文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループのミッション(使命)は「医療という希望を創る。」です。このミッションに基づき、当社グループは、患者に向けては「患者視点の医療をひとりでも多くの方へ提供できる環境を創る。」、医療機関に向けては「地域に求められ、働きがいのある職場環境を創る。」、そして社会に向けては「医療課題の解決によって健全で持続可能な社会を創る。」ことを目指して様々なサービスを展開しています。
社名のシーユーシー(CUC)は、「変わるまで、変える(Change Until Change)」の頭文字から生まれました。変化を恐れず医療課題に挑戦する私たちの存在意義を表現しており、新しい挑戦に向かい続けるという強い意志を込めています。
(2)経営戦略
医療機関セグメントでは、訪問診療クリニック、病院、透析クリニック、外来クリニック等を運営する医療機関向けに経営支援サービス(経営戦略策定・経営管理支援、マーケティング支援、IT・経理・総務等支援、人事・採用機能支援等に加えて、M&A・PMI支援、新規クリニック開設支援、病床転換支援等のプロジェクト受注)を拡大するとともに、支援先医療機関数の増大を目指しています。更に、高齢化先進国である日本の医療機関に対する経営支援サービスのノウハウを海外にも展開すべく、米国、ベトナム及びインドネシアでの事業の更なる拡大を目指しています。
ホスピスセグメントでは、ホスピス型住宅の入居者に提供するサービスの質を最重要視した上で、既存のホスピス型住宅の入居者増加に加え、看取り機能が脆弱な地域を中心にホスピス型住宅の新規展開を加速し、より多くの医療依存度の高い(がん末期、神経難病等を患う)入居者向けに訪問看護及び訪問介護を提供していきます。
居宅訪問看護セグメントでは、利用者に提供するサービスの質を最重要視した上で、既存の訪問看護ステーションの利用者拡大に加えて、新規エリアへの訪問看護ステーションの新規開設を行い、居宅の利用者向けに訪問看護を提供していきます。
国内においては今後も医療機関セグメントの顧客である支援先医療機関と、ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントが連携することにより、各支援先医療機関の病院やクリニック等並びにホスピス型住宅や訪問看護ステーションが位置する地域の地域包括ケアシステムが効率的に運営されるプラットフォームが構築されるよう事業を行っていきます。海外においては既存の足病及び下肢静脈疾患クリニック等を更に拡大するとともに、新規のクリニック展開を進めていきます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業規模と収益性を測る指標として、売上収益、営業利益及びEBITDA(注)を重視しています。これらの指標の着実な拡大を維持しながらも、中長期的な企業価値向上のため、新規事業の展開を継続することを企図しています。
医療機関セグメントでは当社が国内において経営支援を提供する病院及びクリニック等の数である支援先主要拠点数を、ホスピスセグメントではホスピス型住宅の定員数(訪問看護等サービスを提供する施設の定員数)及び稼働率(毎期の提供可能定員数に対するのべ入居者数の割合)を、居宅訪問看護セグメントでは利用者に提供したのべ総ケア時間(看護師及びセラピストが利用者にサービスを提供した時間の合計)を、それぞれ主要な経営指標として認識しています。
また、財務の安定性を判断する指標として、EBITDA有利子負債倍率及び親会社所有者帰属持分比率等を用い、安定的かつ持続的に企業価値を拡大していくことを目指しています。
(注)EBITDAの計算式は次のとおりです。
EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費±その他の収益・費用
(4)経営環境
当社グループが主にサービスを提供する日本では、全人口に占める65歳以上人口の割合が2021年には約29%のところ2040年には約35%となり(注1)、急速な高齢化による医療費の増大が見込まれ、医療費は2021年の約45兆円から2040年には約78兆円まで拡大すると予想されています(注2)。そのような環境下で、超高齢社会に備えた医療機関の機能転換(急性期医療から回復期医療への転換)が求められ、厚生労働省も病院医療よりも医療費を大幅に抑えられる在宅医療の拡大を推進しており、訪問診療利用者数は2011年の44.9万人から2019年には79.5万人に増加しています(注3)。一方で、日本の労働人口は2017年の約67.2百万人から2040年には10%以上減少して約58.5百万人となると推計されており(注4)、需要の高まる医療サービス提供のための医療従事者の確保が危ぶまれています。
また、2022年時点で日本における病院の68.7%が60歳以上の経営者により運営されており(注5)、2017年時点で後継者不在の病院が68.4%(注6)であるため、M&A等により後継者不在の医療機関を、安定的に運営できる医療機関に承継する流れが進むことが予想されます。
当社グループは米国において足病及び下肢静脈疾患クリニックを運営しています。米国における足病科の市場規模は約70億米ドルであり(注7)、今後も高齢化や糖尿病患者の増加等により堅調なニーズの拡大が見込まれています(65歳以上の人口は2020年の56.1百万人から2030年の73.1百万人へと年平均2.7%で増加すると推計されており(注8)、糖尿病患者は2020年の43.3百万人から2030年の54.9百万人へと年平均2.4%で増加すると推計されています(注9))。
また、ベトナム及びインドネシアでは、2021年時点で国民一人あたり医療費がそれぞれ173ドル、161ドル(注10)であり、双方とも2000年と比較すると8倍以上となっており、今後もより多くの人が良質な医療にアクセスできる環境を整備することが求められるものと当社は考えています。
我が国における訪問看護利用者数は2011年時点の38.5万人から2019年の83.5万人へと、年平均で約10.1%増加しており(注11)、また、我が国におけるがん・難病患者数は569万人とされています(注12)。一方で、居宅訪問看護業界においては24時間365日体制で安定的な運営が可能な大規模事業所のニーズが高まっている中で、従業員5人未満の小規模訪問看護ステーションが57%を占め(注13)、十分なサービス供給がされている状況ではないと考えています。
(注)1.「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)。
2.「国民医療費の概況」(厚生労働省)、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(内閣府、財務省、厚生労働省)。
3.「在宅医療の現状について」(厚生労働省、2022年)。在宅患者訪問診療料を月1回以上算定されていた患者の数。
4.「令和3年版厚生労働白書 資料編」(厚生労働省)。
5.「令和4年医師、歯科医師、薬剤師統計の概況」(厚生労働省、2024年)。
6.「医業承継の現状と課題」(日本医師会総合政策研究機構、2019年)。
7.「Podiatrists in the US」(IBISWorld、2023年)
8.「2017 National Population Projections Tables」(US Census Bureau、2020年)
9.「Diabetes 2030: Insights from Yesterday, Today, and Future Trends 」(Rowley et al, Population Health Management. 2016年)
10.Global Health Expenditure Database (World Health Organization.)。
11.「在宅医療の現状について」(厚生労働省 2022年)。医療保険と介護保険の合計数。
12.がん患者数466万人「令和2年患者調査(確定数)の概況」(厚生労働省)と指定難病患者数103万人「令和2年度衛生行政報告例」(厚生労働省)の合計。
13.「第220回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3」(厚生労働省)。
(5)当社グループの強み
当社グループは2014年の会社設立以来、高い成長性を維持しながら規模を拡大してきました。訪問診療クリニックの経営支援を起点として、病院や透析クリニック、外来クリニック等を運営する医療機関の経営支援、ホスピス事業、居宅訪問看護事業、ベトナム・インドネシアにおける医療機関への経営支援、米国における足病及び下肢静脈疾患クリニックの運営等幅広い領域において事業を展開しています。
当社グループの強みは以下のとおりです。
① 安定成長を続ける国内医療機関事業及び事業ノウハウを活かした海外事業展開
当社は、経営人材が支援先医療機関に常駐することで、意思決定や戦略策定のサポートを現場の視点から行います。これにより顧客との継続的な関係を構築し高いリテンション率を維持しています。また、これまで培った医療機関の運営効率化ノウハウを生かし、支援先医療機関の安定的な事業運営に寄与しています。このようにして、規模拡大及び安定運営を実現した既存の支援先医療機関は、更なる規模の拡大のためにM&Aや新規クリニックの開設等を視野に入れ、当社が追加の経営支援を行う機会(新規の支援先医療機関の獲得)を得ることが可能になるという好循環が生まれています。
また、国内の医療機関支援により蓄積されたノウハウを、海外におけるクリニック経営等に活用することで更なる成長を目指しています。
② 巨大な市場を背景に成長するホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメント
我が国における訪問看護利用者数は2011年時点の38.5万人から2019年の83.5万人に増加し、年平均で約10.1%成長しています(注1)。また、2020年度末の我が国におけるがん・難病患者数は569万人とされており(注2)、日本における急速な高齢化を背景に在宅医療市場は今後も継続的に拡大すると当社は考えています。
当社のホスピス事業でサービスを提供する定員数及び居宅訪問看護事業の利用者数はいずれも大規模であり、高い成長が期待される市場において優位な地位を確立しています。
ホスピス事業において、当社が訪問看護サービスを提供するホスピス型住宅の定員数は2024年3月末時点で1,733名であり、2024年3月期における既存のホスピス型住宅の年間平均稼働率は80.7%です(注3)。ホスピス事業は、2024年3月末時点で看護師524名、介護士584名を擁し、訪問看護及び訪問介護サービスを提供しています。
居宅訪問看護事業の訪問看護ステーション数は、2024年3月末で88拠点であり、今後も積極的な新規拠点展開を予定しています。なお、居宅訪問看護事業は2024年3月末時点で看護師672名、セラピスト479名を擁しており(注4)、2024年3月に訪問実績がある居宅訪問看護事業の利用者数は13,615名、のべ総ケア時間数は2024年3月期において年間1,065,220時間(注5)となっています。
今後も集客効率化、採用力強化、拠点の相互補完等のシナジーを発揮し、高水準の安定稼働を確保するというドミナント戦略のもと、居宅訪問看護事業における訪問看護ステーションは半径2~5km圏内、ホスピス事業におけるホスピス型住宅は半径10~15km圏内に拠点を出店することにより、展開を加速していきます。
(注)1.「在宅医療の現状について」(厚生労働省 2022年)。医療保険と介護保険の合計数。
2.がん患者数466万人「令和2年患者調査(確定数)の概況」(厚生労働省)と指定難病患者数103万人「令和2年度衛生行政報告例」(厚生労働省)の合計。
3.2024年3月期における既存ホスピス(2024年3月末時点で開設以降12ヶ月超経過又はM&Aによる新規取得)ののべ提供可能定員数に対する、のべ入居者の割合。
4.在宅治験に従事する看護師は除く。セラピストは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の総称。
5.看護師及びセラピストが利用者にサービスを提供した時間の合計。
③ 包括的なソリューションを提供する独自のアプローチ
当社グループは医療機関セグメント、ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントに亘って医療・介護領域の様々な事業を展開しています。
特に支援先医療機関が運営する病院や訪問診療クリニック、透析クリニック及び外来クリニック等と当社グループが運営するホスピス型住宅や訪問看護ステーションとの間のネットワークを強化することにより、医療機関支援からホスピス、居宅訪問看護まで垂直統合されたプラットフォームを構築し、患者、医療従事者及び社会に対して大きな価値提供ができると考えています。
具体的には医療機関セグメント、ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントにおいて高度急性期病院に対する接点を持つことにより、KOL(Key Opinion Leader:医療業界において多方面に大きな影響力を持つ人物の意)である医師や、それらの病院に入院する患者へのアクセスを持つことが可能になります。また、当社グループから支援先医療機関に患者を紹介するケースや、逆に当社グループが紹介されるケースがあります。
当社グループ内では、ホスピス事業と居宅訪問看護事業の間での異動及び人材交流もあり、従業員に多様なキャリア機会を提供することができています。
支援先医療機関の運営する拠点が多く存在する地域では、当社グループのホスピス型住宅や訪問看護ステーションを、これら支援先医療機関が運営する拠点の周辺に開設することにより、それらを密に連携させる取り組みも始めています。
そして、医療機関事業により創出したキャッシュ・フローをホスピス事業の設備投資に充当することが可能です。
④ 独自の雇用モデルに基づく強力な採用力
当社グループが事業を展開する医療・介護業界において、事業の根幹となるのは優秀な人材の確保と育成であると考えています。医療機関事業に携わる従業員、ホスピス事業及び居宅訪問看護事業に携わる看護師、介護士、セラピスト等の専門職の採用力やリテンション力を高めるために、差別化されたプラットフォームを構築することに成功しています。
具体的には当社グループの「医療という希望を創る。」というミッションを実現するために従業員が達成感ややりがいを実感することができるよう、平等かつ協力的な社風を醸成するように努めています。また、継続的かつ充実した教育制度や柔軟な労働体系を設けることにより、スキルを向上させつつ長期間勤務できるような制度を整備しています。
医療機関事業において上述のような採用や企業風土醸成のノウハウを活用することにより、当連結会計年度における支援先医療機関に対する医師及びコメディカル(注1)採用支援業務の結果として、当連結会計年度に支援先医療機関の医師279名、コメディカル981名の採用に貢献しています。
ホスピス事業では当連結会計年度において603名の看護師・介護士の採用(注2)を行いました。理念浸透の活動や入社前の職場見学等の取り組みを実施した結果、離職率は前連結会計年度比3.4ポイント低下の19.6%となりました。
居宅訪問看護事業では当連結会計年度において322名の看護師・セラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の採用(注2)を行いました。離職率は前連結会計年度比1.3ポイント低下の13.5%となりました。
(注)1.医師を除く医療従事者(看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、管理栄養士等)。
2.非正規社員を含む。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記(2)に記載の経営戦略を実行していく上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
① 人材の確保、育成及び管理
当社グループが事業の規模、範囲を安定的かつ持続的に拡大するためには、それに見合った人材を確保、育成する必要があります。医療機関事業の従業員、ホスピス事業及び居宅訪問看護事業の看護師、介護士、セラピスト等の専門職、管理部門の経営企画・経営管理・経理・人事・IT等の要員の確保と育成が必要です。
採用力強化については、採用担当者の増強や、リファーラル制度の設置、インターン制度やイベント開催等、新規卒業者への各種施策を実施しています。リテンション率向上のために、当社グループの経営理念と接続した研修・育成制度、評価・表彰制度等、各種制度により従業員満足度の向上に努めています。
② 従業員の専門性向上
当社の医療機関セグメントでは専門的な経営支援サービスを提供することにより支援先医療機関の規模拡大及び安定運営を実現しています。質の高いサービスを提供するためには、当社従業員の専門性向上が必要不可欠です。優秀な人材を数多く確保するために、医療業界での経験の有無を問わずに能力の高い人材を採用した上で、専門性向上のための教育を継続的に行っています。
ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントにおいては、顧客に提供するサービスの質を最重要視して事業運営をしているため、看護師、介護士、セラピスト等の専門性向上に特に力を入れて取り組んでいます。例えば入社時研修、役職別研修、管理者候補育成研修等、様々なプログラムを設けており、医療スキルを上げる研修のみならず、ホスピタリティや経営理念を学ぶ研修も行っています。
③ 拠点展開スピード
主にホスピスセグメントでは、知名度の向上と顧客獲得を実現し、必要とされている地域にいち早く当社グループのサービスを届けるために、拠点展開のスピードが求められています。
展開拠点の選定と開発、事業所の確保もしくは建設、拠点スタッフの採用、顧客獲得等を同時に行い、早期の拠点展開を行うために、拠点展開の開発を行う人員強化や採用チーム等のバックオフィス機能強化等に努めています。
④ 内部管理体制の強化
当社グループが事業を継続し、ミッションを実現するためには、コンプライアンスを重視した経営を行う必要があると認識しています。そのためにも、事業の拡大に備えた管理部門の強化やリスク・コンプライアンス規程を始めとした各種規程の整備による内部統制の体制構築とその運用モニタリングを行っています。
⑤ 財務健全性の確保
2024年1月に米国の足病及び下肢静脈疾患クリニックの買収を行い、今後もホスピス型住宅の建設にあたり資金調達が必要になるため、外部調達の金利水準が変動した場合や計画どおりの資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態又はキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
EBITDA有利子負債倍率及び親会社所有者帰属持分比率等といった財務の安定性を測る指標のモニタリング及び金利動向の定期的な把握を通じた金利変動リスクの定量化を行うことで、財務健全性の確保に努めています。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループが目指すサステナビリティ経営
当社グループは、「医療という希望を創る。」をミッションとして掲げ、患者・医療従事者・社会の不と負を解消し、希望を創り出す事業を目指しています。
患者様に寄り添った医療を追求し、ひとりでも多くの方がこころから安心して暮らせる社会を創ること、そして、その社会を持続可能なかたちで子どもたちが生きる未来に繋いでいくことを使命としています。
(1)ガバナンス体制
当社は、グループの長期的な成長を支えるサステナビリティを重視しており、その達成のためにグループ主要各社横断でサステナビリティプロジェクトという取り組みを実施しています。サステナビリティプロジェクトでの協議事項やマテリアリティ毎の取組状況について取締役会に適宜報告することにより、取締役会が当社グループのサステナビリティ経営に関して監視の機能を持つことになります。
(2)戦略
マテリアリティ(重要項目)
当社グループはミッションである「医療という希望を創る。」を持続可能な形で達成するために、SASBスタンダード(注1)、GRIスタンダード(注2)等の各種報告基準を参考に、社内取締役、執行役員、幹部社員が社会・ステークホルダーにとっての重要度と当社にとっての重要度を複合的に議論することにより、経営理念を実現するために必要な以下の5つのマテリアリティを特定しました。また、各マテリアリティに対して専任の担当取締役又は執行役員を任命し、長期的な価値の創造に向けて、これらのマテリアリティへの取り組みを推進しています。マテリアリティへ取り組みは「持続可能な開発目標(SDGs)」(注3)を実現する道と同義であると捉えています。
(注)1.SASBスタンダード:サステナビリティ会計基準審議会(SASB:Sustainability Accounting Standards Board)が2018年に公開した非財務情報公開の標準化に向けた基準。
2.GRIスタンダード:GRI(Global Reporting Initiative)により定められた国際基準。組織が経済、環境、社会に与えるインパクトを一般に報告する際に用いられる。
3.2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダで掲げられる国際目標。
CUCグループの5つのマテリアリティ(重要課題)
(3)リスク管理
当社グループでは各マテリアリティの担当取締役又は執行役員が、各マテリアリティに紐づくリスクについて責任をもってグループ各社における対応方針を検討し、グループ各社、各部門が中心となって対応を進めています。また、当社グループではリスク・コンプライアンス委員会にて、リスクの適切な管理及びコンプライアンスの遵守やその体制整備のための意思決定を行っています。
(4)指標及び目標
人的資本経営に関する取組
当社グループのミッションである「医療という希望を創る。」の達成に向けて、最も重要なアセットは人材です。
経営理念に共感する優秀な人材が集い、お互いの働きかけによって能力を高め合い、行動指針(CUC Partners Way)に基づき活躍し続ける状態を目指しています。そのために、各種の人事施策に取り組んでいます。
当社グループでは、期初に設定する採用人数予算及び離職率の想定等に対するモニタリング、毎月実施する従業員サーベイ、年1回実施する働きがいに関するサーベイ及び、半期に一度の管理職向け行動指針体現度評価(Way Letter)等を通じて、各種の人事施策の効果を確認しています。
①ガバナンス
当社グループの主要な人材戦略は、当社の代表取締役、業務執行取締役、執行役員が参加する「グループ情報共有会」等の会議体で討議された上で、当社の経営会議又は取締役会にて意思決定を行っています。
また、当社の人事部門が主管する階層別の人材開発委員会、半期に一度の管理職向け行動指針体現度評価「WayLetter」、毎月実施の従業員コンディションサーベイ、個別のキャリア面談等を通じて社員情報を整理し、代表取締役・人事管掌執行役員が参加する隔週の定例会にて課題確認及び論点整理をした上で、各種の人事施策の検討に活かしています。
②戦略
当社グループでは、2023年8月に理念体系全体を推進するために、経営者と従業員の約束として「一人ひとりが働きがいを感じ、夢や理想に挑戦できる環境を実現する。」というCUC Partners Promise(働くみなさまとの約束)を策定しました。CUC Partners Promiseを組織づくりや人事制度設計の指針として、各種施策を実行しています。主な人事施策は、下記のとおりです。
(ⅰ)行動指針「CUC Partners Way」の設定と浸透の推進
当社グループではミッションである「医療という希望を創る。」を達成するために、行動指針である「CUC Partners Way」を設定しています。具体的には1.「自分の立場」ではなく「患者様の気持ち」で考える、2.「できない理由」ではなく「できる方法」を探して実行する、3.「既成概念」にとらわれず「理想」を追求する、4.「専門性」の前に「人間性」を重視する、5.「上下」ではなく「ひとつのチーム」として手を重ねる、の5つです。
これらの行動指針を当社グループに浸透させるために、行動指針の採用基準への導入、入社時研修、入社3か月後研修、1年後研修における行動指針の教育、半年毎の社内取締役・執行役員・幹部社員・管理職に対する行動指針実践度の匿名フィードバック等の施策を実施しています。それらの取り組みの成果として、毎月当社従業員社員を対象に計測しているサーベイ(解答率90%以上)で確認できる行動指針の認知率は99%(前年95%)以上(注1)、実践・共感率は79%(前年70%)以上(注2)となっています。
(注)1.行動指針について「5.実践している」、「4.共感している」、「3.理解している」、「2.認知している」、「1.内容を知らない」の選択肢のうち、5、4、3、2を選んだ比率。
2.行動指針について「5.実践している」、「4.共感している」、「3.理解している」、「2.認知している」、「1.内容を知らない」の選択肢のうち、5、4を選んだ比率。
(ⅱ)医療現場の働き方改革から生まれる、多様で柔軟な職場環境
当社グループでは、看護師やセラピスト、介護職といった医療現場の最前線で働く医療従事者のスタッフが多く在籍しています。少子高齢化により医療従事者の役割が増えているにも関わらず、医療現場の人材不足は深刻化しています。
当社グループが目指すのは、患者や利用者の一番近くで働く医療従事者が、働きがいを持って医療現場に立ち続けられることです。そのために、当社グループは労働環境の整備やキャリア支援等、働き方改革を進めています。医療現場に多くの笑顔を増やすことで、患者や利用者へより良い医療を届けていきます。
一例として、当社子会社であるソフィアメディ株式会社では働き方改革「ソフィアメディWOW!(Work for Our Wonderful life!)」として、1時間単位の有給休暇、時短勤務制度拡充、ベビーシッター料金補助、LGBTQの当事者のための結婚・育児・就労支援等の制度を設定し、異なるライフステージに移行した医療従事者が仕事を継続しやすい環境を整備しています。
当社グループにおける医療従事者数(注)
・看護師 1,196人(前年:935)
・セラピスト 479人(前年:451)
・介護職 584人(前年:423)
(注)2024年3月期における臨時従業員を除く人数。
(ⅲ)グループ内公募制度「Dream」による幅広いキャリアの選択肢の提供
半年に一度、当社グループの各社・各事業部への異動を可能とするグループ内公募制度「Dream」を実施しています。人材を求める部署やプロジェクトの募集に対して、上長の許可を問わずに面談を経て希望の会社・事業部へと異動を叶えることができます。社員一人ひとりの「挑戦したい」という気持ちを汲み取り、新たな挑戦を後押しする機会を提供しています。毎回多くの異動が実現しており、医療職からビジネス職への異動も行われる等、社員が前向きにキャリアの幅を広げることができています。
応募数と実績の推移
・2023年度募集 通期合計40名応募→13名異動
・2022年度募集 通期合計28名応募→10名異動
・2021年度募集 通期合計19名応募→6名異動
(ⅳ)称賛の文化によるポジティブな職場環境
当社グループは創業以来、ミッション「医療という希望を創る。」を体現した社員や取り組みにスポットライトを当てる称賛の文化を大切にしています。年一回行われる当社グループ全体の大規模イベントでの表彰をはじめ、グループ各社や各事業部内での定期的なベストプラクティスの共有会、月に一度の感謝メッセージ送付の仕組みなど、多くの称賛の機会を設けています。医療職からビジネス職まで、多様な職種が混在する当社グループでは、こうした取り組みによって異なる環境の社員同士で互いの仕事内容を知る機会をつくり、一体感を醸成しています。
(ⅴ)グループ横断の能力開発プログラム
経営環境が大きく変化し、当社グループ横断での事業シナジー追及が求められる現在の環境下では、グループ各社の役職員の強固な人間関係構築や事業環境についての共通理解が求められています。そのために経営陣、マネジャー等の階層別に、グループ会社横断でリーダーシップやマネジメント力を高める研修プログラムを実施しています。2023年度は、新任マネジャー向けのリーダーシップ初級研修「リーダーの学校」開催(コミュニティ参加数119名)や、従業員が教鞭をとりお互い教え学び合う「CUCアカデミア」(全16回開催/のべ2011名参加)を実施しました。また、異業界の著名人を招聘し最新知識を学ぶ講演会「未知との遭遇」の開催など、当社グループに閉じない新しい学びの機会創出に努めています。
③リスク管理
当社グループが安定的に事業拡大するためには、ミッション実現のために主体的に行動できる優秀な人材を採用し、育成する必要があります。持続可能でイノベーティブな医療サービスの創出や、患者様と医療従事者のウェルビーイングの追求などに紐づくリスクについて、各マテリアリティの担当取締役又は執行役員が中心となって対応を進めています。課題が確認された場合には、適宜対策を打つことで、安定的な事業拡大につなげてまいります。
主な重要リスクは、
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下の記載は将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
(1)事業環境について
① 医療ヘルスケア市場について
当社グループは医療ヘルスケア市場で事業を展開しています。現在の事業の中核となっている高齢者医療マーケットは今後も高齢者の増加に伴い拡大が見込まれています。また、当社グループは「医療という希望を創る。」というミッションの実現を目指し、医療を取り巻く「不・負」を解決する新たなサービスを創出していく所存です。
しかしながら、長期的に国内の高齢者人口は減少に転ずることが見込まれており、また当社の想定を超える医療保険制度の見直し等が発生することもありえるため、そのような事象が発生した場合には、医療ヘルスケア市場が縮小し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 他社との競合について
当社グループは、医療機関、患者及び顧客(利用者及び入居者)のニーズに合った新しいサービスの拡充に常に取り組んでいます。競合については以下のとおりです。
(医療機関セグメント)
国内における医療機関に対する経営支援サービスは病院やクリニックの売上成長及び収益改善に資する各種サービスを包括的に提供するものであり、戦略・施策の立案から実行までをワンストップで提供できるという点で現在のところ直接的な競合の存在を認識していませんが、医療機関に対する支援サービスを行う会社は複数存在します。
資本力、顧客基盤、知名度、価格競争力、営業力などの点において当社グループよりも優れた企業が、新規参入、事業領域の拡大・強化、企業買収、提携などにより、当社グループと同等又はより優れたサービスを、より低い価格で提供した場合、当社グループの競争上の優位性が失われ、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、米国においては、足病及び下肢静脈疾患クリニックを運営する各地域で競合が存在します。既に展開している地域において競争が激化した場合のほか、当社グループが新規地域への展開を検討する際に既に他社が優位性を有している場合には、当社グループによる事業運営又は展開に影響を及ぼす可能性があります。
(ホスピスセグメント、居宅訪問看護セグメント)
ホスピス事業では、株式会社アンビスホールディングス、日本ホスピスホールディングス株式会社、株式会社サンウェルズ(すべて上場会社)といった競合が存在し、地域によっては、これらの会社と競合する場合があります。
居宅訪問看護事業では、事業を展開している各地域で競合が存在します。基本的に小規模事業者が多く、現時点では経営の安定性やブランド力という点で当社グループに相対的に優位性があると考えています。
既に競合が存在する地域において競争が激化した場合のほか、当社グループが優位な地域においても、上記の競合他社が当該地域に進出あるいは当該地域での事業を強化する場合や、競合他社が企業買収・提携などを活用して地域の垣根を超えた大規模な範囲でサービスを展開する場合等においては、当社グループの優位性が失われ、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社がこれまで事業を行っていなかった地域に新規に事業を展開するに際し、当該地域で先行して事業を展開する競合他社の顧客基盤が想定以上に強力であり、あるいは競合他社が先行者としての優位性を活用してサービス内容や事業展開を強化した場合には、当社グループが当該地域において期待どおりに顧客を獲得できないなど、当社グループの事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。
以上のほか、各事業で他の有力企業との競争激化や、新規参入の増加、業界再編等により、当社グループが事業を行う業界の事業環境が大きく変化し、当社グループがこれに適時・適切に対応できなかった場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ インフレと人件費高騰について
当社グループは、主として労働集約型の事業を行っているため、賃金水準が急激に高騰した場合には人件費の負担増が発生します。特にホスピス事業では、事業拡大のために新規施設を開設することが重要ですが、インフレ等による建築資材の高騰や建設人材の不足等により調達コストが増加し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業運営について
① 人材の採用、育成について
当社グループが安定的に事業拡大するためには、ミッション実現のために主体的に行動できる優秀な人材を採用し、育成する必要があります。
医療機関セグメントの国内事業においては、支援先医療機関からの様々なニーズに対応可能な専門性の高いスタッフを確保・育成するため、採用時における適性の見極めを行うことに加えて、社内業務の標準化、マニュアル化を進めることにより育成体制を強化しています。加えて、支援先医療機関向けの有資格者採用支援のために、医療職種別(医者、看護師など)の採用チームを組成しています。
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては看護師、介護士及びセラピストの採用や育成が事業の根幹です。そのため、採用業務に経営資源を集中させ、積極的な採用活動を行っています。特にがん末期やALS等の難病のケアには高い専門性が求められることから、それらの専門性を持つ医療スタッフを採用することに加え、経験の浅い看護師、介護士及びセラピストであっても安心して継続して働けるように教育体制も充実させ、安定した人員の確保に努めています。
しかしながら、日本の労働人口は今後も減少することが見込まれており、医療・介護業界での慢性的な人材不足等により、採用が予定どおり進まない場合や、適切な研修等を実施することにより育成することができない場合、既存社員の社外流出等が多く発生した場合には、顧客に対するサービスの提供が困難となったり、サービスの質の低下につながるおそれがあります。加えて、当社グループが計画する新規施設の開設に支障が生じる可能性があります。また、そのような状況に対応するため人材の確保に想定以上の支出が必要となるなど、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 各種規制、許認可、指定について
当社グループは、各事業所において法規制に基づいた許認可や指定を受け業務を遂行しています(表)。特にホスピス事業及び居宅訪問看護事業では、健康保険法、介護保険法、障害者総合支援法、老人福祉法、高齢者住まい法等に基づく看護及び介護サービスを提供しており、これらの法律及び関連諸法令の適用を受けます。
当社グループは、各種許認可や指定を受けるために様々な要件に従う必要があり、その要件を満たすように細心の注意を払い事業を行っているほか、当社グループの内部監査部による内部監査において、これらの要件遵守について重点的に監査を実施しています。
しかしながら、当社の想定を超える法制度の改正が行われたこと等により、当社グループがこれらの法律及び関連諸法令を遵守することができなかった場合又は診療報酬若しくは介護報酬等の不正請求や、人員基準違反、運営基準違反、虚偽報告といった事由が認められ、指定が取消又は停止となった場合には、当該事業の継続が困難となり、また、事業の一時停止を受けるなど、当社グループの事業活動に重大な支障が生じるほか、これらの事案への対応に要する大きな支出や風評被害等にもつながるため、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、介護保険法に基づく各種指定について指定取消を受けた場合、指定取消から5年以内における新たな指定の取得及び介護サービス事業所としての更新が出来なくなります。
また、法律の改廃や適用基準の変更等により、診療報酬・介護報酬が減少する、保険適用者が減少し利用控えが進むなどの事象が生じた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、医療保険制度に基づく診療報酬は2年に1度、介護保険制度に基づく介護報酬は3年に1度の頻度で制度の改定が行われており、今後、診療報酬及び介護報酬の見直しにより、大幅な改定が行われた場合には、医療機関セグメントにおいては国内の支援先医療機関の新規出店の減速や、支援先医療機関の業績悪化に伴う当社の業務受託報酬の支払遅延又は支払停止につながり、ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントにおいては直接的な売上収益の減少につながるため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(表)当社グループの各事業所が受けている主な指定
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取得 |
指定権者、届出先又は登録先 |
許認可名称 |
許認可内容 |
有効期限 |
主な許認可取消事由 |
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当社グループの各事業所 |
厚生労働省 地方厚生局 |
指定訪問看護事業者 |
健康保険法の訪問看護事業 |
6年毎の更新 |
健康保険法 第95条(指定訪問看護事業者の指定の取消し) |
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都道府県、政令指定都市又は中核市 |
指定訪問看護事業者 |
介護保険法の訪問看護事業 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
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都道府県、政令指定都市又は中核市 |
指定訪問介護事業者 |
介護保険法の訪問介護事業 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
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都道府県、政令指定都市又は中核市 |
居宅介護・重度訪問介護事業 |
障害者総合支援法の居宅介護 |
6年毎の更新 |
障害者総合支援法 第50条(指定の取消し等) |
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都道府県、政令指定都市又は中核市 |
指定通所介護事業者 |
介護保険法の地域密着型通所介護 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
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都道府県、政令指定都市又は中核市 |
住宅型有料老人ホーム |
老人福祉法の施設事業 |
なし |
老人福祉法 第29条14項(届出等)※事業の制限又は停止に関する定めあり |
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都道府県、政令指定都市又は中核市 |
サービス付き高齢者向け住宅 |
高齢者住まい法の施設事業 |
5年毎の更新 |
高齢者住まい法 第26条(登録の取消し) |
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市区町村 |
介護予防・日常生活支援総合事業 |
介護保険法の総合事業 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第115条の45の9(指定事業者の指定の取消し等) |
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市区町村 |
居宅介護支援事業 |
介護保険法の居宅介護支援 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第84条(指定の取消し等) |
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市区町村 |
指定地域密着型通所介護事業者 |
介護保険法の地域密着型通所介護 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第78条の10(指定の取消し等) |
③ 情報管理について
当社グループでは事業活動を通じて顧客に関する経営情報等の機密情報を受け取り、また一部事業では多数の顧客あるいはその家族の個人情報(既往症、病歴、治療状況などの要配慮個人情報を含みます。)を取り扱っています。
当社グループの情報管理については、個人情報保護方針の策定や、社員教育の実施、担当者以外のサーバーへのアクセス制限等の社内体制の強化など、情報漏洩防止の厳重な対策を講じ、細心の注意を払っています。
しかしながら、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合、社員や業務委託先による情報漏洩が発生した場合、また、漏洩した情報が不正使用される等の機密情報の流出に伴う重大なトラブルが発生した場合、社会的信用の低下につながり、当社グループの事業、経営成績又は財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ M&Aについて
当社グループでは、同業もしくは異業種の他社に対するM&A(子会社化や事業譲受等)や提携等を実施することにより、当社グループの事業を補完もしくは強化すること、又は新規事業の展開が可能であると考えています。
その実施にあたっては、対象企業や対象事業について各種デューディリジェンスを行う等、慎重な検討の上で意思決定をし、可能な限りリスクの低減に努めています。
しかしながら、M&A等の実施後に当社グループが事前に認識し得なかった問題が明らかになった場合や、取得した企業等や事業の経営が計画どおりに進まない場合、許認可を要する事業を事業譲渡等により譲り受け、譲受後に許認可を得られない場合、又は期待していたシナジー効果を生まずに戦略目的が達成できない場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 特定人物への依存について
当社の代表取締役である濵口慶太は、創業者であると同時に創業以来当社グループの事業推進に深く関与しており、同氏は当社グループの経営戦略構築やその実行に重要な役割を果たしています。当社グループでは組織体制の強化を図り、特定の人物に過度に依存しない体制の整備を進めていますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける経営執行継続が困難になった場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 親会社グループとの関係について
本書提出日現在、当社の親会社であるエムスリー株式会社は、当社の議決権の63.45%を所有しています。親会社グループは、国内における医師会員33万人以上(2024年4月26日時点)が利用する医療従事者専門サイト「m3.com」、米国の「MDLinx」や英国の「Doctors.net.uk」等の医療従事者のプラットフォーム、医師の人材紹介事業等を中心に様々なサービスをグローバルに展開しており、当社グループは親会社のサイトソリューションセグメントに区分されています。
したがって、エムスリー株式会社は、株主総会の特別決議を要する事項(例えば、吸収合併、事業譲渡、定款変更等を含みますが、これらに限りません。)を単独で可決することはできないものの拒否権を有するとともに、株主総会の普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関する決定権及び拒否権を有することになり、当社に重要な影響を及ぼしえます。親会社が当社グループの事業や経営方針に関して有する利益は、当社の他の株主の利益と異なる可能性があります。
また、当社は親会社と良好な関係を有していますが、何らかの理由により下記に掲げる当社と親会社グループとの間の主な関係について、関係が悪化した場合又は悪化したと受け取られた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
一方、当社の独立性の維持のため、当社取締役会における親会社の役職員を兼務する取締役は6名中で1名のみであり、また、独立社外取締役が3分の1を占める構成としています。
なお、当社と親会社グループとの間の主な関係等の詳細については、以下に記載のとおりです。
(ⅰ)親会社役職員による当社取締役の兼任
本書提出日現在、親会社であるエムスリー株式会社の執行役員である大場啓史は、当社の取締役及び監査等委員を兼任しています。当該監査等委員である取締役は、様々なコーポレート機能に関する知見により当社グループの経営力を高めるべく、当社より就任を要請し、今後も継続して要請することを予定しています。
親会社から役員を受け入れている状況を踏まえ、当社取締役会に占める親会社の役職員との兼務がある取締役は6名中で1名とし、独立社外取締役が3分の1を占める構成としてします。当社の業務執行に係る意思決定に親会社からの承認は求められません。しかしながら、そのようなガバナンスが適切に機能しない場合には、親会社の意向が当社の経営判断に強く影響し、少数株主の利益が脅かされる可能性があります。
他方、当社取締役に親会社の役職員との兼任者がいなくなり、期待していた知見が提供されず同等程度以上の会社経営に関する知見を有した取締役を招聘できない場合には、当社の事業、経営成績又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅱ)当社株式の流動性について
本書提出日現在、当社の親会社であるエムスリー株式会社は、当社の議決権の63.45%を所有しています。当社は今後も流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により、新規上場時よりも流動性が低下する場合には、売買が停滞する可能性があり、当社株式の需給関係に悪影響を及ぼす可能性があります。今後は当社の親会社への一部売出しの要請やストックオプションや株式を活用したインセンティブプラン、事業規模、売上収益及び利益額の成長を通じた株主層の拡大等の組み合わせにより、必要に応じて流動性の向上を図っていく方針です。
また、親会社が当社株式を市場内外で売却する場合又はその懸念が市場において認識される場合、当社株式の需給の悪化又はそのおそれにより、当社株式の市場価格に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業内容について
① 医療機関セグメントについて
(ⅰ)支援先医療機関について
支援先医療機関においては、医師又はコメディカル(医師を除く看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、管理栄養士等の医療従事者)等の不足、各種法令、許認可、指定等の不遵守、情報漏洩、不正、医療事故又は感染症の流行等の事象が発生しないよう事業を行っていると理解しています。
しかしながら、何らかの理由により支援先医療機関において上記の事象が発生した場合や、想定外の大幅な診療報酬改定が行われた場合等には、当該支援先医療機関の事業運営や業績が悪化する可能性があります。
これにより当社グループが予定していた業務受託報酬を請求あるいは回収できなくなる可能性があるほか、支援先医療機関において不適切な事象等が発生したことで、それらの医療機関に対して経営支援を行っている当社及び当社の事業に対する評価や社会的信頼に悪影響を及ぼすなど、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅱ)支援先医療機関との業務委託契約について
当社は支援先医療機関に対する経営支援サービスの質の向上及びそのサービスメニューを拡大することで、支援先医療機関からの業務委託を継続していただけるよう日々取り組んでいます。
しかしながら、支援先医療機関との関係が悪化した場合や、支援先医療機関の経営方針の転換が生じた場合等には、業務委託契約が解除にいたる可能性があります。また、支援先医療機関の事情や判断で、業務委託契約が更新されない可能性があります。
医療機関セグメント(国内)の売上収益は主に支援先医療機関からの報酬によって構成されますが、支援先医療機関の経営状態は様々な要因により悪化する可能性があり、支援先医療機関の経営状態が悪化した場合、当社の業務受託報酬を請求あるいは回収できなくなる可能性があります。そのような事象が重なるようなことがあれば当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、弁護士等の専門家との連携により、支援先医療機関との業務委託契約については医療法の剰余金配当の禁止に抵触していないと認識しています。
(ⅲ)海外での医療行為提供について
当社グループは、海外においては、当社グループが直接、医師や看護師を雇用し医療行為を提供しています。危機管理マニュアルの遵守を徹底し医療事故等が発生しないように最新の注意を払いながら医療行為の提供を行っていますが、現地の医療事情、法規制、慣習その他の理由により、万が一事故等が発生した場合には、国内を含む当社グループの事業に対する社会的信用が低下し、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅳ)ファクタリングについて
当社グループは医療機関が有する診療報酬債権を買取り、その債権の回収を行う診療報酬ファクタリングサービスを提供しています。当該債権に関しては、当社グループ規程に基づき、診療報酬額のモニタリングを行い、リスク管理を実施しています。
また、そのすべてが国民健康保険団体連合会及び社会保険診療報酬支払基金に対するものであるため、債権の回収不能リスクは低いと考えていますが、何らかの事情によりその回収が遅延又は不能になるようなことが発生した場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントについて
(ⅰ)診療報酬及び介護報酬について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、健康保険制度に基づく医療保険収入と介護保険制度に基づく介護保険収入が収入の大部分を占めます。健康保険制度は2年に1度、介護保険制度は3年に1度の頻度で改定が行われ、当社グループでは、長期的な改定の方向を見据え収入源の分散や中重度対応等の取組をしています。
しかしながら、想定外の大幅な減額改定が行われた場合には、当社グループが収受する診療報酬・介護報酬が減少するほか、当社グループのサービスの顧客数や利用頻度・利用額が減少するなどの事情が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(ⅱ)顧客の安全について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、訪問看護師、訪問介護士、訪問セラピスト等に対し顧客の安全を守るための教育研修を実施し、事故の発生防止や緊急事態に対応出来るように取り組んでいます。
しかしながら、医療依存度、介護依存度の高い高齢者や障害者等にサービスを提供する場合、サービス提供中の転倒・転落等の不慮の事故など、顧客の生命、安全にかかわる事故が発生する可能性は一定程度あります。
また、当社グループでは、サービス提供者による顧客への身体的虐待、介護・看護の放棄・放任、心理的虐待等が発生しないよう役職員を対象とした教育研修やマニュアルの整備を行うとともに、そのようなことが起きない組織風土の醸成に取り組んではいますが、上記のような不適切な事象を完全に防止できる保証はありません。
万が一これらの事象が発生し、訴訟等で過失責任が問われるような事態が生じた場合、当社はかかる事態に備えて損害賠償責任保険を付保していますが、損害賠償義務が生じた場合には当社による金銭的な負担が生じるほか、当社や当社の運営する施設等に対する社会的信用が低下し、又は風評被害等によって当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅲ)虐待等の防止について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、訪問看護師、訪問介護士、訪問セラピスト等がホスピス型住宅を含む顧客の居宅においてそのサービスを提供します。当社グループでは、サービス提供者による顧客への身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待等の高齢者虐待が発生しないよう役職員を対象とした教育研修やマニュアルの整備を行うとともに、そのようなことが起きない組織風土の醸成に取り組んでいます。
しかしながら、万が一そのような事象が発生し、顧客やその家族よりそのような訴えがあった場合には、多額の損害賠償責任を負う可能性があるほか、当社グループ及びそのサービスに対する社会的評価が失墜し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅳ)顧客の逝去について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、行政や医療機関等との連携によって、安定的な顧客の確保に努めており、高齢者の増加とともに需要が増加している状況にあると認識しています。
しかしながら、顧客には医療依存度の高い高齢者やがん末期及び難病患者等が多く含まれることから、当社グループが想定する以上の顧客の逝去が続いた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅴ)システム障害について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては電子カルテを使用していますが、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合、また漏洩した情報が不正使用される等の機密情報の流出が生じた場合には、重大なトラブルが発生する可能性があります。
災害時対応として紙媒体で顧客情報を保管する等の対応をしていますが、想定外の規模のシステム障害やその復旧の長期化等の事象が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅵ)ホスピス事業における新規開設遅延について
ホスピス事業では、その事業拡大のために新規施設を計画的に開設していくことが必要になります。しかしながら、他社との競合により好立地を確保できない場合、各種規制により新規施設が開設できない場合、その他例えば土地から埋蔵物が発見される場合や、工事期間中の台風や大雪といった不可抗力な事由等、予測困難な事由が発生する場合には、開設計画の実現性が不確実となります。
以上の不確定要素をはじめ、建設人材や建材の不足等何らかの理由で大幅な開設時期遅延が生じた場合には、利益機会を逸失し当社グループの事業、経営成績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(ⅶ)ホスピス事業における協働先との契約の早期終了について
ホスピス事業では、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅を運営する事業者との協働契約(相手方事業者は施設の運営のみを担当又は施設の運営と訪問介護を担当)を締結し、当社グループが訪問看護又は、訪問看護及び訪問介護を提供している施設があります。
相手先事業者の事業停止や倒産、協働契約の違反等何らかの事由で協働契約が早期に終了する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅷ)地域との関係について
ホスピス事業では、独自の市場調査に基づき新規開設場所を選定しています。しかしながら、結果的に事業の収益性が当初見込みに届かず撤退を検討する可能性があり、当社グループ施設撤退後の入居者の転居先確保が困難な場合は当社グループの社会的評判が低下する可能性があります。
また、医療機関や行政機関との関係性維持の観点から即時撤退を行うことが困難な場合には、収益が確保できないまま事業を継続しなければならない可能性があり、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅸ)長期賃貸借契約について
ホスピス事業が運営する一部の施設について、土地又は建物もしくはその両方を当社グループ外の第三者より賃貸借契約に基づき賃借しています。
事業の特性上、長期間の賃貸借契約を締結することが多く、この場合一定期間は撤退の制約が課されるとともに、もし契約期間内に撤退する場合には中途解約による違約金等の支払が発生するため、当社グループは契約締結に際し、当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす契約内容とならないよう細心の注意を払っています。
しかしながら、事業の収益性が当初見込みに届かず中途解約し、撤退せざるを得ない状況が重なるような事象が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅹ)居宅訪問看護事業における移動中の交通事故について
居宅訪問看護事業において、訪問看護サービスを提供する従業員は、自転車又は自動車を使用して利用者の居宅へ訪問しています。当社グループは従業員の安全を守り、ひいては安定的に利用者へサービス提供をできる状態を確保するため、従業員に対し交通事故防止のための教育研修を実施しています。
しかしながら、当社グループの従業員が悪質な交通事故等を起こした場合には、当社グループが使用者として損賠賠償の負担を余儀なくされる可能性があるほか、当社グループの社会的信用が低下するなど、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他
① 資産の減損について
当社グループではM&A(子会社化や事業譲受等)の結果として有形固定資産、のれん及び償却期間の定めのある無形資産等の資産を有しています。当社グループは事業の収益性及び成長性を考慮して事業やセグメントを構成しており、減損リスクの高い事業については適切なモニタリングを実施しています。
しかしながら、将来的に予測不能な原因等による収益性の悪化、あるいは当社グループのモニタリング機能の不備等により、減損損失が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権について
当社グループでは当社グループの持つ知的財産権を侵害されないよう細心の注意を払っていますが、他社からの侵害を把握しきれない、もしくは適切な対応ができない場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが各種サービスを展開するにあたっては、他社の持つ特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、万が一、他社の知的財産権を侵害した場合には、多額の損害賠償責任を負い、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 非支配株主について
当社グループの海外子会社の一部には非支配株主が存在します。当該非支配株主とは事業拡大に向け良好な関係を保っており、当該子会社等の意思決定に影響を及ぼすことは現時点で想定していませんが、万が一、当該非支配株主との関係が悪化した場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
④ 海外展開について
当社グループは、海外子会社を通じて現地での事業展開をしていますが、現地での関連法令・税制・政策の制定、改正又は廃止、政治的、経済的環境の変化、電力・輸送・通信等のインフラの停止・遅延、人件費の上昇、為替変動、地政学的な緊張の高まり又は伝染病の蔓延や自然災害発生等のカントリーリスクを内在しています。
当社は社員が現地に常駐することで、現地の政府当局や弁護士事務所などからの情報連携を強化し、早期に情報収集をすることでリスクの低減に努めていますが、かかるリスクが顕在化し、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ コンプライアンスについて
当社グループでは、コンプライアンスの遵守を重要課題と位置づけ、健康保険法、介護保険法、障害者総合支援法、老人福祉法、高齢者住まい法、労働基準法、消防法等をはじめとする法令及び諸規程を遵守し、企業人、社会人として良識のある行動をするよう従業員の意識向上を図っています。しかしながら、万が一、コンプライアンス遵守に抵触する事象が発生した場合には、法令による処罰や提訴、社会的信用力の低下につながり、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 訴訟等について
当社グループは、法令遵守を重視したサービスを提供しており、現時点において当社グループの事業、経営成績又は財政状態に影響を及ぼす訴訟が提起されている事実はありませんが、顧客やその家族等からの信頼が失われる事象の発生等により、当社グループが訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。これらの法的手続に関連して多額の費用を支出し、また、事業活動に支障をきたす恐れがあり、万が一、当社グループに不利な司法判断等がなされた場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、医療機関セグメント(国内)においては、当社グループが直接医療を提供しないものの、支援先医療機関で同様の事象が生じた場合には、支援先医療機関からの訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。また支援先医療機関に対して経営支援を行っている当社及び当社の事業に対する評価や社会的信頼に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大規模な災害等について
当社グループは、不測の事態に備え事業継続計画(BCP)の策定等を行っており、非常用物品の備蓄、各種研修、訓練等を行っていますが、大規模な地震、台風、津波、洪水、大雨等の災害又は感染症の拡大等により、事業所建物や看護師、介護士、セラピストを含む当社グループの従業員及び顧客が損害を被った場合、あるいは、当社の事業所の運営やサービス提供に制約が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 新株予約権の行使について
当社グループでは、役職員等に対するインセンティブを目的として、当社の新株予約権を付与しています。また、今後も新株予約権を発行、付与する可能性があります。2024年3月31日現在、発行済株式総数29,990,400株に対して、新株予約権の行使により今後増加する可能性のある株式数は727,500株です。現在付与している新株予約権及び今後付与される新株予約権が行使された場合、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑨ 有利子負債について
当社グループは、運転資金については自己資金で対応し、設備投資やM&A資金は株式上場時の調達資金に加え、借入などにより外部調達することを基本方針としています。そのため、外部調達の金利水準が変動した場合や計画どおりの資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態又はキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 配当政策について
当社グループは、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を目指しており、そのためには、将来の成長を見据えたホスピス施設への先行投資や設備投資、新規事業や海外への先行投資等を積極的に行うことが重要であると認識しており、現時点では事業の拡大と効率化のために投資し、企業価値の増大を優先すべきだと考えています。
しかしながら、今後は財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施していく方針です。ただし、当社グループの業績が計画どおりに進展しない等、当社グループの業績が悪化した場合には、継続的に配当を行えない可能性があります。
⑪ 資金使途について
株式上場時における調達資金の使途については、主にホスピスの建設資金に充当する予定です。しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画外の使途にも充当される可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。この場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 新たな感染症について
今後、新型コロナウイルス感染症又はこれと同様に生命に重要な影響を与える新たな感染症が発生した場合には、当社グループの提供するサービスへの需要の減少を招く事態となり得るとともに、感染状況によっては、行政からのサービス休止・縮小要請、従業員や顧客への感染による事業所の一時的な閉鎖等により、当社グループの事業又は業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、新たな感染症による医療機関セグメントの支援先医療機関の売上高減少等により、予定していた業務受託報酬を請求あるいは回収できない場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の概況
(資産)
資産合計は、前連結会計年度末比23,086百万円増の62,836百万円となりました。流動資産については、前連結会計年度末比4,919百万円増の17,651百万円となりました。これは主に現金及び現金同等物が東京証券取引所グロース市場への上場に伴う新株発行により13,109百万円増加しましたが、一方でCUC Podiatry Holdings, LLC(以下、CUC Podiatry Holdings)の持分取得により9,734百万円減少したこと等により現金及び現金同等物が4,135百万円増加したことによるものです。非流動資産については、前連結会計年度末比18,167百万円増の45,185百万円となりました。これは主にホスピス型住宅の増加等に伴い有形固定資産が4,678百万円増加したこと及びCUC Podiatry Holdingsの連結子会社化に伴い使用権資産が2,957百万円、のれんが8,919百万円、無形資産が1,645百万円、それぞれ増加したことによるものです。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度末比7,001百万円増の34,831百万円となりました。これは主に、既存借入金のリファイナンス(借換え)により、流動負債の借入金は14,040百万円減少となりましたが、一方で非流動負債の借入金は16,434百万円増加したこと及び使用権資産の増加に伴いリース負債が2,873百万円増加したことによるものです。
(資本)
資本合計は、前連結会計年度末比16,085百万円増の28,005百万円となりました。これは主に東京証券取引所グロース市場への上場に伴う新株発行により、資本金が6,606百万円増加、資本剰余金が6,503百万円増加し、また親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が2,593百万円増加したこと等によるものです。
② 経営成績の状況
従来、報告セグメントについては、「医療機関支援」及び「訪問看護」の2区分としていましたが、当第1四半期連結累計期間より「医療機関支援」、「ホスピス」及び「居宅訪問看護」の3区分に変更しています。
当連結会計年度に、米国において足病及び静脈疾患クリニックの運営を行うCUC Podiatry Holdingsの持分の79.35%を取得し、連結子会社としたことに伴い、当社グループ全体の事業内容を適切に表示するため、当連結会計年度末より報告セグメントの名称を従来の「医療機関支援」から、「医療機関」へ変更しています。
当連結会計年度の業績は、以下のとおりです。また、当連結会計年度からのセグメント変更に伴い、前年同期の数値を新たな報告セグメントに組み替えて表示しています。セグメント変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」を参照ください。
なお、EBITDAの計算式は次のとおりです。
EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費±その他の収益・費用
(当連結会計年度の業績)
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(単位:百万円) |
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|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
比較増減 |
|
|
売上収益 |
35,210 |
33,025 |
△2,185 |
△6.2% |
|
営業利益 |
3,683 |
3,737 |
+54 |
+1.5% |
|
税引前利益 |
3,634 |
4,138 |
+505 |
+13.9% |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
2,423 |
2,595 |
+173 |
+7.1% |
|
EBITDA |
4,982 |
5,524 |
+541 |
+10.9% |
(セグメントの業績)
|
(単位:百万円) |
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|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
比較増減 |
|
|
医療機関 |
セグメント売上収益 |
16,441 |
12,182 |
△4,260 |
△25.9% |
|
セグメント利益 |
2,955 |
3,932 |
+976 |
+33.0% |
|
|
EBITDA |
3,492 |
4,895 |
+1,403 |
+40.2% |
|
|
ホスピス |
セグメント売上収益 |
6,633 |
10,389 |
+3,755 |
+56.6% |
|
セグメント利益 |
191 |
349 |
+158 |
+82.8% |
|
|
EBITDA |
475 |
697 |
+222 |
+46.8% |
|
|
居宅訪問看護 |
セグメント売上収益 |
12,192 |
10,946 |
△1,247 |
△10.2% |
|
セグメント利益 |
1,351 |
616 |
△735 |
△54.4% |
|
|
EBITDA |
1,820 |
1,086 |
△734 |
△40.3% |
|
|
その他 |
セグメント売上収益 |
205 |
205 |
△0 |
△0.2% |
|
セグメント利益 |
29 |
18 |
△11 |
△36.5% |
|
|
EBITDA |
39 |
23 |
△16 |
△40.6% |
|
|
調整額 |
セグメント売上収益 |
△263 |
△696 |
△433 |
- |
|
セグメント利益 |
△843 |
△1,178 |
△334 |
- |
|
|
合計 |
セグメント売上収益 |
35,210 |
33,025 |
△2,185 |
△6.2% |
|
セグメント利益 |
3,683 |
3,737 |
+54 |
+1.5% |
|
|
EBITDA |
4,982 |
5,524 |
+541 |
+10.9% |
|
(既存サービスとコロナ関連サービス等のセグメント売上収益)
前々連結会計年度に開始した医療機関セグメントにおける新型コロナウイルス感染症ワクチン接種支援サービス並びに居宅訪問看護セグメントにおける在宅治験及び健康観察支援サービスを「コロナ関連サービス等」として定義し、コロナ関連サービス等以外のサービスを「既存サービス」として定義しています。当該コロナ関連サービス等は当連結会計年度に大幅に縮小しましたが、前連結会計年度との比較を行うため、以下では既存サービスとコロナ関連サービス等に分けて記載しています。なお、当連結会計年度より、従来、「新規サービス」としていた名称を「コロナ関連サービス等」に変更しています。当該名称変更によるセグメント情報に与える影響はありません。
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(単位:百万円) |
|||||
|
サービス |
セグメント |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
比較増減 |
|
|
既存サービス |
医療機関 |
8,307 |
12,075 |
+3,768 |
+45.4% |
|
ホスピス |
6,633 |
10,389 |
+3,755 |
+56.6% |
|
|
居宅訪問看護 |
9,539 |
10,550 |
+1,010 |
+10.6% |
|
|
その他 |
205 |
205 |
△0 |
△0.2% |
|
|
調整額 |
△263 |
△696 |
△433 |
- |
|
|
合計 |
24,423 |
32,523 |
+8,100 |
+33.2% |
|
|
コロナ関連サービス等 |
医療機関 |
8,134 |
106 |
△8,028 |
△98.7% |
|
ホスピス |
- |
- |
- |
- |
|
|
居宅訪問看護 |
2,653 |
396 |
△2,257 |
△85.1% |
|
|
合計 |
10,787 |
502 |
△10,285 |
△95.3% |
|
|
合計 |
35,210 |
33,025 |
△2,185 |
△6.2% |
|
a.医療機関セグメント
当セグメントにおいては、当連結会計年度の支援先主要拠点数(注1)は108(前年同期比17拠点増)となり、支援先主要拠点当たり年間売上収益(注2)が98百万円(前年同期比8百万円増)となったことと、米国において足病及び静脈疾患クリニックの運営を行うCUC Podiatry Holdingsの持分を取得し、連結子会社としたことにより、既存サービスによる売上収益は12,075百万円(前年同期比45.4%増)となりました。
一方、前々連結会計年度より開始した新型コロナウイルス感染症ワクチン接種支援サービスが大幅に縮小したため、当セグメント全体の売上収益は12,182百万円(前年同期比25.9%減)となりました。
当セグメント全体の営業損益及びEBITDAについては、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種支援サービスに係る利益が減少した一方、既存サービスに係る利益の増加により、営業利益は3,932百万円(前年同期比33.0%増)及びEBITDAは4,895百万円(前年同期比40.2%増)となりました。
(注)1.当社が日本国内において経営支援を提供する病院、介護老人保健施設、訪問診療クリニック、透析クリニック、外来クリニックの数(期中平均)。
2.既存サービス(国内)による売上収益を支援先主要拠点数(期中平均)で除して算出。
b.ホスピスセグメント
当セグメントにおいては、2023年1月に連結子会社化した株式会社ネイチャー、株式会社A&N及び株式会社ゆうの業績が通年で寄与したこと及び当連結会計年度における新規開設(7箇所)等により、売上収益は10,389百万円(前年同期比56.6%増)、営業利益は349百万円(前年同期比82.8%増)及びEBITDAは697百万円(前年同期比46.8%増)となりました。
c.居宅訪問看護セグメント
当セグメントにおける利用者数と利用者あたりケア時間の増加に伴い、当連結会計年度ののべ総ケア時間(注)は1,065千時間(前年同期比112千時間増)となり、当セグメントの既存サービスによる売上収益は10,550百万円(前年同期比10.6%増)となりました。一方、前々連結会計年度より開始した在宅治験及び健康観察支援サービスが大幅に縮小したため、当セグメント全体の売上収益は10,946百万円(前年同期比10.2%減)となりました。
当セグメント全体の営業損益及びEBITDAについては、看護師及びセラピストの稼働率向上により既存サービスに係る利益が増加した一方、在宅治験及び健康観察支援サービスに係る利益の減少により、営業利益は616百万円(前年同期比54.4%減)及びEBITDAは1,086百万円(前年同期比40.3%減)となりました。
(注)当セグメントの看護師及びセラピストが利用者に居宅訪問看護サービスを提供した時間の合計。セラピストは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の総称。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は33,025百万円(前年同期比6.2%減)、営業利益は3,737百万円(前年同期比1.5%増)、EBITDAは5,524百万円(前年同期比10.9%増)、税引前利益は4,138百万円(前年同期比13.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,595百万円(前年同期比7.1%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末残高より4,135百万円増加し、8,256百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、4,156百万円の収入(前年同期は2,357百万円の収入)となりました。主に、税引前利益4,138百万円、減価償却費及び償却費1,806百万円によるキャッシュ・フローの増加及び金融収益の調整687百万円の減少、法人所得税の支払額1,097百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、14,746百万円の支出(前年同期は6,682百万円の支出)となりました。主に、CUC Podiatry Holdingsの持分取得による9,734百万円の支出及びホスピス型住宅の新規開設に伴う有形固定資産の取得による支出4,859百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、14,373百万円の収入(前年同期は3,972百万円の収入)となりました。主に借換えに伴う短期借入金の純減少額16,040百万円、長期借入金による収入19,920百万円及び長期借入金の返済による支出1,500百万円、株式の発行による収入13,109百万円、リース負債の返済による支出1,121百万円によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、製品の生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。
b.受注実績
当社グループは、実績に応じて売上が計上される契約がほとんどであり、受注時に受注金額を確定することが困難な状況であるため、記載を省略しています。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(単位:百万円)
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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医療機関 |
11,487 |
△29.0 |
|
ホスピス |
10,388 |
+56.6 |
|
居宅訪問看護 |
10,945 |
△10.2 |
|
報告セグメント計 |
32,820 |
△6.2 |
|
その他 |
205 |
△0.2 |
|
合計 |
33,025 |
△6.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%を超える相手先がないため、記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要性がある会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務
諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。また、連結財務諸表の作成にあたっては、企業結合における無形資産の公正価値の測定、非金融資産の減損テスト、金融商品の公正価値の評価について、過去の実績や将来キャッシュ・フロー等を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積り及び予測を行っていますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合等の不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りや予測と異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
③ 資金の源泉と流動性についての分析
当社グループの主な資金需要は、事業活動にかかる人件費、ホスピス事業の土地取得及び新規ホスピス型住宅建設費用、居宅訪問看護事業の新規拠点開設費用等です。当連結会計年度に当社グループは上場することにより資金調達を行い、調達した資金はホスピス型住宅の建設に充当する予定です。加えて外部借入により資金調達を行っています。また、当社を頂点とする当社グループのCMSを導入しており、当社グループ内資金を当社が一元管理しています。各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで資金効率の向上を図っています。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のと
おりです。
(借入金の借換え)
当社は、親会社からの借入金の解消を目的として金融機関との金銭消費貸借契約を締結し、長期借入金の借入を行いました。また、2023年5月9日付で、既存の金銭消費貸借契約に基づく親会社からの借入金の返済を行いました。
新たに締結した金銭消費貸借契約の主な内容は、以下のとおりです。
(1) 借入先
株式会社三菱UFJ銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社みずほ銀行、
株式会社三井住友銀行、株式会社りそな銀行
(2) 借入金総額 20,000百万円
(3) 借入実行日 2023年5月9日
(4) 返済期限 2033年5月9日
(5) 借入金利 基準金利にスプレッドを加算した利率
(6) 主な借入人の義務
以下の財務制限条項を同時に遵守することです。
① 各連結会計年度末の連結財政状態計算書における資本合計の金額を、直前の連結会計年度末日又は2023年3月期末日の連結財政状態計算書における資本合計の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上に維持すること
② 各連結会計年度の連結損益計算書上の営業損益に関して、2連結会計年度連続して営業損失を計上しないこと
(会社分割による当社連結子会社への事業承継)
当社は、2023年9月5日付の取締役会において、2023年11月1日を効力発生日として、当社が行う診療報酬等のファクタリングサービスに係る事業を吸収分割の方法により当社連結子会社である株式会社シーユーシー・ファイナンス(以下「シーユーシー・ファイナンス」)に承継させること(以下「本吸収分割」)を決議しました。
(1)本吸収分割の目的
当社が運営する診療報酬等のファクタリングサービスに係る事業をシーユーシー・ファイナンスに承継させることで、当社グループにおける経営管理の最適化及び効率的な事業運営を図ることを目的としております。
(2)本吸収分割の方法、吸収分割に係る割当ての内容その他の吸収分割契約の内容
① 吸収分割の方法
当社を吸収分割会社とし、シーユーシー・ファイナンスを吸収分割承継会社とする吸収分割です。
② 吸収分割に係る割当ての内容
本吸収分割は、完全親子会社間において行われるため、本吸収分割に際して株式の割当て、その他対価の交付は行いません。
③ その他の吸収分割契約の内容
ⅰ)吸収分割の日程
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吸収分割契約の取締役会決議日 |
2023年9月5日 |
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吸収分割契約締結日 |
2023年9月5日 |
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吸収分割の効力発生日 |
2023年11月1日 |
(注)本吸収分割は、当社においては会社法第784条第2項にする簡易吸収分割に該当するため、株主総会の決議を経ずに行います。
ⅱ)承継により増加する資本金
本吸収分割による資本金の増減はありません。
ⅲ)分割会社の新株予約権及び新株予約権付社債に関する取り扱い
該当事項はありません。
iv)承継会社が承継する権利義務
本吸収分割に関する資産、負債及び契約上の地位等の権利義務のうち、吸収分割契約書において定めるものを承継します。
ⅴ)債務履行の見込み
本吸収分割の効力発生日以後において当社及びシーユーシー・ファイナンスの履行の見込みに問題はないものと判断しています。
(3)本吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠
該当事項はありません。
(4)本吸収分割の後の吸収分割承継会社となる会社の商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金の額、純資産の総資産の額及び事業の内容
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商号 |
株式会社シーユーシー・ファイナンス |
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本店の所在地 |
東京都港区芝浦三丁目1番1号 |
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代表者の氏名 |
代表取締役 桶谷 主税 |
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資本金の額 |
10万円 |
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純資産の額 |
35百万円 |
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総資産の額 |
3,136百万円 |
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事業の内容 |
診療報酬等のファクタリングサービス |
(取得による企業結合)
当社は、2023年12月22日付の取締役会において、当社の子会社であるCUC America Inc.を通じて、Albaron Podiatry Holdings, LLCの79.35%の持分を取得することを決議し、同日付で持分譲渡契約を締結しました。同契約に基づき、2024年1月6日付で同社を連結子会社化しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.企業結合」に記載のとおりです。
(シンジケートローン契約)
当社は、2024年5月30日付の取締役会において、シンジケートローン契約を締結することを決議し、2024年6月5日付で契約締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 38.後発事象」に記載のとおりです。
該当事項はありません。