当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて、人々の健康に貢献します。」という企業理念のもと、技術基盤であるバイオテクノロジーを活用し、試薬・機器事業とCDMO事業の各事業を通じて、社会への貢献を果たしていくとともに、企業価値の向上を目指しております。
(2)経営戦略等
当社グループは、「長期経営構想2025」を2020年に策定し、遂行してまいりました。また、2023年5月に、「長期経営構想2025」の後半3カ年の具体的な実行計画である「中期経営計画2025」を策定しております。
「長期経営構想2025」では、「試薬・機器事業とCDMO事業を通じ、バイオ創薬基盤技術開発を進め、新モダリティを創出し続ける創薬企業注」を目指すビジョンとしております。
(参考)「長期経営構想2025」のビジョン
①事業領域の拡大
アカデミアの研究支援から、産業応用、臨床関連分野、さらに創薬へと事業領域を拡大させる
②新技術の開発
研究用試薬などの新製品開発やCDMO事業の新メニューの開発を通じ、創薬基盤技術開発を進める
注. 医薬品の研究開発、製造、販売のすべての機能を自社内で完結する完全統合型製薬企業のビジネスモデルではなく、新しく開発した治療法のライセンスを導出する等により収益を得ることをビジネスモデルとする企業
「中期経営計画2025」(2023年5月公表)では、以下の5項目の事業戦略を進めております。
①ライフサイエンス産業におけるインフラを担うグローバルプラットフォーマーとしての地位の確立
②グローカルな製造、マーケティング体制の整備
③品質管理工程の堅牢化・効率化と製造技術力強化
④創薬基盤技術の価値最大化
⑤研究開発プロジェクトの選択と集中による新製品/サービスの開発スピードの加速
さらに、以下の3項目の経営基盤強化策を進めております。
①成長・強化領域への積極的な投資と適切な株主還元によりROEの向上を実現
②会社と従業員とのつながりを深め、強固な成長基盤を構築
③「持続可能な社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」を両立
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、事業成長を図る指標として連結営業利益、資本効率を図る指標としてROE(自己資本利益率)を定量目標としております。また、定量目標達成のためのプロセス指標として連結売上高、研究開発費をKPI(Key Performance Indicator)としております。
(4) 経営環境
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルスの流行を機にバイオテクノロジーの重要性が認識され、日本国政府の基本戦略に「再生・細胞医療・遺伝子治療」が重点投資分野として掲げられ、大型予算措置がなされるなど、中長期的にはライフサイエンス産業の市場規模は拡大が予想されていると認識しております。
しかしながら、米国・欧州におけるインフレの長期化や政策金利の高止まり、中国における経済不況を原因としたアカデミア向けの研究補助金の削減の影響などにより、現下のライフサイエンス分野の研究開発アクティビティは世界的に低迷しております。さらに日本においては、バイオ医薬品CDMO事業への競合企業の参入などにより事業環境は急変しております。
当社グループは、「中期経営計画2025」最終年度である、2025年度の定量目標(連結営業利益150億円、ROE8%以上)達成を目指しておりますが、現下の経営環境においては、その目標達成のハードルは大変高いものと認識しております。「長期経営構想2025」および「中期経営計画2025」に定めた方向性を堅持しつつ、スピード感を持って更なる施策を実施し、持続的成長を実現してまいります。
加えて、社会的関心が高い環境問題や人権問題などの社会課題解決へ向けたサステナビリティ活動にも積極的に取り組んでまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
事業成長戦略
(1) 試薬事業
コロナ禍では、新型コロナウイルス検査関連試薬が大幅に伸長したが、「中期経営計画2025」ではこれらの売上を前提とせず、一般研究用試薬のグローバルで多極的(グローカル)展開による試薬事業の成長を目指す。
・BtoBカスタム製品の売上拡大など地域特性に応じたグローカルなマーケティング/販売戦略を構築し、年率7%成長(現地通貨ベース)を目指す
・アプリケーション分野や臨床応用分野における新製品の開発を強化する日本、米国、中国の各開発拠点の開発テーマの最適化をはかり開発効率の向上を目指す
・日・米・中における研究開発体制の最適化とシナジー効果を創出する
・効率性の向上とリスク低減のバランスを踏まえ、グローカルな製造体制を構築する
(2) 機器事業
多様な検査に対応したPCR関連装置やシングルセル解析装置の新機種の開発を加速するほか、専用試薬の開発によるシステム化を図る。
・シングルセル解析装置(ICELL8)の新機種開発(2024年)の加速
・検査市場向けqPCR装置の新機種開発とパネル試薬の開発によるシステム化
・ヒト感染症検査用のqPCR医療機器と専用試薬の開発
・オンサイト検査用シングルユースデバイスの開発
・等温遺伝子増幅システムの開発
(3) 受託事業
飛躍的成長を図るために積極的な技術開発・人材育成・設備投資を進める。
①再生医療等製品関連受託
・多様なモダリティや大量製造用受託メニューの充実
・製造・品質管理工程の堅牢化、自動化によるコストダウン
・遺伝子・細胞プロセッシングセンター3号棟(2024年度着工、2027年度竣工予定)の建設準備
②遺伝子解析・検査関連受託
・リキッドバイオプシー技術を活用した解析/検査前処理技術の開発
・臨床応用向けNGS関連サービスの開発
・先端的マルチオミックス解析による創薬支援サービスの開発
(4)遺伝子医療事業
NY-ESO-1 siTCR®遺伝子治療薬(開発コード:TBI-1301)の上市を目指し、さらに、再生・細胞医療・遺伝子治療等に関する独自の創薬基盤技術の高付加価値化を図る。
・NY-ESO-1 siTCR®遺伝子治療薬の上市準備の推進
・CD19・JAK/STAT・CAR遺伝子治療薬(開発コード:TBI-2001):従来型CAR-Tに対する優位性データの取得
・CereAAVTMの従来型AAVに対する優位性データの取得
・RetroNectin®の製造能力の増強
・mRNA合成用酵素等(Ancillary Materials:医薬品等製造原料)の開発・製品化
経営基盤強化戦略
(1) 財務
財務健全性を維持しつつ成長・強化領域への投資を積極的に継続実施する。また、適切な株主還元を維持することでROEを向上し、資本コストや市場評価を意識した経営を推進する。
①研究開発・設備投資・株主還元について
・健全な財務基盤を維持しながら、成長・強化領域への投資を積極的に継続実施する
・持続的成長と飛躍的成長の原動力となる研究開発投資を積極的に行い、日・米・中の各拠点の開発テーマの最適化と連携強化を進める
・遺伝子・細胞プロセッシングセンター3号棟建設をはじめ、成長・強化領域への設備投資を積極的にすすめる
・資本効率向上のために適切な株主還元をおこない、ROE(自己資本利益率)の向上を図る
②資本コストについて
・定期的に取締役会でWACC(加重平均資本コスト)やROE(自己資本利益率)、株価やPBR(株価純資産倍率)などを検証し、利益成長と適切な株主還元により中長期的な資本効率の改善を図ることで、資本コストや株価を意識した経営を実践する。
(2) 人・組織
会社と従業員とのつながりを強化するとともに、飛躍的成長を目指す基盤としての労働環境づくりや人事施策を実施する。
・人づくり:採用から育成にシフトし、変化に対応できる人材を育成する
・組織づくり:困難に柔軟に適応できる組織づくりを実現する
・労働環境づくり:多様な人材が能力発揮できる就業環境を整備する
(3) 社会的価値の創造
事業活動を通じて様々な社会的課題に取り組み、「持続可能な社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立を目指す。
・CO2排出削減の推進:事業活動の拡大、設備増大等によりCO2排出量の増加が予想される中、再生可能エネルギーの利用や省エネ活動等により、売上高あたりのCO2排出量(原単位)を2018年度(基準年度)から50%削減する
・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示レベルの強化
・人権デューデリジェンスの推進:タカラバイオグループ内およびバリューチェーン上の人権リスクの特定・評価を通じ、人権リスクの低減を図る
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループで判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する全体方針
当社グループは、「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて人々の健康に貢献する」という企業理念のもと、中長期的な企業価値の向上の観点から、事業活動を通じて健康をはじめとするサステナビリティをめぐるさまざまな社会課題に取り組み、「持続可能な社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立を目指しております。
①ガバナンス
サステナビリティ活動推進の体制として、当社社長執行役員を委員長とした「タカラバイオグループ・サステナビリティ推進委員会」を設置し、サステナビリティ活動を中心となって推進しています。サステナビリティ推進委員会は、取締役会の監督のもとに、サステナビリティに関する活動を計画・実行・評価・改善するとともに、取締役会への報告、グループ各社や事務局に指示を行います。
当連結会計年度におけるサステナビリティ推進委員会の状況および開催内容は以下の通りであります。
|
開催日 |
決議事項 |
報告事項 |
|
2023年5月8日 |
・マテリアリティ・マトリクスの見直し |
- |
|
2023年6月5日 |
・サステナビリティ推進委員会規程改訂 ・サステナビリティ・プラン2025及び2023年度活動計画の承認 ・サステナビリティ活動に関連する方針策定 |
・2022年度活動報告 ・TCFDフレームワークに基づく気候変動リスク年次報告 |
|
2023年12月4日 |
・人権方針改訂 |
・2023年度上期活動報告 |
②リスク管理
サステナビリティ活動の推進にあたっては、グループへの影響度、ステークホルダーからの期待度を加味し、8つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。また、各マテリアリティについて取り組みテーマを設定し、さらに、具体的な達成目標を設定しております。
設定目標の達成度は、サステナビリティ推進会議(事務局)により、モニタリングされ、定期的にサステナビリティ推進委員会、取締役会において報告されることによりリスク管理が行われております。
マテリアリティ・マトリクス
(2)気候変動
当社グループは、「持続的な社会の実現」および「当社グループの持続的な成長」に向けて、気候変動に関わるリスクと機会を的確に評価し、事業運営への影響や対応策を明確にして、ステークホルダーへの積極的な情報開示に努めております。評価にあたっては、気候変動財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づくシナリオ分析を活用しております。
①ガバナンス
②戦略
当社グループは、気候変動による世界的な平均気温の上昇が社会に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を抑制する活動に貢献していくことは重要と考えております。当社グループでは、2℃未満シナリオへの対応力を強化すべく、気候関連のリスクと機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定を進めております。平均気温の上昇が産業革命前に比べて2℃未満に抑制される「2℃未満シナリオ」と、同じく4℃上昇する「4℃シナリオ」を用いてシナリオ分析を行い、当社事業に与える影響度と発生可能性を評価するとともに、その対応策を検討し、当社グループにとって影響度が大きいリスクと機会を下表にまとめております。シナリオ分析では、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)のRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)、WRI Aqueduct(世界水資源研究所が公開する世界の水リスクの評価ツール)などを参照しております。
|
† 時間軸 |
‡ 影響度 |
§ 事業リスク/機会 |
|
中期:2030年まで、 長期:2030年以降 |
連結営業利益もしくは連結純資産の影響額として、小(10億円未満)、中(10億円~30億円)、大(30億円以上)を基準に評価 |
財務への影響度と発生可能性を 考慮し総合的に評価 |
③リスク管理
当社グループは、気候変動にともなうリスクについて、TCFD提言に沿ったシナリオ分析・評価を行うなど、リスクの顕在化による悪影響や損失を極小化するための体制を整えております。当社の事業継続や、財務的影響が大きい主要な製造拠点を対象に影響度、発生頻度によるリスクレベルを随時評価しております。特定したリスク・機会やその対応策は、社長執行役員を委員長とし、各事業を担当する執行役員で構成されるサステナビリティ推進委員会で協議し、取締役会へ報告いたします。
④指標及び目標
当社グループは、2021年6月に策定した「サステナビリティ経営推進基本方針」(2023年6月更新)の重要取組み課題である「環境」の中で、CO2削減については、2025年度の売上高当たりのCO2排出量(原単位)を、2018年度比で50%とすることを目標といたしました。2023年度には当社グループのCO2排出量(原単位)は2018年度比で89%となりました。(表1)
今後も継続的にリスク・機会の見直しや対策の具体化を進め、中長期の経営戦略に反映させ、気候変動に対する経営戦略の高度化に努めてまいります。
表1 当社グループのCO2排出量†(原単位)の変動
|
項目 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
基準年(2018年度)の 排出量原単位との比較(%) |
100 |
86 |
76 |
57 |
55 |
89 |
|
原単位(CO2排出量/売上高) |
37 |
32 |
28 |
21 |
20 |
33 |
|
CO2排出量(t-CO2) |
|
|
|
|
|
|
|
タカラバイオ |
5,894 |
6,822 |
8,590 |
9,833 |
10,418 |
11,107 |
|
宝生物工程(大連) |
3,869 |
4,039 |
4,060 |
4,126 |
4,619 |
2,555 |
|
その他事業所 |
3,425 |
31 |
186 |
294 |
655 |
549 |
†Scope 1(燃料などの使用による直接排出量)とScope 2(購入電力などのエネルギー源の間接排出量)の合計
(3)人的資本と多様性
当社グループは、人間尊重の立場に立ち、「いきいきと明るい職場、人を育む風土」をつくり、その中で「企業人・社会人・個人のバランスのとれた人材」を育成することを目指しております。
①戦略
(1)人材育成
社員一人ひとりの持つスキルやチャレンジを経営や事業に反映できる企業風土を目指し、人事制度・育成プログラムを整備しております。育成プログラムでは、役職や勤続年数に応じた「階層別研修」や「目的別研修」などを実施しております。また、事業において活躍できる人材を育成するための専門性の高い教育研修を実施しております。
(2)多様な人材の活躍推進
性別や国籍などにとらわれず、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が社内に存在することは、会社が持続的に成長する上での強みとなります。当社グループでは、多様な人材の活躍がこれからの持続的成長を遂げるために重要と考えております。
(3)快適な職場環境とワークライフバランスの実現
快適に働くことができる職場環境・労働環境の整備に努めるとともに、全社員が個々のライフスタイルに応じて、仕事と個人の生活とのバランスをとりながらいきいきと働くことができる制度の整備を進めております。
②指標及び目標
(1)人材育成(提出会社)
|
指標及び目標 |
2023年度の実施状況 |
|
新入社員研修やマネジメント研修等の階層別研修、次世代リーダー育成を目的とした勉強会等の継続的な実施により、グローバルな事業成長とグループの次世代を担うことのできる人材を育成する |
以下の教育研修を実施 ・階層別研修 新入社員研修、課長代理研修、管理職研修、キャリア採用者研修 ・次世代リーダー育成研修 OJTリーダー研修、3年目・6年目研修 ・スキルアップ研修 基礎力向上研修、製造実務研修、品質・GMP実務研修 |
(2)多様な人材の活躍推進(提出会社)
|
指標及び目標 |
2023年度の実施状況 |
|
・女性役職者数を増加させる ・70歳までの就業機会を創出する ・障がい者雇用率は国内法定雇用率以上を維持する ・多様な人材の獲得に向けた中途採用の更なる活用を進める ・国籍、人種、性別、障がい等の有無に関係なく、公平な雇用を実現し、お互いに尊重し合って働ける環境を構築する |
・新任女性役職登用者の増加(2名⇒6名) ・ ・多様な人材の獲得を目的としたキャリア採用の実施(2020年度 以降134名)、採用人材の適材適所の人員配置を実施。 ・国籍、人種、性別、障がい等の有無に関係ない公平な雇用の実施 |
(3)快適な職場環境とワークライフバランスの実現(提出会社)
|
指標及び目標 |
2023年度の実施状況 |
|
・総労働時間数を前年度実績比で削減する ・妊娠中や産休・育休復帰後の女性社員等のための相談窓口を、2025年3月末までに設置する ・社内育児サークルを立ち上げる ・企業連携保育園を拡充する ・体系的なメンタルヘルスケア体制を構築する |
・総労働時間前年度比98.3% ・育児経験社員と育児休業中社員との座談会を実施 ・企業連携保育園の拡充(3園⇒5園) ・くるみん、えるぼし認定の取得 ・全管理職向けのメンタルヘルスケア教育の実施
|
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、文中において、適宜用語の解説をしておりますが、当該用語解説は、投資者に本項の記載内容をご理解いただくための参考として、当社の判断と理解に基づき、当社が作成したものであります。
(1)市場および事業について
① 研究開発活動について
バイオテクノロジーに関連する産業は、再生・細胞医療・遺伝子治療等分野、基礎研究や創薬等を目的とした大学、公的研究機関や企業、検査会社を直接のターゲットカスタマーとする研究支援分野、そのほか、環境・エネルギー・食品・情報分野まで多岐にわたります。
このような状況の中、当社グループにおいて競争優位性を維持していくためにも、広範囲にわたる研究開発活動は非常に重要であると考えております。しかしながら、研究開発活動は計画通りに進む保証はなく、特に遺伝子治療分野における開発は長期間を要するため、研究開発活動の遅延により、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、バイオテクノロジー業界を取り巻く経営環境の変化は激しく、当社グループの事業環境は新たな技術革新や新規参入者等により大きな影響を受ける可能性があることから、現在推進している研究開発活動から必ずしも期待した効果を得られる保証はなく、計画する収益を獲得できない可能性があります。
② 海外展開について
当社グループは、北米、欧州、中国を中心とするアジア等において、研究開発、製造、販売等の事業活動を展開しております。これらの国または地域における経済状況、政治および社会体制の著しい変化、移転価格税制等の国際税務問題等の事象が発生した場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの主力製品である試薬は、その大半を中国の子会社である宝生物工程(大連)有限公司で製造しており、当該子会社の収益動向の変化や、何らかの理由による事業活動の停止等により、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、効率性向上とリスク低減のバランスを考慮しつつ、グローバルで多極的な製造・研究開発体制の整備を進めております。
③ 競合について
当社グループは、財務的な一定の基盤、アジア市場における確固としたプレゼンスおよび保有技術の幅広いラインナップを有する独自の産業的地位を占めていると考えております。
しかしながら、研究用の試薬・機器・受託サービスの製造・販売・提供には医薬品や医療機器のような許可や承認を必要としないことから、特許等による障壁がない場合には、これらの事業への参入は比較的容易であり、国内のみならず海外においても多数の競合企業が存在しております。
また、遺伝子治療分野においては、技術的進展により、安全性が高く治療成績に優れる治療薬が開発され、海外で製造販売承認が得られ始めております。当分野の市場規模の拡大を背景とし、欧米のバイオベンチャーや製薬企業等、多数の企業が遺伝子治療の研究開発に取り組んでおります。
このような環境の中、当社グループは、当社グループ独自もしくは大学等の外部団体や企業と協力して、技術や製品を開発しておりますが、他社が類似の製品や技術分野で先行した場合、当社グループの製品開発や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループは開発した技術や製品を可能な限り知的財産権による保護にて、独占化あるいは差異化をはかるとともに、コストダウンの推進および製造体制の強化により、価格競争力の維持をはかってまいります。
④ 人材の確保について
当社グループは研究開発型の企業であり、また、バイオテクノロジー業界は新たな技術革新や新規参入者等により大きな影響を受けることから、競争力の維持のためにも、専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保は必須であると考えております。しかしながら、計画通りに人材が確保できなかった場合、あるいは当社グループの人材が社外に流出する状況になった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループではダイバーシティや教育施策の充実、能力を発揮した人、成果を出した人が報われる賃金制度、ワークライフバランスを推進し、安全で働きやすい職場環境、労働環境の整備に努めております。
⑤ 受託にかかる売上について
当社グループは、受託にかかる売上について、契約に応じて、主に検収、受領、出荷等により成果物の支配が顧客に移転した時点で履行義務が充足されたと判断し、収益を認識しておりますが、契約の複雑性等から、収益認識時点について誤謬が発生する恐れがあり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループは内部統制の充実に努めるとともに、内部監査部門や財務部門によるチェックを実施しております。
(2)金融および経済について
① 資金調達の実施について
当社グループは、新規事業の立ち上げや事業規模の拡大を受けた研究開発、設備投資、運転資金等の資金需要の増加に対応するため、資金調達を行う可能性がありますが、資金が計画通りに調達できない場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループは健全な財務体質の維持・強化に努め、格付けを取得するとともに、最新の情報に基づいた資金計画の見直しを適時に行っております。
② 為替レートの変動について
当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益および外貨建債権・債務は、為替レートの変動リスクに晒されております。このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、為替変動リスクを軽減する目的で為替予約等のヘッジ取引を行っております。
また、在外連結子会社の収益、費用、資産等の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算しておりますが、決算時の為替レートの変動が当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)財務について
① 減損について
当社グループは、事業の用に供するさまざまな有形固定資産、企業買収にともなうのれん、技術資産等の無形固定資産を有しておりますが、事業環境の急激な変化にともなう生産設備の遊休化や稼働率の低下・買収事業の推移が当初計画を下回ること等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループでは買収後のシナジー実現に向けた買収事業のフォローアップや、マクロ経済環境の定期的なモニタリングを行っております。
(4)規制・法的手続き・災害・事故について
① 経営上の重要な契約等について
当社グループの事業展開上、重要な契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合や、当社グループにとって不利な改定が行われた場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権について
当社グループは、研究開発の成否がそのまま事業開発の成否につながるバイオテクノロジー関連産業において、競合他社を排除するため、自社の技術を特許で保護しております。また、当社グループは、研究開発を進めていくにあたって、特許出願・権利化を第一に考え対応していく方針であります。しかしながら、出願した特許がすべて登録されるとは限らず、また、登録特許が無効となる、消滅する等した場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、今後の事業展開の中で、必要な他者特許については取得またはライセンスを受ける方針でありますが、このために多大な費用が発生する可能性があります。また、必要な他者特許が生じ、そのライセンスが受けられなかった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 製造物責任のリスクについて
当社グループが取扱うすべての製品・商品について製造物責任賠償のリスクが内在しております。当社はこれに備えて製造物責任賠償保険に加入しておりますが、特に、医薬品、医療機器、体外診断用医薬品、再生医療等製品、研究用製品、臨床試験に使用される治験薬、特定細胞加工物においては、健康障害を引き起こしたり、臨床試験、製造、販売において製造物の欠陥が発見され、補償額が保険の補償範囲を超える大規模な製造物責任を負う場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、これらの製品・商品に何らかの問題が発生した場合には、人体への影響、被害を考慮して自主回収を行うことがあり、その場合には回収に多大な時間および費用を要する可能性があります。
④ 法的規制について
研究開発を進めるにあたっては、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律や遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)等の関連法規の規制を受けており、当社グループは当該法規制を遵守していく方針であります。また、試薬類の製造・販売および貿易にあたっては、毒物及び劇物取締法や検疫法等関連法規を遵守する必要がありますが、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」という。)に定める医薬品や再生医療等製品ではないことから、同法の適用および規制は受けておりません。しかしながら、研究支援産業の拡大等にともない、将来、これらの規制が強化されたり、新たな規制が導入された場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が開発・販売中の体外診断用医薬品や開発中の遺伝子治療薬は、医薬品医療機器等法をはじめとする関連の法規の規制を受けており、商業活動のためには所轄官公庁の承認または許可が必要になります。当社グループが研究開発を進めている個々のプロジェクトについて、かかる許認可が得られなかった場合には、当社グループの事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 訴訟等のリスクについて
当社グループの事業に関連して、第三者との間で重大な訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。しかしながら、当社グループ各社に対して訴訟を提起される可能性があり、訴訟が提起されたこと自体や訴訟の結果によっては当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、国内外の事業活動の遂行に際し、内部統制の充実やコンプライアンスの強化に努めております。
また、当社グループでは、事業展開にあたり知的財産権に関する調査を適宜実施しており、当社グループの製品等が他者の知的財産権に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループのような研究開発型企業にとって、特に特許権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であると考えており、かかる知的財産権侵害問題が発生した場合には、当社グループが損害賠償請求、差止請求またはロイヤリティの支払請求等を受ける可能性があり、その結果として当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループの取引先やライセンサーが紛争に巻き込まれた場合には、当社グループが該当する製品を販売できなくなったり、訴訟に巻き込まれたりする可能性があります。このような場合には、解決に多大な時間および費用を要する可能性があり、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 自然災害や事故災害について
暴風、地震、落雷、洪水、渇水等の自然災害、火災等の事故災害や感染症の世界的流行(パンデミック)が発生した場合には、災害による物的・人的被害により、当社グループの営業活動に支障が生じる可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、発生時の損害の拡大を最小限におさえるべく、点検・訓練の実施、連絡体制・事業継続計画(BCP)の整備に努めております。
⑦ 気候変動等環境課題
気候変動や資源・エネルギーをはじめとする環境課題の包括的な解決に向けて、温室効果ガス(GHG)排出削減や省エネルギー活動の推進等への企業取組みが求められております。当社グループにおいても「タカラバイオグループ・サステナビリティ経営推進基本方針」を掲げ、課題解決に取り組んでおります。一方で、当社グループが事業展開する各地域で、今後、炭素税の賦課や排出権取引制度等の温室効果ガス排出規制が導入された場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を与える可能性があります。
⑧ 情報セキュリティ
当社グループが保有する機密情報および個人情報については、厳正な管理に努めておりますが、これらの情報の流出により問題が発生した場合には、競争力や社会的信頼の低下等、業績に影響を与える可能性があります。また、サイバー攻撃については、多様な防御対策を講じるとともに、サイバー保険に加入しておりますが、万が一、研究開発、製造、情報システム等に問題が生じた場合には、当社グループの経営成績に影響を与える場合があります。
(5)当社の親会社について
2024年3月31日現在、宝ホールディングスは、当社議決権の60.93%を所有する親会社であります。当社と同社との関係は以下のとおりであります。
① 宝ホールディングスグループ(同社および同社の関係会社)における当社の位置づけ
寳酒造株式会社(以下、「寳酒造」という。現宝ホールディングス)は、2002年2月15日開催の臨時株主総会における承認決議に基づき、物的分割の方法により同社の100%子会社(設立以降に当社が実施した第三者割当増資および公募増資等により、親会社の当社議決権所有比率は60.93%になっております。)として、2002年4月1日に宝酒造株式会社(以下、「宝酒造」という。)および当社を設立いたしました。
宝ホールディングスグループは、純粋持株会社である宝ホールディングスおよび同社の関係会社68社(子会社66社、関連会社2社)で構成されております。その中で当社は、バイオテクノロジー専業の事業子会社として位置づけられており、当社の関係会社(子会社)8社とともに、バイオ事業を推進しております。
② 宝ホールディングスのグループ会社管理について
宝ホールディングスは、連結経営管理の観点から「グループ会社管理規程」を定めて運用しており、その目的はグループ各社の独自性・自立性を維持しつつ、グループ全体の企業価値の最大化をはかることにあります。当社も同規程の適用を受けており、当社取締役会において決議された事項等を報告しておりますが、取締役会決議事項の事前承認等は求められておらず、当社が独自に事業運営を行っております。
また、同社はグループ内に各種会議体を設けており、当社に関するものは以下のとおりであります。
|
会議名称 |
主な出席者 |
内容 |
開催頻度 |
|
グループ戦略会議 |
宝ホールディングス㈱役員および執行役員 当社取締役および執行役員 宝酒造インターナショナル㈱取締役 および執行役員 |
グループ全体に関わる 事項の確認 |
原則として 2カ月に1回 |
|
タカラバイオ連絡会議 |
宝ホールディングス㈱役員 |
当社活動状況等の報告 |
原則として 1カ月に1回 |
上記の各種会議体は、グループ各社間の報告を目的としているものであり、当社の自主性・独立性を妨げるものではありません。
また、有価証券報告書提出日現在、同社と当社との間で以下の役員の兼務関係があります。
|
氏名 |
当社での役職 |
宝ホールディングスでの役職 |
|
木村 睦 |
取締役 |
代表取締役社長 |
上記の兼務関係は、木村 睦氏は、過去において当社の経営企画、財務、経理、広報、総務、人事等の分野で豊富な経験と実績を有し、かつ当社の代表取締役副社長としてリーダーシップを発揮してきたことにより、当社のコーポレート機能を強化させ、当社の持続的な成長と中期的な企業価値の向上を実現できるものとの判断から当社が招聘したことにより発生しており、宝ホールディングスが当社を支配することを目的としているものではありません。
なお、同社のグループ会社管理の方針に変更が生じた場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 宝ホールディングスグループとの取引について
1)営業拠点に関する不動産賃貸借取引について
宝ホールディングスグループの宝酒造との間には以下の不動産賃貸借取引があります。当該賃貸借取引のうち、当社が賃借している営業拠点については以下のとおりであり、この取引継続が困難な状況になった場合は、当社が代替地を確保するまでの期間における収入、移転費用等において当社グループの経営成績に一時的に影響を及ぼす可能性があります。
|
物件 |
使用目的 |
貸主 |
取引金額 2024年3月期 (百万円) |
取引条件等 |
|
宝明治安田ビル 6階および地階 (東京都中央区) |
当社東京事業所 |
宝酒造㈱ |
13 |
面積:140.85㎡ 契約形態:賃貸借契約 賃料算出根拠:土地・建物時価等 |
(注)取引条件および取引条件の決定方針等
不動産鑑定士による鑑定評価に基づき、協議の上決定しております。
2)商標権使用に関する取引について
当社グループが使用する商標のうち、宝ホールディングスが所有・管理している商標については、同社との間で商標使用許諾契約を結び、使用許諾件数に応じて商標使用料を支払うこととしております。2024年3月31日現在で、国内海外あわせて登録商標64件および未登録商標1件の使用許諾を受けております。
なお、宝ホールディングスから商標の使用許諾を受けられなくなった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
|
会社名 (所在地) |
取引内容 |
取引金額 2024年3月期 (百万円) |
取引条件等 |
|
宝ホール ディングス㈱ (京都市下京区) |
商標権の使用許諾 |
6 |
契約形態:商標使用許諾契約(2004年3月29日付締結) 使用料算出根拠:商標権の出願、登録および今後も含めての維持・管理費用 1商標1国1区分の使用料月額:登録商標8,500円、未登録商標1,700円 |
3)コンピュータ関係業務の委託等に関する取引について
当社は、宝ホールディングスとの間で、コンピュータ関係業務の委託ならびに機器の賃貸借契約を締結しております。
なお、これらの取引継続が困難な状況になった場合は、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
|
会社名 (所在地) |
取引内容 |
取引金額 2024年3月期 (百万円) |
取引条件等 |
|
宝ホール ディングス㈱ (京都市下京区) |
コンピュータ関係業務の委託および機器の賃借等 |
380 |
契約形態:業務の委託ならびに機器の賃貸借に関する基本契約 業務の内容:勘定系システム運用支援、クライアントサーバーシステム運用支援、パソコンの賃借、消耗品の購入、その他 |
4)その他
宝ホールディングスグループ各社(当社グループ各社を除く)とは、包装資材の購入取引等があります。
なお、これらの取引継続が困難な状況になった場合は、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 当期の経営成績の概況
当連結会計年度における世界経済は、インフレの長期化、中国経済の減速、ロシアのウクライナ侵攻等の影響により、先行きは不透明な状況となっております。
このような状況の中、当社グループは、2025年度を最終年度とする6カ年の「長期経営構想2025」および3カ年の「中期経営計画2025」のもと、試薬・機器事業とCDMO事業を通じ、バイオ創薬基盤技術開発を進め、ライフサイエンス産業のインフラを担うグローバルプラットフォーマーを目指すための取り組みを推進いたしました。
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の法令上の位置づけの変更による検査関連製品の販売減少、海外経済不況の影響を受けたライフサイエンス研究市場の低迷等により、43,505百万円(前期比44.3%減)と減収となりました。売上原価は、売上高の減収等により16,597百万円(同50.3%減)となりましたので、売上総利益は、26,908百万円(同39.9%減)となりました。販売費及び一般管理費は、研究開発費等が減少し、23,905百万円(同1.3%減)となり、営業利益は、3,003百万円(同85.4%減)と減益となりました。
営業利益の減益にともない、経常利益は、3,405百万円(同83.5%減)、税金等調整前当期純利益は、2,853百万円(同86.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,480百万円(同90.8%減)となりました。
また、当社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 当期の財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は121,252百万円となり、前連結会計年度末に比べて7,949百万円減少いたしました。これは主に、有形固定資産が8,119百万円、流動資産のその他が2,020百万円増加したものの、現金及び預金が16,430百万円、売掛金が1,156百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は9,467百万円となり、前連結会計年度末に比べて7,280百万円減少いたしました。これは主に、流動負債のその他が3,323百万円、未払金が2,486百万円、支払手形及び買掛金が779百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産合計は111,784百万円となり、前連結会計年度末に比べて669百万円減少いたしました。これは主に、円安の進行により為替換算調整勘定が2,867百万円増加したものの、利益剰余金が3,576百万円減少したことによるものであります。
③ 当期のキャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費4,279百万円、税金等調整前当期純利益2,853百万円、売上債権の減少額1,501百万円によるキャッシュ・イン、未払消費税等の減少額3,439百万円、法人税等の支払額2,359百万円、仕入債務の減少額928百万円によるキャッシュ・アウト等により1,711百万円の収入と、前連結会計年度に比べて35,185百万円の収入減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入2,937百万円、有形及び無形固定資産の取得による支出12,778百万円、定期預金の預入による支出2,224百万円により13,043百万円の支出と、前連結会計年度に比べて6,349百万円の支出増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額5,052百万円等により5,233百万円の支出と、前連結会計年度に比べて1,113百万円の支出増加となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物に係る換算差額を含めた当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より15,886百万円減少し、33,171百万円となりました。
④ 生産、仕入、受注および販売の状況
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をカテゴリーごとに示すと、次のとおりであります。
|
カテゴリー |
金額(百万円) |
前期増減率(%) |
|
試薬 |
14,623 |
△40.4 |
|
機器 |
79 |
△33.1 |
|
受託 |
8,377 |
△1.4 |
|
遺伝子医療 |
1,686 |
13.6 |
|
合計 |
24,766 |
△28.5 |
(注)金額は、販売価格によっております。
2)仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をカテゴリーごとに示すと、次のとおりであります。
|
カテゴリー |
金額(百万円) |
前期増減率(%) |
|
試薬 |
3,686 |
△23.5 |
|
機器 |
1,102 |
△26.2 |
|
合計 |
4,788 |
△24.2 |
(注)金額は、仕入価格によっております。
3)受注実績
CDMO事業において、一部受注生産を行っておりますが、ほとんどの場合において、生産に要する期間が短く、受注残高が僅少であることから記載を省略しております。
4)販売実績
当連結会計年度における販売実績をカテゴリーごとに示すと、次のとおりであります。
|
カテゴリー |
金額(百万円) |
前期増減率(%) |
|
試薬 |
31,961 |
△51.5 |
|
機器 |
892 |
△35.1 |
|
受託 |
7,997 |
△2.5 |
|
遺伝子医療 |
2,653 |
0.5 |
|
合計 |
43,505 |
△44.3 |
(注)1.カテゴリー間の内部売上高は除いて記載しております。
2.主要な販売先については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (セグメント情報等) 関
連情報 3 主要な顧客ごとの情報」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
1)当連結会計年度の経営成績等
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高43,505百万円(前期比44.3%減)、営業利益3,003百万円(同85.4%減)、経常利益3,405百万円(同83.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,480百万円(同90.8%減)で、減収減益となりました。
なお、経営成績等の概要につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
2)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
3)資本の財源および資金の流動性
当社グループは、研究開発型企業として研究開発投資を積極的に実施し、また、今後の持続的成長のための戦略投資(設備投資やM&A投資等)も必要に応じて実施していく方針であることから、これらの資金需要に対応するため、内部留保の充実、十分な手元流動性の確保が必要であると考えております。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、33,171百万円であり、十分な手元流動性は維持できているものと認識しております。
当社グループは、現在の十分な手元流動性と営業活動によるキャッシュ・フローの創出により、財務健全性を維持しながら、今後の資金需要に対応可能であるものと考えております。
4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境および対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
当社グループの事業展開上、重要と思われる契約の概要は、以下のとおりであります。
工事等請負契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
契約締結日 |
契約内容 |
完成予定 |
|
タカラバイオ株式会社 (当社) |
日揮株式会社 |
2023年8月3日 |
遺伝子・細胞プロセッシング センター3号棟の新設工事 |
2027年 |
(1)研究内容について
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
① 試薬・機器
当事業では、遺伝子工学および細胞工学研究用試薬や機器等の開発を進めております。また、試薬と機器のシステム化により利便性を向上させる開発等も進めております。
当連結会計年度においては、「感染症の原因となる病原遺伝子検出用PCR試薬シリーズ」、「核酸精製が不要なダイレクト検出用リアルタイムPCR試薬Easy Directシリーズ」、「等温核酸増幅法による遺伝子の迅速検出が可能な試薬」、「アデノ随伴ウイルスベクター大量製造用完全合成培地」、「シングルセル解析装置の新機種」等の開発を行いました。
② 受託
当事業では、再生・細胞医療・遺伝子治療等の開発・製造支援事業であるCDMO受託に関する研究開発に注力しております。
当連結会計年度においては、「がん細胞への殺傷効果の高いCAR-T細胞を短期間で製造する方法(Spo-TTM法)」、「シングルセル/サブセルラーレベルの高感度空間マルチオミックス解析」など細胞加工やウイルスベクターの生産効率性向上や大量製造に関する研究開発、新規遺伝子解析・検査関連受託に関するメニュー開発を進めました。
③ 遺伝子医療
当事業では、高効率遺伝子導入技術レトロネクチン®法、siTCR®技術等の応用開発に加え、創薬基盤技術の開発・事業化に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、脳指向性アデノ随伴ウイルスベクター(CereAAV™)および内耳指向性アデノ随伴ウイルスベクター(SonuAAVTM)に関する開発、次世代CAR遺伝子治療法であるCD19・JAK/STAT・CAR遺伝子治療(開発コード:TBI-2001)のカナダでの臨床試験等を進めるほか、NY-ESO-1・siTCR®遺伝子治療(開発コード:TBI-1301)の製造販売承認申請に向けた準備を進めました。また、mRNAワクチンの開発・製造に必要となる製造補助剤等の開発に取り組みました。
このほか、上記の事業別に分類しきれない事業横断的な研究開発も推進しております。当社グループとしては、各研究開発プロジェクトの相互作用・フィードバック効果を利用して、戦略的な研究開発の推進を目指しております。
(2)知的財産権について
当社グループは、研究開発の成否がそのまま事業開発の成否につながるバイオテクノロジー関連産業において、競合他社を排除するため、自社の技術を特許で保護しております。また、研究開発を進めていくにあたって、特許出願・権利化を第一に考え対応していくとともに、必要な他者特許については取得またはライセンスを受ける方針であります。それらのうち各事業において特に重要なsiTCR®、JAK/STAT・CAR、CereAAV™に関するものを、以下に記載しております。
① siTCR®
発明の名称:特異的遺伝子発現方法
|
特許権者 |
特許番号 |
登録日 |
出願国 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
5271901 |
2013年5月17日 |
日本 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
5828861 |
2015年10月30日 |
日本 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
2172547 |
2016年1月6日 |
ヨーロッパ(5カ国)(注) |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
3031916 |
2017年6月7日 |
ヨーロッパ(5カ国)(注) |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
9051391 |
2015年6月9日 |
米国 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
9296807 |
2016年3月29日 |
米国 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
ZL200880102998.9 |
2013年6月19日 |
中国 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
1363928 |
2014年2月11日 |
韓国 |
|
当社/ 国立大学法人 三重大学 |
1225068 |
2018年7月13日 |
香港 |
(注)ヨーロッパ5カ国の内訳は、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スウェーデンであります。
② JAK/STAT・CAR
発明の名称:キメラ抗原受容体
|
特許権者 |
特許番号 |
登録日 |
出願国 |
|
当社/ University Health Network |
6846352 |
2021年3月3日 |
日本 |
|
当社/ University Health Network |
3256496 |
2020年12月30日 |
ヨーロッパ(8カ国)(注) |
|
当社/ University Health Network |
10336810 |
2019年7月2日 |
米国 |
|
当社/ University Health Network |
10822392 |
2020年11月3日 |
米国 |
|
当社/ University Health Network |
2974998 |
2022年4月26日 |
カナダ |
|
当社/ University Health Network |
2607152 |
2023年11月23日 |
韓国 |
(注)ヨーロッパ8カ国の内訳は、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スウェーデン、オランダ、スイス、スペインであります。
③ Cere-AAV™
発明の名称:脳に指向性を有するAAV変異体
|
特許権者 |
特許番号 |
登録日 |
出願国 |
|
当社 |
2809389 |
2023年12月11日 |
ロシア |