当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります
(1)経営方針
当社は、100年を超える経験と知識をもとにさらなる発展を求めて、当事業年度に経営理念を改定することといたしました。事業分野の制約をはずし、根幹のモットーは継承しながら社会課題の解決を第一に認識し、その解決に尽力する結果として、お客様の満足度を向上させ、経済価値を高めることを基本の理念としております。この理念のもとに、GHGフリーの技術開発、CMR(鋳物・金属機械加工)事業の拡大、新規事業の研究開発等を力強く進めてまいります。そのスローガンは「鉄と工(たくみ)の創造力で掴むWIN-NOVATION(WIN+INNOVATION)」と設定しております。
(2)経営戦略等
昨年4月より2ヵ年の新中期経営計画「進化・新加・真価」をスタートさせており、変化の速い時代に対応すべく、短期集中型の計画としております。サステナブルな当社の未来創造を目的とした長期経営ビジョンを設定し、中期目標は「自ら、見つめ、考えて、そしてチャンスをつかみとる」をスローガンに、「ORIGINAL HANSHIN」において、エンジンの商品力、販売力、コスト力及び人材力の強化による付加価値アップ、「NEW HANSHIN」におけるCMR事業の拡大、「FUTURE HANSHIN」については、新ビジネス、新商品、新サービスの探求とサステナビリティ経営の実現を設定し、それらを3本の柱として位置づけております。外的環境はますます厳しくなると予想されますが全社員がベクトルを合わせて新中期経営計画の達成に尽力してまいります。
なお、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、業績予想として公表しております、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益があります。公表数値の達成に向けた経営計画に基づき、各種重点課題の着実な推進を図っております。
(3)経営環境
当期におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善による経済活動の活性化やインバウンド需要の増加等から、緩やかな回復基調となっております。世界経済については、地政学リスクの増大や中国経済の減速継続により、不透明感の強い状況が継続しております。
外航海運業界においては、大型船建造の造船所は既に3年半以上先まで受注を確保しているものの、建造コストの先行きが不透明なことから、それ以上の先物案件に関しては様子見状態となっております。当社2サイクル機関の対象である近海船市場は、現状の船価に運賃が釣り合わない状況となっておりますが、将来を見据えた代替建造のニーズは、しばらくの間、継続すると思われます。当社の主要マーケットである内航海運業界におきましては、船員不足および船舶の老朽化が顕著となってきた影響から、輸送能力の維持・確保に向けて大手オペレーターを中心に用船料の改善がなされており、船価高の状態は続いておりますが、引き合いは増加傾向を示しております。海外案件につきましても、アジア圏を中心に受注が回復しており、円安効果もあって、日本での建造を希望する船主も増えてきております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①営業活動
国内、海外ともに鋼材価格高騰による船価高が継続する中、建造隻数の大幅な伸びは期待できない状況でありますが、老齢船の増加により代替建造の兆しが見えてきております。その機会を逃さず引合案件をひとつひとつ確実に受注に結び付けていく丁寧な営業活動を展開してまいります。国内においては、低速4サイクルGHG排出改善バージョンのSシリーズ等の販売拡大や機関監視システムのブラッシュアップなどで付加価値を高めながら、全ての顧客、全ての船、全ての空き船台を完全網羅した活動により、内航船における主機関のトップシェアを堅持し、部分品販売についても全てのお客様とその保有船に寄り添った、きめ細かく積極的なサービス活動と部分品営業を充実いたします。特に主機販売において資材価格の高騰によるコストアップに対応する価格転嫁がほとんどできていないため、各取引先にご理解いただき、適正価格へ是正することが今後のビジネスの注力点になってまいります。
海外においては、コロナ禍で沈滞していた市況の回復の兆しとともに主機関の受注が増えてきており、加えて、主機関販売以外での周辺サポート(据え付け、運転、メンテナンス、機関モニター等)を強化した東南アジア向けトータルサポートセールス等、CS向上活動に注力しながら受注拡大に邁進してまいります。
②生産活動
生産面におきましては、生産効率の向上とリードタイムの短縮や内製化の推進のため、主機関・部分品・CMRの全体最適化を図る生産管理体制の構築を進めてまいります。CMR事業については、エンジンに続く、第2の事業の柱を目指し、鋳造技術を駆使した各種鋳物製作サービス、当社独自の大物部品の精密加工技術を活用した加工サービス、新規導入しました複合加工機等による製品加工品目の拡大やお客様要望のレトロフィットも含めた設備修理サービスを基軸として第158期より注力しておりますが、第159期には約1.5倍に販売を拡大することができました。さらなる拡大につきましては主機関部品製造との兼ね合いが大きなポイントとなるため、全社最適の生産体制を実現してまいります。また、資材価格の高騰に対応するため内製化が困難な部材につきましてはこれまでも進めてきました海外調達を含めた購買努力やVA、VEによる原価低減を徹底し、加えて、聖域のない経費節減や作業の標準化によるムダの排除と品質の向上に引き続き鋭意努めてまいります。
③新製品の開発・販売
商品開発面では、低速4サイクルのGHG排出改善バージョンである「Sシリーズ」や電子制御機関の販売拡大を継続・充実するとともに、低速4サイクルガスエンジンの気体燃焼技術を活用して、GHG削減を目的としたアンモニアや水素燃料の利用にも応用範囲を拡大していくことを検討中であります。また、バイオ燃料についても、テストデータを積み重ねております。なお、国内の内航船では初搭載となるメタノール燃料エンジンは、今後拡大していくグリーンメタノール生産増強により海運のカーボンニュートラルを達成する一助となるソリューションであります。播磨高度研究棟において順調に試験運転が行われ、6月には村上秀造船所へ出荷となり、本年末には竣工する予定であります。
お客様に安全・安心を提供する高度船舶安全管理システムや機関モニタリングシステム「HANASYS 5」の市場投入を拡大しておりますが、さらなる発展形の「HANASYS 5EX」は既に数台内定を頂いており、今後、ハードとソフトの両面から最高の顧客満足を獲得するよう努力してまいります。
新事業や新商品を追求する「F-WINGプロジェクト」においては、特命担当チームを新設し、強力に推進しながら当社技術とのシナジーを重視したオリジナル鋳物商品等の企画・研究開発が進んでおります。起業家精神を持った人材育成とともに進める社内ベンチャーの位置付けとし、将来の阪神内燃機工業の人材や技術の礎となる活動であります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)気候変動への対応:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく開示
気候変動は、世界が直面している重要課題と言えます。特に地球温暖化については、人類の未来を左右する深刻な課題となっており、GHG(温室効果ガス)の削減が急務となっています。当社は、100年に亘り内航船舶用の主機関、すなわち、重油で動くディーゼルエンジンの供給メーカーとして尽力してきました。おかげさまで、当社は国内で1千隻を超える船舶に搭載いただいております。こうした歩みの中で、排出ガス規制への適合等に注力しながら少しずつではありますが、燃費の改善、すなわち、CO2を含む排出ガスの削減に継続的に取り組んできました。一方、先に述べましたGHG削減については、ここに来て待ったなしの大幅削減が求められるようになり、当社の重油ディーゼルエンジンの市場性が将来的に大幅に下落することが予想されるようになってきました。当社としましては、このピンチをチャンスに変えるため全社をあげて取り組んでいくこととしております。
<ガバナンス ―気候関連リスク及び機会に関わる組織のガバナンス―>
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取組 |
●取締役会による気候関連リスクの経営レベルでの監督 ●経営会議等での環境施策の進捗管理 ●経営会議での脱炭素関連の投資判断の審議 |
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2023年度の進展状況 |
●リスク管理委員会において気候関連事項を審議、取締役会に報告(2回) ●経営企画会議で全社の気候変動施策をレビュー(1回) ●経営会議及び取締役会で脱炭素関連の研究開発投資及び設備投資を決定(2件) |
<リスク管理 ―気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス―>
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取組 |
●経営会議等において気候関連のリスクと機会を識別・評価し、事業戦略に落とし込む手続きを指示する(適宜) ●リスク管理委員会では気候関連リスクの認識と事業活動の遂行における統制活動の実施状況を定期的に確認することによりリスク管理を行い、取締役会に報告する(年2回) |
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2023年度の進展状況 |
●非常時の初期対応、報告方法、各対策本部の設置と役割の文書化 ●定期的な設備点検、防災訓練などの実施 |
<戦略 ―ビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク及び機会の実際の潜在的影響―>
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取組 |
●シナリオ分析によるリスクと機会の特定、財務影響評価及び対応策検討。 |
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2023年度の進展状況 |
●シナリオ分析によりリスクと機会の識別と影響評価を行い、対応方針を決定(後述の |
<指標と目標 ―気候関連リスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標―>
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環境目標 |
<2030年度目標> ●GHGスコープ1、2(注1):CO2排出量を2013年度比17%削減(注2) 参考…当社2023年度実績:2013年度比2.1%削減 ●GHGスコープ3(注1): CO2排出削減タイプエンジンへのシフトを推奨 ①開発中機種 ・グレーメタノールエンジン(CO2排出量削減△10%)(注3) ・GHG削減型のS(スペシャル)エンジン(CO2排出量削減△2%) ②開発完了機種 ・LNGガスエンジン(CO2排出量削減△25%)(注4) ・電子制御エンジン(CO2排出量削減△3%) (注1)GHGスコープ1:自社の工場・オフィス・車両などから直接排出されるGHG GHGスコープ2:自社が購入した熱・電力の使用に伴うGHG GHGスコープ3:企業活動のサプライチェーンの排出量(GHGスコープ1、2を除く) (注2)国土交通省「内航カーボンニュートラル推進に向けた検討会」とりまとめ概要(令和3年12月14日)で示された、内航海運のCO2削減中期目標を援用 (注3)グリーンメタノール使用の場合はカーボンニュートラル相当 NOx;△80%MAX、SOx;△99%MAX (注4)NOx;△80%MAX、SOx;△100% ●内航海運における取組 ①国土交通省「内航カーボンニュートラル推進に向けた検討会」とりまとめ概要(令和3年12月14日)では、内航海運のCO2削減中期目標として、2013年度比17%削減(181万トン削減)が掲げられました。その目標に貢献できるように、エンジンメーカーとして鋭意取り組んでまいります。 ②国際海事機関(IMO)関連の環境規制につきましては、海域指定や船舶サイズにより当社対応不要な規制もありますが、CO2、NOx、SOxの排出について現時点での当社対応状況は以下の通りです。 ・CO2:新造船に対するEEDI規制と就航船に対するEEXI規制があります。現時点では内航船舶は適用外となっておりますが、CO2削減についてはエンジンメーカーとして強力に推進してまいります。 ・NOx:3次規制に対しましては、開発済のガスエンジンはエンジン単体で対応可能であり、通常ディーゼルエンジンでは選択還元脱硝システム(SCR)と組み合わせて対応可能であることを確認しております。一方、日本周辺海域は指定海域に設定されておりませんので、現時点では規制対象のエンジンはありません。 ・SOx:使用燃料油の硫黄含有量に対する規制となり、市場では規制適合燃料油に置き換わっておりますが、当社エンジンでの関連トラブルは発現しておりません。 |
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考え方 |
1.徹底的な省エネと再生可能エネルギーの活用で自社のGHG排出削減を目指す 2.重油以外の各種燃料を活用する主機関を開発しGHG排出削減を目指す 3.気候変動への適応に積極的に取り組む |
<気候変動シナリオ分析の実施と結果>
当社は、国内の内航船舶用主機関の製造販売を主とする単一事業の企業で、当社の主機関は、現在のところ全て重油ディーゼル機関であります。この特性を踏まえて、定性的ではありますが分析を実施いたしました。
シナリオ分析の検討に際し、2030年時点の当社への影響として、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)及び国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の情報を参照し、2つのシナリオ:①SSP1-2.6(気温上昇を2℃未満に抑制)及び②SSP5-8.5(気候政策を導入しない最大排出力継続)を設定いたしました。シナリオ①では主に脱炭素社会に向けた移行リスクについて想定し、シナリオ②では主に気候変動による物理リスクについて評価いたしました。
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シナリオ① SSP1-2.6相当 |
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リスクの観点 |
認識されたリスク |
損失影響度 |
発生可能性 |
対処方法 |
|
現在の規制 |
・カーボンニュートラルを実現するための新燃料に汎用性がない場合、安全面での規制が厳しすぎ、莫大な設備投資等が発生する |
3 |
1 |
・リスクを取って投資を判断するが、回収の見込みが未知数。ただし、新たな技術研究につながる積極的な内容とした |
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新たな規制 |
・カーボンプライシングが船舶等に導入されると、そのコストが主機関に跳ね返って値下げ圧力となる |
4 |
2 |
・カーボンニュートラル対応主機関の拡販機会とするべく営業活動を展開 |
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法的リスク |
(現在対象となるものはありません) |
― |
― |
― |
|
技術リスク |
・各種新燃料に対する主機関設計が困難 |
1 |
1 |
・メタノール燃料エンジンについては、翌事業年度に完成・出荷予定。 ・水素、アンモニア・バイオ燃料等も検討を進める必要があるが、個社での技術開発はリスクが高く共同体での開発が鍵となる |
|
市場リスク |
・カーボンニュートラルの燃料やそのためのインフラが備えられないとき、構造的に燃料を船舶に搭載できないとき、主機関の需要が激減する可能性がある |
1 |
1 |
・内燃機関以外の推進システムへのシフトを検討するか、新たな事業を展開する必要がある |
|
|
・自社のCO2削減施策が計画通りに実施できなかったとき、市場の評価が低下 |
4 |
3 |
・計画の実効性をよく吟味する |
|
|
・サプライチェーン内での他社の取組により、そのコスト回収のため材料価格等が上昇したとき、当社での吸収が困難になる |
3 |
2 |
・値上げ交渉とともに、社内でのコストダウンに努力する |
|
|
・再生エネルギー電力コストの増大による当社収益圧迫 |
2 |
4 |
・生産効率の向上、省エネ設備の導入等 |
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評判リスク |
・自動車分野ではEVへのシフトが鮮明であるが、船舶分野の状況も同様と捉えられると、主機関は衰退する技術と見られる可能性がある |
2 |
4 |
・電池技術等も含めた、船舶関連技術の正しい現状をアピールしていく ・内航船舶業界での統一見解を引き出すような施策を取っていく必要がある |
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シナリオ② SSP5-8.5相当 |
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リスクの観点 |
認識されたリスク |
損失影響度 |
発生可能性 |
対処方法 |
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緊急性の物理リスク |
・地球温暖化に起因する、海水面上昇、台風の頻発化/大型化等による播磨工場及び玉津工場の水害 ・異常気象の激甚化が進み、サプライチェーンの寸断などで生産停止に伴う損失拡大 |
3 |
2 |
・各工場の水害対策を強化する ・内製化を徹底的に進めるとともに、サプライチェーンの冗長化を進める |
|
慢性の物理リスク |
・気温上昇に伴う、工場作業環境の悪化 |
1 |
4 |
・コストパフォーマンスに優れた暑熱対策 |
(注)損失影響度 1:存続に関わる重大な損失、2:長期的に重大な損失、3:一時的に重大な損失、4:軽微な損失
発生可能性 1:数十年に1度以下、2:数年に1度、3:1年に1度、4:1年に数度又は発生中
<気候変動に対する機会>
長年環境経営を実践してきた当社にとって、気候変動は、事業リスクのみならず、自社製品等の提供価値や企業価値を高める機会、すなわちチャンスにつながると確信しております。お客様の脱炭素化を支援する製品を提供し、社会やお客様の課題解決に貢献してまいります。
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当社の機会 |
2023年度財務効果・影響 |
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カーボンニュートラルのグリーンメタノールエンジンの開発及び製造・販売 |
播磨高度研究棟関連の設備投資403百万円 |
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CMR事業の促進(主機関の余剰生産能力を金属加工受注に注力し、脱炭素関連会社の受注が増大) |
売上高644百万円(前期比46.8%増) |
<主機関の戦略>
〔ディーゼル機関基本設計戦略〕
当社は従来から、サステナブルな戦略的設計選択として、低速4サイクルエンジンを主力商品として育ててきました。内燃機関については、設計的に大きく、低速エンジン(以下低速)と中高速エンジン(以下、代表して中速)に分かれます。エンジンの回転速度が遅いか速いかにより区分され、機能的特徴が異なります。代表的な回転速度で示しますと、低速では300min-1、中速では600min-1となります。低速でも中速でも一定の回転角度の範囲で燃料を燃焼させますので、低速では燃焼時間を長くとることができ、燃料を十分に燃やせますが、中速では燃焼時間が短く低速に比較して燃料を十分に燃やしきれません。つまり、原理的に低速の方の燃焼効率が高いこととなり、同一出力で比較しますと燃費が良くCO2排出量が少なくなります。一方、実用的には一度の燃焼での爆発力が強くなりトルクが増すことになります。高いトルクで出力を稼ぐのが低速で、高い回転数で出力を稼ぐのが中高速ということになります。低速では大きなトルクをカバーするために、エンジン自体やプロペラに回転を伝える逆転機の強度を高める設計をする必要があります。したがって、イニシャルコストがアップしますが、エンジンは長持ちするとともにメンテナンス費用が節約でき、ライフサイクルコストの観点からは有利となります。このサステナブルな特徴も低速エンジンの魅力となって市場に受け入れられており、これらの特徴を活かしたオリジナル低速4サイクルエンジンを当社の主力商品として取り揃えております。
〔重油ディーゼルエンジン戦略〕
重油ディーゼルエンジンとしては、燃費改善に伴うCO2排出削減が主な機能的改善の取組となります。当社が、2014年度に市場導入を行った燃料噴射電子制御エンジンでは3%の排出量削減、現在開発中のGHG排出削減設計エンジン〔S(スペシャル)エンジン〕では2%の削減が実現できます。お客様の期待のある限り今後とも不断の努力をもって性能改善に邁進してまいります。
〔使用燃料戦略〕
使用燃料について、各種燃料の特性に依存し様々な課題が存在します。燃料価格や実用上の長短所に従って選択されているもの、お客様の戦略等に従って選択されているものが異なる状況です。当社では、まず2017年度にLNGガスエンジンを開発しました。LNGを活用することにより、重油に比較して約25%のCO2排出量削減が可能となります。2022年度よりさらなる排出量削減を目指して、(グリーン)メタノール及びバイオ燃料を選択・優先して技術開発を進めております。また、中小型の内航船舶では実用的制約が多く、水素については大きな容量の燃料タンクと高度な冷却システムが必要であること、アンモニアは人体に対する毒性が懸念されることから、当社は現在のところメタノールとバイオ燃料が有望であると判断しております。しかしながら、メタノールはA重油の2倍以上の容量のタンクが必要な上、船舶・港湾の安全規則上の制約が厳しく、取り扱いが難しいことがコストアップにつながり、バイオ燃料も性能上特に問題は見られないものの、供給側に難しさがあり、汎用性のある燃料とはなっておりません。これらの状況が反映され、業界全体としての戦略が定まらず、日本の競争力を高める状況には至っていないのが実状であります。なお、各種燃料についての基礎的な物理的性質を下表に示しました。重油と比較して燃料体積が大きくなることと、液体に保持するための冷却が課題になっております。
〔電気モータ推進等〕
船舶用推進システムについては、大きく分けて上述の内燃機関と電気モータ推進があります。内航船舶用電気モータ推進に関しては現在のところ、一例では10時間のフル充電で150~180km程度の短い航続距離ということと、再生可能エネルギーで発電された電気を使用することが困難ということで、当社においては状況を見守っているところであります。
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燃料種類 |
総発熱量 |
単位熱量 当たり体積 (L/100MJ) |
融点 (℃) |
沸点 (℃) |
CO2排出量 (gC/100MJ) |
|
A重油 |
38.9 MJ/L |
2.57 |
― |
300以上 |
1,932 |
|
LNG |
54.7 MJ/kg |
3.97 |
― |
-162 |
1,387 |
|
メタノール |
22.7 MJ/kg |
5.56 |
-96 |
20 |
(注)1,652 |
|
水素 |
142 MJ/kg |
9.93 |
-259 |
-253 |
0 |
|
アンモニア |
22.5 MJ/kg |
6.59 |
-78 |
-33 |
0 |
|
バイオディーゼル |
35.6 MJ/L |
2.81 |
― |
170 |
(注) ― |
|
バイオエタノール |
23.4 MJ/L |
4.27 |
-115 |
25 |
(注)2,228 |
|
モータ(参考) |
3,600 MJ/kWh |
― |
― |
― |
― |
(注)カーボンニュートラル燃料
出典:資源エネルギー庁「エネルギー源別標準発熱量・炭素排出係数(2018年度改訂)」他
(2)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標について
<戦略>
当社は2023年5月、新中期経営計画の重点課題として人的資本の強化を謳い、人事部・人事課(現:人事総務部・人事課)を創設いたしました。人事課の下には人材開発係を設置し、人材開発に特化した取組を行っております。当面の取組として管理者のマネジメント力アップに注力することを大方針とし、部下育成能力養成、人権尊重、起業家精神の育成を3つの柱として進めることとしております。これらの方針や取組の柱の根底には、多様な客観的視点から自らの行動や言動を評価し、歩み方の構築ができる人材の開発が不可欠であると認識しております。すなわち、経営者から作業者、老若男女、障害の有無、異なった国籍等、あらゆる価値観を持ったステークホルダーの視点で自らを律する管理者の養成を主眼としております。特に、業界特有の男性主体の会社であったことは各種指標からも明らかであり、今後は次のパラグラフで示しますように女性の活躍にも焦点を当てた取組、女性視点からの行動ができるマネジメントの育成及び女性管理職の育成にも力点をおいてまいります。
<女性活躍の推進>
当社は、性別に関わらず従業員が活躍できる雇用環境の実現を目指しながら、①採用者に占める女性割合を20%以上にする、②副職場長以上の役職者における女性比率を3%以上にする、を目標に対策を進めております。当社では151期より女性採用を積極的に進めている状況で、管理職登用制度の中では次年度より登用の評価対象者が増える予定であり、比例して役職者が増す予定であります。加えて、ジェンダー平等に配慮した人権方針の新設や育休制度の拡充にも力を入れております。
直前3ヵ年の多様性に関する項目の実績推移
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多様性に関する開示項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
|
|
( |
1.8 |
1.7 |
|
|
|
( |
2.5 |
3.7 |
|
|
|
( |
- |
14.3 |
|
|
|
( |
78.3 |
80.7 |
|
(注)1.女性管理職の割合は、課長級以上の管理職に対する女性の割合を記載しております。
2.女性係長級の割合は、課長級より下位の役職に対する女性の割合を記載しております。
3.男性育児休業取得率の母数は、子供の扶養申請があった人員数であります。なお、対象者がいない場合は「-」で表示しております。
4.労働者の男女の賃金の差異は、非正規を含む全労働者の「女性の平均年間賃金÷男性の平均年間賃金」として算出しております。
当社の経営成績及び財務状況に影響を与える可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。なお、当社の事業に関する全てのリスクを網羅したものではありません。また、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 国内内航船業界偏重による主機関受注減少リスク
現在の内航海運業界ではここ数年の稼働隻数は5,200隻前後で推移しておりますが、1隻当たりの平均総トン数が10年前に比べ約3割増加し船が大型化する結果、従来の小型船の隻数が減少するとともに、船員の高齢化や若手船員の減少等による内航船員の慢性的な不足により、トータルとしての緩やかな隻数の減少傾向が継続しております。一方、内航船を建造できる造船所はおよそ32社で、そのすべての建造能力を合わせても建造可能隻数は年間100隻に満たないとされています。その市場に対して国内の舶用4サイクルエンジンメーカー5社が存在し受注競争が一層激化しております。このようななかで、当社は新しい技術に裏打ちされた付加価値によりお客様に満足を提供し、国内内航船業界のシェアの拡大を図るとともに、海外、特に東南アジアを中心としたマーケットの開拓に注力してまいります。
(2) 低速4サイクルディーゼルエンジン偏重による主機関受注減少リスク
当社の主力商品は、低速4サイクルディーゼルエンジンであり、その特長はロングストローク化と機関回転数を低くすることにより燃焼を確実に行うことができる結果としての、中速エンジンに比べた高い熱効率であります。また低回転が必要なプロペラと複雑な減速機を介さず直接に結合できることと、機関回転数が低いことが相まって高いシステム信頼性を有しており、その結果メンテナンスコストを含めた生涯コストが低くなっています。この特長が内航海運用途で評価され高いシェアを誇っております。しかし、この特長による中速機関への優位性が認められにくくなる、又は環境対応としてディーゼルエンジンそのものに対する風当たりが強くなれば、受注減少のリスクがあります。まずは、その優位性を確保するため現有ディーゼルエンジンの継続的な性能改善を進めております。また、付加価値の向上として、高度船舶安全管理システムや機関モニタリングシステム「HANASYS 5」等ソフト面でのサポート機能の充実も図っております。加えて、メタノール燃料エンジンも完成しており、今後のGHG削減に対して脱炭素を視野に入れ研究開発を進めてまいります。
(3) IMO規制(国際海事機関により採択された地球環境保全に対する規制)への未対応リスク
当社に関連のある規制としましては、NOx3次規制、SOx規制、EEDI規制及びEEXI規制(CO2規制)、船内騒音規制等があります。現時点で、将来直接的に対応が必要と考えられる規制はNOx3次規制であり、規制に適合できるエンジン又は技術が開発できない場合は当社の経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。対策のひとつとして規制に適合できるガスエンジンの開発をいたしました。SOx規制は燃料油に、EEDI規制、EEXI規制及び船内騒音規制は船舶全般に関わる規制となりますので、それらに対する関係各社の対策技術が開発されない場合、新船建造に歯止めがかかり当社の主機関受注に大きな影響を及ぼす可能性があります。お客様のご要望に対する可能な限りの各種技術データの提供等にて、最大限の協力をさせていただいております。地球環境保全に対する積極的な貢献が当社の使命でもあり、ビジネスチャンスを掴み取る機会でもありますので、主機関を含めた推進システムの総合メーカーとして課題解決に向けて技術的可能性を追求してまいります。
(4) 新卒人材採用の困難継続リスク
日本の少子高齢化に伴い新卒の人材採用が困難になってきております。現時点では採用計画をほぼ充足させる新卒者数の応募があるのみとなっており、状況がさらに厳しくなり計画数に満たない状況が継続すれば、技術やノウハウの社内伝承が進まず事業機会を失うことにより、当社の経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。対策としましては、大学との個別コンタクトや積極的な会社説明会への参加、通年採用や経験者採用のオープン化、初任給のアップ、マイナビやラッピングバス、自社ウェブサイトの活用(当社の魅力発信等)を行っております。加えて、経験者人材の採用を進めるため、リファラル採用や転職サイトの有効活用をしております。
(5) 感染症パンデミックの影響による損失拡大リスク
社内で感染者が多発した場合、操業停止等により経営成績や財政状態へ大きな影響を受ける可能性があります。新型コロナウイルス感染症について、現状は収束しましたが、今後、同感染症の再流行や新たな感染症が流行した際には、今般得た経験を生かし、対策本部の設置による情報の一元化、時差出勤・テレワークの活用など迅速に対応してまいります。
(6) SDGs対応に貢献できなかった場合のリスク
SDGsへの貢献は、既に一般企業、一般社会人の果たすべき当然の義務という位置づけです。その義務を果たさなければ、ビジネス社会の責任ある一員と捉えてもらえない大きなリスクがあります。今回の新中期経営計画においても引き続きSDGsへの貢献を基軸に据え、中期目標にてSDGsに貢献できる具体的な目標を設定しております。これからも地球と人を大切にする企業活動に邁進してまいります。
(7) ロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスク
ロシア向けの主機及び部品の販売につきましては、2022年3月の経済産業省の輸出貿易管理令の一部改正以降、一切の販売を取りやめております。元々ロシアへの主機販売の実績はなく、部品販売も少額であったため部品の売上高に対する影響は極めて軽微なものとなっております。ただし、エネルギーや原材料等の資源高騰のリスクがあり、金属材料や部品の二次的な高騰につながり利益を圧迫する可能性があります。いずれにせよリスク状況をよく見極め、可能な限りの対策を実施していく所存であります。
(8) ランサムウエア攻撃による損失リスク
当社基幹システムがランサムウエアによる攻撃を受けた場合、システム障害による操業停止に陥り、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。現在、侵入防止のため、社内のセキュリティを可視化して内部からの不正を監視するソフト、業務上閲覧することが不適切なウェブサイトを閲覧制限するソフト、インターネットと企業内LANの間に設置して外部からの不正アクセスを防ぐシステム・パソコンを様々なサイバー攻撃から守るソフトを導入していますが、実際に暗号化され、攻撃が発覚するまでの期間が長期化し、暗号化被害が拡大するリスクがあります。対策としてサイバーリスク保険に加入する一方、進化するサイバー攻撃に対して防御するシステム導入を進めております。
(9) 重要な会計上の見積りによるリスク
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されておりますが、財務諸表の作成にあたり、当事業年度末時点の状況を基に行った見積りと当該見積りに用いた仮定のうち、製品保証引当金及び受注損失引当金の見積りには一定の不確実性が含まれております。製品保証引当金については、不具合の予測発生台数及び過去の費用実績を基に見積っておりますが、本質的に将来の不具合発生の予測は不確実なため、見積費用が変動することがあります。受注損失引当金については、契約ごとの仕様及び販売基準価格表から算出した総費用等を基に見積っておりますが、契約仕様は顧客の要求に基づくものであり個別性が強く、また作業工程の遅れ等、当初予定していない事象により見積費用が変動する場合があります。これらの状況変化に伴い結果として、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあります。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
資産合計は、22,751百万円(前事業年度末比1,766百万円増)となりました。
流動資産の増加(同125百万円増)は、現金及び預金の減少(同720百万円減)があったものの、電子記録債権の増加(同124百万円増)、棚卸資産の増加(同676百万円増)が主な要因となっております。
固定資産の増加(同1,641百万円増)は、有形固定資産の増加(同595百万円増)、投資有価証券の増加(同534百万円増)、長期預金の増加(同500百万円増)が主な要因となっております。
(負債)
負債合計は、8,335百万円(同1,203百万円増)となりました。
流動負債の増加(同1,203百万円増)は、未払法人税等の減少(同101百万円減)があったものの、仕入債務の増加(同660百万円増)、契約負債の増加(同412百万円増)、受注損失引当金の増加(同87百万円増)が主な要因となっております。
固定負債はほぼ横ばいとなっております。
(純資産)
純資産合計は、14,415百万円(同562百万円増)となりました。
株主資本の増加(同303百万円増)は、利益剰余金の増加(同294百万円増)が主な要因となっております。
評価・換算差額等の増加(同259百万円増)は、その他有価証券評価差額金の増加(同259百万円増)が主な要因となっております。
②経営成績の状況
当期の経営成績につきましては、受注高は主機関の受注が増加し、前期比23.9%増の12,055百万円となりました。売上高についても、主機関、部分品ともに増加したことから、前期比6.3%増の9,636百万円となりました。受注残高は前期比64.5%増の6,171百万円となりました。
損益面につきましては、資材価格の高騰分を製品価格に転嫁し切れていないことや大型設備投資による減価償却費の増加があったものの、部分品とCMR(鋳造・金属機械加工)の販売増加で補い、営業利益は551百万円(前期比0.1%増)、経常利益は643百万円(前期比6.8%増)となり、当期純利益は456百万円(前期比12.1%増)となりました。
事業区分別では、主機関の売上高は、近海船向け2サイクル機関の出荷が増加したことから、4,552百万円(前期比2.3%増)となりました。部分品等の売上高は、国内の部分品・修理工事や、CMR(鋳造・金属機械加工)も増加したことから、5,084百万円(前期比10.2%増)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,320百万円減少し、当期末は3,298百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,103百万円となりました。これは主に、棚卸資産の増加676百万円があったものの、税引前当期純利益643百万円、売上債権の減少390百万円、及び仕入債務の増加660百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,252百万円となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入2,300百万円があったものの、定期預金の預入による支出3,000百万円、長期預金の預入による支出500百万円、有形固定資産の取得による支出842百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、172百万円となりました。これは主に、配当金の支払額160百万円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社は舶用機関関連事業の単一セグメントでありますが、以下のとおり「主機関」と「部分品・修理工事」の区分で記載しております。
a.生産実績
当事業年度における生産実績は次のとおりであります。
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区分 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
主機関(千円) |
4,907,076 |
12.5 |
|
部分品・修理工事(千円) |
5,137,103 |
10.4 |
|
合計(千円) |
10,044,179 |
11.4 |
(注)金額は平均販売価格により示しております。
b.受注実績
当事業年度における受注実績は次のとおりであります。
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区分 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
主機関 |
6,971,491 |
36.3 |
6,171,100 |
64.5 |
|
部分品・修理工事 |
5,084,242 |
10.2 |
- |
- |
|
合計 |
12,055,733 |
23.9 |
6,171,100 |
64.5 |
c.販売実績
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。
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区分 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
主機関(千円) |
4,552,341 |
2.3 |
|
部分品・修理工事(千円) |
5,084,242 |
10.2 |
|
合計(千円) |
9,636,583 |
6.3 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
山中造船㈱ |
913,111 |
10.1 |
619,215 |
6.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、 第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度の経営成績等は、「(1)経営成績等の状況の概要」及び以下のとおりであります。
当事業年度においては、船価上昇により船主が建造の様子見を継続したことから、主機関の出荷がさらに落ち込みましたが、輸出を中心に部分品売上が好調でありました。また、第2の柱と位置付けるCMR(鋳造・金属機械加工)について引き続き積極的な営業活動を展開した結果、売上高は前事業年度より増加しました。利益面につきましては部分品売上の増加に加えてCMRの増加による操業度の維持、全般的な経費削減により横這いとなりました。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社の資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び内部留保を財源に経営を行っており、十分な流動性を有していると考えております。なお、当事業年度における借入実績はありません。
(1)技術導入契約
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相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
対価 |
契約期間 |
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川崎重工業㈱ |
日本 |
船舶用サイドスラスタの製造権及び販売権の許諾 |
販売高の一定率のロイヤルティーを支払 |
1987年5月28日より8年間、期間満了後1年毎に更新 |
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川崎重工業㈱ |
日本 |
MAN-B&W型小口径ディーゼル機関の製造及び販売に関する再実施権 |
エンジンの出力に対し一定料率の再実施料 |
2012年4月1日より10年間、期間満了後1年毎に更新 |
当社は船舶用ディーゼルエンジン、周辺機器等、製品の開発から出荷、メンテナンスまで一貫した事業活動を通して、独自の技術力とアフターサービスを提供し、顧客の満足を得ることを基本としております。
なお、研究開発活動の状況について当事業年度より以下のとおり変更しております。
当社は、新技術開発の強化及び開発技術の水平展開の強化の両輪を着実に進めるため、2023年6月29日付で研究開発組織の変更を行いました。具体的には、従来の技術部を研究開発部と設計部に分割し、前者は新技術・新製品の開発を、後者は受注製品の設計・既存技術の応用を担う体制といたしました。これにより、人的資本を適切に配分し、より繊細なマネジメントを可能とするとともに、研究開発部では関連部門との連携により新技術や新規事業の創出に注力してまいります。
上記より、現在研究開発は研究開発部において推進されており、うち研究開発のスタッフは12名であります。
当事業年度における研究開発費の総額は
なお、研究開発の区分別の主な内容は次のとおりであります。
(1) 主機関・主機関の開発
高性能、高信頼性を有する現低速4サイクルディーゼルエンジンをベースにメタノールを燃料としたメタノール燃料エンジンを開発しました。工場運転を実施し、2024年6月に出荷いたしました。
また、次世代の機関モニタリングシステムHANASYS 5シリーズに、高度船舶安全管理システムに対応したHANASYS 5EXを開発しております。
(2) 新規事業
特命担当チームにおいてオリジナル鋳物商品等の企画立案・試作を進めております。