し463,532百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ5,145百万円増加し、60,025百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の増減額の減少などにより、前期に比べ5,683百万円減少し55,533百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出が増加したことなどにより、9,057百万円減少し△68,430百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入が増加したことなどにより、15,425百万円増加し18,034百万円となりました。
当社グループの事業は、交通事業のほか運送事業、不動産事業、流通事業等の広範囲かつ多種多様なサービス業が主体であり、また受注生産形態をとらない事業がほとんどでありますので、セグメントごとに網羅的に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて記載しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、事業の特性上、多額の固定資産を保有しており、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得や税務計画を合理的に見積っております。従って、将来の課税所得の見積額や税務計画が変更された場合には、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。
(退職給付債務及び費用の計算)
当社グループは、従業員退職給付債務及び費用の計算について、割引率や年金資産の期待運用収益率等の前提条件に基づき行っております。従って、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付債務及び退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(財政状態の分析)
(経営成績の分析)
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金については、社債及び長期借入金での調達を基本としております。また、当社グループにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
なお、重要な設備投資の計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載しております。
(経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは、2021年度を初年度とする3ヵ年計画、グループ中期経営計画「Turn-Over2023 ~反転攻勢に向けて~」の中で、最終年度である2023年度の連結経営数値目標として、「営業利益350億円」を設定し、取組んでまいりました。また、参考指標として、「ROE(純利益/自己資本)」、「ROA(営業利益/総資産)」、「純有利子負債/EBITDA倍率」及び「株主資本比率」も設定しております。
当連結会計年度における各指標は、以下のとおりであります。
(注)※EBITDA:営業利益+減価償却費
純有利子負債:有利子負債-現預金・短期有価証券
同計画期間を「事業構造改革・成長基盤構築期」と位置づけ、事業構造改革においては、拠点数や人員の適正化、業務の効率化・省人化、バス、タクシー事業の再編などに加え、各交通モードの運賃改定を実施するなどの取組みを進め、所期の想定を上回る成果を上げました。成長基盤構築においては、不動産事業の組織再編、事業強化、名鉄運輸㈱の株式非公開化や日本通運㈱との特別積合せ運送事業の統合の決定、㈱オンセブンデイズの子会社化のほか、エリア版MaaSアプリ「CentX」のサービスインなど精力的な取組みを進めました。
同計画の最終年度である当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い交通事業やレジャー・サービス事業において需要の回復が見られたことや、不動産事業においてマンション販売が好調に推移したことから、営業利益は2期連続の増益となりました。当初想定からは燃料費の高騰や、従業員の処遇改善等の人財投資などによる費用増はあったものの、不動産事業における分譲事業及び賃貸事業の増益や、想定より需要が回復したレジャー・サービス事業が増益に寄与し、同計画で掲げた目標値については、概ね達成いたしました。
なお、新たに定めた名鉄グループ経営ビジョン、2040年のありたい姿、中長期経営戦略の実現に向けた足元の3ヵ年計画として2024年度を初年度とする名鉄グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)を策定しましたが、同計画では計画期間の3ヵ年を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置づけ、中長期経営戦略に基づいて、今後の成長に向けた基盤の構築に引き続き取組むとともに、収益力の早期回復・強化を図ってまいります。また、数値目標につきましては、2024年度に事業の方向性を判断することとしている「名鉄名古屋駅地区再開発計画」の公表と合わせ、重視する経営指標の中長期的な目標、株主還元方針を含むキャッシュ・フロー配分方針について開示することとしたいと考えております。
当社の連結子会社である名鉄運輸株式会社は、2024年2月14日開催の取締役会において、NXトランスポート株式会社の株式を取得することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。なお、2024年4月1日付で株式を取得しております。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。
当社は、2024年5月24日開催の取締役会において、トーセイ株式会社の株式を取得することを決議し、同日付でトーセイ株式会社代表取締役社長である山口誠一郎氏との間で株式譲渡契約を締結いたしました。なお、2024年5月30日付で株式を取得しております。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。
特記すべき事項はありません。