第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営戦略

 当社は、創業以来Linuxをはじめとするオープンソース・ソフトウェアに関連する技術力で価値創造しつつ、顧客に対して高品質かつ高機能の製商品及びサービスを提供してまいりました。特にネットワーク用途の小型コンピューターを得意としIT市場に供給しておりますが、近年は急速に成長しているIoT市場に特化した製品を開発しラインナップに加え、他社に先駆けて製品及びサービスを提供しております。また、通信事業者、クラウド事業者、システムインテグレータ、大手メーカー、センサー・デバイスメーカーなどとエコシステムを構築して、多くの販売実績を積み重ねることにより市場における競争優位性を確保し、パートナー企業との協業によりさまざまな業種の企業へ販売しております。

 当社は、「日本をリードする技術者たちに最先端商品を提供する会社をつくろう」という会社創業の精神を「TECHNOLOGY to serve you.」というコンセプトキーワードに込め、今後とも、この蓄積されたオープンソース・ソフトウェアに関連した技術を核とし、お客様の新しいニーズに誠実に応えてまいります。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経常損益の黒字転換を第一の目標にしております。第一の目標の達成後、目標とする経営指標の内容・具体的水準等を策定したいと考えております。

 

(3)経営環境

 「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」をご参照願います。なお、半導体不足の影響につきましては、「3事業等のリスク (11)製品部材の納期遅延及び価格上昇」をご参照願います。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、経常損益の黒字化を実現し、成長軌道を実現するため、ネットワーク事業ではネットワークアプライアンスに集中的に経営資源を投入する方針で臨みます。これまでに培ったソフトウェアに関する知見と資産を活用して収益化に取り組むことに加えて、過年度に半導体不足により事業が停滞した経験を踏まえ、部材供給の制約のないソフトウェア・サービスを事業の柱として収益の安定化・向上を図るべく、事業転換を今後一層加速してまいります。

 そこで、引き続き以下の課題に取り組んでまいります。

① 自由で安全なコネクテッドワールドの実現

 当社は、SDGsが採択される以前から環境問題に向き合いISO14001を取得し、その解決に向けて取り組んできました。当社の提供する省スペース、省電力の自社製品と、データ流通を実現する通信技術により、フィジカルワールドとサイバーワールドを結び付け、より利便性の高い社会の実現、より安全な社会の実現、より豊かなくらしづくりの実現に取り組んでまいります。

② ソフトウェア・サービス収益の強化と社会のデジタル化への対応

 当社はこれまでのハードウェア中心の事業形態から、ソフトウェア・サービス中心の事業形態への転換を進めております。

 マイクロサーバーに専用アプリケーションを搭載したネットワークアプライアンスは、サポートサービスも含めて顧客に長期間ご利用いただいており、これを収益向上の柱の一つと位置付けて開発と販売をさらに充実するとともに、当社ソフトウェアやサービスの強みを活かした収益強化策に取り組みます。

 また、新領域であるWeb3事業においても、ソフトウェアやサービスの強みを活かした収益化に取り組みます。当社は2016年度からIoTの推進に向けたブロックチェーン技術への取り組みを開始し、2019年にIoT

データ伝送・交換基盤を発表し、2020年にブロックチェーンを利用したIoTデータ取引に関する特許を取得、2021年にはその特許を利用したIoTデータ取引基盤「PTPF」を発表しました。その後も慶應義塾大学SFC研究所とIoTデータ交換の標準プロトコルの共同研究を行うなど、技術の開発に努めるとともに、2024年3月期には当社のWeb3技術を適用した輸出物流構築の実証事業に取り組み、所期の成果をあげました。

 Web3にかかわる領域は、その分野が広範であるばかりか関係者が複雑化し事業規模が非常に大きくなることが予想されることから、当社が自ら事業を行うことに加え適切な事業の推進形態を整え、またそれぞれの分野に強みを持つ事業者とアライアンス戦略をとってまいります。

 当社は、これらの施策により、拡大するネットワーク・IoT市場と社会のデジタル化への対応に取り組んでまいります。

③ 財務基盤の充実

 当社は財務基盤の強化と手元資金流動性の確保を検討してまいりましたが、この解決のため、新株式の発行により2024年4月に46百万円の資金調達を行いました。当社は今後の事業形態の転換やそれによる事業拡大など必要に応じて資金調達を実施し、さらに財務基盤を充実・強化することを検討してまいります。

④ 社会への貢献

 当社のパートナー戦略は、持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化するものであり、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を実現します。また、当社の技術力により、産業界におけるIoT化が促進されることから、産業と技術革新の基盤を創出することを実現します(SDGs目標9)。さらに、大型で電力を消費するサーバーに代替する製品として当社が製造販売する製品は小型かつ電力消費量低減を実現しており、製造者としての「つくる責任つかう責任」(SDGs目標12)を全うします。その他、当社の事業展開による教育現場やビル、都市などへの当社製品の導入により、顧客とともにカーボンニュートラルに取り組み、SDGsを実現し、社会に貢献してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理

 当社は、「自由で安全なコネクテッドワールドの実現」をミッションとし、当社製品が広く導入されることに

よって環境や社会に貢献するべく、当社の経営課題として取り組んでおります。

 この課題に対応するため、代表取締役社長を責任者とし、ISO事務局及び各部門から選出されたEMSプロ

ジェクトメンバーを中心に、職制を通じ全社員が協働して環境マネジメントシステムISO14001をはじめとした取り組みを実施しております。

 リスク管理につきましては、コンプライアンス委員会において毎年1回又は随時に事業リスクの評価を行い、会社、部門、環境等の目標に反映しております。

 取締役会はこれらの活動について必要に応じて報告を受け、監督しております。

 

(2)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

 当社は少人数の高効率な組織により上記のミッションの実現を目指しており、人的資本がその価値創造の源泉であると考えております。従って、性別、国籍等の区別なく人的資本に投資を行うことを重要な戦略と位置付けており、特に組織力とそれに基づいた総合的な人材力の向上を図っております。そのためには、役員及び従業員一人一人の多彩な個性と発想を尊重し、可能性を引き出すことが健全で豊かな職場環境を実現し、企業を成長に導く原動力になると認識しております。能率的かつ安全な職場環境を提供するとともに、自由な議論を尊重し能力を活かすように努め、顧客課題の解決などOJTを通して、能力の向上を図っております。

 当社は社員の母数が大きくなく、少人数の変動によって指標が大きく変動してしまいますので、人的資本にかかわる計数的目標管理はこれからの課題として、適切な指標を設計して導入・管理してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避、発生した場合の対応に努める所存であり、リスク管理体制の整備については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)オープンソース・ソフトウェア

 当社の取り扱う製商品の大きな特徴の一つは、オープンソース・ソフトウェアに関連していることです。しかしながら、オープンソース・ソフトウェアが市場のニーズに今後も適切に対応し、評価を獲得し続ける保証はありません。よって、当社が成長を継続できるかどうかは、オープンソース・ソフトウェアの利用頻度や供給状況、マーケットにおける普及といった不確かな諸要因に影響を受ける可能性があります。

 オープンソース技術の開発は世界中に散らばる独立系のエンジニアが参加するオープンソース・コミュニティが主要な役割を担っています。当社自身ではそれらの開発をコントロールしていません。オープンソース・コミュニティの開発・研究者が時宜に応じて開発・改良を続けるとの保証はありません。また、情報収集のために、常に

オープンソース・コミュニティとの間で良好な関係を維持することが可能であるとは限りません。

 当社は、重要なコミュニティにメンバーとして参画し、情報収集するとともにその活動を支えるなどしておりますが、コミュニティによる努力が継続して成功しなければ、オープンソース・ソフトウェアの認知度を維持、または拡大できる保証はありません。また、コミュニティとの関係も永続的に良好である保証はありません。

(2)製品特性

 コンピューター製品及びその応用システムの市場は、急激な技術革新、頻繁な新製品の導入によって特徴付けられます。競合他社による新たな技術を基礎とする製品の投入や、新たな業界標準が生まれた場合には、当社の製品は急速に陳腐化する可能性があります。当社の今後の成長は、既存製品の改良、新製品の投入により、顧客の要求を充足し、市場からの評価を獲得できるかどうかにかかっています。

 新製品開発や製品の改良は、長期の開発・試験期間を必要とし、技術力ある人員の確保が必要となります。さらに、急速に成長する市場における新製品の開発は、多額の研究開発費と開発人員の投入が必要となります。よって、コスト面での負担が大きくなる可能性があります。また、開発した新製品が市場の評価を得られない可能性があります。

 さらにオープンソース・ソフトウェアは、インターネットから無料でダウンロード、または少額で購入し、ほとんど規制なく変更し、転売することができるので、市場参入障壁は低いと考えられます。従って、新規参入者または既存の競争相手が急速に市場シェアを獲得し、当社の売上が減少する可能性があります。

(3)競争

 当社は、自社製品コンピューターの製造販売、コンピューター関連商品の仕入販売、各種サービスの提供等を

行っておりますが、それぞれ以下のような競争上のリスクが存在します。自社製品コンピューターについては、当社と同様の製品を取り扱っている企業はもとより、国内外から新規参入する企業が現れる可能性は高く、今後においても価格競争が避けられないと認識しております。また、コンピューター関連商品については、量販店などが、当社と同質のコンサルティング機能を強化・充実させ、低価格で商品を販売した場合、当社の価格競争力が低下する可能性があります。さらにシステム・インテグレーション等のサービスについても競合が激しくなり、当社が意図する受注案件の獲得等ができない可能性があります。これらの結果として、当社の業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、コンピューター業界では、当社と競合関係にあるソフトウェア、ハードウェアその他のコンピューター関連商品を取り扱う大手企業が多数存在し、競争が非常に激しくなっています。これらの大手企業は、当社に比べより多くの経営資源を有し、多様な販売チャンネルを確立しています。また、これらの会社の中にはオープンソース・ソフトウェアに積極的に取り組む企業も多く、当社製品の需要に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、販売面ばかりでなく、供給者との戦略的提携に関しても、同業他社との競争に直面しております。この場合、当社の重要な仕入先や、当社が望む提携先が同業他社と合併、もしくは業務提携をした場合、当社の事業機会が阻害される可能性があります。

(4)第三者の製造者及び供給者への依存

 当社は、製商品の製造及び調達について、外注先製造業者及び外部の部品供給業者に大きく依存しております。外注先の企業は、当社の主要な商品を製造するとともに、自社製品コンピューターのアウトソースによる製造、物流及びクレジットカードその他の決済サービスを当社に提供しております。当社の第三者製造者及び供給者との契約は一般的に短期間で更新可能なものとなっております。当社が第三者製造者及び供給者との契約の解消及び変更を余儀なくされた場合、供給量の低下またはコスト負担の増大をもたらし、当社の経営及び生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。また、原材料市場における供給不足により部品供給業者の納期遅延や製品部材の調達価格の高騰などが生じた場合には、適切なコストによる安定的な供給を困難にし、当社の経営及び収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5)特定の人材への依存

 当社は事業規模が小規模であり、また、当社の製品及び技術は高度かつ複雑であるため、当社の順調な業績の持続は有能な経営陣・従業員の雇用維持に大きく依存しています。当社の中心的な経営陣・従業員のように高いスキルを有する人材は希少であり、業界における人材の獲得競争は激しくなっています。また、当社はこれらの中心的な従業員のいずれとも、即時の退職を回避できるような雇用契約を締結していないため、このような人材はその意思で会社との雇用関係を解消することができます。当社の中心的な従業員を失った場合、当社の業務に重大な影響を与えるおそれがあります。

 加えて、当社は事業拡大のために、各種の高いスキルを持った人材を必要としておりますが、今後も継続して有能な人材を採用できるとの保証はありません。

(6)業績変動

 主な売上先である法人顧客の売上動向によって、当社の業績推移に変動が起こる可能性があります。これまでの当社の業績変動は、法人顧客の予算編成などの関係から売上高が下半期の第4四半期(1-3月)に増加する傾向があります。このため、上半期の利益と下半期の利益とを比較した場合、上半期の利益が著しく落ち込むことが考えられます。

 しかしながら、当社の事業傾向は従前と同様の傾向を継続しない可能性があります。その場合、期首に想定したよりも下半期の収益力が低くなる場合が考えられ、当社としても経営方針の変更など対応策を講じますが、経営管理上、それらの対応策がその期中に効果をあげることができない可能性があり、従って、当社は投資家が期待する収益をあげることができない可能性があります。

(7)知的財産権

① オープンソース・ソフトウェアの使用に関する知的財産権による潜在的規制

 現在オープンソース・ソフトウェアは、インターネットから無料でダウンロードでき、自由に複製し、使用し、変更を加え頒布することができます。しかし知的財産権は開発者に属しており、オープンソース・ソフト

ウェアの大半は知的財産権により保護されています。知的財産権の保有者が将来、ライセンス料を請求しない、または知的財産権を行使しないという保証はありません。知的財産権の行使または行使の試みは当社の財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権の保護の欠如

 当社は、社内で研究開発した自社技術と専門知識を用いて競合相手との製品差別化を行っていますが、当社の製商品及びサービスの大半は独占的な知的財産権として保護され得るものではなく、競合相手が使用した場合には当社の市場占有率及び製商品の販売に影響を与えることがあります。当社は、知的財産権を保護するため、当社の従業員、社外のコンサルタント及びパートナーと秘密保持契約またはライセンス契約を締結しております。
 しかしながら、当社の知的財産権を保護するための方策は限られたものです。従って、他社との競合に際して知的財産権を行使することができない可能性があります。加えて当社は第三者による同様もしくはより優れた技術の開発を防止できない可能性、並びに他社が当社の著作権、特許及び企業秘密を実質的に回避するような技術開発を防止できない可能性があります。

③ 侵害請求の可能性

 当社は、当社のビジネスモデルまたは製品が他人の知的財産権を侵害しているとの請求による訴訟に将来さらされる可能性があります。当社若しくは競合相手が業容を拡大し、製品数が増加し、事業領域や製品の機能が重なり合うにつれ、ますますそのような請求にさらされる可能性が高まります。

 当社のビジネスモデルまたはシステムで採用している技術は、他人の知的財産権を侵害していないと認識しておりますが、もし訴訟が起こされた場合には、訴訟の結果にかかわらず当社は解決までに多大な時間とコストを負担しなければならず、業務に支障をきたす可能性もあります。こうした訴訟に敗訴した場合、当社はロイヤリティーを支払いライセンスを受ける契約の締結を要求されるおそれがあります。その場合、当社が容認できる条件の提示や契約の締結が行われるとの保証はありません。当社に対する請求が認められ、代替技術の開発を行わなければならない場合、またはライセンス契約が当社にとって不利であった場合、当社の業務、業績または財務状況に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

(8)製品クレームの偶発性

 当社は製品の製造業者、小売業者、ソフトウェア開発の請負業者、開発したソフトウェアを利用したサービスの提供事業者として国内及び海外における製造物責任法またはその他の法律に基づく責任を問われるおそれがあります。高品質製品の販売は当社の戦略にとって不可欠であるため、当社は不良を減少させ、発見しかつ排除するよう製造を工夫しています。しかしながら、不具合をもつ製品の製造または販売を完全に回避できるとの保証はありません。

 当社の製品の中に欠陥が発見された場合、当社のブランドに重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社はかかる欠陥を排除するために多額の支出を余儀なくされることがあり、場合によってはこれを改善することができないおそれがあります。

 当社製品の不具合は、それを使用する顧客のコンピューターシステムに支障を起こすおそれがあります。その場合には、顧客は多額の損害に対し補償及びその他の請求を当社に対して行う可能性があります。当社の保証には通常、潜在的な製造物責任にかかる債務の範囲を限定することを意図した規定を盛り込んでいますが、これらの規定は日本及びその他の地域における法制度の下では効力をもたないものとされる可能性があります。当社が加入している保険は、このような請求に対し当社の責任を適切に限定するのに十分対応していないことがあります。これらの請求がなされた場合、保険を上回る出費の可能性や、結果として請求を退けたとしても、その解決のため多大な費用と時間を必要とする可能性があります。

(9)個人情報の管理

 当社はオンライン販売サイトによるショッピングをはじめとする各種サービスの提供にあたって、顧客に関する属性情報等詳細な個人情報をサーバー上で保有しております。当社はこれらの個人情報を取り扱うにあたって、個人情報取扱方針を定め社内周知及び遵守を徹底するなど、個人情報の保護に努めております。

 しかしながら、これらの個人情報が管理の瑕疵等により外部に流出する可能性は皆無であるとは言えません。その場合、当社の信用に重大な影響を及ぼすと同時に、当社に対して損害賠償請求が行われたり、オンライン販売サイトによるサービスの停止を余儀なくされる可能性があるなど、当社の財務状況や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10)感染症の影響

 新型コロナウイルス感染症が経済や社会生活に影響を及ぼし、当社ではテレワークや時差出勤などの感染拡大防止策を実施するなどの対策をとってまいりました。今後、新たな感染症が発生し経済活動への影響が大きく現れた場合には、当社の財務状況や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11)製品部材の納期遅延及び価格上昇

 当社は、国際情勢などに起因する原材料価格の高騰、円安、全般的な半導体不足の影響は当面は続くものとして、代替品の採用を図るとともに、入手可能な部材への変更などの対応を行い、また、適正な価格転嫁について顧客の理解を得てまいりました。このような対策を講じておりますが、これらの影響が当社の想定を大きく超えるような場合には、当社の財務状況や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12)重要事象等について

 当社は、継続して営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローを計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。しかしながら、当事業年度末において借入金は無く現金及び預金158百万円を保有し、必要な運転資金を確保していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断し、財務諸表への注記は記載しておりません。

 当社は、経常損益の黒字化を実現し当該状況を解消する為、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の諸施策を実施してまいります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

(1)経営成績の状況

 当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されたことなどにより、経済活動は年度半ばにかけて緩やかに回復しました。一方、国際情勢の悪化による世界的な供給不足や、円安による原材料や資材価格の上昇、物価の上昇が続いており、さらなる円安の進行や人手不足による供給制約のリスクなど、依然として先行き不透明な状況が続いています。

 当社は、インターネットの黎明期より培ってきたネットワーク技術を基盤として、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)事業に注力してきました。IoTは研究・実証の段階を終え、実運用が始まっており、今後は多くの自治体や一般企業、事業体においてさらに導入が進み、市場が拡大していくものと考えられます。新型コロナウイルス感染症の感染拡大以来、その影響と世界的な半導体の供給不足、さらに原材料価格の高騰により、IoT市場においても経済活動・企業活動の停滞が見られました。しかし、一方では産業界全般にわたるデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、技術革新を新時代の競争力の源泉とした経済・社会システムの再構築への投資が各国で始まっています。これは当社の強みであるネットワークとIoT技術をさらに展開する機会であります。

 このような状況のもとで、当社は「自由で安全なコネクテッドワールドの実現」をミッションとして、コアコンピタンスであるオープンソースソフトウェアに関する知見やネットワーク技術と、これを基盤としたIoT技術を中核に事業を推進しております。IoT事業を含む現事業領域をネットワーク事業と位置付け、「Web3」(ブロックチェーン上で、暗号資産等のトークンを媒体として「価値の共創・保有・交換」を行う経済)への参入を目指す新規事業領域をWeb3事業と位置付けて、従来型のハードウェア中心の事業形態からソフトウェア・サービスを中心とする事業形態への転換を加速する戦略をとっております。

 ネットワーク事業については、IoTゲートウェイは顧客のニーズや課題に対してより高度かつ柔軟に応えるため、システムインテグレーターやディストリビューターなどのパートナー企業との連携を従来にも増して深めるとともに、強化されたIoT用自社開発ソフトウェアを搭載した製品「OpenBlocks(オープンブロックス)IoT FX1/E」の出荷を開始しました。一方、ネットワークアプライアンスは、セキュリティ需要などの拡大と顧客ニーズの多様化へ対応するため、当事業年度には「EasyBlocks(イージーブロックス)監視」を始めとする自社開発による付加価値の高い製品を順次発表するなど、市場への浸透に注力しております。

 Web3事業については、ブロックチェーンを利用したIoTのデータ流通に関する特許を既に複数件取得し、また、慶應義塾大学SFC研究所と共同でIoTシステムとブロックチェーン・システムを連動させるための現実的なプロトコルの研究を行っています。さらに、Web3の実証事業として、地域産の日本酒の輸出拡大を図る物流ネットワーク構築を目的とする「日本酒輸出増プラットフォーム実証推進協議会」を当社を含む6社で設立し、実証プロジェクトを実施しました。本プロジェクトでは、当社のIoTとWeb3技術を活用し、従来技術では実現できなかった物流の効率化・高品質化と、最終需要家への高付加価値化を実現する実証を行いました。

 当事業年度は、前事業年度第2四半期以降に顕著となった半導体部品の供給不足の影響が残り、さらに前年同期にあった大口出荷の減少はありましたが、全体の売上高及び売上総利益は前年同期に対して増加しました。

 販売費及び一般管理費は、ソフトウェア・サービス型の事業形態への転換を進める中で抑制的に運用しましたが、上述の実証プロジェクト関連費用23百万円を計上したことにより前年同期に対して増加しました。これにより当事業年度の営業損失及び経常損失は前年同期より増加しました。

 この結果、当事業年度の売上高は998百万円(前年同期比4百万円・0.4%増加)、営業損失は101百万円(前年同期は営業損失98百万円)、経常損失は101百万円(前年同期は経常損失95百万円)、当期純損失は107百万円(前年同期は当期純損失103百万円)となりました。

 なお、上述の実証プロジェクトは3月末に一旦終了しました。プロジェクト関連費用は農林水産省の補助金の対象となっておりますが、補助金収入は交付金額の確定後に計上することとし、当事業年度の営業外収益には計上しておりません。

 主要品目別の売上高については、次のとおりであります。

① 自社製品コンピューター

 IoTゲートウェイ及びネットワークアプライアンスは、半導体不足による部材供給滞りの影響が続いていながらも売上高が増加しましたが、マイクロサーバーは、前年同期にあった第一世代製品(従来製品)の大口出荷の減少により売上高が減少しました。この結果、自社製品コンピューター全体の売上高は、493百万円(前年同期比1百万円・0.2%減少)と前年同期に対して僅かながら下回りました。一方、高付加価値製品の売上比率が高まったことにより、売上総利益率は向上し37.3%(前年同期は34.1%)となりました。

② コンピューター関連商品

 半導体部品の不足により遅延していた商品の入荷が再開されたため、コンピューター関連商品全体の売上高は少額ながらも前年同期を上回る258百万円(前年同期比2百万円・0.8%増加)となりました。また、売上総利益率は23.0%(前年同期は23.1%)でした。

③ サービス・その他

 自社製品コンピューターの販売は前年同期とほぼ同水準であり、関連するサービスの売上高は前年同期に比べ小幅ながら増加しました。この結果、サービス・その他全体の売上高は247百万円(前年同期比3百万円・1.4%増加)となりました。また、売上総利益率は60.9%(前年同期は60.2%)でした。

 なお、上記の各品目に含まれるIoT事業(ネットワークアプライアンス、IoTゲートウェイ、マイクロサー

バー、サービス)に係る売上高は前年同期並みとなり、売上高は616百万円(前年同期比1百万円・0.3%減少)となりました。一方、ネットワークアプライアンスなどソフトウェア・サービス比率の高い高付加価値製品が増加したことにより、売上総利益は297百万円(前年同期比16百万円・6.0%増加)となり、売上総利益率は48.2%(前年同期は45.3%)と向上しました。

(2)財政状態の状況

 当事業年度末の資産につきましては、現金及び預金の減少66百万円、売掛金及び契約資産の減少15百万円、部材供給不足への対応として在庫を補充したことによる棚卸資産の増加15百万円等により前事業年度末に比べ68百万円減少し、645百万円となりました。

 負債につきましては、買掛金の増加31百万円等により前事業年度末に比べ38百万円増加し、288百万円となりました。

 純資産につきましては、当期純損失の計上により前事業年度末に比べ107百万円減少し、356百万円となりました。

(3)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ66百万円減少し、158百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税引前当期純損失105百万円の計上に加え、棚卸資産の増加15百万円の減少要因がありましたが、売上債権及び契約資産の減少15百万円、仕入債務の増加31百万円等の増加要因がありました結果、営業活動により使用した資金は62百万円となりました。(前年同期は179百万円の使用)

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 有形固定資産の取得による支出等により、投資活動に使用した資金は4百万円となりました。(前年同期は5百万円の使用)

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の増減はありませんでした。(前年同期は99百万円の獲得)

(4)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

品目

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

自社製品コンピューター(千円)

309,248

93.7

合計(千円)

309,248

93.7

(注)1.当社は、コンピューター関連製商品とサービス等を提供する単一セグメントであるため、品目別の記載をしております。

2.自社製品コンピューター以外の品目については、記載を省略しております。

 

② 受注実績

品目

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

自社製品コンピューター

475,392

108.9

91,366

83.4

コンピューター関連商品

244,325

92.7

19,232

58.0

サービス・その他

244,777

97.1

134,231

98.3

合計

964,496

101.3

244,830

87.7

(注)当社は、コンピューター関連製商品とサービス等を提供する単一セグメントであるため、品目別の記載をしております。

 

③ 販売実績

品目

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

自社製品コンピューター(千円)

493,529

99.8

コンピューター関連商品(千円)

258,268

100.8

サービス・その他(千円)

247,147

101.4

合計(千円)

998,946

100.4

(注)1.当社は、コンピューター関連製商品とサービス等を提供する単一セグメントであるため、品目別の記載をしております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
なお、当事業年度の株式会社インターネットイニシアティブに対する販売実績は総販売実績の100分の10未満のため、記載を省略しております。

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

ダイワボウ情報システム株式会社

154,059

15.5

206,560

20.7

株式会社インターネットイニシアティブ

118,590

11.9

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

(1)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 「(経営成績等の状況の概要)(1)経営成績の状況」に記載のとおり、当事業年度は引き続き半導体部品の供給不足の影響が残ったことに加え、当初見込んでいた大口出荷が減少したことにより売上高は期初の予想を下回りました。また、Web3への取り組みとして参画した「日本酒輸出増プラットフォーム実証推進協議会」の実証プロジェクト関連費用の計上により販売費及び一般管理費が増加し、営業利益、経常利益、当期純利益とも期初の予想を下回る結果となりました。

 当社は、ハードウェア中心の事業形態からソフトウェア・サービスを中心とする事業形態への転換により収益を拡大し、経常損益の黒字化を目指してまいります。

 当社の当事業年度の財政状態の状況については、「(経営成績等の状況の概要)(2)財政状態の状況」をご参照下さい。

(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の当事業年度のキャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要)(3)キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 当社の運転資金需要のうち主なものは、商品及び原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。当社は、手元流動性を維持しており、借入金は無く運転資金は全て自己資金により賄っております。なお、重要な資本的支出の予定はありません。また、さらなる成長のため、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ③財務基盤の充実」に記載のとおり、財務基盤の充実を図ってまいります。

(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」及び「(重要な会計上の見積り)」に記載のほか、以下のとおりであります。

 なお、国際情勢などに起因する原材料価格の高騰、円安、全般的な半導体不足の影響は当面は続くものと仮定して見積りを行っております。

 

① 固定資産の減損処理

 当社は、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、全社を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位としてグルーピングを行い、資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は使用価値により零として見積っております。

② 税効果会計

 当社は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり、重要な税務上の欠損金が生じており、かつ、翌期における課税所得の発生が確実に見込まれる状況ではないことから回収可能性はないと判断し、繰延税金資産は計上しておりません。将来、課税所得が生じると見込まれる場合には、繰延税金資産を計上する可能性があります。

③ 継続企業の前提の評価

 当社は、継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無の判断にあたり、貸借対照表日の翌日から1年間のキャッシュ・フローを見積っております。事業計画の未達、変更等によりキャッシュ・フローが大幅に変動した場合、当該不確実性の判断に影響を及ぼす可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社では、IoTに代表されるネットワーク時代のコンピューター環境を構成する、ハードウェア、オペレーティングシステム、ネットワークシステム、アプリケーションソフトウエアを含む全体のアーキテクチャの基礎研究や開発はもちろんのこと、システムの運用環境までを考慮に入れた製品開発を行っております。開発にあたっては、環境への取り組みの一環として、グリーン購入法や電気・電子機器について有害な化学物質の使用を禁止するRoHS指令への積極的な対応を行っております。

 当事業年度は、ハードウェア中心の事業形態からソフトウェア・サービスを中心とする事業形態への転換を加速すべく、研究開発を行いました。

 ネットワーク事業については、強化したIoT用自社開発ソフトウェアを搭載したIoTゲートウェイ「OpenBlocks IoTシリーズ」を2機種製品化するとともに、ネットワークに不可欠な各種ソフトウェアを搭載したネットワークアプライアンス「EasyBlocks」を4モデル発表しました。

 Web3事業については、「日本酒輸出増プラットフォーム実証推進協議会」に参画し、輸出における製品品質を把握するため、ブロックチェーンの技術を利用して日本酒を個品ごとに温度管理や位置情報の追跡ができる仕組みを構築し実証検証を行うなど、Web3時代の成長領域への参入を目指した研究を行いました。

 

 当事業年度における研究開発費の総額は、89百万円となっております。