文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、企業理念として掲げた「価値ある建造物とサービスで安心して暮らせる持続可能な社会をつくる」を実践するため、サステナビリティスローガン(基本方針)「みんなでつくる みんなが輝く」を策定しております。この基本方針のもと、当社は、ひと、まち、自然を大切につなぎ、人々が活き活きできる場を創ることで「みんなが輝く社会」を実現してまいります。
(2) 長期ビジョン、中長期的な経営戦略
当社は、コロナ禍やグローバル化の進展など社会・事業環境の絶え間ない変化と価値観の多様化を受け、自らの社会における存在価値や将来ありたい姿、提供していく価値について改めて見つめ直し、2023年2月に長期ビジョンを「西松-Vision 2030」に刷新するとともに、「中期経営計画2025」を策定いたしました。
「西松-Vision 2030」では、「あたりまえに安心でき 活力がわく地域やコミュニティを 共に描きつくる総合力企業へ」という長期ビジョンを掲げ、当社がこれまで取り組んできた国内外の建設事業を中心とする「社会基盤整備」に加え、エネルギー、環境保全、社会・都市機能、防災・安全、不動産開発など、地域に寄り添い共に社会課題を解決する「社会機能の再構築」に取り組んでまいります。これらの「価値共創活動」を拡大することで、当社グループの成長を目指すとともに、社会に対して「安心・活力・つながり」を提供してまいります。
「中期経営計画2025」では、2022年度に収益が悪化した建築事業と国際事業(土木)の収益改善に注力するとともに、「西松-Vision 2030」実現に向け、「脱炭素」や「価値を生み出すアセット」等へ積極的な投資を実施いたします。
なお、「西松-Vision 2030」及び「中期経営計画2025」につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、併せてご参照ください(https://www.nishimatsu.co.jp/ir/library/plan.html)。
(3) マテリアリティ
当社は、「西松-Vision 2030」の実現に向け、既存の重要課題(マテリアリティ)をベースとして、企業理念及び長期ビジョンを踏まえたマテリアリティに進化させるため、以下のとおり、当社が事業を通じて取り組むべきマテリアリティを特定いたしました。
・安心でき、活力がわく社会の実現
・現場力を最大限発揮できる組織づくり
・価値創出を最大化できるパートナーシップの形成
・安心とワクワクにつながる技術戦略
・多様な人財がワクワクし活躍できる仕組みづくり
・コンプライアンスの遵守
当社は、特定したマテリアリティの重要性を認識したうえで、課題解決に向けた実効性のある経営、事業活動に取り組んでまいります。マテリアリティにつきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、併せてご参照ください(https://www.nishimatsu.co.jp/esg/materiality.html)。
<マテリアリティ>
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、2023年2月に公表した「中期経営計画2025」において、目標とする業績指標として連結売上高及び連結営業利益を掲げております。また、目標とする財務指標として、ROE、自己資本比率、D/Eレシオ、連結配当性向及び自己資本配当率(DOE)を掲げております。特にROEは持続的成長への競争力を高めた結果として向上するものであり、当社の目指す経営方針と合致することから、目標とする財務指標として採用しております。
(5) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社を取り巻く環境は、コロナ禍やグローバル化の進展、価値観の多様化を受け、絶え間なく変化しています。建設業界におきましては、政府建設投資、民間建設投資ともに増加傾向にありますが、建設資材の価格高騰や人手不足による人件費上昇の影響により、注視が必要な状況が続いております。
このような事業環境のもと、当社グループは、2022年度に策定した「西松-Vision 2030」及び「中期経営計画2025」の達成に向けて、計画に掲げた施策を着実に実行してまいります。
事業上の戦略として、国内土木事業におきましては、公共工事の受注規模拡大に向けて人員・組織力の強化に取り組んでおります。また、新分野への挑戦として、洋上風力発電設備工事への参画を推進しており、自己昇降式作業台船(SEP)の共同保有等を目的とした会社を、当社を含む建設会社6社で設立し、2023年10月にSEPの調達契約を締結しました。
国内建築事業におきましては、高収益体質への変革に向けて、企画提案力向上による顧客との対話の深化、社内外リレーションを最大限活用した営業展開、データセンター・冷凍冷蔵倉庫・環境施設などの注力分野における差別化要素の確立に取り組んでおります。また、主に設計・施工物件において「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を推進・拡大してまいります。
国際事業におきましては、事業リスクの最小化を図り、土木はODA工事、建築は日系企業からの工事に加え、外資企業からの工事受注に向けた取り組み体制を強化しております。
アセットバリューアッド事業におきましては、国内外成長分野へのバリューアッド事業投資を積極的に展開し、収益基盤の着実な積み上げと「循環型再投資モデル」への進化を図っております。「循環型再投資モデル」の一環として「西松プライベートリート投資法人」を設立し、2023年9月より運用を開始しました。本投資法人を活用したタイムリーな資産入替により「循環型再投資モデル」への進化を加速させるとともに、投資マネジメント事業における受託資産残高1,000億円の早期実現を目指してまいります。
地域環境ソリューション事業におきましては、再生可能エネルギー事業・まちづくり事業の成長に向けて、中期経営計画2025の3年間で積極的な事業投資を実施します。
当社はサステナビリティ経営の実現に向けて、本年2月にサステナビリティスローガン(基本方針)を策定し、当社が事業を通じて取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を改めて特定するとともに、マテリアリティ解決に向けたKPIツリーを策定しました。今後も引き続き、「サステナビリティ委員会」「サステナビリティ戦略会議」等の推進体制のもと、全社一体となってサステナビリティ推進に取り組んでまいります。
財務上の課題として、「中期経営計画2025」の3年間につきましては、事業活動により獲得した資金に加え、有利子負債を活用し、成長投資に向けた資金を確保してまいります。また、財務健全性の観点から、2025年度の自己資本比率30%程度、D/Eレシオ1.5倍程度を堅持してまいります。
今後も、当社は全役職員一丸となって「中期経営計画2025」を達成するとともに、「西松-Vision 2030」の実現に向けて邁進してまいります。
(業績及び財務計画(連結))
(投資計画)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、サステナビリティに関する課題を検討・審議することを目的として、サステナビリティ委員会(取締役会の諮問機関として社内取締役、社外取締役及び外部有識者で構成)を設置しております。サステナビリティ委員会は、取締役会からの諮問に基づき、長期視点やマルチステークホルダーの視点に立ったマテリアリティや、マテリアリティに紐づく環境変化(リスク・機会)への対応方針等に関する事項を検討・審議し、取締役会に答申します。また、マテリアリティ解決及び持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティ戦略について検討・実践することを目的として、サステナビリティ戦略会議を設置するとともに、同会議内にサステナビリティ推進のために必要な委員会(リスク・機会マネジメント委員会、人権委員会、DE&I委員会、環境委員会)を設置しております。
取締役会は、サステナビリティ委員会の答申を踏まえ、サステナビリティ課題に関する対応方針等を決定します。また、「リスク管理責任部署-サステナビリティ戦略会議(リスク・機会マネジメント委員会、環境委員会)-社長・本部長会議-取締役会」というサステナビリティに関するリスク・機会の報告体制及び監督・指示体制を構築するとともに、サステナビリティに関するリスク・機会への取組みに係る報告を受けて、その具体的対応策、目標、進捗状況について監督します。
社長・本部長会議は、取締役会による監督のもと、最高執行レベルの意思決定機関として、サステナビリティに関するリスク・機会への取組みに関する具体的対応策及び目標を決定し、進捗状況を管理します。
サステナビリティ戦略会議は、「長期視点に立ったリスク・機会のマネジメント」及び「現事業活動におけるリスク・機会のマネジメント」を実施します。同会議は、サステナビリティに関するリスク・機会の情報を集約し、組織横断的にリスク等を監視し、当社グループのリスク等を全社的リスク管理プロセス(ERM)に統合し、総合的に管理します。
以上のガバナンス体制により、当社グループのサステナビリティ課題に関する取り組みを推進しております。
②リスク管理
当社グループのサステナビリティに関するリスク・機会の管理を適正に行うため、社内規程を定め、損失の最小化と持続的成長を図ります。
サステナビリティ戦略会議(リスク・機会マネジメント委員会、環境委員会)は、リスク等情報の集約を行い、組織横断的にリスクを監視し、当社グループのリスクを総合的に管理します。同会議は、個別リスクごとに責任部署を定め、当該リスクに関する「予防的リスク管理体制」と「発見的リスク管理体制」を構築します。
リスク管理の整備・運用上の有効性評価は同会議が行い、問題がある場合には、各々の責任部署に対し是正勧告を行います。同会議は、自ら定めた個別リスクの責任部署及び予防的リスク管理体制・発見的リスク管理体制並びに当該リスクの管理状況を社長・本部長会議及び取締役会に報告します。
社長・本部長会議はサステナビリティ戦略会議からの報告内容(重要リスク、具体的対応策及び目標)を審議・承認し、必要に応じ同会議に指示します。社長・本部長会議は承認した内容を取締役会に報告します。
取締役会は、「リスク管理責任部署-サステナビリティ戦略会議-社長・本部長会議-取締役会」というリスクに関する報告体制及び監督・指示体制を構築し、監査室はその運用状況を監視します。取締役会は社長・本部長会議からの報告内容を審議し、会社としての最終的な承認を行います。また必要に応じて社長・本部長会議に指示し、監督します。
(注)サステナビリティに関する考え方及び取組の詳細な情報については、2024年9月頃に当社ウェブサイト(https://www.nishimatsu.co.jp/esg/report/)において公表予定の「
(2) 気候変動への対応
当社グループの気候変動への対応に係る考え方及び取組は、以下のとおりであります。
①ガバナンス
(取締役会による監督)
当社は、気候関連リスクを回避・低減・移転し、また気候関連機会を実現するための戦略を重要な経営課題と位置づけ、企業として適切に対応することで持続的な成長につながると考えています。そのため「取締役会」は、気候関連課題に関する「社長・本部長会議」からの報告内容を審議し、気候関連リスク及び機会に係る具体的対応策、進捗管理について監督します。
(社長・本部長会議による決定・承認)
「社長・本部長会議」は、気候関連課題に関し「サステナビリティ戦略会議」からの報告を受け、気候関連リスク及び機会に係る具体的対応策、進捗管理について最高執行レベルの責任として決定・承認を行い、年2回の頻度で取締役会に報告します。
(サステナビリティ戦略会議による管理)
「本社(支社・現場)各部門」は、気候関連リスク及び機会の重要項目を抽出し、リスク及び機会対応策の立案と進捗報告を行います。「サステナビリティ戦略会議」に設置する「環境委員会(作業部会:地球環境対策部会)」は、「本社(支社・現場)各部門」からの報告を受け、抽出した気候関連リスク及び機会の特定を行い、対応策と進捗状況を確認し、サステナビリティ戦略会議に報告します。「サステナビリティ戦略会議」は最終確認をし、全社リスク管理(ERM)と統合し、「社長・本部長会議」に報告します。
②リスク管理
気候変動への対応に係るリスク管理については、上記「①ガバナンス」に記載のとおりです。
③戦略
(戦略/シナリオ分析)
不確実性の高い将来に対応するためTCFDが提言するシナリオ分析をおこなっています。主軸の事業である「建設事業」のほか、「アセットバリューアッド事業」、「地域環境ソリューション事業」を対象としており、これには協力会社や資材調達を含めたバリューチェーン全体を考慮しています。
また、気候関連リスク及び機会は長期間にわたり影響を与える可能性があるため、中期経営計画の年限にあたる2025年度までを「短期」、2026年度~2030年度までの期間を「中期」、2031年度以降を「長期」と設定しました。
(戦略/気候関連リスク及び機会の重要項目)
シナリオ分析を用い、産業革命以前と比較した気温上昇1.5℃と4℃のそれぞれの世界観で、重要項目の決定プロセスに基づき気候関連リスク及び機会を特定しました。その上で、事業活動に及ぼす財務影響と影響を受ける期間を、以下のように整理しました。
(戦略/1.5℃シナリオ 財務インパクト評価)
重要項目として特定したリスク及び機会については、2021年度の営業利益に対する財務インパクトとして表し、2030年度及び2050年度時点における気候関連リスク及び機会の要素による影響額の増減を、ウォーターフォールグラフを用いて比較検証しました。
(戦略/4℃シナリオ 財務インパクト評価)
(戦略/シナリオ分析結果)
気候変動に対する強靭性(レジリエンス)については、1.5℃、4℃の気候関連シナリオにおいて、営業利益に対する財務インパクトを検証した結果、財務面で大きな影響を与えないことが確認されました。
④指標及び目標
(指標と目標/カーボンニュートラル社会移行計画(ZERO50ロードマップ/バリューチェーン全体))
ZERO50ロードマップは、2050年のカーボンニュートラル社会にむけバリューチェーン全体でのネットゼロを実現する計画で、直接的なCO2削減施策に加え、ガバナンスの高度化・ステークホルダーとの連携などの削減を推進する関連活動の実践、カーボンニュートラル社会にむけてビジネスモデルの転換を志向した内容となっております。
(指標と目標/カーボンニュートラル社会移行計画(ZERO50ロードマップ/スコープ1+2))
「ZERO50ロードマップ」の直接操業(スコープ1+2)部分のネットゼロにむけたロードマップとなります。再エネ電力の標準化、次世代燃料や、技術革新(脱炭素に資する建設機械や機器類)の導入に加え、ネガティブエミッション技術の活用によりCO2のネットゼロに挑みます。
(指標と目標/カーボンニュートラル社会移行計画(気候関連リスク及び機会の対応計画)
カーボンニュートラル社会移行計画は「ZERO50ロードマップ」と、移行への対応準備としてシナリオ分析の結果により重要項目とした気候関連リスク及び機会の「対応計画」から成ります。リスクの回避・低減による利益回復額が大きいこと、また機会の獲得による利益確保を確実に行うため、対応計画には、対応方針・KPI・目標を設定の上、進捗状況を管理しPDCAを実施しています。
(指標と目標/カーボンニュートラル社会移行計画(ZERO30ロードマップ2023)
「ZERO50ロードマップ」の実現にむけ2030年を年限とした脱炭素社会形成のためのCO2排出量削減の実行計画。SBT1.5℃認定基準を超える野心的なスコープ1+2の削減計画(目標①)、スコープ3カテゴリー11の削減計画(目標②)及び再生可能エネルギー発電事業による創エネ計画(目標③)から成っています。
ZERO30ロードマップ2023は、「カーボンニュートラル社会移行計画」の一端を担う「ZERO50ロードマップ」の2030年のマイルストーンに位置付けられるCO2排出削減計画です。2030年度までに、スコープ1+2を(再エネ電力や環境配慮燃料の導入などで)54.8%、スコープ3カテゴリー11を(ZEB設計を推進する事により)27%削減し、同時に再エネ発電事業として2030年度における当社のスコープ1,2の残余排出量(3.2万t-CO2)を上回る108千MWhの再生可能エネルギー発電(4万t-CO2削減 相当量)を実施します。
(指標と目標/CO2排出量実績)
(注)気候変動への対応に関する詳細な情報については、当社ウェブサイトの
(https://www.nishimatsu.co.jp/esg/environment/pdf/tcfd_202406.pdf)
人的資本にかかる考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。なお、人財育成等について、連結グループの主要な事業を営む提出会社において、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、必ずしも連結グループに属する全ての会社では行われておらず、連結グループにおける記載が困難であるため、以下に記載する事項は当社グループにおける売上の大半を占める提出会社のものを記載しております。
①ガバナンス
人的資本に係るガバナンスについては、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載のとおりです。
②リスク管理
人的資本に係るリスク管理については、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」に記載のとおりです。
③戦略
「人財獲得競争の激化」、「人財の流動性の高まり」、「時間外労働の上限規制の適用」といった社会変化の中で新しい価値を創出していくためには、多様な能力や価値観を持った人財が、エンゲージメント高く働ける仕組み作りと、組織の垣根を越えて横断的な思考を持つことができる人財づくりが必要です。
当社は、西松-Vision2030、中期経営計画2025における変革プログラムである「意識・行動改革」「組織能力強化」「成長資源創出」の3つの枠組みを踏まえ、短・中期目標を掲げ具体的な取り組みを進めています。今後も当社がもつ人財の強みを活かしつつ、社員一人ひとりを「資本」としてとらえ、持続的に人財の価値を高めていく施策に取り組んでいきます。
〈人財育成方針〉
〇挑戦者意識の醸成
社員の挑戦者意識を高めるためには、社員全員がビジョンを共有し、かつ一人ひとりが積極的かつ安心して意見を出し合える風土を醸成することが必要です。当社は、2023年度より社長が国内外の各拠点に赴き「社員との対話」を行っています。今後は社長と社員の対話に加え、上司部下間の対話(1on1ミーティング)をはじめとした取り組みを行い、社員の挑戦者意識の向上を図っていきます。
〇自律的に学ぶ人財づくり
当社は2019年度より、高い技術力の養成と広い視野を持って社会の変化に対応できる人財を育成し、組織の信頼性を高めていくことを目的として、社内人財育成体系である「西松社会人大学」を整備しています。創設以来、階層別教育体系の整備を中心に取り組んできました。今後は、将来を担う人財に早くリーダーとしての資質を身に付けてもらうため、1on1ミーティングなどを通じて社員が自身のありたい姿について考え、タレントマネジメントシステムでこれまでに身に付けた能力を知り、その上で学びの課題を設定して、自分に必要な分野を自身で考えて学べる仕組みに進化させていきます。
〇連携意識の醸成
当社は2020年度より、全社組織体制及び組織横断的な人財配置について検討を行う「組織・人財検討会議」を設置するなど、組織に横串を通すための仕組みを作ってきました。今後は、連携事業に携わった社員に対する評価の仕組みや、連携事業への従事を賞賛する表彰制度、社内横断的に人財を募集する社内公募制度を整備するなど、連携意識醸成の取り組みを加速させていきます。
〇多様な人財の確保
当社は、2024年度よりリクルーター制度を導入し、就職活動生の志望意欲の向上を促すとともに、多様な人財との接触の機会を増やすことで、将来を担う人財の確保を図っていくこととしています。また、今後持続的な社会の発展への貢献を図っていくためには、女性だけでなく、シニアの活躍の場の拡大や外国人の採用等にも多様性の枠を広げていく必要があると考えており、必要な取り組みを行っていきます。
〈社内環境整備方針〉
〇柔軟な働き方ができる環境、多様な人財が長く能力を発揮できる環境づくり
当社では、「フレックスタイム制の導入」や「仕事と育児を両立するための両立支援制度の拡充」、「総労働時間の削減」など、柔軟な働き方ができる環境づくりと、社員の健康管理や増進を図る取り組みを進めてきました。また、女性社員が出産や育児などのライフイベントや女性特有の健康課題によってキャリアを諦めることがないよう、人事制度に関する勉強会や上司と女性部下間の対話の機会を設けるなど、多様な人財が長く活躍し続けられる環境づくりも行っています。多様な人財が働きやすい環境をつくることは、社員に意欲高く活躍してもらうための土台であると考えており、今後も取り組みを継続していきます。
〈社員エンゲージメントの向上〉
社員のエンゲージメントが高まることにより、人財の定着や生産性の向上につながることが期待されます。当社では、2023年度より「エンゲージメント調査」を実施しており、調査結果については分析のうえ、各組織にフィードバックし、全社及び各組織における改善に向けた取り組みにつなげていきます。
④指標及び目標
(機会の創出)
(リスクの低減)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
景気悪化等による建設需要の減少や不動産市場の縮小等、当社事業に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設工事受注高の減少や不動産販売事業・賃貸事業の低迷など、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、当社グループは、長期ビジョン「西松-Vision2030」や「中期経営計画2025」を策定し、事業活動に取り組んでおります。また、計画時の想定を上回る事業環境の変化が生じた場合には、適宜計画の見直しを行い、業績等に与える影響の低減に取り組んでおります。
長期にわたる工事を受注する時点で将来の資材等調達価格を適切に予測することが困難な場合があるため、工期中に資材価格や調達の状況が大きく変わることがあります。これにより建設コストが大幅に増加することがありますが、当該建設コスト増加分を工事請負金額に反映させることができない場合には、受注時に計画していた工事損益が変動し、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、工事請負契約の締結にあたり、適正な価格、適正な工期で工事を実施できるよう、発注者に対して協議の申し入れを行っております。また、施工条件や資材価格動向の精査による物価変動リスクの定量評価、主要資材の早期調達等により、工事損益の確保に努めております。
工事目的物の品質管理には万全を期しておりますが、重大な欠陥が発生した場合には、顧客からの信頼を損なうことに加え、契約不適合責任に基づく損害賠償金の支払等により、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、各種の社内基準書に準拠した施工、品質パトロールの実施、社内組織を活用した施工管理検討の実施、契約不適合事例や不具合事例の全社水平展開、各種研修の実施等により、工事目的物の品質管理に努めております。
当社グループは、事業活動に関連する法令・規制の遵守の徹底に加え、従業員等によるコンプライアンス遵守を推進しておりますが、個人的な不正行為等を含め、重大な法令違反等を引き起こした場合には、顧客その他ステークホルダーからの信頼を損なうとともに、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、各部署に対するコンプライアンス監査によりコンプライアンスに係るリスク管理状況を確認し、問題があれば積極的に解決するとともに、企業風土の改善に取り組んでおります。また、危機意識の風化防止などを目的としてコンプライアンス研修を実施しております。その他、内部通報窓口を設置するなど、コンプライアンス違反事由が発生した際に適切かつ迅速に対応できる体制を整備しております。
当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しております。コンピュータウイルスその他の要因によって、かかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当社グループの事業活動や業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、設計・施工をはじめとする事業活動を通じて構造物やお客様に関する情報、取引先の個人情報あるいは機密情報その他様々な情報を取り扱っております。これらの情報が外部からのサイバー攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は紛失した場合、損害賠償、復旧費用等の発生により、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、当社グループで情報セキュリティポリシーを定め、外部からの不正アクセス防止、コンピュータウイルス対策、従業員の教育等、情報セキュリティ対策の継続的な強化に努めております。
当社事業で必要とされる専門性を持つ人財や、リーダーの確保と育成が推進できない場合には、経営計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。また、生産年齢人口の減少や建設技能者の高齢化等により、建設業従事者が将来的に減少した場合にも、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、次の通り、人財の育成、採用及び生産性向上に努めております。育成は、専門力や一般教養を含めた多様な能力獲得の機会整備、マネジメント能力・リーダーシップ能力の開発を目的とした社員研修カリキュラムの充実を図るとともに、建設キャリアアップシステムの活用を促進し、協力会社への技術教育・指導を継続的に実施しております。採用は、初任給の増額、現場勤務手当や若手社員の帰省旅費制度の創設など制度面の改定に加え、当社の魅力として評価されている「社員・社風の良さ」を体験してもらう機会としてのインターンシップや現場見学会の強化のためリクルーター制度などの新卒採用体制強化を図っております。加えて、現場における生産性向上に向けて、デジタル技術活用による「スマート現場」の実現をはじめとする、デジタルトランスフォーメーションの推進を積極的に進めております。
2024年度より適用される時間外労働上限規制に対応できない場合、法令違反として行政指導を受けるだけでなく業務執行の妨げとなり、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、2017年度以降、フレックスタイム制度や在宅勤制度の導入、現場工務革新センターの設置による現場業務の見直し、具体的な時間外労働削減の取組の全社共有などを進め、段階的に36協定届出の時間を低減してまいりました。また、時間外労働状況の見える化システムによるリスク管理を徹底し、工事進捗状況などにより長時間労働リスクの高まった現場に対しては、人員の増強、支社・支店による支援強化などの対策を適時に講じてまいります。
当社グループは東南アジア・南西アジアを中心に海外事業を展開しているため、進出国におけるテロの発生や政治経済情勢の変動、法制度の変更等があった場合には、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、外務省海外安全ホームページによる危険度レベルの定期的な確認や、「リスク確認チェックシート」によるカントリーリスクの定期的な評価、「海外危機管理マニュアル」の周知等により、事業継続や工事への悪影響を最小限に抑えるよう努めております。
また、海外建築事業においては、進出国における外資企業の活動制限、日系企業の投資状況等による発注量の伸び悩み等により受注量が変動し、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、海外子会社はこれまでの日系工場案件中心の取り組みから、アセットバリューアッド事業本部との連携による自社開発ホテル案件の取り組み、また運営体制のローカル化により価格競争力を高め、現地・外資系案件の取り組みを拡大することで入札機会を増やし、受注確保に努めております。
為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、海外工事では原則、工事取下金と工事支出金の通貨を合致させることで為替リスクを回避し、為替レート毎の為替差損益の試算を行い、外貨残高の適正な管理を行います。国内工事では海外より資機材の調達を行う際には、為替予約等を検討することで、業績への影響を低減させるよう努めております。
不動産市況の悪化により出口戦略が予定どおり遂行されない場合には、事業計画の変更等に伴う採算の悪化など、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、事業管理体制の確立、プロジェクトリスク評価の実施、事業計画の適時見直し、代替出口戦略の確保等により、業績への影響を低減させるよう努めております。
施工中に予期せぬ重大事故や労働災害が発生した場合には、顧客その他ステークホルダーからの信頼を損なうとともに当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、過去事例の全社水平展開や定期的な現場パトロールのほか、当社職員や協力会社の職長・作業員に対する安全教育の継続的な実施により、労働災害を未然に防止するよう努めております。
大規模な地震や台風・洪水等の自然災害は、施工中案件の被災、工程遅延、自社所有建物等への被害等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、施工中案件においてはリスクに応じて建設工事保険を、自社所有建物等においては損害保険等を付保し損害低減策を講じております。また、事業継続計画(BCP)の策定及び定期的なBCP訓練の実施により、建設会社の社会的責任としてインフラ復旧工事に積極的に協力し、被災地の復旧・支援やお客様の事業の早期再開に貢献できるよう努めております。
①気候変動に伴う物理的リスク
気温の上昇により施工現場の作業環境が悪化した場合、技能労働者の減少が加速することになり、受注機会の喪失、生産性低下、労務費の増加等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
②気候変動に伴う移行リスク
脱炭素社会への移行に向けて、本格的な炭素税の導入等がなされた場合や気候関連の技術開発が遅れた場合、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2021年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、気候変動関連のリスク・機会を特定・評価しシナリオ分析を実施するとともに、分析結果に基づいた対応策を進めています。リスクの回避・低減にむけた対応策には、事業活動の持続性や強靭性を高めております。
当社グループは地球温暖化防止を重要な経営課題と認識し、2050年カーボンニュートラル社会への実現に向け、2030年度を年限としたCO2削減計画「ZERO30ロードマップ2023」に則り、脱炭素活動を実施しています。
新型コロナウイルスその他感染症の世界的流行(パンデミック)が発生し、その影響が国内及び海外の建設投資に及んだ場合、当社の建設工事受注額が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、感染の拡大により、当社事業所において当社役職員又は協力会社社員に感染症患者が多数発生した場合には、当社の施工する工事を一時中断するなど感染拡大防止措置を講ずる必要があります。工事の中断期間が長期にわたる場合や中断する工事数が増加した場合には、工事損益が変動するなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、当社役職員や協力会社社員の安全と健康を最優先に考え、当社事業所内における感染拡大防止に努めるとともに、在宅勤務の実施により事業継続に努めるなど、業績への影響を低減させるよう努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復が続きました。先行きについては、世界的な金融引き締めに伴う影響など、海外景気の下振れがリスクとなっております。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
建設業界におきましては、政府建設投資、民間建設投資ともに増加傾向にありますが、建設資材の価格高騰や人手不足による人件費上昇の影響により、注視が必要な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループの連結業績は以下のとおりとなりました。
建設事業受注高は、海外工事が減少しましたが、国内建築工事及び国内土木工事が増加したことにより、前期比19,880百万円増加(5.8%増)の360,273百万円となりました。
売上高は、主に国内建築工事が増加したことにより、前期比61,875百万円増加(18.2%増)の401,633百万円となりました。営業利益は、不動産事業等総利益が減少しましたが、国内建築工事及び海外工事の完成工事総利益が増加したこと等により、前期比6,211百万円増加(49.2%増)の18,827百万円となりました。経常利益は、前期比6,401百万円増加(48.6%増)の19,578百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比2,740百万円増加(28.4%増)の12,388百万円となりました。
報告セグメント等の業績は以下のとおりであります。(セグメントの業績は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
イ 土木事業
当セグメントは主に国内土木工事の売上により構成されております。当セグメントの売上高は、前期比0.8%減の106,963百万円となり、セグメント利益は、高採算工事が前期に竣工した反動もあり、前期比5.3%減の11,100百万円となりました。
当社単体の国内土木工事の受注高は、民間工事が減少しましたが、官公庁工事が増加したことにより、前期比11,630百万円増加(10.8%増)の119,181百万円となりました。
ロ 建築事業
当セグメントは主に国内建築工事の売上により構成されております。当セグメントの売上高は大型再開発工事や物流工事が計画通り進捗し、前期比34.8%増の237,219百万円となりました。利益につきましては、一部大型工事の採算が向上したこと等により完成工事総利益率が改善し、セグメント利益348百万円(前期は5,576百万円のセグメント損失)となりました。
当社単体の国内建築工事の受注高は、民間工事及び官公庁工事が増加したことにより、前期比46,512百万円増加(26.6%増)の221,528百万円となりました。
ハ 国際事業
当セグメントは主に海外土木工事及び海外建築工事の売上により構成されております。当セグメントの売上高は、大型土木工事の進捗により、前期比35.8%増の33,120百万円となりましたが、セグメント損失は553百万円(前期は3,849百万円のセグメント損失)となりました。
当社単体の海外土木工事及び海外建築工事の受注高は、前期に大型土木工事を受注した反動により、前期比34,299百万円減少(76.5%減)の10,535百万円となりました。
ニ アセットバリューアッド事業
当セグメントは主に保有不動産の販売及び賃貸収入により構成されております。当セグメントの売上高は、主に販売事業が減少したことにより、前期比12.1%減の28,642百万円となり、セグメント利益は、売上高の減少に伴い、前期比19.4%減の8,899百万円となりました。
ホ 地域環境ソリューション事業
当セグメントは主に再生可能エネルギー事業及びまちづくり事業の売上により構成されております。当セグメントの売上高は、前期比77.1%増の209百万円となりましたが、セグメント損失は821百万円(前期は701百万円のセグメント損失)となりました。
当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
当連結会計年度末の資産は、投資有価証券や受取手形・完成工事未収入金等、未成工事支出金が増加したこと等から、前連結会計年度末と比較して66,000百万円増加(12.9%増)の579,624百万円となりました。
負債は、有利子負債や未成工事受入金、支払手形・工事未払金等が増加したこと等から、前連結会計年度末と比較して45,292百万円増加(12.7%増)の402,767百万円となりました。
純資産は、その他有価証券評価差額金や利益剰余金が増加したこと等から、前連結会計年度末と比較して20,708百万円増加(13.3%増)の176,856百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して0.1ポイント増加し、29.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して2,806百万円増加(5.2%増)の56,532百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が18,920百万円となり、売上債権の増加等により資金が減少しましたが、未成工事受入金の増加等により資金が増加し、32,037百万円の収入超過(前連結会計年度は34,747百万円の収入超過)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券や有形固定資産の取得等により資金が減少し、41,819百万円の支出超過(前連結会計年度は27,450百万円の支出超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払により資金が減少しましたが、借入金の増加や社債の発行により資金が増加し、11,083百万円の収入超過(前連結会計年度は2,365百万円の支出超過)となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び不動産事業等では、生産実績を定義することが困難であり、建設事業においては、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態に即しておりません。
また、当社グループにおいては、建設事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって、受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
イ 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に変更があったものについては、当期受注工事高にその増減額を含めて表示しております。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は、(当期完成工事高+次期繰越工事施工高-前期繰越工事施工高)に一致します。
4 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、第86期 13.7%、第87期 3.0%であります。
5 受注工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第86期 請負金額100億円以上の主なもの
第87期 請負金額100億円以上の主なもの
ロ 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は特命と競争に大別され、その比率は次のとおりであります。
(注) 百分比は請負金額比であります。
ハ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第86期 請負金額100億円以上の主なもの
第87期 請負金額100億円以上の主なもの
3 完成工事高に対する割合が100分の10以上の相手先は、次のとおりであります。
ニ 手持工事高
(2024年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
請負金額100億円以上の主なもの
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2025」に基づく当連結会計年度業績計画の達成状況及び前期比較の分析は次のとおりであります。
建設事業受注高は、前期比198億円増加(5.8%増)、期首計画比352億円増加(10.9%増)の3,602億円となりました。国内土木工事は道路や鉄道工事等を中心に受注し、前期実績を上回りました。国内建築工事は事務所・庁舎や物流施設、教育施設等を中心に受注し、前期実績を上回りました。海外工事はODA工事に応札しておりますが、開札時期が翌期にずれたため、前期実績を下回りました。以上の要因により上記の結果となりました。
売上高は、増収となり、前期比618億円増加(18.2%増)、期首計画比166億円増加(4.3%増)の4,016億円となりました。アセットバリューアッド事業において販売事業の売上が減少しましたが、国内建築事業において一部大型工事が想定以上に進捗したことや、一部の大型完成工事で設計変更を確実に獲得できたことが増収の主な要因であります。
営業利益は、前期比62億円増加(49.2%増)、期首計画比38億円増加(25.5%増)の188億円となり、営業利益率は前期の3.7%から4.7%に改善しました。営業利益の増加につきましては、中期経営計画2025における収益改善プランの進捗に伴い国内建築工事において採算が改善し、建築工事の売上総利益率が前期比2.1ポイント増加の4.3%となったことや、前期に海外の大型トンネル工事において施工上の問題が生じ、追加費用が発生したことの反動により、海外工事の売上総利益が前期比32億円増加の9億円となったことが主な要因であります(売上総利益はいずれも当社単体の数値であります。)。
ロ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度末の財政状態の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前期末比660億円増加(12.9%増)の5,796億円となりました。投資有価証券が398億円増加したことや、受取手形・完成工事未収入金等の売上債権が142億円増加したこと等が主な増加の要因であります。
負債は、前期末比452億円増加(12.7%増)の4,027億円となりました。これは、有利子負債(有利子負債は短期債務及び長期債務の合計よりリース債務を除外して算出しております。「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」において以下同様です。)が177億円増加したことや、未成工事受入金が105億円増加したこと等が主な要因であります。また、有利子負債残高は前期末比10.5%増の1,861億円(D/Eレシオ1.1倍)となりました。次期につきましては、アセットバリューアッド事業等を中心に402億円の設備投資及び出資を行う計画としております。この設備投資及び出資が計画どおり進んだ場合には、期末の有利子負債は2,080億円(D/Eレシオ1.2倍程度)となる見込みであります。
純資産は、前期末比207億円増加(13.3%増)の1,768億円となりました。また、自己資本比率は29.1%となり、前期から0.1ポイント増加しました。これは、その他有価証券評価差額金が124億円増加したことや利益剰余金が60億円増加したこと等が主な要因であります。
ハ セグメント情報に記載された区分ごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、セグメント情報に記載された区分ごとに資産及び負債を配分していないため、セグメント別の財政状態の分析・検討は記載しておりません。
セグメント情報に記載された区分ごとの経営成績等の状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2025」に基づく当事業年度業績計画の達成状況は次のとおりであります。なお、当社グループの受注高、売上高(完成工事高・不動産事業等売上高)及び売上総利益(完成工事総利益・不動産事業等総利益)は、その大半を当社単体で占めていることから、以下の分析・検討は、いずれも当社単体の数値を記載しております。
(土木事業)
受注高は、期首計画比で91億円増加(8.3%増)の1,191億円となりました。これは、大型工事を中心に想定以上に設計変更を獲得できたことが主な要因であります。工事種別でみると鉄道等が前期比で減少し、道路等が前期比で増加となりました。
完成工事高は、期首計画比で53億円増加(5.3%増)の1,053億円となりました。これは、設計変更の獲得等の上積みがあったことによるものです。
完成工事総利益は、期首計画比で19億円増加(13.1%増)の169億円となりました。これは各工事が概ね順調に進捗したことや大型完成工事において設計変更を獲得できたこと等によるものです。この結果、完成工事総利益率についても期首計画比1.1ポイント増加の16.1%となりました。
(建築事業)
受注高は、期首計画比で515億円増加(30.3%増)の2,215億円となりました。これは、期首に見込んでいた工事を概ね受注できたことに加え、期首に見込んでいなかった一部大型工事を受注できたことが主な要因であります。工事種別でみると物流施設や住宅などが前期比で減少し、事務所・庁舎や教育施設、工場などが前期比で増加となりました。
完成工事高は、期首計画比107億円増加(4.8%増)の2,357億円となりました。これは、一部の大型工事が想定以上に進捗したことや、一部の大型完成工事で設計変更を獲得できたことが主な要因であります。
完成工事総利益は、期首計画比で8億円減少(8.0%減)の101億円となりました。これは、前期までに受注した工事の一部において、設備工事等の費用が増加したためです。この結果、完成工事総利益率は、期首計画比0.6ポイント減少の4.3%となりました。なお、物価上昇の影響を受けた工事における資材の調達や、外注工事の発注は、2024年3月期で概ね完了しております。
(国際事業)
受注高は、期首計画比で144億円減少(57.9%減)の105億円となりました。これは、フィリピンのODA工事に応札しておりますが、開札時期が翌期にずれたことが主な要因であります。
完成工事高は、期首計画比で39億円増加(23.9%増)の204億円となりました。これは、各工事が順調に進捗したことや為替変動によるものです。
完成工事総利益は、期首計画比で4億円増加(88.1%増)の9億円となりました。これは、上記の完成工事高の増加によるものです。この結果、完成工事総利益率についても期首計画比1.6ポイント増加の4.6%となりました。
(アセットバリューアッド事業、地域環境ソリューション事業)
不動産事業等売上高は、期首計画比で21億円増加(9.0%増)の256億円となりました。これは、期首に見込んでいなかった一部の販売用不動産の売却等が主な要因であります。
不動産事業等総利益は、期首計画比で16億円増加(19.9%増)の101億円となりました。これは、上記販売用不動産の売却等が主な要因であります。
ニ 経営成績等に重要な影響を与える要因の分析
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える主な要因は、景気動向に伴う建設市場の動向、資材価格の変動及び建設技能労働者確保の状況であります。
国内建設市場の今後の見通しにつきましては、政府建設投資、民間建設投資ともに増加傾向にありますが、建設資材の価格高騰や人手不足による人件費上昇の影響により、注視が必要な状況が続くと思われます。
これらの要因に対処しつつ、持続的な成長を遂げるため、当社グループは、「西松-Vision 2030」及び「中期経営計画2025」に掲げる各種施策に取り組んでおります。
ホ 目標とする経営指標の達成状況
当社グループは、2023年度を初年度とする「中期経営計画2025」において、「連結売上高4,150億円」「連結営業利益250億円」「ROE10%」「自己資本比率30%程度」「D/Eレシオ1.5倍程度」を目標とする経営指標として掲げ、この達成に向けて各種施策に取り組んでおります。
なお、最近の業績の動向等を踏まえ、「中期経営計画2025」の最終年度(2025年度)の業績計画について改めて精査したところ、国内建築事業及び国際事業(土木)の収益改善プランが想定以上に進捗しており、当初計画より売上高、営業利益、ROEともに上振れが予想されるため、「中期経営計画2025」最終年度の計画値を変更しており、上記の計画値は変更後の数値を記載しております。詳細につきましては、2024年5月13日に公表しました「『中期経営計画2025』の計画値及び配当方針の変更に関するお知らせ」に記載のとおりであります。
また、計画初年度である当連結会計年度の達成状況は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要は、主として、建設事業(土木・建築・国際)に係る工事原価(材料費・労務費・外注費・経費)、アセットバリューアッド事業に係る固定資産の購入及び改修費用、地域環境ソリューション事業に係る再生可能エネルギー事業等への投資、営業費用としての一般管理費、並びに人財開発やDX等の投資資金等であります。
当社グループは「西松-Vision 2030」において、2030年度とその先に向けた成長投資として1,500億円を投資いたします。これにより、建設業中心の「社会基盤整備」から、アセットバリューアッド事業と地域環境ソリューション事業の成長により、グループの価値共創活動の領域を「社会機能の再構築」へと拡大させ、成長を目指してまいります。
これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による調達で対応していくこととしております。
手許の運転資金については、子会社も含めたグループ全体としての余剰資金の管理に努め、資本効率の向上を図っております。また、機動的な資金調達を目的として主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えております。
キャッシュ・フローの状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。次期につきましては、引き続き工事の立替資金の回収を図り、営業活動によるキャッシュ・フローの改善に努めてまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
当社は、2021年12月15日開催の取締役会において、伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」といいます。)との間で、資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といい、当該契約に基づく資本業務提携を以下「本資本業務提携」といいます。)を締結することを決議し、同日付で本資本業務提携契約を締結しております。
(1) 本資本業務提携契約の目的
当社は、伊藤忠商事の構築する国内トップクラスの資機材調達バリューチェーンの活用による資機材共同調達の実現や、住宅や物流特化型J-REITのスポンサーである伊藤忠商事グループの不動産運用ノウハウを取り入れた当社の開発・不動産事業における循環型不動産ビジネスの確立や資産効率の改善等、これまでにはない新しい建設業の在り方の可能性を確認し、異業種との協業によるシナジーの発現を実現する経営モデルの確立が当社の企業価値向上に資するものと判断しました。異業種である両社がそれぞれ有する経営資源やノウハウを結集することで、これまでになかった全く新しいシナジーを創出し、双方の企業価値を最大化することを目的として、本資本業務提携契約を締結しております。
(2) 本資本業務提携契約の内容
① 業務提携の内容
ⅰ 建設アライアンス構築
現場課題を解決する技術や工法を持つ建設業界の優良企業群と建設アライアンスを構築することにより、建設業界の省人化・効率化・DX化を共同推進する。
ⅱ 安心安全、脱炭素社会の実現
脱炭素社会の実現や国土強靭化といった社会課題を成長分野と捉え、公共施設・インフラPPPへの共同事業参画や再生可能エネルギー事業の共同取組等により事業領域を拡大する。
ⅲ 循環型不動産事業モデルでの協業
不動産開発・収益不動産への投資・運用を通じた循環型不動産事業を両社で推進することで、当社の安定成長基盤を確立するとともに、伊藤忠商事の不動産開発事業のモノづくり力向上による安心安全を強化する。
ⅳ 顧客基盤拡充・競争力向上
国内外のグループ会社・取引先等のネットワークや資機材調達機能、エンジニアリング機能等、両社の持つ顧客基盤や機能を融合することで、両社の事業収益力・競争力や安定性を強化する。
② 資本提携の内容
伊藤忠商事は、2024年3月31日現在、当社普通株式4,722,300株(議決権所有割合11.94%)を保有しております。
(3) 本資本業務提携の相手先の概要
当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。
具体的には、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。
当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は
(建設事業(土木・建築・国際))
①道路トンネルリニューアル工事における全断面スライドフォームの長距離・高速移動システムを開発
~供用下でのリニューアル工事に対応可能な多軸台車によるセントルの安全高速運搬を実現~
道路供用下での山岳トンネルの覆工リニューアル工事に伴う通行止め期間の最小限化を目的に、「多軸台車を用いた全断面スライドフォーム移動システム」を開発しました。本システムにより、セントルはトンネル坑口から離れたヤードで組立て、ヤードから1km程度内の距離であれば、一夜間の通行規制時間内に坑内の施工箇所までの運搬が可能となりました。また、セントル四方に取り付けたレーザー距離計にて既設構造物の離隔をリアルタイムに連続計測し、タブレット端末上で管理することで、既設構造物との接触を回避でき、運送時の安全性を確保したシステムを構築しています。なお、セントルとは山岳トンネルの覆工コンクリートを打設する際の内型枠、全断面スライドフォームの通称です。
②データ利活用型ICT土工管理システムによる現場の生産性向上を実証
戸田建設株式会社、株式会社奥村組と2021年に3社で共同開発した「データ利活用型ICT土工管理システム」を複数の実現場に適用し、盛土現場の生産性向上を実証しました。本土量管理システムは、データ利活用にかかわるデータ処理、クラウドへのアップロード作業を自動化し、職員の手間なくクラウド上で施工管理(土量算出・進捗把握)を行うことができます。汎用性が高く、建機メーカー各社の転圧データに対応可能であり、多様な施工条件でも施工管理の省力化・効率化が可能です。
③フォークリフトによる床版取替工事用の専用治具を開発
~クレーン作業ができない作業環境でも新設床版設置作業の効率化を実現~
オックスジャッキ株式会社と共同で、クレーン作業ができない条件の床版取替工事に対して、フォークリフトに装備するリモコン操作が可能な床版作業用の専用装置を開発しました。開発した装置は、フォークリフトのフォーク部分に簡単に装着でき、鉛直・水平ジャッキを装備して床版位置を回転方向、前後方向に微修正可能です。床版作業用装置の性能を検証するため、実工事で設置する新設床版と同程度の大きさの模擬床版を用いて、運搬及び設置試験を実施して、大型フォークリフトによる新設床版の運搬・設置作業が安全・容易に精度よく実施できることを確認しました。
①タブレット端末による「CFT柱コンクリート施工管理システム」を開発
~現場技術者によるコンクリート施工管理作業の省力化・省人化を推進~
CFT柱(コンクリートを充填した鋼管柱)へのコンクリート充填中に計測したデータを無線でクラウド上に伝送・処理し、タブレット端末上の画面で施工状況を確認できる「CFT柱コンクリート施工管理システム」を開発しました。本システムでは、タブレット端末上で施工状況を可視化できるので、現場技術者が現場内や現場事務所のどこにいてもCFT柱へのコンクリートの施工状況を確認することが可能となり、CFT柱におけるコンクリートの施工管理の省力化・省人化を実現できます。
②吹付厚さのリアルタイム計測管理技術「吹付ナビゲーションシステム」を確立
~ミリ波レーダ、モーションキャプチャカメラを搭載した新型吹付機の開発~
清水建設株式会社、戸田建設株式会社、前田建設工業株式会社、エフティーエス株式会社と共同で、山岳トンネルの「吹付ナビゲーションシステム(ヘラクレス-Navigator)」を開発しました。近年の社会的ニーズを踏まえて2018年より山岳トンネル工事におけるコンクリートの吹付作業を遠隔化・自動化する技術を探索し、試作・検証を進めてきました。従来の吹付作業の効率を損なわず、定量的にリアルタイムに遠隔で吹付出来形状況を確認できる技術を追求した結果、本システムが完成しました。
③現場巡回中に必要な安全看板を選び作成できるアプリを開発
クェスタ株式会社と共同で、建設現場に設置する安全看板を作成し、携帯端末から直接印刷できる安全看板アプリ「ぱっと看板ナビ」を開発しました。本アプリは、現場内を巡回中に携帯端末から必要な安全看板とその設置場所を簡単に選択指示でき、パソコンを使わず直接印刷できるため、現場技術者の安全看板設置に係る業務の省力化を実現できます。また、作製した安全看板はアプリ内の指示書に表示されるため、設置忘れを防ぐことができ安全な現場運営に貢献できます。
①人力による杭の簡易載荷試験の管理団体を設立
~基礎杭の品質・性能の更なる向上に貢献~
株式会社淺沼組、株式会社奥村組、株式会社熊谷組、五洋建設株式会社、佐藤工業株式会社、西武建設株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社東京ソイルリサーチ、戸田建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、一般財団法人ベターリビング、株式会社松村組(50音順)と、共同研究の成果である杭の簡易載荷試験について、その管理団体「杭の簡易載荷試験協会」を設立しました。対象となる杭の簡易載荷試験は、杭頭に人力で打撃を加えるだけで杭の荷重変位関係を評価できる新しい試験方法です。本試験方法に係る知的財産について、同協会は共同研究メンバー13法人の代理として活動し、第三者からの問合せ対応や特許の実施許諾をワンストップでスムーズに行います。
②コンクリートの初期強度発現性を改善したポンプ圧送助剤を開発
戸田建設株式会社、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、株式会社北斗工業と共同で、コンクリートの長距離圧送工事に使用する新しいポンプ圧送助剤を開発しました。本圧送助剤は、アジテータ車に直接投入し、撹拌して使用することができるため作業性に優れています。また、従来のポンプ圧送助剤の課題であった初期強度発現性を改善できます。さらに、真夏の暑中環境下でコンクリートを長距離圧送しても、所要品質を満足していることを実機で確認しました。
①技術研究所の一部をリニューアル、ZEB設計に資する要素技術の実証を開始
技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の一部を改修し、ZEB設計に資する要素技術の実証ができる空間としてリニューアルしました。今回のリニューアルでは、ワークスペースや会議室など使い方が異なるいくつかのオフィス空間を設け、それぞれの空間に適した省エネ技術を導入し、省エネかつ快適性が向上する空間を目指しました。今後は、技術研究所のオフィスとして継続使用しながら、省エネ性能や快適性について検証し、性能向上を行っていく予定です。
②環境配慮型コンクリート「スラグリート®」の建設技術審査証明(建築技術)を取得
~確認申請時の運用マニュアルを整備し建築物への適用を促進~
戸田建設株式会社と共同で、環境配慮型コンクリート「スラグリート®」について、一般社団法人日本建築センターの建設技術審査証明(建築技術)を取得しました。一般的に、環境配慮型コンクリートは主に地下躯体等の中性化の影響の少ない部位に使用されていましたが、中性化の影響を受けにくい「スラグリート®」は、地上構造物へ使用されることが期待されます。スラグリート建設技術審査証明の取得及び確認申請マニュアルの整備により、本技術の建築分野での適用をさらに進め、脱炭素社会への実現に貢献してまいります。なお、「スラグリート®」は、技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の実験棟建屋の一部に適用しております。
③二酸化炭素の回収・利用に適したバイオメタネーション技術の研究開発を推進
国立大学法人横浜国立大学、三機工業株式会社と共同で、二酸化炭素の回収及び利用を実現するため、気体透過膜を活用した新たなバイオメタネーション技術の研究開発に取り組んでいます。本技術の中心は、メタン生成の原料となる水素を気体透過膜から供給するとともに、気体透過膜の表面にメタン生成微生物を固定する仕組み(MBfR)です。水洗で吸収した溶存二酸化炭素をMBfRに供給することで、二酸化炭素の分離精製からメタンとしての回収までをコンパクトに一体化した点が特徴です。本技術の開発成果は、第60回環境工学研究フォーラム(主催:公益社団法人土木学会 環境工学委員会)の環境技術・プロジェクト賞を受賞しました。
①山岳トンネル技術開発拠点「N-フィールド」始動
山岳トンネルの施工技術の向上、無人化・自動化施工システムをはじめとした技術開発のさらなる進展のため、栃木県那須塩原市に研究開発拠点「N-フィールド」を新たに整備し、運用を開始しました。コンクリート吹付機の遠隔操作や自動化技術の開発に向けた試行・検証、油圧ショベルによる自律運転等の技術開発や展示会における遠隔操作システムの体験デモを展開中です。今後は、社内研修会や当社開発技術を視察頂ける対外発信拠点としての活用のほか、遠隔操作重機の配備を拡充し、複数施工機械による遠隔操作での同時制御システムの構築、自動・自律制御システムの開発によるトンネル掘削作業の完全無人化に向けた取り組みを進めてまいります。
②廃食用油の全量でHiBDの安定的な製造を実現
佐賀市と共同で、環境エネルギー株式会社の協力を得て、佐賀市内の家庭及び事業所で回収された廃食用油を原料として、第2世代バイオディーゼル燃料であるHiBDの安定的な製造を実現しました。今回の実証試験結果から、年間を通して市内で回収される廃食用油の全量をリサイクルすることが可能になりました。当社が策定している2050年カーボンニュートラルに向けたCO2削減計画「ZERO30ロードマップ2023」の達成に向け、HiBD等の第2世代バイオディーゼル燃料の現場導入の検討を進めてまいります。また、自治体との連携による地域の脱炭素化の促進に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。