第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、自己開発、商品開発、市場開発の「三つの開発」を企業理念とし、ニッチ市場といわれる事業分野で高い市場占有率を維持し、基幹となる3つの分野で事業をバランスよく展開し、各々の収益力を高め、総体として会社の業績の伸長をはかってまいります。

このような事業活動を通じて常に新しいニーズの創造・発掘に取り組み、会社の発展を通じて、株主、取引先、従業員など関係各位の信頼と期待に応え、社会に貢献していくことを経営の基本方針にしております。

当基本方針に基づき設定しました、当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)は以下のとおりであります。当該KPIを採用した理由は、投資家が当社グループの経営方針・経営戦略等を理解する上で重要な指標であり、また、収益力の向上を測定することが可能な指標であり、経営方針・経営戦略等の進捗状況や、実現可能性の評価等を行うことが可能となるためであります。

① 売上総利益率35%以上を目指します。

② 経常利益率15%以上を目指します。

③ 利益額の伸長により、ROE(自己資本利益率)10%以上を目指します。

(注)上記KPIについては有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな回復基調が続いておりますが、物価上昇や海外経済の減速による影響により、先行きは不透明であります。

このような状況の中、当社グループは、高付加価値製品の開発に取り組み、国内及び海外における営業活動により市場拡大に努めてまいりました。

このような状況下、当社グループといたしましては、下記に記載する「中長期経営方針」及び「重点課題」に掲げる事項を対処すべき課題と捉え、企業価値向上に向け邁進しております。

① 中長期経営方針

 「成長路線の創造」

自己開発、商品開発、市場開発の「三つの開発」を企業理念とし、ニッチ市場といわれる事業分野で高い市場占有率を維持し、基幹となる三つの分野で四つの事業を展開する事を基本とし、世界に通用する製品、技術、サービスを創造駆使し、グローバルに社会課題を解決し持続可能な社会の実現に貢献して、更なる成長をはかります。

② 重点課題

 a.隣接分野、新地域への参入によりプラスアルファ売上を創造します。

 b.電子部品業界等において、先端半導体用めっき液等の付加価値の高い製品を市場投入し、市場を拡大していくことにより、高付加価値製品の売上及び売上総利益の増加をはかります。

 c.カーディーラーにおいて、エアコンクリーナーの更なる拡販に加え、新製品を導入・拡販することにより、市場拡大をはかります。

 d.第5の事業の柱として、導電性銅ナノインク等金属ナノ粒子の新規電子材料の事業化を加速し、先端電子材料市場への参入、市場拡大をはかります。

 e.中国現地法人、台湾支店、その他海外拠点の機能を高め、事業のグローバル化をはかります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

サステナビリティに関する考え方

当社グループは、経営理念の「三つの開発」と社是に則り、公正かつ自由な競争の下、社会に有用な付加価値および雇用の創出と自律的で責任ある行動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目的として、「行動憲章」を制定し、関係法令、国際ルールおよびその精神を遵守しつつ、高い倫理観をもって社会的責任を果たすことに努めております。

行動憲章では、次の10の原則を定めております。

 1.持続可能な経済成長と豊かな未来への貢献

 2.法令順守と公正な事業慣行

 3.人権の尊重

 4.顧客満足と信頼の追求

 5.社員への取り組み

 6.環境問題への取り組み

 7.社会参画と発展への貢献

 8.危機管理の徹底

 9.公正な情報開示、ステークホルダーとの建設的対話

 10.経営トップの役割と本憲章の徹底

行動憲章は当社の本業を基軸とした取り組み・実践であり、「表面の機能を創造する」ことを社会的使命とし、界面化学の技術をコアとして、長期的な視野に立ち、社会に有用な価値を創造・提供し、持続可能な経済成長と豊かな未来に貢献することであります。

経営理念、社是そして行動憲章に基づき、取締役会は中期・年度経営計画を制定し、3か年の基本方針、経営指標・売上・利益目標、重点課題等を策定しております。それら中期・年度経営計画に基づき、各部門は部門の中期・年度部門計画を策定し、その達成に向けて取り組んでおります。

気候変動課題も経営課題の一つとして捉え、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の情報開示の枠組みを活用し、気候変動課題についての考え方や取り組みについて情報開示しております

 

(1)気候変動

①ガバナンス

当社は行動憲章に基づく取り組みによって、ステークホルダーの期待やニーズに応え、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。

サステナビリティ経営の推進にあたっては、業務執行取締役が全員出席する経営会議においてサステナビリティ関連の課題などを協議し、目標を策定します。その一環として営業本部長、開発本部長、生産本部長、管理本部長の協議により、当社を取り巻く気候変動のリスクと機会を抽出し、リスク顕在化時期と事業への影響度を考慮の上で、優先課題とその対策案を検討し、経営会議で協議・検討しております。取締役会は経営会議で協議・検討された取り組みについて報告を受け、その監督を行うと同時に、事業戦略や方針を審議・決定しております。

 


 

②戦略

環境問題への取り組みとして、持続可能な社会の実現に寄与するため、環境に配慮した企業活動を行い、地球環境保全に貢献することを行動憲章に掲げております。

中でも気候変動については、物理的リスク・移行リスクと機会を抽出し、以下のプロセスでリスクの評価と管理を行っております。

・リスク識別・評価のプロセス

各シナリオ(1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオ)に基づいて、当社事業に影響を与えうるすべてのリスクと機会を抽出し、事業活動への影響度、顕在化時期を評価します。

・リスク管理のプロセス

上記で評価されたリスクと機会のうち重要度の高い項目については、具体的な課題に落とし込んだ上で対策を協議し、該当する部門で課題解決に取り組みます。

 

影響評価プロセス


 

 

当社に関わる気候変動のリスク・機会について、下記を認識しております。

リスク・機会の種類

顕在化

時期

事業への

影響度

移行リスク

(1.5~2℃シナリオで最も顕在化すると想定)

政策・法規制

リスク

GHG排出削減目標達成に向けたコスト上昇

中期

規制により製品の製造や販売が制限ないし禁止される

長期

炭素税導入によるエネルギーコスト増加

中期

規制による一部素材の価格上昇や調達の困難化

長期

技術リスク

環境配慮技術開発の遅れによる競争力低下

短期

環境配慮技術に対する投資・研究開発コスト増加

中期

環境配慮技術に利用される材料の入手困難化

長期

市場リスク

環境負荷の大きい製品需要の減少

中期

技術開発と競争軸の急激な変化、新規競争者の参入

長期

評判リスク

対応の遅れによる企業ブランド低下

長期

情報開示の不足による外部評価の低下

中期

投融資機会の逸失、資金調達コストの増加

長期

物理リスク

(4℃シナリオ等で最も顕在化すると想定)

急性リスク

急激な災害による事業拠点の操業度低下

短期

サプライチェーンの被災による操業停滞

短期

疾病の蔓延

中期

慢性リスク

慢性的な気候変動(海面上昇や気温上昇など)

長期

気温上昇による従業員の健康

長期

温度管理の追加的コスト発生

長期

自然資源や水、電力、原材料等の供給が不安定化

長期

機会

資源の効率性

生産や輸送の高効率化によるエネルギーコストの削減

中期

エネルギー

再生可能エネルギーの導入による企業価値向上

短期

製品・サービス

環境配慮技術開発の先行による事業機会獲得

短期

環境負荷の大きい商材を代替する技術による事業機会創出

中期

環境配慮設備に必要な材料や部品需要の増加

中期

市場

気候関連情報の開示促進による企業イメージの向上

中期

投融資機会の獲得、資金調達コストの低減

長期

 

重要度が高いと判定された以下の項目については、リスク管理プロセスに基づき課題解決に取り組んでおります。

・重点項目1 環境配慮技術の開発の先行による機会獲得、遅れによる競争力低下

・重点項目2 環境負荷の大きい製品需要の減少

※重点項目の具体的な課題及びその対策については、社内にてリスト化し管理しております。

 

③リスク管理

「リスクと機会」の抽出・特定に当たっては、各本部長の協議により抽出した移行リスク(1.5~2℃シナリオ)と物理リスク(4℃シナリオ)に基づき、経営会議にて事業活動への影響度と顕在化時期を議論した上で決定しております。

選定されたリスクについては、経営会議で対策を協議し、具体的な対策が確定したリスク及び機会(重要課題)についてその対策実施状況をモニタリングし、管理しております。

重要課題については、該当部門において具体的な部門課題に落とし込み取り組んでおります。

取締役会はこれらの取組み状況について報告を受け、その監督を行います。

 

④指標及び目標

1)「社会課題の解決に寄与する製品・商品の開発、市場投入」、「脱有害物質、脱危険物および廃棄物削減に寄与する製品開発、市場投入」による、中期経営計画の売上・利益目標の達成

 

内容につきましては、当社ホームページをご参照ください。

 

2)GHG排出量削減の取り組み

気候変動の評価指標として、GHG排出量を選定しております。

GHG排出量としてScope1,2についての実績を開示しています。実績・目標は下記のとおりです。

 

GHG排出量の実績(国内拠点、単位:t-CO2)

年度

排出量

(Scope1,2の合計)

2021年度

2,080

2022年度

1,596

2023年度

567

 

 

GHG排出量の目標(国内拠点、単位:t-CO2)

年度

排出量

(Scope1,2の合計)

基準年度比

2025年度

517

約26%(74%削減)

2030年度

365

約18%(82%削減)

2050年度

カーボンニュートラル(CN)達成

(実質排出量ゼロ)

 

                             ※基準年度:2017年度

 


 

<主な施策>

直近3ヵ年の施策

滋賀工場で使用する全ての電力を再生可能エネルギーに切り替え(2023年4月より導入済み)

重油代替エネルギーの調査

省エネ対策の継続

 

2030年度計画達成に向けた施策

本社で使用する電力の50%を再生可能エネルギーに切り替え

本社空調設備の省エネ機への更新

営業車のEV車への一部切り替え

省エネ対策の徹底

 

気候変動に多大な影響を及ぼすGHG排出量削減においては、政府の掲げるNDC基準を大幅に上回る削減目標を立て、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みを着実に遂行し、「持続可能な経済成長と豊かな未来への貢献」を実現してまいります。

 

(2)人的資本

①当社における人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、主体性、多様性、人格、個性を尊重し、社員一人一人が「自己開発」に取り組み、「自ら考え、自ら行動する」企業風土を醸成するとともに、健康で活き活きと働ける職場環境づくりに努めることを行動憲章に掲げて取り組んでおります。

また、当社は、持続可能な社会の実現に向けて、「石原ケミカル人権方針」を制定し、全ての人々の人権を尊重する経営を行うことを宣言しております。

そして、人材の獲得を重要課題と位置づけ、新規学卒者採用を毎年継続して行うとともに、キャリア採用も適宜行うことにより、女性や外国人を含む多様な人材を確保し、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備や風土の醸成に努めております。

また、社員の育成、成長支援についても重要課題と位置づけ、下記のとおり専門的スキルの向上、リーダー力向上やマネジメント層の育成などを目的とした教育訓練や各種制度を運用しております。

<取組み事例>

・新入社員研修、入社5~7年の社員を中心とした若手研修、新任課長研修、管理職研修などの階層別教育

・専門スキル・知識、パソコン・DX関連スキル、語学力、指導力など技能向上のための教育

・専門スキル向上や資格取得などを支援する自己啓発支援制度

・グローバル人材育成のための海外研修

・財務知識向上、会社の財務・損益状況の理解を深める「損益検討会」の実施(年2回)

 

社内環境の整備においては、ワークライフバランス向上のための各種制度を充実させ、誰もが健康で活き活きと働ける職場環境づくりに努めております。主な取り組みは下記のとおりです。

・アニバーサリー休暇、リフレッシュ休暇、永年勤続休暇などの制度運用と有給休暇の全社一斉取得日の設定などによる年次有給休暇の取得率向上

・育児短時間勤務の充実、事業所近隣保育園との提携による優先的な入園など、子育て世代に働きやすい職場環境の整備

・ノー残業デーの設定、その他、全社挙げての時間外勤務の削減への取組み

これらは、当社ホームページ(サスティナビリティページ)にも掲載しております。

 

②指標及び目標

人的資本に関する新たな取り組みとして、ERP導入、AI活用のためのデータサイエンス人材の確保・育成などによるDX推進により、社員の業務負荷低減や生産性向上に取り組んでおります。また、「石原ケミカル人権方針」に掲げるすべての人々の人権を尊重する経営を行うにあたり、人権デューデリジェンスの実施により当社が抱える人権課題を特定し、その課題への取り組みを強化、推進してまいります。

管理職全体に占める女性・外国人・中途採用者の合計比率は、45.0%と高い比率となっているものの、女性管理職の比率が2.0%と低い状況にあるため、女性管理職・専門職の比率が2030年4月には8.0%以上となることを目標とし、女性の積極採用、女性のリーダー力強化を進めてまいります。また、子育てサポート企業として厚生労働省よりくるみんを2022年に取得しましたが、引き続き女性が活躍できる社内環境の整備にも努めてまいります。

また、男性育児休業取得率については、2023年度は60.0%となりましたが、引き続き取得率の維持向上に努めてまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

(1)業界動向及び競合等について

当社グループの主力事業であります金属表面処理剤及び機器等、電子材料は、いずれも電子関連分野に対応し、この分野での新技術の開発、新方式の採用、新製品の出現、競合他社の台頭、需給のサイクルなどにより影響を受け、当社グループの取扱製品の急速な陳腐化や市場性低下、需要先の大幅な生産調整等が起きた場合には当社グループの経営に重大な影響を与える可能性があります。

電子関連分野以外の自動車用品分野や工業薬品分野を含めた基幹となる3つの分野で事業をバランスよく展開し、各々の収益力を高め、総体としての会社の業績の伸長をはかっております。

(2)研究開発活動及び人材育成について

当社グループが事業展開する分野においては、新製品や改良品を継続的に投入し売上の維持・拡大をはかっていくことが必須であり、毎期、製品売上高の概ね10%相当額を研究開発費として投入しております。
しかし、研究開発の成果は不確実なものであり、多額の支出を行ったとしても必ずしも成果に結びつかないというリスクがあります。また、当社グループの企業成長のためには、特に研究開発に係る有能な人材に依存するため、技術スキルの高い人材の確保と育成並びに研究成果の適正な評価が重要になっております。このような人材確保又は育成ができなかった場合には、当社グループの企業成長、経営成績及び財政状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、取引業態毎に得意先、商品構成、営業方法、開発テーマの見直しを行い、付加価値の高い開発テーマ探索を行い、利益率の高い製品を開発し販売しております。

また、ホームページ、採用ツール、リクルーターなどを活用した積極的な採用活動を実施し、技術スキルの高い人材の獲得に努めるとともに、入社後の研修等による人材育成にも努めております。

 

 

(重要なリスク)

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

(1)海外活動に係わるリスクについて

当社グループは、海外市場の開拓を積極的に進めており、中国、東南アジアを中心に各国で営業活動及び技術サポート活動を進めております。これら海外活動に係わるリスクとして次のようなリスクがあり、それぞれの事象が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
・予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度等の変更
・インフラ等が未整備なことによる活動への悪影響
・不利な政治的要因、テロ、戦争、デモ、暴動、病気等による社会的混乱

当社グループは、在外子会社など海外拠点と密接なコミュニケーションをはかることにより現地の情勢把握に努めるとともに、現地専門家の助言を得ることによりリスクの軽減をはかっております。また、海外市場の開拓については、1つの地域に集中するのではなく、適度な分散をはかっております。

(2)法的規制等について

当社グループは、「毒物及び劇物取締法」の対象となる薬品を製造・販売しているため、同法の規制を受けております。今後の法規制の大幅な改正、強化が行われた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、同法の対象となる薬品に関する製造・販売業登録を取得しており、徹底した社内管理体制を確立し、法令遵守に努めております。また、当社グループは、化学物質及び安全衛生等に関する法規制のもと、品質管理及び法令遵守の徹底をはかって事業活動を行っております。

(3)環境問題対応について

当社グループの製造過程において排出される排水に「水質汚濁防止法」及び「滋賀県公害防止条例」等の対象となる、りん、窒素等が微量含まれており、同法の規制を受けております。今後、何らかの環境問題が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、滋賀工場が琵琶湖に隣接することから環境保全設備の充実、保全活動に力を入れており、徹底した社内管理体制を確立し、法令遵守に努めております。

(4)保有有価証券の時価下落によるリスクについて

当社グループは、当連結会計年度末において事業投資の資金需要までの待機資金である余資の運用目的及び取引先との安定的な関係を維持するための政策保有目的で有価証券を保有しております。
これらの有価証券の急激な価格の下落は当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、有価証券の投資・運用において、発行体の信用リスク、株価・為替の変動リスク、金利変動による債券価格の変動リスク、カントリーリスク等想定されるリスクについて、十分な検討を行い極力元本にリスクを生じさせない運用に努めることを原則としております。

(5)自然災害・新型ウイルス等の感染症によるリスクについて

当社グループは、国内・海外において営業活動を展開しており、大規模な地震・台風などの自然災害や新型ウイルス等の感染症により設備の損害や人的被害が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、生産拠点の分散や事業拠点の分散、在宅勤務への対応などにより、事業活動への影響の極小化をはかっております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び当社の関係会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループの経営成績について、当連結会計年度の業績は、売上高20,705百万円(前年比1.8%増)、営業利益2,328百万円(前年比8.9%増)、経常利益2,457百万円(前年比8.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,906百万円(前年比13.2%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

<金属表面処理剤及び機器等>

 当セグメントの売上高は、10,492百万円(前年比1.5%増)、営業利益は、1,441百万円(前年比24.6%増)となりました。

<電 子 材 料>

当セグメントの売上高は、648百万円(前年比21.7%減)、営業損失は、20百万円(前年同期は50百万円の営業利益)となりました。

<自動車用化学製品等>

当セグメントの売上高は、3,633百万円(前年比3.3%増)、営業利益は、958百万円(前年比6.0%減)となりました。

<工 業 薬 品>

当セグメントの売上高は、5,930百万円(前年比4.7%増)、営業利益は、257百万円(前年比9.9%増)となりました。

 

 当連結会計年度末における流動資産残高は、前連結会計年度末に比べ1,141百万円増加し14,744百万円となりました。主な増減は、現金及び預金の増加512百万円、電子記録債権の増加447百万円等によるものであります。固定資産残高は、前連結会計年度末に比べ271百万円増加し13,173百万円となりました。主な増減は、有形固定資産の増加284百万円、無形固定資産の減少19百万円等によるものであります。負債合計は、前連結会計年度末に比べ205百万円増加し4,811百万円、純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,206百万円増加し23,106百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より689百万円増加し、5,651百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益が前年同期に比べ206百万円増加し2,622百万円となり、減価償却費513百万円、法人税等の支払額△703百万円、売上債権の増加568百万円等により、営業活動によるキャッシュ・フローは1,844百万円(前年同期947百万円)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出△688百万円、有価証券の売却及び償還による収入480百万円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは△281百万円(前年同期716百万円)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

配当金の支払額△525百万円、自己株式の取得による支出△338百万円等により、財務活動によるキャッシュ・フローは△883百万円(前年同期△1,184百万円)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

金属表面処理剤及び機器等

6,980,473

111.3

電子材料

797,271

97.0

自動車用化学製品等

2,987,751

96.1

工業薬品

125,426

80.6

合計

10,890,923

105.1

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

b. 商品仕入実績

 

セグメントの名称

商品仕入高(千円)

前年同期比(%)

金属表面処理剤及び機器等

2,915,475

92.5

電子材料

26,294

102.0

自動車用化学製品等

536,837

111.3

工業薬品

5,366,852

104.0

合計

8,845,459

100.3

 

(注) 金額は実際仕入価格によっております。

 

c. 受注実績

当社グループは主として見込生産によっておりますので、受注実績について特に記載する事項はありません。

 

d. 販売実績

 

セグメントの名称

販売高

前年同期比(%)

金額(千円)

構成比(%)

金属表面処理剤及び機器等

 

 

 

製品

6,847,323

33.1

109.2

商品

3,645,200

17.6

89.7

10,492,523

50.7

101.5

電子材料

 

 

 

製品

617,953

3.0

77.8

商品

30,690

0.2

90.8

648,643

3.2

78.3

自動車用化学製品等

 

 

 

製品

2,993,628

14.5

101.6

商品

639,828

3.1

112.2

3,633,456

17.5

103.3

工業薬品

 

 

 

製品

123,210

0.6

83.7

商品

5,807,517

28.1

105.2

5,930,728

28.6

104.7

総計

20,705,352

100.0

101.8

 

(注) 1 輸出販売高及び輸出割合は、次のとおりであります。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

輸出販売高(千円)

輸出割合(%)

輸出販売高(千円)

輸出割合(%)

8,049,712

39.6

7,861,353

38.0

 

2 主な輸出先及び輸出販売高に対する割合は、次のとおりであります。

 

輸出先

前連結会計年度(%)

当連結会計年度(%)

台湾

37.7

33.4

中国

24.6

29.5

韓国

16.6

18.3

アセアン

17.2

14.4

その他

3.9

4.4

100.0

100.0

 

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

AMPOC Far-East Co., Ltd.

3,226,417

15.9

2,865,182

13.8

日本製鉄株式会社

1,801,544

8.9

2,293,049

11.1

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態は、親会社株主に帰属する当期純利益1,906百万円、自己株式の取得338百万円、剰余金の配当525百万円等により当連結会計年度期首の純資産残高より1,206百万円増加し、当連結会計年度末の純資産残高は23,106百万円となりました。これらの結果、自己資本比率は82.8%となり、健全な経営基盤を維持するため内部留保の充実をはかっております。

当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな回復基調が続いておりますが、物価上昇や海外経済の減速による影響により、先行きは不透明であります。

このような状況の中、当社グループは、高付加価値製品の開発に取り組み、国内及び海外における営業活動により市場拡大に努めてまいりました。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、短期的には付加価値の高い製品を市場投入し市場を拡大していくことであり、長期的には研究開発を促進し事業化を加速していくことであります。新規高付加価値製品の市場展開に積極的に取り組むとともに研究開発をさらに進めております。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、当社グループは、①売上総利益率35%以上、②経常利益率15%以上、③利益額の伸長により、ROE(自己資本利益率)10%以上を目標としております。

当連結会計年度におきましては、売上総利益率・経常利益率・ROEは前期と比較して増加致しました。全ての指標について目標を達成するため、さらなる企業価値向上に努めてまいります。

 (参考)売上総利益率、経常利益率、ROE(自己資本利益率)の状況

(連結)

売上総利益率

経常利益率

ROE
(自己資本利益率)

2023年3月

30.8%

11.1%

7.8%

2024年3月

32.3%

11.9%

8.5%

 

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

<金属表面処理剤及び機器等>

金属表面処理剤については、ウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレなどによりパソコン、スマートフォン、タブレット等の需要が落ち込み、電子機器はマイナス成長となりました。これを受け、電子部品業界においては、減産、生産調整局面の厳しい市況環境となりましたが、自動車向け及び下期以降のデータセンター向けの生産回復がありました。

また、化成処理液自動管理装置等については、スマートフォンやパソコン関連を中心に半導体需要が減少しましたが、既存市場の需要を取り込んだことにより、売上は増加しました。

<電 子 材 料>

機能材料加工品は、半導体市況が低迷し、半導体製造装置向けセラミックス及びエンプラの売上が減少しました。

<自動車用化学製品等>

エアコン洗浄剤及びコーティング剤は、取組カーディーラーの拡大を図ったことにより前年を上回り、車室内抗菌消臭剤及びコンパウンドの新製品発売が売上増加に寄与しました。また、原材料価格の高騰を受け、カーディーラー向け製品、コンパウンド等の補修用製品、セルフガソリンスタンド向け洗車剤について価格改定を実施しました。

<工 業 薬 品>

工業薬品は、鉄鋼需要の回復が遅れる中、既存商品の価格上昇とシェア拡大に加え、新規商材の拡販により前年度を上回りました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローについて、営業活動によるキャッシュ・フローは1,844百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは281百万円の支出となり、フリーキャッシュ・フローは1,563百万円のプラスとなりました。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資産構成に合わせた最適な資金調達を行うことを基本方針としております。

運転資金のうち主なものは、製品製造のための原材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、これらの資金需要に対しては自己資金により対応しております。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであり、これらの資金需要に対しては自己資金により対応しております。

資金の配分方針については、適正な手許現金及び現金同等物の水準を定め、企業価値向上に資する資金の配分に努めております。貸借対照表から算出した運転資金(※売上債権+棚卸資産-仕入債務)を安定的な経営に必要な適正な手許現金及び現金同等物の水準とし、それを超える部分については、成長投資、株主還元等への原資といたします。

成長投資について、当連結会計年度は主として金属表面処理剤及び機器等セグメント等における設備投資として744百万円、主として金属表面処理剤及び機器等セグメント等における研究開発投資として1,160百万円となりました。次連結会計年度は設備投資として709百万円、研究開発投資として1,229百万円を見込んでおります。設備投資計画の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

株主還元については安定的で継続的な配当を行うことを基本としつつ、自己株式取得も機動的に組み合わせて行います。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

・繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。

収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、取締役会で承認された事業計画等に基づき算定され、売上高に影響する電子部品の市場成長率の見込などの仮定を用いております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

特に記載すべき事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、ユーザーニーズに即応した製品を研究・開発し、顧客に満足していただける製品を提供することを基本方針とし、活動の方針は次のとおりであります。

(1)ユーザーニーズに合致した製品の開発

(2)高品質、高付加価値製品の開発

(3)環境に配慮した製品開発

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は1,160百万円であります。セグメント別研究開発費の内訳は、金属表面処理剤及び機器等945百万円、電子材料132百万円、自動車用化学製品等82百万円であります。

 

主な研究開発

<金属表面処理剤及び機器等セグメント>

・錫系および銅めっき液

スマートフォン、AV機器、家電、また最近では車にも、半導体、コンデンサー、コネクター等の電子部品とプリント配線板が多く使用されています。錫系めっき液は、電子部品とプリント配線板を導通が可能な状態で接合する目的で使用し、銅めっき液は、半導体やプリント配線板の微細な回路形成や導通確保を目的として使用します。当社は、この錫系および銅めっき液の開発、製造、販売、アフターサービスを行っております。また、多種多様な材質や形状の電子部品やプリント配線板へのめっき条件設定、めっき皮膜評価やその改善などの技術的支援、めっき液ラインの管理などユーザーと深くかかわり開発・改善を進めております。

 

<電子材料セグメント>

・導電性銅ナノインクの開発

印刷法を利用して回路形成可能な導電性銅ナノインクを開発しております。フレキシブル回路、RFIDタグ、パワーデバイス向け接合材料などの分野においてユーザー評価を進めております。

・銅ナノ抗菌抗ウイルス製品の開発

導電性銅ナノインクの原料である「銅ナノ粉」は当社の独自開発品で、粒度や物性値を正確にコントロールできる画期的な技術です。銅には抗菌性がありますが、これは表面機能のため、ナノ粉になって表面積が増大すると、効果が増強され、早くて強い抗菌作用が得られることがわかりました。

現在、銅ナノ粉を高充填した特殊配合の樹脂マスターバッチを開発し、顧客と共同で評価中です。樹脂成型時に混ぜるだけの簡単な処方で、非常に強い菌やウイルスにも高い効果を示すため、これからの社会の安心安全に貢献することを目指し市場導入を進めます。

 

<自動車用化学製品等セグメント>

・エアコン洗浄剤の開発

カーエアコンディショナー熱交換器(エバポレーター部)を清浄化する薬剤の開発を行っております。洗浄、除菌、消臭処理のみではなく、施工後に長期間の抗菌、防臭効果を発揮、薬剤の安全性追究、エアコン回路内の部材の保護を目標としております。

・塗装補修用コンパウンドの開発

板金塗装工場で使用する研磨及び仕上用コンパウンドの開発を行っております。今般の薬剤の開発動向としては、耐擦り傷性クリヤー等の難研磨性補修用塗膜に対し、研磨傷を残さず、光沢良く仕上げることを可能とし、工程短縮や作業効率向上をはかることを目標としております。

・コーティング剤の開発

光沢、キズ隠ぺい性、撥水、耐久性能を発揮するガラス系コーティング剤の開発を行っております。作業工数低減、収益改善、環境負荷低減、労働安全面改善に繋がる次世代型として位置付けされることを目標としております。