文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は創業からつなぐ「日本の食文化を守り育てる」との想いを礎とした「食でつなぐ。人を満たす。」とのパーパス(存在意義)のもと、「食」が持つあらゆる可能性を模索し、「食」を通じてあらゆるヒト・モノ・コトをつなぎ合わせることで、世の中に対して新たな価値を提供し続け、持続可能なより良い社会の実現に貢献していく企業であり続けることを経営方針としております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当社が事業を展開する外食市場を取り巻く環境について、消費者側においては新型コロナウイルスが感染症法上の5類へ分類された2023年5月以降順調な回復を遂げている外食需要が、訪日外国人観光客数の回復・拡大が加わることで一層活性化することが期待されます。また外食を楽しむ際の飲食店検索・予約手段については、Google やSNSの活用等従来の飲食店検索サービスの利用に留まらない多様化が進展すると考えられます。
他方、飲食店側においては慢性的な人手不足や人件費の上昇、原材料価格の高騰等が経営の重荷となっており、飲食店が限られたリソースのもとで収益を確保・拡大するには、これまで以上に効果的な集客活動と効率的な店舗運営に取り組む必要があります。
こうした状況を踏まえ、外食産業の発展ひいては当社企業価値の拡大を実現するにあたり対処すべき課題は、飲食店が「外食ならでは」の体験価値を消費者に提供し続けられる環境の整備に貢献し、売上拡大・店舗運営効率化の双方に寄与するための既存サービスの変革と新たなサービスの確立であると認識しております。
そこで当社は、飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」を通じた飲食店への送客力を高める「サイト変革」、当社サイトに限らず多様な販促・集客手法を飲食店が効果的に活用できるよう支援する「マーケティングエージェントの確立」、モバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」を中心とした「飲食店運営のDX支援強化」を重点施策とする中期事業方針(2024年3月期から2026年3月期)のもと、現在直面している事業環境変化への対応を進めております。さらには食にまつわる様々な社会課題の解決に向けた将来的な業容拡張に備え、地域経済の活力向上に資するサービス展開に加え、アグリ領域での受託事業や卸事業者との連携による仕入領域でのサービス試行等にも着手しております。
次期におきましては、中期事業方針に掲げる黒字化の実現はもとより、その後の利益拡大フェーズへの転換を確実なものとすること、長期視点にたった新たな価値創造のための積極的な事業展開を支える安定収益源を拡大することが重要との考えのもと、中核事業である飲食店支援事業の成長力を高めるべく以下の取り組みに注力いたします。
①「楽天ぐるなび」の強化
当社は飲食店への送客力の向上を目的に、楽天グループ株式会社(以下「楽天」といいます。)との協業のもと、日本最大級の経済圏である楽天エコシステムの活用によるエンゲージメントの高いユーザーの確保・拡大に取り組んでおります。足元において、2023年10月に行った飲食店情報サイト「ぐるなび」の「楽天ぐるなび」への名称変更後、楽天会員の中でも最も楽天ポイントを積極的に利用する「ダイヤモンドランク」の会員による新規ID連携の増加や楽天ID連携会員によるリピート予約の活性化の兆しが見られているところ、「楽天ぐるなび」を楽天会員にとって最も利得性、利便性の高い飲食店予約メディアとするため、楽天会員向けロイヤリティプログラムの構築やネット予約とシナジーを生む新たな販促商品の開発等に取り組んでまいります。
またコロナ禍において3名を割り込んでいた「楽天ぐるなび」経由のディナータイム予約における1組当たり平均人数が、まん延防止等重点措置が解除された2022年3月以降増加に転じ、2024年3月時点で4.7名まで回復していることを踏まえ、居酒屋をはじめとする多くのアルコール業態の飲食店が求める宴会需要の喚起策についても取り組みを強化してまいります。
②「マーケティングエージェント」の本格化
飲食店の販促・集客手法が多様化、複雑化する中において、飲食店が取り組むWeb販促活動を一括支援するエージェント機能の確立に取り組んでおります。当期において、営業スタッフを中心とした人的サポート力を活かすことで当該領域におけるサービスの一つである Google ビジネスプロフィール運用支援サービスの利用店舗数が順調に拡大していることから、マーケティングエージェントは当社が創業以来培った「伴走型サポート体制」という強みを大いに活かすことができる成長可能性の高い事業であるとの認識を深めております。
今後はインバウンド対策やSNS運用対策等取り扱いサービスの拡充を図ると同時に、データ活用等によるエージェント活動の効率化・高度化にも取り組むことで、飲食店の売上拡大に寄与するだけでなく、複数にわたるサービスの運用に伴い増大する飲食店の業務負荷を軽減する等外食産業の労働環境の改善にも貢献してまいります。
③「商品造成力」の向上
上記①②の取り組みの推進力や実行力を高めるには、飲食店・消費者双方のニーズに即した有用な新商品を的確に企画、開発、提供する所謂「創って、作って、売る」サイクルをこれまで以上に迅速に回すことが重要なことから、2024年4月に再編した新体制のもと、商品造成力の向上を進めてまいります。
具体的には、CX部門とプロモーション事業部を発展的に廃止し、CX部門のうちユーザーマーケティング機能を飲食店支援事業部に、プロダクトデザイン機能を開発部門に移管したほか、メーカー・自治体等を対象としたプロモーション支援業務を飲食店支援事業部に移管する等、機能別に親和性が高くシナジー創出可能な他の組織との統合を実施いたしました。これにより、より精度の高い商品戦略と販売戦略の一体的な立案やプロダクト開発業務の効率化、営業部隊の統括及び販売連携等を通じた顧客に対する提案・サポート力の強化を推進し、成果の最大化を図ってまいります。
なお、中期事業方針における重点施策の一つである「ぐるなびFineOrder」については、これまでの投資により改良を重ねた機能をベースに、既存契約企業(2024年3月末時点97社)が保有するグループ店への横展開を中心に導入店拡大を図り、中長期的な飲食店DX支援強化の土台となる顧客基盤づくりを進めてまいります。
当社は上述の取り組みを通じ、「楽天ぐるなび」を介し消費者と飲食店をつなぐ力(送客力)をベースに、効果的かつ利便性の高い豊富な商品群の中から、営業スタッフがサポート力を発揮し個々のお店の課題に合わせ適切に提供することで、当社収益を増幅させる独自のビジネスモデルを磨き上げてまいります。その実現にあたっては、楽天をはじめとするパートナー企業との連携をより一層強化・推進すると同時に、当社独自の「外食に関する情報資産」の徹底活用に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は創業時より企業活動はすなわち社会貢献であるべきとの考えのもと、外食市場を中心とした社会への価値提供を通じた企業価値の向上に努めております。従ってサステナビリティについても経営方針と同じく、創業からつなぐ「日本の食文化を守り育てる」との想いを礎としたパーパス(存在意義)「食でつなぐ。人を満たす。」のもと、「食」が持つあらゆる可能性を模索し、「食」を通じてあらゆるヒト・モノ・コトをつなぎ合わせることで、世の中に対して新たな価値を提供し続け、持続可能なよりよい社会の実現に貢献していく企業であり続けることを基本方針としております。
(1) ガバナンス
当社はサステナビリティに関する重要課題の特定、それらに対する対応策の検討と実行、進捗管理について、経営企画部を主幹とし関連部署と連携しながら全社横断的に取り組んでおります。これらの取り組みの内容は定期的に経営執行会議にて審議されるほか、取締役会へも報告され取締役による監督が行われた上で、審議・監督の内容が各種取り組みの推進に反映されております。

(2) 戦略
① サステナビリティ全般
当社はサステナビリティ全般に関する当社の重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり認識しております。企業・事業活動を通じこれらの各課題に取り組むことで、社会課題の解決、ひいては当社パーパスの体現、企業価値の拡大につなげてまいります。
<価値創造を支える経営・組織基盤に関する課題>
1.コーポレートガバナンスの強化
健全で透明性の高い意思決定プロセスの構築、コンプライアンスの徹底等を通じ、当社を取り巻くすべてのステークホルダーからの信頼に応え、期待される社会的責任を果たします。
2.従業員が持てる力を発揮できる組織づくり
多様な従業員がそれぞれの個性や能力を存分に発揮し合いシナジーを創出するための社内環境整備と人材育成に取り組みます。
<サービスを通じて創出する事業価値に関する課題>
3.飲食店の持続可能な経営モデルへの進化支援
飲食店における持続的な利益創出と労働環境の改善を支える提供価値・サービスを拡充します。
4.消費者の安全・安心で充実した食体験を守る
消費者が様々なメディア・ツールを通じて外食に関する最新・詳細な情報を入手でき、安心してお店選びができる状態を作り出すと同時に、ニーズに合わせて多様な食の楽しみ方を実現できる情報発信・サービス提供に取り組みます。
5.外食産業におけるバリューチェーンの全体最適化
消費者ニーズの変化、気候変動を含む環境変化等の中で、外食産業の持続的発展を実現するため、バリューチェーンの全体最適化に寄与する事業を構築します。
6.食を通じた地域社会振興
食を通じて地域の魅力を発掘し広く発信することで、地域社会の振興、付加価値向上に寄与します。
<社会への影響に関する課題>
7.当社及び外食産業の環境負荷低減
企業・事業活動を通じ食材ロス低減や資源の保全等に寄与することで、当社及び外食産業の地球環境への負荷を低減します。
8.優れた日本の食文化・技術の普及・承継
日本の食文化とその文化を支える技術を世界に向けて発信・普及すると同時に後世へと承継することで、食を通じた豊かな社会の実現に貢献します。
② 気候変動対応に関する取り組み
当社は気候変動に関するリスクと機会を特定するため、シナリオ分析を実施いたしました。シナリオ分析においては「1.5℃/2℃シナリオ」と「4℃シナリオ」について検討を行い、その結果、以下のとおり当社の気候変動に関する主なリスクと機会を認識し、またそれらに対する取り組みを検討・実行しております。
③ 人的資本・多様性に関する取り組み
当社は事業環境の変化に対応し絶え間ない価値創造が可能な強い組織を実現することで、パーパスの体現と企業価値の持続的な拡大を果たすため、2020年に「働き方進化プロジェクト」を発足し、当社における人的資本経営の基礎を強化してまいりました。本プロジェクトでは、「Workstyle Shift(個人にあった働き方)」「Ownership Shift(一人ひとりが主役)」「Management Shift(生産性向上、価値創造の促進)」の3つの「シフト」による「Smart Work Shift(生産性高く、主体的かつ効率的な働き方)」をコンセプトに、社員の働きやすさの向上(社内環境整備等)とやりがいの向上(人材育成を含む人事制度の強化等)による働きがいの向上に取り組んでおります。具体的な施策は以下のとおりです。
(注)「働き方進化プロジェクト」発足以前からの取り組み
また当社の人的資本経営に対する考え方を明確化し、取り組みを一層強化することを目的とし、2024年4月に人的資本経営の基本方針となる「人事ポリシー」を新たに制定いたしました。
<人事ポリシー>
『私たちの成長』がつなぐ「食の未来」
自ら考え、学び、形にする一人ひとりの成長が、豊かな食の未来を切り拓く強いぐるなびを作る。この信念のもと、意欲に溢れ食が持つ可能性に真摯に向き合う人材が「集まり・育つ」企業へと進化し続けるため、あらゆる側面から社員の「挑戦」に寄り添い「成長」を支え、個の力を結集します。
上記の「人事ポリシー」に基づき、適切な採用や育成、配置・異動のほか、環境整備や人事制度の強化、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでまいります。
(3) リスク管理
当社はサステナビリティに関するリスクの抽出や識別、評価、またリスクに対する対応策の検討及び推進について、経営企画部を主幹とし関連部署と連携しながら全社横断的に取り組んでおります。なお、これらのリスクについては代表取締役社長が委員長となり当社の全社的なリスク管理を推進するコンプライアンス・リスク管理委員会に連携され、課題や対応策が協議・承認された上で、その内容は適宜取締役会に報告されております。
(4) 指標及び目標
現在当社ではサステナビリティに関する指標及び目標は設定しておりませんが、今後上述の取り組みを推進・深化する中で、それらの設定や進捗管理にも取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、以下の記載における将来に関する事項については、提出日現在において当社グループで想定される範囲で記載したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクのすべてを網羅するものではありません。
①飲食店の支持獲得について
当社グループの連結売上高の大部分を占める飲食店販促サービス売上の成長は、有料加盟店舗数及び店舗あたり契約高の増加に依存しております。そのため、外食市場の動向や飲食業界の業況のほか、取引先の政策の変更に大きく影響を受けます。
これらに対応するため、当社グループは以下の施策に重点的に取り組んでおります。
・飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」を通じた飲食店への送客力を高めるための「サイト変革」
・当社サイトに限らず多様な販促・集客手法を飲食店が効果的に活用できるよう支援する「マーケティングエージェントの確立」
・モバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」を中心とした飲食店運営のDXサポートをはじめとする飲食店の持続可能な経営モデルへの進化支援
また飲食店からの収入に依存していることを踏まえ、飲食店支援以外の収益源の獲得を目指し、農業生産や流通の最適化に資する事業の構築や飲食店の仕入れ効率化に資するサービスの検討等、日本の外食産業の全体最適化に資する事業の創出に着手しております。その他、外食に留まらず内食や中食の楽しみの醸成に関するサービスの構築に取り組んでおります。
②「楽天ぐるなび」のユーザーの支持獲得について
当社グループは、主として「楽天ぐるなび」のコンテンツの魅力を高めユーザー数を増加させることにより、飲食店の販売促進ツールとしての「楽天ぐるなび」の価値を増大し、当社収益の拡大を図っております。
今後、競合他社のサービス進化や新たな飲食店向けサービスの出現によって「楽天ぐるなび」の相対的競争優位性が低下し、「楽天ぐるなび」に対するユーザーの支持が低迷した場合、また消費者の環境意識の高まりに伴う飲食店選びの基準の変容等により当社サービスの需要が低下した場合には、「楽天ぐるなび」を通じた送客数の伸び悩みによる加盟飲食店の減少等が、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そこで当社グループは、「楽天ぐるなび」のユーザー数の維持・拡大を目的に、楽天グループ株式会社との協業のもと日本最大級の経済圏である楽天エコシステムを活用したエンゲージメントの高いユーザーの獲得に取り組むと同時に、消費者の安全・安心で充実した食体験を守るため消費者ニーズに即した掲載情報、コンテンツ等の継続的な見直しに取り組んでおります。
③事業計画の実現に関するリスクについて
当社グループは、「食でつなぐ。人を満たす。」とのパーパス(存在意義)のもと、飲食店に対する販促支援に留まらない事業環境変化に強い事業ポートフォリオ構築を目指しております。しかしながら、事業計画が必ずしも想定通り進展するとは限らず、とりわけ新規事業において人材確保や設備増強等に係る費用が想定以上に発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また事業拡大の一環として企業買収や出資等を行った際、期待通りの成果を得られないリスクもあります。
そこで当社グループでは、新規事業を含む各事業計画の進捗や収支等を経営執行会議にて詳細に点検することで、計画との乖離が生じた際のリカバリー策の検討や撤退に伴うリスク及び費用等を評価する等適切な対策を実施しております。
④楽天グループ株式会社との関係について
当社グループは、インターネットサービス事業において高いシナジー効果を実現し、これによる将来の当社グループの業績拡大と発展を見込んで、楽天グループ株式会社(以下「同社」といいます。)と資本業務提携関係にあります。
2024年3月31日現在、同社は当社グループの議決権の16.42%を保有する主要株主であり筆頭株主であります。ただし当社グループの重要な経営判断において、同社への事前報告や同社による事前承認は必要とされておらず、また当社グループと同社との間の取引は、独立した第三者間の取引と同様に一般的な条件で行われており、同社からの独立性は確保されております。
将来的にこの提携関係が解消される可能性は極めて低いと考えておりますが、仮に維持できなくなった場合、飲食店への送客力の減少による収益の低下や当社グループの事業展開及び資本政策に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、当社グループでは同社との資本業務提携関係を維持するため、楽天ID連携会員数の拡大や楽天エコシステム内での外食事業の存在感の向上を図る等、緊密で相互的な協力関係を強化し、両社のさらなる発展に努めております。
⑤人材の確保について
当社グループでは、事業領域の拡大に伴い人材の確保・育成がますます重要になっております。そのため、人的資本の活用が計画通りに進まない場合や重要な人材が流出した場合には、期待通りの収益を得ることができず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社グループでは社員の働きやすさとやりがいの向上による「働きがいの向上」を図るため、2020年に「働き方進化プロジェクト」を発足し、当社グループにおける人的資本経営の基礎を強化してまいりました。さらに2024年4月に人的資本経営の基本方針となる「人事ポリシー」を制定し、本ポリシーのもと適切な採用や育成、配置・異動のほか、環境整備や人事制度の強化、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでおります。
⑥事業環境の変化へ対応するための投資について
当社グループはITを事業の根幹と位置づけ、サービス価値の向上に寄与する最新技術を積極的に採用しております。特に生成AI技術については、その急速な進化を踏まえ、検証及び導入に精力的に取り組んでおります。しかしながら、IT技術の進歩は目まぐるしく、既に導入済みの技術が時代遅れとなった場合、ネットワーク機器やソフトウェアの開発及び導入に係る投資費用が想定以上に発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そこで当社グループでは、生成AIを含む最新技術の動向を常に注視しつつ、資金の確保と戦略的な技術投資を行うことで、将来的な技術変革に柔軟に対応できる体制を整えております。
⑦開発体制について
当社グループでは、絶えず新たなサービスを創出するため、開発人材の積極的な投入に努めております。しかしながら、計画通りに開発要員を確保できない場合や、開発計画に対する人員配置やスキルレベルのバランス調整が困難な場合には、事業進行の遅延や投資効果の未達等が発生し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは多様な採用手法を駆使し必要な人材確保に努めるとともに、計画的かつ効果的な開発人材の配置・スキルアップを推進しております。
⑧システムに関わるリスクについて
当社グループの主力である飲食店販促支援サービスはインターネットを介して提供されており、接続環境やコンピューターネットワーク基盤の安定稼働に大きく依存しております。そのため、外部からの攻撃や内部の人的過誤、自然災害等によるシステム障害が発生した場合、顧客に対するサービス提供の中断やユーザー情報の損失等が起こるリスクがあります。そうした事態が生じた場合、サービス利用料の減少やユーザーへの補償、当社サービスへの信頼性低下等が発生し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。
これを防ぐため、当社グループではバックアップセンターの充実やサーバーの拡充及び冗長化、サーバールームへの入退室管理システム導入によるセキュリティ強化のほか、社内ネットワークの監視強化等、多岐にわたる予防措置を講じております。
⑨資金繰りについて
当社グループでは、将来の成長のための投資強化に向けて追加資金の調達が必要となる場合があるところ、金融市場の変動や信用状況の悪化等により、資金調達が困難となるリスクが存在します。また予期せぬ事態が発生した場合、想定外の費用が発生することもあり得ます。これらの資金繰りに関連するリスクが現実のものとなった場合、当社グループの財務計画や事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社グループでは財務の健全性を維持するため、適切なキャッシュフロー管理及びリスク管理を徹底しております。また、状況に応じ増資や借入れを含む多様な資金調達を行えるよう、投資家及び金融機関等からの信頼感醸成に向けた情報開示の充実等、安定した資金繰りの確保に努めております。
⑩知的財産権について
当社グループが提供するサービスの技術やノウハウ、サービス名称等の知的財産権が他社に先行して取得されている場合、必要な権利を保有していないことによりサービス開発及び販売等において支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また将来、当社に対する権利侵害に係る訴訟が起きるリスクがあり、ライセンス料の支払いや損害賠償等の負担が業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは知的財産専門部署を設け、権利の適切な取得と侵害防止に取り組んでおります。また、新たに開発されたサービスのうち権利の対象となる可能性があるものは、必要に応じて特許や商標の出願を進めております。
⑪個人情報の取扱いについて
当社グループでは当社グループが運営する各種サービスの利用促進を目的に、広範に会員登録を推進しており、その過程で様々な個人情報を取得しております。そのため、外部からの侵入者や内部関係者、業務委託先等による個人情報の流出や不正使用が発生した場合、損害賠償請求を含む法的責任や当社グループの信頼性低下等が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは個人情報の保護及び管理に特化した専門部署を設け、ハード及びソフト両面のセキュリティ対策を講じております。ハード面では、物理的なセキュリティ強化としてセキュリティシステムの更新及び強化を定期的に行うほか、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための最新技術の導入に努めております。ソフト面では、個人情報の取り扱いに関する厳格な規程のもと社員や業務委託先等のセキュリティ意識向上のための研修を定期的に実施する等、その遵守を徹底しております。加えてユーザーに対する透明性を確保すべくプライバシーポリシーを当社グループのサイト上に明示する等、会員情報の安全性保持及び当社グループに対する信頼性の維持・向上に取り組んでおります。
⑫法規制の変更可能性及び影響について
オンラインプラットフォームの運営やデータの収集及び利用、サービス利用促進のためのポイント付与等ユーザー向けインセンティブに関する課題や懸念への対応を目的とし新たな法的規制が制定された場合、情報表示やデータの取り扱い等に係るシステムの大規模な改修が必要となることが想定されます。また開発や運営に要する労力が増大する可能性があるほか、規制遵守に向けたコンプライアンス体制の強化に係る費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは新たな法的規制の動向を継続的に注視し、適切なコンプライアンス体制の保持と必要な対応策の検討を進めております。
なお、CO2排出量に関する規制強化に伴うコスト増加リスクについては、当社グループの事業の特性上限定的との認識であります。
⑬震災等の巨大災害の発生について
震災や台風、洪水等の巨大災害が発生した場合、飲食店をはじめとする多くの顧客に甚大な被害がもたらされることが想定されます。また当社グループの人員、施設、システム等にも著しい損害が生じる可能性があり、これにより顧客ネットワークやサービス提供のインフラが損なわれ、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
これに備えて、当社グループでは主として以下の施策を実施しております。
・就業場所に捉われないリモートワークの仕組みや環境の構築
・災害影響の軽減及びサービス継続のためのデータセンターの地理的分散、サーバーの冗長化
・緊急時の迅速な意思決定及び行動のための事業継続計画(BCP)の策定・定期的な見直し
・従業員の安全確保及び緊急時の迅速な対応に向けた訓練・教育プログラムの実施
これらの対策により、万一災害が発生した場合においても、顧客へのサービス提供を迅速に復旧し、業績への影響を最小限に抑える体制を整えております。
なお、温暖化の進行に伴い自然災害の激甚化や当社グループサービスの需要低下が生じるリスクに対しては、飲食店支援以外の収益源の獲得による事業環境変化に強い事業ポートフォリオ構築の必要性を認識し、農業生産、流通の最適化に資する事業の構築、飲食店の仕入れ効率化に資するサービスの検討のほか、内食や中食の楽しみの醸成に関するサービスの構築に取り組んでおります。
⑭海外子会社及び海外事業について
当社グループが展開する海外事業において、所在国の政治・経済情勢や法規制の変動により代金回収の遅延や事業の中断・遂行不能等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは政治・経済情勢のモニタリングの徹底と柔軟な事業運営計画の策定に取り組んでおります。
⑮レピュテーション
当社グループが提供するサービスの品質や当社グループの誠実性及び公正性、環境・社会への取り組み姿勢等についてネガティブな評判が生じ、ステークホルダーからの信用やブランド価値の低下のほか訴訟提起や行政処分等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、当社グループではすべてのステークホルダーからの信頼に応え、期待される社会的責任を果たすため、創業からつなぐ「日本の食文化を守り育てる」との想いを礎とした「食でつなぐ。人を満たす。」とのパーパス(存在意義)を中核とした理念体系にもとづく経営を徹底しております。具体的には、継続的なコーポレートガバナンスの強化や人的資本経営の推進、また気候変動に関するリスク・機会の特定とそれらへの対応等に取り組んでおります。
なお、経営の透明性を高めるにあたっては、財務情報のみならず気候変動対応を含む非財務情報の開示の充実に取り組んでまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況及び当該経営成績等に関する経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当連結会計年度の我が国経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行したこと等により社会経済活動の正常化が進み、緩やかな回復基調となりました。当社サービスの対象である外食産業においては、消費者の外食支出やインバウンド需要が回復基調にありましたが、原材料価格の上昇や人材不足等、経営環境には厳しさや先行き不透明感も見られました。
当社は2024年3月期から2026年3月期までの中期事業方針において、「ぐるなびサイトの変革」「マーケティングエージェントの確立」「ぐるなびFineOrderの第2の基幹サービス化」「DXサービスの拡充」に重点的に取り組むこととしており、当期についてはその初年度として、重点施策に対して先行投資を実施し取り組みを強化するほか、既存の飲食店支援事業とプロモーション事業、店舗開発事業においては着実な売上拡大と効率的な事業運営により全社を支える安定的な収益基盤づくりを、関連事業に含まれるその他サービスについては徹底した運用効率化による収益力向上に努めてまいりました。
当期における重点施策に関する取り組みについては、モバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」の契約が外食チェーン企業を中心に従来の販促支援サービスでは加盟に至りづらかったカフェ業態等においても進展し、2024年3月末時点での契約企業数は期初に掲げた当期末目標65社を上回る97社(2023年3月末時点では44社)となりました。また契約企業における導入店拡大を順次進めると同時に当社の強みである人的サポート体制によるきめ細やかな運用・活用支援に取り組むことで、システム導入済み店舗の97%(2024年3月実績)で「ぐるなびFineOrder」はアクティブに利用されており、その結果3月末における累計利用者数は前四半期末比490万人増の1,650万人(利用した人の属する組人数の合計)となる等、消費者側における利用についても順調に拡大いたしました。その他、数千店規模で展開する大手外食チェーン企業への提案強化を目的に、当該企業の多くが利用するPOSベンダーとのシステム連携開発を推進いたしました。
また「ぐるなびサイトの変革」の一環として、「楽天ポイント」の貯まる飲食店予約サイトとしての認知を拡大し、サイト利用者の増加、加盟飲食店への送客力向上を図ることを目的とし、10月2日付で飲食店情報サイト「ぐるなび」の名称を「楽天ぐるなび」へ変更いたしました。
加えて「マーケティングエージェント」領域においては、インバウンド需要の回復を踏まえ Google ビジネスプロフィールの運用支援サービスにおいて多言語での情報発信サポートを強化する等、飲食店・消費者双方のニーズに即した商品の改良や提案を推進いたしました。
既存事業については、飲食店販促支援領域において飲食店への送客拡大を目的に「楽天ポイント」やネット予約で利用可能なクーポンをフックとしたキャンペーンを定期的に開催し、上述のサイト名称変更の効果も相まって、ユーザー基盤である楽天ID連携会員数は2024年3月末時点で874万人(前期末比167万人増)へと拡大いたしました。また店舗開発事業において6月に青森県八戸市、9月に茨城県日立市の商業施設に新たなフードホールをオープンいたしました。加えて、新たな取り組みとして飲食店に対する提案力及びサポート力の中長期的な向上を目的に、業務提携先である株式会社テンポスホールディングスとの協業関係を活かし、厨房機器販売店「テンポスぐるなび」を東京都江戸川区に2024年3月プレオープンいたしました。なお経営資源配分の見直しに関しては、5月に業務用食材・資材仕入れ専用のECサイト「ぐるなび仕入モール」を、8月には日本全国の観光・旅行情報を紹介するサイト「ぐるたび」をクローズいたしました。
以上の活動の結果、当社の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
財政状態について、当社は2021年3月期以降、農林水産省より「Go To Eatキャンペーン」事業の運営を受託し、これに伴い前連結会計年度末においては流動資産(現金及び預金)及び流動負債(未払金及び預り金)にそれぞれ1,607百万円を計上しておりましたが、本事業受託の終了に伴い、第1四半期において上述の未払金及び預り金について精算を完了いたしました。
また2021年12月10日に発行したA種優先株式について、優先配当の支払い負担の低減を目的に一部償還(取得及び消却)を第3四半期に実施いたしました。
当連結会計年度末の総資産は、上述の「Go To Eatキャンペーン」事業の受託終了及びA種優先株式の一部償還等による現金及び預金の減少等により流動資産が前連結会計年度末より2,469百万円減少した一方、ソフトウェアを中心に固定資産が同879百万円増加したことから、同1,589百万円減少し11,411百万円となりました。
負債については、上述の「Go To Eatキャンペーン」に係る未払金及び預り金の減少を主因とし、前連結会計年度末より828百万円減少し5,273百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失363百万円、上述のA種優先株式の一部償還等により前連結会計年度末より761百万円減少し6,137百万円となりました。
経営成績について、当連結会計年度の売上高は12,982百万円(前期比5.6%増)となりました。事業区分別の売上高は下表のとおりです。
飲食店販促サービスのうちストック型サービスについては、前期より既存加盟店に対するプランアップ・増額提案に注力し売上を着実に積み上げた結果、前期を7.0%上回りました。スポット型サービスについては、経営資源配分見直しの一環として前期に実施した一部サービス(楽天ぐるなびデリバリー及びテイクアウト、ぐるなびPay、ぐるなびPOS+)の終了による押し下げ影響をネット予約手数料売上の拡大等により吸収し微増となり、飲食店販促サービス全体では前期比6.6%増と当社の中核となる売上は着実に回復いたしました。
プロモーションについては、新たに開始した加盟飲食店の店内を活用した企業向けプロモーションサービスの売上を計上したこと、官公庁からの受注が拡大したこと等から前期を上回りました。
関連事業については、訪日外国人向け観光情報サービス「LIVE JAPAN」や店舗開発事業の売上、アグリ関連事業の受託収入が着実に拡大したものの、売上回復に係る期間の収益確保を目的とした楽天からの業務受託を2023年3月をもって終了した影響等により前期を下回りました。
費用面については、自然減及び採用の厳格化による従業員の減少、売上回復に係る期間における固定費の低減等を目的とした業務提携先企業等への従業員の出向拡大等により人件費が減少したことを主因とし、前期を下回りました。
以上の結果、営業損失は339百万円(前期は1,724百万円の損失)、上述の店舗開発事業における新たなフードホールのオープンに係る収入等を営業外収益として99百万円計上したこと等から経常損失は277百万円(前期は1,664百万円の損失)となりました。なお特別利益に投資有価証券売却益125百万円を計上した一方で、特別損失に投資有価証券評価損228百万円を計上したこと等から親会社株主に帰属する当期純損失は363百万円(前期は2,286百万円の損失)となりました。
各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失の計上、上述の「Go To Eatキャンペーン」に係る未払金及び預り金の精算等により1,498百万円の支出(前連結会計年度比456百万円の支出増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主にソフトウェアの取得569百万円により718百万円の支出(前連結会計年度比594百万円の支出増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に上述のA種優先株式の一部償還(取得及び消却)531百万円により693百万円の支出(前連結会計年度は2,449百万円の収入)となりました。
以上のほか為替換算差を含め、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は5,368百万円(前連結会計年度比2,898百万円減)となりました。
当社グループにおける主な資金需要は、営業活動等に係る人件費やサービスの制作・運用に係る外注費、事務所賃借料等の運転資金のほか、サービスの拡大・強化に係るソフトウェア投資等の設備資金です。資金調達につきましては、基本的に内部資金を活用しておりますが、事業環境の変化を見据え、適宜外部資金の調達を実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
また、生産実績については、当社グループは飲食店販促支援事業を主たる事業として行っており、生産に該当する事項はありません。また、当社グループの主たる業務である飲食店販促支援事業は、提供するサービスの性格上、受注の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。