当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)企業理念
当社グループは、ICTの利活用を通じ、社会課題の解決に取り組むために、新しく理念体系を再定義しました。
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Purpose(志、大義) |
人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で豊かな未来を創る |
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Mission(使命) |
我々は、一人一人が卓越した専門性と高い倫理観を持つプロフェッショナルであり、社会とお客様の課題解決に貢献する |
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Vision(目標、Goals) |
ネットワークのリーディングカンパニーとしての高い誇りを持つ ネットワンならではの付加価値を創出し、継続した成長を実現する 絶え間ない自己研鑽で心と技術を鍛える精鋭集団であり続ける 幅広いステークホルダーへの責任を果たすため、適切な収益構造を維持する |
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Values(価値観) |
People:私たちは大切な人に誇れる仕事をします Governance:私は社会に評価される行動を取り続けます Social:私はお客様と一緒に、価値を創造し展開します Environment:私は未来を想い、未来の仕組みをつくります |
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WAY |
netone、一歩先へ。不祥事を忘れない、誠実に丁寧に、心と体を大切に、お互いに半歩踏み込む、失敗も成功も次への糧に、進化し続ける「匠」、ワクワクを広げる、期待値を超えていく。 |
(2)経営方針
当社グループは、中期経営計画の達成を目指し、再定義した新理念体系(Purpose、Mission、Vision、Values)に基づき「成長戦略の遂行」、それを支える「経営基盤の強化」、社会的責任として「サステナビリティ」に注力しております。
(3)経営環境
サステナビリティを強く意識した経営が求められるなか、デジタル技術を活用した生産性の改善や付加価値の創出からデジタル化の重要性は一層高まっております。デジタル化の広がりとテクノロジーの進化に対応するためには、安全かつ高品質なネットワークインフラが必要不可欠です。
当社グループは、「世界最高水準のネットワーク技術」と、市場環境・最先端技術・お客様の実課題から中立的な立場で最適解を導く「目利き力」、そして、複数の製品とサービスを組み合わせる「インテグレーション力」を併せ持つことにより、お客様に最適なシステムの設計・構築と導入後の利活用を考慮したサービスの提供を実現しています。
(4)目標とする経営指標
当社グループは、社会課題解決型のアプローチから価値提供領域を拡大し、収益性・効率性の更なる向上によって企業価値を向上してまいります。中期経営計画の最終年度となる2025年3月期の連結業績につきましては次のとおりです。
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2024年3月期(実績) |
[修正後]2025年3月期(目標) |
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売上高 |
2,051億円 |
2,200億円 |
|
営業利益率 |
9.5% |
9.5% |
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サービス比率 |
49.1% |
50.0% |
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ROE |
18.0% |
20.0% |
* 中期経営計画(2022-2024年度)の詳細につきましては、当社のウェブサイトに掲載しています。
https://www.netone.co.jp/ir/policy/plan/
(5)対処すべき課題及び事業戦略
不正事案の再発防止:2024年3月期の総括
2024年3月期では、二度と不正を起こさない企業文化醸成の基盤運営を引き続き推進しております。ガバナンス・内部統制システムの更なる強化、企業文化改革の推進を継続し、健全かつ継続的な事業成長を図り、企業価値の向上に向け取り組んでまいります。
1.2024年3月期に達成した事項
・企業理念及び行動指針の更なる浸透
企業理念及び行動指針を定着させる体制及び取組みを拡充しました。また、企業文化モニタリング調査の継続実施と企業文化改革を実行しました。
・過去不祥事からの学びと社員の意見収集の仕組みの強化
全社員の学びの場として「企業文化未来センター」を創設し、運営を開始しました。また、第三者を窓口とする目安箱について、建設的かつ具体的な社員の意見を集めることを目的とした運用を開始しました。
・新人事制度への移行と確実な運用
経営戦略の実現を見据え、プロフェッショナル人財の育成につなげる評価制度の導入と、公平・公正な運用の定着に向けた取り組みを開始しました。
・全社最適化にむけた業務改革
新事業基盤整備の推進とシステム統制の強化を図りました。
・リスク管理体制の強化
リスク主管部門による自律的なリスク管理活動を実現しました。役職員一人ひとりのリスク管理意識の更なる向上のための情報提供及び教育を実施しました。
・グループ会社ガバナンスの強化
グループ会社共通の内部通報窓口の運用を継続しました。
2.2025年3月期以降の更なる飛躍に向けた活動方針
・企業理念及び行動指針の更なる浸透
企業文化モニタリング調査を踏まえた改善取組みを継続的に実行します。
・ガバナンス・内部統制システムの更なる強化
当社3ラインモデルを進化させ、事業成長を加速させる組織運営を強化し、メリハリの利いた運営による実効性強化を図ります。
・新人事制度の確実な運用と人財の育成
お客様視点・接点を持ってお客様に役立つ高い専門性を持つ人財集団の形成を引き続き推進します。また、二度と不正を起こさないための人的基盤の更なる強化を図ります。
・全社最適化にむけた業務改革
新事業基盤整備を推進し、システム統制の強化を引き続き推進します。
・統合リスク管理へ向けた体制の強化
リスク主管部門が改善サイクルを回すことによるリスク管理活動の高度化を進め、リスク主管部門のリスク管理意識・スキルの更なる向上のための情報提供及び教育を実施します。
・グループ会社ガバナンスの強化
グループ全体で企業理念及び行動指針の更なる浸透を図ることによる共通認識の醸成と各社の実務に即した改善活動を推進します。また、グループ会社共通の内部通報窓口の運用を継続します。
長期ビジョン
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象期間とする中期経営計画を策定しております。中期経営計画の最終年度となる2025年3月期は、引き続き経営基本方針に掲げた「成長戦略の遂行」と、それを支える「経営基盤の強化」、社会的責任として「サステナビリティ」に取り組んでまいります。
■中期経営計画
<経営基本方針>
[成長戦略の遂行]
事業、サービス、財務の3つの戦略を融合させることで、デジタル化による社会課題の余地の大きい分野への進出による事業領域の拡大、収益性の高いサービスの拡充、最適な資本構成を追求してまいります。
1.事業戦略
市場環境として、より一層の事業回帰や拡大するICTインフラに対するセキュリティ需要等は、各産業、市場問わず一層の拡大が見込まれる中、3つの注力領域「スマートマニュファクチャリング」、「Society5.0を実現する社会基盤のデジタル化」、「デジタルガバメント」で売上高合計300億円の伸長(2022年3月期比)に向けて、お客様の課題解決への提案活動を加速します。
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項目 |
名称 |
お客様の課題 |
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注力領域 |
スマートマニュファクチャリング |
・EV関連の投資 ・セキュリティ対策投資 ・グループ再編に合わせたコンサルティングや運用 |
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|
Society5.0を実現する社会基盤のデジタル化 |
・MEC拠点の構築 ・グループ会社全体のICTサービスの統合化 ・医療DXのためのマルチアクセス、マルチクラウド ・サーキュラーエコノミービジネス ・スマートシティ、スマートビルディング |
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|
デジタルガバメント |
・自治体のDX化 ・ガバメントクラウド接続に向けたインフラ見直し ・教育等の準公共分野のデジタル化 |
2.サービス戦略
当社の強みであるネットワーク技術、目利き力、インテグレーション力を生かしたサービスの確立と実践に向け、競争力のある自社クラウドサービスの創出とDXコンサルティング領域の拡大を目指します。
また、効果的な戦略遂行のために、市場ごとに注力サービスを明確化してアプローチします。お客様がご要望される分野を見きわめ、投入リソースを最適化し、カスタマーフェーシングを改善することで、成長の最大化を目指します。
3.財務戦略
企業価値の更なる向上に向けて「戦略的な投資による収益力の強化」「最適な資本構成の追求」「積極的な株主還元」に継続して取り組んでまいります。
あわせて、策定した「キャピタルアロケーションポリシー」のもと、「戦略的な投資」、「財務基盤の強化」、「株主還元」への最適配分を実行し、資本効率を重視した経営を推進してまいります。キャピタルアロケーションの原資となる営業キャッシュ・フローは、事業活動による継続的創出に加え、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善を通じ拡大を図ります。また、資本コストを基準とした投資判断とモニタリングプロセスにより資本効率の高い投資を推進し、収益力の強化を図ってまいります。
[経営基盤の強化]
企業文化改革、徹底した見える化、人財戦略を軸に、盤石な経営体制の構築に向けて全社一丸となって取り組みます。
1.企業文化改革
継続した事業成長とガバナンス強化による企業価値の向上を目指し、過去の不祥事を二度と繰り返さない企業文化を根付かせるための企業文化改革活動を、経営陣・社員全員が一丸となって加速させてまいります。3年目となる企業理念体系の浸透については、全社員を対象とした「面」の施策から、組織別や階層別など「個」に対する施策にシフトさせ、継続して浸透を図ります。
これらの取り組みについては企業文化モニタリング調査及び「ガバナンス・企業文化諮問委員会」にてモニタリングを継続し、企業文化改革と再発防止策の履行・浸透のさらなる推進を図ります。
2.徹底した見える化
全社共通の情報に基づくコミュニケーションを活性化し、組織のパフォーマンスを最大限に引き出すとともに、意思決定に資する経営基盤を支えることにより、企業価値の向上、再発防止、企業文化改革の促進につなげてまいります。具体的には、経営層をはじめとした社員のデータ利活用促進に向けて、データ民主化による全社での利用環境の整備とデータ分析の高度化を進め、サービスシフトなど戦略の進捗状況のモニタリングを推進してまいります。主管部門と連携のうえで利益の最大化に貢献し、経営・事業戦略達成に資するアウトプットの創出を進めてまいります。
3.人財戦略
多様な人財の成長と活躍で経営を支えることを目指し、「プロフェッショナル人財の育成」「人財が活躍するための環境の提供」に継続して取り組んでまいります。
2030年ビジョン実現に向けて人財ポートフォリオを構築し、持続可能な成長と競争力向上を目指しています。社員が専門性を軸に成長し続け、生き生きと働ける環境を整備することで、さまざまな“個”の力を“チーム”の力として最大化し、風通しのよい企業風土の醸成と生産性向上による持続的な成長を目指します。具体的には、専門性人財の定義に基づき、あるべき姿と現在のギャップを明確化し、あるべき姿の実現に向けた戦略策定を行います。社員の成長を支援する基盤づくりとして、評価者トレーニングの実施により適切な成長に役立つフィードバックの徹底や、役割に応じた処遇と適切な人財の見極め、チームでの活動を評価する仕組みの運用などを行ってまいります。また、ダイバーシティ&インクルージョンに関する施策においては、女性管理職の輩出に向けた育成プログラム等の方策や障がい者雇用の促進に向けた施策、シニア人財の活躍促進策の検討を進めてまいります。
[サステナビリティ]
サステナビリティ方針のもと、持続可能な社会への貢献と当社グループの持続的成長の両立に向けて特定した4つのマテリアリティ(重要な経営課題)について、以下のKPIに取り組みます。
1.安心・安全な高度情報社会の実現
・課題・領域別ソリューション・サービスの提供
新中期経営計画の注力3領域「デジタルガバメント」、「Society5.0を実現する社会基盤のデジタル化」、「スマートマニュファクチャリング」を中心とした社会課題解決型のソリューション・サービスを提供することで、当社の事業成長と持続可能な社会の実現から、売上高として2025年3月期に300億円の伸長(2022年3月期比)を目指します。
・サービスビジネスの拡大と推進
ICT市場が大きな転換期を迎えている中で、当社が中長期的に、持続的に成長していくため、サービスビジネスを中核としたビジネスモデルへのシフトを加速することで、2025年3月期のサービス比率50%(従来目標の55%から修正)を目標にサービスビジネスを拡大します。
2.プロフェッショナル人財の活躍
・次世代を担うIT人財の育成
事業成長に向けてソリューション・サービスにおける競争力を高めるために、セキュリティ人財・クラウド人財の育成を強化するとともに、コーポレート部門の機能強化を目的として、DXスキルの獲得に注力していきます。セキュリティ人財として、CISSP取得者を2031年3月期に80名、安全確保支援士を2031年3月期に100名、クラウド人財を2031年3月期に50%増(2022年3月期比)を目指します。また、デジタル化人財として、コーポレート部門では2031年3月期までに150名増加させ、業務改善提案を2023年3月期から2031年3月期の累計件数で100件の創出を目指します。また、産学連携などを通じた次世代IT人財育成プログラムを拡充します。
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進
多様な人財が相互に認め合い、個性を生かして活躍するための環境・制度を整備することで、生産性の向上やイノベーション創出の促進を図り、女性役職者比率を2031年3月期に15%、新卒採用女性比率を2031年3月期に50%、男性の育休及び出産時の特別休暇取得率を2031年3月期に90%を目指します。
3.脱炭素社会への貢献
・ビジネスを通じた温室効果ガス排出量削減
お客様や社会における温室効果ガスの排出削減に貢献する「グリーンソリューション」の開発・提供によって、脱炭素社会の実現への貢献と当社の成長を両立します。
・自社の事業プロセスにおける排出量削減
自社の事業プロセス及びサプライチェーンにおけるCO2排出量を削減し、気候変動によるリスクの低減に努めます。低消費電力製品及びサービス販売を拡大することで、CO2排出量の大部分を占める、「製品及びサービスの購入と販売」を主な削減対象とし、購入・販売価格あたりのCO2排出量削減に取り組みます。
4.持続可能な成長を実現するガバナンス体制の維持強化
・企業文化の醸成と内部統制強化
新生netoneを具現化する企業文化を醸成するとともに、不祥事の再発防止をはじめとする内部統制を強化します。企業文化の醸成に向けた取り組みとして社員意識調査を毎年実施(※将来的には調査結果を開示する予定)し、再発防止策の運用状況を半期に1回当社ウェブサイト上に掲載します。
・健康経営®の実現
事業の成長・継続において不可欠となる社員の心身の健康を維持するため、継続して健康経営に取り組みます。
<業績目標>
[中期経営計画]
当社グループは、社会課題解決型のアプローチから価値提供領域を拡大し、収益性・効率性の更なる向上によって企業価値を向上してまいります。
経営基本方針で掲げた経営基盤強化につきましては、ガバナンス強化・企業文化改革において、一定程度の進捗・定着が図られました。当社グループの成長の土台として、継続して改善の取組みを進めてまいります。一方で、成長戦略につきましては、注力領域は着実に伸長したものの、受注高とサービスの収益性に課題が生じました。これに対して、以下の改善策に着手しております。
・受注高の伸長
拡大する需要を獲得するために、市場・サービスを明確化してアプローチする効果的な戦略遂行、再発防止策の一定の定着を踏まえた事業部門のリソース及び効率の拡大、そして、新業務システム(2025年4月に稼働開始予定)による事業部門の業務効率化によって、受注キャパシティ及びカスタマーフェーシングを改善します。
・サービスの収益性の改善
各種コスト上昇を反映することによる提供価格の適正化、エンジニアの生産性向上に寄与する中核ソリューション及び運用サービス等の標準化・自動化、そして、これら収益性のモニタリングによって、適切な収益性の確保及び原価率の低減を図ります。
これらを踏まえ、中期経営計画の最終年度となる2025年3月期の連結業績の数値目標を以下のとおり修正することといたしました。
|
|
2025年3月期 |
|
|
修正前 |
修正後 |
|
|
売上高 |
2,260億円 |
2,200億円 |
|
営業利益率 |
12.0% |
9.5% |
|
サービス比率 |
55.0% |
50.0% |
|
ROE |
20.0% |
20.0% |
[次期見通し]
2025年3月期の連結業績につきましては、以下を見込んでおります。
|
|
2024年3月期 (実績) |
2025年3月期 (見通し) |
前年度比 |
|
|
増減額 |
増減率 |
|||
|
売上高 |
2,051億円 |
2,200億円 |
148億円 |
7.3% |
|
営業利益 |
195億円 |
210億円 |
14億円 |
7.5% |
|
経常利益 |
191億円 |
208億円 |
16億円 |
8.6% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
137億円 |
144億円 |
6億円 |
5.0% |
(注)上記の業績見通しは、当社が現時点で合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績と大きく異なることがあります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社グループでは、2021年12月にサステナビリティ方針、2022年4月に中期経営計画及びマテリアリティ(重要な経営課題)を取締役会で決議し公表しました。マテリアリティの主管部署の取り組みに対するモニタリング機関として、2022年4月にサステナビリティ委員会を設置しました。
同委員会は常務執行役員を委員長として複数の関連部署から選出されたメンバーで構成することでグループ横断での体制を構築しています。サステナビリティ委員会は月に一度開催し、活動内容を定期的に経営委員会に報告しています。経営委員会は会社経営上の基本的又は重要な事項につき、適切かつ迅速に審議・決定するとともに、取締役会が経営全般の管理、監督機能に重点をおくことで適切なガバナンスを図っています。
サステナビリティ方針
ネットワングループは、ネットワークのリーディングカンパニーとして、お客様や社会の変革を支える高付加価値なサービスを提供することで成長してきました。
私たちは「人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で豊かな未来を創る」を存在意義として、お客様の成功、社員の幸福、パートナーとの共創関係の構築、株主価値の向上、自然環境の保全に事業を通じて貢献することが、企業価値の向上につながると考えています。「優れたネットワーク技術」「マルチベンダ対応」「お客様との共創」から生まれるICTの目利き力と知見を磨き、社会価値と経済価値を創出するサービスを提供することで持続可能な社会への貢献と当社の持続的成長を両立していきます。
ガバナンス体制図
※マテリアリティに関しては、前述の「
②戦略
サステナビリティ方針のもと、持続可能な社会への貢献と当社グループの持続的成長の両立に向けて特定したマテリアリティを策定しました。各マテリアリティの詳細につきましては、前述の「
<気候変動への取組み>
気候変動の影響が世界的に拡大し、地球環境に甚大な被害が及ぼされる場合、経済や社会全体に混乱を引き起こす可能性があります。これは、当社グループの事業活動にとってもリスクであると認識しています。一方で、最先端ICT技術により様々な産業が抱える環境課題を解決することで、自社のビジネス機会の創出につながると考えています。当社グループは、持続可能な社会への貢献と、当社の持続的成長の両立を目指してまいります。
具体的には、お客様・社会における温室効果ガス排出量削減に貢献するグリーンソリューションを開発・拡大により、ビジネスを通じた温室効果ガス排出量削減に取り組みます。またサービス販売の拡大による排出量の削減することで自社の事業プロセスにおける排出量削減に取り組んでまいります。
今後気候変動により顕在化し得る物理的なリスクなど、当社グループに影響する事象について幅広く検討し、特に重要であると考えられるリスクと機会を特定しています。それぞれのリスクと機会に対する当社グループに与える財務影響について気候変動への対応や規制が進むことで、主に移行リスクが顕在化する2℃未満シナリオと、主に物理リスクの甚大化がより深刻となる4℃シナリオに分けて検討しております。
検討に必要な情報の取得にあたってはIEA(International Energy Agency)2021やWRI(Aqueduct Water Risk Atlas)等を参照しました。
各シナリオ下における事業環境の認識と、それらが及ぼす事業影響の概要は以下のとおりです。
○4℃シナリオ
4℃シナリオ下では社会的に気候変動への対応が積極的にとられずに、大規模災害などの物理リスクの甚大化がより深刻となる以下のような事業環境を認識しております。
・社会の全体像
先進国を中心に気候変動に関する規制や政策が進められるものの、実効性が弱く結果として十分な対策がとられず、環境への規制は事業に対して大きな効果を及ぼすには至らない。その一方で気温の上昇に歯止めがきかず、災害が頻発し被害の甚大化が想定される。
・当社グループを取り巻く環境
サプライチェーン全体で災害によるリスクが顕在化する可能性があり、自社の活動拠点だけでなくお客様を含むネットワークの通信断による復旧対応に迫られる可能性の高まりから、BCPを考慮した次世代ICTソリューションへの需要が拡大する。
○2℃未満シナリオ
2℃未満シナリオ下では気候変動への対応や規制が進み、社会全体が低炭素社会へ向かうことで主に移行リスクが顕在化する以下のような事業環境を認識しております。
・社会の全体像
社会全体で気候変動への対応が積極的に行われ、温室効果ガスの排出量規制や炭素税の導入といった政策が進み、各企業はその対応コストやサプライヤーからの価格転嫁に対するコスト負担を強いられる。
また再生可能エネルギーへの転換や脱炭素技術の革新が進められることで顧客意識の変化が生じ、低炭素社会へ貢献できる商品やサービスに対する需要が増加する。
・当社グループを取り巻く環境
省エネルギー、カーボンニュートラルへの関心の高まりとともに、ICTシステム利活用によるグリーン化の促進など、企業活動及び環境課題の解決に貢献するICTインフラの需要はより一層拡大する。
またエネルギー利用の効率化だけでなく、サーキュラーエコノミーの広がりからICTインフラにおいても再生品の活用が進む。
・気候変動が当社グループへもたらし得るリスクと機会、影響
|
項目 |
タイプ |
影響要因 |
当社グループへの主な影響 |
想定 時期※ |
影響度※ |
検討策 |
||
|
2℃未満 シナリオ |
4℃ シナリオ |
|||||||
|
リスク |
移行 リスク |
規制 リスク |
炭素税と排出量取引制度 |
・炭素税と排出量取引制度の導入による対応コストの増加 ・排出削減目標を達成できない場合の追加コスト負担の増加 |
中期 |
小 |
- |
・テクニカルセンターにおける電力削減 ・エネルギー消費量の見える化 |
|
商品及びサービスに対する環境規制 |
将来、世界的に環境規制がさらに強化されることにより、電力使用量が大きい、又は環境負荷の高いネットワーク機器等を販売することで受ける罰則 |
長期 |
中 |
- |
環境規制に対する継続的な動向調査と対策の検討 |
|||
|
技術 リスク |
低炭素技術への移行 |
環境負荷低減志向を背景に、当社が低炭素技術への移行が遅延した場合の当社の競争優位性の低下 |
短~中期 |
大 |
大 |
・温室効果ガス排出量削減に貢献するソリューションとサービスの開発・拡大 ・継続した次世代ICT技術の調査 |
||
|
市場 リスク |
ベンダーの生産コスト上昇に伴う仕入価格への転嫁 |
気候変動対応や環境対応がベンダーの生産コストの上昇をもたらした場合、仕入価格の値上げによる調達コストが増加 |
中期 |
大 |
- |
機能サービス提供型へのビジネスモデルにシフト |
||
|
物理 リスク |
異常気象の重大性と頻度の上昇 |
物流施設への浸食や洪水被害によるサプライチェーンの分断及び商品配送物流への影響 |
長期 |
中 |
大 |
・PDCAサイクルによる事業継続計画(BCP)の見直し ・重要拠点における運送保険、火災保険の定期的な見直し |
||
|
機会 |
リソース 効率 |
より効率的な生産及び物流プロセスへの貢献 |
スマートマニュファクチャリングに対応する統合ICTインフラの需要増加による収益機会の増加 |
短~中期 |
中 |
中 |
業務効率化・データ活用をはじめとしたグリーンソリューションの開発・提供 |
|
|
再生品の利用 |
・当社グループ企業のネットワンネクストが手掛ける、再生品を活用した第三者保守や機能サービスの提供の拡大 ・再生品を活用した延命提案によるインフラ更改プロジェクトへ参加する機会の増加 |
短~中期 |
大 |
大 |
ネットワンネクストを中心としたサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの構築 |
|||
|
製品・ サービス |
低排出量商品・サービスの拡張 |
・省電力につながる商品及びサービスの提案による売上の増加 ・電力消費量の最適化や機器使用の削減等につながる仮想化技術、クラウド技術の利活用により、GHG排出を削減する機会を提供するビジネスチャンスの拡大 |
短~中期 |
中 |
中 |
電力消費削減、ICTシステムの省電力化/効率化を実現するグリーンソリューションの開発・拡大 |
||
|
気候適応、強靭性に対するソリューション開発 |
気候変動がもたらす災害や気温の変化等による外出抑制でリモートワークが促進されることで、ICTインフラ需要の増加及びサービス機会の拡大 |
長期 |
中 |
中 |
顧客のDX化、働き方の変化に合わせたソリューションの開発・提供 |
|||
|
事業活動の多様性 |
ネットワンネクストを中心としたサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルによる、脱炭素社会の実現に貢献する機会の増加 |
中~長期 |
中 |
中 |
ネットワンネクストを中心としたサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの構築 |
|||
※想定時期の定義は以下のとおりです。
|
想定時期 |
想定時期の定義 |
|
短期 |
0~3年 |
|
中期 |
3~10年 |
|
長期 |
10~30年 |
※影響度の定義は以下のとおりです。
|
影響度 |
影響度の定義 (販管費に対する影響) |
発生可能性 |
|
小 |
10億円未満 |
一般的に発生する可能性が低いと想定される事象 |
|
中 |
10億円以上、50億円未満 |
一般的に発生する可能性が中程度高いと想定される事象 |
|
大 |
50億円以上 |
一般的に発生する可能性が高いと想定される事象 |
③リスク管理
気候変動リスクの管理体制、リスクマネジメントプロセスについては、後述の「
④指標及び目標
気候変動リスクを低減するためには、自社のみならず、サプライチェーン全体での省エネルギー化に取り組むことが重要だと認識しているため、温室効果ガス排出量の集計範囲を拡大し、Scope3までの管理を実施しております。今後は、温室効果ガス排出量の算定結果を踏まえ、お客様・お取引先との協働を通して、温室効果ガス排出量の削減に積極的に取り組んでいきます。当社グループの温室効果ガス排出量の実績を下表に示します。
|
Scope |
カテゴリ |
項目 |
2022年度 排出量 (t-CO2) |
2023年度 排出量 (t-CO2) |
|
1 |
- |
直接排出 |
- |
※1 38 |
|
2 |
- |
エネルギー起源の間接排出(マーケット基準) |
|
※2 |
|
3 |
1 |
購入した製品・サービス |
369,930 |
331,521 |
|
2 |
資本財 |
8,195 |
24,262 |
|
|
3 |
Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
1,172 |
1,212 |
|
|
4 |
輸送、配送(上流) |
163 |
163 |
|
|
5 |
事業から出る廃棄物 |
25 |
53 |
|
|
6 |
出張 |
921 |
607 |
|
|
7 |
雇用者の通勤 |
224 |
272 |
|
|
8 |
リース資産(上流) |
- |
- |
|
|
9 |
輸送、配送(下流) |
8 |
8 |
|
|
10 |
販売した製品の加工 |
- |
- |
|
|
11 |
販売した製品の使用 |
77,696 |
68,729 |
|
|
12 |
販売した製品の廃棄 |
22 |
5 |
|
|
13 |
リース資産(下流) |
- |
- |
|
|
14 |
フランチャイズ |
- |
- |
|
|
15 |
投資 |
- |
- |
|
|
合計 |
|
|
||
※1 イノベーションセンターの社員食堂等でのガス利用を2023年度から算定
※2 一部拠点の使用エネルギー量の情報が算定前となり、暫定値となります。
当社はScope3-1(購入した製品・サービス)の排出量が高いことから、排出係数が比較的低いサービス比率を高めることで、当該カテゴリの排出量の増加率を抑えて、売上高当たりの排出量を削減させる目標を設定しました。
KPI:2021年度を基準とし、売上高当たりの排出量を2024年度までに9.8%削減
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基準年 2021年度 |
当年度 2023年度 |
目標年度 2024年度見込 |
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Scope2,3合計(t-CO2) |
574,816 |
431,848 |
621,654 |
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売上高(百万円) |
188,520 |
205,127 |
※1 226,000 |
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売上高当たりの排出量 (Scope2,3合計/売上高) |
3.05 |
2.11 |
2.75 |
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売上高当たりの排出量削減率 |
- |
※2 31.0% |
9.8% |
※1 目標設定時(2022年度)の売上高のままとしています。
※2 基準年度の2021年度は半導体不足の影響を避けるため、通常より多く製品を発注し、在庫を確保しました。これにより2021年度の発注額が突出し、発注額が算定元となる排出量<Scope3-1(購入した製品・サービス)>も高い結果となりました。基準年度と当年度の発注額の差が今回の売上高当たりの排出量削減率の結果に繋がりました。なお、6月27日時点の暫定値となります。
なお、各マテリアリティのKPIにつきましては、後述の「
(2)人的資本
ネットワングループでは、人こそ会社にとっての財産・資産と捉え、あえて「人材」ではなく「人財」という表記で統一しています。「人」は価値と知の源泉であり、その価値と知こそが利益を生み出します。そのため、様々な価値と知を数多く提供・創出できる社員を育てるとともに、社員の働きがいや成長意欲、そしてネットワングループへのエンゲージメントに結びつくようにしていきたいと考えています。
①推進体制
人財の育成と多様な人財の活躍を推進するため、経営陣の強力なコミットメントのもと、さまざまな全社横断組
織と仕組みを運営・運用しています。
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トップコミットメント |
経営陣の強力なコミットメントのもと、成長戦略の遂行と経営基盤の強化に向け、人事施策を推進しています。 |
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CHRO(最高人事責任者) |
当社グループの人財の価値を高めるために、人的資本経営を根付かせて、経営陣の先頭に立ってリードする役割を担っています。 |
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人事部 |
当社グループ全体の成長を支える経営基盤を中長期にわたって確立・維持するための人財マネジメント全般を担っています。 |
②戦略
パーパスの実現に向けた経営戦略を具現化していくためには、卓越した専門性と高い倫理観を持つプロフェッショナルとしての社員が必要です。また、年齢や性別、障がいの有無といった多様性にとどまらず、知や経験などの内的な多様性も包摂しながら、環境を整備し、動機づけを行っていく必要があります。この考えに基づき、中期経営計画における人財戦略を『多様な人財の成長と活躍で経営を支える』とし、「プロフェッショナル人財の育成」と「人財が活躍するための環境の提供」を人財戦略の柱に置いています。そして、人財戦略を人財育成の観点で実現するための方針表明として『社員一人ひとりがプロフェッショナル人財として活躍するための自律的な成長を支援する』を人財育成方針として掲げています。
[人財戦略方針]
1.プロフェッショナル人財の育成
担当する業界や技術領域、コーポレート機能においてそれぞれが目利き力を発揮し、専門性を発揮して活躍できるよう、ベースライン教育、スキルアップ教育、選抜型教育の3軸から職位別、階層別、職種別等様々な教育を提供しています。また、注力領域であるクラウド、セキュリティを始めとする各種資格取得においては、人事部と各部門が連携して支援を行うことで、個人の専門性向上を促進しています。
・コンサルティング人財の拡充
これまで当社の技術部門では、顧客が分析した課題に対し、技術的な解決方法の提供をすることが中心となっていましたが、今後は技術的な課題の背後にある「ビジネス上の問題の解決」をすることが、顧客と長期的な関係を構築し、ビジネス機会の維持・拡大のために重要であると考えています。そのため、2022年度より、顧客の戦略を理解し、ともに今最も重要な課題を解決していく、といったコンサルティングアプローチができる「課題解決型人財」の育成に取り組んでいます。
2023年度は、技術部全社員約600名を対象にITヒューマンスキル向上を目的としたeラーニング教育を実施し、選抜者に対して企画提案の実践形式研修と顧客ビジネス視点で解決策と価値を考えるワークショップを実施しました。
2024年度は、注力領域へのプラン策定と全社教育体系への組み込みの実行を予定しています。
[課題解決型人財におけるAsis-Tobeイメージ]
2.人財が活躍するための環境の提供
a.新人事制度の策定
専門領域や価値観が異なる人財が互いに尊重し、顧客のニーズに合わせた最適なチームで価値を創出できる環境・仕組みを構築するため、新人事制度を策定しました。
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制度項目 |
旧制度 |
新制度(2023年4月~) |
目的 |
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評価 |
評価軸 |
総合評価 |
「成果」と「行動」の2軸 |
役割・等級に求められる行動発揮をより重視すること |
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評価期間 |
半年 |
1年 |
長期的な視点で社員と企業の成長を実現すること |
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等級 |
(職種) ・営業職 ・技術職 ・企画事務職 |
(職種) ・ICTビジネス職 ・コーポレート職 (その他) ・役職定年の廃止 |
各職種における従業員の専門性向上による、お客様への付加価値の提供と安定した経営基盤の確立 |
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報酬 |
- |
・月額給与額:2023年7月に8%の引き上げを行い、2024年4月に更に4.4%の引き上げを実施 ・一定以上の年齢による一律の基本給逓減の仕組みの廃止 ・2024年4月新入社員の初任給引き上げ |
ポジション区分や等級別の役割の大きさに応じた処遇の実現 |
|
b.健康経営への取組み
ネットワングループでは、持続可能な成長を実現するために社員が心身ともに健康で働き続ける環境を提供し、社員の健康管理を経営的視点から戦略的に実現するための健康宣言を定めています。また、「健康経営への取り組みで目指す姿」を掲げ、それに対する具体的なアクションを設定し、2024年度中の優良法人の認定取得をKPIとして取り組みを推進してまいりました。結果として、1年前倒しの2024年3月に、経済産業省が主催する「健康経営優良法人認定制度」において「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」の認定を取得しています。更にホワイト500の認定を目指し、以下優先施策を中心にセミナーやイベントの開催等様々な取り組みを実施しています。
■2023年度優先施策
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優先施策 |
活動内容 |
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管理職と社員への教育・浸透 |
・各本部へ健康経営施策について説明を実施 ・健康経営まとめサイトにて情報提供開始 |
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健康診断受診の徹底と結果の活用 |
・再受診勧奨・特定保健指導実施強化 |
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喫煙対策 |
・卒煙補助施策開始 |
[ネットワングループ健康宣言]
ネットワングループは、「人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で豊かな未来を創る」というPurposeの達成に向けて、大切な財産である「社員」と「社員の家族」が、自律して健康の維持・増進することでワーク・ライフ・バランスをはかり、公私ともに自己実現していけるように支援することを宣言します。
①推進体制
健康経営責任者である代表取締役社長のもと、健康宣言に基づき健康経営推進体制を構築しています。健康経営施策を推進する部署を人事部とし、健康経営の適切な運営と健康増進を図るために、産業医、保健師、看護師、臨床心理士、キャリアカウンセラーといった専門スタッフと関係各所が一体となり、健康増進、リテラシー向上、各種相談・メンタルヘルス対応などのさまざまな施策を展開しています。このような推進体制のもと、PDCAサイクルを回すことにより、健康経営の継続的改善を図っています。
②戦略
Purposeの達成と経営課題の解決に向けて、「健康投資」と「健康関連の最終的な目標」との繋がりを可視化することにより、各施策の効果を検証し、PDCAサイクルを回すことを目的として健康経営戦略マップを策定しています。
[健康経営 戦略マップ]
c.ダイバーシティ&インクルージョン
ネットワングループは、多様性の融合によるシナジー効果とイノベーションの創出を目的として、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。性別、年齢、国籍、障がいの有無、さらには職務経験や価値観など、あらゆる違いを超えて社員が活き活きと働ける職場環境を整備することで、様々な"個"の力を引き出し、生産性向上と継続的成長を目指しています。
[主な制度]
・フレックスタイム制度
・ワークセレクト制度(エリアセレクト/タイムセレクト/ジョブセレクト)
・マルチジョブ制度(複業制度)
・勤務地変更制度
・両立支援(育児休業、育児・介護休業中の短時間勤務、子の看護休暇、ストック休暇(子の看護用途)、出産特別休暇、介護休業、介護休暇)
・ウェルネス休暇
[主な支援施策]
・女性の活躍支援・育児の両立支援
2030年までに管理職に占める女性割合を15%とすることを目標に、女性の活躍推進に向けたマネジメント層の意識改革研修や女性社員の自律的なキャリア意識を高めることを目的としたキャリアデザイン研修等の活動を定期的に実施しています。
また、男性社員がもっと積極的に長期の出産慶弔休暇や育児休業を取得できるよう、制度理解のための情報発信や管理職向けセミナーを通じた意識醸成、育児休業取得時の業務リソース課題への施策検討など様々な活動を進めています。
・シニア人財の活躍支援
一定の条件を満たす場合、65歳以降に継続雇用される継続雇用制度や、年代別のキャリアデザイン研修等、シニア世代へのキャリア形成支援として様々な活動を行っています。人生100年時代と言われる中で、知識やノウハウを後進へ伝承することを期待し、組織のさらなる成長・活性化を実現するために、制度を整備しています。
・仕事と介護の両立支援
介護離職はいまや大きな社会問題となっていますが、当社においても高齢の両親を持つ社員が多く、介護を理由とした離職増加が懸念事項の一つとなっています。
このような状況への対策として、介護に関するセミナー(介護基礎セミナーや介護保険制度についてのセミナー等)の定期的な実施、相談窓口を設置しています。また、介護を理由とした短時間勤務制度、介護休業も通算して365日取得可能とするなど、法定を上回る社内制度を整備しています。
介護に直面しても、多様な働き方を選択できる人事制度を活用し、仕事と介護を両立できる職場環境を整えてまいります。
③指標及び目標
当社グループが取り組むマテリアリティ(重要課題)「プロフェッショナル人財の活躍」における「次世代を担う人財の育成」、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」の指標のほか、健康経営にかかわる9つのKPI指標を独自に設定し、目標に対する進捗状況を管理しています。
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戦略・指標 |
実績 |
目標 |
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2022年度 |
2023年度 |
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次世代を担う人財の育成 ※2024年3月31日時点 |
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セキュリティ人財(人数) |
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・ |
23名 |
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・ |
51名 |
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クラウド人財 |
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・フロント部門 |
448名 |
516名 |
2030年度目標50%増 |
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DX人財(データ分析関連資格取得者数) |
|||
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・コーポレート部門 |
23名 |
42名 |
2030年度までに150名増 |
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・業務改善提案数 |
7件 |
28件 |
2030年度までに累計100件 |
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次世代ICT人財の育成・産学連携などを通じた プログラム |
- |
講義提供数:52 |
産学連携などを通じた次世代IT人財育成プログラムを拡充 |
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ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
|||
|
・ |
7.8% |
|
|
|
・ |
28.6% |
|
|
|
・ ※2024年3月31日時点 |
68.0% |
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[健康経営にかかわる9つのKPI(Wellness9Panel)]
※前年度より向上することを目標としています。
(青矢印:前年より改善 赤矢印:前年より悪化 黄矢印:前年と同様)
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健康診断関連 2023年度 |
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適正体重維持者 ※BMIが18.5~25未満 |
糖尿病リスク者 ※空腹時血糖100以上又は HbA1c5.6%以上 |
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(前年: 99.9%) |
(前年: 63.5%) |
(前年: 40.2%) |
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生活習慣関連 2023年度 |
朝食習慣 ※週3日以上朝食をとれている人 |
運動習慣 ※1日30分以上運動している人 |
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(前年: 60.7%) |
(前年: 49.6%) |
(前年: 26.6%) |
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ストレス関連 2023年度 |
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(前年: 97.9%) |
(前年: 65%) |
(前年: 15.8%) |
※2024年3月31日時点
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の回避に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めます。
これらの項目のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)リスク管理に関する基本的な考え方
当社(グループ各社を含む)は、リスクを、当社に負の影響を与える事象(負の影響を与える可能性のある事象を含む。)と定義し、当社内外の様々なリスクを分析・評価し、各リスクへの対応計画の策定と実行を通して、当社の損失の最小化を図るリスク管理活動を行います。
当社のリスク管理活動の基本方針は、以下のとおりです。
1.リスクが顕在化した場合に経営に重大な影響を与える可能性があることを十分認識して、リスク管理態勢を整備する。
2.中期経営計画(経営戦略・ビジネス戦略)との整合性を踏まえ、リスク特性に応じて、安全対策へ投入する経営資源を決定する。
3.リスク管理状況について、定期的なレビューを行い、管理態勢の改善を図るとともに、レビューの結果を踏まえて、全社的にリスク管理の基本方針の見直しを行い、実効性のある持続的な管理体制を構築する。
4.新たな脅威の出現や他社の被害事例等を考慮して、適切なリスク管理プロセスを確立し、経営目標に従って経営資源を適切に配分し、具体的で実現可能性が高い対応方針を決定する。
5.株主の利益が毀損されることがないように、当社を取り巻く環境に適合した内部統制の持続的管理を行う。
(2)リスク管理体制
①リスク管理体制
当社のリスク管理活動においては、最高リスク管理責任者(CRO)を選任し、CROがリスクの識別、リスク対応、リスク管理活動の有効性評価、継続的改善、その他のリスク管理プロセスを統括しています。
また、経営委員会の諮問機関としてリスク管理委員会を置き、同委員会は当社のリスク管理活動の評価と統制に関する重要な事項を審議し、決裁します。なお、リスク管理部を同委員会の活動を支援及び推進する事務局としています。
②リスク情報の集約
上記の図のとおり、リスク情報(リスクの内容、その分析・対応方針及びその実行状況等を指します。以下同じ。)については、リスクが発生する部門(リスク発生部門)が部門限りで対応方針を検討するのではなく、全社レベルでリスク情報の把握及び対応方針の検討を行う必要があることから、全てのリスク情報がリスク管理責任を有するCRO及びリスク管理委員会に集約する体制を構築しています。
また、不正や事故の発生又はこれらにつながる可能性が高いと考えられる状況など、経営陣に迅速に報告すべきリスクの定義と、顕在化したリスクの報告先(各ホットライン・窓口等)、当該報告を受けた報告先の対応方針等を決定しています。
さらに、リスク管理委員会は、リスク発生部門から各ホットライン・窓口等を経由して報告されるリスクの対応方針を整備しています。具体的には、「緊急性の高いリスク(当社の企業活動又はリソース(人的資源、物的資源、資金、情報等)に重大な損害を与える可能性のある事態)」については、「リスク主管部門」がリスク発生部門から情報を受領した後、直ちにリスク管理部、CRO及びリスク管理委員会へ報告することになっています。また、「通常のリスク(「緊急性の高いリスク」以外のリスク)」についても、定期的に集約することとしており、リスク主管部門にて緊急性が高いと判断した場合には、同様にリスク管理部、CRO及びリスク管理委員会へ報告する体制になっています。
③リスクマネジメントプロセス
当社は以下の図のとおりPDCAサイクルにて毎期リスクマネジメントプロセスの見直しを実施しています。特にリスク管理委員会においては、当社の各事業、管理部門、マネジメントの各レベルのリスクについて、当社経営上重要なリスクの特定、評価、モニタリングを年次にて行っています。
(3)リスクの分類と評価
①リスクの分類
当社の「内部統制システムに関する基本方針」において、当社における主なリスクを以下のとおり分類しています。
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ビジネスリスク |
・大規模な自然災害、悪性の感染症の蔓延等により事業継続が困難となるリスク ・新たな事業・投資におけるリスク ・景気変動、為替変動、金利変動等の経済環境の変化、市場や顧客ニーズの変化、技術開発競争や販売競争に伴う製品・サービスの市場ポジションの変化などに関連性の高いリスク |
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オペレーショナルリスク |
・取締役及び従業員の不正行為や機密情報の漏えいにより会社の信用を失墜し事業が停滞するリスクなど、いわゆるオペレーショナルリスク |
②リスクの評価
当社グループでは、事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを洗い出し、それらについて評価を行い、対処すべきリスクの重要性を決定しています。
以下の図のとおり、リスク評価においては、「a.影響度」と「b.頻度」を軸にそれぞれ5段階で評価し、頻度よりも影響度を重要と捉えた評価としております。尚、当社グループでは、固有リスクから現在の内部統制を差し引いた準残存リスク(リスクの低減や回避措置を実施しており、一部のリスク対策が有効に機能している状態)を算出し、それに対して将来の内部統制計画(リスク管理計画)を差し引いたものを「残存リスク」として評価を実施しております。
リスクの大きさの考え方
a.影響度
b.発生頻度
(4)主要なリスクの概要と評価及び対応策の状況
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。またこれらの項目のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断しています。
①ビジネスリスク
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No.1 |
災害等により事業継続が困難となるリスク |
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リスクの内容 |
当社では、災害等によるシステム停止を受け、業務が停滞する可能性があります。当社の本社機能、品質管理センター、テクニカルセンターは、東京都内にあり、首都直下型地震等による災害が発生した場合、本社機能、技術検証機能、物流機能等が著しく低下し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、お客様及び仕入先で被害が発生した場合、経営環境や市場に変化を及ぼし、当社の業績に影響を与える可能性があります。 |
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対応策 |
当社では、ICT基盤提供企業としての社会的責任を強く認識し、グループ全体で大規模地震や感染症など様々な脅威に対応できる体制を整え、首都圏被災時においても西日本で事業継続できるなどの対策を強化しています。具体的には事業継続計画(BCP)を整備し、災害発生時には全グループの役職員の安全を確保しつつお客さまへのサービス提供を継続できる体制を構築しています。災害による混乱防止、災害後の被害軽減を図るためにBCP基本計画書や各種手順書を作成し、緊急事態等、経営危機が発生した場合における役職員の役割分担、初動対応や情報収集・伝達、対応策の迅速な決定と実施等、基本方針を明確化しています。 さらに、当社を取り巻く経営環境の変化に応じた事業継続計画(BCP)が必要となってきており、BCP計画や各種手順書はPDCAサイクルを用いて年次ごとに見直しを実施し、経営環境の変化を踏まえた事業継続マネージメント(BCM)を可能とする体制の整備に努めています。 |
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No.2 |
新たな事業・投資におけるリスク |
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リスクの内容 |
当社が所属するICT(情報通信技術)市場は変化が激しい市場です。その変化に沿わず経営戦略と整合しない戦術(投融資、M&A及び提携等)を選択すること、経営戦略及び戦術と整合しない経営資源配分を実施すること、また、ソリューション開発において将来の顧客ニーズや技術動向に沿わず新たな事業・投資が失敗すること等のリスクがあります。 |
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対応策 |
当社では、経営理念実現のために成長戦略を遂行することとそれを支える経営基盤を強化することを経営基本方針としています。成長戦略の遂行を実現するにあたり、経営戦略からアクションに至るまで一貫した計画を策定し、実行するために予算及び投融資の意義の明確化を図り、予算及び投融資関連のプロセスを見直しました。また、外部環境の変化に対応し適時適切な管理を行うため、経営指標達成に向けた施策、KPIの明確化、指標のモニタリング体制構築などに引き続き取り組みます。 |
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No.3 |
為替変動リスク |
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リスクの内容 |
当社では、海外系ベンダーの製品を多く取り扱っており、米ドル建での決済もあるため、仕入債務について為替変動リスクにさらされています。世界経済の動向により為替が変動し、かかる仕入れコストの増加分を販売価格に転嫁できない場合、当社において利益率の低下を招く可能性があります。 |
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対応策 |
当社では、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、外貨建て仕入れに関する確定債務残高と予定債務残高を管理し、適切な先物為替予約を行っています。 |
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No.4 |
業績管理に関するリスク |
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リスクの内容 |
当社では、適時適切に業績推移の原因分析、全社施策の実効性の評価・検証・モニタリングを行っていますが、顧客ニーズの多様化や予期せぬ需要の悪化等が発生し、業績情報の収集が不十分及び不正確になり、業績悪化判断が遅れる等、適切な業績管理が行われないリスクがあります。 |
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対応策 |
当社では、経営理念実現のために成長戦略を遂行することとそれを支える経営基盤を強化することを経営基本方針としています。経営基盤の強化を実現するにあたり、徹底した見える化を推進し事業変革を図ります。 経営状況や経営課題に関するデータやファクトをタイムリーに把握することを目的とし、「経営の見える化」(統一データ基盤に基づく予実管理)、「業務プロセスの見える化」(全体最適を実現できる案件管理体制の構築)、「組織・人の見える化」俯瞰的なプロジェクト管理・プロセスの整備に取り組むことで、ファクトに基づく経営判断や意思決定の迅速化による成長戦略の遂行を促進します。 |
②オペレーショナルリスク
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No.5 |
情報漏洩・サイバー攻撃によるセキュリティ侵害、システム関連トラブルによるリスク |
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リスクの内容 |
ICTシステムの構築及び高付加価値サービスの提供を事業としている当社では、事業遂行上、顧客の機密情報(個人情報を含む)を受領して作業を進めることがあり、当該情報を含む情報の管理及び保護は、当社の重要な経営課題であるとともに社会的な責務と認識しています、また当社が管理するシステムやサービスに対して、外部からサイバー攻撃を受け、セキュリティ(機密性、完全性、可用性)に関する損害が生じるリスク、他にも、社内システム設計・構築時にシステム構造上の不備が残存し、必要な機能が備わっていない状態で運用が開始されるリスク等が想定されます。 |
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対応策 |
当社では、使用されている各システムの洗い出し等を行い、システムの管理状況を調査することで、情報漏洩及びシステム関連トラブルによるリスクを特定し、識別したリスクに対応するため、システムの責任者(システムオーナー)を明確にしました。その上で、情報セキュリティ方針に基づいた、情報セキュリティ管理規程・情報システム規定等の社内管理規程を整備し、情報・情報資産の適切な管理を行うとともにIT資産管理の適正化とシステム関連のリスク管理プロセスの整備に努めています。 また、情報漏洩・サイバー攻撃等によるセキュリティ侵害に対して、情報とサイバーセキュリティを統合したインシデント対応プロセスを整備し、セキュリティ侵害事象の検知・解析機能の抜本的強化に努めています。 |
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No.6 |
パートナー企業に関するリスク |
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リスクの内容 |
当社では、パートナー企業への業務委託を通じて、当社のソリューションをお客様に提供する場合があります。この際、相互の信頼・協力関係を保ち、目標達成に向かいますが、その管理やコミュニケーションが十分になされない等により条件齟齬に至るリスクやパートナー企業において情報漏えい等のコンプライアンス違反が発生する、財務体質等が脆弱化する、品質・コスト・納期が不適切になる等、パートナー企業においてパートナー企業又はお客様との取引関係や当社グループのレピュテーション等に悪影響を与える事由が生じた場合、当社グループの成長を阻害する可能性があります。 |
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対応策 |
委託先であるパートナー企業と当社間における条件齟齬発生リスクへの対応として、明確な各種条件合意とそのモニタリングを継続実施し、よりよい信頼・協力関係の維持に努めます。パートナー企業における情報セキュリティリスクへの対応としては、その向上に優先的に対応します。業務委託先のシステムや従業員について、当社と同水準の情報セキュリティルールの遵守を徹底できるよう、教育やセキュリティ環境の提供等を進めております。また、品質管理の責任部署を明確にし、パートナー企業への委託業務の品質等を担保できるよう取り組みます。その上で、パートナー企業との協業の在り方やその戦略の検討を進めます。 |
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No.7 |
コンプライアンスに関するリスク |
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リスクの内容 |
万が一重大なコンプライアンス違反が発生した場合、顧客等からの信頼を著しく損なうリスクがあります。また、当社では様々な取引先と関係を構築して事業を推進しているところ、中には高度の秘匿性を求められる取引や、商流が複雑になる取引もあり、このような取引には、取引先と役職員との癒着等に起因する不正取引が発生するリスクがあります。 |
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対応策 |
当社では、役職員等が法令や社内規程を遵守するよう、教育・研修などを通じた啓発活動を行うことにより役職員等のコンプライアンス意識を高めるとともに、社内外における匿名通報相談窓口の設置によりコンプライアンス違反の把握と未然防止に努めています。また、当社では、取引先と役職員との癒着を防ぐ対応策として、接待贈答ガイドラインの遵守やパートナー向けコンプライアンスアンケート等を通じて、けん制機能の強化を行ってきました。 このように、再発防止策を計画どおり推進し、二度と不正を起こさない企業文化醸成の基盤を着実に構築し、その上で、2025年3月期以降の更なる飛躍に向けた活動方針として、コーポレート・ガバナンスの強化、企業理念・行動指針の浸透、風化させない仕組みの運営、社員の声を集める仕組みの最適化とグループ会社ガバナンスの更なる強化を掲げ、信頼回復の流れを盤石にしていきます。 |
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No.8 |
顧客システムの停止・不具合の発生、顧客との契約違反のリスク |
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リスクの内容 |
当社はネットワーク・ソリューション・プロバイダーとして、顧客の依頼によりICTシステム全体の構築を請け負うことを主な業務としています。かかるシステム構築において使用するルーター等の商品は、機器ベンダーから仕入れており、当社は、商品単体ごとに受入検査・出荷検査を実施する等の品質チェック等により、これらの仕入商品に不具合が生じないようにするための体制を構築しています。 しかしながら、提供するシステムやサービスの複雑化・肥大化する傾向もあり、人的ミス等が生じることで、顧客システムの停止・不具合に繋がる等のリスクがあります。 |
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対応策 |
当社では、業務プロセスの見える化を実現するべく、セールス・デリバリのプロセスレビューに取り組んでいます。 具体的には、レビューの共通化・平準化を行い、ルールとこれらに必要なツールの整備を実施することにより、リスク管理の強化と各人の業務の追跡を可能にする仕組みを構築するとともに、モニタリングの実施を通じて属人的な作業を減らすことで、人的ミス等による顧客システムの停止・不具合や契約違反の発生を防止しています。 加えて、事業運営で蓄積したナレッジを適時にデータベース化し、標準化することで上記のリスクを低減することを検討しています。 |
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No.9 |
労務に関するリスク |
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リスクの内容 |
当社では、従業員に対する労務管理が不十分なまま事業運営が行われた場合、サービス残業の放置や不当解雇、年次有給休暇の取得不足、健康診断の未受診等の違法行為が発生する可能性があります。 また、様々な経営課題克服及びサステナビリティ向上へ向け、優秀な人財を継続的に確保・育成していくこと、及び優秀な人財が継続的に活躍することが重要課題であると認識しています。しかしながら、当社経営陣と当社従業員又は従業員間でのコミュニケーションが十分になされず、当社の経営戦略及び組織方針が浸透しない場合、経営戦略及び組織方針と反した行動や離職が発生する可能性があります。 |
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対応策 |
当社では、企業理念・行動指針の見直し、行動指針に基づく行動宣言の策定、任意の委員会の発足等、経営基本方針の周知及び基本方針に基づく組織体制の構築等を実施することで、企業文化の醸成・浸透に努めています。 また、人事制度改革として、旧来の人事制度を刷新し、不正再発防止を実現する組織や人事基盤の再構築、社員が誇りを持って働くことができるような企業文化の醸成を目指しています。 従業員の健康管理を徹底し、活力や生産性の向上につなげることで健康経営を推進します。さらに、労務マネジメント強化を行い従業員の業務状況の把握や上長によるモニタリングを実施することにより、従業員に対する労務管理において、適時適切な指導・けん制を行うよう努めています。 |
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度においては、デジタル化に伴うネットワーク増強やセキュリティ強化の需要を捉えた提案を進めたものの、前年度受注していた大型機器案件が剥落したこと、また、通信事業者事業、パブリック事業及びパートナー事業が低調に推移したことによって、受注高は2,014億48百万円(前年度比8.4%減)となり、売上高は2,051億27百万円(前年度比2.2%減)となりました。この結果、受注残高は1,453億88百万円(前年度比2.5%減)となりました。
市場別の内訳としては、エンタープライズ(ENT)事業では、製造業は自動車メーカーや電機メーカーを中心にセキュリティ案件やスマートマニュファクチャリング案件を獲得し、非製造業はセキュリティ強化ビジネス(ゼロトラスト/SASE [Secure Access Service Edge])の大型案件を複数獲得しました。また、金融業は弱含んでいるものの、クラウド活用及びセキュリティ強化の継続案件を獲得しました。
通信事業者(SP)事業では、テレワーク等による通信量増加に対応した回線増強投資が一巡する中で、法人向け共創ビジネスが拡大したものの期初想定水準には至りませんでした。
パブリック(PUB)事業では、自治体において働き方改革・クラウド活用・セキュリティ対策等のデジタル化を見据えた大型案件を複数獲得した一方で、大型案件の失注が生じました。社会インフラでは電力会社グループの運用高度化案件やクラウド基盤案件等を獲得し、ヘルスケアではクラウド基盤の大型案件を獲得しました。一方で、複数の受注見込み案件の受注が来期へと遅延しました。
パートナー事業(ネットワンパートナーズ株式会社)では、セキュリティ強化ビジネスが好調に推移した一方で、機器納期改善に伴い低価格帯製品を中心に競争が発生するとともに、複数の受注見込み案件の受注が来期以降に遅延しました。また、前年度におけるMSP向けWi-Fiサービスビジネスの反動減が生じました。
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単位:百万円 |
2024年3月期 |
前年度比 |
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受注高 |
売上高 |
受注残高 |
受注高 |
売上高 |
受注残高 |
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エンタープライズ事業 |
55,354 |
55,206 |
37,144 |
0.3% |
11.6% |
0.4% |
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通信事業者事業 |
44,585 |
45,197 |
29,432 |
△13.5% |
△7.8% |
△2.0% |
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パブリック事業 |
60,293 |
61,396 |
62,097 |
△1.8% |
△0.5% |
△1.7% |
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パートナー事業 |
41,239 |
43,327 |
16,713 |
△14.8% |
△6.5% |
△11.1% |
|
合計 |
201,448 |
205,127 |
145,388 |
△8.4% |
△2.2% |
△2.5% |
当連結会計年度における商品群別の受注高・売上高・受注残高
商品群別の内訳としては、機器商品群では、受注高及び売上高は、前年度における大型機器案件の反動減が生じたこと、及び、通信事業者事業・パブリック事業・パートナー事業の受注が低調に推移したことから、前年度比で減少しました。
サービス商品群では、受注高及び売上高は、全体受注が低調な中、保守サービスを中心に前年度比で増加しました。
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単位:百万円 |
2024年3月期 |
前年度比 |
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受注高 |
売上高 |
受注残高 |
受注高 |
売上高 |
受注残高 |
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機器商品群 |
97,771 |
104,485 |
44,745 |
△17.6% |
△9.1% |
△13.0% |
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サービス商品群 |
103,677 |
100,642 |
100,642 |
2.4% |
6.2% |
3.1% |
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合計 |
201,448 |
205,127 |
145,388 |
△8.4% |
△2.2% |
△2.5% |
損益の状況
売上高は前年度比で減少したものの、売上総利益率が前年度比で改善したことで、売上総利益は525億55百万円(前年度比4.3%増)となりました。販売費及び一般管理費が330億22百万円となった結果、営業利益は195億33百万円(前年度比5.3%減)、経常利益は191億51百万円(前年度比7.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は137億20百万円(前年度比5.1%減)となりました。
・財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は1,649億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ137億42百万円の減少(7.7%減)となりました。
資産の内訳は、流動資産は1,474億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ136億18百万円の減少(8.5%減)となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が52億3百万円、商品が41億88百万円、現金及び預金が34億73百万円減少したことによるものです。また、固定資産は174億20百万円となり、前連結会計年度末に比べて1億24百万円の減少(0.7%減)となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は880億94百万円となり、前連結会計年度末に比べて147億92百万円の減少(14.4%減)となりました。これは主に、短期借入金が80億円、未払法人税等が19億28百万円、未払消費税等の減少等により流動負債のその他が11億65百万円、未払金が10億57百万円、長期未払金が10億22百万円減少したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は768億14百万円となり、前連結会計年度末に比べて10億49百万円の増加(1.4%増)となりました。これは主に、繰延ヘッジ損益が6億76百万円増加し、自己株式が3億86百万円減少したことによるものです。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益の計上等により、営業活動によるキャッシュ・フローは238億72百万円の収入となりました。
また、投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形固定資産の取得による支出等により45億42百万円の支出となり、財務活動によるキャッシュ・フローについては、短期借入金の純減による支出等により228億3百万円の支出となりました。その結果、現金及び現金同等物は34億73百万円減少し、期末残高は320億35百万円(前期末比9.8%減)となりました。
なお、前連結会計年度との比較は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による収入は238億72百万円となり、前連結会計年度に比べ103億11百万円の収入減となりました。これは主に、未払消費税等の減少による支出が66億71百万円増加、法人税等の支払額が38億46百万円増加、その他の流動負債の減少による支出が25億97百万円増加し、一方で、売上債権及び契約資産等の減少による収入が38億36百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による支出は45億42百万円となり、前連結会計年度に比べ28億87百万円の支出増となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が23億8百万円増加、無形固定資産の取得による支出が5億25百万円増加、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入が3億58百万円減少、資産除去債務の履行による支出が2億28百万円増加し、一方で、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出が5億83百万円減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による支出は228億3百万円となり、前連結会計年度に比べ54億71百万円の支出増となりました。これは主に、自己株式の取得による支出が76億64百万円増加し、一方で、短期借入金の純減による支出が20億円減少したことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ENT事業 |
55,354 |
100.3 |
37,144 |
100.4 |
|
SP事業 |
44,585 |
86.5 |
29,432 |
98.0 |
|
PUB事業 |
60,293 |
98.2 |
62,097 |
98.3 |
|
パートナー事業 |
41,239 |
85.2 |
16,713 |
88.9 |
|
報告セグメント計 |
201,448 |
91.6 |
145,388 |
97.5 |
|
合計 |
201,448 |
91.6 |
145,388 |
97.5 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ENT事業 |
55,206 |
111.6 |
|
SP事業 |
45,197 |
92.2 |
|
PUB事業 |
61,396 |
99.5 |
|
パートナー事業 |
43,327 |
93.5 |
|
報告セグメント計 |
205,127 |
97.8 |
|
合計 |
205,127 |
97.8 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当期の経営成績の概況
セグメント別業績
セグメント別の情報につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
中期経営計画と当連結会計年度の取り組み
当社グループは、「人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で、豊かな未来を創る」をPurposeとし、企業価値の更なる向上、持続的な成長を目指し、2023年3月期から2025年3月期を対象期間とする中期経営計画を策定しております。
1)経営基本方針
中期経営計画の達成を目指し、再定義した新理念体系(Purpose、Mission、Vision、Values)に基づき「成長戦略の遂行」、それを支える「経営基盤の強化」、社会的責任として「サステナビリティ」に注力しております。各施策の具体的な取り組みは次のとおりです。
[成長戦略の遂行]
事業、サービス、財務の3つの戦略について以下のとおり取り組みました。
・事業戦略
社会課題の解決に貢献するため、既存事業に隣接する3つの注力領域「スマートマニュファクチャリング」、「Society5.0を実現する社会基盤のデジタル化」、「デジタルガバメント」で事業成長を加速します。中期経営計画期間の最終年度である2025年3月期において、3つの注力領域で売上高合計300億円の伸長(2022年3月期比)を図ります。
「スマートマニュファクチャリング」では、自動車・電機・機械などの製造業を対象として、データ利活用による事業価値向上、事業領域セキュリティ強化、脱炭素経営に向けた見える化に取り組んでいます。
「Society5.0を実現する社会基盤のデジタル化」では、当連結会計年度において注力分野及び当社の提供価値を明確化し、電力・ガス、鉄道、医療、建設、金融、情報通信の6つのセグメントを対象に、社会基盤のデジタル化による社会課題解決への貢献に取り組んでいます。
「デジタルガバメント」では、自治体を対象として、セキュリティ強靭化や情報セキュリティクラウド、地域社会のICTインフラ高度化、デジタル化による地域課題解決や地域活性化に取り組んでいます。
当連結会計年度では、市場全体ではICT利活用が進む中でセキュリティ強化、クラウド活用のニーズが高まりました。また、半導体等の政策や国内公共領域におけるDX方針等への浸透が進み、年間を通じてICTへの期待値、国内需要は旺盛でした。
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項目 |
名称 |
2023年3月期実績 |
当連結会計年度の実績 |
当連結会計年度の状況 |
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注力領域 |
スマートマニュファクチャリング |
受注高 |
43億円 |
受注高 |
60億円 |
EVや半導体関連の投資が継続。製造部門のビジネス拡大に加え、研究開発部門や戦略パートナーとのビジネスを創出しました。 |
|
売上高 |
20億円 |
売上高 |
74億円 |
|||
|
Society5.0を実現する社会基盤のデジタル化 |
受注高 |
35億円 |
受注高 |
117億円 |
各分野で本格化が進む社会全体のDX案件を推進。運用高度化、SASE、クラウド基盤、生成AI基盤などの案件を創出しました。 |
|
|
売上高 |
17億円 |
売上高 |
71億円 |
|||
|
デジタルガバメント |
受注高 |
105億円 |
受注高 |
113億円 |
働き方改革(テレワーク)・クラウド活用・セキュリティ対策が統合された大型基盤案件を受注しました。 |
|
|
売上高 |
35億円 |
売上高 |
71億円 |
|||
・サービス戦略
<注力サービス>
既存コア事業の強化を起点としたサービス事業の探索により、新たな価値を創造する「DX戦略コンサルティングサービス」、「マネージドサービス」、「自社クラウドサービス」の3つのサービスを創出するとともに、機能提供型サービスとプラットフォームを確立し、ストック型ビジネスの強化に取り組んでいます。
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項目 |
名称 |
当連結会計年度の状況 |
|
注力サービス |
DX戦略コンサルティングサービス |
・ICTマネジメント変革支援サービス マルチクラウド化に伴い複雑化するお客様のインフラや運用業務、ICT人財の適材配置などに関するグランドデザインの策定や、DX(Digital Transformation)の実行を支援するサービスを提供しました。 ・デジタルプラットフォームコンサルサービス データ利活用の推進を実現するICTプラットフォームのあるべき姿(To Be)を描き、戦略の構想から計画の実行支援まで伴走するサービスを提供しました。 ・クラウド商材のフルラインナップ化とマネージドサービスの付与によりお客様のニーズ、ステージに応じた最適なシステムデザインの提示を開始しました。 |
|
マネージドサービス |
・netone Managed SASE powered by Prisma® Access 多様な働き方に対応して複雑化したネットワークとセキュリティの機能を高度に統合するSASE(Secure Access Service Edge)ソリューションのアセスメントからPoC・設計構築・運用までを包括的に支援するフルマネージドサービスを提供しました。 ・MDR(Managed Detection and Response)サービス セキュリティ監視・分析を行うNDR(Network Detection and Response)サービスメニューで取り扱う製品を拡充し、より柔軟にお客様のシステム環境に合わせた提案、サービス提供を可能にしました。 |
|
|
自社クラウドサービス |
・ガバメントクラウド接続サービス デジタル庁のテンプレートや設計ガイドラインに準拠したクラウド接続サービスの提供を開始しました。 |
* DX戦略コンサルティングサービス:ICT利活用の在り方、事業貢献に向けたIT戦略策定を支援するサービス
マネージドサービス :顧客システムの継続的な稼働を行うための機能と運用を一括提供するサービス
自社クラウドサービス:ICTシステムの様々な機能を事前に準備された環境により、ネットワークを通じて安全に利用できるサービス
<サービス全般>
当連結会計年度では、全体受注が低調な中、保守サービスが増加したことで前年同水準の受注を維持しました。サービス比率については、2024年3月期に想定していた50.0%には至りませんでした。引き続き、ストック型ビジネスの確立によって共創関係を築くことで、継続的な競争力の強化に取り組んでいきます。
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項目 |
名称 |
当連結会計年度の状況 |
|
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当連結会計年度の実績 |
サービス比率 |
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サービス商品群 |
受注高 |
1,036億円 |
51.5% |
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売上高 |
1,006億円 |
49.1% |
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受注残高 |
1,006億円 |
69.2% |
|
* サービス商品群では、ネットワーク、セキュリティ、クラウドをはじめるとする各種システム基盤の導入に向けたコンサルティングから計画、設計、構築、保守、運用、そして最適化まで、システムのライフサイクル全般にわたる付加価値の高いサービスを提供しています。
・財務戦略
中期経営計画に基づく成長戦略の遂行に向けた「戦略的な投資による収益力強化」、「最適な資本構成の追求」、「積極的な株主還元」の取り組みを継続して推進しました。また、資本効率を重視した経営をさらに推進していくため、策定した「キャピタルアロケーションポリシー」に基づき「戦略的な投資」、「財務基盤の強化」、「株主還元」への最適配分を実行し、企業価値の更なる向上に努めました。
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項目 |
名称 |
当連結会計年度の状況 |
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戦略全般 |
キャピタルアロケーションポリシー |
・策定した「キャピタルアロケーションポリシー」に基づき、「戦略的な投資」、「財務基盤の強化」、「株主還元」への最適配分の取り組みを実行しました。これにより成長投資と財務規律の両立により好循環サイクルを生み出すとともに、最適な資本構成の実現による資本効率の向上と企業価値の更なる向上を図ってまいります。 ・確立した投融資案件の計画段階における資本コストを基準に投資判断を評価するプロセスのもと、資本効率の高い投資を推進し、新たに運用段階でも定期的にモニタリングできるプロセスを確立しました。 ・経営資源の集中に向けて事業会社の整理を進めました。 |
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戦略的な投資による収益力強化 |
改善投資 |
経営組織体制と業務プロセスの「徹底した見える化」に向けた社内DX基盤への投資を行いました。経営状況や経営課題に関するデータの迅速な把握・活用を可能にすることで業務効率の向上を図りました。 |
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成長投資 |
事業用サービス基盤の強化及び当社グループの強みである技術力を担う人財を多数輩出するための人的資本への投資を行いました。また、採用活動の活性化や教育・研修システムの高度化など幅広い分野に経営資源を投入することにより、人財の獲得と育成に注力しました。 |
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最適な資本構成の追求 |
ファイナンス |
手元資金と事業活動で創出されるキャッシュに加え、キャピタルサービスの拡大や銀行借入によるデットファイナンスを活用しながら、資本コストを意識した最適な資本構成の追求に努めました。また、運転資金の機動的かつ安定的な調達を行うため、2024年3月にコミットメントライン契約を締結しました。 なお、2024年3月期末の有利子負債は約285億円になりました。 |
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積極的な株主還元 |
連結配当性向 |
当事業年度の中間配当金は1株あたり37.00円にて実施しました。期末配当金は1株あたり40.00円、年間配当金は1株あたり77.00円として、2024年6月開催予定の定時株主総会への付議を予定しております。 これにより、連結配当性向は40%の目安に対して、45.3%となる予定です。 |
* 改善投資:徹底した見える化、社内DX基盤、セキュリティ強化
成長投資:人財の育成・獲得、新サービス向け調査研究、事業用サービス基盤、サステナビリティ、M&A
[経営基盤の強化]
企業文化改革、徹底した見える化、人財戦略について以下のとおり取り組みました。
・企業文化改革
過去の不祥事を二度と繰り返さないため「企業文化改革」を重要施策と位置づけ、専門組織「ガバナンス・企業文化諮問委員会」を取締役会の諮問委員会として設置しております。企業文化改革と再発防止策の履行・浸透のさらなる推進を図るべく、ガバナンスの強化、企業文化改革、再発防止策の継続的な履行、内部統制システムの強化の取り組みを進めました。
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項目 |
当連結会計年度の状況 |
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ガバナンスの強化 |
従来から強化してきた再発防止策を中心とした守りのガバナンスに加えて、成長戦略に関する議論の充実など、当社グループの継続的な成長を実現するための施策に取り組みました。また、当社取締役会のあるべき姿を改めて確認するとともに、これを実現するために取締役会が取り扱うテーマの特定や、当該テーマを議論するために取締役会が備えるべきスキルの改訂も行いました。さらに、これまで進めてきたコーポレート・ガバナンスの強化に向けた各種施策を今まで以上に「実質」を伴った取り組みに深化させ、企業価値のさらなる向上につなげることを目的として、第三者機関のインタビュー形式による取締役会の実効性評価を初めて実施しました。抽出された課題の解決に向けた取り組みをスタートさせています。 |
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企業文化改革 |
企業理念体系の浸透を目的として、経営層と社員が対話するRCTや上司との個別面談による行動宣言の振り返り、ビジョンデイの開催等、理念浸透活動を実施しました。また、企業文化モニタリング調査を実施し、組織文化に関する課題を洗い出すとともに、改善に向けた各施策の実行と検証に取り組んでおります。 |
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再発防止策の継続的な履行 |
ガバナンス・企業文化諮問委員会を設置し、全社的な内部統制強化及び企業文化改革に関する取組みの実行及び遂行、経営陣による積極的なモニタリング関与と継続的な改善に取り組みました。また、ガバナンス・企業文化諮問委員会が確認した再発防止策の実施・運用状況を月次・半期毎に公開しました。 |
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内部統制システムの強化 |
2022年4月より見直した組織の役割(注)に基づき、第1.5ラインを設置した当社独自の3ラインモデルによる体制にて牽制機能の強化に取り組むとともに、ライン相互の業務支援や業務効率向上に向けた施策に取り組んでおります。 (注)業務執行の迅速化の観点から、第1ラインの営業活動支援業務と営業業務処理の管理推進機能を集約するため、組織の役割を見直しました。具体的には、第1ラインにおける各事業本部と第1.5ラインの業務統制本部に事業推進部(室)を新設し、業務状況の可視化を進めるとともに、業務統制本部業務企画部がビジネスの品質保証、営業業務の統轄機能及び技術業務の統轄機能を担うことで業務統制機能を拡充させました。 |
* RCT(Respect、Communication、Teamwork):経営陣と少人数の従業員が語り合うイベント
・徹底した見える化
経営状況・経営課題に関するデータやファクトをタイムリーに把握し、経営戦略の推進力を高めるために、継続的に「経営の見える化」、「業務プロセスの見える化」、「組織・人の見える化」の視点でのデータの可視化・分析のための情報基盤を構築しました。
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項目 |
当連結会計年度の状況 |
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経営の見える化 |
「収益性」「安全性」「効率性」「財務・株価情報」「労務厚生」「在庫状況」をまとめたマネジメントダッシュボードや、各事業における売上高・利益推移など経営にかかわる重要な指標の管理から確認した課題に対し、改善ドライバーとなる施策提案と効果の定点観測を通じて一定の成果を実現しています。 引続き、各主管部門と連携のうえ経営会議や業務管理の源となる情報の統一を進め、経営・事業管理の精緻化に資する情報提供を目指し活動を進めてまいります。 |
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業務プロセスの見える化 |
徹底した見える化の活動を通じて得た知見や、業務プロセス・システムの課題に対し、手元集計による暫定対策とともに、業務効率化を目的とした全社横断プロジェクトにおいて根本対策に向けた要件定義を実施しています。要件の具体化と改善ポイントを明らかにするとともに、既存業務プロセスの可視化を進め、業務・システムの変革による期待効果のモニタリング環境構築を進めてまいります。 |
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組織・人の見える化 |
採算情報の見える化にあたり、組織軸での収益捕捉を精緻化する過程において、主管部門と連携のうえ営業・技術の生産性定義と分析を進めております。事業戦略の策定と高度化に向けて、各組織が対応する市場や商品販売の実績を可視化し、市場×商品の戦略推進支援に向けたモニタリング環境の構築、結果指標と各組織の活動(先行指標)をつなげる統合的なモニタリング体制の確立を目指し活動を進めてまいります。 |
・人財戦略
テクノロジーの本質や利活用から価値を生み出せるよう、自ら考え行動する優秀な人財の育成・輩出を行っていくことが人的資本経営と考えています。経営陣の強力なコミットメントのもと、人財の育成と多様な人財の活躍を推進する仕組みを構築しました。
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項目 |
当連結会計年度の状況 |
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プロフェッショナル人財の育成 |
一人ひとりがプロフェッショナル人財となり、専門性を追求し互いの発信力を高められるよう、個人の専門性向上を支援しています。具体的には、サービス提供型のビジネスモデルへのシフトを加速させるため、ネットワークに限らず「クラウド」「セキュリティ」等IT技術領域の知識習得を支援する体制を整え、セキュリティ人財・クラウド人財の育成を強化しました。また、コーポレート部門の機能強化を目的としたDXスキルの獲得を支援し、DX人財の育成を強化しております。 |
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人財が活躍するための環境の提供 |
人財マネジメントポリシーで掲げている「Team」「TAKUMI(匠)」「Fairness」を軸に、新たな人事制度を2024年3月期から導入しました。事業と働き方の変化に適した「等級制度」、市場競争力を確保した「報酬制度」、社員の長期的な成長・人財育成に寄与する「評価制度」により、社員一人ひとりがより高いパフォーマンスを発揮し、社会への価値提供に貢献してまいります。 また、以前から活動している産学連携を通じて、次世代のIT人財育成活動を拡大してまいります。 |
[サステナビリティ]
当社グループは、2021年に策定したサステナビリティ方針のもと、持続的成長における重要課題として、特定した4つのマテリアリティについて、KPIを定め、各取り組みを進めました。
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マテリアリティ① 安心・安全な高度情報社会の実現 |
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課題・領域別ソリューション・サービスの提供 ・社会課題解決型ソリューション売上高 FY24目標300億円 FY23目標161億円/結果216億円 ・サービスビジネスの拡大と推進 FY24目標50%(サービス比率) *従来目標の55%から修正 FY23目標50%/結果49.1% |
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マテリアリティ② プロフェッショナル人財の活躍 |
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次世代を担う人財の育成 ※2024年3月31日時点 ・セキュリティ人財 ・CISSP取得者 FY30目標80名 FY23目標28名/結果30名 ・安全確保支援士 FY30目標100名 FY23目標56名/結果60名 ・クラウド人財 ・フロント部門 FY30年目標50%増 FY23目標498名/結果516名 ・DX人財 ・コーポレート部門 FY30年までに150名増 FY23目標39名/結果42名 ・業務改善提案100件(FY22~30の累計) FY23目標13件/結果28件 ・次世代ICT人財の育成・産学連携などを通じたプログラム: カリキュラム提供数:10、講義提供数:52、受講者:3,092名(延べ) ・香川大学:機密情報・サイバー攻撃・ネットワークセキュリティの座学と演習 ・京都女子大学:1~3年生を対象にIT業界・AIの座学とデータ分析演習、IT業界の働き方をテーマにネットワン若手社員と交流(座談会) ・法政大学:企業におけるAI×共創をベースにした科学技術活用方法の講義 ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 ・女性役職者比率 FY30目標15% FY23目標7.5%/結果8.1% ※2024年4月1日時点 ・新卒採用女性比率 FY30目標50% FY23目標36.5%/結果42.7% ※2024年4月1日時点 ・男性の育休及び出産時の特別休暇取得率向上 FY30目標90% FY23目標65.0%/結果74.0% ※2024年3月31日時点 |
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マテリアリティ③ 脱炭素社会への貢献 |
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ビジネスを通じた温室効果ガス排出量削減 ・グリーンソリューションの拡大 お客様・社会における温室効果ガス排出量削減に貢献するソリューションとサービスの開発・拡大 FY23目標:創出3件/結果:創出3件 ・自社の事業プロセスにおける排出量削減 低消費電力製品及びサービス販売の拡大 Scope3 売上高原単位(FY24目標)9.8%削減 FY23目標5.7%削減/結果13.6%削減(暫定) ※2024年5月8日時点の暫定値 |
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マテリアリティ④ 持続可能な成長を実現するガバナンス体制の維持強化 |
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企業文化の醸成と内部統制強化 ・企業文化の醸成に向けた取り組みとして社員意識調査を毎年実施 FY23結果:全社員対象10月末に実施 ・再発防止策の進捗報告 再発防止策の運用状況について半年に1回当社ウェブサイトに公開 FY22結果:上期、下期運用状況の詳細を当社ウェブサイトに公開 ・健康経営®の実現 健康経営優良法人への認定:FY24年目標:健康経営優良法人認定 FY23結果:健康経営優良法人認定取得 |
②資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の源泉及び資金の流動性について、自己資金のほか、金融機関からの借入により調達しております。有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、ソリューション・プロバイダーとして、マルチベンダーのネットワーク機器、コンピュータ・プラットフォーム機器、ソフトウエア及びクラウドの最適な組合せによるシステム構築を通じて、ICTソリューションを提供しています。なお、当社グループの研究開発活動につきましては、セグメント情報に関連付けて記載することが困難であるため、セグメント別の記載は行っておりません。ICTシステムは、システムを構成する各種機器、各種ソフトウエア、各種サービスの組合せによりその機能や利便性が左右され、システム運営に大きな影響を与えます。
今後も技術革新は進歩し続けますが、最適なICTシステム構築には、最新技術の取得と将来の拡張性に対する予測、コンピュータネットワーク関連の各種機器、各種ソフトウエア、各種サービスの機能把握と、それらを最大限に活用する仕組みづくりが、大きな要素となります。また、マルチベンダー環境下では、ネットワークシステムとコンピュータ・プラットフォームの連動が進んでおり、これらが融合した高度なシステム構築能力が求められています。
このような状況下で当社グループは、メーカー毎に各種機器や各種ソフトウエアに関する、利便性、規格、他の機器及びソフトウエアとの相互接続性、詳細動作について、調査、研究、検証、評価を行うと同時に、複数の大学、ネットワーク団体、米国企業等との共同研究を行い、規格標準、最新技術の動向を常に把握することに努めています。
当社グループは、ネットワーク並びにプラットフォームシステム構築における様々な技術的要素を考慮し、蓄積してきたインテグレーション力、システム管理・運用力を通じて、より品質の高いシステム提供のため標準システム化に取り組み、利便性、信頼性のより高いシステム、ソリューションを提供しています。
当連結会計年度における研究開発活動の実績としては、無線・モバイルネットワーク技術、ネットワーク運用管理技術、仮想化・クラウドコンピューティング技術、SDN/NFV技術、API連携技術、ネットワーク・エンドポイント・クラウドセキュリティ技術、ビッグデータ技術、IoT技術、機械学習を含むデータ分析、生成AI技術、AR/VR技術、ロボット技術等の先端技術をベースに今後の主流技術等の検証、評価を行いました。
ネットワーク分野においては、SDN技術やクラウド技術を活用し仮想ネットワークの適用及び運用技術の検証、評価を実施し導入実績を上げています。IP技術を放送用途に適用するネットワーク技術の研究開発を行い6月にINTEROP shownetへの出展を行いました。また、テクニカルセンターにローカル5G環境を構築し、社会課題解決に向けた実証実験等に取り組み、新設したイノベーションセンターへもハンドオーバー等の機能確認ができるローカル5G環境を構築し2024年4月より実証実験を開始しました。その他、NaaS環境として「Nile Access Service」をイノベーションセンターへ導入しサービスの安定提供に向けた検証環境を整備しています。
セキュリティ分野では、従来のネットワーク境界セキュリティ、多層防御技術に加え、安全なクラウドサービスの利活用や働き方の変化に合わせたネットワークとセキュリティの融合技術となるSASEに関わる技術、認証技術に関する検証、評価を実施し導入実績を上げています。
クラウドコンピューティング分野では仮想化技術を応用したハイパーコンバージドインフラ、パブリッククラウドとの連携、API連携/自動制御技術を応用したマルチクラウド環境に対応する先進的なクラウドシステムの提供及び、コンテナ環境、分散コンピューティング環境を一元的に運用・管理するためのエッジソリューションの活用検証を行い、ユースケース開発を行っております。
コラボレーション技術分野においては、ワークスタイル変革を実現するWeb会議やテレプレゼンスシステム、モバイルデバイス管理技術、クラウドストレージ技術等を組み合わせた利活用に関する各種研究・ソリューション開発に加え、AR/VR技術を活用したリモート支援システムのソリューション開発、メタバースの基軸となるデジタルシミュレーション環境を活用した高度な分析環境の研究を行うことでデジタルを活用した生産性向上を目指しています。
ネットワーク運用分野では、ネットワーク運用管理を高度化する、ネットワークの自動化(Infrastructure as Code)、モニタリング・可観測性(Observability)の技術開発に取り組み導入実績を上げています。更に、AI技術を活用しネットワーク運用における予兆検知、ネットワークのデジタルツイン技術の研究・実証実験を行っております。
これらのネットワークを中心とする状態監視や把握、データ分析の技術を活用しながら、各システムの電力消費量に関わるトレーサビリティの把握に関わる調査・研究を付加要素として行い、当社ラボでの電力消費量削減へも取り組み一定の成果につなげております。
その他、データの活用の観点から複雑化するビジネスプロセスを可視化し継続的な改善・最適化を行う仕組みであるプロセスマイニングの調査・研究、データハンドリングによりデータ活用を柔軟に行うことができるシステムの開発、デジタルを活用した運用高度化の及び生成AI技術の活用に向けクラウドサービスによるトライアル環境を整備しLLMの研究・検証を行っております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は