(注)「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、培ってきた技術と経験を活かし、価値ある建造物とサービスを社会に提供することで、安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくりに貢献することを企業理念としております。また、一人ひとりがCSRの実践者となり、日常業務の中ですべてのステークホルダーを意識して行動することを目指します。自由闊達で風通しの良い社内風土のもと、会社と社員が互いに信頼しあい、ステークホルダーの皆様とWin-Winの関係を実現する「すべての人を大切に想う」CSR経営を実践してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略
わたしたちを取り巻く社会・環境は、地球温暖化や自然災害の増加、多様性の受容や生産年齢人口の減少、デジタル社会への移行に見られるように、急激に変化しております。そのような中、当社は、企業理念「安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくり」を実践し、変わりゆくニーズに応えていくために、長期ビジョン「西松-Vision2027」を2018年に策定し、「新しい価値をつくる総合力企業」への変革を進めております。
「西松-Vision2027」のファーストステップとなる2018年度からの3年間は、「総合力企業の基盤構築期」として、各事業への成長投資を進め、建設事業の進化、開発・不動産事業と新規事業の成長による事業領域の拡大を進めてまいりました。2021年5月に公表した「中期経営計画2023」では、「総合力企業への変革期」として、これまでの3年間で構築した基盤を基に、効率的な成長投資を続け、持続的な企業価値向上を目指してまいります。
なお、「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2023」につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、併せてご参照ください(https://www.nishimatsu.co.jp/ir/library/plan.php)。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、2021年5月に公表した「中期経営計画2023」において、連結売上高及び連結営業利益を目標とする業績指標として掲げております。また、目標とする財務指標として、ROE、自己資本比率、D/Eレシオ、連結配当性向及び自己株式の取得額を掲げております。特にROEは持続的成長への競争力を高めた結果として向上するものであり、当社の目指す経営方針と合致することから、目標とする財務指標として採用しております。
(4) 経営環境
当社はこれまでに、道路、ダム、鉄道、ビル、公共施設、都市再開発など、国土基盤整備の担い手として、インフラ構築に積極的に取り組んできました。これらのビッグプロジェクトから得た高度な技術や多彩なノウハウを活かし、「国内土木事業」「国内建築事業」「海外事業」「開発・不動産事業」「環境・エネルギー事業」を柱に成長を続けてまいります。
これらの事業のうち、当社の主力事業である国内土木事業及び国内建築事業を取り巻く環境は、政府建設投資については堅調に推移していくことが予想されます。民間建設投資については新型コロナウイルス感染症の影響等により、減少が予想されるものの、EC市場の拡大による物流施設の需要の継続または増加など、一部の市場では底堅い需要が見込まれます。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(中期経営計画について)
当社グループは、2018年度から2020年度までの3年間、「中期経営計画2020」に基づき、総合力企業の基盤構築期として、建設事業の進化と開発・不動産事業及び新規事業の成長による事業領域の拡大を図ってまいりました。
業績を振り返りますと、2018年度と2019年度は、堅調な建設投資を追い風に売上高・営業利益ともに計画を上回って推移したものの、2020年度は建設事業での工事の採算悪化や完成工事高の一時的な落ち込みにより目標に達しませんでした。ROEは、3年連続で目標の8%以上となり、配当についても、3年間継続して連結配当性向30%以上かつ1株当たり年間配当額105円の安定した配当を実施いたしました。
これらの現状認識のもと、当社グループは、本年5月に「中期経営計画2023」を策定いたしました。
本計画では、「総合力企業への変革期」として、これまでの3年間で構築した基盤を基に、効率的な成長投資を続け、持続的な企業価値向上を目指してまいります。
<中期経営計画2023 基本方針>
・成長してきた各事業を有機的に連携させ、ニーズに合わせた多様なサービスを提供
・環境・エネルギー事業を中心として、脱炭素社会実現への取り組みを本格化
・異業種のパートナー企業との協業により、企業価値を向上
・健全な財務体質を維持しつつ、資本効率の高い成長投資により企業価値向上を目指し、骨太な株主還元を実施
<中期経営計画2023 事業戦略>
・国内土木事業 大型官庁工事を中心とした事業を堅持しながら、トンネルの自動化技術により生産性を向上させ、成長分野のリニューアル工事と民間工事へ経営資源を配分することで事業を拡大
・国内建築事業 物流施設・市街地再開発事業の設計施工に注力し、BIMを活用した施工効率の向上、コスト低減により競争優位を実現
・海外土木事業 豊富な施工実績と技術力を活かして、トンネルを中心とする交通インフラのODAに注力
・海外建築事業 ビル案件の実績を積み、ローカル・外資系顧客との取引を拡大
・開発・不動産事業 成長分野に重点を置いたアセット戦略に基づく積極投資を行うとともに、「循環型再投資モデル」へ進化
建設事業との協働によりグループ収益を拡大
・環境・エネルギー事業 「環境」課題の解決に向け、再生可能エネルギー事業、インフラ関連サービス事業へ注力
(経営計画)
(成長投資)
財務上の課題として、財務健全性の維持が挙げられます。「中期経営計画2023」の3年間につきましては、有利子負債を積極活用した成長投資を行いつつも、自己資本比率40%程度及びD/Eレシオ0.8倍を指標として財務健全性の維持に努めてまいります。
今後、当社は全役職員一丸となって「中期経営計画2023」を達成するとともに、「西松-Vision2027」の実現に向けて邁進してまいります。
(当社施工マンションにおける施工不備について)
当社が2019年3月に完成させ、お引渡しをした東京都所在のマンションにおきまして、内装等に関する施工不備が判明いたしました。施工不備の原因につきましては、現在精査中ですが、品質管理上の確認業務が不十分であったことが原因と考えております。
当社は、当該マンションの所有者様、ご入居の皆様、施主様と相談しながら、早期に補修工事を行う準備を進めております。また本件の補修工事に伴う、所有者様並びにご入居の皆様へのご不便とご迷惑を最小限にすべく、施主様とともに誠心誠意対応してまいります。
今後、施工品質の更なる向上を図るべく、教育の徹底と管理体制を一層強化し、再発防止を図ってまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、各種の社内基準書に準拠した施工、品質パトロールの実施、社内組織を活用した施工管理検討の実施、契約不適合事例や不具合事例の全社水平展開、各種研修の実施等により、工事目的物の品質管理に努めております。
(2) 海外受注リスク
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、海外土木事業の市場を新規進出国に拡大し、入札機会を増やしてまいります。また海外子会社の価格競争力を高め、これまでの日系工場案件中心の取り組みから、外資・現地企業案件にも取り組むことで入札機会を増やし、受注確保に努めてまいります。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、入札条件・見積条件等の事前調査、施工現場・施工条件・実勢価格等の確認、適正な人員配置計画とモニタリング、西松建設協力会(Nネット)の活用、価格交渉力の強化等により、工事損益への影響を最小限に抑えるよう努めております。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、極めて大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、各部署に対するコンプライアンス監査によりコンプライアンスに係るリスク管理状況を確認し、問題があれば積極的に解決するとともに、企業風土の改善に取り組んでおります。また、危機意識の風化防止などを目的としてコンプライアンス研修を実施しております。その他、内部通報窓口を設置するなど、コンプライアンス違反事由が発生した際に適切かつ迅速に対応できる体制を整備しております。
当該リスクが顕在化する可能性は、現時点で進出している国においては一定に抑えられていると認識しておりますが、万が一、当該リスクが顕在化した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、外務省海外安全ホームページによる危険度レベルの定期的な確認や、「カントリーリスク判定表」による定期的な評価、「海外危機管理マニュアル」の周知等により、事業継続や工事への悪影響を最小限に抑えるよう努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、為替レート毎の為替差損益の試算、取下金管理の徹底、外貨残高の適正な管理、為替予約等によるリスクヘッジの検討等により為替変動の影響を弱め、業績への影響を低減させるよう努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、事業管理体制の確立、プロジェクトリスク評価の実施、事業計画の適時見直し、代替出口戦略の確保等により、業績への影響を低減させるよう努めております。
(8) 労働災害リスク
施工中に予期せぬ重大事故や労働災害が発生した場合には、顧客その他ステークホルダーからの信頼を損なうとともに当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、過去事例の全社水平展開や定期的な現場パトロールのほか、当社職員や協力会社の職長・作業員に対する安全教育の継続的な実施により、労働災害を未然に防止するよう努めております。
(9) 気候変動・自然災害リスク
気候変動によって生じる台風・洪水等の自然災害や地震災害は、施工中案件の被災、工程遅延、自社所有建物等への被害等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、施工中案件においてはリスクに応じて建設工事保険を、自社所有建物等においては損害保険等を付保し損害低減策を講じております。また、事業継続力の向上を目指し、事業継続計画(BCP)を策定し定期的にBCP訓練を実施しており、建設会社の社会的責任としてインフラ復旧工事に積極的に協力し、被災地の復旧・支援やお客様の事業の早期再開に貢献できるよう努めております。なお、脱炭素社会実現への取り組みとして、当社グループは2030年に国内建設事業による“CO2排出ネットゼロ”を目指し、省エネや再エネ電力の導入、創エネ等にも取り組んでまいります。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界経済及び国内経済に影響が生ずると予想されますが、当該影響が国内及び海外の建設投資に及んだ場合、当社の建設工事受注額が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、以下の事象が生じた場合には、当社の施工する工事を一時中断するなど感染拡大防止措置を講ずる必要があります。工事の中断期間が長期にわたる場合や中断する工事数が増加した場合には、工事損益が変動するなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
・政府の緊急事態宣言等を受けて当社として必要な措置を講ずる場合
・当社事業所において当社役職員又は協力会社社員に感染症患者が多数発生した場合
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策として、当社役職員や協力会社社員の安全と健康を最優先に考え、当社事業所内における感染拡大防止に努めるとともに、在宅勤務の実施により事業継続に努めるなど、業績への影響を低減させるよう努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、国内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、引き続き厳しい状況となりました。今後、各種政策の効果や海外経済の改善により持ち直していくことが期待されますが、国内外における感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要があります。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要があります。
建設業界におきましては、政府建設投資は堅調に推移する一方、民間建設投資は感染症の影響等により、先行き不透明な状況が続くものと思われます。
このような状況の中、当社グループの連結業績は以下のとおりとなりました。
建設事業受注高は、主に国内建築工事及び海外工事が減少したことにより、前期比62,650百万円減少(16.7%減)の313,437百万円となりました。
売上高は、前期比55,379百万円減少(14.1%減)の336,241百万円となりました。営業利益は、国内土木工事及び海外工事において完成工事総利益が減少し、前期比4,362百万円減少(17.2%減)の20,950百万円となりました。経常利益は、前期比4,276百万円減少(16.6%減)の21,561百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を特別利益に計上しましたが、完成工事補償引当金繰入額や固定資産売却損、新型コロナウイルス感染症関連費用を特別損失に計上したこと等により、前期比1,554百万円減少(8.3%減)の17,166百万円となりました。
なお、完成工事補償引当金繰入額の内容は、当社が2019年3月に完成させ、お引渡しをした東京都所在のマンションにおきまして、内装等に関する施工不備が判明し、瑕疵補修費用が発生することが確実となったため完成工事補償引当金9,049百万円を計上したものです。施工者としての責任を痛感するとともに、当該マンションの所有者様、ご入居の皆様ならびに関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけすることとなり、深くお詫び申し上げます。
報告セグメント等の業績は以下のとおりであります。(セグメントの業績は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
イ 土木事業
当セグメントの売上高は、前期比9.8%減の127,397百万円となり、セグメント利益は、完成工事総利益率が低下したこと等により、前期比45.8%減の8,410百万円となりました。
当社単体の土木工事の受注高は、国内民間工事が減少しましたが、国内官公庁工事が増加したことにより、前期比39,403百万円増加(36.5%増)の147,290百万円となりました。
ロ 建築事業
当セグメントの売上高は、前期比18.3%減の196,851百万円となり、セグメント利益は、完成工事総利益率が向上したこと等により、前期比17.4%増の9,198百万円となりました。
当社単体の建築工事の受注高は、国内官公庁工事及び国内民間工事が減少したことにより、前期比88,139百万円減少(34.8%減)の164,987百万円となりました。
ハ 開発・不動産事業等
当セグメントは、主にグループ保有不動産の販売及び賃貸収入により構成されております。当セグメントの売上高は、前期比24.2%増の12,249百万円となり、セグメント利益は前期比70.4%増の3,347百万円となりました。
当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
当連結会計年度末の資産は、有形固定資産が増加しましたが、受取手形・完成工事未収入金等や投資有価証券が減少したことから、前連結会計年度末と比較して24,604百万円減少(5.0%減)の472,440百万円となりました。
負債は、社債が増加しましたが、支払手形・工事未払金等やコマーシャル・ペーパーが減少したことから、前連結会計年度末と比較して32,854百万円減少(11.0%減)の264,903百万円となりました。
純資産は、その他有価証券評価差額金が減少しましたが、利益剰余金が増加したことから、前連結会計年度末と比較して8,249百万円増加(4.1%増)の207,537百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して4.0ポイント増加し、43.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して2,884百万円減少(6.2%減)の43,574百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が23,998百万円となり、仕入債務の減少や法人税の支払等により資金が減少しましたが、売上債権の減少等により資金が増加し、4,907百万円の収入超過(前連結会計年度は14,120百万円の収入超過)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により資金が減少しましたが、投資有価証券の売却等により資金が増加し、5,302百万円の収入超過(前連結会計年度は20,147百万円の支出超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行により資金が増加しましたが、コマーシャル・ペーパーの償還や借入金の返済、配当金の支払等により資金が減少し、12,653百万円の支出超過(前連結会計年度は20,952百万円の収入超過)となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び不動産事業等では、生産実績を定義することが困難であり、建設事業においては、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態に即しておりません。
また、当社グループにおいては、建設事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって、受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
イ 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に変更があったものについては、当期受注工事高にその増減額を含めて表示しております。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は、(当期完成工事高+次期繰越工事施工高-前期繰越工事施工高)に一致します。
4 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、第83期△0.4%、第84期 0.7%であります。
5 受注工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第83期 請負金額100億円以上の主なもの
第84期 請負金額100億円以上の主なもの
ロ 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は特命と競争に大別され、その比率は次のとおりであります。
(注) 百分比は請負金額比であります。
ハ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第83期 請負金額100億円以上の主なもの
第84期 請負金額100億円以上の主なもの
3 完成工事高に対する割合が100分の10以上の相手先は、次のとおりであります。
ニ 手持工事高
(2021年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
請負金額100億円以上の主なもの
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2020」に基づく当連結会計年度業績計画の達成状況及び前期比較の分析は次のとおりであります。
建設事業受注高は、前期比626億円減少(16.7%減)、期首計画比685億円減少(17.9%減)の3,134億円となりました。国内土木工事(トンネルや土地造成などを中心に受注)は好調でしたが、国内建築工事及び海外工事において、新型コロナウイルスの影響で期ずれが多く発生したこと等が受注減の主な要因であります。
売上高は、減収となり、前期比553億円減少(14.1%減)、期首計画比152億円減少(4.3%減)の3,362億円となりました。一部国内大型土木工事及び国内建築工事の進捗低下が減収の主な要因であります。
営業利益は、前期比43億円減少(17.2%減)、期首計画比40億円減少(16.2%減)の209億円となり、営業利益率は前期の6.5%から6.2%へと若干低下しました。営業利益の減少につきましては、土木工事の売上総利益率が前期比4.0ポイント減少の12.4%となったことが主な要因であります(売上総利益率は当社単体の数値であります。)。
当連結会計年度において、中期経営計画2020の目標とする経営指標である「連結売上高3,800億円」「営業利益250億円」につきましては未達となりましたが、「ROE8.0%以上」につきましては、目標を達成しました。
ロ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度末の財政状態の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前期末と比較して246億円減少(5.0%減)の4,724億円となりました。これは、連結売上高が前期比553億円減少(14.1%減)したことに伴い受取手形・完成工事未収入金等の売上債権が172億円減少したことに加え、政策保有株式の売却を進めた結果、投資有価証券が106億円減少したことが主な要因であります。
有利子負債残高は前期末と比較して68億円減少(5.6%減)の1,150億円(D/Eレシオ0.6倍)となりました。次期につきましては、開発・不動産事業を中心に271億円を設備投資する計画としております。この設備投資が計画どおり進んだ場合には、期末の有利子負債は1,500億円(D/Eレシオ0.7倍程度)となる見込みであります。
自己資本比率は43.6%となり、前期から4.0ポイント増加しました。これは、当期純利益の計上等による利益剰余金の増加により純資産が前期末比で増加したこと、上記のとおり総資産が246億円減少(5.0%減)したことが主な要因であります。
なお、当連結会計年度において、中期経営計画2020の目標とする経営指標である「自己資本比率50.0%程度」「D/Eレシオ0.3倍程度」については、達成することができませんでした。資本効率と財務健全性を意識したバランスシートマネジメントを試みましたが、2018年度からの建設事業の完成工事未収入金が大きく増加し、有利子負債で資金調達したため、自己資本比率40%程度、D/Eレシオ0.5倍程度の水準で3年間推移し、未達となりました。
ハ セグメント情報に記載された区分ごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、セグメント情報に記載された区分ごとに資産及び負債を配分していないため、セグメント別の財政状態の分析・検討は記載しておりません。
セグメント情報に記載された区分ごとの経営成績等の状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2020」に基づく当事業年度業績計画の達成状況は次のとおりであります。なお、当社グループの受注高、売上高及び売上総利益(完成工事総利益・不動産事業等総利益)は、その大半を当社単体で占めていることから、以下の分析・検討は、いずれも当社単体の数値を記載しております。
(土木事業)
受注高は、期首計画比で22億円増加(1.6%増)の1,472億円となりました。これは、国内民間工事が減少したものの、国内官公庁工事が好調であったことが主な要因であります。工事種別でみると道路が前期比で増加し、鉄道や土地造成が前期比で減少となりました。
売上高は、期首計画比で56億円減少(4.3%減)の1,253億円となりました。これは国内土木工事は期首計画値を上回ったものの、海外工事における新型コロナウイルスの影響による進捗低下等が主な要因であります。
完成工事総利益は、期首計画比で49億円減少(24.4%減)の155億円となりました。これは一部の国内大型工事や海外工事における売上高の減少等によるものです。この結果、完成工事総利益率についても期首計画比3.2ポイント減少の12.4%となりました。
(建築事業)
受注高は、期首計画比で600億円減少(26.7%減)の1,649億円となりました。これは、国内工事において、新型コロナウイルスの影響による受注時期の期ずれが多く発生したこと等が主な要因であります。工事種別でみると住宅などが前期比で増加し、事務所・庁舎や店舗などが前期比で減少となりました。
売上高は、期首計画比66億円減少(3.4%減)の1,893億円となりました。これは国内工事において、進捗の上がらない工事が多かったこと等が主な要因であります。
完成工事総利益は、期首計画比で5億円減少(3.1%減)の180億円となりました。これは、上記売上高の減少に伴うものです。なお、完成工事総利益率は、期首計画9.5%を達成しております。
(開発・不動産事業等)
売上高は、期首計画比で31億円増加(30.1%増)の135億円となりました。また不動産事業等総利益は、期首計画比で11億円増加(31.5%増)の46億円となりました。
なお、当事業年度において、賃貸事業用の土地・建物の取得及び自社開発物件の建設等に179億円を投資しました。賃貸事業用の土地・建物のうち主なものは、「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況」に記載のとおりであります。
ニ 経営成績等に重要な影響を与える要因の分析
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える主な要因は、景気動向に伴う建設市場の動向、資材価格の変動及び建設技能労働者確保の状況であります。
国内経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの普及や各種政策の効果等により持ち直しの動きが続くことが期待されますが、国内外の感染拡大による下振れリスクもあり、不確実性の高い状況が続くものと予想されます。国内建設市場は、政府建設投資については当連結会計年度と同水準で推移すると予想されるものの、民間建設投資については本感染症拡大による影響を受けるものと予想されます。また、建設資材・建設技能労働者等の需給動向は、現在のところは落ち着きを見せておりますが、今後も動向を注視する必要があります。
これらの要因に対処しつつ、持続的な成長を遂げるため、当社グループは、2018年度に策定した「西松-Vision2027」及び2021年5月に策定した「中期経営計画2023」に掲げる各種施策に取り組んでおります。
ホ 目標とする経営指標の達成状況
当社グループは、2018年度を初年度とする「中期経営計画2020」において、「連結売上高3,800億円」「営業利益250億円」「ROE8.0%以上」「自己資本比率50.0%程度」「D/Eレシオ0.3倍程度」を目標とする経営指標として掲げ、この達成に向けて各種施策に取り組んでまいりました。
最終年度である当連結会計年度の業績達成状況は「イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。また、自己資本比率及びD/Eレシオの達成状況は「ロ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要は、主として、土木事業及び建築事業に係る材料費、労務費、外注費、経費及び営業費用としての一般管理費等の運転資金と、開発・不動産事業等に係る固定資産の購入、改修費用等の設備投資資金であります。
当社グループは「中期経営計画2023」において、3年間で710億円の成長投資を予定しておりますが、バランスシートマネジメントにより、自己資本比率及びD/Eレシオを経営指標として掲げ、財務健全性を確保してまいります。
これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による調達で対応していくこととしております。
手許の運転資金については、子会社も含めたグループ全体としての余剰資金の管理に努め、資本効率の向上を図っております。また、機動的な資金調達を目的として主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えております。
キャッシュ・フローの状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。次期につきましては、引き続き工事の立替資金の回収を図り、営業活動によるキャッシュ・フローの改善に努めてまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。
(土木事業・建築事業)
当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。
当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は
①高速3Dスキャナを用いた「切羽掘削形状モニタリングシステム」を現場検証
山岳トンネル切羽掘削面の整形作業の安全性向上と効率化を目的として、高速3Dスキャナを用いた「切羽掘削形状モニタリングシステム」を開発し、株式会社ビュープラス及びジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で、当社施工中のトンネル工事において現場検証を行いました。開発した「切羽掘削形状モニタリングシステム」により、トンネル掘削の余掘り・余吹きを20%低減でき、トンネル掘削の生産性向上に寄与できることを検証しました。なお、当技術は国土交通省の令和元年度建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト試行技術に採用されました。
②パイルキャップをプレキャスト化し、杭と一体化を図る工法を開発
杭基礎に使用するパイルキャップをプレキャスト化し、杭と一体化する工法を開発しました。本工法は、パイルキャップを予め製作し、杭施工後に杭頭上に設置するもので、杭の性能確保にも重要なパイルキャップと杭の接合部分の構造性能を実験により確認しました。基礎工事の工期短縮や杭頭部で複雑な鉄筋の組立・設置等の省力化に繋がることが期待できます。
③ダム下流面はつりシステムの開発
ダムの嵩上げ等において、主に人力によって行われていたダム下流面のはつり作業を機械化・効率化するため、株式会社れんたま、タグチ工業株式会社と共同ではつりシステムの基本設計を行いました。本システムは、コンクリートを均一な深さで切削できる機能を有した装置をダム下流面に配備し、遠隔操作により上昇させることで、安全かつ効率的にはつり作業を行うことが可能となり、生産性の向上が期待できます。
(3) 品質向上技術
①信頼性の高い既製コンクリート杭用パイルキャップ工法「HSSパイルキャップ工法」を開発
パイルキャップのせん断耐力の信頼性を向上させたHSS(High Shear Strength)パイルキャップ工法を開発しました。本工法は、コンクリートのせん断耐力に加え、パイルキャップ内に配置された鉄筋の耐力や、軸力による摩擦抵抗力を組み合わせることで、パイルキャップの大きさを変えることなく、従来よりも大きなせん断耐力を確保することができます。この効果により、より大きな地震力に対しても設計が可能となり、構造物の品質向上に寄与します。
②ボーリング孔壁画像から岩盤不連続面を効率的に判別できる画像評価支援システム「N-IESS」を開発
株式会社ボア、ジーエスアイ株式会社、東京理科大学の協力のもと、ダム現場等における地盤調査で用いるボアホールカメラの画像を鮮明化できる画像評価支援システム「N-IESS(エヌイース)」を開発しました。本システムを用いることにより、濁り等で不鮮明な画像を鮮明化処理することで、撮影手戻りや評価時間の削減、地盤の割れ目や破砕箇所などの判定精度の向上を図ることが期待できます。
①微生物燃料電池方式を応用したCO2変換セルによるメタン生成に成功
群馬大学大学院と共同で、微生物燃料電池(Microbial Fuel Cells、以下「MFC」といいます。)を応用したCO2変換セルによるメタン生成に成功しました。本技術は,有機物質を分解(浄化)しながら発電できるMFCを応用したCO2変換技術であり、これは排出CO2を有用な炭素資源と捉えて、CO2から有用化学物質に変換する技術(CCU)に分類されます。今回、このMFC方式を応用したCO2変換セルを試作し、微生物燃料電池で有機物を分解しながら発電した電気を利用して、CO2の一部をメタンに変換できたことを確認しました。本技術の実用化により、例えば工場等で発生した有機性排水をMFCで浄化・発電しながらCO2をメタン等に変換し、燃料や有用物質の合成原料として再利用することが可能なカーボンリサイクル技術として活用できます。
②低炭素型コンクリート「スラグリート®」が建設材料技術性能証明を取得
戸田建設株式会社と共同開発した低炭素型のコンクリート「スラグリート®」が、一般財団法人日本建築総合試験所にて建設材料技術性能証明を取得しました。コンクリートに使用するセメントの70%を産業副産物である高炉スラグ微粉末に置き換えることで、製造時のCO2排出量を約65%低減でき、またセメントの反応熱に起因したひび割れの発生を抑制します。第三者機関での性能証明の取得により、特に建築分野への普及に弾みをつける狙いです。
③低品位フライアッシュのジオポリマー用の処理方法に目途
北九州市立大学と共同で、工場などの石炭火力発電施設から排出される低品位フライアッシュをジオポリマー用に処理して、その処理したフライアッシュを用いたジオポリマーの実機ミキサでの製造に成功しました。低品位フライアッシュは未燃カーボンを多く含み、ジオポリマーの材料としては不適合でしたが、浮遊選鉱法を用いた処理によりジオポリマーへの使用が可能となりました。低品位フライアッシュを使用したジオポリマーが、実機ミキサで製造できたことで、より環境に優しいジオポリマーの普及に貢献できます。
①飛行船型水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発
長崎大学海洋未来イノベーション機構と共同で、飛行船型水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発しました。水路トンネルの延長は数kmと長く、ドローンでは飛行時間の制限で調査が困難でしたが、飛行船型にすることにより、長い水路トンネルでも調査可能になりました。また、自律飛行制御を組み込んだことで、例えば震災後の崩落の危険があるトンネルでも無人で安全に調査することが可能であり、水路トンネルの維持管理に貢献できます。
②無給電・無線電力センサーを用いた水中ポンプ監視システム「Newt」を開発
無給電・無線電力センサーを活用し、水中ポンプの稼働状況を無人で監視するシステム「Newt(ニュート)」を開発しました。本システムは、トンネル坑内の複数個所に設置・稼働中の水中ポンプの分電盤に無給電・無線電力センサーを取り付けるだけで、水中ポンプの稼働状況を現場の閉所・休み期間中も含め、「いつでも・どこでも」リアルタイムに確認することができます。本システムにより、クラウド上へアップロードされるデータが一定時間確認されない時は水中ポンプの稼働停止と自動で判断し、坑内に設置した警報パトライトが点灯するとともに関係者への警報メールが送信されます。これにより関係者へ異常・危険を知らせ、トンネル坑内の湧水による水没事故等、トラブルを未然に防ぎ、働き方改革にも貢献が期待できます。
(開発・不動産事業等)
研究開発活動は特段行っておりません。