文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、培ってきた技術と経験を活かし、価値ある建造物とサービスを社会に提供することで、安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくりに貢献することを企業理念としております。また、一人ひとりがCSRの実践者となり、日常業務の中ですべてのステークホルダーを意識して行動することを目指します。自由闊達で風通しの良い社内風土のもと、会社と社員が互いに信頼しあい、ステークホルダーの皆様とWin-Winの関係を実現する「すべての人を大切に想う」CSR経営を実践してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略
わたしたちを取り巻く社会・環境は、地球温暖化や自然災害の増加、多様性の受容や生産年齢人口の減少、デジタル社会への移行に見られるように、急激に変化しております。そのような中、当社は、企業理念「安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくり」を実践し、変わりゆくニーズに応えていくために、長期ビジョン「西松-Vision2027」を2018年に策定し、「新しい価値をつくる総合力企業」への変革を進めております。
「西松-Vision2027」のファーストステップとなる2018年度からの3年間は、「総合力企業の基盤構築期」として、各事業への成長投資を進め、建設事業の進化、開発・不動産事業と新規事業の成長による事業領域の拡大を進めてまいりました。2021年5月に公表した「中期経営計画2023」では、「総合力企業への変革期」として、これまでの3年間で構築した基盤を基に、効率的な成長投資を続け、持続的な企業価値向上を目指してまいります。
なお、「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2023」につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、併せてご参照ください(https://www.nishimatsu.co.jp/ir/library/plan.php)。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、2021年5月に公表した「中期経営計画2023」において、連結売上高及び連結営業利益を目標とする業績指標として掲げております。また、目標とする財務指標として、ROE、自己資本比率、D/Eレシオ、連結配当性向及び自己株式の取得額を掲げております。特にROEは持続的成長への競争力を高めた結果として向上するものであり、当社の目指す経営方針と合致することから、目標とする財務指標として採用しております。
(4) 経営環境
当社はこれまでに、道路、ダム、鉄道、ビル、公共施設、都市再開発など、国土基盤整備の担い手として、インフラ構築に積極的に取り組んできました。これらのビッグプロジェクトから得た高度な技術や多彩なノウハウを活かし、「国内土木事業」「国内建築事業」「海外事業」「開発・不動産事業」「環境・エネルギー事業」を柱に成長を続けてまいります。
これらの事業のうち、当社の主力事業である国内土木事業及び国内建築事業を取り巻く環境は、政府建設投資は堅調に推移しており、民間建設投資も持ち直しの動きがみられます。但し、民間工事において受注環境が厳しくなっていることや建設資材の価格高騰等の影響もあり、注視が必要な状況が続いております。また、中長期的には人口の減少等の影響から国内建設市場の縮小が想定されるなど、不透明な状況が続くと思われます。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2021年度に策定した「中期経営計画2023」の達成に向けて、以下の基本方針のもと、計画に掲げた施策を着実に実行してまいります。
<中期経営計画2023 基本方針>
・成長してきた各事業を有機的に連携させ、ニーズに合わせた多様なサービスを提供
・環境・エネルギー事業を中心として、脱炭素社会実現への取り組みを本格化
・異業種のパートナー企業との協業により、企業価値を向上
・健全な財務体質を維持しつつ、資本効率の高い成長投資により企業価値向上を目指し、骨太な株主還元を実施
事業上の戦略として、国内土木事業におきましては、大型官庁工事を中心とした事業を堅持しながら、トンネルの自動化技術により生産性を向上させ、成長分野のリニューアル工事と民間工事へ経営資源を配分することで事業を拡大してまいります。
国内建築事業におきましては、民間工事の受注環境悪化に伴い受注量の確保が課題となるほか、建設資材価格の高騰に伴い利益率の確保が課題となっております。今後、物流施設・市街地再開発事業の設計施工に注力し、BIMを活用した施工効率の向上、コスト低減により競争優位を実現してまいります。また、当社が2019年3月に完成させ、お引渡しをした施工物件において判明した内装等に関する施工不備を踏まえ、施工品質向上に向けた取り組みを実施しております。
海外事業におきましては、豊富な施工実績と技術力を活かしてトンネルを中心とする交通インフラに注力するとともに、ビル案件の実績を積み、ローカル・外資系顧客との取引を拡大してまいります。
開発・不動産事業におきましては、成長分野に重点を置いたアセット戦略に基づく積極投資を行うとともに、「循環型再投資モデル」へ進化してまいります。また、建設事業との協働によりグループ収益を拡大してまいります。
環境・エネルギー事業におきましては、環境課題の解決に向け、再生可能エネルギー事業、インフラ関連サービス事業へ注力してまいります。
財務上の課題として、財務健全性の維持が挙げられます。「中期経営計画2023」の最終年度である2023年度につきましては、有利子負債を積極活用した成長投資を行いつつも、自己資本比率40%程度及びD/Eレシオ0.8倍を目標としております。但し、2021年度に行った自己株式の公開買い付けで取得した自己株式の影響により、同年度末では自己資本比率31.7%、D/Eレシオ1.1倍となっております。今後、自己株式の取扱いについては、重要課題として検討してまいります。
また、上記基本方針の一つである「異業種のパートナー企業との協業」を着実に進めるべく、昨年12月、当社は伊藤忠商事株式会社と資本業務提携契約を締結しました。異業種である両社がそれぞれ有する経営資源やノウハウを結集することで、これまでになかった全く新しいシナジーを創出し、双方の企業価値を最大化することを目指してまいります。
2022年度は、当社グループの「中期経営計画2023」の2年目となりますが、計画の基本方針に基づき、引き続き企業価値の向上を図ってまいります。
(中期経営計画2023)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、各種の社内基準書に準拠した施工、品質パトロールの実施、社内組織を活用した施工管理検討の実施、契約不適合事例や不具合事例の全社水平展開、各種研修の実施等により、工事目的物の品質管理に努めております。
(2) 海外受注リスク
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、海外土木事業の市場を新規進出国に拡大し、入札機会を増やしております。また海外子会社の価格競争力を高め、これまでの日系工場案件中心の取り組みから、外資・現地企業案件にも取り組むことで入札機会を増やし、受注確保に努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、入札条件・見積条件等の事前調査、施工現場・施工条件・実勢価格等の確認、適正な人員配置計画とモニタリング、西松建設協力会(Nネット)の活用、価格交渉力の強化等により、工事損益への影響を最小限に抑えるよう努めております。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、極めて大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、各部署に対するコンプライアンス監査によりコンプライアンスに係るリスク管理状況を確認し、問題があれば積極的に解決するとともに、企業風土の改善に取り組んでおります。また、危機意識の風化防止などを目的としてコンプライアンス研修を実施しております。その他、内部通報窓口を設置するなど、コンプライアンス違反事由が発生した際に適切かつ迅速に対応できる体制を整備しております。
当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しております。コンピュータウイルスその他の要因によって、かかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当社グループの事業活動や業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、設計・施工をはじめとする事業活動を通じて構造物やお客様に関する情報、取引先の個人情報あるいは機密情報その他様々な情報を取り扱っております。これらの情報が外部からのサイバー攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は紛失した場合、損害賠償、復旧費用等の発生により、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、当社グループで情報セキュリティポリシーを定め、外部からの不正アクセス防止、コンピュータウイルス対策、従業員の教育等、情報セキュリティ対策の継続的な強化に努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、現時点で進出している国においては一定に抑えられていると認識しておりますが、万が一、当該リスクが顕在化した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、外務省海外安全ホームページによる危険度レベルの定期的な確認や、「カントリーリスク判定表」による定期的な評価、「海外危機管理マニュアル」の周知等により、事業継続や工事への悪影響を最小限に抑えるよう努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、為替レート毎の為替差損益の試算、取下金管理の徹底、外貨残高の適正な管理、為替予約等によるリスクヘッジの検討等により為替変動の影響を弱め、業績への影響を低減させるよう努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、事業管理体制の確立、プロジェクトリスク評価の実施、事業計画の適時見直し、代替出口戦略の確保等により、業績への影響を低減させるよう努めております。
(9) 労働災害リスク
施工中に予期せぬ重大事故や労働災害が発生した場合には、顧客その他ステークホルダーからの信頼を損なうとともに当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、過去事例の全社水平展開や定期的な現場パトロールのほか、当社職員や協力会社の職長・作業員に対する安全教育の継続的な実施により、労働災害を未然に防止するよう努めております。
(10) 自然災害リスク
大規模な地震や台風・洪水等の自然災害は、施工中案件の被災、工程遅延、自社所有建物等への被害等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、施工中案件においてはリスクに応じて建設工事保険を、自社所有建物等においては損害保険等を付保し損害低減策を講じております。また、事業継続力の向上を目指し、事業継続計画(BCP)を策定し定期的にBCP訓練を実施しており、建設会社の社会的責任としてインフラ復旧工事に積極的に協力し、被災地の復旧・支援やお客様の事業の早期再開に貢献できるよう努めております。
(11) 気候変動リスク
①気候変動に伴う物理的リスク
気候変動により自然災害が激甚化した場合、施工中案件の被災、工程遅延、自社所有建物等への被害等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
②気候変動に伴う移行リスク
脱炭素社会への移行に向けて、工事施工に係る各種法規制の強化や市場・社会の変化による建設コストの増加、施工量の制限等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、中長期的には相応にあるものと認識しております。
こうした気候変動に伴うリスクへの対応策としては、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が示す推奨に基づき、各々のリスクを抽出・評価して事業戦略に落とし込み、事業活動の持続性や強靭性を高めております。なお、当社グループは気候変動に関するリスクの観点から地球温暖化防止に資する取組みとして、“2030年までに事業活動から排出されるCO2をネットゼロにする(=ZERO30)”ためのロードマップを作成し、2021年より事業戦略に取り入れ活動を行っております。
新型コロナウイルスその他感染症の世界的流行(パンデミック)が発生し、その影響が国内及び海外の建設投資に及んだ場合、当社の建設工事受注額が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、感染の拡大により、当社事業所において当社役職員又は協力会社社員に感染症患者が多数発生した場合には、当社の施工する工事を一時中断するなど感染拡大防止措置を講ずる必要があります。工事の中断期間が長期にわたる場合や中断する工事数が増加した場合には、工事損益が変動するなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策として、当社役職員や協力会社社員の安全と健康を最優先に考え、当社事業所内における感染拡大防止に努めるとともに、在宅勤務の実施により事業継続に努めるなど、業績への影響を低減させるよう努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、全般的に持ち直しの傾向が続きました。一方、年度終盤のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、国際金融資本市場で不安定な動きがみられるほか、原油などの資源価格も大幅に上昇するなど、先行きに不透明感がみられる状況となっております。
建設業界におきましては、政府建設投資は堅調に推移しており、民間建設投資も持ち直しの動きがみられます。但し、民間工事の受注環境が厳しくなっていることや建設資材の価格高騰等の影響もあり、注視が必要な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループの連結業績は以下のとおりとなりました。
建設事業受注高は、国内土木工事が減少しましたが、国内建築工事及び海外工事が増加したことにより、前期比20,536百万円増加(6.6%増)の333,974百万円となりました。
売上高は、前期比12,487百万円減少(3.7%減)の323,754百万円となりました。営業利益は、国内外の土木工事及び不動産事業等における売上総利益の増加により、前期比2,589百万円増加(12.4%増)の23,540百万円となりました。経常利益は、前期比1,935百万円増加(9.0%増)の23,497百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益や固定資産売却益を特別利益に計上しましたが、完成工事補償引当金繰入額や減損損失を特別損失に計上したこと等により、前期比2,063百万円減少(12.0%減)の15,103百万円となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用により、当連結会計年度の完成工事高及び完成工事原価がそれぞれ24百万円増加しております。また、利益剰余金の当期首残高へ与える影響はありません。
報告セグメント等の業績は以下のとおりであります。(セグメントの業績は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)1 報告セグメントの概要 (3)報告セグメントの変更等に関する事項」に記載のとおり、当連結会計年度の期首に全社費用の配賦方法を見直しております。以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後の配賦方法に組み替えた数値と比較して記載しております。
イ 土木事業
当セグメントの売上高は、前期比4.3%減の121,973百万円となり、セグメント利益は、完成工事総利益率が向上したことにより、前期比44.2%増の12,356百万円となりました。
当社単体の土木工事の受注高は、国内民間工事及び海外工事が増加しましたが、国内官公庁工事が減少したことにより、前期比2,675百万円減少(1.8%減)の144,614百万円となりました。
ロ 建築事業
当セグメントの売上高は、前期比6.4%減の184,263百万円となり、セグメント利益は、売上高が減少したこと等により、前期比32.1%減の6,404百万円となりました。
当社単体の建築工事の受注高は、国内民間工事が減少しましたが、国内官公庁工事が増加したことにより、前期比18,491百万円増加(11.2%増)の183,478百万円となりました。
ハ 開発・不動産事業等
当セグメントは、主にグループ保有不動産の販売及び賃貸収入により構成されております。当セグメントの売上高は、主に販売事業の売上が増加したことにより、前期比44.8%増の17,740百万円となり、セグメント利益は、売上高の増加に伴い、前期比61.7%増の4,779百万円となりました。
当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
当連結会計年度末の資産は、受取手形・完成工事未収入金等や投資有価証券が減少しましたが、有形固定資産が増加したことから、前連結会計年度末と比較して5,173百万円増加(1.1%増)の477,613百万円となりました。
負債は、社債や預り金が増加したことから、前連結会計年度末と比較して54,994百万円増加(20.8%増)の319,897百万円となりました。
純資産は、自己株式の公開買付けの実施により自己株式が増加したことから、前連結会計年度末と比較して49,821百万円減少(24.0%減)の157,715百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して11.9ポイント減少し、31.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して3,547百万円増加(8.1%増)の47,121百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が22,696百万円となり、法人税の支払等により資金が減少しましたが、売上債権の減少や預り金の増加等により資金が増加し、41,243百万円の収入超過(前連結会計年度は4,907百万円の収入超過)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により資金が減少し、22,532百万円の支出超過(前連結会計年度は5,302百万円の収入超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行等により資金が増加しましたが、自己株式の公開買付けの実施による自己株式の取得や配当金の支払により資金が減少し、16,074百万円の支出超過(前連結会計年度は12,653百万円の支出超過)となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び不動産事業等では、生産実績を定義することが困難であり、建設事業においては、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態に即しておりません。
また、当社グループにおいては、建設事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって、受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
イ 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に変更があったものについては、当期受注工事高にその増減額を含めて表示しております。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は、(当期完成工事高+次期繰越工事施工高-前期繰越工事施工高)に一致します。
4 収益認識会計基準等を第85期の期首から適用したことによる影響額を反映するため、第85期の期首繰越工事高は第84期の次期繰越工事高から145百万円を控除しております。
5 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、第84期 0.7%、第85期 12.9%であります。
6 受注工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第84期 請負金額100億円以上の主なもの
第85期 請負金額100億円以上の主なもの
ロ 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は特命と競争に大別され、その比率は次のとおりであります。
(注) 百分比は請負金額比であります。
ハ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第84期 請負金額100億円以上の主なもの
第85期 請負金額100億円以上の主なもの
3 完成工事高に対する割合が100分の10以上の相手先は、次のとおりであります。
ニ 手持工事高
(2022年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
請負金額100億円以上の主なもの
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2023」に基づく当連結会計年度業績計画の達成状況及び前期比較の分析は次のとおりであります。
建設事業受注高は、前期比205億円増加(6.6%増)、期首計画比275億円減少(7.6%減)の3,339億円となりました。国内土木工事は高速道路のリニューアル工事や耐震補強工事を中心に受注しましたが、前期に大型のトンネル工事の受注があったため、前期実績を下回りました。国内建築工事は物流施設や教育施設、事務所・庁舎、工場等を中心に受注したことにより前期実績を上回りました。海外工事はシンガポールにおいて大型の地下鉄工事を受注したことにより前期実績を大幅に上回りました。以上の要因により上記の結果となりました。
売上高は、減収となり、前期比124億円減少(3.7%減)、期首計画比132億円減少(3.9%減)の3,237億円となりました。開発・不動産事業等が販売用不動産の売却により前期比46億円増加(31.3%増)となったものの、国内土木工事が前期比70億円減少(6.1%減)となり、国内建築工事も上半期の受注が低調だったため期中入手工事分の売上が伸びず、前期比155億円減少(8.3%減)となったことが減収の主な要因であります。
営業利益は、前期比25億円増加(12.4%増)、期首計画比25億円増加(12.1%増)の235億円となり、営業利益率は前期の6.2%から7.3%に改善しました。営業利益の増加につきましては、土木工事の売上総利益率が前期比3.9ポイント増加の16.3%となったことや、販売用不動産の売却により開発・不動産事業等の売上総利益が前期比23億円増加の69億円となったことが主な要因であります(売上総利益はいずれも当社単体の数値であります。)。
ロ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度末の財政状態の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前期末比51億円増加(1.1%増)の4,776億円となりました。工事代金の回収が進み受取手形・完成工事未収入金等の売上債権が196億円減少しましたが、現預金が33億円増加したことや、開発・不動産事業等に係る設備投資により有形固定資産が204億円増加したこと等が主な増加の要因であります。
負債は、前期末比549億円増加(20.8%増)の3,198億円となり、このうち有利子負債残高は前期末比450億円増加(39.1%増)の1,600億円(D/Eレシオ1.1倍)となりました。これは、当連結会計年度において実施した自己株式の公開買付けによる自己株式(543億円)の取得と開発・不動産事業を中心とした設備投資(311億円)に係る資金調達が主な要因であります。次期につきましては、開発・不動産事業を中心に451億円の設備投資を行う計画としております。この設備投資が計画どおり進んだ場合には、期末の有利子負債は1,830億円(D/Eレシオ1.2倍程度)となる見込みであります。
純資産は、前期末比498億円減少(24%減)の1,577億円となりました。また、自己資本比率は31.7%となり、前期から11.9ポイント減少しました。これは、当連結会計年度において自己株式の公開買付けにより自己株式(543億円)を取得したことや、配当(106億円)を実施したことが主な要因であります。
ハ セグメント情報に記載された区分ごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、セグメント情報に記載された区分ごとに資産及び負債を配分していないため、セグメント別の財政状態の分析・検討は記載しておりません。
セグメント情報に記載された区分ごとの経営成績等の状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2023」に基づく当事業年度業績計画の達成状況は次のとおりであります。なお、当社グループの受注高、売上高及び売上総利益(完成工事総利益・不動産事業等総利益)は、その大半を当社単体で占めていることから、以下の分析・検討は、いずれも当社単体の数値を記載しております。
(土木事業)
受注高は、期首計画比で28億円減少(2.0%減)の1,446億円となりました。これは、シンガポールにおいて大型の地下鉄工事を受注したものの、国内官公庁の新規工事の受注が少なかったことが主な要因であります。工事種別でみると鉄道などが前期比で増加し、道路などが前期比で減少となりました。
売上高は、概ね計画どおりの進捗となり、期首計画比で11億円減少(0.9%減)の1,208億円となりました。
完成工事総利益は、期首計画比で19億円増加(11.1%増)の196億円となりました。これは国内の大型工事が順調に進捗したことや、一部の国内工事において設計変更を獲得したこと等によるものです。この結果、完成工事総利益率についても期首計画比1.8ポイント増加の16.3%となりました。
(建築事業)
受注高は、期首計画比で165億円減少(8.3%減)の1,834億円となりました。これは、国内民間工事において受注環境が悪化し、複数の大型工事を失注したこと等が主な要因であります。工事種別でみると事務所・庁舎や教育施設などが前期比で増加し、住宅や物流施設などが前期比で減少となりました。
売上高は、期首計画比91億円減少(4.9%減)の1,788億円となりました。これは国内工事において、上半期の受注が低調であったため期中入手工事分の売上が伸びなかったこと等が主な要因であります。
完成工事総利益は、期首計画比で9億円減少(5.6%減)の164億円となりました。これは、上記売上高の減少に伴うものであります。なお、完成工事総利益率は概ね期首計画どおりの9.2%となりました。
(開発・不動産事業等)
売上高は、期首計画比で25億円増加(16.3%増)の180億円となりました。これは、当事業年度において販売用不動産を売却したこと等が主な要因であります。不動産事業等総利益は、期首計画比で12億円増加(21.6%増)の69億円となりました。これは、上記販売用不動産の売却に伴うものであります。
なお、当連結会計年度において、賃貸事業用の土地・建物の取得及び自社開発物件の建設等に連結で298億円を投資しました。賃貸事業用の土地・建物のうち主なものは、「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況」に記載のとおりであります。
ニ 経営成績等に重要な影響を与える要因の分析
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える主な要因は、景気動向に伴う建設市場の動向、資材価格の変動及び建設技能労働者確保の状況であります。
国内経済の今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの普及や各種政策の効果等により持ち直しの動きが続くことが期待されますが、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクもあり、不確実性の高い状況が続くものと予想されます。国内建設市場の今後の見通しにつきましては、政府建設投資・民間建設投資ともに当連結会計年度と同水準で推移するものと予想されますが、ウクライナ情勢による原油や資材の価格高騰の影響も懸念され、注視が必要な状況が続くものと予想されます。
これらの要因に対処しつつ、持続的な成長を遂げるため、当社グループは、2018年度に策定した「西松-Vision2027」及び2021年度に策定した「中期経営計画2023」に掲げる各種施策に取り組んでおります。
ホ 目標とする経営指標の達成状況
当社グループは、2021年度を初年度とする「中期経営計画2023」において、「連結売上高4,000億円」「連結営業利益320億円」「ROE12%以上」「自己資本比率40%程度」「D/Eレシオ0.8倍」を目標とする経営指標として掲げ、この達成に向けて各種施策に取り組んでおります。
計画初年度である当連結会計年度の達成状況は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要は、主として、土木事業及び建築事業に係る材料費、労務費、外注費、経費及び営業費用としての一般管理費等の運転資金と、開発・不動産事業等に係る固定資産の購入、改修費用等の設備投資資金であります。
当社グループは「中期経営計画2023」において、3年間で710億円の成長投資を予定しておりますが、バランスシートマネジメントにより、自己資本比率及びD/Eレシオを経営指標として掲げ、財務健全性を確保してまいります。
これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による調達で対応していくこととしております。
手許の運転資金については、子会社も含めたグループ全体としての余剰資金の管理に努め、資本効率の向上を図っております。また、機動的な資金調達を目的として主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えております。
キャッシュ・フローの状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。次期につきましては、引き続き工事の立替資金の回収を図り、営業活動によるキャッシュ・フローの改善に努めてまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
当社は、2021年12月15日開催の取締役会において、伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」といいます。)との間で、資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といい、当該契約に基づく資本業務提携を以下「本資本業務提携」といいます。)を締結することを決議し、同日付で本資本業務提携契約を締結しました。
(1) 本資本業務提携契約の目的
当社は、伊藤忠商事の構築する国内トップクラスの資機材調達バリューチェーンの活用による資機材共同調達の実現や、住宅や物流特化型J-REITのスポンサーである伊藤忠商事グループの不動産運用ノウハウを取り入れた当社の開発・不動産事業における循環型不動産ビジネスの確立や資産効率の改善等、これまでにはない新しい建設業の在り方の可能性を確認し、異業種との協業によるシナジーの発現を実現する経営モデルの確立が当社の企業価値向上に資するものと判断しました。このように、異業種である両社がそれぞれ有する経営資源やノウハウを結集することで、これまでになかった全く新しいシナジーを創出し、双方の企業価値を最大化することを目的として、本資本業務提携契約を締結しました。
(2) 本資本業務提携契約の内容
① 業務提携の内容
ⅰ 建設アライアンス構築
現場課題を解決する技術や工法を持つ建設業界の優良企業群と建設アライアンスを構築することにより、建設業界の省人化・効率化・DX化を共同推進する。
ⅱ 安心安全、脱炭素社会の実現
脱炭素社会の実現や国土強靭化といった社会課題を成長分野と捉え、公共施設・インフラPPPへの共同事業参画や再生可能エネルギー事業の共同取組等により事業領域を拡大する。
ⅲ 循環型不動産事業モデルでの協業
不動産開発・収益不動産への投資・運用を通じた循環型不動産事業を両社で推進することで、当社の安定成長基盤を確立するとともに、伊藤忠商事の不動産開発事業のモノづくり力向上による安心安全を強化する。
ⅳ 顧客基盤拡充・競争力向上
国内外のグループ会社・取引先等のネットワークや資機材調達機能、エンジニアリング機能等、両社の持つ顧客基盤や機能を融合することで、両社の事業収益力・競争力や安定性を強化する。
② 資本提携の内容
伊藤忠商事は、株式会社シティインデックスイレブンス他2名から、当社普通株式4,022,800株(議決権所有割合10.16%)を市場外での相対取引により2021年12月15日付で取得しました。
(3) 本資本業務提携の相手先の概要
当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。
(土木事業・建築事業)
当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。
当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は
①リアルタイムな地山評価により山岳トンネルのさらなる安全性向上や合理的施工を実現
~地山の3次元的な定量評価を自動で行う「DRISS-3D_Monitor」を開発~
既に多くの現場で活用されている切羽前方探査システム「DRISS(Drilling Survey System)」による地山評価の作業を自動化し、施工重機の運転席に設置したモニターでリアルタイムにトンネル周辺地山の性状を確認できる「DRISS-3D_Monitor」を開発しました。作業員の「感覚知」や「経験知」であった詳細な地山性状を、穿孔したその場で3次元的に「見える化」することによって、現場、関連部署、客先等への情報共有がスムーズになるとともに、施工への迅速な反映が可能となり、生産性の向上が期待できます。
ダム建設工事におけるコンクリート打設のサイクルタイムの短縮を可能とする「ケーブルクレーン自動運転システム」を開発しました。本システムは、コンクリート打設作業の際に都度遷移する打設位置や、バケット積載重量の変化に応じて、運搬の軌道や速度を変化させ、最適化された自動運転を実現するものです。打設位置へ高精度に到達し、バケットの振れを自動で抑えることが可能であり、柱状打設へ適用した場合には、クレーン運転士が目視確認できない箇所においても安全かつ迅速にバケットを到達、開放できるため、サイクルタイムの短縮、堤体工の生産性向上を可能としました。本システムは、国土交通省九州地方整備局発注の立野ダム建設(一期)工事において、2021年3月より堤体工での運用を開始しております。
コンクリート打設工事の終了間際に、現場技術者が現場の状況から判断して実施するコンクリート調整数量の計算は高い精度が要求されます。調整して発注したコンクリートが不足した場合は、現場作業を止めることになり、長時間労働の原因となっていたことから、コンクリート打設残量予測システム(アプリ版)を開発しました。あらかじめシステムに読み込ませた躯体図を現場で携帯端末に表示し、その図面上でコンクリートの未打設範囲を囲み指示することでその範囲のコンクリート体積が自動で算出され、残り何㎥のコンクリートを追加発注すればよいか評価・提示するシステムです。本システムにより、現場技術者は追加発注量を正確に計算することができるため、産業廃棄物の増加や長時間労働といった問題の解決につながります。
(3) 品質向上技術
①覆工コンクリートの表層品質をAIが自動評価する「A.E.s.SLiC」を開発
~AI活用技術で山岳トンネル覆工コンクリートの品質向上~
株式会社sMedioと共同で、山岳トンネル覆工コンクリートの表層品質評価を行うための AI(人工知能)活用技術「A.E.s.SLiC(イースリック)」を開発しました。本システムは、覆工コンクリートの写真を用いて、「表層目視評価シート」に則った、①はく離、②気泡、③水はしり・砂すじ、④色むら・打重ね線、⑤施工目地不良及び⑥検査窓枠段差の6項目をAIが自動評価するものです。本システムによって、評価及び評価結果とりまとめ作業の迅速化と、不具合発生時の改善対策の早期実施が可能となり、山岳トンネル覆工コンクリートの品質向上が期待できます。
②ペーパースラッジを混合した流動化処理工法の開発・実証
~流動化処理土の品質(材料分離抵抗性)の向上、適用範囲の拡大~
公立大学法人宮城大学との共同研究のもと、産業廃棄物であるペーパースラッジを主原料とした混和材を採用し、資源循環を考慮した環境負荷低減型の流動化処理工法を開発しました。本工法では、ペーパースラッジの特性を利用することで、流動化処理土の流動性や材料分離抵抗性を向上させることが可能となります。そのため、施工現場で課題となっていた品質の安定した流動化処理土の現場での製造、打設が可能となります。
①二酸化炭素削減技術「スラグリート®」をNETISに登録
~低炭素型コンクリートの適用促進へ~
戸田建設株式会社と共同で開発した二酸化炭素排出量の少ない低炭素型のコンクリート「スラグリート®」を国土交通省が運用している「新技術情報提供システム(NETIS)」に登録しました。「スラグリート®」は、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末に着目し、セメントの代替材料として積極的に活用した環境に優しいコンクリートです。すでに建設材料技術性能証明も取得しており、建築工事の一部にも採用できます。今後、土木・建築工事への利用を進め、二酸化炭素排出量の削減に貢献してまいります。
②ヘドロを分解して発電する微生物燃料電池を応用した溶存酸素計測バイオセンサーの実証実験を実施
群馬大学と共同開発した微生物燃料電池(以下「MFC」といいます。)式の溶存酸素(以下「DO」といいます。)計測バイオセンサーの実証実験を実施しました。MFCは、自然界に生息する発電菌を利用して有機物(ヘドロ等)を分解・浄化しながら発電することができる電池です。本バイオセンサーは、水中のDO濃度に応じてMFCの発電量が変化する性質を応用したもので、省エネルギーを実現しながらDO濃度を連続計測できます。本バイオセンサーを群馬県内のため池に設置し、運用した結果、実際のDO濃度に近い精度で計測できることが確認できました。本技術によって、貧酸素化しやすい水域等の連続計測が容易にできるようになります。
③中大規模木造建築物の実現に向けた技術開発
近年、脱炭素社会の実現に向けて、カーボンニュートラルな素材である「木造」が社会的にも注目を集めております。このような社会環境の変化に対応し、新しい建築技術分野への挑戦を目的として、中大規模木造建築物の実現に向けた技術開発に取り組むとともに、木造建築物の中大規模化に必要な耐火技術を保有する株式会社シェルターとOEM契約を締結しました。中大規模木造建築物の実現に向けた技術開発をより一層推進し、脱炭素社会に貢献してまいります。
①西松建設×佐賀市 廃食用油等から製造した高品質バイオディーゼル燃料の実用化に関する共同研究を開始
佐賀市清掃工場に設置した「次世代型バイオディーゼル燃料製造プラント」で製造される高品質バイオディーゼル燃料の実用化を目指し、佐賀市と共同研究を開始しました。高品質バイオディーゼル燃料とは、軽油と同等の品質を有する廃食用油等を原料とした炭化水素系のバイオディーゼル燃料であり、次世代の軽油代替燃料として期待されています。本研究では、高品質バイオディーゼル燃料の品質及び製造安定性を確認するとともに、現場実証実験により建設機械への適合性を評価し、施工現場への高品質バイオディーゼル燃料の導入を目指します。また、佐賀市と連携し、SDGsに紐づけた地域資源の循環や地産地消エネルギー活動による付加価値についての検討を進めることにより、新たな事業創出を目指してまいります。
②IoTによる地震防災
構造ヘルスモニタリングに関する技術開発を行うため、6層の鋼構造建物を再現した鋼構造模型による振動台実験を実施しました。試験体は実大サイズの事務所ビルを相似則により縮小しましたが、接合部などのディテールは再現可能な限り実大の一般的な鋼構造建物に倣い計画しました。今後は取得したデータを用いて、現状の構造ヘルスモニタリング技術の抱える課題点などを抽出し、防災減災のための技術開発や検証実験を進める予定です。
(開発・不動産事業等)
研究開発活動は特段行っておりません。