第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

今後の世界経済は、世界的な金融引締め、中国における不動産市場の停滞に伴う影響や、地政学的リスクが懸念されるものの、持ち直しが続くことが期待されます。またわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。

こうした経済情勢にあって、当社グループを取り巻く事業環境は、物流業界においては、トラック輸送能力の不足、海上運賃単価の低迷や人手不足等を背景としたコストの増加、また、不動産業界においては、賃貸オフィスビル需給の緩みが懸念されます。

当社グループは2030年に目指す姿として「MLC2030ビジョン」を掲げ、「お客様の価値向上に貢献する」を第一に、お客様のパートナーとして調達から流通・販売までのサプライチェーンを一貫で担うロジスティクス企業として、国内外のお客様から選ばれ続ける企業グループとなることを目指しています。引き続き「MLC2030ビジョン」実現に向けた第2ステージとなる経営計画[2022-2024]に掲げる基本戦略を着実に実行することにより、持続的な成長を図ります。

具体的には、

(1) 「医療・ヘルスケア」「食品・飲料」「機械・電機」のほか、経営計画[2022-2024]において、2030年に向けて市場拡大が見込まれることから追加した「新素材」を重点分野として、お客様起点のサポート体制を確立し、お客様のパートナーとしてサプライチェーン全体の課題に対応することにより、事業領域及びシェアの拡大を図ります。

(2) 海外においては、東南アジア(ASEAN)等において増加が見込まれる高品質なコールドチェーン需要を狙い、「医療・ヘルスケア」「食品・飲料」分野におけるお客様のサプライチェーンのサポート体制拡充とフォワーディング事業の強化を進めます

(3) 港運事業においては、世界トップレベルの評価を受ける荷役能率等を武器に競争力を更に高めていくことにより、また、不動産事業においては、複合施設等の開発と運営力強化により、安定した利益を確保します

(4) 全事業の業務プロセスを見直すとともに、IoT、AI、ロボット等の新技術を活用した効率的なオペレーションにより、サービス品質及び生産性の向上を実現します

(5) 当社・グループ会社一体となった組織運営によるコスト競争力強化と重点分野等の人材確保・育成による成長を目指します

「MLC2030ビジョン」実現に向けた第2ステージとなる経営計画[2022-2024]では、次の5つの基本方針を定めており、グループ全体で施策を推進し、目標として掲げた営業利益200億円及びROE (自己資本利益率)7%の確保に向けて取り組みます

(1) 物流事業の収益力強化

(2) 海外事業の成長基盤拡大

(3) 開発力強化による不動産事業の拡充

(4) 先端技術の活用による高付加価値サービスの開発

(5) グループ経営基盤の強化

これにより、強固な収益基盤と適正な財務基盤のもと、株主還元の一層の充実を図り、資本効率を高め、さらなる企業価値の向上に取り組んでまいります。

さらに、ESG(環境、社会、ガバナンス)経営と国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)対応に向けた取組みを推進するために6つの重要テーマ(①安全・安心、災害対応、②環境対応、③先端技術、イノベーション、④パートナーシップ、⑤人材育成・社員満足度向上、⑥コンプライアンス、人権・ジェンダー)を定め、各テーマにおける施策・評価指標・目標値を設定し、MLC2030ビジョンと同じく2030年度に達成することを目指しています。目標を確実に達成するため、経営計画[2022-2024]に各テーマにおける主な取組みを掲げるとともに、サステナビリティ委員会を中心に、進捗管理、施策・評価指標・目標値の定期的な検証と入れ替え、統合報告書やホームページ等を通じた社内外の皆さまとのコミュニケーションの拡充等、質の高い取組みを進めてまいります

物流、不動産という社会基盤を担う当社グループの事業は、まさにSDGsの精神である「持続可能な」社会づくりに貢献するものであり、当社グループは、環境対応等、社会課題の解決に取り組む中で事業の成長機会を見出し、グループの持続的な成長を目指します

  なお、当社グループは中期経営計画[2022-2024]における最終年度の業績目標として、営業収益2,600億円、営業利益200億円、ROE7%を掲げております。

また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

当社グループは、「誠実かつ公正な企業活動を通じ、適正な利潤の確保と会社の安定した成長を図り、ステークホルダーの皆さまに報いるとともに、豊かで持続可能な社会の実現に貢献する」を企業理念として、創業から130年以上、国内外にわたり、倉庫事業を中心とした物流事業と、所有地を活用したビル賃貸を中心とした不動産事業を営んできました。

2014年5月には、国連が提唱するCSR(企業の社会的責任)の普遍的原則である「国連グローバル・コンパクト」に賛同し、支持表明しました。事業活動において、人権、労働、環境、腐敗防止に関する国際的に認められた規範を遵守し、社会的責任を果たしていくことが、豊かで持続可能な社会の実現につながると考えており、具体的な取組みを推進してきました。

2021年4月には、 ESG経営/SDGs対応に向けた取組みの推進にあたり、企業理念、MLC2030ビジョン、経営計画の基本方針並びにこれまでのCSR活動の取組み等を踏まえ、6つの重要テーマ(マテリアリティ)を定めて、各テーマにおける施策、評価指標並びに目標値を取りまとめました。また、2022年3月25日に公表した経営計画[2022-2024]においても当社グループが取り組むべき主要な課題と位置づけ、取組みを推進しています。

当社グループは、環境対応等、社会課題の解決に取組むなかで事業の成長機会を見出し、グループの持続的な成長を目指します。 

 

(2) ガバナンス

2021年7月に、サステナビリティ委員会を設置し、ESG経営/SDGs対応に向けた取組みに関する施策・目標値の検討、進捗管理や審議を行ってきましたが、2022年7月にはサステナビリティに関する推進体制強化を目的として、戦略会議と連絡会議を設けています。

社長を委員長とし取締役会長及び常務執行役員以上の役付執行役員が参加する戦略会議は、年1回以上開催しています。サステナビリティ課題の設定・見直しや、6つの重要テーマ(マテリアリティ)に係る施策・目標値見直しの審議、重要課題の審議等を行っています。サステナビリティ委員会の活動状況を含め、ESG経営/SDGs対応に向けた取組みに関する事項については、戦略会議での審議内容も踏まえて、取締役会や常務会に年1回以上報告し、適切な監督が図られるよう体制を整えています。

サステナビリティ推進担当常務執行役員が主宰し、部室店長で構成される連絡会議は、年1回以上開催しています。戦略会議での審議・検討内容の共有及びサステナビリティ課題に関する施策や目標に対するモニタリングを行っています。 

 

(3) リスク管理

サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会連絡会議の構成員である各部室店長や分科会を通じてサステナビリティ委員会戦略会議に報告されています。戦略会議では、報告されたリスクを評価した上で、リスクへの適応や緩和に向けた対応策の審議・検討を行います。戦略会議において審議・検討された内容は、年1回以上取締役会や常務会に報告され、報告を受けた取締役会や常務会は、リスク管理に関する審議・監督を行っています。

 



 

(4)戦略、指標及び目標

 当社グループは、6つの重要テーマ(マテリアリティ)を定めています。各テーマにおける優先課題と事業活動を通じた施策を戦略として、取組みを推進しています。 指標及び目標値は以下のとおり設定しています。


これらの取組みを通じて社会課題を解決し、環境負荷の低減、地球温暖化の防止等、豊かで持続可能な社会の実現に貢献することにより、企業の価値創造と成長を目指します。

 

(5)気候変動対応

 2023年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく開示を行い、次のとおり取り組んでいます。

 

 ①ガバナンス

  サステナビリティ委員会が気候変動に関する事項を含むサステナビリティ課題について年1回以上取締役会に対して報告を行っています。取締役会は、その取組みや目標の管理に関する議論等を通じ、サステナビリティ課題に対する監督を行っています。また、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標の策定や経営戦略等における重要な気候変動に関する事項についても取締役会において決定しています。

  また、社長が主宰し、取締役会長及び常務執行役員以上の役付執行役員で構成され、 経営に関する重要事項を協議する常務会においても、サステナビリティ委員会から気候 変動に関する事項を含むサステナビリティ課題に関して適宜報告を受けており、その取組みや目標の管理について協議の上、各常務役員が関係部門に対して指示・監督を行っています。

 

 ②リスク管理

  気候変動に関するリスクは、サステナビリティ委員会連絡会議の構成員である各部室店長や分科会を通じてサステナビリティ委員会戦略会議に報告されています。戦略会議では、報告されたリスクを評価した上で、気候変動に関する事項を含むサステナビリティ課題の設定・見直しや、施策・目標等への反映などを通じ、リスクへの適応や緩和に向けた対応策の審議・ 検討を行います。気候変動に関するリスクについて戦略会議において審議・検討された内容は、他の審議事項と合わせて年 1 回以上取締役会や常務会に報告され、報告を受けた取締役会や常務会は、リスク管理に関する審議・監督を行っています。

  また、戦略会議へ報告されたリスクについては、全社的なリスクの洗い出しや分析、対応の検討等のリスク管理を所管する危機管理委員会(※)へ適宜共有され、急性リスクを中心に、気候変動に関するものを含め、全社的なリスク管理の観点からリスク対応や対策を審議・検討しています。

 (※)2024年5月に危機管理委員会をグループリスクマネジメント委員会に改編

 ③戦略

  1.5℃、4℃のシナリオにもとづき、短期・中期・長期における移行リスク(低炭素社会への移行に伴うリスク)、物理的リスク(地球温暖化の進行に伴う気候リスク)、機会を洗い出し、影響度を検討しました。主なリスク、機会についての緩和策、対応策は次のとおりです。

 

◆移行リスク

一例として、温室効果ガス(GHG)の排出量に応じた炭素税等の税金の影響や、それらガスの排出量を抑制するための設備投資・更新費用の増加の影響度が大きいとの結果でした。

緩和策として、物流事業では「災害に強いECO倉庫」の展開や環境に配慮した輸配送の提案、不動産事業では「災害に強い環境配慮型オフィスビル」の展開や再生可能エネルギーの導入等を行います。

◆物理的リスク

従業者等の熱中症等による労働生産性の低下や、それらを防止するための機器等の導入対策費の増加の影響度が大きいとの結果でした。

緩和策として、高効率な作業オペレーションの一層の推進や、作業負荷軽減を可能とする新技術の導入とともに、働き方の見直しを含めた働きやすい労働環境の提供に向けた取組みを推進します。

◆機会

低・脱炭素社会への移行にあたり、CO2排出量が少ないサービスや、気温上昇による温度管理輸配送のニーズが増加するほか、気候変動による激甚化した災害発生頻度が上がる状況下において、事業継続やサプライチェーンの維持を可能としたいニーズが増加することが、機会=チャンスにつながる影響度が大きいとの結果でした。

対応策として、今後もハード面では、「災害に強いECO倉庫」・「災害に強い環境配慮型オフィスビル」を積極的に展開することとし、ソフト面では、低環境負荷の物流提案や再生可能エネルギーの導入・供給を行います。これまでの災害対応等の経験をふまえ、施設修繕・風水害対策の計画的実施・強化等により施設の安全性を高め、災害時の代替ルート・取扱施設の選定等のノウハウを活かして強靭な物流サービスを提供することにより、様々な顧客ニーズに対応します。

 

 ④指標と目標

     当社グループでは、2023年9月に公表した「三菱倉庫グループ脱炭素社会の実現に向けたロードマップ」(以下ロードマップ)において、「三菱倉庫グループネットゼロ宣言」を掲げ、2050年度までにCO2排出量ネットゼロを目指しています。

     今後、ロードマップに示した重点分野の取組み施策を中心に、当社グループの事業及びサプライチェーンにおける脱炭素化を促進していきます。 

 

◆評価の指標


 

◆GHG排出実績

目標値の対象範囲におけるGHGのうち、CO2排出量の実績は次のとおりです。

 


 


 

(6) 人的資本

①戦略

◆人材育成方針

当社は、求める人材像(※)を定め、会社の発展、ひいては社会の発展に寄与する人材の育成に努めております。また、人材を、新たな発想や創造により高付加価値サービスを生み出し、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する資本と捉え、デジタルをはじめ、様々な分野で高付加価値をもたらす専門性の高い人材を育成する研修を実施する等、人的資本への投資の強化に努めます

当社グループが掲げる「三菱倉庫グループ ESG経営/SDGs対応に向けた取組みについて」における重要テーマである「人材育成・社員満足度向上」では、海外事業の拡大を見据え、「グローバルな視野を持った人材の育成」を優先課題として定めて取組みを行っております。

また、事業環境の変化に適切かつ柔軟に対応するためには、性別・国籍・入社形態等に関わらず、多様な人材が、管理職として組織の意思決定に参画することが重要であり、それぞれの個性と能力を最大限発揮できるよう育成に努めます。


(※)求める人材像

1. 信義を守り、誠実かつ公正に行動する。

2. 自律的に行動する。

3. 環境変化に対して柔軟に対応する。

4. 高い専門性を発揮し創造的に活動する。

5. チームワークを保ち周囲と協力する。

 

◆社内環境整備方針

当社は、社員の成長と仕事・家庭生活の充実を支援するとともに、それによって得られる会社の持続的な発展を通して、社員と会社がおたがいの価値を高め合うことを人事の基本理念としております。この理念を実現するために、様々な人事制度や教育制度によって社員の働きがいと働きやすさを向上させ、その個性と能力を最大限に発揮できる環境の整備に努めます。「三菱倉庫グループ ESG経営/SDGs対応に向けた取組みについて」における重要テーマである「人材育成・社員満足度向上」では、「個々人を大切にする人事・福利厚生制度」を優先課題として定め、多様な働き方に対応した人事制度の構築、次世代育成等のためのワーク・ライフ・バランスのさらなる充実、仕事と家庭の両立を後押しする環境づくりに努めます。

また、2022年度からは提出会社及び国内連結子会社を対象としたエンゲージメントサーベイを実施し、「若手社員の働きがい」及び「女性活躍推進」を優先課題として定めて取組みを行うことで、エンゲージメントの向上を図っております。
 

②指標及び目標

上記「戦略」において記載した、人材育成方針及び社内環境整備方針について、次の評価指標を用いております。当該評価指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

評価指標

2030年度目標値

実績

(当連結会計年度)

育児休業取得率

60

66%

海外勤務経験者比率(※1)

25

17.7%

女性管理職比率(※2)

10

4.7%

 

(※1)総合職における海外勤務(研修プログラムを含む)経験者

(※2)管理職に占める女性労働者の割合

(※3)評価指標及び目標値について、提出会社では、評価指標の管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。従いまして、評価指標の目標値及び実績は、提出会社におけるものとなります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境の変動

当社グループの主たる事業は、倉庫事業を中核とする物流事業並びにビル賃貸を中心とする不動産事業であり、計画的な設備投資や高度なサービスの提供により安定した成長を図るよう努めておりますが、物流事業では国内外の景気変動や顧客企業の物流合理化・事業再編の影響等、不動産事業では賃貸オフィス市場における需給バランスや市況動向等、事業環境の変動の影響を受けます。

 

(2) 事業用資産(倉庫、賃貸ビル等)の自然災害による被災

倉庫や賃貸ビル等の事業用資産については、建物の耐震・免震対策や外部保険の付保のほか、日常の点検・整備、自然災害等の危機発生時の対応マニュアルの作成・更新、定期的な訓練実施等の必要な措置を講じておりますが、地震、台風、大雨、洪水、津波、噴火等の大規模自然災害が発生した場合は、保険で担保しきれない重大な被害を受けるおそれがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 事業用資産(土地、建物等)の時価下落及び収益性低下

当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により、土地、建物、のれん、顧客関連資産等の時価下落や収益性低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合、将来に損失を繰り越さないため、回収の可能性を反映させるように減損処理を行う可能性があります。

 

(4) 投資有価証券の時価変動

当社グループは、主として営業上の取引関係維持・強化のため、取引先の株式を中心に当連結会計年度末において2,134億5千7百万円の投資有価証券を保有しておりますが、「金融商品に関する会計基準」の適用により、株式相場等の時価変動の影響を受けております。なお、当社は、その他有価証券で市場価格のない株式等以外のものについて、時価が取得原価に比べて30%以上下落した場合、回復の可能性を考慮のうえ減損処理を行うこととしており、また市場価格のない株式等の実質価額低下による損失に備えるため、発行会社の純資産額が簿価を下回るものについて、回復の可能性を考慮した引当額を投資損失引当金に計上することとしております。

 

(5) コンプライアンスリスク及び人権問題

当社グループは、社員が業務を遂行する際の規範として法令遵守、反社会的勢力の排除等を内容とする「行動基準」を制定し、その遵守状況の自己点検やコンプライアンス研修の推進・徹底により、社員一人ひとりに企業倫理にもとづくコンプライアンス意識を浸透させるとともに、法令及び各種規制等の遵守の徹底を図っています。また、内部統制・コンプライアンス委員会を設け、内部統制機能の整備状況、コンプライアンス態勢を検証し、それらの充実を図っています。これと併せて、企業理念を実現する前提となる人権尊重責任を果すため、「三菱倉庫グループ人権方針」を制定し、人権尊重の取組みを推進しています。

加えて、通報者の不利益取扱い禁止を明確に定めた内部通報窓口(ヘルプライン)を設置して、法令等に抵触するおそれのある行為及び人権侵害のおそれのある行為を防止し、また早期に発見して是正するよう努めています。

しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスク及び人権侵害リスクは完全には払拭できず、法令等に抵触する事態又は人権問題が生じた場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分、取引先等からの損害賠償、信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

(6) 海外事業展開におけるカントリーリスク

当社は、海外において北米、中国・アジア及び欧州に合計24社(北米6社、中国・アジア15社、欧州3社)の子会社を設置し、倉庫・国際運送取扱等の物流事業を営んでおります。海外での事業展開においては、現地の法令・商習慣等に則した経営活動の実践に努めるとともに、出資先において倉庫施設等の固定資産の取得を伴う場合は、カントリーリスクの度合いを考慮のうえ、必要に応じ海外投資保険を付保することとしております。

 

(7) 為替レートの変動

当社グループの連結財務諸表の作成に当たっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しているほか、当社及び一部連結子会社において、外貨建債権・債務を有していることから、為替レートが変動した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(8) 環境保全に係る規制強化等

当社グループは、環境問題の重要性を認識し、環境方針や環境ボランタリープランを定めているほか、ESG経営/SDGs対応に向けた取組みの重要テーマに環境対応を掲げ、地球環境に配慮した事業活動を推進しております。具体的には、「災害に強いECO倉庫」、「災害に強い環境配慮型オフィスビル」の建設等により、倉庫や不動産賃貸施設の省エネ対策に取り組むほか、環境負荷の少ない機器又は設備の導入や、お客様や委託先等と協力のうえ環境負荷を軽減するサービスの開発に努めております。また、TCFD提言にて推奨される気候変動に関する情報について開示を行っており、移行リスク、物理的リスクへの緩和策を実施することとしています。しかしながら、今後、関係法令や規制の強化等により、新たな設備投資等の必要性が生じた場合には、資金やコスト負担の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、各種ITを活用して事業の推進と業務の効率化を図っており、事業活動を通じて取引先の機密情報やお客様の個人情報を取り扱っております。

情報システムや情報ネットワークの管理においては、安定稼働やセキュリティ対策に力を入れ、適切なサーバーの管理や情報のバックアップ等の必要な措置を講じているほか、標的型攻撃に対する訓練等の情報セキュリティ教育等によりセキュリティリスク低減を図っております。

しかしながら、コンピューターウイルスによる感染、サイバー攻撃を含む外部からの不正アクセス、災害等により事業活動の停止や情報漏洩が発生した場合には、取引先等からの損害賠償、信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(10) 感染症に関するリスク

新型コロナウイルス感染症をはじめ、新興・再興の感染症の地域的な流行や、世界的なパンデミックにより、物流事業においては、貨物の荷動きの低迷、不動産事業においては、テナントの退去等に伴う空室率の上昇等、当社グループの事業活動・業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度の世界経済は、欧州で景気は弱含んでいるものの中国で持ち直しの兆しがみられ、米国では景気が拡大し、全体としては持ち直しました。また、わが国経済は、引き続き消費者物価の上昇による家計への影響が懸念され、個人消費は持ち直しに足踏みがみられるものの、設備投資に持ち直しの動きがみられ、景気は緩やかに回復しました。

こうした経済情勢にあって、当社グループを取り巻く事業環境は、物流業界においては、海上運賃単価は下げ止まりつつあるものの、貨物量の減少や人手不足等によるコストの増加が続きました。また、不動産業界においては、需給の緩みにより賃貸オフィスビルの空室率は高止まりしています。

このような状況の下、当社グループは、経営計画[2022-2024]に沿ってDXに取り組み、新手法を活用した営業活動を推進しました。物流事業では、医薬品・自動車関連等の配送センター業務等の拡大、国際輸送貨物の取扱拡大等に努め、不動産事業では、テナントの確保及び賃料水準の維持・向上に努めました。他方、コスト上昇に見合う適正料金の収受やコスト管理の徹底と業務の効率化を一層推し進め、業績の確保に努めました。

しかしながら、当連結会計年度の営業収益は、物流事業で海上運賃単価の下落や貨物取扱量の減少に伴い国際運送取扱事業を中心に収入が減少したため、不動産事業で不動産賃貸事業の収入が増加したものの、全体として前期比460億8千6百万円(15.3%)減2,545億7百万円となりました。また営業原価は、物流及び不動産の両事業で減少したため、全体として前期比436億2千7百万円(16.4%)減2,222億7千1百万円となり、販売費及び一般管理費は、人件費等の増加により、同16億2千7百万円(13.9%)増132億9千4百万円となりました。

営業利益は、物流事業で減益となったため、不動産事業で増益となったものの、全体として前期比40億8千6百万円(17.7%)減189億4千1百万円となり、経常利益は、受取配当金と持分法による投資利益の減少により、同56億8千7百万円(18.9%)減243億5千8百万円となりました。また親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益で、固定資産処分益が減少したものの、政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益が増加したため、前期比5億6千1百万円(2.1%)増277億8千7百万円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

① 物流事業

・倉庫事業は、自動車関連貨物、食品の取扱増加等により、営業収益は前期比4.9%増

・陸上運送事業は、貨物取扱減少により、同0.8%減

・港湾運送事業は、コンテナ貨物の取扱増加等により、同2.7%増

・国際運送取扱事業は、海上運賃単価の下落や貨物取扱量の減少に伴い、同42.5%減

この結果、物流事業全体の営業収益は、前期比464億2千6百万円(17.6%)減2,174億7千3百万円となりました。また営業費用は、作業運送委託費が減少したため、前期比422億7百万円(17.2%)減2,029億1千7百万円となりました。このためセグメント利益(営業利益)は、前期比42億1千8百万円(22.5%)減145億5千5百万円となりました。

 

② 不動産事業

・不動産賃貸事業は、稼働率の上昇により、営業収益は前期比2.2%増

・その他の営業収益は、設計施工事業の減少により、同3.7%減

この結果、不動産事業全体の営業収益は、前期比4億2百万円(1.1%)増386億1百万円となりました。また営業費用は、設計施工の受注減少に伴い設計施工費が減少したため、前期比3億6千3百万円(1.3%)減277億1千2百万円となりました。このためセグメント利益(営業利益)は、マンション販売事業における利益率向上もあり、前期比7億6千5百万円(7.6%)増108億8千8百万円となりました。

 

なお、当社グループは経営計画[2022-2024]における最終年度業績目標として、営業収益2,600億円、営業利益200億円、ROE7%を掲げております。同計画2年目に当たる当連結会計年度の経営成績については、営業収益2,545億7百万円営業利益189億4千1百万円経常利益243億5千8百万円、ROE7.3%となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

当社グループの主たる事業は、倉庫事業を中核とする物流事業及びビル賃貸を中心とする不動産事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難であります。

これに代えて、当連結会計年度におけるセグメント毎の主要業務の営業収益及び取扱高等を示すと、次のとおりであります。

① セグメント毎の主要業務の営業収益

 

セグメント

営業収益(百万円)

前連結会計年度比増減

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

(%)

物流事業

 

 

 

 

(倉庫事業)

63,980

67,087

3,107

4.9

(陸上運送事業)

51,847

51,440

△406

△0.8

(港湾運送事業)

23,340

23,968

628

2.7

(国際運送取扱事業)

116,219

66,811

△49,408

△42.5

(その他)

8,512

8,164

△347

△4.1

263,899

217,473

△46,426

△17.6

不動産事業

 

 

 

 

(不動産賃貸事業)

30,531

31,216

684

2.2

(その他)

7,667

7,385

△282

△3.7

38,199

38,601

402

1.1

内部取引消去

△1,504

△1,566

△62

 

合計

300,594

254,507

△46,086

△15.3

 

 

② セグメント毎の主要業務の取扱高等

 

セグメント

業務の種類

取扱高等

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度
比増減

物流事業

 

 

 

 

 

(倉庫事業)

倉庫保管

保管残高
(数量・月末平均)

1,005千トン

996千トン

△8千トン

 

 

貨物回転率
(数量・月間平均)

39.2%

37.0%

△2.2

 

倉庫荷役

入庫高

4,761千トン

4,360千トン

△401千トン

 

 

出庫高

4,698千トン

4,400千トン

△298千トン

(陸上運送事業)

陸上運送

陸上運送高

17,656千トン

17,704千トン

47千トン

(港湾運送事業)

沿岸荷役

沿岸荷役高

68,516千トン

75,702千トン

7,186千トン

 

船内荷役

船内荷役高

55,420千トン

59,508千トン

4,088千トン

(国際運送取扱事業)

国際運送取扱

国際運送取扱高

10,276千トン

10,343千トン

67千トン

不動産事業

不動産賃貸

不動産賃貸面積
(延床面積・月末平均)

 

 

 

 

 

オフィス用

403千㎡

421千㎡

17千㎡

 

 

商業用

474千㎡

474千㎡

△0千㎡

 

 

住宅用

82千㎡

82千㎡

△0千㎡

 

 

(注) 貨物回転率(月間平均)の算出方式………

(入庫高+出庫高) ÷2÷12ヵ月

×100

月末平均保管残高

 

 

(2) 財政状態

① 総資産

減価償却に伴い「建物及び構築物」が減少したものの、株式相場の上昇に伴い「投資有価証券」が増加したほか、Cavalier Logisticsグループの株式を取得し、連結子会社としたことにより「顧客関連資産」や「のれん」等が増加したため、前期末比1,054億5千3百万円増6,791億4千3百万円となりました。

② 負債合計

株式相場の上昇に伴い「繰延税金負債」が増加したほか、第20回及び第21回無担保社債発行に伴い「社債」が増加したため、前期末比481億8千2百万円増2,674億3千9百万円となりました。

③ 純資産

「自己株式」の取得による減少があったものの、株式相場の上昇に伴い「その他有価証券評価差額金」が増加したほか、「親会社株主に帰属する当期純利益」の計上に伴い「利益剰余金」が増加したため、前期末比572億7千1百万円増4,117億3百万円となりました。

④ 自己資本比率

前期末を1.4ポイント下回る59.7%となりました。

⑤ 有利子負債

「社債」の増加等により前期末に比べ115億6千7百万円増加し、1,193億4千3百万円となりました。

 

 

(3) キャッシュ・フロー 

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローの増加、投資活動によるキャッシュ・フローの減少、財務活動によるキャッシュ・フローの減少に現金及び現金同等物に係る換算差額(7億1千4百万円の増加)を加えた全体で38億5千3百万円の減少となり、現金及び現金同等物の期末残高は584億4千4百万円となりました。

なお、当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー(38億5千3百万円の減少)は、前期(97億9千2百万円の増加)に比べ、136億4千5百万円下回りました

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

税金等調整前当期純利益、減価償却による資金留保等により、417億6千8百万円の増加となりました。

なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前期(404億8千8百万円の増加)に比べ、12億7千9百万円上回りました

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資有価証券の売却による収入があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得(Cavalier Logisticsグループ株式取得)による支出、固定資産の取得による支出、投資有価証券の取得による支出等により、314億7千7百万円の減少となりました。

なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前期(143億7千9百万円の減少)に比べ、170億9千7百万円下回りました

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

社債の発行による収入があったものの、借入金の返済、自己株式の取得による支出、配当金の支払、社債の償還による支出等により、148億5千8百万円の減少となりました。

なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前期(170億6千7百万円の減少)に比べ、22億9百万円上回りました

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、財務健全性の維持を原則としつつ、運転資金並びに当社グループの成長、拡大を図るための設備投資資金については、主に事業活動から生じる自己資金で賄うほか、必要に応じて金融機関からの借入及び社債の発行により資金調達を行っております。なお、次期のキャッシュ・フローについては、次期の利益及び減価償却による資金の留保や投資有価証券の売却による収入等を見込む一方、神戸における須磨海浜水族園・海浜公園再整備事業等の設備投資(固定資産の取得)による支出のほか、配当金の支払い、自己株式の取得等が予定されるため、現金及び現金同等物の期末残高は、概ね当期末並みの水準になるものと予想しております

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2023年4月28日、医薬品・ヘルスケア物流並びに米国政府機関向け物流を提供する、米国のCavalier Logistics Management Ⅱ, Inc.、Cavalier International Air Freight, Inc.、DC Dyna, Inc.、及び英国のCavalier Logistics U.K. Limited.の4社(以下「Cavalier Logisticsグループ」という。)の株式を当社が新たに米国に設立した子会社を通じて取得するために株式譲渡契約を締結し、2023年10月2日、Cavalier Logisticsグループの合計発行済株式総数の90%相当を取得完了し、当社の連結子会社となりました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。