文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、経営理念「モノづくりをもっと面白く」を策定しております。テクノロジーの進化が加速しているモノづくりの現場では、日々困難な問題に取り組んでおります。当社グループは、お客様とともに「モノづくりをもっと面白く」し、社会の発展に貢献してまいります。
この経営理念において、「目指す姿」としては、「唯一無二」「永続的な成長」「働きがい」を掲げております。また、行動指針としては、「Challenge(チャレンジ)」「Customer(顧客志向)」「Cooperation(ボーダレスな連携)」「Character(持ち味を活かす)」「Speed(スピード)」を掲げております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2023年5月12日の取締役会において、「中期経営計画2025」を策定しました。その主な内容と進捗状況については、下記「(4) 経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題」において記載しております。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは、持続的な成長を果たし、全てのステークホルダーの利益を増大させる目的として、「連結売上高」「連結営業利益」「連結売上高営業利益率」「親会社株主に帰属する当期純利益」「自己資本利益率」を重要な経営指標と考えております。
(4) 経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、2025年度を最終年度とする「中期経営計画2025」を策定し、さらに2030年の目指すべき姿として「VISION2030」を掲げ、あるべき姿として、『世界のモノづくりを支えるグローバルニッチトップメーカーへ』を設定し、グローバルでの持続的な成長と高収益を実現するため、3つの重点テーマのもと、改革を推進しております。
「中期経営計画2025」の重点テーマ
①電子・半導体業界向け工具への注力
電子・半導体セグメントに経営資源を集中させ、収益性の高い製品の生産体制を整備した上で拡販に努め、高収益体制の構築を目指します。特に、脱炭素社会を背景として、需要が急拡大しているパワー半導体用SiC加工製品やSiウェーハ向け超微粒次世代ホイールの開発を進めます。その他、営業部門の効率化等にも取り組みます。
上記の取り組みにより、注力製品5品目(面研ホイール、電着ワイヤ、CMPコンディショナ、面取りホイール、ダイシングブレード)の売上を2022年度と比べ50億円の増加を見込んでおります。
②経営基盤強化
業務効率化に資するシステムや次世代を担う人材等に投資することで、経営基盤の強化を図り、「経営数値の見える化」や「業務の効率化」を実現する基幹システム等の導入を進め、中長期グループ経営方針に沿った経営を実現し、次世代を担う従業員の採用と育成、働きがいのある職場づくりによる組織力の向上を目指してまいります。また、高品質で信頼できる旭ブランドのイメージ確立も目指してまいります。
③リソースの最適化
グループ内での事業領域整理・製造販売拠点の再編を進め、内部リソースを最適化しつつ、製品の外部調達や販売委託等の外部リソースも取り入れ、「内・外」での最適な連携を進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティ課題全般に関するガバナンス・リスク管理体制>
当社グループでは、サステナビリティ基本方針として、『当社グループは、経営理念「モノづくりをもっと面白く」をすべての事業活動の根幹として、人を育て、技術を磨き、社会の「できないをできる」に変え続ける企業として、これからも社会と共に歩み続けます。』を掲げ、役員や従業員の一人ひとりが経営理念を実践し、事業を通じて社会へ貢献し、ステークホルダーの皆様とともに持続可能な成長を実現していくため、サステナビリティポリシーを10の側面で守るべき基本的事項として定めております。基本的事項とは、「人権」、「社会」、「労働環境」、「地球環境」、「顧客・取引先」、「製品・サービス」、「公正取引・国際取引」、「情報開示」、「資産の保全・管理」、「役員・従業員の義務」です。詳細なサステナビリティポリシーについては、当社ホームページをご確認ください。
上記のサステナビリティ基本方針及びサステナビリティポリシーに則り、サステナビリティ課題のリスクと機会に対応するための適切なガバナンス体制を構築しております。取締役会は経営上のサステナビリティ課題のリスクと機会を含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負う機関です。取締役会の詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」及び「(2) 役員の状況」をご確認ください。取締役会の下に、代表取締役社長を委員長、社外取締役、各本部長を委員とするサステナビリティ委員会を設置しております。年2回以上、サステナビリティ経営の方針、戦略、体制等について審議・決定の上、関連委員会と連携しながら、各事業本部やグループ会社へ指示を行います。サステナビリティ委員会での審議内容は取締役会へ付議・報告され、適切に監督してまいります。
■サステナビリティ課題全般に関するガバナンス体制図

<気候変動に関する取組>
サステナビリティポリシーの10の基本的事項の1つに「地球環境」を掲げており、気候変動への対応を重要なサステナビリティ課題の1つとして位置付けております。また、社内の関係部署や経営陣を巻き込みながら、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿ったディスカッション及び分析を行い、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4項目に沿って以下の通り情報を整理しました。
(1) ガバナンス
① 気候関連のリスクと機会に関する取締役会の監督
気候関連のリスクと機会は、<サステナビリティ課題全般に関するガバナンス・リスク管理体制>に記載の通り、取締役会によって適切に監督されております。
② 気候関連のリスクと機会の評価とマネジメントにおける経営陣の役割
<サステナビリティ課題全般に関するガバナンス・リスク管理体制>に記載の通り、サステナビリティ委員会が、気候変動を含むサステナビリティ経営の方針、戦略、体制等について審議・決定の上、各事業本部やグループ会社へ指示を行っております。また、シナリオ分析で特定したリスクと機会の管理や、GHG排出量削減のPDCA管理を各委員会と連携して行ってまいります。
(2) 戦略
① 組織が特定した、短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下“IPCC”)の最新の第6次評価報告書によりますと、地球温暖化が人間活動の影響で発生していることは「疑う余地がない」と評価されており、世界の平均気温は工業化以前(1850年頃)比較して既に約1.1℃上昇していると分析されています。今後、どのように気候変動が進んでいくか不確実な中、当社グループの財務に影響を及ぼす重要な気候関連のリスクと機会を特定するべく、TCFD提言で推奨されているシナリオ分析を実施しました。具体的なプロセス、前提条件、採用した2つのシナリオの概要については以下の通りです。
■シナリオ分析のプロセス
■シナリオ分析の前提条件
■採用シナリオの概要
・1850~1900年を基準とした世界平均気温の変化

(出所)IPCC 第6次評価報告書 第一作業部会(WG1) 政策決定者向け要約(SPM)
② 気候関連のリスクと機会が組織の事業、戦略、財務計画に及ぼす影響
シナリオ分析で特定した気候関連のリスクと機会、及び財務影響、対応策・戦略は以下の通りです。
③ 複数シナリオを考慮した、組織戦略のレジリエンス
シナリオ分析結果を要約しますと、1.5℃シナリオにおいては、炭素税や非鉄金属価格の高騰リスクによる財務影響が大きいと想定されるものの、GHG排出量の削減や適時適切な販売価格への反映で影響を抑えてまいります。機会として、当社の主力製品であるダイヤモンド工具は長寿命、高能率という特徴を持ち、気候変動の緩和に向けたソリューションとして販売拡大が想定されます。特に、電子・半導体市場向けの工具需要が伸長すると考えており、研究開発強化、生産設備増強及び販売強化により機会の取り込みを図ってまいります。
4℃シナリオにおいて、2030年時点では急性リスクは顕在化せず当社財務に与える影響は小さいものの、2050年までの時間軸においては河川沿いの工場や営業拠点においてリスクが高まる可能性があるため、BCP体制の継続的な強化等の対策を講じて財務影響の極小化を図りつつ、国土強靭化に向けた建設業界向け工具需要の取り込みを図ってまいります。
いずれのシナリオにおいてもレジリエント(強靭)に当社グループが企業価値を向上していけるよう、今後も継続的にシナリオ分析を実施の上、対応策・戦略の実践を進めてまいります。
(3) リスク管理
① 気候関連リスクを特定し、評価するための組織のプロセス
従前より、ISO14001を取得し環境マネジメントシステムを構築しております。同マネジメントシステムの中で、現在時点の気候関連リスクを含む環境リスクについて、各工場において特定、評価し、適切な対応を行ってまいりました。各工場が特定・評価したリスクについては、環境システム検討会議にて報告が行われ、一元管理されております。
今回新たに、管理本部総務部を中心とした社内プロジェクトにおいて、将来発生しうる中長期的な気候変動関連リスクと機会の特定・評価を実施いたしました。サプライチェーンへの影響、発生可能性、発生の時間軸及び財務影響などを考慮しながら、「(2) 戦略」で記載の通り7個の移行リスク、5個の物理的リスクと5個の機会を特定・評価しております。
② 気候関連リスクをマネジメントするための組織のプロセス
特定・評価した気候変動関連リスクにつきましては、環境システム検討会議で適切にマネジメントされております。マネジメント結果はサステナビリティ委員会経由で取締役会にも報告され、監督・指示を受けております。
③ 気候関連リスクと組織の全体的なリスクマネジメントとの統合
当社グループはリスクマネジメント体制の強化を進めており、気候変動関連に伴うリスク管理についても、全社リスクマネジメント体制への統合を検討しております。
(4) 指標及び目標
① 気候関連のリスクと機会の評価に使用する指標(Scope1とScope2のGHG 排出量実績)
当社グループは気候関連のリスクと機会の評価指標としてScope1とScope2のGHG排出量を使用しております。従前より法令に基づく排出量算定は行っておりましたが、この度GHGプロトコルに則り排出量を再算定しております。当事業年度の実績は下表の通り、Scope1とScope2合計で13,409t-CO2となります。
■GHG排出量実績
・算定範囲は当社及び国内連結子会社2社
・Scope2はマーケット基準の値
・排出量の数値は、算定範囲や算定に使用する排出係数等により、後に変更となる可能性があります
② 気候関連のリスクと機会をマネジメントするための目標
排出量実績の再算定に伴い、当社グループの削減目標を2030年△38.0%(2018年度対比)、2050年カーボンニュートラルの実現へ更新いたしました。本目標水準は日本政府が定めたGHG排出量の削減目標(NDC)である2030年△46.0%(2013年度対比)、2050年カーボンニュートラルと引き続き整合しております。
当事業年度時点の削減実績は△19.8%(2018年度対比)です。各工場における省エネ活動の徹底や、三重、千葉、山梨の3工場における太陽光発電の導入によりGHG排出量は年々減少傾向にあり、NDC水準を上回る削減を達成しております。今後とも省エネの取り組みや再エネの導入を進め、目標達成を目指してまいります。
■GHG排出量の削減目標及び削減ロードマップ

<人的資本に関する取組>
当社では、2023年4月に人事制度を改定するとともに、以下の人材育成方針及び社内環境整備方針を掲げ、中長期的な人材育成に取り組んでおります。「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4項目に沿って以下の通り情報を整理いたしました。
(1) ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、<サステナビリティ課題全般に関するガバナンス・リスク管理体制>に記載の通りであります。
(2) 戦略
人材育成方針及び社内環境整備方針
人材育成の基本は、職場での多様な業務経験を通じて成功・失敗体験を積み重ね、やりがいや成長を実感することで、自律的な成長のサイクルに結びつけることであると考えております。そのためには、上司が部下の特性を把握し、個々の強みを活かせる業務を割り当て、『挑戦する場』を提供することが重要であると考えており、当社では、上司と部下が信頼関係を築き、良好な意思疎通を図ることを重視しております。また、職場環境については、安全と健康の確保、快適な労働環境の整備に努めております。
① 人事制度体系
当社の人事制度は、等級と役職を連動させ、勤続年数にとらわれずに職責に見合った処遇の実現を目指しております。また、個々のモチベーションを高めて成長を促進させるため、上司と部下が日頃から率直な意見交換を行うとともに、半期毎の面談で成果・行動の振り返りと今後の課題設定を行うことを重視しております。
② 自己申告制度
当社では、半期毎の評価実施時に自己申告制度で個々のキャリアの希望を申告し、上司との面談を通じて今後の方向性を共有します。会社が目指す方向性と個々のキャリアの方向性を一致させることで、よりチャレンジングな業務の機会を提供し、個々の成長を促進します。また、自己申告の情報を配置転換に活用し、全社的な適材適所の実現を目指してまいります。
③ 教育研修体系
当社では、キャリアの節目毎に行う階層別教育に加え、必要となる知識・スキルを集中的に学ぶ教育研修を行っております。近年では半導体向けの顧客に幅広く対応できる人材を育成するため、選抜メンバーに1年間の研修を行い、グローバルに活躍できる人材を送り出しております。また、技術系の新入社員については、当社の基礎技術を習得するため1年間の研修実施後に配属しております。
(3) リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、<サステナビリティ課題全般に関するガバナンス・リスク管理体制>に記載の通りであります。
(4) 指標及び目標
この人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき、多様な人材を確保し、新人事制度や自己申告制度、教育研修の運用を通じて、働きがいのある職場づくりに努めます。その成果を確認するための当社の指標及び目標を以下に掲げます。
(注) 1 当社グループにおける記載が困難であるため、指標及び目標の数値は、提出会社のものを記載しております。
2 労働者の男女の賃金の差異については、採用活動を強化した結果、若年層の女性の割合が増加したため、前事業年度と比べ男女の賃金格差が広がっております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 製品の取引の継続性について
当社グループは、その主要取引先等に対して、納入数量、価格等に関する長期的な契約を締結しておりません。今後、十分な受注が確保できなくなった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、主な原材料として天然・人工ダイヤモンド、金属及び樹脂類を多数使用しております。今後、これらの調達において、供給元の操業停止又は供給能力の制約などにより、必要な原材料の調達ができなくなった場合、もしくは原材料価格の高騰により生産コストが上昇した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、電子・半導体、輸送機器、機械、石材・建設などの広範囲の業界に対し、ダイヤモンド工具を供給しておりますが、景気変動が各業界の取引先へ影響を与える場合、工具の需要にも影響を受ける事となります。今後、十分な受注が確保できなくなった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、日々、競合他社との技術・納期・価格競争などが行われるなか、高品質化・短納期化・技術サービスの充実化に努めております。今後、競合他社との競争に対して、迅速かつ適切に対応できず、十分な収益性が確保できなくなった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 業務提携・企業買収に関するリスク
当社グループは、他社との業務提携や企業買収が、将来の成長性、収益性等を確保するために必要不可欠な要素であると認識しております。その実施に際しては十分な検討を行いますが、当初想定した事業計画通りのシナジー効果を得る事ができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 感染症等のリスク
当社グループは、従業員の健康と安全を第一に衛生管理の徹底、時差出勤等の対応を行い、ウイルス等の感染予防・拡大防止に努めております。今後、予期しないウイルス感染等が発生するなどにより、当社グループの生産・営業活動が制限を受ける事態が発生する様な場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における事業環境は、新型コロナウイルス感染症による行動規制の緩和が定着し雇用・所得環境の改善等、経済活動に緩やかな回復が見られましたが、世界的なインフレ、地政学リスクや中国経済の減速等、景気の先行きは依然不透明な状況が続いています。
このような状況の中、当社グループは、2025年度を最終年度とする「中期経営計画2025」のもと、製品開発や顧客需要に応える生産体制の整備、営業部門の効率化を進めてまいりました。
当社グループの取引業界別の経営成績としましては、電子・半導体業界及び機械業界では、デジタル機器の在庫調整による電子部品需要の低迷と、設備投資抑制が影響し関連工具の売上高は前年同期を下回りました。一方、輸送機器業界では、航空機・自動車関連で生産回復が進んだことに加え、自動車部品生産の再編需要を取り込み、関連工具の売上高は前年同期に比べ増加しました。石材・建設業界では、大規模な工事需要は少なかったものの、高速道路の補修や解体工事等を中心に関連工具の売上高は、前年並みに推移しました。また、注力製品であるパワー半導体用の関連工具の需要は海外を中心に堅調に推移しました。
その結果、当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における営業利益は、1,526百万円と前期と比べ979百万円(39.1%)の減益となりました。
当連結会計年度における経常利益は、2,408百万円と前期と比べ867百万円(26.5%)の減益となりました。
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、2,109百万円と前期と比べ656百万円(23.7%)の減益となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、12,818百万円となり、前連結会計年度末と比べ3,570百万円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は、2,839百万円(前年同期は4,979百万円の収入)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益が3,106百万円、減価償却費が2,969百万円、投資有価証券売却損益が△850百万円、棚卸資産の増減額が△684百万円、法人税等の支払額が929百万円あったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出された資金は、3,505百万円(前年同期は1,260百万円の支出)となりました。この主な内容は、有形固定資産の取得による支出が4,675百万円、投資有価証券の売却による収入が1,067百万円あったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出された資金は、3,121百万円(前年同期は3,145百万円の支出)となりました。この主な内容は、自己株式の取得による支出が1,726百万円、配当金の支払額が1,581百万円あったことによります。
③ 生産実績及び受注状況
当社グループはダイヤモンド工具事業の単一セグメントでありますが、生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であってもその形状等は一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品もあり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示す事はしておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。なお、当社の経営者は、この連結財務諸表の作成にあたって、重要な判断と見積りや計画の策定に対し、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、これらは不確実性を伴うため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。
(棚卸資産)
当社グループは、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により、棚卸資産の帳簿価額を評価しており、主に一定の保有期間を超える棚卸資産について滞留もしくは陳腐化しているとみなして評価損を計上しております。今後、市場環境の悪化等により滞留もしくは陳腐化が生じた場合、追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
(貸倒引当金)
当社グループは、売掛金、未収入金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上や貸倒損失が発生する可能性があります。
(有価証券)
当社グループは、保有合理性検証の結果、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資すると判断した有価証券を保有しており、これらの有価証券には価格変動性が高い市場価格のある有価証券と、市場価格のない有価証券が含まれます。当社グループは、保有する有価証券の実質価額が著しく下落した場合には、回復可能性がある場合を除き減損処理を行っております。市場価格のある有価証券については、期末日における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、回復可能性がないものとして判断し、30%以上50%未満程度下落した場合には、回復可能性を判断して減損処理を行うこととしております。市場価格のない有価証券については、発行会社の1株当たり純資産額が取得価額に比べ50%程度以上下落した場合には、将来の展望などを総合的に勘案して、回復可能性があると判断したものを除き減損処理を行っております。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の帳簿価額に反映されていない損失又は帳簿価額の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、中長期の損益見込みを基として将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を評価したうえで計上しております。既に計上した繰延税金資産については、その回収可能性について毎期検討し内容の見直しを行っております。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産の減損判定にあたり、管理会計の区分をもとに概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でグルーピングを行っております。収益性が低下した資産グループについて、将来における回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額については、将来キャッシュ・フローや正味売却可能価額等の前提条件に基づき算出しているため、事業計画の変更や市場環境の悪化等により、その前提条件に変更が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。
(退職給付)
当社グループは、従業員に対する退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、退職率、長期期待運用収益率、及び直近の統計数値に基づいた死亡率等が含まれます。実際の計算結果が前提条件を基にした計算結果と異なる場合、または前提条件が変更された場合には、数理計算上の差異に影響し、当社グループの退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
(事業構造改善)
連結子会社である旭ダイヤモンドインダストリアルヨーロッパSASにおける収益構造の安定化を図るため事業構造改善を実施しており、製造拠点の統合により発生する費用等を見積り、事業構造改善引当金として計上しております。今後、市場環境の変化等に対応するため計画の変更が発生した場合は、追加の事業構造改善費用の計上が必要となる可能性があります。
② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における資産合計は、73,901百万円と前期と比べ275百万円(0.4%)減少となりました。資産の減少の主な要因は、未収入金等のその他流動資産が553百万円増加、原材料及び貯蔵品が397百万円増加、有形固定資産が1,593百万円増加した一方で、現金及び預金が3,594百万円減少したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債合計は、9,908百万円と前期と比べ1,386百万円(12.3%)減少となりました。負債の減少の主な要因は、短期借入金が365百万円増加、未払金等のその他流動負債が636百万円増加した一方で、退職給付に係る負債が2,406百万円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産の額は、63,993百万円と前期と比べ1,110百万円(1.8%)増加となりました。純資産の増加の主な要因は、剰余金の配当により1,586百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により2,109百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は84.2%となり、1株当たり純資産額は1,207円32銭となりました。
b. 経営成績の分析
(売上高)
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、1,526百万円と前期と比べ979百万円(39.1%)の減益となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、2,408百万円と前期と比べ867百万円(26.5%)の減益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、2,109百万円と前期と比べ656百万円(23.7%)の減益となりました。
c. 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
業界別の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次の通りであります。
電子・半導体業界
電子・半導体業界では、デジタル機器の在庫調整による電子部品需要の低迷により、関連工具の販売は減少しました。一方、自動車の電動化や省電力対応に向けたパワー半導体関連の需要が伸び、関連工具の販売を補いました。
輸送機器業界
自動車業種では、部品不足の解消で生産回復が進んだことに加え、世界的なEV化の進展に伴う自動車部品の生産再編需要を取り込んでいます。また、航空機業種では、移動制限の緩和による需要の回復や工具品質の再評価によるシェアアップも進み関連工具の販売は増加しました。
機械業界
工作機械業種では、半導体用工作機械に付属する工具に一定の販売成果があったものの、軸受、セラミックス業種では、電子・半導体業界が電子部品需要や設備投資が低迷したことで、関連工具の販売が大きく減少しました。また、工具業種では中国需要の低迷や一般機械部品の生産の停滞で関連工具の販売は減少しました。
石材・建設業界
国内の建設業種では、高速道路の補修工事をはじめ、国土強靭化等の施策もあり、公共工事、民間工事ともに堅調に推移しました。一方、石材業種では、墓石、建築材料等の需要低迷が継続し、関連工具の販売は減少しました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、12,818百万円と前期と比べ3,570百万円(21.8%)の減少となりました。
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
なお、日々の運転資金、設備投資資金については、ほぼ全額を自己資金で賄う事が可能であります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、当社の研究部、各国内工場の生産技術部、技術関連部門等により構成された技術開発センターが、営業部門と密接に連携を保ちながら、将来の事業の基盤となるべき基礎研究から、地球環境や資源を視野に入れた応用開発まで、幅広い研究開発活動を行っております。
当連結会計年度における当社グループでの研究開発費は
(1) 電子・半導体業界
半導体製造プロセスでは後工程(パッケージング)による機能向上が注目され、それに伴い半導体パッケージ切断工程への要求も多様化してきております。こうした要求の多様化に対応するため、切断工程に用いるダイシングブレードのラインナップの充実に常に取り組んでおります。新たに開発したレジンブレード(商品名「M!(エムアイ)ブレード」)は従来のレジンブレードの高い加工品質を維持したまま高寿命を実現しており、QFNやFCBGAなどの加工品位が重要視される半導体パッケージ切断に高い評価が得られ始めております。
(2) 輸送機器業界
持続可能な社会の実現を目指して、砥石くずの削減に向けた取り組みを行っています。油圧部品、自動車部品等の加工において一般砥石での加工では大量の砥石くずが発生しますが、これをCBNビトリホイールに変更する事で大幅に廃棄物の削減が可能となります。これに加えて加工時間も短縮でき、生産効率も向上する事から今後さらにCBNホイール化への動きが高まる見込みです。
(3) 機械業界
超硬/サーメットのインサートチップ外周研削用として切れ味に優れたメタルホイール(商品名「エアロメタル」)が高い評価を得ています。従来のレジンホイールと比較して切れ味と耐摩耗性に優れており、加工性能が大きく向上する事から需要の増加を見込んでいます。
(4) 石材・建設業界
鉄筋コンクリートの解体や改修に使用されるコンクリートブレードの新製品(CB-IRIS)を開発し、商品化しました。高速道路のリニューアル工事の他、様々な工事現場での採用を目指します。地質調査・資源探査用ビットについては、硬質岩盤への切れ味に優れた製品の開発に目処がたった為、市場投入を開始致します。