第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1)経営方針

当社グループは、2023年5月に、3か年の中期経営計画『G-STEP30 2nd(ジーステップ・サーティ ~セカンド)』を策定した。長期ビジョン「G-STEP30」のテーマである「3つのG Growth、Global、Governance」に引続き取組み、加えてサステナビリティプランを実行することで事業収益の着実な強化と成長への基盤整備を目指す。

ユニチカグループの経営理念である「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」を基本とし、目指す姿としては「お客様から選ばれ続ける企業」とした。また、サステナビリティ方針を「ユニチカグループは事業活動を通じて暮らしと技術を結び、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。」とした。

2023年度を初年度とする中期経営計画『G-STEP30 2nd』は、「事業ポートフォリオの再構築」「グローバル化の推進」「事業基盤の整備」を計画の骨子としている。当社グループは、各施策を確実に実行し、持続的成長へ向けた企業経営基盤を強化し、新中期経営計画最終年度は、売上高1,500億円、営業利益70億円を目指す。

(2)経営環境及び対処すべき課題等

「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」という経営理念に基づき、当社グループは、2030年近傍を見据えた目指す姿である長期ビジョン「G-STEP30」及び2024年3月期を初年度とした3か年の新中期経営計画「G-STEP30 2nd」を策定した。この中期経営計画では「Growth:事業成長戦略の推進」「Global:グローバル事業展開の強化・推進」「Governance:グループガバナンスの強化」の「3つのG」を柱として、「事業ポートフォリオの再構築」「グローバル化の推進」「事業基盤の整備」を骨子とした課題に重点的に取り組む。

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2024年3月期は、営業赤字という、非常に厳しい業績となった。背景には、原燃料価格の高止まりや、円安などのコストアップ要因、国内外における需要の低下などが挙げられるが、これらへの対処が十分でなかったことが主要因であったと考える。

当社が最優先で対処すべき課題は、赤字からの脱却である。具体的には、経費削減を始めとしたコストダウンなどの自助努力、価格改定による収益の改善、より付加価値の高い高機能製品の拡販による収益力の強化に取り組む。また、構造的な要因で収益性が低下した事業については、事業規模縮小も視野に入れた構造改善に取り組む。

2024年3月期に営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことから、在庫削減などの運転資金圧縮に取り組む一方で、財務面では金融機関とも連携を図る。

足元の経済環境は、物価の上昇による消費者の買い控えの影響で、食品や日用品を中心に個人消費の低迷が続いており、回復には時間を要すると考えられる。また海外では中東における紛争に伴う海上物流の不安定化、中国における景気停滞の長期化など、先行きが見通せない状況にあると言える。そのような中、早期の黒字化を実現するための施策に注力し、収益基盤と財務体質の立て直しを図る。同時に、抜本的な構造改善に取り組みながら、持続的な成長につながる新たな戦略の立案を進める。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標

当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、当期純利益を重視している他、新中期経営計画においては、資本コストを意識した指標として、新たにROE、ROICを重要な指標として加えている。また、財務体質強化の観点からは、自己資本比率向上、有利子負債の削減を念頭に置くとともに、キャッシュ・フローについても重要視し、重点管理している。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

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当社グループは2022年にサステナビリティ委員会においてサステナビリティ方針を策定し、同年4月の取締役会で承認された。この方針は、経営理念と長期ビジョン実現に向けたグループのミッションをサステナビリティの観点から捉え、具体化したものである。このサステナビリティ方針のもと解決に向けて取り組んでいるのが8つの優先課題(マテリアリティ)である。製品が持つ価値に関する優先課題として定めている3つの「事業に関する優先課題」は、長期ビジョンの実現に向けたグループのミッションそのものである。災害や事故、犯罪、健康被害などから人々を守るための製品や、デジタル化や多様化する生活習慣に対応する製品、CO₂削減や省資源、環境汚染防止に貢献する製品を提供することによって解決を目指している。5つの「企業活動に関する優先課題」は、事業活動を遂行する上で配慮すべき、様々な課題である。具体的には、環境に配慮した企業活動を行うことや、全てのステークホルダーの人権の尊重、従業員の健康的な生活の確保と多様な人材がやりがいを感じて働くことのできる環境の整備、サプライチェーン上のリスクの発見と回避に努めることを掲げている。

 

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(1)ガバナンス及びリスク管理

①ガバナンス

当社グループの優先課題とそれに対応する指標(KPI)と目標値を実現するために、2021年12月に実行組織としてサステナビリティ委員会を設立し、委員長は代表取締役社長執行役員が務めている。全社的に取り組みを進めるため、各セグメント担当などの部門のトップ全員が委員として議論に参加し、同委員会の議論内容は取締役会に報告し、指示・承認を受けることとしている。また、委員は全体を統括するだけでなく、KPIの責任者として先頭に立って取り組みを進めている。

サステナビリティ委員会は、気候変動対応を含むサステナビリティに関する事項について、当社の取締役会に年1回以上の報告を行っている。また、当社グループの優先課題に対する指標(KPI)の進捗状況を監督し、中期経営計画の策定時に反映している。

なお、同委員会の下に、TCFD提言に基づく開示を進めるTCFD部会及び人的資本に関連したKPIに対する目標の達成を目的とした人的資本部会を設け、体制の強化を図っている。

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②リスク管理

優先課題の特定にあたって、まず、持続可能な社会を実現するために当社グループが既に取り組んでいることと、これから取り組むことをSDGsのゴールターゲットとGRIスタンダードに照らしてリスト化し、これらの取り組みをグループ化したうえで、SDGsの目標年である2030年までの達成すべきことを課題として抽出した。そして、これら課題それぞれについて、リスクと機会、バリューチェーン上での位置付けを検証し、重要な項目について絞り込みをし、最終的に、これらの項目をマトリックスでステークホルダーにとっての重要性と当社グループにとっての重要性という2軸で整理し、優先課題(マテリアリティ)を特定した。また、「優先課題の前提となる基本事項」についても4項目設定した。なお、これらの項目については、経営会議にて承認されている。

優先課題の中には、「環境と共生する企業活動の推進」があり、この中には気候変動の関連リスクが含まれている。サステナビリティ委員会は、必要に応じてこのリスクの妥当性を評価しており、気候関連を含む新たに特定したリスクについては、重要と判断するものを取締役会に報告している。

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(2)重要な戦略並びに指標及び目標

[優先課題とKPI]

2021年7月に各優先課題のKPIを策定し、2030年度の目標を設定した。その後、サステナビリティ委員会において進捗を確認し、施策の見直しと追加を行っている。

 

優先課題

KPI

2023年度実績

2025年度の目標

2030年度の目標

Prosperity

豊かさ・繁栄

 

 

2019年度比1.1倍

2019年度比1.6倍

2019年度比2.6倍

 1.安全で安心な「暮らし」の実現

3つの暮らしに貢献する

素材の売上高

・食品包装バリアフィルム海外展開

・自然災害対策資材の上市

・浄水フィルタ―の拡販

 2.便利で快適な「暮らし」の実現

・デジタル関連素材の市場参入

・半導体関連素材拡販

 3.環境と共生する「暮らし」の実現

・場内リサイクル、マスバランス方式の適用

・環境配慮型食品包装フィルムの市場展開

Planet

地球環境

 4.環境と共生する企業活動の推進

CO₂排出量

(国内全グループ)

2013年度比33%減

2013年度比24%減

2013年度比46%減

・省エネ設備の導入、クレジット導入検討

産業廃棄物場外処理量

(国内全グループ)

2019年度比19%減

2019年度比8%減

2019年度比10%減

・産業廃棄物削減用設備導入と産業廃棄物のリサイクル強化

People

人間生活

 5.人権の尊重

人権関連教育の実施率

(海外を含む全グループ)

79%

75%

100%

(2026年~2030年に1回以上教育を受けた社員の割合)

 6.働きがいのある会社づくり

休業災害発生件数

(海外を含む全グループ)

11件

0件

0件

健康経営優良法人認定

(ユニチカ及び一部グループ会社*)

認定取得

認定取得

ホワイト500

 7.ダイバーシティの推進

女性管理職比率

(海外を含む全グループ)

5.5%

8%

20%

総合職本社新卒採用女性比率

(ユニチカ)

35%

30%

30%

男性育休取得比率

(国内全グループ)

72%

50%

85%

中核人材プールの年次レビュー実施率

(ユニチカ)

100%

100%

100%

 8.サプライチェーンマネジメントの強化

CSR調達アンケート回答率

(主要取引先)

80%

80%

*日本エステル㈱、ユニチカトレーディング㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、ユニチカガーメンテック㈱の5社

 

(3)人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標

当社グループは、「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」という経営理念のもと「お客様から選ばれ続ける企業」を目指している。長期ビジョン「G-STEP30」においては、持続的な社会実現へ貢献するために、「Governance/事業基盤の整備」を基本方針の1つとして位置づけ、「組織風土改革、人材育成」「技術伝承、事業所整備」に取り組んでいる。人的資本に関しては、優先課題として「人権の尊重」「働きがいのある会社づくり」「ダイバーシティの推進」を掲げており、これら優先課題にかかわる当社グループの基本的な考え方として「ユニチカ人権方針」「ユニチカ健康経営宣言」「ユニチカダイバーシティ経営方針」を2022年7月の取締役会で決議した。それぞれの優先課題においてKPIと目標を定め、その実現に向けた施策を展開している。

 

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①人権の尊重

当社グループでは様々な事業運営に関して諸規程やルールを明文化し、遵守を徹底していくことで安全・安心な職場環境を促進している。社会的使命を果たす基本的方針として「ユニチカグループ企業行動憲章」を制定し、事業活動において守るべきことを具体的に「ユニチカグループ行動基準」として定めており、そのなかですべての人々の人権を尊重する経営(多様性・人格・個性を尊重する働き方含む)に取り組んできた。また、昨今の人権尊重の高まり・重要性を踏まえ、2022年7月に「ユニチカ人権方針」を制定した。これまでも大阪同和・人権問題企業連絡会会員として、人権啓発情報の収集など幅広く人権問題に取り組んできたが、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に依拠し、事業に関連する全てのステークホルダーの人権を守りながら事業活動を推進していくことを「ユニチカ人権方針」に示している。

また2023年9月には、政府が示した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」や日本繊維産業連盟による「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」の趣旨を理解し、外国人技能実習生を含むライツホルダーの人権を尊重すべく、サプライチェーンの関係取引先のご協力も得て、「責任ある企業行動実施宣言」を宣言した。

 

 

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a.人権関連教育の実施

ユニチカグループ企業行動憲章の1つにある「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」という考えのもと、人権啓発推進組織を整備し、代表取締役社長執行役員をはじめとする役員・グループ会社社長などの経営層や従業員を対象とした社内人権研修を実施するなど、人権啓発にグループを挙げて取り組んでいる。また、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、及びマタニティハラスメントなど妊娠・出産、育児・介護に関するハラスメントについて、各事業所・グループ会社に相談窓口を設置し、従業員の意識・認識を高めている。今後は、全てのステークホルダーの人権を尊重することへの理解を深めるために、国内・海外の従業員に対して「ユニチカ人権方針」の周知と人権教育を適宜行っていく計画である。

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KPI

人権関連教育の実施率(海外を含む全グループ)

2023年度実績

79%

2030年度目標

100

(2026年~2030年に1回以上教育を受けた社員の割合)

 

b.人権デューデリジェンス

繊維セグメントの中核会社であるユニチカトレーディング株式会社において、衣料繊維のサプライチェーンにおける人権に関するリスクを抽出し、軽減・対応を行う「人権デューデリジェンス」を実施し、当社グループが社会に与える人権に対する負の影響を特定し、その是正及び軽減に取り組んでいる。2022年7月に日本繊維産業連盟が公表した「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」に基づき、チェック項目の評価とサプライチェーンの「見える化」を実施したところ、サプライチェーン上のリスクの把握や人権侵害が発生した場合に取引先なども利用できる苦情処理窓口の必要性などの課題が抽出された。また、一次サプライチェーンについては、商流上の位置付けの把握については出来ているものの、末端の商流把握が難しいことを改めて確認した。今後、特定したリスクの防止・軽減に向けた行動に取り組み、是正及び軽減を図っていく。

 

②働きがいのある会社づくり

当社グループでは、「働きがいのある会社づくり」をサステナビリティの優先課題として定め、各種施策に取り組んでいる。

a.従業員の健康

・健康経営優良法人の認定取得

2022年7月に「ユニチカ健康経営宣言」を策定し、代表取締役社長執行役員のもと健康経営®(※1)を推進している。以前から、メンタルヘルスや生活習慣病対策などの取り組みを進めていたことが認められ、当社グループの一部(※2)は、2023年3月、2024年3月と2年連続で「健康経営優良法人」の認定を受けている。引き続き、会社、産業医、健康管理スタッフ、健康保険組合などが連携し、特定保健指導参加率の向上や喫煙率の低下を始め、さらなる従業員の健康維持増進を図っていく。2030年に向けては「健康経営優良法人制度」の大規模法人部門で認定された企業のうち、健康経営度調査結果の上位500法人を示す「ホワイト500」の認定取得に取り組む。

※1.「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

※2.ユニチカ㈱、日本エステル㈱、ユニチカトレーディング㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、

ユニチカガーメンテック㈱

 

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・メンタルヘルスの取組

厚生労働省の「労働者の心の健康保持増進のための推進」に基づいて、入社時及び昇格時にメンタルヘルス研修を行い、従業員の「心の健康づくり」に積極的に取り組んでいる。また、毎年ストレスチェックを実施し、メンタルヘルスケアの一次予防として、高ストレス者にはストレスが軽減されるよう対応を進めている。

・復職支援ガイドライン

長期療養から円滑に復職できるよう「復職支援ガイドライン」を定めている。

・生活習慣病対策

35歳未満の定期健診時(年1回)では、法定項目ではない血液検査や心電図検査を実施し、中高年になる前から従業員自身が健康管理に関心を持つよう働きかけている。

・感染症予防対策

インフルエンザ予防接種を各事業所にて実施し、従業員のインフルエンザ発症や重症化の予防に努めている。

 

b.安全衛生に対する取組

当社グループでは、中央安全衛生委員会を中心として、「休業災害ゼロ」を目指した安全衛生活動を各事業所、各関連会社で実施している。グループ内の安全衛生担当者が参加する安全衛生管理者会議を年3回開催し、労働災害の解析と対策、全社的な課題への取組状況、法規制の改正動向などの情報を共有している。

 

c.防災活動への取組

・防災対策の強化

「従業員の命を守る」という基本的な使命と、「事業を継続する」というステークホルダーへの責任を果たすためには、東日本大震災のような巨大災害に対する備えが必要である。2021年7月にユニチカ防災対策要綱の改訂と防災体制及び災害対策の整備を行い、2023年10月に中央防災対策委員会による防災委員会を実施し全社に防災の重要性を周知した。

・防災訓練の実施

2019年1月の宇治事業所における火災の反省を踏まえ、全社的に防災体制を見直して再発防止に努めている。事故や自然災害に備えた訓練活動にも積極的に取り組んでおり、春や秋の火災予防運動実施時期には各事業所で訓練を実施している。また、生産施設の安全管理を徹底する社内基準として「新設備等の安全衛生及び環境に関する事前評価指針」を制定している。設備の新設・改造などを行う場合は、この基準に照らし、設計時と完成検査時の計2度にわたり厳正な審査を行い、災害防止に努めている。

・大規模災害への備え

大規模災害の発生によって電車などの公共交通機関が麻痺した場合、従業員が途中で帰宅困難者になったり、警察や消防の救助活動の妨げになったりすることを防ぐため、事業所内に一昼夜留まるよう「帰宅基準」を定め、災害対策用資器材や飲料水、保存用食品の備蓄を進めている。また、近隣住民の皆様からの応援要請や自治体からの協力要請に応えることができるよう体制を整えている。

 

③ダイバーシティの推進

2022年7月に「ユニチカダイバーシティ経営方針」を策定した。当社グループは、新しい価値を創出するため、多様な人材を活かし、ダイバーシティ経営を推進している。

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a.女性活躍推進

・研修、意識改革

ダイバーシティ推進、とりわけ女性活躍推進を加速させるために、企業風土の改革が必須であるとの考えから、役員を含めたマネジメント層の研修に加え、女性キャリア研修、女性事務職と上司を対象にした選抜型研修を実施し、モチベーション向上とキャリア支援を図っている。このような取り組みを継続していくことで意識改革を進め、女性管理職比率の向上を図っていく。

・採用、配置、育成

新卒採用については、「総合職本社新卒採用女性比率」の数値目標を掲げており、厚生労働省「公正な採用選考について」を遵守、公正な採用活動を推進している。また、「リターン雇用制度」を設け、正従業員がやむを得ない家庭事情(結婚、育児、介護、配偶者の転勤)により退職した後、退職の原因となった状況が変化し再び勤務が可能になった場合に、本人と会社の希望が折り合えば、もう一度活躍できるチャンスを提供している。

 

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KPI

女性管理職比率(海外を含む全グループ)

2023年度実績

5.5

2030年度目標

20

 

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KPI

総合職本社新卒採用女性比率(ユニチカ)

2023年度実績

35

2030年度目標

30

 

b.多様な働き方の推進

・多様性の受容

育児・介護中や疾病治療中の者、障がい者、海外出身者、LGBTQ+、若手、高齢者など、それぞれが個々の「違い」を受け入れ、認め、その多様性を活かすことが当社グループの力を高めていくことに繋がると考えており、入社時研修や階層別教育において理解を促している。障がい者雇用では、地域の支援学校卒業生や作業訓練所の出身者を積極的に受け入れ、障がい者雇用を推進している。雇用の場を提供することで地域に貢献するだけでなく、障がい者一人ひとりが組織の一員として能力を発揮する環境作りをすることで、従業員が多様性を理解する機会にもなっている。

・ワークライフバランス

社員の仕事と生活の両立(ワークライフバランス)を促進するため、ノー残業デーの実施や、法定を上回る育児休職、産後休暇、子ども看護休暇、介護休暇などの制度を設けている。育児や介護をする従業員から要望が多かった半日年休は、年14回(計7日)まで取得でき、3歳以上、小学校3年生終期までの間に勤務時間を1時間短縮できる制度を運用しており、また男性の育児休職取得も推奨している。さらに多様な働き方を支援していくために、一部部署ではフレックスタイム制度を整備するほか、リモートワーク(在宅勤務)を活用し、ディーセント・ワークを促進している。

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KPI

男性育休取得比率(国内全グループ)

2023年度実績

71.9

2030年度目標

85.0

 

c.人材育成と中核人材プール

・教育体系の整備

従業員全体の能力の一層の底上げが、組織力の基盤をより強固にするとの考えから、教育体系を整備している。人材育成においては、従業員のキャリアパスを踏まえた「OJT」がその幹であると位置づけ、若手社員のフォローアップと指導者に対する教育・支援をより効果的に行う仕組みとしている。「OJT」を補完する仕組みである「OFF-JT」では、階層別教育、機能別教育、グローバル人材育成プログラムを充実させている。

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・中核人材の育成とプール

企業価値を高める次世代リーダーとなる中核人材について、特定の階層・領域における人材プールを策定し育成を図り、定期評価、個別育成計画策定、アサインメントの年次レビュー実施率100%を目指して取り組んでいる。将来の経営人材候補:「経営人材」、生産現場の中堅幹部候補:「生産幹部人材」、デジタル技術を活用した変革・改善を推進する人材:「DX人材」という3つの人材プールを定め、各人材プールに求められるポテンシャルを有した人材を選抜して育成を行うことによって、エンゲージメントの高い人材の確保が期待できる。

「経営人材」プールは、国内外拠点のトップを含むものとし、年功や過去の評価にとらわれることなく、職責にあった実力本位の人材を抜擢している。育成においては実践的なビジネススキルを身に付けるために社外ビジネススクールへ参加する機会を与え、登用、異動、研修などの状況については定期的に代表取締役社長執行役員に報告を行って共有を図る(年次レビュー)。将来のCEOサクセッションプランにも繋がるものと位置づけて、取り組んでいく。

「生産幹部人材」プールは、事業所採用者で入社後3年間実施される「若手技能職研修」修了者や、これまでに取り組みを進めてきた「技能向上推進」の育成対象者などの中から優秀者を選抜している。技能の習熟やQC手法により現場の課題解決を図るという「技術」重視のOJT・OFF-JTに加え、リーダーひいては生産幹部人材に必要なヒューマンスキル、すなわち「人」に焦点を当てたプログラムを本格的に実施していく。

「DX人材」プールは、社内の組織風土を変革し、高度なデジタルトランスフォーメーションを実現する人材を育成し、IT人材及び女性活躍の裾野を拡大する。オンライン学習プラットフォームを活用した継続的なリスキリングを行うことによって、デジタルに関する自律的な学びの支援から始め、最終的には、全社課題を解決できる変革リーダー(業務改革・改善推進者)への育成及び絞り込みを行いプール化していく。

 

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KPI

中核人材プールの年次レビュー実施率(ユニチカ)

2023年度実績

100

2030年度目標

実施率100

 

d.組織風土・環境整備

・CFTによる組織活性化

IT教育における裾野を拡大するとともに多様な人材が共に尊重し成長できる風土を醸成するために、CFT(Cross-functional Team:組織横断で編成されたチーム)活動を推進している。このCFTの取り組みは、縦割り型組織を崩すことも狙いの1つであり、また全社課題を見渡すことのできる職場環境を社員に提供するきっかけにもなっている。人材育成に使用する学習コンテンツのレベルについては、活用できる知識レベルごとに4段階の達成目標(Level0:「知識のインプット」、Level1:「知っているから使えるへ」、Level2:「使えるから業務改善へ」、Level3:「業務改善から改革へ」)が設定されており、最上位となるLevel3ではプロジェクトチームにおける課題解決能力を身につけた次世代リーダーの育成を図ることが可能なプログラムとなる。

・人事評価制度とローテーション

従業員がモチベーションやマインドを高く持って、能力向上とキャリア開発に取り組み自らの成長を図れるよう、様々な育成プログラムを展開しており、体系的・継続的に推進することにより企業競争力を高めていくことを目指している。

人事評価制度では、従業員の期待役割や能力開発目標を明確にするとともに、その役割に応えて成果を上げた者を公正に評価できるよう運用している。具体的には、1年間のコンピテンシー・能力・役割の向上、成果達成、業務遂行プロセスの状況に基づき評価する人事考課や、年2回の目標管理制度に基づく業績評価などを実施し、昇給・昇格、賞与に反映する。上司によるフィードバックを通じて従業員の今後の能力開発を図っている。

また、個々の従業員のキャリア開発はもとより、組織間シナジーを生み出しビジネスチャンスや業績の向上に繋げる狙いから「人事ローテーション」を実施しており、従業員の自己申告による配置希望なども踏まえながら、より効果的な運用を図っている。

(4)気候変動リスクに関する戦略並びに指標及び目標

当社グループでは気候変動に関する重要なリスク・機会として、下表の項目を認識している。当社グループでは今後、対象事業や用途領域を選定しながらシナリオ分析を深め、随時リスクと機会を見直しながら、段階的に開示情報を拡充していく予定である。

 

①リスク・機会の特定

当社グループにおける気候変動に関連する主なリスク・機会について、短期・中期・長期の観点で特定し、整理している。

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②シナリオ分析の実施と対応戦略

整理した気候関連リスク・機会のうち、事業への影響度、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、当社グループとして重要度が高いと評価したテーマについて、「2℃未満シナリオ」「4℃シナリオ」を設定しシナリオ分析を実施している。

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シナリオ分析Ⅰ(機会)

[リサイクルプラスチックの需要増加]

<影響評価>

化学セクターにおいて、2℃未満シナリオでの石油使用量は、燃料用は減少が想定されているが、プラスチック原料用は、4℃シナリオと同様に、増加が想定されており、いずれのシナリオでも化石資源由来プラスチックの需要が今後も見込まれる。

<対応戦略>

リサイクルプラスチックについては、従来の繊維や樹脂に加え、ケミカルリサイクル・マテリアルリサイクルによる再生材料を使用した食品包装用フィルム「エンブレムCE」「エンブレットCE」を強化していく。

 

シナリオ分析Ⅱ(機会)

[食品ロス・廃棄削減に寄与する製品の需要の増加]

<影響評価>

世界全体の食料需要量については、今後も増加が想定されることから、食品ロス・廃棄の課題の重要性は今後も高まると考えられる。

食品ロス・廃棄削減の動向については、FAO(国連食糧農業機関)において世界全体の食品ロスの割合がモニタリングされているほか、SDGs目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」において、ターゲット12.3「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる。」が掲げられており、SDGsの実現を目指す社会の中で、食品ロス・廃棄削減に寄与する製品の需要の増加は、今後も進むと想定される。

<対応戦略>

今後、バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」等の高付加価値品の展開を加速するとともに、より食品ロス・廃棄の課題の重要性が高まると考えられる海外市場への拡販を強化していく。

 

シナリオ分析Ⅲ(機会)

[EVシフトの進展における車両軽量化・バッテリー向け関連製品の増加]

<影響評価>

4℃シナリオと2℃未満シナリオ共にEV新車販売台数は増加することが見込まれるが、特に2℃未満シナリオの場合は2050年のEVの販売比率が大幅に増加すると推計される。

当社グループにおける主なEV向け関連製品はEVの車両軽量化に寄与する製品として「ナイロン6樹脂(自動車用途)」、「不織布(自動車用途)」があり、EVバッテリー向け関連製品として「LIB用フィルム(EV用バッテリー用途)」がある。

いずれの用途の市場もEV市場に比例した成長が見込まれるが、車両軽量化に寄与する製品は現在販売しているガソリン車に適した製品からEVに適した製品への切り替えが必要となる。EVシフトの進展によりEV用LIBの市場は今後拡大し、それに伴いフィルムを使用したパウチタイプの需要の増加も見込まれる。

<対応戦略>

ナイロン6樹脂(自動車用途)については、EVシフトを進める顧客への営業を強化し、軽量化が求められる車両部材への採用拡大を目指していく。不織布(自動車用途)については、EVシフトの進展に伴い、車両軽量化に資する材料の提案を進め、かつ、EVの居住性を向上させる内装材用途の拡販を進めていく。

LIB用フィルムについては、顧客の新規設備の立ち上げに素早く対応してシェア拡大を狙っていく。

 

③指標及び目標

当社グループは、製品製造時に地球環境に悪影響を与えないことを行動指針として、50年にわたって環境保全に努めてきた。温室効果ガス排出量の削減にも早くから力をいれており、他社に先駆けてガスコージェネレーションシステムを導入(2004年度宇治事業所、2006年度岡崎事業所)している。

さらに、環境中期計画において毎年の削減目標を設定し、継続的に削減活動に取り組んできた。2021年7月にはサステナブル推進プロジェクトにおいて、国内全事業所からのCO₂排出量(Scope1,2)を2030年度までに2013年度比で46%削減することを目標として設定した。2050年にはカーボンニュートラルを目指している。なお、CO₂排出量削減のための施策はサステナビリティ委員会が進捗を管理し、取締役会に報告している。

<事業活動によるCO₂排出量(Scope1,2)>

当社グループでは、自社事業所におけるガスなどの使用に伴う直接的なCO₂排出量であるScope1と、他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接的なCO₂排出量であるScope2を毎年算定し、報告している。

2022年度に温室効果ガスの種類の算定対象を広げ、非エネルギー起源温室効果ガス(6.5ガス)をScope1に含めた。2013年度以降の全てのデータも非エネルギー起源温室効果ガスを加えて再計算し、KPIの「CO₂排出量」の基準値と目標値についても、非エネルギー起源温室効果ガスを加えた値に修正した。2013年度比46%削減という2030年度目標は据え置きとしている。

国内全事業所(本社、営業所を含む)における2023年度のCO₂排出量はScope1とScope2を合わせて240kt-CO₂eだった。政府目標と同じ2013年度を基準年とした場合の削減率は33%である。46%減という目標達成に向け、省エネ設備への更新などの施策を進めている。

海外事業所における2023年度のCO₂排出量はScope1とScope2を合わせて70kt-CO₂eだった。2018年度を基準年として比較すると4%増加した。

KPI

CO₂排出量※1(国内全事業所)

2023年度実績

240kt-CO₂e(2013年度比33%削減)

2030年度目標

193kt-CO₂e(2013年度比46%削減)

※1非エネルギー起源温室効果ガスを含む

 

④自社以外のサプライチェーンにおけるCO₂排出量(Scope3)

2022年度より、Scope3※1のCO₂排出量の算定を開始した。そして2023年度の算定における組織的範囲を当社及び一部のグループ会社※2に拡大し、その排出量は798kt-CO₂eであった。詳細は当社ウェブサイト上で公開予定である。

※1.当社の事業に関するサプライチェーン(原材料調達から最終製品の廃棄まで)から発生するCO₂のうち、Scope1とScope2を除いたものの合計。

※2.ユニチカトレーディング㈱、日本エステル㈱、㈱アドール、テラボウ㈱の4社

 

⑤物流におけるCO₂排出量の削減

物流においては、モーダルシフト、輸送効率化などを進め、原材料、製品、廃棄物などの搬入出と排出に伴う環境負荷の低減に取り組んでいる。行政へ届け出た当社が特定荷主となる2023年度の輸送量は48,752kt・km、CO₂排出量は17.4kt-CO₂(2013年度比34%削減)となった。今後もアイドリングストップやエコタイヤの推進、鉄道利用の拡大などにより、グループ全体でクリーン物流に取り組んで行く。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがある。なお、当社グループはこれらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避やその影響を最小限に止めるなどの事前対応、または発生した場合の事後対応に努めるものとしている。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

(1)法令等の順守に関するもの

当社グループが事業を遂行していく上で、取引先や第三者との間で訴訟等が発生し、当社グループの業績又は財政状況に重大な影響を及ぼす可能性がある。

①当社、連結子会社である日本エステル株式会社およびその他3社の計5社(以下「被告ら」という。)が製造、加工または販売した高伸度防砂シートに関して、代表者東亜建設工業株式会社およびその他2社の計3社で構成された特定建設工事共同企業体(以下「原告」という。)から損害賠償請求訴訟を提訴され、当該訴訟に係る訴状を2021年8月24日に受領した。その内容は、那覇空港滑走路増設埋立工事の一部工区に、当該高伸度防砂シートを使用したところ、短期間で著しく強度低下したために破れが発生し、これに伴い陥没や空洞が発生したことから補修工事を余儀なくされたことを理由に、被告らに製造物責任ないし瑕疵担保責任に基づく損害賠償等(2,142百万円)並びに遅延損害金の支払いを求めたものである。

なお、2024年1月15日に原告は、被告らに対する請求額について、訴訟提起時において未了であった修補工事は見込額を記載していたことから、工事実績値に合わせて1,835百万円に減縮する申立てを行っている。

この訴訟は、現在係争中であり、当社としては、相手側の主張が誤りであることを立証するなど、適切な

防御を行っていく所存である。

②当社が販売した高伸度防砂シートに関して、みらい建設工業株式会社(以下「原告」という。)から損害賠償請求訴訟を提訴され、当該訴訟に係る訴状を2022年7月14日に受領した。その内容は、原告が請負人となっている下関港岸壁築造工事において当該高伸度防砂シートを使用していたところ、当該高伸度防砂シートの破損及び強度低下が確認され、本工事につき岸壁構造としての性能が発揮できていないものとして工事発注者が原告に瑕疵修補を請求し、これに応じて原告が修補工事を行ったことにより、工事費用相当額の損害を被ったとして、当社に製造物責任に基づく損害賠償等(62百万円)並びに遅延損害金の支払いを求めたものである。

この訴訟は、現在係争中であり、当社としては、相手側の主張が誤りであることを立証するなど、適切な防御を行っていく所存である。

③当社、連結子会社である日本エステル株式会社およびその他3社の計5社(以下「被告ら」という。)が製造、加工または販売した高伸度防砂シートに関して、住吉工業株式会社(以下「原告」という。)から損害賠償請求訴訟を提訴され、当該訴訟に係る訴状を2022年12月1日に受領した。その内容は、原告が請負人となっている下関港(新港地区)ケーソン製作工事外1件において当該高伸度防砂シートを使用していたところ、当該高伸度防砂シートの破損及び強度低下が確認され、本工事につき岸壁構造としての性能が発揮できていないとして工事発注者が原告に瑕疵修補を請求し、これに応じて原告が修補工事を行ったことにより、工事費用相当額の損害を被ったとして、被告らに製造物責任に基づく損害賠償等(60百万円)並びに遅延損害金の支払いを求めたものである。

この訴訟は、現在係争中であり、当社としては、相手側の主張が誤りであることを立証するなど、適切な防御を行っていく所存である。

(2)財務報告に関するもの

当社グループでは、不正な会計処理等により適切な財務報告がなされないリスクが発生する可能性がある。当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの信用の失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの業績又は財政状況に重大な影響を及ぼす可能性がある。

(3)製品の安全・品質保証に関するもの

当社グループは製品の品質管理に万全を期し、製品の欠陥等の発生を未然に防止している。また、万が一の製品事故に備えた損害保険に加入している。しかしながら、予測できない原因により製品に重大な欠陥が発生した場合、回収費用、社会的信用の毀損、多大な補償・訴訟費用、賠償費用の負担などにより、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

 

(4)情報システムに関するもの

当社グループでは、情報管理に関する規程等を整備し、厳正な情報管理に努めている。従業員、業務委託先又はその他の者による不正なアクセス等により、今後、仮に当社が保有する個人情報やその他重要な情報が外部に漏えい等した場合には、損害賠償請求や行政調査、指導又は処分を受ける可能性があり、また、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じること、当社グループの社会的信用が毀損すること等により、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

(5)災害・事故等に関するもの

当社グループにおいて、合繊原料など化学物質を取り扱う工場を中心として、万一、甚大な事故災害が発生した場合は、それに伴って生じる社会的信用の低下、補償などの対策費用、生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

(6)その他ユニチカグループの業務遂行に関するもの

①原燃料価格の変動にかかるもの

当社グループにおいて、高分子事業及び合成繊維事業にて取り扱う製品は、主としてナフサから精製される化学原料を加工したものである。また事業所などで使用される重油、天然ガスなどの原料も含めて、石化原燃料の購入価格の変動をタイムリーに製品価格への転嫁や生産性向上などの内部努力により吸収することができず、十分なスプレッドを確保できなかった場合は、各原燃料価格の変動が当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

②為替・金利レートの変動にかかるもの

当社グループの海外事業については、円建ての取引を基本としているが、現地通貨建てにて取引を行う項目に関しては、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける場合がある。これら為替レートの変動が生じた場合、円換算後の売上高やコストへの影響が生じ、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、金利変動によるリスクについては、為替変動と同様に当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

③海外事業にかかるもの

当社グループは東アジア、欧米並びに南米などの地域において事業展開を図っているが、予測しえないカントリーリスクの発生の懸念もある。これらの事象が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

④貸し倒れにかかるもの

当社グループの取引先の信用不安によって予期せぬ貸し倒れが顕在化し、それに伴う追加の損失や引当の計上が必要となる場合は、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

⑤固定資産の減損にかかるもの

当社グループでは、さまざまな有形固定資産や無形資産を保有している。これらの資産は、固定資産の減損に係る会計基準等に従い、保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失の認識・測定を行っている。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定については慎重に検討しているが、事業環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上することも予測され、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

⑥新型コロナウイルス感染症にかかるもの

当社グループにおける生産に関しては、様々な感染防止対策の実施が成果を発揮し、国内拠点、海外拠点ともに大きな影響もなく操業を継続することが出来ている。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけ変更に伴い、感染防止対策の制限は緩和されているが、感染症の拡大の影響により、売上高の減少や減産による操業率の低下、また、当社グループ従業員の感染者発生などによる生産の一時停止など、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

⑦その他の主な変動要因にかかるもの

上記の他、事故、地震・台風・竜巻などの自然災害が、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおり

である。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における国内経済は、国内の人流回復や訪日客数の増加を背景に、観光や飲食等の対人サービス業が好調に推移した。一方、製造業においてはエネルギーコストの高騰や円安の進行などによるコストアップ、物価上昇に伴う個人消費の停滞等の影響を受けた。また、海外では、欧州や中国における景気の減速に伴い消費需要が低迷した影響により、先行き不透明な状況で推移した。

このような状況の下、当社グループは、2023年5月に中期経営計画「G-STEP30 2nd(ジーステップ・サーティ ~セカンド)」を公表し、その基本方針である、「事業ポートフォリオの再構築」「グローバル化の推進」「事業基盤の整備」を骨子とした各施策を推進してきたが、物価上昇に伴う需要の減少や、東南アジアを中心とする海外での販売競争激化などの環境変化に対し、施策の実行が追い付かず、非常に厳しい業績となった。

この結果、当連結会計年度の売上高は前期比0.3%増収の、118,341百万円となった。営業損失は2,475百万円(前期は1,327百万円の営業利益)となった。円安の進行により外貨建資産の為替評価益2,595百万円を計上した結果、経常損失は1,014百万円(同1,069百万円の経常利益)となった。また、不織布事業、産業繊維事業及び衣料繊維事業の事業用資産に対して減損損失3,872百万円を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純損失は5,443百万円(同102百万円の当期純利益)となった。

事業セグメント別の経営成績は次のとおりである。

なお、当連結会計年度より、一部の連結子会社の報告セグメントを変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載している。

[高分子事業セグメント]

高分子事業セグメントは、川下における需要低迷と、サプライチェーン内の在庫調整の影響を受け、販売量が減少した。一方、製品価格の改定を実施したが、原燃料価格の高止まりによる影響と、減産に伴うコストアップの影響が上回り、収益が悪化した。

フィルム事業では、包装分野において、物価上昇の影響により食品類の消費量が伸びず、食品包装用フィルムの販売が減少した。一方、ハイバリアナイロンフィルム「エンブレムHG」は、高いガスバリア性能が評価され、販売が伸長した。工業分野においては、電気・電子用途の製品の製造工程で使用するフィルムを中心に販売が減少した。また、東南アジア市場においては、中国からの安価な競合品の流入により、販売単価が下落した影響で、ナイロンフィルムの採算が悪化した。この結果、事業全体で増収減益となった。

樹脂事業では、エンジニアリングプラスチックは、主に中国での需要低迷等の影響を受け、販売量が減少した。原燃料価格の高止まりを背景に価格改定を実施したが、販売減に伴い減産を行った影響で、売上高・収益ともに悪化した。機能樹脂は、接着剤・コーティング剤用途の販売が堅調であったほか、リサイクル素材などの環境配慮型素材の販売が伸長した。この結果、事業全体で増収減益となった。

以上の結果、高分子事業セグメントは増収減益となり、売上高は51,074百万円(前期比2.2%増)、営業利益は603百万円(同81.7%減)となった。

[機能資材事業セグメント]

機能資材事業セグメントは、一部用途で需要回復の兆しが見られたが、多くの用途で販売が減少した。原燃料価格の高止まりに加え、減産を実施した影響によるコストアップが価格改定の効果を上回り、収益性が悪化した結果、営業赤字となった。

活性炭繊維事業では、空気浄化用途でVOC除去シートの販売が好調であったが、主力の浄水用途やその他の用途は低調であった。

ガラス繊維事業では、産業資材分野は各用途で堅調な販売状況であった。電子材料分野のICクロスは、期末にかけて一部の半導体市況が回復した影響で販売は回復した。しかしながら、在庫調整のための減産によるコスト上昇が響き、収益性は悪化した。

ガラスビーズ事業では、道路用途、反射材用途の販売は減少したが、工業用途は高付加価値品の販売が伸長した。また、各用途において、価格改定の実施とコストダウン施策の効果により、収益性は改善した。

不織布事業では、建築分野、一次産業分野、一般消費財分野など、幅広い分野で需要が低迷し、販売が落ち込んだ。また、原燃料価格高騰などのコスト上昇に対し価格改定を実施したが、販売減少による影響が上回った。

産業繊維事業では、フィルター用途の販売と、差別化品の輸出販売が好調であったが、土木建築用途の高強力糸の販売は苦戦した。

以上の結果、機能資材事業セグメントは減収減益となり、売上高は34,206百万円(前期比0.6%減)、営業損失は2,478百万円(前期は535百万円の損失)となった。

[繊維事業セグメント]

衣料繊維事業では、主力のユニフォーム分野及び婦人服等の一般衣料分野の需要は、後半はやや失速したものの、おおむね堅調であった。一方、寝装分野及びスポーツ衣料分野の販売は不調であった。グローバル事業は、デニム生地の輸出販売が減少した。産業資材事業は、自動車、電気・電子分野の需要回復が遅れた影響で販売が減少した。価格改定やコストダウンの効果により収益改善が進み、営業赤字は前期から縮小した。

以上の結果、繊維事業セグメントは減収増益となり、売上高は33,004百万円(前期比1.4%減)、営業損失は523百万円(前期は1,354百万円の損失)となった。

[その他]

その他の事業については、売上高は54百万円(前期比20.0%減)、営業損失は87百万円(前期は69百万円の損失)となった。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ575百万円増加し、10,187百万円となった。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失の計上があったが、棚卸資産の減少などにより、8,169百万円の資金の増加(前期は509百万円の資金の増加)となった。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に伴う支出などにより、7,541百万円の資金の減少(前期は8,092百万円の資金の減少)となった。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、セール・アンド・リースバックによる収入があったが借入金の返済などにより、279百万円の資金の減少(前期は1,657百万円の資金の減少)となった。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループの生産活動の大半は、当社、日本エステル㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、ユニチカガラスビーズ㈱、P.T.EMBLEM ASIA及びTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.で行われているため、これらの会社の実績により記載している。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

高分子事業

51,858

△1.6

機能資材事業

23,020

△0.5

繊維事業

760

3.0

報告セグメント計

75,639

△1.2

その他

合計

75,639

△1.2

 (注)生産高を明確に表示するため、外注生産高を含む総生産高で記載している。

b.受注実績

当社グループは主として見込生産を行っている。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

高分子事業

51,074

2.2

機能資材事業

34,206

△0.6

繊維事業

33,004

△1.4

報告セグメント計

118,286

0.3

その他

54

△20.0

合計

118,341

0.3

 (注)販売実績が総販売実績の10%以上の相手先はない。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績及び財政状態の分析

a.売上高

当連結会計年度の売上高は118,341百万円となった。販売数量は減少したが、製品価格の改定を行った効果と、高付加価値品の販売が増加した効果が上回ったことにより、全体では増収となった。

b.営業損益

当連結会計年度の営業損益は、前連結会計年度に比べ3,802百万円減益の2,475百万円の営業損失となった。販売数量の減少と在庫調整により生産量が減少したことによるコストアップと、東南アジアを中心に、海外競合製品との販売競争激化の影響により、収益性が大幅に悪化し、減益となった。

c.営業外損益と経常損益

当連結会計年度の営業外損益については、為替の影響などにより、営業外収益は、前連結会計年度に比べ1,165百万円(60.3%)増加の3,097百万円となり、営業外費用は、553百万円(25.3%)減少の1,636百万円となった。これらの要因により、当連結会計年度の経常損益は、前連結会計年度に比べ2,083百万円減益の1,014百万円の経常損失となった。

d.特別損益

当連結会計年度の特別損益については、特別利益は、前連結会計年度に比べ682百万円(98.3%)減少の11百万円となった。特別損失は、機能資材セグメントおよび繊維セグメントでの減損損失を計上したことなどにより、前連結会計年度に比べ3,530百万円(343.6%)増加し4,558百万円となった。

e.親会社株主に帰属する当期純損益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益については、特別損失が増加した影響等により、前連結会計年度に比べ、5,546百万円減少の5,443百万円の親会社に帰属する当期純損失となった。

f.総資産

総資産は、前連結会計年度末に比べ3,670百万円減少し、186,333百万円となった。これは、主として棚卸資産と有形固定資産が減少したことによるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ2,000百万円増加し、148,085百万円となった。これは、主として支払手形及び買掛金が増加したことによるものである。純資産は、前連結会計年度末に比べ5,670百万円減少し、38,247百万円となった。これは、主として親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が減少したことによるものである。

ロ.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析

当連結会計年度の事業セグメント別の経営成績については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりである。

ハ.資本の財源及び資金の流動性について

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。

 

b.契約債務

2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超

3年以内

3年超

5年以内

5年超

短期借入金

3,085

3,085

長期借入金

89,063

2,629

85,992

112

329

リース債務

1,785

417

985

382

 

c.財務政策

当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしている。運転資金の効率的な調達を行うため、当社と取引銀行1行との間で5,000百万円のコミットメントライン契約を締結し、資金の流動性を確保している。なお、当連結会計年度末における借入実行残高はない。

また、設備資金調達を目的として、当社と取引銀行5行との間で6,900百万円の限度貸付契約を締結し、契約金額を上限とするコミットメントラインを設定している。設備投資の進捗にあわせて当該貸付枠を利用し資金調達を行うこととしており、当連結会計年度末における設定金額は4,500百万円である。(借入実行残高2,231百万円、借入未実行残高2,269百万円)

財務体質健全化については、在庫削減等による運転資金の効率化によって有利子負債の圧縮に努めている。

②重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としている。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

5【経営上の重要な契約等】

合弁関係

契約会社

相手先

対象国

契約内容

契約締結年月日

(有効期間)

当社

PT.GRAHA UPAYA MANDIRI

丸紅株式会社

インドネシア

左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立

 資本金10,000千USD
 当社出資比率60.00%

(提出日現在:資本金43,800千USD
      当社出資比率87.27%)

(1995年11月15日P.T.EMBLEM ASIA設立)

1995年5月29日

(契約発効後、合弁会社の存続する期間)

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、長年にわたり蓄積してきた技術力を基盤とし、新技術の開発、応用を進めて、多様化する社会のニーズに応える商品開発を図り、もって事業基盤の強化と新規事業の拡大を行うことを目標としている。

当連結会計年度の研究開発費は3,602百万円であり、この中には中央研究所で行っている全社共通テーマの各事業部門に配賦できない費用1,296百万円が含まれている。

(1)高分子事業セグメント

フィルム事業では、高付加価値品の展開および拡大を推進している。高耐熱性ポリアミドフィルム「ユニアミド」は、耐熱性と溶融加工性が評価されポリイミドフィルムの代替としてモバイル機器向けの採用が増加し、販売量は着実に増加している。また、顧客からの様々な要望に応えるため、新たな生産設備の投資を意思決定した。2021年8月より工事を着手し、2023年4月に稼働を開始した。これにより、生産能力の向上と多品種対応が可能となり、今後はFPC(フレキシブルプリント基板)および関連基材や、耐熱性と無色透明性、優れた衝撃吸収性能などの特長を活かした用途への展開を進めていく。シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」は、年々、高まる高品位化への要望に対応することで、銘柄も増加し、着実に販売量が拡大している。また、高粗度PETフィルム「エンブレットPTH、PTHA」の性能が国内だけでなく、海外まで認められて、販売量が拡大している。

柔軟性のある有機系バリア層をナイロンフィルムに積層した新規バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」もボイル・レトルト用途に対する高いガスバリア性能と食品の色目保持効果が格段に高いことから、漬物、惣菜、農産加工品を中心に国内だけでなく、海外でも採用が拡大し、ユニチカバリアフィルム商品群の主力銘柄に成長した。

さらに、昨今の環境問題への意識の高まりの中、循環社会による持続可能な成長社会を目指す「Circular Economy:CE循環経済」の考えに基づいて、当社の重合設備にてケミカルリサイクルし、再生した樹脂を使用したフィルム「エンブレムCE」と「エンブレットCE」は、ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルを併用することで、機械物性、印刷適性などを損ねることなく、二酸化炭素の排出量を削減できるため採用が進んでいる。さらに、エンブレムCEにバリア性を付与した、「エンブレムKCN」も新たに上市し、食品包装分野を中心に採用が拡大している。

樹脂事業では、当社固有のエンジニアリングプラスチックであるポリアリレート樹脂「Uポリマー」については、その広い温度域における性能、寸法の安定性から、スマートフォン、タブレット用途などのほか、自動車用ランプ用途で引き続き販売を継続している。さらに、新たに開発した溶剤可溶タイプのポリアリレート樹脂「ユニファイナー」の引き合いも増えており、優れた耐熱性と電気特性から、多用途で評価が進んでおり、早期実績化を目指している。ポリアミド樹脂について高耐熱性ポリアミド樹脂である「ゼコット」は、バイオマスプラスチックでありながらスーパーエンジニアプラスチックに属し、電気・電子用途のほか、摺動用途など多くの自動車用テーマを獲得して採用が進んでいる。「ナノコン」については、メタリック着色、ピアノブラック着色等の高外観グレードで、家電関係や自動車関係に採用が増えており、特に注目度の高い欧州での自動車内装材への採用が始まった。

オレフィン系エマルションである「アローベース」は、環境に優しい水系のコーティング材料であり、包装材料などの接着層、コーティング層として拡大しているほか、金属と樹脂といった異種材料の接着に効果が認められ引き合いが増加している。また、ナノ多孔膜を形成することができるポリイミドワニスについては、リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ新たな技術として高い関心が寄せられ、ユーザーでの評価が続いている。環境意識の高まりを背景に、サステナブルな社会の実現に向けて環境配慮型素材へのニーズが高まっている状況の中、環境に貢献する100%マテリアルリサイクルが可能なナイロン樹脂「ナノコン」と、商品のエコマーク取得が可能(定められた認定基準を満たすことが要件)なポリエステル(PET)樹脂「プレコン シューマリサイクル CoPET」の販売を強化している。「ナノコン」は自動車関連等、「プレコンシューマリサイクル CoPET」 は化粧品・医薬ボトル用途等、その他の各分野を含め、マテリアルリサイクルで環境に貢献する樹脂としての提案をより一層推進し販売拡大を目指している。さらに、ケミカルリサイクルナイロン6樹脂の展開も注力している。

バイオマスプラスチック事業では、バイオマスプラスチックの普及に向けた研究開発を引き続き進めている。前述した「ゼコット」は、スーパーエンジニアリングプラスチックでありながらバイオマスを原料とした樹脂であり、ポリ乳酸を用いた環境素材「テラマック」とともに、ユニチカの高い環境意識を象徴した製品としての役割も期待されている。用途開発においては、それぞれの特性をユーザーのニーズと一致させることに注力しており、「ゼコット」の電気、自動車用途への適用に加えて、「テラマック」については、音質の良さから楽器(リコーダー)に採用されるなど、広がりを見せており、その成果を示す例が出てきている。

当事業セグメントに係る研究開発費は1,287百万円である。

(2)機能資材事業セグメント

ガラス繊維事業では、産業資材用途で顧客ニーズに応えた各種のガラスクロス、及びそれら処理加工、複合品の製品開発を進めている。ユーザーから好評価を得ている透明性に優れたガラス繊維強化樹脂シート(ユークリアーシート)の新規商品展開や膜天井材等の不燃認定品の開発にも注力している。電子材料用途においてはプリント配線基板用ICクロスとして、超薄ガラスクロスや特殊ガラス(低熱膨張、低誘電)を使用したクロスの生産技術の革新に取り組んでいる。また、次世代材料としてさらに薄いガラスクロスを望む顧客要求の高まりを受けて、さらに薄い超々薄ガラスクロス(特殊ガラスを含む)などの高機能な製品の開発に力を入れている。

活性炭繊維事業では、液相分野においては、分子サイズの小さい物質から大きな物質の吸着に有効な幅広い細孔構造を持つ、各種活性炭繊維と機能性繊維の複合化により多成分除去が可能な、国内外の規格適合フィルターを日本及び欧米浄水器市場に展開している。また、高寿命、かつ、低圧力損失、耐熱性を有する繊維・粒状ミックスカーボンフィルターを工業プロセス及び医療用途へ拡販を進める。気相分野においては、四大悪臭(アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン)除去用に加え、揮発性有機化合物(VOC)の中でも、特に揮発性が高く、人体への有害性が強い、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドに対する吸着性能を向上した特殊活性炭繊維シートを開発し、自動車用に加え、空気清浄機やマスク等、空気浄化用として、海外展開を進めている。

ガラスビーズ事業では、粒度分布をシャープにコントロールした「高精度ユニビーズ」について、半導体や電気・電子材料分野向けを中心とした新規ユーザー獲得に向け、さらなる技術改良・開発に取り組んでいる。

また、従来製品にはない新規ガラス材料を素材とする球状製品について、ユーザーからのニーズに応えるべく、当事業部のガラス熔解・粉砕・球状化・分級・異形選別などのノウハウを生かした技術開発を進めている。

不織布事業において、スパンボンド分野では、異形断面糸形状である「ディラ」は、特異な繊維構造を実現し、その高通気性からフィルター材、ワイパー材等の用途展開を図り採用に繋がっており、他素材との複合品の開発も行っている。抗アレルゲン・消臭・抗菌等の多機能性を有する新たな用途への展開も進めており、「ユニダイヤ」として販売を実施している。コンクリートの高品質・長寿命化を可能にしたコンクリート湿潤養生シート「アクアパック」を開発し上市している。スパンレース分野では、コットン素材の持つ優位性から国内外の衛材用途を中心に積極的な開発を推し進めており、撥水や抗菌等の機能性や柄付け等の意匠性の開発により採用実績に繋がっている。また、コットンと長繊維不織布との積層品を「コットエース プラス」として、コットンの風合いを活かしつつ長繊維不織布の強度やシール性をうたった積層品として、2021年上期より販売を開始している。

産業繊維事業では、ポリ乳酸紡糸技術による「Material Extrusion方式(熱で融解した造形材料を少しずつ積み重ねていく方式)」に使用される3Dプリンター用フィラメントにおいて、ポリ乳酸製オリジナル、『3Dプリンター用“感温性”フィラメント』、そしてポリ乳酸製の弱点をカバーして造形表現の幅を広げることを実現する易研磨性ポリ乳酸フィラメントも品揃えに加えた。

また、業界で初めて製品化したナイロン6樹脂製の中空糸膜フィルターは、これまでの平膜タイプの同樹脂製フィルターに比べて高流量、かつ、長寿命であり、有機溶剤系での使用にも耐えられることから、半導体や化学分野で使用される薬液に含まれる不純物の除去などの用途で採用が続いている。さらに、孔を微細化した限外濾過膜、ナノ濾過膜の開発に成功し、蒸留等の分離プロセスを膜分離で代替できる省エネルギー技術として実用化開発を進めている。その他、高性能・高機能な膜分離を実現させるため、他素材も含めた研究開発を加速している。

当事業セグメントに係る研究開発費は985百万円である。

(3)繊維事業セグメント

環境対応型高機能繊維の開発に注力している。高機能リサイクルポリエステル繊維シリーズとして、潜在捲縮型繊維「ゼットテン」、20葉断面繊維「セシェ」等を、また、バイオマス繊維シリーズとして、ナイロン11繊維「キャストロン」、ナイロン56繊維「BEAMEX ECO+」等を開発し、市場では大きな注目を浴びている。また、主要グループ企業では「GRS」、「GOTS」等の認証の取得も完了した。

また、ユニチカトレーディング(株)とシキボウ(株)とで、2021年4月に繊維部門における企業間ビジネス連携に合意し、両社の国内外の工場を活用した、ユニークで高機能な商品開発を実施中。

繊研新聞社主催の2023年度繊研合繊賞において、「BEAMEX ECO+」がマテリアル部門賞を、シキボウ(株)との企業間ビジネス連携が特別賞を受賞した。

当事業セグメントに係る研究開発費は32百万円である。