当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、下記のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループの理想は「福祉社会の創造」です。地域社会とのコミュニケーションを通じ、ホスピタリティ(厚遇)の創造を追求し、住み良い環境、福祉社会の実現に貢献してまいります。
また、当社グループの目的は「生き甲斐の創造」です。「人のケア」「家族のケア」「街のケア」のトリプルケアを通し、お客様の生き甲斐を創造してまいります。そのために、当社グループは、「お客様第一主義」を徹底し、全社員が“お客様から片時も目を離さないこと”を念頭に安心と満足と喜びという信頼を、サービスと商品で提供してまいります。この「お客様第一主義」を推進することにより、当社グループの安定成長につながるものと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、継続的な成長及び株主価値の最大化を目標としており、売上高成長率6%(2024年3月期:2.9%)、売上高営業利益率6~7%(同5.6%)の達成、維持に努めてまいります。また、資本コストを意識し、経営の効率性を測る指標として、ROE(自己資本利益率)は12%以上の水準を維持する計画としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループにおきましては、介護保険制度の変化に対応していくとともに、中重度・医療ニーズの高いお客様への対応を重要課題として、「これまでも、これからも、ずっと在宅」をスローガンとして掲げ、お客様が住み慣れた地域で生活し続けることを可能にするソリューションを提供してまいります。
介護保険制度においては、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを継続できるよう、医療、介護等のサービスが切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される体制である「地域包括ケアシステム」が推進されております。
当社グループは、成長戦略として訪問看護と看護小規模多機能型居宅介護を重点投資サービスと定め、医療ケア拠点の積極展開を進めております。
これらのサービスを中心に、様々な関係者との連携を強化したセントケア版地域包括ケアシステム(コミュニティNo.1戦略)を推進するとともに、地域介護の担い手として、求められる多様なニーズへ対応できるサービス提供体制を整備してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上の課題
わが国における少子高齢化・人口減少といった大きな問題は、生産年齢人口の減少による労働力不足、そして高齢者や要介護者の増加による社会保障費の増大という形で、社会に多大な影響を及ぼしております。
こうした背景のなか、介護サービス業界では今後も介護需要は見込まれるものの、人材が確保されないと介護難民の問題を生じさせるばかりか、介護現場も業務負荷の増加によるサービス品質の低下や介護事故の発生リスクの増大等により、結果として企業の継続・成長を妨げる要因ともなります。当社グループでは、このような問題に対応するため、下記の課題に取り組んでまいります。
①人的資本経営の推進
福祉・介護分野の有効求人倍率は高く推移するなど人材の確保は難しい状況にあり、人を資本として捉えた取り組みが重要であると認識しています。
当社グループといたしましては、良い組織風土の醸成と強い企業文化をもって働く人財の自己実現を支援し、「優しさ」が主役となる福祉社会の創造を目指すことを人的資本経営の基本方針としており、その実現に向けて「経営理念・ビジョン・経営戦略に基づいた人財戦略」、「働き甲斐を後押しする教育・支援」、「働く日々を充実させる職場環境」を掲げております。これらの具体的な取り組みとしては、当社グループの存在意義や長期ビジョンを言語化することによるブランディングへの着手、様々な職種別のキャリアラダー構築、教育・研修や資格取得支援策の拡充などを中期人材開発計画によって明確にしており、その進捗をモニタリングしてまいります。また、待遇面では、継続した定期昇給に加えて諸手当の見直しなどにより、給与水準を高める取り組みも行っております。
こうした取り組みを通して、セントケア・グループで働きたいと選ばれる企業となり、スタッフと会社が想いを実現できる職場を実現してまいります。
②サービス品質の向上
介護事業者には、地域からの信頼やお客様から満足いただけるようサービス品質の向上がより求められており、当社グループにおいても規模拡大に伴い新しいお客様とスタッフが増加していくなか、重要な課題として捉えております。
2024年度は介護・医療・障害福祉それぞれの報酬改定が行われており、改定のなかでは、地域包括ケアシステムの更なる推進に向けた医療と介護の連携強化として、介護においても医療的な領域でのケア能力が発揮できるよう、専門性の向上が求められております。
当社グループではこれまでも医療ニーズへの対応を重視してまいりましたが、引き続き訪問看護と看護小規模多機能型居宅介護の拠点を拡大していくと共に、小規模多機能型居宅介護やショートステイといった施設を看護小規模多機能型居宅介護や在宅ホスピスへ転換する事業構造の見直しを進めてまいります。また、訪問看護と訪問介護を同じ拠点で開設してきた強みを活かし、その連携を強化することでお客様により良いサービスを一体的に提供できる体制づくりに取り組んでまいります。
その他には、スタッフの専門性向上と対応力を強化していくため、ターミナルケアや認知症ケアなどの研修を推進すると共に、医療関係機関とのネットワークを仕組み化する取り組みも進めております。
当社グループでは、このような取り組みを通して、お客様が安心して自宅での生活を長く続けることができる社会基盤づくりに貢献するとともに、介護報酬に新設された加算や上位区分の加算を取得するなど、付加価値の高いサービス提供を行ってまいります。
③成長基盤の強化
感染症の発生や物価上昇、気候変動による自然災害といった環境変化に伴い、当社グループでもサービス提供の中止や休止、コストの上昇など、業績へ影響を与える事象が生じております。このような状況でも持続的な成長を続けられるよう、当社グループでは成長基盤の強化を重要な課題と捉えております。
これまでも推進してまいりました「多機能型サービス」、「訪問看護」、「訪問介護」の3つのサービスをユニット化した「コミュニティNo.1拠点」については、2024年3月末時点で全国41のエリアで展開しており、当社グループの重要な成長戦略として、引き続き取り組みを加速してまいります。
「コミュニティNo.1拠点」に配置されるソーシャルコミュニティリーダーは、医療機関や同業他社、自治体や地域ボランティアなどと連携した活動の実施、地域社会やお客様の介護を取り巻く問題解決を図る役割を担っております。その活動がNo.1拠点の成功に不可欠であることから、役割に専念できる体制の整備やメンター制度の構築によって、ソーシャルコミュニティリーダーの育成や、リーダー同士の交流・情報共有に取り組んでおります。
コミュニティNo.1戦略の拡充と訪問系サービスを中心とした新規開設、そして既存拠点の成長を促進するための支援を強化することで、当社グループは、成長基盤を強化してまいります。
コミュニティNo.1拠点イメージ
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般について
当社は、ESGに配慮し企業市民としての責務を果たしつつ事業展開をはかることこそ当社の持続可能性を高め、企業価値の向上がはかられるものと認識しております。当社の「コーポレート・ガバナンス方針」においては、サステナビリティを重視する考え方や価値観を軸にコーポレート・ガバナンス体制や仕組みを構築していくことを取締役会等の責務として定めて、サステナビリティ経営の実践を重要な経営課題として位置付けております。
当社のサステナビリティ活動の方針、目標、計画の策定、実践状況のレビュー等は、委員長をはじめ過半数を社外取締役からなるサステナビリティ委員会(2024年2月にガバナンス委員会より改編)において議論され、適時取締役会に報告がされることで取締役会の監督が機能し適切な活動がなされるガバナンス体制をとっております。
また、当社においては、内部統制担当役員のもと内部統制委員会を設置し、内部統制の推進、リスク管理及びコンプライアンス体制の整備に取り組んでおります。内部統制委員会においては、管理本部、品質企画本部等から各所管領域におけるリスクの識別、評価、管理状況について定期的に報告を受け、その重要度・優先順位を判別した上で取締役会への報告がなされる体制を取っております。当社では、お客様サービスにかかる法令遵守体制及び安全管理をリスクとして識別しており、マニュアルの整備や研修体制を構築しサービス品質を高めることで、地域社会からの信頼性が高められ、結果企業価値向上の機会となるものと考えております。
この体制のもと、マテリアリティの特定にかかる議論は継続しつつも、サステナビリティに関する以下のような取り組みを行っております。
①環境への負荷の軽減
気候変動への対応といたしましては、エネルギー消費を抑制すべく既存施設でのLED照明への変換や太陽光パネルの設置などを進めると共に、自社新設施設につきましてはZEB(Net Zero Energy Building)基準に準じた設計、建設開発を基本として取り組みを進めております。
気候変動の激甚化及び脱炭素社会への移行に伴うリスクについて、現時点において当社業績及び財務状況に重大な影響を及ぼしうる状況ではないと捉えておりますが、当社において排出される温室効果ガスの可視化(Scope1及び2)への取り組みを進めております。
②社会インフラとしてサービスの安定的供給
自然災害や感染症のパンデミックなど外的要因によるサービスの安定的供給を脅かすものへの対策の強化と共に、当社のほぼ全てのサービスにおいて人を介することで成り立つものであることから、その安定的な供給の実現においては極めて重要なものと認識しております。
③地域コミュニティとの共生
地域包括ケアシステムにおける基本的な考え方として、医療や介護、行政などといった枠組みを超え地域全体で協働、連携して介護を必要とする方々とその家族を支えることで、安心して生活を送れる環境を実現させるものであると認識しております。
当社においては、コミュニティNo.1エリアの確立を通した地域との共生関係の創造は当社のサステナビリティ経営に欠くことのできないものであると共に、その地域のサステナビリティを高めることに資するものと考え、引き続き「コミュニティNo.1戦略」を積極的に推進してまいります。
④ガバナンスの強化
サステナビリティ経営における最も重要なもののひとつが、ステークホルダーとの信頼であると考えております。その信頼をより強固なものとしていくために取締役会の実効性の向上とコンプライアンスの徹底につきましては、社会や市場からの要請に的確に応えるべく引き続き取り組みを進めてまいります。
(2)人的資本経営の取り組みについて
当社グループにおきましては、介護サービスを事業の中心に据える事業者として、成長に不可欠な人材の採用、人が育ち能力を発揮できる基盤づくりに力を注いでおります。
特にサービス拠点の介護能力・技能・体制への評価である各種加算の取得にもかかわる一定の能力・技能を有する介護福祉士や、医療ニーズに対応する看護師、介護サービスをコーディネートする介護支援専門員(ケアマネジャー)等の有資格者の拡充により、弛まぬ品質向上を推進するため、教育研修、資格取得支援の充実化への取り組みや効率的な採用活動を行っています。あわせて継続的な処遇改善に取り組みながら、多様な人材が様々なライフイベント、ライフスタイルに合わせて長く安心して働けるための制度とインフラ整備により、働きがいのある就労・職場環境を整え、従業員が活き活きと働き活躍できる組織作りに努めております。
2025年3月期の目標については、「新中期経営計画2025-2027」において定めたものであります。
①有資格者の拡充(
|
資格名 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
|
|
実績 |
実績 |
目標 |
実績 |
目標 |
|
|
|
3,982 |
4,196 |
4,700 |
|
|
|
|
2,154 |
2,270 |
2,500 |
|
|
②女性活躍推進(女性幹部割合:
|
役職名 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
|
|
実績 |
実績 |
目標 |
実績 |
目標 |
|
|
|
31.3 |
30.8 |
34.0 |
|
|
(注)「5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」における管理職は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
③正社員離職率(%)
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
実績 |
目標 |
|
12.6 |
12.2 |
(注)前期末在籍者数に対する期中退職者割合を算出したものであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)介護保険制度について
当社グループの主要な事業であります介護サービス事業のうち、介護保険法上の訪問介護、訪問入浴介護、居宅介護支援、訪問看護、福祉用具貸与・販売、通所介護(デイサービス)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護、特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム)、短期入所生活介護(ショートステイ)、看護小規模多機能型居宅介護等のサービスが、当社グループの連結売上高の大部分を占めるため、当社グループの事業は介護保険法の影響を強く受けることとなり、次のようなリスクがあります。
① 法的規制について
介護保険法に基づく介護サービスを行うには、事業所としての指定を都道府県知事等から受ける必要があります。指定を受けた事業所は、サービス毎に定められた事業の人員、設備及び運営に関する基準、並びに労働法規(労働基準法及び最低賃金法等)を遵守する必要があります。この基準及び労働法規を遵守することができなかった場合やサービス費を不正に請求した場合などにおいては、指定の取消又は停止処分を受ける可能性があります。
また、事業所の指定取消処分がなされ、その理由となった不正行為に対して事業者(法人)の組織的関与が認められた場合、当該事業者及びそのグループ会社(当該事業者の親会社、子会社、兄弟会社)は、同一のサービス類型の他事業所について新規指定や更新を受けることができないものとされております(連座制)。なお、指定事業所としての指定は6年ごとに更新を受けなければ効力を失うものとされております。
当社グループでは、介護サービスを提供する子会社各社において、選任された法令遵守責任者を中心とした業務管理体制の中で事業所の運営体制を常時指導・監督するとともに、当社品質管理部を中心として、各種マニュアルの整備及び研修を充実させることで管理体制の強化や教育の徹底を行い、適切な事業経営に努めております。また、当社人事部を中心として、研修・指導を実施することで各事業所における労働法規の遵守に努めております。
なお、当該リスクが顕現する可能性については、近年において軽微な指導や自主的な過誤調整などが発生しているものの、指定の取消又は停止処分を受ける事案は発生しておりません。しかし万一、一部の事業所において指定の取消又は停止処分を受けた場合には、当該事業所の収益を失う可能性があります。さらに、連座制が適用された場合には、当該子会社及びグループ各社における当該サービス類型の事業所の新規指定及び更新を受けられず、計画している収益を達成できない可能性があります。
② 介護保険制度の改正について
介護保険法については、定期的に法律全般に関する検討が加えられ、その結果に基づき必要な見直し等が行われるとともに、概ね3年に1度介護報酬の改定が行われることとされております。2024年度の介護報酬改定では、訪問介護において基本報酬が減額となる一方で高度な加算を促すなど、医療と介護の連携の推進や看取りへの対応、認知症への対応力向上など、介護において医療的な領域でのさらなる専門性や品質の向上が求められる内容となっております。
介護サービスに係る単位数、地域区分による一単位の単価及び一人当たりの支給限度額等については、介護保険法及びその他の省令により定められているため、その変更等は当社グループの収益性に影響を与える可能性があります。さらに、高齢化の進展に伴い年金・医療・介護等の社会保障財政上の課題が生じ、お客様や介護サービス事業者にとって不利となるような制度の見直しが行われた場合には、お客様数や売上単価の減少によって当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは、多様なサービスアイテムを揃えることで地域性やお客様ニーズの変化に対応していく方針のもと、引き続き制度改正に対して広く情報収集に努め、柔軟に対応してまいります。
(2)有資格者の確保について
当社グループがお客様に提供するほとんどの介護サービスについては、看護師・介護支援専門員(ケアマネジャー)・介護福祉士・実務者研修修了者等の有資格者によるサービスが義務付けられております。
当社グループでは、給与や待遇の改善により労働環境の改善を図り、有資格者の採用を強化すると同時に、実務経験に応じた段階的な技術向上を図り資格の取得を推奨するなど、有資格者の確保に努めております。
しかし、いずれの職種においても同業他社及び医療機関等と雇用関係で継続的に競合しているため、今後有資格者の確保が思うように進まない場合、当社グループの事業の維持、拡大に影響を与える可能性があります。
(3)安全管理及び健康管理について
当社グループの提供する介護サービス事業のお客様は主に要介護認定を受けた高齢者を対象としており、お客様の転倒事故の発生や状態急変といった体調悪化の危険が高いものと考えられます。また、感染症等がお客様やスタッフにおいて生じた場合には、状況に応じて当社グループの判断や自治体からの要請によりサービスの縮小や休止となる状況が生じるおそれがあります。
当社グループは、介護サービス手順のマニュアルによる標準化や社内研修の充実により、事故の発生防止や感染症の感染・拡大の防止、お客様の状態急変等の緊急時対策について積極的に取り組んでおり、緊急時には当社において対策本部を立ち上げ、グループの状況を把握・指示できる体制をとっております。
しかし、万一サービス提供時に重大な事故等が発生し、又は感染症が拡大し、当社グループの責任が問われた場合には、当社グループへの信用が低下し、業績に影響を与える可能性があり、その程度につきましては、当該事象の内容により様々であると認識しております。
(4)災害等発生時の対応について
グループホームや有料老人ホーム等の介護施設において地震・洪水等の災害や火災が発生した場合、入居されているお客様は主に要介護認定を受けた高齢者であるため、避難が困難となる危険性を有しております。
当社グループでは、防災マニュアルを作成し周知徹底するほか、防火管理者等を選任し避難訓練や防火訓練を実施する等火災の予防や被害発生の最小化に努めております。介護事業者には、在宅サービスも含めた各事業所における「感染症や自然災害発生時の事業継続計画」の策定が義務付けられており、当社グループでは今後も定期的な見直しを行ってまいります。
しかし、万一災害等が発生し、当社グループの責任が問われた場合には、当社グループへの信用が低下し、業績に影響を与える可能性があり、その程度につきましては、当該事象の内容により様々であると認識しております。
(5)お客様の情報管理について
当社グループが提供しているサービスは主にお客様個人を対象としているため、当社グループのスタッフは、お客様本人の個人情報はもちろん、そのご家族等を含めた様々な個人情報に日々接することになります。これらの情報は、その機密保持について十分な配慮をしなければならないと認識しております。
当社グループでは、個人情報の管理方法についての教育研修を定期的に実施するほか各種規程・マニュアルを整備するなど、様々な機会でその重要性を周知徹底しておりますが、万一情報管理上の問題が発生した場合、当社グループへの信用が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
(6)コンプライアンスについて
当社グループは、社会的信用が企業価値に大きな影響を及ぼすものと認識しております。当社グループでは、コンプライアンスの徹底による社会的信用の構築を図るため、コンプライアンス推進の方針を定め、教育研修を行うなどにより、事業の適切性や運営の透明性維持を図り、従業員のコンプライアンスに対する意識の啓蒙・強化に努めております。また、コンプライアンス違反の早期発見・是正を図るために、従業員から通報・相談を受け付ける内部通報窓口を整備しております。こうした内部統制体制及びコンプライアンス体制の検証の場として、内部統制委員会を設けており、その改善に努めております。
しかし、万一コンプライアンスに反する事態が発生した場合などには、当社グループへの社会的信用が低下し、業績に影響を与える可能性があり、その程度につきましては、当該事象の内容により様々であると認識しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、社会・経済活動の正常化が緩やかに進展しました。その一方で、日米金利差の拡大などに起因する急激な円安の進行やウクライナ・中東情勢をはじめとする地政学的リスクの高まりなどによる物価上昇等もあり、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社グループを取り巻く経営環境は、超高齢社会を背景に今後もサービスに対する需要の増加が予想されております。その一方で、生産年齢人口の減少とともに人材の確保がより一層厳しさを増しており、従業員の採用・定着に加えて生産性の向上が重要な経営課題となっております。
当社グループとしましては、収益基盤の強化として、訪問介護、訪問看護、多機能型サービスの展開を重点投資サービスとして推進するとともに、市場環境の変化や報酬改定等を見据えた上で採算性の低い拠点については業容転換や統廃合等を実行するなど、事業構造の見直しについても機動的に行っております。なお、当連結会計年度においては、訪問介護8ヶ所、訪問入浴2ヶ所、居宅介護支援1ヶ所、訪問看護11ヶ所、看護小規模多機能型居宅介護2ヶ所の合計24ヶ所の新規開設を行った一方で、統廃合については訪問介護2ヶ所、居宅介護支援3ヶ所、訪問看護6ヶ所、福祉用具貸与・販売1ヶ所、デイサービス2ヶ所の合計14ヶ所を実施した他、ショートステイと小規模多機能型居宅介護の合計2ヶ所を業容転換のための廃止、有料老人ホーム1ヶ所を他事業者へ事業譲渡いたしました。
新型コロナウイルス感染症に関しましては、社会・経済活動は正常化に向けた動きが着実に進んでいるものの、当社グループのお客様や従業員における罹患者数は前年同期の5割程度と比較的高い水準で推移いたしました。
サービス面では重点投資サービスである訪問看護や多機能型サービスが成長を牽引している一方で、訪問介護では新規でのお客様獲得は前年同期を上回って推移したものの、病院や入居系施設への入院・入所等による休廃止数の増加の影響を最も大きく受けたことで微増収となり、住宅リフォームでは減収となりました。この結果、売上高では540億57百万円(前年同期比2.9%増)の増収となりましたが、想定よりも回復ペースが遅れたことから成長率は緩やかな伸びに留まりました。
費用面では、人件費において、従業員への待遇改善は継続して進めながらも、全体としてはコロナ禍におけるサービス継続・支援のために実施していた特別勤務手当や休業補償等の支給や重層化となっていた運営体制が当期においては正常化へ向かったことで労働分配率が改善いたしました。その一方で、首都圏(東京都)を中心に一部エリアでの採用環境は厳しさを増しており、採用活動は強化しながらも局所的な人員不足を補うための外注派遣費が増加いたしました。その他、当期は前期と比較して施設系サービスを中心に投資をやや抑制したことから、消耗品費等の開設に伴う準備費用は減少しました。
この結果、営業利益は30億34百万円(同19.5%増)、経常利益は31億55百万円(同16.5%増)及び親会社株主に帰属する当期純利益は20億5百万円(同17.0%増)となりました。なお、事業構造見直しに伴い実行した有料老人ホーム1ヶ所の事業譲渡に伴う売却益等44百万円、持分法適用関連会社の持分変動に伴う持分変動利益44百万円を特別損益に計上しております。
当連結会計年度におけるセグメントの業績を示すと、次のとおりであります(セグメント間取引を含む)。
・介護サービス事業
訪問系サービスでは、訪問介護において、当期はサービスの高度化・単価改善に取り組んでおり、前期に比べて総合事業のお客様数は減少しております。介護給付を中心とした新規お客様獲得は前年以上に進んだものの、休廃止の影響などもあり、増収減益となりました。
また、訪問看護では前期に開設した15ヶ所の拠点の収益貢献に加えて、当連結会計年度に11ヶ所を開設したことでお客様数が増加し増収増益となり、訪問系サービス全体で見ても増収増益となりました。
施設系サービスでは、デイサービスにおいて既存拠点の収益改善が図られたことや、看護小規模多機能型居宅介護においても前期に開設した6ヶ所の拠点が順調に収益貢献しており、両サービス共に増収増益となりました。
これらの結果、売上高は529億86百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益は20億87百万円(同22.1%増)となりました。
なお、当社グループが推し進めております「コミュニティNo.1戦略」については、当連結会計年度において11エリアで開始しており、累計で活動中のエリアは41ヶ所となっております。
・その他
その他においては、セントワークス株式会社では2023年3月31日付で労働者派遣事業を廃止しており売上高が減少しました。その一方でケアボット株式会社の介護ロボット販売事業が堅調に推移しました。その結果、売上高は14億21百万円(前年同期比0.0%減)、営業利益は1億45百万円(同148.8%増)となりました。
また、当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ14億57百万円増加し309億87百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ33百万円増加し149億19百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ14億23百万円増加し160億68百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、長期借入金の返済による支出、有形固定資産の取得による支出等があった一方で、税金等調整前当期純利益31億83百万円等の営業活動による収入に より、前連結会計年度末に比べ13億34百万円増加し、当連結会計年度末には80億21百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、39億62百万円(前年同期比97.8%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益31億83百万円となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、7億15百万円(同36.1%減)となりました。これは主に事業譲渡による収入が1億31百万円あった一方で、有形固定資産の取得による支出8億91百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、19億12百万円(前年同期は1億98百万円の獲得)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出11億49百万円、配当金の支払5億92百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出が1億70百万円あったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
仕入高(千円) |
前年同期比(%) |
|
介護サービス事業 |
1,689,234 |
102.5 |
|
その他 |
233,545 |
161.2 |
|
合計 |
1,922,779 |
107.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は仕入価格によっております。
c.受注実績
該当事項はありません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
介護サービス事業 |
52,983,988 |
102.8 |
|
その他 |
1,073,092 |
106.6 |
|
合計 |
54,057,081 |
102.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
千葉県国民健康保険団体連合会 |
6,427,787 |
12.2 |
6,632,053 |
12.3 |
|
神奈川県国民健康保険団体連合会 |
5,427,367 |
10.3 |
5,722,223 |
10.6 |
|
東京都国民健康保険団体連合会 |
4,694,875 |
8.9 |
4,636,335 |
8.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、売上高は540億57百万円(前年同期比2.9%増)、営業利益は30億34百万円(同19.5%増)、経常利益は31億55百万円(同16.5%増)及び親会社株主に帰属する当期純利益は20億5百万円(同17.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります(セグメント間取引を含まない)。
・介護サービス事業
売上高では、施設系サービスにおいては、看護小規模多機能型居宅介護で前期に開設した6ヶ所に加えて、今期も2ヶ所を開設(2024年3月末時点51ヶ所)したことでお客様数が増加し、5億21百万円の増収となりました。また、訪問系サービスにおいては、前期15ヶ所・当期11ヶ所を開設した訪問看護(同123ヶ所)において集客が進み4億90百万円の増収となりました。
利益面では、施設系サービスにおいては、看護小規模多機能型居宅介護で前期に開設した6ヶ所の黒字化、収益貢献により1億14百万円の増益となり、デイサービスで感染症による利用控えの影響を受けつつも1億57百万円の増益と、施設系サービス全体で利益が増加しております。
訪問系サービスにおいては、訪問看護で前期に開設した拠点の貢献で1億65百万円の増益となり成長を牽引した一方で、訪問介護では介護給付を中心とした増客により単価改善は進んでいるものの、休廃止の影響などもあり1億46百万円の減益となりました。
・その他
ケアボット株式会社の介護ロボット販売事業が堅調に推移した一方で、セントワークス株式会社の労働者派遣事業を2023年3月31日付で廃止したことにより、売上高は微減(前年同期比0百万円の減収)しました。
計画に対する状況としては、売上高の計画に対する達成率は97.7%、営業利益の計画に対する達成率は97.9%、経常利益の計画に対する達成率は102.5%、親会社株主に帰属する当期純利益の計画に対する達成率は100.3%となりました。
②財政状態の分析
当社は、今後展開する事業活動のための資金確保を前提とした、健全なバランスシートの維持に努めることを財務方針としております。
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末(以下「前期末」という)より14億57百万円(前期末比4.9%)増加し、309億87百万円となりました。
流動資産は、前期末より15億42百万円(同9.6%)増加し、176億52百万円となりました。増加の主な要因としては、現金及び預金が13億34百万円(同19.9%)、売掛金が2億47百万円(同3.0%)増加したことによるものであります。
固定資産は、前期末より85百万円(同0.6%)減少し、133億34百万円となりました。減少の主な要因としては、有形固定資産の内、建物及び構築物が2億44百万円(同5.1%)増加した一方で、有形固定資産の内、リース資産が2億21百万円(同8.5%)、無形固定資産の内、のれんが73百万円(同19.5%)減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の負債は前期末より33百万円(同0.2%)増加し、149億19百万円となりました。
流動負債は、前期末より10億28百万円(同13.8%)増加し、84億84百万円となりました。増加の主な要因としては、未払金が5億15百万円(同16.5%)、未払法人税等が3億26百万円(同73.1%)、流動負債「その他」に含まれております預り金が2億93百万円(同153.6%)増加したことによるものであります。
固定負債は、前期末より9億94百万円(同13.4%)減少し、64億34百万円となりました。減少の主な要因としては、長期借入金が9億80百万円(同43.4%)減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産は前期末より14億23百万円(同9.7%)増加し、160億68百万円となりました。増加の主な要因としては、利益剰余金が14億11百万円(同12.4%)増加したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
a.資金需要
新規事業所の開設に伴う建物やソフトウェア等の取得を中心とした設備投資や運転資金、借入金の返済、利息の支払い、配当金の支払い及び法人税の支払い等に充当しております。
b.資金の源泉
主として営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入により、必要とする資金を調達しております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響は依然として不確実性が高いことから、売掛債権流動化、当座貸越契約及びコミットメントライン契約による手元流動性と資金調達枠の確保に努めております。なお、当座貸越契約及びコミットメントライン契約に係る当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり必要な見積りについては、合理的な基準に基づき実施しております。
特に、固定資産の減損損失及び繰延税金資産の回収可能性については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。