当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
創業100周年に当たる2042年度での「当社のあるべき姿」を描いた長期ビジョンに加え、SDGsの考え方を取り入れたCSR-SDGsビジョンを、当社では独自に定めています。また、これらのビジョン達成に向けたマイルストーンとして、3年毎に中期経営計画を策定しており、現在は2023年度にスタートした中期経営計画「G-23」に基づき、重要課題(マテリアリティ)への対応を推進中です。さらに当社では企業価値向上によるPBR改善を図るため、資本コストや株価を意識した経営に取り組んでおります。これら施策の概要は以下のとおりです。
(1) 長期ビジョン
|
「流体の熱と圧力の制御技術を結集し、 エネルギー・水・食の明日(あした)を、お客様と共に支える企業になる」
2042年度(創業100周年)経営目標 連結売上高:1,000億円 連結営業利益:120億円 |
(2) CSR-SDGsビジョン
|
SDGs(持続可能な開発目標)を取り入れた企業経営により 自らが持つ総合力で社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献する。 |
(3) 新中期経営計画「G-23」(2023年度~2025年度)の概要
ⅰ.「G-23」のポイント
・地政学リスクの高まりやエネルギー価格をはじめとした物価高の長期化等、世界経済は未だ不安定な状況であるが、長期ビジョン達成に向けた成長が必要。
・サステナブル社会の実現に向けたCO2削減やエネルギーシフト、その他環境対策、各種資源のロス削減の動き等、当社の技術や製品の存在感は高まる。
・ワークライフバランスの充実等により、活力ある社員集団を実現させるべく、生産性向上に向けた新たな取り組みが求められる。
・新事業所稼働により売上・利益の向上を図るとともに、引き続き攻めの姿勢で新製品・サービスの開発と更なる戦略投資を推進する。
ⅱ.「G-23」中期ビジョン・スローガン
|
|
ⅲ.「G-23」基本方針
重要課題(マテリアリティ)への対応
|
事業強化 |
|
|
●新事業所の立ち上げ、既存事業所の再構築による、生産体制強化、収益基盤拡大 |
|
|
|
|
|
社会・環境課題へ貢献 |
|
|
●新製品・サービス開発の加速、新事業の探索による、サステナブル社会への貢献 |
|
|
|
|
|
人材育成・体制強化 |
|
|
●ガバナンス強化とワークライフバランス充実による、活力ある社員集団の実現 |
|
|
E(環境) |
|
G(企業統治) |
|
|
●持続可能な地球環境への貢献 ●CO2排出量の削減 |
●更なるガバナンスの強化 ●ステークホルダーへの公平且つ公正な利益配分 |
||
|
S(社会) |
|
その他 |
|
|
●活力ある社員集団の実現 ●地域社会とのつながり ●BCP運用と継続的な見直し |
●大型投資(新事業所開設、既存事業所再構築) ●収益力の強化 ●新商品開発促進と新規事業の探索 ●DX、デジタル技術の活用 |
||
ⅳ.「G-23」各事業の重点施策
|
|
熱交換器事業 |
プロセスエンジニアリング 事業 |
バルブ事業 |
|
事業戦略 |
熱ソリューションの提供 ●熱に関する困りごとを 解決する提案力の向上 ●熱交換器、周辺機器の ラインアップ拡充 |
エンジニアリング事業強化 ●複数の機器、前後工程等 を組み合わせたプラント の設計、施工 ●メンテナンス事業強化 ●グループ会社再編 |
顧客ニーズに寄り添う製品 の拡充 ●用途限定弁(バルブ)の ラインアップ強化 |
|
社会課題 解決 |
●カーボンニュートラル 関連市場への納入 (CO2収装置、水素製造、 設備等) |
●食品ロス削減、医薬品 安定供給、水資源保全に 関する製品の開発、提供 ●省人化ニーズへの対応 |
●カーボンニュートラル 関連市場への納入 (二次電池等) |
|
グローバル 戦略 |
●グローバル生産体制構築 (生産平準化とBCP構築) ●海外メンテナンス事業強化 |
●アジア圏向け食品機器・ 染色仕上機器や中国漢方 薬向け医薬機器等の 販売強化 |
●東南アジアでの販売強化 (現地グループ会社、販売 代理店との関係強化) |
|
大型投資 |
●既存事業所「鴻池事業所」 の再構築 ●新基幹システムの導入 |
●新事業所「生駒事業所」 の稼働 |
●既存事業所「鴻池事業所」 の再構築 |
ⅴ.「G-23」連結業績目標(2026年3月期)
|
受注高 |
410億円 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
26億円 |
|
売上高 |
400億円 |
|
営業利益率 |
9.0% |
|
営業利益 |
36億円 |
|
ROA (総資産経常利益率) |
4.9% |
|
経常利益 |
38億円 |
|
ROE (自己資本当期純利益率) |
4.5% |
(4) 企業価値向上によるPBR改善に向けた取り組み
ⅰ.成長戦略及び投資
当社コア技術である流体の熱と圧力を制御する技術を通じて、カーボンニュートラルの実現や食品ロス、パンデミック問題等の社会課題の解決に貢献することにより、持続的な成長と企業価値の向上を図ります。
また、事業ポートフォリオの見直しによる利益率の向上や海外市場への展開及び新規事業・新製品開発による売上拡大を図るとともに、研究開発や生産体制強化、事業領域の拡大などにも積極的に投資いたします。
中期経営計画「G-23」期間では、生駒事業所の新設及び鴻池事業所の再構築等の大型投資により、500億円以上のグループ生産体制を構築し、2030年3月期までにROE6%以上の実現を目指し、その後は、ROE8%以上の達成に向けて推進してまいります。
ⅱ.政策保有株式の縮減
当社は、前中期経営計画「G-20」(2020年4月1日~2023年3月31日)において、政策保有株式9銘柄、1,880百万円の削減を実施しておりますが、今後も継続した縮減に努めてまいります。具体的には、中期経営計画「G-23」期間中(2026年3月期まで)に、政策保有株式の保有額を連結純資産額の20%未満にいたします。当連結会計年度におきましては、6銘柄、797百万円を削減いたしました。「G-23」期間後においても資本効率や取引の状況等を総合的に判断し、政策保有株式の保有の適否を検討してまいります。なお、これにより得られた資金は、成長投資や株主還元等に充当し更なる資本効率の向上を目指します。
ⅲ.株主還元の強化
当社の『資本政策の基本的な方針』による利益配分方針は、「内部留保とのバランスを考慮しつつ、連結純資産及び連結業績の状況を勘案し、連結純資産配当率(DOE)2.0%以上を目途に継続的・安定的な配当に努めます。」としております。これによりDOE2%を下限とするとともに、配当性向30%以上を目処に業績連動による配当を実施してまいります。
また、自己株式取得につきましては、「必要な内部留保の水準を考慮しつつ、経営環境の変化、株価の動向及び財務状況等を勘案のうえ、弾力的・機動的に対処してまいります。」としており、政策保有株式の縮減などで得た資金を活用し、フリー・キャッシュフローの状況等を勘案しながら実施いたします。
株主還元の方針に関しましては「第4 提出会社の状況」「3 配当政策」にも記載しておりますのでご覧ください。
ⅳ.IRへの取り組み
当社は投資家との対話を深めるため、第2四半期決算及び期末決算の決算説明会を機関投資家及び証券アナリスト向けに行っており、その説明会資料を当社ウェブサイトにて公開しております。今後は、外国人投資家向けにIR資料の英文開示も推進してまいります。また、1on1ミーティングやスモールミーティングなど、投資家との対話の機会を増やすとともに、対話により把握した株主・投資家の意見や要望は当社経営の参考にしてまいります。
個人投資家向けのIRに関しましても、ウェブサイトでの情報発信を拡充するとともに、説明会の開催を検討いたします。また、個人株主様に長期保有いただけるよう株主優待制度を継続してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループでは、代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ委員会」を2022年4月1日付で設置するとともに、関係部門との連携のもと、持続可能性に関する様々な重要事項について経営陣が議論する体制を整備しております。「サステナビリティ委員会」は年2回以上開催され、取締役会に活動結果を報告することで、取締役会が気候変動を含む持続可能性に関する様々な重要事項を適切に監督できる体制を構築しております。
サステナビリティ推進体制は次のとおりです。
なお、以下のURLに『HISAKAのサステナビリティ』を公開し、サステナビリティについての取組みを開示しております。
https://www.hisaka.co.jp/csr/
(2)戦略
サステナビリティ全般の戦略として、当社グループでは「サステナビリティ基本方針」を策定し、社是である「世界に定着する日阪」、「豊かな人間性の追求」を永続的な目標に掲げるとともに、社会の公器としての役割と責任を全うすべく長期的な視点で行動し、社会貢献と自社の成長の両立によって持続的な企業価値向上を目指しております。また新たな中期経営計画「G-23」を策定し、「技術に想いをのせて いけ サステナブル社会の実現にむけて」をスローガンに掲げ、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(3)リスク管理
当社グループは、サステナビリティ委員会の下にリスク管理委員会を設置し、リスク管理の実践を通じた事業の持続可能な発展を確保するとともに社会的責任の達成に寄与することを方針として掲げております。
リスク管理委員会では、事業運営上の重要なリスクを抽出し、毎年多角的な影響度によって評価するとともに、対応するリスク低減状況について定期的にモニタリングしております。
これらのリスク管理体制については、
(4)指標及び目標
当社グループでは、気候変動対応に向けて、GHG排出量を主な指標とし、SBTが規定する1.5℃水準の実現を目標とし、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量をScope1,2排出量については、2022年度比で29%低減(年率4.2%低減)することを目指します。
2023年度における当社のScope1,2排出量は4,983t-CO2、また2022年度におけるScope3排出量は364,459t-CO2となりました。
Scope3排出量については2023年度以降も順次算定を進めるとともに、Scope3排出量の大部分を占める「カテゴリ11:製品の仕様」及び「カテゴリ1:購入した製品・サービス」については、重点対象として「エネルギー使用、特に蒸気の使用量を抑制したモデルの製造・販売」「排出量削減に向けた各種取組みの推進」などを進めていく方針です。
なお、現時点における排出量の実態把握は当社のみに留まっているものの、2024年度以後の算出においては当社グループ全体での排出量の実態把握及び削減目標の設定に取り組んでまいります。
人的資本に関する指標及び目標に関しては、上記「(2) 戦略」で掲げた差別のない職場環境づくりに向け、当社100周年となる2043年3月期に向けて次の目標を設定し、この目標値に向けた各種取り組みを推進して参ります。
なお、当該目標値は当社のみの目標値であります。
|
指標 |
目標 |
当連結会計年度末 |
|
|
2043年3月期までに10% |
|
|
|
2043年3月期までに20% |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
※「監督職に占める女性労働者の割合」を目標としている理由は、当社の新卒採用における女性採用枠が2006年度から拡大したこと及び監督職への女性労働者の登用開始が2012年度であったこと等が理由となります。今後、これらの女性労働者が成長及び活躍することで、将来の「管理職に占める女性労働者の割合」増加に繋がると考えておりますが、当社では当面「監督職に占める女性労働者の割合」を指標とし、将来の女性管理職候補育成に努めることとしております。
有価証券報告書に記載した事業の概況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①経済状況について
当社グループは日本、アジア、欧米など多くの国々で事業展開をしており、世界経済や各国の景気変動及び為替変動などにより、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②原材料・資材価格の変動について
当社グループの主な原材料であるステンレスやチタン材などの原材料・資材価格の下落は、製品価格の下落圧力や、当社グループ棚卸資産の評価額への影響により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また原材料・資材価格の高騰は、在庫状況如何では、製造原価が上昇することにより、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③為替相場の変動について
当社グループの外貨建ての取引に関しては、原則として契約締結と同時に為替予約によるヘッジを行い、契約後の為替変動リスクを極力回避しておりますが、契約条件の変更などによる影響や、引き合い段階での外国企業との価格競争上で不利となる可能性があり、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④退職給付債務について
当社グループの退職給付費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出しており、割引率の低下や年金資産の時価下落は、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤減損会計の影響について
当社グループが保有しております固定資産及び有価証券に関して、収益性や価格が著しく低下し減損処理が必要となった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥M&A及び事業提携に係るリスクについて
当社グループは、各事業分野において、新技術や新製品の開発及び競争力強化のためM&Aを実施することがあります。当社グループでは、企業買収や事業提携を行う際、事前にリスクを把握・回避するために、対象となる企業の財務内容や事業についてデューデリジェンスを実施しております。しかしながら、買収後に予期しない債務が発覚する可能性や、事業環境及び競合状況の変化等により当社グループの事業計画に支障をきたす可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦製造物責任について
当社グループはその事業及びその製品のために、品質管理規定を制定し品質向上に努めておりますが、万が一予期せぬ不具合や事故が発生した場合は、製造物・品質責任の責めを負うことになる可能性があり、この費用が保険等でカバーできない場合は、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧訴訟その他の法的手続について
当社グループは、事業を遂行する上で、取引先や第三者から訴訟等が提起される又は規制当局より法的手続がとられるリスクを有しております。これらにより、当社グループに対して巨額かつ予想困難な損害賠償の請求がなされた場合又は事業遂行上の制限が加えられた場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨公的規制及び政治情勢について
当社グループの事業活動は、事業を行う各国の政治や多様な規制の影響を受けております。このような規制には、投資、貿易、競争、知的財産権、税、為替、環境、リサイクル、食品衛生、労働安全、生産技術上の制約等に関する規制を含んでおり、政治情勢や規制に関する重大な変更は、当社グループの事業活動を制限する若しくはコストを増加させるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩環境問題
当社グループは、環境基本法、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法等の環境法令を遵守するとともに、環境問題に配慮する姿勢を明確にするため「環境方針」「環境宣言」「行動指針」を策定しております。これらにより「顧客・市場・株主・購買先・協力社・地域社会」から「安心」「安全」「信頼」を受ける会社として成長して行きたいと考えております。当社グループでは、有害物質が社外に流出しないよう万全の対策をとっておりますが、万一流出した場合には、社会的信用の失墜、補償・対策費用の支出あるいは生産停止等の事態が発生する可能性があります。
また、将来環境に対する規制が一層厳しくなり、現行法令の改正又は新たな立法による規制などにより、有害物質を処理するための設備投資等に多額の費用が発生することも考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪自然災害・戦争・テロ・事故等について
当社グループの拠点において、地震・水害等の自然災害、感染症の流行、戦争、テロ等の各種災害が発生した場合は、甚大な被害を被る可能性があります。また、当社グループに直接損害がなくとも、電力・ガス等の供給網の混乱や、サプライチェーンの寸断などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、地政学的リスクの高まりや欧米における金融引き締め政策が継続する一方、堅実な設備投資などを背景に底堅く推移しました。国内経済は個人消費やインバウンド消費の回復など、緩やかな改善傾向が続いているものの、エネルギー価格をはじめとした物価高の長期化などにより、先行き不透明な状況が続いています。
当社グループにおきましては、2023年4月より新中期経営計画「G-23」をスタートさせ、奈良県に「生駒事業所」を開設し、プロセスエンジニアリング事業を「鴻池事業所」より移転するとともに、熱交換器事業、バルブ事業の生産体制強化に向け「鴻池事業所」の再構築に着手しました。その他の取り組みとして、国内関係会社の統合など、事業拡大、生産性向上に向けた大型投資、事業基盤の整備を行いました。
このような状況の中、当連結会計年度における当社グループの受注高は、熱交換器事業、プロセスエンジニアリング事業が好調に推移したことにより、前年度に比べ9.8%増加し37,999百万円となりました。売上高は、熱交換器事業、バルブ事業が増収となったことにより、前年度に比べ0.3%増加し34,180百万円となりました。
利益面では、売上の増加、売価改善の効果などにより、営業利益は前年度に比べ28.5%増加し2,457百万円となり、経常利益は前年度に比べ21.1%増加し2,896百万円となりました。また、前年度に引き続き、特別利益に政策保有株式の縮減による投資有価証券売却益を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度に比べ18.6%増加し2,420百万円となりました。
なお、当連結会計年度より、中東地域においてプレート式熱交換器のメンテナンスサービスを実施している「HISAKA MIDDLE EAST CO.,LTD.」を連結の範囲に含めています。また、セグメントは「熱交換器事業」としています。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
『熱交換器事業』
熱交換器事業は様々な産業で不可欠となる、流体の加熱・冷却を行うプレート式熱交換器などを製造・販売する事業です。
受注高は、前年度に比べ20.2%増加し16,900百万円となりました。新造船の需要拡大により船舶向けが好調に推移したことに加え、エネルギー関連の海外大口プラント案件を受注しました。
売上高は、前年度に比べ13.0%増加し15,161百万円となりました。ヒートポンプや半導体向けの中小型汎用品、メンテナンス関連や船舶向けが好調に推移しました。
セグメント利益は、原材料価格の上昇があったものの、売上の増加やセールスミックスの改善などにより、前年度に比べ124.7%増加し1,831百万円となりました。
『プロセスエンジニアリング事業』
プロセスエンジニアリング事業は、レトルト食品などの調理殺菌装置、医薬品の滅菌装置や培養装置及び繊維製品の染色仕上機器などを製造・販売する事業です。
受注高は、前年度に比べ3.4%増加し16,058百万円となりました。医薬機器、染色仕上機器が低調となったものの、食品機器において大型の殺菌装置や省人化ニーズを受けた自動化装置などの受注が好調に推移しました。
売上高は、前年度に比べ11.9%減少し13,977百万円となりました。食品機器において全自動連続殺菌冷却装置が堅調に推移したほか、飲料水関連のプラント案件などがあったものの、前年度の受注減により、医薬機器、染色仕上機器の売上が減少しました。
セグメント利益は、売上の減少、新事業所の開設費用などにより、前年度に比べ68.5%減少し263百万円となりました。
『バルブ事業』
バルブ事業は、様々な流体の制御に使われるボールバルブなどを製造・販売する事業です。
受注高は、前年度に比べ0.4%増加し4,953百万円となりました。海外向けが低調となったものの、二次電池や半導体、水素関連設備向けが好調に推移しました。
売上高は、前年度に比べ5.5%増加し4,954百万円となりました。化学向けに大口案件があったことに加え、二次電池や半導体、水素関連設備向けが好調に推移しました。
セグメント利益は、売上が増加したことなどにより、前年度に比べ24.8%増加し423百万円となりました。
『セグメント別業績』 (単位:百万円/(%)前年度比増減率)
|
|
熱交換器事業 |
プロセスエンジニアリング事業 |
バルブ事業 |
その他事業 |
|
受注高 |
16,900( 20.2%) |
16,058( 3.4%) |
4,953( 0.4%) |
87( △4.0%) |
|
売上高 |
15,161( 13.0%) |
13,977(△11.9%) |
4,954( 5.5%) |
87( △4.0%) |
|
セグメント利益 |
1,831( 124.7%) |
263(△68.5%) |
423( 24.8%) |
63( △5.6%) |
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、税金等調整前当期純利益の計上3,261百万円や社債の発行による収入3,969百万円等の増加要因があったものの、固定資産の取得による支出5,664百万円や棚卸資産の増加2,034百万円等の減少要因があったことにより、前連結会計年度末の13,871百万円から124百万円減少し、当連結会計年度末では13,746百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、支出した資金は461百万円(前年度は1,485百万円の収入)となりました。
これは、税金等調整前当期純利益の計上があったものの、棚卸資産の増加や法人税等の支払が上回ったためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、支出した資金は3,822百万円(前年度は2,812百万円の支出)となりました。
これは、投資有価証券の売却による収入があったものの、固定資産の取得による支出が上回ったためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、得られた資金は3,828百万円(前年度は1,001百万円の支出)となりました。
これは、配当金の支払があったものの、社債の発行による収入が上回ったためであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年比(%) |
|
熱交換器事業 |
10,997 |
104.7 |
|
プロセスエンジニアリング事業 |
11,825 |
92.1 |
|
バルブ事業 |
3,847 |
103.3 |
|
報告セグメント計 |
26,671 |
98.5 |
|
その他 |
23 |
100.5 |
|
合計 |
26,695 |
98.5 |
(注)上記金額は、総製造費用に基づいております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年比(%) |
受注残高(百万円) |
前年比(%) |
|
熱交換器事業 |
16,900 |
120.2 |
6,952 |
143.4 |
|
プロセスエンジニアリング事業 |
16,058 |
103.4 |
15,140 |
115.9 |
|
バルブ事業 |
4,953 |
100.4 |
1,326 |
99.9 |
|
報告セグメント計 |
37,912 |
109.8 |
23,419 |
121.7 |
|
その他 |
87 |
96.0 |
- |
- |
|
合計 |
37,999 |
109.8 |
23,419 |
121.7 |
(注)上記金額は、販売価額で表示しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年比(%) |
|
熱交換器事業 |
15,161 |
113.0 |
|
プロセスエンジニアリング事業 |
13,977 |
88.1 |
|
バルブ事業 |
4,954 |
105.5 |
|
報告セグメント計 |
34,093 |
100.3 |
|
その他 |
87 |
96.0 |
|
合計 |
34,180 |
100.3 |
(注)1.上記金額は、販売価額で表示しております。
2.総販売実績に対し、10%以上に該当する販売先はありません。
(2)経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日現在)において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(資産)
当連結会計年度末の資産は82,017百万円となり、前連結会計年度末70,977百万円から11,039百万円の増加となりました。
流動資産は38,636百万円となり、前連結会計年度末35,274百万円から3,362百万円の増加となりました。主な内訳は、現金及び預金13,836百万円、売上債権11,440百万円及び棚卸資産12,056百万円であります。主な増加要因は、棚卸資産2,161百万円であります。
固定資産は43,380百万円となり、前連結会計年度末35,703百万円から7,676百万円の増加となりました。主な内訳は、建物及び構築物13,405百万円、土地7,342百万円、及び投資有価証券16,170百万円であります。主な増加要因は、建物及び構築物7,754百万円であります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は21,715百万円となり、前連結会計年度末14,675百万円から7,040百万円の増加となりました。
流動負債は12,884百万円となり、前連結会計年度末11,907百万円から976百万円の増加となりました。主な内訳は、仕入債務5,728百万円であります。主な増加要因は、仕入債務393百万円であります。
固定負債は8,831百万円となり、前連結会計年度末2,767百万円から6,063百万円の増加となりました。主な内訳は、社債4,000百万円及び繰延税金負債3,534百万円であります。主な増加要因は、社債4,000百万円であります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は60,301百万円となり、前連結会計年度末56,302百万円から3,999百万円の増加となりました。主な内訳は、資本金4,150百万円、資本剰余金8,820百万円、利益剰余金41,983百万円及びその他有価証券評価差額金8,144百万円であります。主な増加要因は、その他有価証券評価差額金2,121百万円であります。
(受注高)
当連結会計年度における受注高は、前年度から9.8%増加の37,999百万円となりました。
当年度は、熱交換器事業、プロセスエンジニアリング事業が好調に推移したことから、前年度を上回る結果となりました。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前年度から0.3%増加の34,180百万円となりました。
当年度は、熱交換器事業、バルブ事業が増収となったことから、前年度を上回る結果となりました。
(利益)
当連結会計年度における営業利益は、売上の増加、売価改善の効果などにより、営業利益は前年度に比べ28.5%増加し2,457百万円となり、経常利益は前年度に比べ21.1%増加し2,896百万円となりました。また、前年度に引き続き、特別利益に政策保有株式の縮減による投資有価証券売却益を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度に比べ18.6%増加し2,420百万円となりました。
(経営成績に重要な影響を与える要因)
この先の経済情勢は、堅調な企業収益や個人消費を背景に継続して緩やかな改善基調で推移することが期待される一方、地政学的リスクの高まりやエネルギー価格をはじめとした物価高の長期化など、先行きは不透明な状況が続くとみられます。
このような環境の中、当社グループおきましては、減価償却費や人件費増などがあるものの、中期経営計画「G-23」に基づき、省エネ、省人化など、社会課題の解決に向け、グループ一丸となり新製品開発やサービス事業の拡充、生産体制の強化など諸施策を進めてまいります。
(経営戦略の現状と見通し)
当社グループが推進する経営戦略は、第2「事業の状況」の1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
また、経営戦略に掲げる中期経営計画「G-23」における最終年度(2026年3月期)の連結業績目標に対する現状と今後の見通しは次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
「G-20」 2023年 3月期 実績 A |
「G-23」 |
増減率
B-A A |
||
|
2024年 3月期 実績 |
2025年 3月期 計画 |
2026年 3月期 目標 B |
|||
|
受注高 |
34,621 |
37,999 |
39,000 |
41,000 |
18.4% |
|
売上高 |
34,074 |
34,180 |
37,000 |
40,000 |
17.4% |
|
営業利益 |
1,912 |
2,457 |
2,000 |
3,600 |
88.3% |
|
営業利益率 |
5.6% |
7.2% |
5.4% |
9.0% |
+3.4pt |
|
経常利益 |
2,392 |
2,896 |
2,300 |
3,800 |
58.9% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
2,040 |
2,420 |
1,600 |
2,600 |
27.4% |
|
ROE |
3.7% |
4.2% |
2.7% |
4.5% |
+0.8pt |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における資本の財源及び資金の流動性についての分析の内、キャッシュ・フローの状況に関しましては、4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
今後の資本の財源及び資金の流動性に関しましては、製造業である当社グループにとって重要な設備投資、研究開発投資には多額の資金が必要となり、その資本の財源は、当社グループの自己資金で賄うことを基本としつつ、金融機関からの借入等による調達も実施しております。現在保有する資金に関しては、設備の刷新、事業の拡大、海外進出、M&A等の課題に対し、適宜検討して資金の適切な運用を図っていきます。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況」の「1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は「第5 経理の状況」の「1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
技術援助契約の主なものは、次のとおりであります。
|
提携先 |
国名 |
内容 |
契約発効日 |
期限 |
対価 |
|
DUPLEIX LIQUID METERS LTD. |
南アフリカ |
ボールバルブに関する技術供与、情報の相互交換と製造販売 |
1987年 10月22日 |
2024年 10月12日 (自動更新) |
先方販売高に一定比率を乗じた額 |
|
NOSEDA S.R.L. |
イタリア |
染色機の情報の相互交換と製造販売 |
1999年 12月16日 |
2024年 12月15日 (自動更新) |
先方販売高に一定比率を乗じた額 |
|
株式会社進和及び 煙台進和接合技術有限公司 |
日本 中国 |
ブレージングプレート式熱交換器の製造技術の供与 |
2012年 3月12日 |
2025年 3月12日 (自動更新) |
先方販売高に一定比率を乗じた額 |
|
ARSOPI-THERMAL, Equipamentos Termicos, S.A. |
ポルトガル |
プレート式熱交換器の情報提供と製造販売 |
2022年 1月1日 |
2031年 12月31日 |
先方販売高に一定比率を乗じた額 |
|
KAPP SAS |
フランス |
全溶接型プレート式熱交換器の販売と技術提携 |
2022年 1月1日 |
2031年 12月31日 |
当社販売高に一定比率を乗じた額 |
当社グループでは経営理念『HISAKA MIND』を実践し、「熱、エネルギー、染色仕上、食品、バルブ、医薬、環境」の開拓者として、社会課題の解決に資する研究開発活動を推進するとともに、持続可能な社会の実現に貢献が期待できる新事業の創出活動については専任部署を設けて取り組んでおります。
鴻池事業所には、熱交換器事業、プロセスエンジニアリング事業、バルブ事業それぞれに研究開発部門を設け、ユーザー・大学・公共研究機関などと技術交流を行い、研究開発の成果を上げております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は
なお、セグメント情報においては、全社費用として計上しております。