第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、独自の技術・製品開発力を磨き、環境・社会課題の解決を志向した事業領域の創出と事業構造の変革による新たな成長軌道を築き、社会の発展とともに成長し続けることをビジョンとして掲げ、環境変化に新たな事業機会を見出し、次世代の事業領域を創出することで、業績変動リスクに耐えうる強靭な事業構造への転換を目指してまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2023年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「Advance 2025」において、収益基盤の維持・拡大と収益性の改善によりキャッシュ創出力を高め、事業ポートフォリオの変革に向けた新たな事業領域の創出に経営資源を積極投入し、安定的な利益成長を実現するための経営基盤の構築を目指し、以下の重点施策を掲げております。

① 既存事業による安定収益基盤の拡大と収益性の改善

液晶ディスプレイ関連の需要拡大に応じた生産・供給体制の強化と合理化を追求するとともに、自動車や情報・電子デバイスなど成長分野での新たなニーズ獲得、環境負荷低減製品の拡充を図るために販売・開発体制を再編・強化する。

② 次世代事業領域創出による事業構造改革の基盤構築

次世代の新たな事業領域を創出するために、バイオマス材料・製品開発の基盤技術の確立、革新的な生産プロセス技術の開発、新たな海外事業地域の探索・推進体制の構築などに注力する。

③ サステナビリティ経営の推進

次世代を担う多様な人材の活躍・成長を促す人事制度改革、脱炭素・循環型社会への貢献、環境変化に応じたリスク管理・コンプライアンスの高度化、生産性向上と新たな価値創造に繋がるデジタル技術導入など、サステナビリティ経営推進体制を構築する。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、環境変化に耐え得る財務体質の維持と安定的な利益成長の実現により、株主資本コストを上回る資本効率の実現を目指し、中期経営計画「Advance 2025」では、経営指標として総資産経常利益率(ROA)7%以上、自己資本当期純利益率(ROE)9%以上を掲げております。

 

(4) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

次期の事業環境は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進む一方で、ウクライナ情勢の悪化や米中対立の深刻化、物価上昇や金融引締めに伴う景気減速が危惧されるなど、先行き予断を許さない状況が続くとみております。

このような状況のもと、当社グループは、中国シフトが進む液晶ディスプレイ関連の需要を確実に取り込むとともに、自動車や情報・電子デバイスなど成長分野での新たなニーズ獲得に注力し、安定収益基盤の拡大と収益性の向上を図ってまいります。また、バイオマス材料・製品や革新的生産プロセスの開発、新規事業開発体制の強化などに経営資源を積極投入し、環境変化に強い事業構造への転換に向けた取り組みを推進してまいります。

当社グループはこれらの課題に取り組むことで、環境変化に新たな成長の機会を見出し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を果たしてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に係るガバナンス及びリスク管理

当社グループは、地球環境問題や社会課題に向き合い、すべてのステークホルダーと信頼・協働関係を築き、社会に役立つ革新的な技術・製品やサービスを提供しつづけることで、社会的価値と経済的価値を高めて行くとともに、持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針としております。具体的には、地球環境の保全に役立つ環境配慮型製品の開発・販売、生産プロセスにおけるCO2排出量の削減、省エネルギー活動の推進、従業員の安全・快適な職場環境の形成と健康保持増進などに取り組んでおります。

取締役会は、サステナビリティを巡る課題への対応が、当社グループの持続的な成長に向けた重要なリスク管理の一つであるとともに、収益機会に繋がる重要な経営課題であることの認識のもと、業務執行組織におけるサステナビリティ推進体制の整備・構築や中長期的なサステナビリティに関する重要課題などを審議・監督する責任を有しております。

また、当社グループでは、代表取締役社長を総括責任者とするリスク管理体制のもと、サステナビリティに関するリスクを含む事業活動に影響を及ぼす可能性のあるリスクを識別・評価し、その管理状況を取締役会に定期報告することとしており、特に重大なリスクについては取締役会の承認を得て対策を講じるものとしております。

なお、海外子会社を含むグループ全体でのサステナビリティ推進体制を強化するため、2023年4月1日付でサステナビリティ推進規程を制定し、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を最高責任者とする業務執行組織における推進体制を構築しております。具体的には、CSR担当執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティに関するリスク及び機会の識別・評価、マテリアリティの特定、指標・目標等の策定などを進めてまいります。さらには、サステナビリティ推進室を新設し、取締役会やサステナビリティ委員会での審議結果等に基づく、サステナビリティ推進に係るグループ全体への課題展開や連携推進、社内浸透を図ってまいります。

 

(2) 人材育成及び社内環境整備に関する方針

当社グループは、持続的成長を果たすために、従業員の人権を尊重し、国籍・性別・年齢・信仰等に拘らず、多様な人材を採用・育成・登用することが重要であるとの認識に立ち、ダイバーシティの推進やワークライフバランスの実現に向けた育児・介護休暇制度の充実や時間外労働の削減、快適な職場環境の形成、健康保持増進などへの取組み、教育・育成制度の拡充、ジョブローテーションなど社内環境の整備を進めております。また、経営戦略の実現に不可欠となるグローバル人材や高度専門家人材の確保・育成や多様な人材の活躍・成長を促すための人事制度改革に取り組んでおります。

なお、人材育成及び社内環境整備に関する方針に係る指標及び目標については、現時点で海外子会社を含む連結グループとしての記載が困難であるため、当社単体のものを「第1 [企業の概況]5 [従業員の状況](4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財務状態及びキャッシュ・フロー等の業績に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
  当社グループにおいては、これらのリスクの発生を防止、分散あるいはヘッジすることにより軽減を図っておりますが、予測を超える事態が生じた場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
  なお、記載した事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

    ① 経済動向及び市場動向

当社グループのケミカルズ製品は、電子・情報分野をはじめとし、自動車・家電・建材、その他日用品等と幅広い分野で使用されており、装置システムの販売対象も、合成樹脂、塗料・インキ等のメーカーなど多岐にわたっております。このため、当社グループの経営成績は、景気動向及び設備投資動向全般の影響を受けております。特に、液晶ディスプレイ関連分野における需要動向・競合状況・価格情勢により、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性があります。
 

    ② 原材料市況

当社グループでは、原材料の調達に関しては国内外に複数の調達先を確保し、安定した原材料調達と原材料コストの低減を図っております。しかしながら、ケミカルズ製品の主要原材料であるアクリル酸エステル類や酢酸エチルなどの価格は、原油・ナフサ価格の市況の影響を受けており、上昇したコストを販売価格に転嫁できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

    ③ 法的規制・コンプライアンス

粘着剤をはじめとしたケミカルズ製品の多くは、製造工程において有機溶剤を使用しております。有機溶剤の取り扱いにあたり、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法や消防法等の法規制を受けております。当社グループは、定期的な法令順守状況のチェックにより関連する法規制の遵守を徹底するとともに、環境汚染の防止、安全衛生の推進に努めておりますが、これらの関連法規制が強化された場合や新たな法規制が設けられ制約を受けた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは役員・従業員等に対して定期的な教育等によりコンプライアンスの徹底に努めておりますが、コンプライアンス上の問題が発生した場合にも、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

    ④ 海外での事業展開

当社グループは、アジア地域、特に中国におけるケミカルズ製品の市場の将来性に注目し、子会社4社を通じ積極的に事業展開を行っておりますが、現地における法令の改変、商慣習、政治・経済情勢の混乱、自然災害、伝染病等に起因する予期せぬ事態が発生することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

    ⑤ 環境問題

当社グループは、原材料として有機溶剤等の各種化学物質を取り扱うため、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法や消防法等の規制を受けております。これらの法規制を遵守するとともに、地球温暖化防止に向けた省エネルギーや環境負荷物質の排出抑制にも努めております。しかしながら、環境保全に関する規制は年々強化されており、使用する化学物質が制限されるほか、対応するための大型設備投資等が必要になる場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 

    ⑥ 災害事故

当社グループは、化学物質、特に危険物を取り扱うため、自然災害や火災爆発事故等により、重大な損失を招くリスクがあります。このため、製造設備の点検・保守、安全のための設備投資、定期的な防災訓練の実施など、予防管理に努めております。しかしながら、大規模自然災害の発生や不慮の事故等により、建屋・生産設備等が損害を被った場合や電気・ガスなどのインフラ被害、広範囲にわたるサプライチェーンの断絶等により、生産活動等に大きな影響が生じた場合には、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

    ⑦ 新製品開発

当社グループは、常に市場・顧客ニーズに適合した高付加価値な製品・技術を開発していく必要があると考え、新製品・新技術の基礎研究及び応用研究の両面から積極的に研究開発を行っております。しかしながら、市場・顧客ニーズの変化に適切に対応できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

    ⑧ 特定製品分野への依存

当社グループのケミカルズ製品は、液晶ディスプレイ等に組み込まれる光学フィルムの貼り合わせやそれら部材の製造等に使用されております。当社グループは、今後も市場・顧客ニーズに応えるべく新製品の開発を進めてまいりますが、技術革新に伴い光学フィルムが不要になった場合もしくは競合製品・代替製品がより低価格で導入され価格競争が激化した場合には、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

    ⑨ 新規事業

当社グループは、事業拡大のために新規事業への展開を中長期的な経営戦略として積極的に推進しております。新規事業開発は慎重な検討を重ねたうえで取り組んでおりますが、安定して収益を生み出すまでには長期間を要することもあり、製品需要や技術進化の変化等により、当初の計画どおりの成果が得られない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑩ 製造物責任

当社グループは、高品質な製品・サービスを安定して供給していくために、国際的な品質マネジメントシステム(ISO9001)の認証に基づいた厳格な品質管理体制を構築しております。当社の事業の中心は生産材の製造であり、最終消費者に対して賠償や回収を行う可能性は低いと考えますが、当社製品の品質により、製造物賠償責任等が発生した場合、当社及び当社製品に対する信頼性を損なうものであり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑪ 知的財産権

当社グループは、知的財産権が事業活動・製品競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、知的財産権の取得による自社権利の保護に努める一方で、他社の知的財産権を調査し、問題の発生防止を図っております。しかしながら、他社との間で知的財産権を巡る紛争が生じたり、他社から知的財産権を侵害された場合には、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

    ⑫ 情報セキュリティ

当社グループにとって、情報システムは事業運営上重要な役割を担っており、技術情報等の重要な機密情報や、顧客その他関係者の個人情報をシステムで管理しております。これらの情報の外部への流出を防止するため、関連規程の整備や社員教育の徹底、セキュリティシステムの強化等さまざまな対策を講じておりますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセスその他不測の事態により、情報システムに重大な障害が発生した場合、重要な業務の中断や機密データの漏洩等が発生し、当社グループの社会的信用に影響を与え、その対応のための多額の費用負担や企業イメージ低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

    ⑬ 人材確保・育成

当社グループの持続的な成長を実現するためには、グローバル市場で活躍ができる人材や新たな事業を創出していく人材を確保する必要があります。当社グループでは今後も事業の拡大に伴い積極的に人材を採用していく方針でありますが、人材を十分に確保・育成できない場合や現在在籍している人材が流出した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

    ⑭ 減損

当社グループは、生産設備や研究設備等様々な固定資産を保有しております。これらの資産は、資産の時価が著しく下落した場合、又は事業資産の収益性が悪化し回復の可能性が見込めないなど減損処理が必要となる場合があり、減損損失が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績

当連結会計年度における経済情勢は、行動制限緩和によるコロナ禍からの持ち直しの動きが見られたものの、ウクライナ情勢の悪化・長期化に伴う資源価格の高騰など世界的な物価上昇の深刻化や海外主要国での金融引き締めによる景気減速にくわえ、中国でのコロナ政策転換に伴う感染急拡大の影響が懸念されるなど、先行き不透明かつ厳しい状況が続きました。

このような状況のもと、当社グループは、原材料価格上昇に応じた適切な価格転嫁やコスト削減施策による収益性の改善に注力するとともに、液晶ディスプレイ分野をはじめとする既存事業領域における収益基盤の維持・拡大を図ってまいりました。また、持続的成長と企業価値向上を果たすために、自動車、情報・電子など成長分野での新たな事業機会の創出による成長基盤の構築、医療ヘルスケア・環境・エネルギー分野での研究機関やスタートアップ企業との連携による社会課題解決を志向した新規事業開発体制の確立に取り組んでまいりました。

当連結会計年度の業績につきましては、価格改定の効果や円安に伴う中国子会社売上高の為替換算額の増加があったものの、液晶ディスプレイ関連分野での急激な生産調整の影響を受けてケミカルズの販売が落ち込んだことなどにより、売上高は381億29百万円(前連結会計年度比1.3%減)となりました。

利益面では、原材料価格の上昇に対する価格転嫁やコスト削減を進めたものの、ケミカルズの販売数量の減少に伴う減益をカバーするには至らず、営業利益は20億34百万円(前連結会計年度比8.7%減)、経常利益は21億69百万円(前連結会計年度比21.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は14億36百万円(前連結会計年度比29.6%減)となりました。

セグメントの状況は、以下のとおりです。

<ケミカルズ>

ケミカルズの売上高は339億51百万円(前連結会計年度比0.8%減)となり、製品別の状況は、以下のとおりです。

粘着剤関連製品は、液晶ディスプレイ関連用途向けの販売数量が生産調整の影響を受けて減少しましたが、価格改定の効果などにより、売上高は222億38百万円(前連結会計年度比1.8%増)となりました。

微粉体製品は、中国市場での光拡散用途や電子部品関連用途の需要低迷の影響を受けて販売数量が減少したことなどにより、売上高は25億24百万円(前連結会計年度比16.4%減)となりました。

特殊機能材製品は、中国市場でのスマートフォン市況悪化の影響を受けて電子材料用途向けの販売数量が減少したことなどにより、売上高は27億76百万円(前連結会計年度比21.2%減)となりました。

加工製品は、中国市場を中心に機能性粘着テープの販売が自動車内装部材や情報電子機器用途向けで増加したことなどにより、売上高は64億11百万円(前連結会計年度比9.8%増)となりました。

<装置システム>

装置システムについては、国内設備投資が堅調に推移するなか、受注高および受注残高とも前年度の水準を上回りましたが、設備関連の工事完成高が減少したことにより、売上高は41億78百万円(前連結会計年度比5.5%減)となりました。

 

 

  製品の種類別売上高は、下表のとおりであります。

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

(百万円)

ケミカルズ

 

 

粘着剤

21,835

22,238

微粉体

3,021

2,524

特殊機能材

3,521

2,776

加工製品

5,837

6,411

小計

34,215

33,951

装置システム

 

 

装置システム

4,422

4,178

小計

4,422

4,178

合計

38,638

38,129

 

 

② 財政状態

当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べて16億92百万円増加し、472億75百万円となりました。

流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産、棚卸資産が増加したものの、現金及び預金、有価証券が減少したことなどにより、前期末に比べ5億85百万円減少し、272億88百万円となりました。

固定資産は、有形固定資産が増加したことなどにより、前期末に比べ22億77百万円増加し、199億86百万円となりました。

一方、負債については支払手形及び買掛金、長期借入金が減少したものの、1年内返済予定の長期借入金、その他流動負債が増加したことなどにより、前期末に比べ63百万円増加し、172億98百万円となりました。

当期末における純資産は、利益剰余金、為替換算調整勘定が増加したことなどにより、前期末に比べ16億29百万円増加し、299億77百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前期末62.2%から1.2ポイント増加し63.4%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ11億89百万円減少し、100億13百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果増加した資金は、20億90百万円(前年同期は39億73百万円の増加)となりました。

これは、主に税金等調整前当期純利益20億円、減価償却費18億88百万円などによる増加と、仕入債務の減少13億80百万円、法人税等の支払額6億58百万円などに伴う減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した資金は、36億4百万円(前年同期は34億42百万円の減少)となりました。

これは、主に有形固定資産の取得35億68百万円などに伴う減少によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果増加した資金は、87百万円(前年同期は7億83百万円の増加)となりました。

これは、主に長期借入金の借入れ7億96百万円などによる増加と、配当金の支払額6億18百万円などに伴う減少によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ケミカルズ

34,569,164

97.8

装置システム

4,401,818

94.2

合計

38,970,983

97.4

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

b. 受注実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ケミカルズ

33,769,156

98.4

698,404

79.3

装置システム

4,958,817

146.2

2,524,151

144.7

合計

38,727,973

102.7

3,222,556

122.8

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c. 販売実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

ケミカルズ

33,951,023

99.2

装置システム

4,178,953

94.5

合計

38,129,976

98.7

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度(以下「当期」という。)の売上高は、前連結会計年度(以下「前期」という。)に比べて1.3%減の381億29百万円となりました。セグメント別の概況につきましては「第2[事業の状況]4[経営者による 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。

売上原価は、前期に比べ1.5%減の279億52百万円となりました。売上総利益は、原材料高に対する価格是正の増益効果はあったものの、液晶パネル業界での生産調整の影響を受けケミカルズの販売が減少したことにより、前期に比べ0.8%減の101億77百万円となりました。なお売上高総利益率は0.1ポイント増の26.7%となりました。

販売費及び一般管理費は、物流費等の営業経費の増加などにより、前期に比べ1.4%増の81億43百万円となり、売上高販管費比率は前期に比べ0.6ポイント増の21.4%となりました。

これらにより、営業利益は前期に比べ8.7%減の20億34百万円となり、売上高営業利益率は0.5ポイント減の5.3%となりました。

営業外損益は、為替差益が3億50百万円減少したことなどにより、前期に比べ73.8%減の1億35百万円となりました。経常利益は前期に比べ21.0%減の21億69百万円となり、売上高経常利益率は1.4ポイント減の5.7%となりました。

特別損益では、生産設備等の除却損失117百万円を計上し、税金等調整前当期純利益は、前期に比べ27.9%減の20億円となりました。

法人税等を6億31百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ29.6%減の14億36百万円となり、売上高当期純利益率は1.5ポイント減の3.8%となりました。

 

当社グループは、2022年度を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画「New Value 2022」において、「既存事業の収益基盤の強化」と「次世代の柱となる新たな事業領域の創出」を基本方針として掲げておりました。

同中期経営計画最終年の当期の売上高は、粘着剤の価格改定や加工製品の販売増加、円安による中国子会社の円換算額が増加したものの、液晶ディスプレイ関連や電子部品関連の需要減少の影響や装置システムの工事完成高が減少したことなどにより前年度から微減とはなりましたが、同中期経営計画最終年度の目標は達成することができました。

営業利益は、原材料価格の上昇に対する価格転嫁やコスト削減などを進めたものの、第2四半期以降の液晶パネル業界での在庫調整の影響による販売数量の減少や、物流等の活動経費等の増加もあり、同中期経営計画最終年度の営業利益目標の58.1%となりました。原材料価格の変動の影響を価格転嫁により最小限に抑えるよう取り組んではおりますが、液晶パネル業界の影響を受けやすい状況は続いているため、新規事業の創出などによる経営基盤の強化に取り組んでまいります。

 

 

 中期経営計画
 2023年3月期 数値目標

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

連結売上高

370億円

381億円

連結営業利益

35億円

20億円

(売上高営業利益率)

(9.5%)

(5.3%)

総資産経常利益率(ROA)

8%以上

4.7%

自己資本当期純利益率(ROE)

9%以上

4.9%

 

 

 

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの主な資金需要は、事業活動に要する運転資金、生産及び研究開発に要する設備投資や配当金支払等であります。これらの資金の源泉は、手元資金と営業キャッシュ・フローであり、必要に応じて金融機関からの短期・長期借入金等により必要資金を調達しております。なお、「第2 [事業の状況] 1 [経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の中国事業拠点における生産能力増強や研究開発機能の拡充、新規事業開発などの成長投資資金については、手元資金に加えて金融機関からの借入により調達する予定です。

また、海外子会社を含めたグループ内資金を有効活用するために、グループ資金管理体制の整備・強化、資金効率の向上に努めております。

なお、不測の事態に備えて取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しており、安定的な資金 調達手段を確保することにより資金の流動性を補完しております。

 

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果については、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a. 固定資産の減損

固定資産の減損会計の適用に際して用いた会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

b. 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。しかし、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合は繰延税金資産を取り崩して法人税調整額を計上する可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、国際競争に打ち勝ち、高収益を上げ続けるため、「研究開発力」と「生産技術力」に重点を置き、既存事業での顧客・市場ニーズへの迅速かつ的確な対応と、社会環境の変化や技術革新を見据えた新規事業の創出・育成に取り組んでおります。

研究開発体制は、グループ全体の研究開発体制を統括する研究開発本部の下、中長期視点での基盤技術強化、新たな高機能性材料の開発は研究開発センターが担い、既存事業の製品開発機能は製品開発部へ集約しているほか、生産プロセスの開発は生産技術センターが担っております。また、中国子会社(蘇州)に製品開発拠点を設置し、中国市場における現地でのニーズ探索・顧客対応力強化を図っております。

研究投資につきましては、中長期的な事業戦略に基づき、新規材料開発にウェイトを置いており、独自技術やノウハウを活用するだけでなく、外部研究機関との共同研究や他社協業を積極的に進めております。

当連結会計年度末における子会社を含む研究開発部門の従業員数は126名であり、当連結会計年度における研究開発費は1,404百万円であります。

研究開発活動における注力分野は、電子・情報材料分野、モビリティー分野、ライフサイエンス分野及びヘルスケア分野としており、事業領域の拡大に向けた新たな製品・サービスの創出に取り組んでおります。

セグメント別の状況は以下のとおりであります。

(ケミカルズ)

粘着剤につきましては、液晶ディスプレイ(LCD)の偏光板用途などのフラットパネルディスプレイ(FPD)分野において、更なるシェア拡大を図るために顧客ニーズに迅速かつ的確に対応した製品の開発に注力しております。また、自動車・建材分野等において、市場拡大が見込まれる有機溶剤による環境負荷を抑制した環境配慮型製品や、バイオマス度の高い粘着剤の開発にも取り組んでおります。

微粉体につきましては、事業領域の拡大に向けて、主力のLCD分野における光拡散シート用途に留まらず、他の光学フィルム関連分野への製品展開を図るための開発に注力しております。また、成長が期待される電子材料や電池関連分野での市場・顧客ニーズに応じた高機能製品の開発や、化粧品分野での生分解性材料の開発にも取り組んでおります。

特殊機能材につきましては、顧客ニーズに応じた電子材料用樹脂の開発に注力するとともに、主材料へ新たな機能を付与する樹脂改質剤や、導電性高分子製品開発にも取り組んでおります。

加工製品につきましては、中国自動車市場での販売拡大を図るため環境配慮型製品の機能向上に注力するとともに、スマートフォンなどの電子情報機器分野での市場ニーズの変化に対応した高機能テープ・フィルム製品の品揃え拡充や改良に取り組んでおります。

新規事業につきましては、医療・ヘルスケア分野において、抗菌・抗ウィルス材料や医療用樹脂(メディカルポリマー)の開発テーマを推進するとともに、環境・エネルギー分野では新規テーマ探索を行っており、革新的技術を保有する研究機関やスタートアップ企業と連携を図りながら、社会課題の解決を志向した新たな事業創出に向けて取り組んでおります。

(装置システム)

装置システムにつきましては、研究開発活動の大半がケミカルズの設備技術開発を兼ねており、記載を省略しております。