第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)グループ理念体系

<パーパス> It‘s for SMILE ~価値ある商品とサービスで社会を明るく笑顔に~

健康かつ文化的で明るく元気な未来を「It‘s for SMILE」で描きます

<ミッション・ビジョン> 生命関連産業のリーディングカンパニー

「生命関連産業」で5つの分野で既存事業の強化や新規事業を創出します

<バリュー> 思いを守る、明日へつなぐ

祖業の特殊製本を礎に、文字と写真文化と人々の思いも未来につなぐビジネスを推進します

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

①コアコンセプト

「生命関連産業」(注1)のリーディングカンパニーを目指します。

 ポストコロナの時代に求められる具体的なコンセプトとしての「生命関連産業」は、相互扶助、循環、持続可能性といったコンセプトと親和性が高く、ナカバヤシグループが近年循環型社会の実現を目指した木質バイオマス発電事業や、技術の継承と地域雇用の安定を目指す新たなビジネスモデル「製本業と農業の二刀流」の展開、海洋プラスチック問題を始めとした「脱プラ」「廃プラ」課題を解決する紙製品事業「asue(あすえ)」の始動など、社会課題の解決に貢献し得る様々な事業活動を積極的に広げ、持続可能な社会の実現と美しい地球環境の保全のために、SDGsの達成に向けた事業活動・企業活動を目指すという方針につながるものでもあります。

 既存事業の生命関連産業分野とDXの活用、新しい技術、社会のニーズ・ウォンツを組み合わせることで、単なる労働集約型事業とは異なった新商品や新サービス、新規事業を生み出し、生命関連産業を基軸に成長戦略を描いてまいります。

(注1)「生命関連産業」とは、京都大学の広井良典教授が提唱している概念であり、(1)健康・医療(2)環境

(再生可能エネルギーを含む。)(3)生活・福祉(4)農業(5)文化の5つの分野において、日常に根ざした「生活」の豊かさや「幸福」を求める志向に基づく産業を指します。

②中期基本方針

 新・中期経営計画「Go on 5ing」(2025年3月期~2027年3月期)に基づき「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値の向上」を基本方針として、次の『5 go on!』を目標として掲げ、その達成に向けた諸施策をgo on(邁進)して参ります。

1.売上高660億円 営業利益33億円(営業利益率5%)にgo on!

2.社会課題の解決へgo on!

3.DX推進にgo on!

4.サーキュラーエコノミーへgo on!

5.add+venture70で新たな挑戦にgo on!

 

 

③セグメント別事業戦略

 「生命関連産業」の5つの分野(①健康・医療②環境(再生可能エネルギーを含む)③生活・福祉④農業⑤文化)で、既存事業の強化や新規事業への参入に向けた取り組みを進めて参ります。

 モノ消費からコト消費そしてトキ消費へと、人々のニーズとウォンツは消費活動に対して意味づけする時代に移り変わっています。生命関連産業の各分野における社会課題解決とトキ消費の創出を通じて、既存事業に捉われない製品やサービスの創造に取り組んで参ります。既存事業における収益性の改善、積極的なM&Aやアライアンスならびに新規事業への進出で売上高の拡大、営業利益率の向上を実現します。

 生産年齢人口の減少に伴う経済の急激な構造変化に対応するため、トキ消費の創出・生成AIの活用などDX化を積極的に推進することで、新たな企業価値の創造を図り目標達成に努めて参ります。

 また、オフィス環境の改善を見据えた製品や紙のリサイクルビジネスを中心に「オフィスアプライアンス事業」をセグメントの一つとして位置付けて参りました。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、働き方や学び方などのライフスタイルが大きく変化し、タイム・コスト・スペースのパフォーマンス向上が求められるようになりました。このような変化に対応し、新しいライフスタイル適合した製品を提供するために、「オフィスアプライアンス事業」と「コンシューマーコミュニケーション事業」を統合し、より効果的なライフスタイルソリューションを提供していくこととします。この変更に伴い、従来の5つのセグメントは「ビジネスプロセスソリューション事業」「コンシューマーコミュニケーション事業」「エネルギー事業」「その他」という4つのセグメントに再編いたします。

[ビジネスプロセスソリューション事業]

「こまったをよかったに」、BPOの推進で社会課題の解消を目指します。

①DX推進によるアナログとデジタルの融合で生産性の高いBPO、新たなBPO領域を創出します。

②幅広い得意先を有する当社グループのリソースの有効活用、デジタル対応の受注システム構築により紙製別製品(手帳・証書ファイル等)の受注拡大を目指します。

③業界固有の特性に配慮した紙器包材の開発と受注拡大で脱プラ・廃プラを推進します。

④長年培った図書館運用のノウハウを生かし、プロポーザルでの更なる指定管理の受託拡大により地域再生に貢献します。

[コンシューマーコミュニケーション事業]

生活を豊かに、充実させるタイム・コスト・スペース、3つのパフォーマンスをアップさせる製品を提供します。

①教育・学びの場、働く場において快適性・機能性・デザイン性を併せ持つ文具・事務用品、ガジェット関連用品、オフィス用品を提供します。

②防犯・防災・セキュリティ(機密保持)製品の充実を図ります。

③医療・介護の場における製品開発と共にストレス解消・癒しなど健康を切り口にした商品開発をします。

④海外販路の開拓を強化し、筆記を中心にTACCIAブランド、NCLブランドの認知度を拡大させます。

⑤めぐりing、ツーリズム、推し活、インバウンド等、コト消費・トキ消費に対応した新たな商品・サービスを創出します。

⑥様々な社会課題の解決に貢献できる商品を提供していきます。

[エネルギー事業]

木質バイオマス発電を通じてサーキュラーエコノミーの実現と太陽光発電の安定稼働で地球にやさしいエネルギーを創出に取り組んで参ります。

[その他]

製本と農業の二刀流を継続し、スマート農業の実行で安定した雇用の創出と食の供給を促進していきます。

農業の6次産業化に加えICT技術を活用した営農を図ります。

 

④中期財務戦略

 利益率の改善を図るべく、事業構造改革と不採算事業の見直し、グループ管理部門の効率化を図っていくことにより、連結営業利益率5%を目指します。

 また、将来の「資本コスト」の上昇を踏まえ、資本効率の向上とキャッシュ・フローの最適化に取組み、ROICの持続的向上を図って参ります。

 

中期数値目標(連結)                            (単位:百万円・%)

 

2024年3月期

(実績)

2025年3月期

(目標)

2026年3月期

(目標)

2027年3月期

(目標)

売上高

61,043

61,500

63,500

66,000

営業利益

462

1,845

2,540

3,300

営業利益率

0.7

3.0

4.0

5.0

 

(3)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①経営環境

 新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和や海外からの入国制限が解除されたことにより、人の移動量が大幅に増加し、社会経済活動の正常化が進み回復基調にあります。またインバウンド効果もあり景気は緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方、原材料価格の高騰やロシア・ウクライナ情勢の長期化、外国為替相場での円安傾向など、外部環境の変動により景気の先行きは不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く環境は、ライフスタイルや企業活動が大きく変化したこともあり、グループ会社の吸収合併や製品・サービスの改革を遂行しておりますが、引き続き厳しい状況が続いております。

 このような中、当社グループは2023年11月にパーパス「It’s for SMILE ~価値ある商品とサービスで社会を明るく笑顔に~」を制定しました。「人生100年時代」を迎える現代社会において、当社グループが社会課題を一つでも解決することにより、健康かつ文化的で明るく元気な未来を「It’s for SMILE」で描いてまいります。

 また、ミッション・ビジョンである「生命関連産業(注)」のリーディングカンパニーを目指した既存事業の強化や新規事業への参入、そして最終年度を迎えた第3次中期経営計画(2021年4月1日~2024年3月3日)「add+venture 70」(アドベンチャー70)に取り組み、企業価値向上に努めました。

(注)「生命関連産業」とは、京都大学の広井良典教授が提唱している概念

具体的には次の5つの分野(1)健康・医療(2)環境(再生可能エネルギーを含む)(3)生活・福祉(4)農業(5)文化を指します。

②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

〇企業ブランドの確立

 かつては「フエルアルバム」のブランドで消費者の間では認知度が高かった当社ですが、近年のアルバム需要の減少により当社の認知度は以前より低下しております。近年は若年層への認知度向上策として頑張る若者を応援する施策を継続して実施しており、番組スポンサーやイベント協賛だけでなく、SNS等あらゆる媒体を活用し、変革する企業イメージを訴求してまいります。

〇営業利益率の向上

 グループ全体としての事業構造の改革と不採算事業の見直し、幅広い顧客基盤を活かしたBtoBにおける受注活動の強化、DXの推進による効率化により営業利益率の向上を図ってまいります。

〇新規事業の推進

 第3次中期経営計画「add+venture70」の中期基本方針「Main add+venture」で掲げた“企業価値を高める70の新しいこと”は 43 件の挑戦に留まりました。第4次中期経営計画「Go on 5ing」においても目標達成に向けた取り組みの継続と事業化を推し進め、新たに50億円の売上を目指してまいります。

〇財務基盤の強化

 新規事業や既存ビジネスの深掘による売上増加、業務プロセスの見直しや新たな付加価値の提供による利益率改善を図ってまいります。また採算性や収益性、効率性を考慮した固定資産の見直し(投資有価証券・不動産等)を図り、財務基盤を強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、中長期的な企業価値向上の柱として、「健康・医療」「環境」「生活・福祉」「農業」「文化」の5つの領域において生命関連産業のリーディングカンパニーとなることを目指し、次の5つの基本方針をもって持続可能社会の実現を図り、サステナビリティを高めることによるリスクの減少、収益機会の増大を実現します。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

1.あらゆる人権を尊重します。

2.グループで働く人の健康、労働環境、公正・適切な処遇を常に維持向上します。

3.購買先・販売先との公正・適正な取引を維持し、良好な関係性を高めます。

4.自然災害等へのリスク管理体制を整え、内外のリスク低減を図ります。

5.事業活動を通じて、人類の共通課題である地球環境の維持・改善、気候変動問題への取組に挑戦します。

 

 特に気候変動についての取組におけるリスクと収益機会については以下の通りです。

 気候変動による事業に対する財務面での重大な影響は、監査等委員会から取締役会に指摘があった事項のうち、取締役会が「重大」と判断したものについて戦略に織り込んでいます。

 当社において、取締役会に常に出席する管理統括本部長が、リスク管理部門長であり、環境ISO14001マネジメントシステム上の「環境管理責任者」かつ「環境委員会」の委員長でもあります。また管理統括本部長が、環境マネジメントシステムの最高責任者であり、取締役会への報告責任者でもあります。環境管理責任者は、環境マネジメントシステム上の「環境影響評価」の最終承認者であり、環境影響評価においては、当社のあらゆる活動の環境側面をボトムアップ方式で抽出し、その抽出された環境側面に対するリスクと機会両面の影響を認識評価しています。環境影響評価は、年1回の頻度で年度末(3月末)に実施され、その評価結果に基づき翌年度の環境に係わる重点活動が決定、実施されます。その過程で重要事項は環境管理責任者を通じて取締役会に報告される組織構造(仕組み)であり、また、環境ISOマネジメントシステムについては、年1度の頻度で外部審査を受けており、その結果も環境管理責任者に直接に報告、伝達され、この審査結果も環境管理責任者を通じて取締役会に報告される組織構造(仕組み)となっています。

 なお、上記プロセスにおいて対象とする時間軸は限定しておらず、短期・中期・長期全てが対象、かつ「定常時」「非定常時」「緊急時」の視点でもリスクと機会は検討評価されています。

 

(1)ガバナンス

取締役会による気候変動対応の監視体制は、下記のとおりです。

(a) 取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象 、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、環境課題に関する具体的な取り組み施策について、「経営会議」で協議・決議します。また、半期に一度開催される「サステナビリティ委員会」において、「経営会議」で協議・決議された環境課題への対応方針等を共有し、当社グループの環境課題 に対する実行計画の策定と進捗モニタリングを行ってまいります。 取締役会は、「経営会議」および「サステナビリティ委員会」で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループの環境課題への対応方針および実行計画等についての論議・監督を行ってまいります。

(b) 経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法について代表取締役社長は、「経営会議」の長を担うと同時に、直轄の諮問委員会である「サステナビリティ委員会」の委員長も担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。「経営会議」および「サステナビリティ委員会」 で協議・決議された内容は、最終的に取締役会へ報告を行います。

 

(2)リスク管理

リスク管理につきましては、下記のとおりです。

(a) 気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法については、「グループ連結売上高の5%以上の影響がある場合」を財務面での重大な影響と定義することとし、適切に対応することで、持続的な成長につながると考えております。環境課題に係るリスクについて、「サステナビリティ委員会」の中でより詳細に検討を行い、各事業子会社と共有化を図ってまいります。各事業子会社では、気候変動の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業子会社社長を長とする会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行ってまいります。その内容について、「経営会議」や「サステナビリティ委員会」において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っていきます。

 

(b) 全社リスク管理の仕組みへの統合状況については、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、「内部統制推進室」が行います。「内部統制推進室」では、外部環境分析をもとに、環境課題に係るリスクを含めた企業リスクを識別・評価し、優先的に対応すべき企業リスクの絞り込みを行い、進捗のモニタリングを行ってまいります。「内部統制推進室」で論議・承認された内容は、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応してまいります。

 

(3)指標と目標

(a) グループGHG(温室効果ガス)排出量を前年比3%削減させていきます。

 

■GHG(温室効果ガス)排出量の推移                   単位:t-CO2

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

Scope1

5,869

5,273

5,383

Scope2

12,200

11,239

10,111

合 計

18,069

16,512

15,495

※ Scope2は、マーケット基準での算定値です。

 

(b) CDPスコア 目標値 2027年3月期「C」

実績値 2023年3月期「C」・2024年3月期「D」

 

 次に人的資本に対する取組みについては以下の通りです。

『当社グループの目指すべき人材像』

・環境の変化に対応すべく、常に自らの強みや専門性に磨きをかけ続け、こだわりをもって顧客や関係者に高い付加価値を提供できる人物

・オーナー意識をもってチャレンジし、失敗を恐れずに思い切った新しい価値を適切な方法で提供できる人物

・決して受動的にならず、自らが率先して動き、手本を示すことで周囲に良い影響を与えることができる人物

・仕事はチーム一体となって行うことを自覚し、周囲を巻き込み調和を図りながら、高い成果を出すために決断し、メンバーを牽引できる人物

 

 

『人的資本の取組みについて』

 

 

『As-is』人財・コスト

『To-Be』人財・投資

目指す姿

進捗

(2024年3月)

 

 

ダイバー

シティ&

インクルー

ジョン

・リモートワークの定着

・時間有給等、ライフスタイルに合わせた休暇取得

・戦略的中途採用の強化

・他社人材の受け入れ

・褒める・認め合う表彰制度の実施

中途採用管理職比率

2027年3月期 40

中途採用管理職

比率 36.0

女性活躍推進

・女性管理職比率7.5%

・女性リーダー層情報交換会の実施

・女性外部交流機会の創出

・Womans Councilの組成

女性管理職比率

2025年3月期10

(注1)

女性管理職比率

・旧制度基準9.0%

・新制度基準2.0

LGBTQ

・全社的LGBTQの指針はない

・バリアフリートイレの整備

・LGBTQ教育・指針の作成

2025年3月期指針公開

全社員研修実施

指針策定中

人事制度改革

・年功色の強い制度

・協業姿勢は強化しながら、個々の頑張りに対し報われる体系

2023年4月開始済で

To-Beへ早期定着化

新制度1年経過

若手抜擢人事として33歳課長誕生

人財育成

・新入社員・選抜型研修

・選択型オンライン研修

・業務経験の幅は狭い

・外部機関出向研修の実施

・早期経営人材の選抜・育成

・関係会社出向含む異動

・DX教育の推進

20代異動経験率

2028年3月期 50

20代異動経験率13.2

戦略思考の

人事運営

・人事運営の硬直化

・部分最適は可だが全体最適は課題

・人事運営の流動化

・人財ポートフォリオ戦略

・重点組織への再配置

カンパニー間異動

5年間60

カンパニー間異動

初年度11

 

 

エンゲージ

メントと

Well-beingの向上

・エンゲージメント調査は未実施

・エンゲージメント調査の実施

・男性育休取得

男性育休取得

2年後100

・エンゲージメント調査実施(総合点60.9)

・男性育休取得率100%(注2)

健康経営

・若手相談窓口の設置

・平均時間外労働時間

月間平均10時間

・全社員向けよろず相談窓口の設置

・残業を前提としない働き方

平均時間外労働時間

月間平均5時間

平均時間外労働時間

月間平均7時間

(注1)2023年4月より新人事制度を開始。管理職の基準を課長補佐以上から課長以上に1職位引き上げたことにより比率に影響が出ました。

(注2)男性育休取得率は育児目的休暇も含めています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境に関するリスク

①デジタル化、ペーパーレス化進行によるリスク

 デジタル化、ペーパーレス化が年々進行していることから、図書製本や法人向け手帳などの市場が縮小しており、当社グループ連結業績において、さらに影響を及ぼす可能性があります。一方で公共図書館の指定管理など図書館業務の受託に注力してまいります。また近年「脱プラ」「廃プラ」が注目されており、プラスチックに代わる素材として「紙」の需要が高まってきており、こうした環境配慮型製品の開発・販売に取り組みます。

②少子化に関するリスク

 国内では少子化が続いており、ノートなどのステーショナリー関連製品やチャイルドシートなどにおいて、当社グループ連結業績にさらに影響を及ぼす可能性があります。

③国際情勢に関するリスク

 貿易相手国の法規制や経済情勢の変化等により商品調達に支障をきたす場合は、当社グループの連結業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)市況変動に関するリスク

①為替変動リスク

 当社グループは、一部の商品については輸入に依存しているため、為替レートの変動が当社グループの連結業績に影響を及ぼす可能性があります。先物為替予約などによりリスク回避を行っておりますが、すべてのリスクを回避することはできません。

②原材料価格の高騰リスク

 当社グループの製品の主な原材料は、原紙・樹脂等であります。原材料は国内外メーカーから調達しておりますが、原油価格が高騰し原材料の価格が上昇した場合は、当社グループの連結業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、ビジネスソリューション事業(データプリントサービス等)やネット通販事業において、顧客の個人情報を取り扱っております。プライバシーマークを取得し、顧客情報の管理には十分留意しておりますが、サイバー攻撃等による情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い、法的罰則等により、当社グループの連結業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)製造物責任に関するリスク

 当社グループは、定められた品質管理基準に従って、各種の製品を製造しております。製品単位ごとに品質チェックを実施し、欠陥が生じないようにするための体制を構築しておりますが、それにもかかわらず何らかの欠陥が生じた場合は、顧客の信頼の喪失、賠償金の支払い等が発生する可能性があります。製造物責任についての保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を補填できるという保証はなく、当社グループの連結業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)災害等に関するリスク

 当社グループは、すべての設備について定期的な点検を実施しておりますが、台風、地震などの自然災害、火災・停電などの事故が発生した場合、生産が中断することを防止できる保証はありません。当社グループの生産設備は国内外に点在しておりますが、これらの所在地において大規模な災害が発生した場合は、当社グループの生産能力が著しく低下し、改修に多額の費用が発生する可能性があります。災害等に備え保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する損害額を補填できるという保証はなく、当社連結業績に影響を及ぼす可能性があります。

 こうしたことから、影響額を最小限にとどめるべく当社グループはBCPの観点からBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業の生産拠点を各地に分散しており、またデータセンターの活用など災害に備えた対応を行っております。

 

(6)コンプライアンスに関するリスク

 当社グループは、グループ倫理規範やコンプライアンス・マニュアルを制定し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めております。当社は過去、日本年金機構の入札に関して公正取引委員会より排除措置命令及び課徴金納付命令を受け、また日本年金機構より「不正行為に係る損害賠償請求の方針について」と題する文書等により通知を受け、日本年金機構からの請求額を支払いました。

 当社では命令を受けた事実を厳粛に受け止め、引き続き従業員教育の徹底などを通じて、コンプライアンス体制の一層の強化に努めてまいります。

 

(7)関係会社に関するリスク

 当社グループは、経営資源を有効活用し収益基盤の多様化を進めるため、グループのシナジーを発揮し企業価値向上に取り組んでおります。しかしながら、関係会社各社の業績が著しく悪化し、将来にわたって事業が計画どおりに展開しないと判断された場合又は株式の時価が下落した場合には、関係会社株式の減損処理の必要に迫られます。その場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)固定資産の減損に関するリスク

 当社グループは、保有する固定資産について、固定資産の時価が著しく下落した場合や収益性が低下した場合には減損損失が発生し、当社グループの連結業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(9)繰延税金資産に関するリスク

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しております。しかしながら、今後将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しが発生し、当社グループの連結業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(10)気候変動に関するリスク

 気候変動については、当社の主要商品類の一つが紙製品であることから重要なリスク要因として認識しており、TCFDの枠組みに沿った対応を進めております。

 原材料に関しては気候変動の影響を直接的に受けることが予測され、調達方法等を常に見直しをしております。温室効果ガス(GHG)に関してはその排出量を把握し、HPにおいて開示しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化が進み、インバウンド効果もあり景気は緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方、原材料価格の高騰やロシア・ウクライナ情勢の長期化、外国為替相場での円安傾向など、外部環境の変動により景気の先行きは不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く環境は、ライフスタイルや企業活動が大きく変化したこともあり、グループ会社の吸収合併や製品・サービスの改革を遂行しておりますが、引き続き厳しい状況が続いております。

 このような中、当社グループは2023年11月にパーパス「It’s for SMILE ~価値ある商品とサービスで社会を明るく笑顔に~」を制定しました。「人生100年時代」を迎える現代社会において、当社グループが社会課題を一つでも解決することにより、健康かつ文化的で明るく元気な未来を「It’s for SMILE」で描いてまいります。

 また、ミッション・ビジョンである「生命関連産業(注)」のリーディングカンパニーを目指した既存事業の強化や新規事業への参入、そして最終年度を迎えた第3次中期経営計画(2021年4月1日~2024年3月31日)「add+venture 70」(アドベンチャー70)に取り組み、企業価値向上に努めました。

 (注)「生命関連産業」とは、京都大学の広井良典教授が提唱している概念

具体的には次の5つの分野(1)健康・医療(2)環境(再生可能エネルギーを含む)(3)生活・福祉(4)農業(5)文化を指します。

 

 当社グループにおける当連結会計年度の売上高は610億43百万円となりました。円安や原材料価格が高騰する中、原価低減と経費削減に努め、営業利益は4億62百万円、経常利益は10億3百万円となりました。また、特別利益は投資有価証券売却益4億78百万円と固定資産売却益2億47百万円で7億25百万円を計上し、特別損失は減損損失1億44百万円など合計で1億66百万円計上いたしました。

 この結果、親会社株主に帰属する当期利益は8億76百万円となりました。

 

当連結会計年度における当社グループの経営成績は以下のとおりであります。

売上高              610億43百万円  (前期比0.9%減)

営業利益             4億62百万円  (前期比1.4%増)

経常利益             10億3百万円  (前期比6.9%増)

親会社株主に帰属する当期純利益  8億76百万円  (前期親会社株主に帰属する

当期純損失6億66百万円)

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

[ビジネスプロセスソリューション事業]

 図書館ソリューション業務は公共図書館からのカウンター業務等アウトソーシング業務の受注が順調に推移しました。またDPS(データプリントサービス)も官公庁からの入札案件の再獲得や企業活動の活発化により各種印刷発送業務が引き続き好調に推移しました。一方、子会社である日本通信紙株式会社は、自治体からBPO業務(マイナポイントや各種交付金業務)の受注が競争激化により低調に推移しました。引き続き、製造部門の合理化、営業部門の効率化を推進しグループシナジーを高めて、人材不足、働き方改革など社会を取り巻くビジネス環境をトータルにサポートする『BPO総合支援サービス』の展開に努めます。

紙器包材等パッケージ分野においては、生活用品向けの受注が順調に推移しました。また、シール・ラベル業務を展開する株式会社八光社は、エンタメ・アミューズメント業界向けの売上が好調に推移しました。

この結果、当事業の売上高は311億88百万円(前期比0.2%増)、営業利益は5億60百万円(前期比19.0%減)となりました。

 

[コンシューマーコミュニケーション事業]

 市販製品のOEM受注や事務用品は好調に推移しました。PC、スマホ・タブレット関連製品は引き続き新製品の投入に努めました。また、2024年1月1日付で当社の連結子会社である株式会社ミヨシおよびリーベックス株式会社を、更に2024年3月31日付でリーマン株式会社を吸収合併しました。製品ラインアップの見直しと開発スピードを加速し、新製品投入を図りシナジーを高めました。

一方、企業におけるペーパーレス化の流れやGIGAスクール構想の浸透で文具事務用品の売上は減少しました。新たなツーリズム支援施策として取り組みを始めためぐりingビジネスは、全国旅行支援や外国人観光客の回復に伴い、御朱印帳や御城印帳、テーマパークや土産店向けの売上が引き続き増加しました。

ベッド等のEC事業を展開する株式会社ビックスリーは、巣ごもり需要の反動および原材料価格の高騰や円安が重なり低調な結果となりました。

この結果、当事業の売上高は203億48百万円(前期比5.6%減)、営業損失は2億74百万円(前期営業損失2億43百万円)となりました。

[オフィスアプライアンス事業]

シュレッダ事業は、社会経済活動の正常化に伴い中小型オフィスシュレッダやHDD・SSD等メディア破砕機の売上、保守点検業務の受注が好調に推移しました。また、オフィス家具のEC事業を展開するカグクロ株式会社は、オフィスへの出社回帰の動きにより売上が伸長、値上効果もあり増益となりました。

この結果、当事業の売上高は79億65百万円(前期比7.7%増)、営業利益は4億80百万円(前期比90.5%増)となりました。

[エネルギー事業]

木質バイオマス発電は、2023年5月に実施した法定点検の影響により稼働日の減少、またチップの在庫状況を考慮した出力の調整を実施した関係もあり営業利益が減少しております。太陽光発電は順調に推移しました。

この結果、当事業の売上高は14億71百万円(前期比2.6%増)、営業利益は34百万円(前期比27.8%減)となりました。

[その他]

野菜プラント事業及びにんにくファーム事業等であり、売上高は69百万円(前期比47.9%増)、営業損失は44百万円(前期営業損失29百万円)となりました。

 

財政状態の分析は、次のとおりであります。

[資産]

流動資産は、前連結会計年度末に比べて1億80百万円増加し、300億73百万円となりました。これは受取手形及び売掛金が8億1百万円、商品及び製品が1億60百万円それぞれ増加しましたが、現金及び預金が6億57百万円減少したことなどによります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて82百万円増加し、278億92百万円となりました。これは退職給付に係る資産が8億77百万円、建物及び構築物が3億45百万円それぞれ増加しましたが、繰延税金資産が3億77百万円、土地が3億68百万円それぞれ減少したことなどによります。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて2億62百万円増加し、579億65百万円となりました。

[負債]

流動負債は、前連結会計年度末に比べて2億8百万円減少し、176億67百万円となりました。これは短期借入金が1億52百万円減少したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて7億67百万円減少し、121億78百万円となりました。これは長期借入金が6億11百万円、退職給付に係る負債が3億2百万円それぞれ減少したことなどによります。

この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて9億75百万円減少し、298億46百万円となりました。

[純資産]

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて12億38百万円増加し、281億19百万円となりました。これは退職給付に係る調整累計額が6億87百万円、利益剰余金が2億73百万円それぞれ増加したことなどによります。

この結果、自己資本比率は47.3%となり、前連結会計年度末に比べて1.9ポイント上昇いたしました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(1)キャッシュ・フロー及び流動性の状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、13億28百万円の収入(前期87百万円の支出)となりました。主な内訳として、収入については、減価償却費16億80百万円、税金等調整前当期純利益15億62百万円、支出については、売上債権の増加額9億59百万円、投資有価証券売却損益4億74百万円であります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、11億29百万円の支出(前期比2億4百万円支出減)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出16億69百万円であります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、14億19百万円の支出(前期10億74百万円の収入)となりました。主な内訳として、収入については、長期借入れによる収入48億90百万円、支出については、長期借入金の返済による支出51億43百万円、配当金の支払額6億1百万円であります。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は前連結会計年度末より11億83百万円減少し、66億87百万円となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの配分と資本政策

営業キャッシュ・フローの配分については財務基盤の確立を目指しつつ、企業価値向上に資する投資を積極的に行うとともに、株主還元に配慮した適正配分に努めてまいります。

事業への配分については営業キャッシュ・フローの2/3を成長戦略資金として充当し、紙器包装事業、BPO事業など収益力の高い事業や生命関連産業の分野における社会課題の解決に向けた新規事業、M&Aやアライアンスによる投資を安定的かつ継続的に実施してまいります。

株主還元については安定的な配当の維持並びに経営基盤の強化と今後の事業展開を勘案した上で、この両者をバランスよく回転させることを基本方針としております。連結配当性向は30%~40%を維持してまいります。

 

(3)資金調達の方針

資金調達については、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の安全性維持を基本方針としており、主として銀行、生保からの短期及び長期借入金により資金調達を行っております。子会社については原則として外部からの資金調達は行わず、グループファイナンスを活用し、資金調達の一元化により資金の効率化及び流動性の確保を図っています。また事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応を図るため十分な現金同等物を保有しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

ビジネスプロセスソリューション事業

25,410

100.8

コンシューマーコミュニケーション事業

4,939

87.9

オフィスアプライアンス事業

2,043

91.4

エネルギー事業

1,470

102.5

その他

65

93.7

合計

33,930

98.2

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 なお、受注生産を行っている事業はビジネスプロセスソリューション事業であり、主なものは図書製本、法人向け手帳、データプリントサービス等であります。一方、コンシューマーコミュニケーション事業、オフィスアプライアンス事業、エネルギー事業及びその他は、見込み生産であり、受注生産の割合が僅少である事業、または、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まない事業のため、記載は省略しております。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

ビジネスプロセスソリューション事業

29,693

98.8

2,662

112.9

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

ビジネスプロセスソリューション事業

31,188

100.2

コンシューマーコミュニケーション事業

20,348

94.4

オフィスアプライアンス事業

7,965

107.7

エネルギー事業

1,471

102.6

その他

69

147.9

合計

61,043

99.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度における相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満の相手先のみであるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 原材料価格の高騰やロシア・ウクライナ情勢の長期化、外国為替相場での円安傾向など、外部環境の変動により景気の先行きは不透明な状況が続いております。また当社グループを取り巻く環境は、ライフスタイルや企業活動が大きく変化したこともあり、製品やサービスの改革を遂行しておりますが、引き続き厳しい状況が続いております。

 一方、社会経済活動の正常化もあり、市販製品のOEM受注は増加傾向にあります。またオフィスへの出社回帰の動きからオフィス家具の売上も増加しております。

 なお、連結財務諸表作成時点において入手可能な情報に基づいた最善の見積りを行っているものの、為替変動は不確定要素が多く、今後の経済環境への影響が大きく変化した場合には、最善の見積りを行った結果として見積もられた金額と事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。

 連結財務諸表作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

・固定資産の減損処理

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変化が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

・繰延税金資産

繰延税金資産は入手可能な証拠に基づいて将来の回収可能性を十分に検討し回収可能な額を計上しております。繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上いたします。同様に計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。

・退職給付費用

確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき見積もっております。数理計算上の基礎率や計算方法は適切であると考えておりますが、基礎率の変動が確定給付費用及び確定給付制度債務に重要な影響を及ぼします。

なお、当社及び一部の連結子会社の割引率は高格付けの社債の利回りに基づき決定しております。

・関係会社株式

市場価格のない関係会社株式について、関係会社に財政状態の悪化により、実質価額が著しく低下したときは、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合を除いて、評価損を認識しております。

② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

19ページ 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]

(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況をご参照ください。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

21ページ 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]

(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況をご参照ください。

④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況

当社グループは2022年3月期から2024年3月期までの中期経営計画「add+venture 70」(アドベンチャー70)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値の向上」を基本方針とし、「Main add+venture」を目標として掲げ、その達成に向けた諸施策を実施してまいりました。

その達成状況については次のとおりです。

 

(1)基本方針の達成状況

〇「収益力の強化」

更なる認知度向上と企業ブランドを確立するために、夢に向かって頑張る人たちを応援するアニメーションミュージックビデオをYouTube上で配信。ラジオ番組のスポンサーや音楽フェスにも協賛しました。全世代向け認知度向上策としてスポーツイベントへの協賛やWeb動画プロジェクトを立ち上げ、製品紹介動画等を作成し、展開してまいりました。

また付加価値の高い製品やサービスの開発を継続して取り組んでおり、「紙器・紙製包材事業」では2021年5月に株式会社広田紙工を子会社化し、asue(あすえ)ビジネスやお客さまの要望にあったオリジナルパッケージの取り組み強化により粗利益率の改善に取り組んでいます。また精神的な健康に繋がる癒し提供するぬいぐるみビジネスでは2021年7月に㈱サンレモンを子会社化しました。

グループ再編やシナジー創出については、2022年3月に国際チャート㈱を株式交換により完全子会社化しました。また2023年2月に日本通信紙㈱の株式を追加取得し、完全子会社化しました。

グループの再編やシナジー創出を目的に、2024年1月に㈱ミヨシ・リーベックス㈱をナカバヤシ㈱に吸収合併、不採算事業見直しの一環として2024年3月にリーマン株式会社を吸収合併しました。

〇「成長力の推進」

生命関連産業の強化として、心の癒し・健康につながる新たな製品カテゴリーとしてのぬいぐるみビジネスへの参入。新規事業の創造として寺社仏閣、アニメ、鉄道、登山など様々な“巡り”にかかわる総合的な企画・提案をする「めぐりingビジネス」に取り組みました。また2023年4月より新人事制度が始まり、社員の能力を最大限発揮できる環境を作っていくことにより、組織の成長を促しております。

〇「株主価値の向上」

財務基盤の強化、機動的な資本政策の一環として、関係会社の統廃合を進めてきました。2024年1月に㈱ミヨシとリーベックス㈱をナカバヤシ㈱に統合、2024年3月にリーマン㈱をナカバヤシ㈱に統合いたしました。また採算性・効率性を考慮した固定資産の見直しの観点から、2024年3月に西が丘社宅を売却しました。

 

(2)中期基本方針「Main add+venture」の達成状況

①3年間で企業価値を高める70の新しいことに挑戦

[DX推進チームの立ち上げ(DXによる売上創出)]

・当社で開発したWeb展示会などで使用するECサイトソフトウエアの企画・販売

・別製品対応受注システムの開発

・PT MIRAI INTERNASIONAL INDONESIA(システム開発子会社)の活用

・一般品対応Web受注システムの開発

[紙器包材事業の拡充・拡大]

・食品向けバリア包装材の製造・販売(コーヒー豆パッケージ、青果物・食品パッケージ他)

・食品向け紙製一次包装箱の製造・販売

・新素材カトラリーの開発

・紙器包材、BtoB向けECサイトのOPEN

・紙製中子の開発

・スキンケア用、紙製詰め替え袋の開発

[文化]

・インバウンド・旅行者向け総合サービス「めぐりingビジネス」御朱印・御城印

・刃物ビジネスの検討

[農業]

・松江バイオマス発電の有効活用(陸上養殖)

・苗木の生産と販売

・コーヒー抽出後残渣を堆肥化、にんにく圃場で利用

・反収向上(五条植→六条植) M/Lサイズの収穫比率向上

[生活・福祉]

・カメレオンコードを活用した“図書館システム”の開発

・使用済み紙おむつパック機の開発及びビジネスモデルの構築

・洋菓子店リニューアル・ネット販売本格開始

・IBT試験・Web講習の需要拡大に向け、受験者の本人認証システムと不正防止監視システム(替え玉受験・カンニング・中抜け受講等)の開発完了・運用開始

・AR(拡張現実)を実装した卒業アルバムや同人誌および印刷物

・日本製筆記具や高級紙製品などの商品開発、販売

・文字魂プロジェクトの事業化

・Webサイト自動翻訳クラウドサービス「Myサイト翻訳」販売

・ステンレスやアルミ加工の設備を松江工場に導入(スチール加工から他金属加工への展開)

・ステンレス・アルミ等を活用したアウトドア製品の開発・製造

・アウトドアブランドの立ち上げ

・医療従事者向けメディカル製品の開発

・介護施設向け用品の開発

・介護施設のBPOの創出

・調剤薬局のBPO

・要介護者向けサービスの検討

・定年を見据えたビジネスモデルの創出

・アクリルパネルのリサイクルやアップサイクル

・GIGAスクール向け デジタル文具(USB Type C製品)の拡充

・スマホ破砕機(データ処分)の開発→レアメタルの回収

・船舶用調光ガラス

・調光アクリルパネル

・通販事業者向け送り状発行システムの構築

・副教科の教材販売

[環境]

・布製品、破砕機の開発

・紙以外の裁断機の開発販売(HDD、SDDの破砕機等)

・野球グラブの残革を利用したアップサイクル商品の企画・販売

②2024年3月期の売上高650億円、経常利益率4.6%               (単位:百万円・%)

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

 

(計画)

(実績)

(計画)

(実績)

(計画)

(実績)

売上高

65,000

63,118

62,000

61,581

65,000

61,043

経常利益率

4.8

3.7

3.2

1.5

4.6

1.6

③2024年3月期ROE8.0%

 

2024年3月期

ROE

3.3

④配当性向30%~40%の堅持

 

2024年3月期

配当性向

68.8

⑤新しい人事評価制度を確立することによる多様な働き方の更なる高度化

●新人事制度の趣旨

・会社が社員それぞれに「期待する成長の方向性」を示す

・現状に甘んじるのではなく、「高い目標に挑戦する(add+venture)社員」に報いる

・上記を達成するため、評価の「納得感」・「透明性」を高める

・社員男女比率の変化や生産性人口の減少、労働環境変化を見据えた制度設計

●新人事制度改定のポイント

・「期待する成長の方向性」の明確化 → 等級定義表に基づく、レベル別評価基準を設定

・誰でも役職者制度の廃止 → 組織に必要な役職者数を適正化し、相応の役割と処遇を付与

・時代に即した報酬制度に変更 → 年齢給を廃止し、年功による賃金体系を見直し

属人給から仕事給へ、各種手当の見直し

⑥ニューノーマルに対応した事業展開とDXを用いたバックオフィスの効率化

●管理部門

管理統括本部「3年後紙ゼロ」宣言

ワークフロー、各種社内資料を見直し、DXで3年後に管理に関する紙をゼロに

[実績]稟議書、労働契約書、情報収集共有伝達方法のデジタル化~社内ポータルサイト「えぬぽ」構築、タレントマネジメントシステム、勤怠入力のモバイル化、人事考課のWEB化、

安否確認システム導入、ストレスチェックの電子化、経費精算システムの完全WEB化

●営業部門

[実績]医療NAVI→医療施設からの受発注業務のDX化、物流管理システムの構築

⑦積極的な社会活動の推進

●ナカバヤシ株式会社

・「ナカバヤシのSDGsへの取り組み(製本と農業の二刀流)」の説明

フードロス削減を目的に規格外にんにくを使用した加工品作り体験

・ノートなど出雲工場で製造した学用品を寄贈

・カーボンニュートラル推進→株式会社田部とオフセット・クレジット(J-VER)の売買契約を締結

・地域の子供たちへの学習支援として各地の非営利団体へ東京2020商品を寄付

・名古屋デザイン&テクノロジー専門学校と共同で産学連携プロジェクトを実施

10~20代女性をターゲットにした「大切な誰かのため」にアルバムをつくってあげたくなるプロモーション戦略の考案

・中学生・高校生を対象としたキャリア学習支援(累計10校)

・被災地への段ボール製品の寄付

●兵庫工場

・「目的意識を持った行動の重要性について」特別講演

・養父市内の企業学習として工場見学

・「企業が取り組む農業」というテーマで本業と農業の二刀流によるにんにくの産地化PJの推進などを説明

・養父市内の小学校で食育授業を実施

●島根ナカバヤシ株式会社

・手帳生産工程の工場見学・平田工場

●リーマン株式会社

・「物づくりについて」のチャイルドシート啓蒙活動

・コロナ禍でのオンライン学習の補助としてノートを寄贈

●日本通信紙株式会社

・印西BPOセンター 受給電力30%を再生エネルギーに変更

CO2削減に貢献

・石岡工場に太陽光パネル設置

●国際チャート株式会社

・太陽光パネル設置

●株式会社松本コロタイプ光芸社

・DTPの制作現場の工程について会社見学

●松江バイオマス発電株式会社

・バイオマス発電のしくみについて工場見学

・発電所内容、「働くこと」をテーマとした講演授業

●株式会社サンレモン

・売り上げの一部寄付

・ぬいぐるみ寄付

・サポーター支援(上野動物園)

●株式会社八光社

・地域イベント向けシール、ステッカーを寄贈

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、独創的な製品の開発、生産技術の開発を主として積極的な活動を行っております。当連結会計年度における研究開発費は121百万円となりました。

 ビジネスプロセスソリューション事業においては、重箱組立2号機を開発いたしました。

 このビジネスプロセスソリューション事業に係る当連結会計年度の研究開発費は27百万円となりました。

 コンシューマーコミュニケーション事業においては、ご朱印帳仕上げ2号機を開発いたしました。

 このコンシューマーコミュニケーション事業に係る当連結会計年度の研究開発費は50百万円となりました。

 オフィスアプライアンス事業においては、主に製造子会社が様々なシュレッダの開発・製品化に取り組んでおります。

 このオフィスアプライアンス事業に係る当連結会計年度の研究開発費は43百万円となりました。