当社グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九電グループの思い」のもと、「低廉で良質なエネルギーをお客さまにお届けすることを通じて、お客さまや地域社会の生活や経済活動を支える」ことを使命に、事業活動を進めている。
世界情勢の不安定化に伴い燃料価格のボラティリティが高まる一方で、データセンターや半導体関連産業による電力需要の増加が見込まれるなど、人々の生活や社会経済活動を支える電力を低廉かつ安定的に供給することの重要性がこれまで以上に高まっている。
また、世界的な脱炭素の潮流のなかで、当社グループは、日本政府の方針である「2050年カーボンニュートラル」や「2030年温室効果ガス排出削減目標」の達成に向け、エネルギー事業者としての積極的な貢献が期待されている。
さらに、ビジネスモデルや業務プロセスの抜本的変革に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、企業の価値創出の原動力としての人的資本経営の重要性がより一層高まるなど、現在の経営環境は大きな転換期にある。
当社グループは、九州から未来を創る企業グループとして、経営環境が大きく変化するなかにおいても、事業を通じて「社会価値」と「経済価値」の双方を創出し、サステナブルな社会への貢献と九電グループの企業価値の向上を実現するサステナビリティ経営を推進している。
そのうえで、中長期の目指す姿として「九電グループ経営ビジョン2030」と「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」を定め、ROIC経営の推進、カーボンニュートラルの実現や人的資本充実に向けた施策など、財務・非財務面での取組みをグループ一体となって進めている。
さらに、これらのビジョン実現に向けた経営上の重要課題「マテリアリティ」を特定し、その解決に向けた取組みを中期経営計画として具体的に反映させることで、着実な実践を図り、お客さまから信頼され、選ばれ続ける企業グループを目指していく。(図1、2)
[図1 マテリアリティ(サステナビリティ実現に向けた経営上の重要課題)]
[図2 サステナビリティに係る理念等の体系]
戦略Ⅰ エネルギーサービス事業の進化
エネルギー情勢やお客さまニーズの多様化など、環境変化を先取りし、エネルギーサービスを進化させ、環境に優しく、低廉なエネルギーを安定的にお届けし続ける。
○ 発電・販売事業については、S(安全)+3E(エネルギーの安定供給、環境保全、経済性)の観点から、容量市場など新たな電力取引市場も最大限活用しつつ、最適なエネルギーミックスを追求していく。
再生可能エネルギーについては、グループ内の再エネ事業の統合を進め、国内外で開発を推進し、主力電源化を図っていく。また、お客さまや社会の再エネに対する幅広いニーズにお応えするとともに、これまでの開発・運用・保守実績により蓄積したデータの活用など、再エネ事業の新たな価値創造に挑戦し、九電グループのコア事業としていく。
原子力発電については、CO2排出抑制面やエネルギーセキュリティ面等で総合的に優れた電源であり、安全の確保を大前提として最大限活用していく。引き続き、原子力の自主的かつ継続的な安全性向上に取り組むとともに、分かりやすい情報発信やフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を継続することで、地域の皆さまに「安心できる」と感じていただけるよう取り組んでいく。
火力発電については、最新鋭のLNG火力発電所の開発や、非効率石炭火力のフェードアウト対応に加え、水素・アンモニアの混焼に必要な技術の確立やサプライチェーンの構築など、環境面やコスト競争力、供給安定性のバランスを追求しつつ活用していく。
電力の安定供給については、電力需給変動リスクや燃料価格変動リスク等を踏まえた供給力の確保や燃料調達等を徹底するとともに、電力販売については、競争環境や、社会全体の環境意識の高まりを踏まえ、引き続きお客さまにお選びいただけるよう、エネルギーサービスの充実を図っていく。
○ 送配電事業については、九州電力送配電株式会社を中心に、公平性・透明性・中立性の確保に重きを置いた運営に努めていく。そのうえで、安定供給とコスト低減の両立を実現するとともに、再生可能エネルギーの最大限の受入れや効率的な設備運用等を目指し、送配電ネットワークの次世代化を推進していく。また、DXの推進による組織能力・業務基盤の強化・高度化や、これまで培った技術力や資産などを活用し、事業領域の拡大に取り組んでいく。
○ 海外事業については、カントリーリスクの顕在化、物価・金利・為替の変動、環境・エネルギー政策の見直しなど特有のリスクが近年多様化かつ複雑化するなか、案件ごとのモニタリングやアセットポートフォリオの最適化によりリスクの早期発見や低減を図りながら、これまでに蓄積してきたノウハウやネットワークを活かして、進出エリアや事業領域の更なる拡大を図り、一層の収益拡大を目指していく。
戦略Ⅱ 持続可能なコミュニティの共創
地域・社会の課題解決に向けて、グループの強みやエネルギーサービス事業とのシナジー等を発揮できる都市開発やⅠCTサービス等の事業に加え、新規事業・サービスの創出にも取り組んでいく。
○ 都市開発事業については、エネルギーやデジタルを活用した当社グループならではの付加価値の高い事業を展開し、収益を拡大するとともに、交流人口拡大や賑わい・雇用創出など地域・社会の持続的発展に貢献していく。
○ ⅠCTサービス事業については、DXが進展するなか、光ブロードバンド事業やモバイルサービス事業、データセンター事業等の既存事業に加え、ドローンサービスや地域情報プラットフォームサービス、生成AI等の新技術を活用したDXソリューションなど、地域・社会のニーズにお応えする新たなサービス創出にグループを挙げて取り組んでいく。
○ 自治体や地域団体との協働による産業振興や交流人口拡大に向けた事業など、地域課題解決に資する取組みを通して、九州地域全体の地方創生や当社グループの新たな事業創出につなげていく。
戦略Ⅲ 経営基盤の強化
持続的成長と中長期の企業価値向上に向けたグループ一体の挑戦により、経営を支える基盤を強化していく。
○ 事業活動に関する積極的かつタイムリーな情報発信や、広聴・提言機能の強化により、お客さまや地域の声を踏まえた経営を推進していく。
○ 安全と健康を最優先する企業活動を徹底することで、事業に関わる全ての人たちの安全を守り、その先にある安心・信頼につなげるとともに、全ての従業員が心身ともに健康で、活き活きと働ける会社をつくっていく。
○ 人的資本経営については、事業戦略の実現に必要な多様な強みを有する人財の獲得・育成に取り組み、持続的な価値創出につなげていく。また、従業員のチャレンジ意欲を喚起し、自律的に能力を磨き、活かし、活躍していくためのキャリア形成支援の強化を図るとともに、時間や場所に捉われず柔軟な働き方ができる環境整備等により、従業員エンゲージメントを高め、人的資本の価値最大化を図っていく。これらの取組みを通じて、人と組織が成長し続ける文化を醸成し、未来の価値を創出する企業グループを目指していく。
○ ICTを用いた業務効率化・高度化などDXの取組みを通じて、生産性の向上と新たな企業価値創造の強固な基盤を創っていく。
○ コーポレート・ガバナンスの充実や、コンプライアンス経営の推進、情報セキュリティの確保の徹底を図っていく。
特に、コンプライアンス経営に関して、2023年3月、公正取引委員会から独占禁止法に基づく行政処分を、さらに、2023年7月、経済産業省から電気事業法に基づく行政処分を受けた。なお、公正取引委員会からの行政処分の内容については、同委員会との間で事実認定等に見解の相違があることから、2023年9月、取消訴訟を提起した。
また、当社従業員が九州電力送配電株式会社のシステムを使用するなどして新電力顧客情報等を閲覧していた事案について、2023年4月、経済産業省から行政処分を受けた。
これらの事案に対する行政処分について、厳粛に受け止めるとともに、再発防止及びコンプライアンスを最優先にした事業活動をより一層徹底していくことで、信頼回復に努めていく。
当社グループとしては、これらの取組みを通じて、ステークホルダーの皆さまへの価値提供を果たしていく。
(文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したもの)
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、「九電グループサステナビリティ基本方針」のもと、事業活動を通じて地域やグローバルな社会課題解決に貢献することで、持続可能な社会への貢献とグループの中長期的な企業価値向上の実現を目指している。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
サステナビリティ経営の実践に向け、カーボンニュートラルをはじめとするESG(環境・社会・ガバナンス)の取組みを強力に推進するため、取締役会の監督下に、社長を委員長とし、社外取締役や関係統括本部長等を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を設置している。本委員会では、サステナビリティ全般に係る戦略・基本方針の策定(マテリアリティの特定)、施策実施状況の進捗管理に加え、気候変動や人的資本等の重要なサステナビリティ課題に関する戦略、リスク・機会についての審議・監督を行っている。また、本委員会の下には、「カーボンニュートラル・環境分科会」及び「地域・社会分科会」を設置し、環境・社会問題全般について、より専門的な見地から審議を行っている。
年に2回以上開催する本委員会の審議結果は、取締役会に遅滞なく報告しており、取締役会はサステナビリティに係る活動全般を監督している。
■サステナビリティ経営推進体制図
当社グループは、「九電グループの思い」及び「九電グループサステナビリティ基本方針」のもと、中長期的に目指す姿として、「九電グループ経営ビジョン2030」と「カーボンニュートラルビジョン2050」を定め、グループ一体となった取組みを推進している。
これらの方針・ビジョン実現に向けた経営上の重要課題をマテリアリティとして特定し、その解決に向けた具体的取組みを中期経営計画(中期ESG推進計画)に落とし込むことで、着実な実践を図っている。
持続的に企業価値(経済価値)を高めていくためには、「短期」のみならず、「中長期」の社会情勢や経営環境の変化を見据えたうえで、今後の成長の障壁となりうるマテリアリティに焦点をあてた取組みを強化することが極めて重要である。そのため、当社グループは、企業価値(経済価値)につながる要素を「①短期の機会最大化」「②中長期の機会拡大」「③リスクの低減」の3つに分解し、それぞれの視点からマテリアリティ解決に向けた取組みを推進している。
■サステナビリティ経営を通じた企業価値向上モデル
当社グループの経営に影響を与えるリスクについて、毎年リスクの抽出、分類、評価を行い、全社及び部門業務に係る重要なリスクを明確にしている。把握したリスクについては、対応策を各部門及び事業所の事業計画に織り込むとともに、複数の部門等に関わるリスク及び顕在化の恐れがある重大なリスクについて、関連する部門等で情報を共有した上で、対応体制を明確にし、適切に対処している。特に、社会と企業のサステナビリティ実現に係るリスクについては、サステナビリティ推進委員会及び取締役会にて審議し、マテリアリティの見直し要否の判断につなげるとともに、対応策を中期ESG推進計画やカーボンニュートラルアクションプラン等に反映し、進捗管理を行うことで着実な実践を図っている。
当社グループの経営成績、財務状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、「
当社グループでは、マテリアリティごとに目指す姿を設定するとともに、その着実な実現に向け、中期ESG推進計画において、各取組みの中期目標及び年度目標を設定の上、取組みの進捗を管理している。
■2024年度中期ESG推進計画
(2) 気候変動
世界共通の課題である気候変動への対応は、エネルギー事業者にとって、事業のあり方そのものに影響しうる大きなリスクであると同時に、持続的成長に向けたビジネス変革への新たなチャンスである。当社グループは、責任あるエネルギー事業者として、また、再生可能エネルギー開発の長い歴史を持ち、東日本大震災以降いち早く原子力の再稼働を実現した低・脱炭素の業界トップランナーとして、今後も脱炭素社会をけん引するとともに、その取組みを更なる企業成長につなげるため、気候変動への対応をマテリアリティと位置づけ、グループ一体となった取組みを推進している。
気候変動対応については、サステナビリティ推進委員会を中心としたガバナンス体制のもと、その取組みを推進している。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <ガバナンス>」に記載している。
当社グループが持続的に気候変動の緩和に貢献し、かつ成長し続けることができるよう、上昇温度が1.5℃と4℃のシナリオを想定し、リスク・機会等の分析を行っている。
また、その分析結果を踏まえた対応戦略については、「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」に反映させるとともに、具体的な行動計画を毎年策定する「中期ESG推進計画」の中に落とし込み、戦略実現の実効性を高めている。
いずれのシナリオにおいても、低・脱炭素のトップランナーとして、アクションプランの取組みを実践することで、機会の最大化・リスクの最小化を実現していく。
■主なリスク・機会と対応戦略
※1.5℃、4℃のシナリオごとで各項目のリスク・機会の影響度・発現可能性は異なる
<リスク管理>
気候変動に係るリスクは、他のサステナビリティ課題に係るリスクと共に管理している。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <リスク管理>」に記載している。
<指標と目標>
低・脱炭素の業界トップランナーとして、2050年のサプライチェーンGHG排出量の実質ゼロにとどまらず、社会のGHG排出削減に大きく貢献する「カーボンマイナス」を2050年より早期に実現するというゴールを設定している。また、2030年の経営目標として、2050年からのバックキャストでチャレンジングな目標・KPIを設定し、その着実な達成に向けて、進捗を管理している。
■サプライチェーンGHG排出量の推移
(3) 人的資本
九電グループを取り巻く事業環境が大きく変化するなかで、経営ビジョンを実現する原動力となるのは人財であり、人的資本充実に向けた取組みを加速し、多様な人財の力を価値創出につなげることが極めて重要である。
このため、九電グループは、以下の「人的資本充実に向けた基本的考え方」に基づき、「人と組織が成長し続ける組織文化の醸成により未来の価値を創出」するための人財戦略を展開し、持続的な企業価値向上を図る。
■人的資本充実に向けた基本的考え方
<ガバナンス>
人的資本経営については、サステナビリティ推進委員会を中心としたガバナンス体制のもと、その取組みを推進している。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <ガバナンス>」に記載している。
<戦略>
人的資本経営の実現に向けて、人財戦略として「人と組織の進化による価値創出」、「経営戦略の実現に必要な人財の獲得・育成」、「自らの可能性にチャレンジできる仕組みづくり」、「多様な人財が働きがいを持ち活躍できる環境づくり」及び「安心して働く基盤づくり」の5つの戦略の柱を設定し、施策を展開している。
■人的資本経営における人財戦略と価値創造プロセスの全体概念
[戦略の柱①]人と組織の進化による価値創出
会社や職場のビジョン・目標に共感し、自律的に挑戦する「人の成長」と、多様な人財の力を活かす「組織の成長」に取り組んでいく。これらを通じて多様な知・経験を有する人財が力を最大限発揮し、協働することで、価値共創やイノベーションを実現していく。
具体的には、対話を通じて個人と組織の思いが重なる部分を見出し、一人ひとりが既存業務の改善改革や新たな事業・サービスの創出に取り組むことで、組織力の向上や生産性の向上につなげるQX(QdenTransformation)の取組みを推進している。これを実現する組織へと変革するため、社長をはじめ経営層が取組みにコミットするとともに、職場改善に向けたエンゲージメントサーベイの活用や、職場での対話の中心となる組織の長を対象とした研修を一部の職場で先行実施しており、2024年度に九州電力及び九州電力送配電の全職場へ展開予定である。
また、従業員のアイデアを起点に、社外とも連携しながら新たなビジネスやサービスを共創する「KYUDEN i-PROJECT」を立ち上げ、柔軟な発想によるイノベーションを推進している。
■QXの取組み
[戦略の柱②]経営戦略の実現に必要な人財の獲得・育成
経営ビジョンに掲げる成長事業の収益拡大や、新たな事業創出に必要な人財を明らかにする人財ポートフォリオの策定に着手しており、これをベースに「社外からの多様な経験を有する人財獲得」と「社内人財の育成」の両面で取り組む。
人財育成においては、事業創造人財やグローバル人財等の「戦略実現のための計画的育成」と、必要な時に必要な学びを得られる「個の自律的な学び」の両面から教育を体系化し、育成を強化している。
[戦略の柱③]自らの可能性にチャレンジできる仕組みづくり
従業員の自律的なキャリア形成を支援するとともに、そのチャレンジを経営戦略実現の力としていくことを目指し、個の自律的な学びや、社内外での副業・兼業等の多様な経験の機会を充実させるとともに、手挙げでの異動公募等の仕組みを整備している。
[戦略の柱④]多様な人財が働きがいを持ち活躍できる環境づくり
一人ひとりの強みや能力を最大限発揮させ、企業価値創造につなげるとともに、多様な人財が働きやすく、成長・働きがいを感じる職場づくりに向けて、DE&Iの推進に取り組んでいる。特に女性活躍に関しては、貴重な人財の力を最大限活かす観点から、経営戦略として強力に推進する必要がある。一方、現状は男女で管理職への就任状況に差が生じており、出産・育児等のライフイベントが業務経験に影響していること等がその主要因となっている。このことを踏まえ、今後、出産・育児等の前に、部門の中核となる業務やチャレンジングな業務を早期に付与する「キャリアの早回し」や、評価・登用における公正なキャッチアップに取り組む。また、技術系部門においては女性が極めて少数であることから、女性の新卒採用拡大等の取組みを強化する。
なお、2023年度に男性育休取得率100%を達成した。2023年12月には、祖父母世代が育児に参画する「孫育」のための休暇制度を導入する等、あらゆる世代が育児参画し支え合う風土醸成に継続的に取り組んでいる。
また、生産性向上、ワーク・ライフシナジー等を目的とした働き方改革を推進している。今後、フルリモート勤務の試行実施拡大等、時間や場所に捉われない、働き方柔軟化等に取り組んでいく。
[戦略の柱⑤]安心して働く基盤づくり
多様な人財が安心して働き、能力発揮する基盤として、安全・健康・人権尊重に係る取組みを推進している。
事業の基盤である安全については、「安全はすべてに優先する」という基本方針を示した「九電グループ安全行動憲章」を意識と行動のベースとして、取組みを推進している。2023年4月には、安全教育施設「安全みらい館」を開設し、経営の基盤である当社グループ従業員の安全への決意と実践力を育み、グループの総力をあげて安全文化を創造し、進化させるための教育を実施している。また、「九州電力健康宣言」及び「九州電力健康経営方針」の下、従業員の意欲や活力を高め、その力で組織を活性化し、永続的な会社の発展を目指す健康経営を推進している。さらに、「九電グループ人権方針」の下、人権を尊重した事業活動を展開するとともに、サプライチェーンに対しても責任ある行動を徹底している。
<リスク管理>
人的資本に係るリスクは、他のサステナビリティ課題に係るリスクと共に管理している。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <リスク管理>」に記載している。
<指標と目標>
「人と組織が成長し続ける組織文化の醸成により未来の価値を創出」することを目指す姿とし、その達成状況を測定する指標として、「一人当たり付加価値」及び「従業員エンゲージメント」をKGIとしている。また、目指す姿の実現に向けて、下記のKPIにより取組み状況をモニタリングしている。
※1:年度の記載がないものは2024年度目標
※2:実績集計範囲は当社及び九州電力送配電株式会社(その他の指標は当社グループ全体)
※3:売上高から外部購入価値(燃料費や委託費等)及び減価償却費を差し引いたもの(経常利益+人件費+賃借料+金融費用+租税公課等)
※4:従業員満足度調査(隔年実施)により測定。2023年度は未実施のため、2022年度実績を掲載。
Ⅰ リスクマネジメント体制及びプロセス
九電グループの経営に影響を与えるリスクについては、九州電力のリスク管理に関する規程に基づき、毎年リスクの抽出、分類、評価を行い、全社及び部門業務に係る重要なリスクを明確にしている。
各部門及び事業所は、明確にされた重要なリスク及び個別案件のリスク等への対応策を事業計画に織り込み、適切に管理している。
複数の部門等に関わるリスク及び顕在化のおそれがある重大なリスクについては、関連する部門等で情報を共有したうえで、対応体制を明確にし、適切に対処している。特に、原子力については、社外の知見や意見等も踏まえ、幅広いリスクの把握に努めるとともに、取締役、執行役員等による情報の共有化を行い、継続的にその低減を図っている。
また、非常災害等の事象が発生した場合に迅速、的確に対応するため、予めその対応体制や手順等を規程に定めるとともに、定期的に訓練等を実施している。
こうしたリスクマネジメントの適正性の確保等を図るため、業務執行に対して中立性を持った内部監査部門により、各部門やグループ会社におけるリスクマネジメントの実施状況について監査を行っている。
(1) リスクマネジメント体制
(2) リスクマネジメントプロセス
Ⅱ リスク認識と対応策
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
(1) 競争環境等の変化
① 国内電気事業
② 海外事業
③ その他エネルギーサービス事業
④ ICTサービス事業、都市開発事業、新規領域の事業
(2) 原子力発電を取り巻く状況
① 安全の確保を大前提とした原子力の最大限活用
② 原子燃料サイクル
③ 原子力バックエンド事業
(3) 市場価格の変動
① 燃料価格の変動
② 金利の変動
③ 卸電力取引所における取引価格の変動
(4) 電気事業関係の制度変更等
(5) 気候変動に関する取組み
(6) 設備事故・故障、システム障害など
① 自然災害
② 設備の高経年化等
③ 燃料供給支障
④ システム障害
⑤ サイバー攻撃
(7) オペレーショナルリスク
① 業務上の不備
② 法令違反等
③ 人権侵害
④ 環境負荷低減取組み不十分・環境汚染
⑤ 人財確保困難化・従業員エンゲージメントの低下
(8) 繰延税金資産の取崩し
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度のわが国経済は、個人消費を中心に緩やかに回復している。九州経済も、生産は横ばいで推移しているものの、個人消費・設備投資を中心に緩やかに回復している。
当社グループにおいては、収支の改善や財務基盤の回復、更にその先の「九電グループ経営ビジョン2030」の実現を目指し、事業活動全般にわたる徹底した効率化や収益拡大に向けた様々な戦略を実行に移してきた。また、安全性の確保を前提とした原子力の最大限の活用などによる「電源の低・脱炭素化」や「電化の推進」など、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みにもグループ一体となって取り組んできた。
当連結会計年度の業績については、燃料価格の下落により燃料費調整の期ずれ影響が前連結会計年度の差損から差益に転じたことに加え、原子力発電所の稼働増などにより燃料費が減少したことや、卸電力市場価格の下落により購入電力料が減少したことなどから、経常損益、親会社株主に帰属する当期純損益ともに大幅に改善し、黒字となった。
当連結会計年度の小売販売電力量については、域外の契約電力が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ4.0%減の735億kWhとなった。また、卸売販売電力量については、13.9%減の167億kWhとなった。この結果、総販売電力量は6.0%減の902億kWhとなった。
小売・卸売に対する供給面については、原子力をはじめ、火力・揚水等発電設備の総合的な運用等により、また、エリア需給については、調整力電源の運用及び国のルールに基づく再エネ出力制御の実施等により、安定して電力を供給することができた。
当連結会計年度の連結収支については、収入面では、国内電気事業において、総販売電力量の減少などにより小売販売収入及び卸売販売収入が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ818億円減(△3.7%)の2兆1,394億円、経常収益は762億円減(△3.4%)の2兆1,699億円となった。
支出面では、国内電気事業において、原子力発電所の稼働増や燃料価格の下落などにより燃料費が減少したことに加え、卸電力市場価格の下落などにより購入電力料が減少したことなどから、経常費用は4,010億円減(△17.2%)の1兆9,317億円となった。
以上により、経常損益は2,381億円の利益、親会社株主に帰属する当期純損益は海外事業に係る評価損を特別損失に計上したことなどから1,664億円の利益となった。
報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。
[参考]国内電気事業再掲
(注) 「発電・販売事業」と「送配電事業」との内部取引消去後の数値を記載している。
② 資産、負債及び純資産の状況
資産は、設備投資などによる固定資産の増加に加え、現金及び預金などの流動資産が増加したことから、前連結会計年度末に比べ1,235億円増(+2.2%)の5兆7,272億円となった。
負債は、有利子負債が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,802億円減(△3.6%)の4兆8,061億円となった。有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ2,260億円減(△5.7%)の3兆7,654億円となった。
純資産は、B種優先株式の発行及びA種優先株式の消却や、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などから、前連結会計年度末に比べ3,038億円増(+49.2%)の9,210億円となった。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ5.1ポイント向上し15.5%となった。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、国内電気事業において、燃料代支出や購入電力料支出の減少などにより、前連結会計年度に比べ5,555億円収入増(+1,821.3%)の5,860億円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投融資の回収による収入の減少などにより、前連結会計年度に比べ154億円支出増(+4.7%)の3,443億円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、B種優先株式の発行に伴う収入の増加はあったが、長期借入れや社債発行による収入の減少などにより、前連結会計年度の3,247億円の収入から1,505億円の支出に転じた。
以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ935億円増加し、3,642億円となった。
当社グループの事業内容は、国内電気事業(発電・販売事業及び送配電事業)が大部分を占め、国内電気事業以外の事業の生産、受注及び販売の状況は、グループ全体からみて重要性が小さい。また、国内電気事業以外の事業については、受注生産形態をとらない業種が多いため、生産及び受注の状況を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため、以下では、生産及び販売の状況を、国内電気事業における実績によって示している。
(注) 1 百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。
2 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社、九電みらいエナジー株式会社)の合計値(内部取引消去後)を記載している。
3 発電電力量は、送電端の数値を記載している。
4 「新エネルギー等」は、太陽光、風力、バイオマス、廃棄物及び地熱などの総称である。
5 揚水発電所の揚水用電力量等は、貯水池運営のための揚水用に使用する電力量及び自己託送の電力量である。
6 出水率は、当社の自流式水力発電電力量の1992年度から2021年度までの30か年平均に対する比である。
(注) 1 販売電力量の百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。
2 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社、九電みらいエナジー株式会社)の合計値(内部取引消去後)を記載している。
3 小売販売収入は小売販売電力量、卸売販売収入は卸売販売電力量に対応する料金収入である。
4 卸売販売電力量には間接オークションに伴う自己約定を含んでいる。
5 電灯料及び電力料には「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」及び「デフレ完全脱却のための総合経済対策」により国が定める値引きの原資として受領する補助金収入は含んでいない。
石炭、重油、原油、LNGの受払状況
(注) 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社)の合計値を記載している。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
ア 売上高(営業収益)及び経常損益
売上高(営業収益)は、前連結会計年度に比べ818億円減(△3.7%)の2兆1,394億円、経常収益は762億円減(△3.4%)の2兆1,699億円となった。一方、経常費用は4,010億円減(△17.2%)の1兆9,317億円となった。以上により、経常損益は3,247億円増の2,381億円の利益となった。
報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。
[発電・販売事業]
発電・販売事業は、国内における発電・小売電気事業等を展開している。
売上高は、総販売電力量の減少などにより小売販売収入及び卸売販売収入が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ1,111億円減(△5.8%)の1兆8,197億円となった。
経常損益は、燃料価格の下落により燃料費調整の期ずれ影響が前連結会計年度の差損から差益に転じたことに加え、原子力発電所の稼働増などにより燃料費が減少したことや、卸電力市場価格の下落により購入電力料が減少したことなどから、2,911億円改善し1,475億円の利益となった。
[送配電事業]
送配電事業は、九州域内における一般送配電事業等を展開している。
売上高は、卸電力市場価格の下落などにより再生可能エネルギー電源からの買取に伴う卸売販売収入が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ105億円減(△1.5%)の6,984億円となった。
経常利益は、再生可能エネルギー電源からの買取関連費用や需給調整市場からの調達費用が減少したことなどから、272億円増(+193.0%)の413億円となった。
[海外事業]
海外事業は、海外における発電・送配電事業等を展開している。
売上高は、送電事業に係る開発報酬による収入の減少などにより、前連結会計年度に比べ4億円減(△7.5%)の57億円、経常利益は、為替差益の増加などにより、8億円増(+19.9%)の53億円となった。
[その他エネルギーサービス事業]
その他エネルギーサービス事業は、電気設備の建設・保守など電力の安定供給に資する事業、お客さまのエネルギーに関する様々な思いにお応えするため、ガス・LNG販売、石炭販売、再生可能エネルギー事業等を展開している。
売上高は、石炭販売の増加や発電所補修工事の増加などにより、前連結会計年度に比べ382億円増(+14.7%)の2,994億円、経常利益は46億円増(+16.0%)の339億円となった。
[ICTサービス事業]
ICTサービス事業は、保有する光ファイバ網やデータセンターなどの情報通信事業基盤や事業ノウハウを活用し、データ通信、光ブロードバンド、電気通信工事・保守、情報システム開発、データセンター事業等を展開している。
売上高は、情報システム開発受託の増加やデータ通信事業におけるソリューションサービス収入の増加などにより、前連結会計年度に比べ120億円増(+10.1%)の1,314億円、経常利益は12億円増(+19.6%)の78億円となった。
[都市開発事業]
都市開発事業は、都市開発・不動産・社会インフラ事業等を展開している。
売上高は、オール電化マンション販売の増加などにより、前連結会計年度に比べ40億円増(+16.2%)の289億円、経常利益は、持分法による投資利益の増加などもあり、6億円増(+18.9%)の38億円となった。
イ 渇水準備金引当又は取崩し
当連結会計年度は、出水率が94.2%と平水(100%)を下回ったことから、渇水準備引当金を2億円取り崩した。
ウ 特別利益
当連結会計年度は、特別利益の計上はないが、前連結会計年度は、有価証券売却益により112億円を特別利益に計上した。
エ 特別損失
当連結会計年度は、金融資産評価損により134億円を特別損失に計上した。
オ 法人税等
法人税等は、当連結会計年度の課税所得の増加等に伴う法人税、住民税及び事業税の増加などから、前連結会計年度に比べ752億円増の566億円となった。
カ 親会社株主に帰属する当期純損益
親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ2,228億円増の1,664億円の利益となった。1株当たり当期純損益は466.11円増の342.30円の利益となった。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ア キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載している。
イ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、燃料代などの支払いや設備投資及び投融資、並びに借入金の返済及び社債の償還などに資金を充当している。
これらの資金需要に対して、自己資金に加え、社債や借入金により資金調達を行うとともに、一時的な資金需要の変動に対しては、コマーシャル・ペーパーなどにより機動的な対応を行っている。
また、流動性リスクについては、月次での資金繰により資金需要を的確に把握するよう努めるとともに、コミットメントラインや当座貸越、及びキャッシュ・マネジメント・サービスなどを活用することとしている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。重要な会計方針については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。
当社グループは、連結財務諸表を作成するにあたり、固定資産の減損、海外発電事業への投資及び海外における発電所建設等のサービスに係る金融資産の評価、繰延税金資産の回収可能性、貸倒引当金、退職給付に係る負債及び資産、資産除去債務などに関して、過去の実績等を勘案し、合理的と考えられる見積り、判断を行っているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、特に重要なものは海外発電事業への投資及び海外における発電所建設等のサービスに係る金融資産の評価と繰延税金資産の回収可能性であり、詳細については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
④ 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、「九電グループ経営ビジョン2030」に向けた中間目標として、「連結経常利益1,250億円以上(2025年度)」「自己資本比率20%程度(2025年度末)」の財務目標を設定するとともに、「連結ROIC2.5%以上(2025年度)、3.0%以上(2030年度)」のROIC目標を設定している。当連結会計年度においては、燃料価格の下落により燃料費調整の期ずれ影響が前連結会計年度の差損から差益に転じたことに加え、原子力発電所の稼働増などにより燃料費が減少したことや、卸電力市場価格の下落により購入電力料が減少したことなどから、経常利益2,381億円、自己資本比率15.5%、ROIC4.2% となった。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した経営目標、財務目標及びROIC目標の実現に向けて、原子力の安全・安定運転の継続、卸販売の推進や電化の推進などによる国内電気事業の収益拡大に加え、再生可能エネルギー事業や海外事業をはじめとする成長事業への投資による収益拡大などの取組みを引き続き推進していくとともに、投下資本のスリム化・最適化に取り組んでいく。
当社は、2023年9月27日の取締役会において、2024年4月1日を効力発生日として、当社の地熱事業を完全子会社である九電みらいエナジー株式会社(以下「九電みらいエナジー」という。)に承継することを決定し、九電みらいエナジーとの間で吸収分割契約を締結した(以下「本件吸収分割」という。)。
(1) 本件吸収分割の背景・目的
九電グループは、2021年4月に策定した「九電グループカーボンニュートラルビジョン2050」において、2050年のカーボンニュートラル実現への挑戦を宣言し、低・脱炭素のトップランナーとして再生可能エネルギー主力電源化に取り組んでいる。
今回、九電グループの再生可能エネルギー事業に関する意思決定の迅速化や経営資源・情報の効果的な獲得等を目的に、以下のとおり本件吸収分割を行った。これにより、今後、九電グループの2030年再生可能エネルギー開発目標500万kW達成への取組みを加速させるだけではなく、リーディングカンパニーとしてお客さまや社会の幅広いニーズにお応えしていき、再生可能エネルギー事業における新たな価値創造に挑戦していく。
(2) 本件吸収分割の要旨
ア 本件吸収分割の日程
(注)本件吸収分割は、当社において会社法第784条第2項の規定に基づく簡易吸収分割の要件を充たすため、株主総会の承認は省略する。
イ 本件吸収分割の方式
当社を分割会社とし、九電みらいエナジーを承継会社とする吸収分割である。
ウ 本件吸収分割に係る割当ての内容
本件吸収分割に際し、九電みらいエナジーは、普通株式65万株を発行し、すべて当社に対して割当て交付した。
エ 本件吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠
九電みらいエナジーは、当社の100%子会社であり、本件吸収分割に際して九電みらいエナジーが発行する株式のすべてが当社に交付されることから、当社と九電みらいエナジーとの間で協議し、割当てる株式数を決定している。
オ 本件吸収分割により増減する資本金
当社の資本金に変更はない。
カ 承継会社が承継する権利義務
九電みらいエナジーは、当社との間で締結した吸収分割契約の定めに従い、当社が営む地熱事業に関して有する権利義務を効力発生日に承継した。
なお、本件吸収分割による九電みらいエナジーへの債務の承継については、免責的債務引受の方法によるものとした。
(3) 分割した資産、負債の項目及び金額(2024年4月1日時点)
(4) 本件吸収分割後の承継会社の状況(2024年4月1日時点)
当社グループ(当社及び連結子会社)は、「九電グループ経営ビジョン2030」に掲げる「2030年のありたい姿」並びに「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」及び「九電グループ カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」に基づき、エネルギーサービス事業における「S+3E」を堅持しつつ、社会と当社グループのサステナビリティを実現する上で優先的に取り組むべき経営上の課題(マテリアリティ)解決に必要な以下の研究開発に取り組んでいる。
(1) 「脱炭素社会の牽引」に資する研究開発
・分散型エネルギーリソースのアグリゲーション技術など再生可能エネルギーの主力電源化に関する研究
・安全性の確保を大前提とした原子力の最大限活用に資する研究
・水素製造・利活用、CCUS・カーボンリサイクルに関する研究
・火力発電所へのアンモニア混焼に関する研究
・ヒートポンプの活用などによる産業部門の電化に関する研究
・EV向けの充放電器やEMSの開発など運輸部門の電化に関する研究 など
(2) 「エネルギーサービスの高度化」に資する研究開発
・高度なセンサ技術やAI・IоTなどのデジタル技術を活用した電力設備の保全・運用に関する研究
・電力設備の保全業務の高度化・効率化に関する研究
・再生可能エネルギーの大量連系時における系統安定性、電力品質維持に関する研究 など
(3) 「スマートで活力ある社会の共創」に資する研究開発
・ICT、量子技術の活用などによる地域課題解決や新たなサービスの創出に関する研究
・カーボンニュートラル推進やレジリエンス強化といった自治体等のニーズに応じた地域エネルギーシステムに関する研究
・九州の主力産業である農業の活性化に向けたスマート農業に関する研究 など
また、知的財産面においては、コーポレートガバナンス・コードの改訂(2021年6月)を踏まえた知財・無形資産ガバナンスガイドラインの策定を受け、2023年12月に「知財戦略」を策定し、知財の創造・保護・活用の知的創造サイクルを廻すことにより企業価値を向上させ、研究開発との連携により経営・事業戦略に知財面から貢献することとしている。
当連結会計年度の当社グループの研究開発費は