第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、経営基本方針として「積極経営」「技術錬磨」「人間尊重」を掲げております。この基本方針のもと、電力機器事業では、信頼性の高い製品を提供することにより、電力事業の一端を担い、電力の安定供給に寄与しております。また、回転機事業では、小型モータおよびモータ応用製品ならびに電子機器等の分野において高性能で高品質な製品を開発することにより、社会生活の向上に貢献しております。

(2) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題

当社グループを取巻く事業環境は、空調市場が足元で調整局面となっておりますが、脱炭素化の流れやDXの進展などの社会環境の変化から、中長期的には、再生可能エネルギー関連の電力機器需要増加やヒートポンプの市場拡大、電動車の更なる普及、半導体パッケージ基板の需要拡大と高度化・多層化が見込まれます。

こうした環境変化に迅速に対処するため、当社は2028年度を最終年度とする、新たな5年間計画「中期経営計画2028」を策定いたしました。この計画では基本方針の「新製品・新事業の発掘・育成」「ものづくり力の強化」「経営基盤の強化」により、信頼と品質を高め、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、ありたい姿「ものづくりを通じて、豊かな暮らしと持続可能な社会づくりに貢献する企業集団」を目指した経営に取り組んでおります。

(1) ガバナンス

当社は、環境の変化に素早く的確に対応することが株主の皆様をはじめとする社会全体からの信頼を獲得する鍵であると認識し、経営判断における意思決定の迅速化と透明性を確保すべく、以下の基本的な考え方に基づき、コーポレート・ガバナンスの充実・強化に努めております。

1.株主の権利を尊重し、株主の実質的な平等性の確保に努める。

2.ステークホルダーとの適切な協働を図る。

3.会社情報を適切に開示し透明性を確保する。

4.取締役会による実効性のある経営および業務執行の監督を行う。

5.株主との間で建設的な対話を行う。

<体制図>


 

 

(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

①人材育成の推進

経営戦略の実現のためには、当社社員の一人一人の成長を促す仕組みづくりが不可欠です。OJT、研修、自己啓発を3本の柱として、人材の育成を推進しています。OJTは、主に目標管理制度・メンター制度による職場教育に取り組んでいます。研修は新入社員研修を始めとした階層別研修、業務に必要なテーマ研修など、必要に応じて受講できるものとしています。自己啓発は、通信教育の受講料や公的資格の受験料などの支援をしています。


②働きやすい職場環境づくりの推進人材育成の推進

ワークライフバランスの推進に向け、ノー残業デーの設定、育児短時間フレックスタイム制の導入など働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。毎週水曜日は定時退社日と定め、定時での退社を促しています。女性社員の育児休業取得率は100%を維持し、男性社員の育児休業取得率は65.4%と近年、増加傾向にあります。

 

育児休業取得者

本人または配偶者が出産

取得率

女性

7人

7人

100.0%

男性

17人

26人

65.4%

 

③健康経営

社員が心身ともに健康で、活き活きと働ける職場を目指し健康経営を推進しています。その一環として、2017年にトレーニングジムを開設し、さらに2021年には音楽室を開設しました。

さらに、産業医・看護師が連携しながら、社員への面談などを実施し、フィジカルヘルス、メンタルヘルスの両面で不調者の早期発見、保健指導を行っております。

(3) リスク管理

当社は、事業運営に関する様々なリスクに対して的確に対応するため、リスク管理規程を定めております。経営に重大な影響を与えるリスクについては、経営計画の策定および重要な意思決定にあたり各部門が把握・評価し、取締役会および常務会において審議または報告を行っております。具体的には、リスク管理規程に従い各部門は、年2回定期的にリスクを把握・評価し、リスク対策の状況を管理部門に報告するとともに、リスク対策を反映した業務計画を策定し、業務を遂行しております。

また、災害による損失の軽減をはかるため災害対策規程を定め、経営に与える影響を最小限となるようしております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 特定顧客への依存

当社グループの事業は、変圧器およびその他周辺機器からなる電力機器、小型モータおよびモータ応用製品ならびに電子機器等からなる回転機の製造・販売を主な内容としております。
  電力機器事業では電力会社、回転機事業では電機および機械メーカ等の顧客を中心に販売をしており、両事業とも特定の顧客に対する販売依存度が高い傾向にあります。今後、電力会社における設備投資等の動向や電機メーカの内製化推進などの市場環境の変化は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 子会社の業績動向

当社グループは、製造、販売、部品供給などグループ会社間の協業に加え、各社の独自事業によりグループ経営を行っております。連結子会社の業績が大きく変動した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 材料価格等の上昇

当社グループの主力製品は、銅、油などの基礎素材を使用しております。また、部材の一部を海外より調達しております。原油価格や為替レートなどの変動により、これらの材料価格が上昇した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 海外事業

当社グループは、中国をはじめとする東南アジア地域やアフリカ地域において活動を推進しております。これらの地域において、経済・政情の悪化、法律・規則の変更、労使関係の悪化等が、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(5) 競合

当社グループは、継続的に新製品の開発に取組むとともに、既存製品の高品質化および製造原価の低減等に努めております。しかしながら、競合他社との競争が激化した場合には、当社グループ製品の優位性の低下や販売価格の下落等により、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(6) 特定仕入先への依存

当社グループは、原材料等を複数の仕入先から調達する方針を採っておりますが、調達する原材料等によっては、特定の仕入先に依存している原材料等があります。このため、これら仕入先に不測の事態等が生じ、原材料等の供給が途絶えた場合には、当社グループの生産活動に支障が生じ、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(7) 製品の欠陥

当社グループは、品質管理および技術関係部署を中心に品質の維持向上に努めております。しかしながら、瑕疵担保責任や製造物責任につながるような製品の欠陥が生じた場合には、多額のコスト発生、ブランドイメージの低下等により、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(8) 情報セキュリティ

当社グループは、技術や営業に関する機密情報に対して様々な情報セキュリティ対策を講じております。しかしながら、不測の事故または事件等により機密情報の外部流出等の問題が生じた場合には、社会的信用の低下や損害賠償請求等により、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります

(9) 知的財産権

当社グループは、他社と差別化できる技術の蓄積に努めており、自社が保有する技術等については知的財産権の取得による保護を図るとともに、他社の知的財産権に対する侵害がないよう管理を行っております。しかしながら、当社グループが認識していない知的財産権の存在によって第三者から訴訟等の法的措置が提起された場合には、その結果によっては当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります

(10) 固定資産の減損

当社グループは、既存事業の競争力強化および新製品対応のため、設備投資を行っております。しかしながら、将来、経営環境の著しい悪化等により収益性が低下し、投資額の回収が見込めない場合には、減損損失の発生により、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります

(11) 自然災害等

当社グループは、震災等の緊急事態に備え、事業継続のための体制を整備しております。しかしながら、想定を著しく上回る大規模な自然災害等が発生した場合には、設備の損壊、原材料等の調達困難等により、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

また、新型コロナウイルス感染症に関しては、5類感染症に移行したことなどにより、社会経済活動が正常化している一方、新たな感染症の発生による操業停止あるいは原材料調達先での操業停止等により生産に大きな影響が生じた場合、または世界的感染拡大により当社製品需要が大きく変動した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな回復が続いているものの、海外経済の減速やウクライナ紛争の長期化などにより、先行き不透明な状況が続いています。当社グループにおきましては、空調市場の中国不動産不況や巣篭り需要の反動による低迷、半導体市場の調整局面による伸び悩みなど、回転機事業の受注環境は厳しい状況となりました。

こうした状況の中、当社グループは「中期経営計画2023 ~確かな技術で未来をひらく~ 変革と挑戦」の最終年度として経営目標の売上高1,000億円、経常利益60億円、ROA6.0%の達成に努めるとともに、持続的成長に向けた活動を推進してまいりました。電力機器事業では、次世代デジタル制御製品や水力発電システムなど新製品・新事業の創出に取り組むとともに、TPSかいぜん活動による生産性向上に努めました。回転機事業では、成長分野である車載空調圧縮機用モータの生産能力増強やパッケージ基板用コア(プリント配線板)の新工場立上げなどに取り組んでまいりました。

連結業績につきましては、電力機器事業が全般的に堅調でしたが、回転機事業が建物空調圧縮機用モータの受注低迷により、売上高は3.2%減の1,105億9千5百万円、営業利益は5.9%減の70億5千9百万円、経常利益は5.5%減の83億1千2百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は0.3%減の59億3千7百万円と前連結会計年度比で減収減益になりましたが、中期経営計画の数値目標はいずれも達成いたしました。

セグメント別の業績につきましては、以下のとおりです。

<電力機器事業>

売上高は前連結会計年度比6.9%増の335億6千万円、セグメント利益は前連結会計年度比46.7%増の38億8千7百万円となりました。中型変圧器が送配電会社向け自動電圧調整器、一般産業向け変圧器ともに堅調であったことやプラント工事が国内で増加したことなどにより、増収増益となりました。

<回転機事業>

売上高は前連結会計年度比7.1%減の770億3千4百万円、セグメント利益は前連結会計年度比24.5%減の50億7千5百万円となりました。プリント配線板や車載空調圧縮機用モータは前連結会計年度を上回りましたが、建物空調圧縮機用モータが国内・海外向けともに大幅減となったことにより、減収減益となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

電力機器

31,384

9.3

回転機

68,719

△8.0

合計

100,103

△3.2

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

電力機器

33,762

5.6

2,375

9.3

回転機

76,191

△5.5

2,537

△24.9

合計

109,953

△2.3

4,912

△11.5

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

電力機器

33,560

6.9

回転機

77,034

△7.1

合計

110,595

△3.2

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

中部電力グループ(※)

14,600

12.8

14,247

12.9

 

(※)中部電力グループの販売高には、中部電力㈱、中部電力パワーグリッド㈱、中部電力ミライズ㈱の金額を記載しております。

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ109億6千8百万円増加し1,343億4千7百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末と比べ20億8百万円増加し866億6千8百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加53億6千4百万円、売上債権の減少53億6百万円、有価証券の増加30億円、棚卸資産の減少14億9千4百万円、その他に含まれる未収消費税の増加5億7千5百万円によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末と比べ89億6千万円増加し476億7千8百万円となりました。これは主に、有形固定資産の増加87億2千8百万円、投資その他の資産の増加1億4千8百万円によるものであります。

負債合計は、前連結会計年度末と比べ49億5千6百万円増加し598億2千1百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末と比べ14億7千8百万円増加し410億5千8百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金の減少21億2千4百万円、電子記録債務の減少8億2千3百万円、その他に含まれる設備電子記録債務の増加50億3千8百万円によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末と比べ34億7千7百万円増加し187億6千2百万円となりました。これは主に、長期借入金の増加29億4千2百万円、リース債務の増加5億3千9百万円によるものであります。

純資産合計は、前連結会計年度末と比べ60億1千2百万円増加し745億2千6百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加44億1千7百万円、その他有価証券評価差額金の増加7億9千1百万円、為替換算調整勘定の増加7億3百万円によるものであります。

自己資本比率は、前連結会計年度末と同率の54.4%となりました。

電力機器事業の総資産は309億9千5百万円(前連結会計年度末303億7千2百万円)となり、前連結会計年度末と比べ6億2千2百万円増加しました。

回転機事業の総資産は832億3百万円(前連結会計年度末757億6千2百万円)となり、前連結会計年度末と比べ74億4千1百万円増加しました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比べ53億6千4百万円増加し、256億1千5百万円となりました。

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は、138億4千万円(前年同期52億1千6百万円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益85億4千1百万円、減価償却費48億8千6百万円、売上債権の減少額59億4千5百万円、棚卸資産の減少額17億8千2百万円などの資金の増加と仕入債務の減少額32億6千6百万円、法人税等の支払額21億3千3百万円などの資金の減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は、94億円(前年同期66億7百万円)となりました。これは主に、有価証券の増加額30億円、有形固定資産の取得による支出69億2千5百万円などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の増加は、7億2千6百万円(前年同期50億4千4百万円)となりました。これは主に、長期借入れによる収入43億9千6百万円、長期借入金の返済による支出20億5千8百万円、配当金の支払額15億1千7百万円などによるものであります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり資本的支出を行う予定であります。また、資本の財源については自己資金及び金融機関の借入金でまかなう予定であります。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

当社グループが連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

当社グループは、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産、貸倒引当金、退職給付に係る負債などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、連結財務諸表を作成しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等は行われておりません。

 

6 【研究開発活動】

当社は、2023年度の研究開発方針として「新製品・新事業への挑戦」と「既存事業の競争力強化」を掲げ、研究開発を推進いたしました。

当連結会計年度における研究開発の総額は985百万円であります。グループ会社全体で、顧客ニーズと将来の製品技術動向を見据え、多岐にわたる分野で研究開発に取り組んでまいりました。具体的には、脱炭素関連ビジネス分野では植物油入り変圧器の研究開発、電力デジタル革命分野では高度自動化技術を活かした電圧調整、制御分野などの事業領域の拡大であります。

セグメントごとの研究開発活動の内容及び成果は次のとおりであります。

電力機器事業では、変圧器、制御機器、電力システムの各分野に注力いたしました。

当連結会計年度に開発し、今後市場投入する予定の製品は「20MVA全装可搬型LRT」、「低圧自動電圧調整器」などがあります。

推進中の製品開発は、「第三次基準トップランナー変圧器」、「菜種油入り変圧器」、「ユニット型デジタル監視制御システム」、「改良型7.2kV真空遮断器」などがあります。

回転機事業では、空調用ハーメティックモータ、介護機器、インバータの各分野に注力いたしました。

当連結会計年度に市場投入した製品は「建物空調・車載空調用ハーメティックモータ」「冷凍・冷蔵ショーケース用インバータ」などがあります。

推進中の製品開発は「建物空調・車載空調用ハーメティックモータ」、「電動ベッド駆動用アクチエータ」、「冷凍・冷蔵ショーケース用インバータ」などがあります。