(注)「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、培ってきた技術と経験を活かし、価値ある建造物とサービスを社会に提供することで、安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくりに貢献することを企業理念としております。また、一人ひとりがCSRの実践者となり、日常業務の中ですべてのステークホルダーを意識して行動することを目指します。自由闊達で風通しの良い社内風土のもと、会社と社員が互いに信頼しあい、ステークホルダーの皆様とWin-Winの関係を実現する「すべての人を大切に想う」CSR経営を実践してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略
近年、当社を取り巻く環境は堅調に推移してまいりましたが、これからの社会を考えると、建設投資や労働力人口の減少、ICTの急速な発展、価値観の多様化など、経営環境が大きく変化することが予想されます。
こうした社会の変化へ的確に対応し持続的に成長するために、国内建設事業以外の成長の原動力を育て上げていくとともに、国内建設事業も社会の変化に適応したかたちに変えていく必要があります。その実現を描いた未来の姿が2018年5月10日に公表した「西松-Vision2027」であります。当社は「新しい価値をつくる総合力企業へ」というビジョンのもと、健全な財務を背景とした成長投資により、フローとストックのベストミックス、脱単純請負を実現し、ステークホルダーの皆様に新しい価値を提供していくことで、安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくりに貢献してまいります。
また、「中期経営計画2020」においては、「総合力企業への基盤構築期」として、ビジョンの実現へむけて、成長戦略を着実に遂行してまいります。
なお、「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2020」につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、併せてご参照ください(https://www.nishimatsu.co.jp/ir/library/plan.php)。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、2018年5月10日に公表した「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2020」において、連結売上高、連結営業利益、ROE、自己資本比率及びD/Eレシオを目標とする経営指標として掲げております。特にROEは持続的成長への競争力を高めた結果として向上するものであり、当社の目指す経営方針と合致することから、目標とする経営指標として採用しております。
(4) 経営環境
当社はこれまでに、道路、ダム、鉄道、ビル、公共施設、都市再開発など、国土基盤整備の担い手として、インフラ構築に積極的に取り組んできました。これらのビッグプロジェクトから得た高度な技術や多彩なノウハウを活かし、「土木事業」「建築事業」「開発・不動産事業」「海外事業」を4本柱に成長を続けてまいります。
これらの事業のうち、当社の主力事業である土木事業及び建築事業を取り巻く環境は、政府建設投資については堅調に推移しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響により世界経済の急激な減速が懸念されるため、民間建設投資については影響があると予想されます。また、中長期的には人口の減少等の影響から国内建設市場の縮小が予想されるなど、不透明な状況が続くと思われます。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2018年度に策定した「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2020」の達成に向けて、計画に掲げた施策を着実に実行してまいります。
国内建設事業におきましては、建設事業の進化に向けた成長投資を着実に行い、生産性を向上させることで、計画の達成に取り組んでまいります。環境問題につきましては、昨年6月に「エコ・ファーストの約束」を更新し、当社の事業活動から発生する全てのCO2排出量を2030年度にネットゼロにすることを新たな環境目標の一つとして掲げました。引き続き脱炭素を実現する技術開発への投資を進めることで、カーボンフリーを追求してまいります。
海外事業におきましては、競争力のある組織への変革を図るため、本年4月に国際事業本部の拠点をシンガポールに設置するなど、組織再編を実施しております。今後、進出国ごとのニーズをとらえた価値あるサービスをタイムリーに提供する事業へ転換を図ってまいります。
開発・不動産事業におきましては、建設事業と連携を図り、今後成長が期待される分野(外国人、女性、シニア、観光・娯楽事業)において、価値の高い事業を能動的に創出してまいります。
新規事業におきましては、“創造をかたちへ”を活動コンセプトとし、「インフラ事業分野」「環境及びエネルギー関連分野」「当社財産を活かせる分野」において、社会課題の解決に貢献する新たな事業を創出してまいります。
全社的な働き方改革への取り組みにつきましては、社員一人ひとりが自由に発想し、新しい価値を作り出していく企業風土を育むため、本年1月より服装を自由化いたしました。また、柔軟な働き方を社員に提供することを目的として、勤務しなければならない時間帯(コアタイム)を設けないフレックスタイム制度及びテレワーク制度を本年4月より導入いたしました。社員の意識改革と待遇改善を併せて実施することで、働き方改革への対応と社員の生産性向上の両立を目指してまいります。
財務上の課題として、財務基盤の安定性維持と適正な株主還元の両立が挙げられます。当社は「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2020」において、10年間で将来の成長のための投資1,000億円と安定的収益事業強化への投資1,200億円の合計2,200億円の成長投資を予定しており、一時的には有利子負債の増加による自己資本比率の低下とD/Eレシオの増加が見込まれますが、自己資本比率50.0%以上及びD/Eレシオ0.3倍以下を中長期的な指標として持続的成長に努めてまいります。
2020年度は、当社グループの「中期経営計画2020」の最終年度となりますが、計画の基本方針に基づき、引き続き、企業価値の向上を図ってまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界経済及び国内経済に深刻な影響が生ずると予想されますが、当該影響が国内及び海外の建設投資に及んだ場合、当社の建設工事受注額が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、以下の事象が生じた場合には、当社の施工する工事を一時中断するなど感染拡大防止措置を講ずる必要があります。工事の中断期間が長期にわたる場合や中断する工事数が増加した場合には、工事損益が変動するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・政府の緊急事態宣言等を受けて当社として必要な措置を講ずる場合
・当社事業所において当社役職員又は協力会社社員に感染症患者が発生した場合
当該リスクが顕在化する可能性は、当連結会計年度末現在において非常に高くなっており、次期においても引き続き注視する必要があります。
当該リスクへの対応策として、BCP対策本部を立ち上げ、当該リスク情報の集約と展開を図っており、当社役職員や協力会社社員の安全と健康を最優先に考え、当社事業所内における感染拡大防止に努めるとともに、在宅勤務の実施により事業継続に努めるなど、業績への影響を低減させるよう努めております。
(2) 海外受注リスク
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、海外土木事業の市場を新規進出国に拡大し、入札機会を増やしてまいります。また海外子会社の価格競争力を高め、これまでの日系工場案件中心の取り組みから、外資・現地企業案件にも取り組むことで入札機会を増やし、受注確保に努めてまいります。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、入札条件・見積条件等の事前調査、施工現場・施工条件・実勢価格等の確認、適正な人員配置計画とモニタリング、西松建設協力会(Nネット)の活用、価格交渉力の強化等により、工事損益への影響を最小限に抑えるよう努めております。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、極めて大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、各部署に対するコンプライアンス監査によりコンプライアンスに係るリスク管理状況を確認し、問題があれば積極的に解決するとともに、企業風土の改善に取り組んでおります。また、危機意識の風化防止などを目的としてコンプライアンス研修を実施しております。その他、内部通報窓口を設置するなど、コンプライアンス違反事由が発生した際に適切かつ迅速に対応できる体制を整備しております。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、各種の社内基準書に準拠した施工、品質パトロールの実施、社内組織を活用した施工管理検討の実施、契約不適合事例や不具合事例の全社水平展開、各種研修の実施等により、工事目的物の品質管理に努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、現時点で進出している国においては一定に抑えられていると認識しておりますが、万が一、当該リスクが顕在化した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、外務省海外安全ホームページによる危険度レベルの定期的な確認や、「カントリーリスク判定表」による定期的な評価、「海外危機管理マニュアル」の周知等により、事業継続や工事への悪影響を最小限に抑えるよう努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、為替レート毎の為替差損益の試算、取下金管理の徹底、外貨残高の適正な管理、為替予約等によるリスクヘッジの検討等により為替変動の影響を弱め、業績への影響を低減させるよう努めております。
当該リスクが顕在化する可能性は、次期においても相応にあるものと認識しております。
当該リスクへの対応策としては、事業管理体制の確立、プロジェクトリスク評価の実施、事業計画の適時見直し、代替出口戦略の確保等により、業績への影響を低減させるよう努めております。
(9) 労働災害リスク
施工中に予期せぬ重大事故や労働災害が発生した場合には、顧客その他ステークホルダーからの信頼を損なうとともに当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの低減のために以下の対応策を講じておりますが、万が一、重大な事象が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のある重要リスクであると認識しております。
当該リスクへの対応策としては、過去事例の全社水平展開や定期的な現場パトロールのほか、当社職員や協力会社の職長・作業員に対する安全教育の継続的な実施により、労働災害を未然に防止するよう努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、基調としては緩やかに拡大したものの、年度末にかけて新型コロナウイルス感染症拡大の影響が深刻化し、厳しい状況となりました。本感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要があり、金融資本市場の変動等の影響についても不確実性の高い状況が続いております。
建設業界におきましては、政府建設投資・民間建設投資ともに堅調に推移する中で、技能労働者の需給状況等について注視すべき状況が続いております。
このような状況の中、当社グループの連結業績は以下のとおりとなりました。
建設事業受注高は、国内の土木工事及び建築工事が増加したことから、前期比28,042百万円増加(8.1%増)の376,088百万円となりました。
売上高は、土木工事、建築工事ともに順調に進捗したこと等により完成工事高が増加し、前期比42,302百万円増加(12.1%増)の391,621百万円となりました。営業利益は、前期比384百万円増加(1.5%増)の25,313百万円となりました。経常利益は、前期比147百万円減少(0.6%減)の25,838百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比63百万円減少(0.3%減)の18,721百万円となりました。
報告セグメント等の業績は以下のとおりであります。(セグメントの業績は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
イ 土木事業
当セグメントの売上高は、前期比19.7%増の141,177百万円となり、セグメント利益は、完成工事総利益率が向上したこと等により、前期比65.4%増の15,526百万円となりました。
当社単体の土木工事の受注高は、国内官公庁工事及び海外工事が減少しましたが、国内民間工事が増加したことにより、前期比10,819百万円増加(11.1%増)の107,886百万円となりました。
ロ 建築事業
当セグメントの売上高は、前期比8.4%増の240,856百万円となり、セグメント利益は、完成工事総利益率が低下したこと等により、前期比43.0%減の7,832百万円となりました。
当社単体の建築工事の受注高は、国内民間工事及び海外工事が減少しましたが、国内官公庁工事が増加したことにより、前期比9,891百万円増加(4.1%増)の253,127百万円となりました。
ハ 開発・不動産事業等
当セグメントは、主にグループ保有不動産の販売及び賃貸収入により構成されております。当セグメントの売上高は、前期比3.1%増の9,862百万円となり、セグメント利益は前期比8.4%増の1,964百万円となりました。
当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
当連結会計年度末の資産は、投資有価証券が減少しましたが、現金預金や受取手形・完成工事未収入金等、有形固定資産が増加したことから、前連結会計年度末と比較して30,718百万円増加(6.6%増)の497,045百万円となりました。
負債は、短期借入金や支払手形・工事未払金等が減少しましたが、社債やコマーシャル・ペーパー、預り金が増加したことから、前連結会計年度末と比較して30,762百万円増加(11.5%増)の297,757百万円となりました。
純資産は、利益剰余金が増加しましたが、その他有価証券評価差額金等が減少したことから、前連結会計年度末と比較して44百万円減少(0.02%減)の199,287百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して2.7ポイント減少し、39.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して14,985百万円増加(47.6%増)の46,459百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が25,435百万円となり、売上債権の増加や仕入債務の減少、法人税の支払等により資金が減少しましたが、預り金や未成工事受入金の増加等により資金が増加し、14,120百万円の収入超過(前連結会計年度は15,882百万円の支出超過)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却や貸付金の回収等により資金が増加しましたが、有形固定資産の取得等により資金が減少し、20,147百万円の支出超過(前連結会計年度は23,633百万円の支出超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や従業員預り金の減少、配当金の支払等により資金が減少しましたが、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等により資金が増加し、20,952百万円の収入超過(前連結会計年度は38,555百万円の収入超過)となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び不動産事業等では、生産実績を定義することが困難であり、建設事業においては、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態に即しておりません。
また、当社グループにおいては、建設事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって、受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
イ 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に変更があったものについては、当期受注工事高にその増減額を含めて表示しております。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は、(当期完成工事高+次期繰越工事施工高-前期繰越工事施工高)に一致します。
4 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、第82期 3.3%、第83期 △0.4%であります。
5 受注工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第82期 請負金額100億円以上の主なもの
第83期 請負金額100億円以上の主なもの
ロ 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は特命と競争に大別され、その比率は次のとおりであります。
(注) 百分比は請負金額比であります。
ハ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第82期 請負金額100億円以上の主なもの
第83期 請負金額100億円以上の主なもの
3 完成工事高に対する割合が100分の10以上の相手先は、次のとおりであります。
ニ 手持工事高
(2020年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
請負金額100億円以上の主なもの
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2020」に基づく当連結会計年度業績計画の達成状況及び前期比較の分析は次のとおりであります。
建設事業受注高は、前期比280億円増加(8.1%増)、期首計画比60億円増加(1.6%増)の3,760億円となりました。海外土木工事の新規受注がなかったものの、国内土木工事(トンネルや土地造成などを中心に受注)及び国内建築工事(再開発ビルや商業施設、物流施設などを中心に受注)が好調であったことが受注増の主な要因であります。
売上高は、2期連続の増収となり、前期比423億円増加(12.1%増)、期首計画比166億円増加(4.4%増)の3,916億円となりました。土木工事、建築工事ともに大型工事が順調に進捗したこと等により完成工事高が増加したことが増収の主な要因であります。
営業利益は、前期比3億円増加(1.5%増)、期首計画比3億円増加(1.3%増)の253億円となり、営業利益率は前期の7.1%から6.5%へと若干低下しました。売上高の増加と比較して営業利益の増加が少なかったのは、国内土木工事の売上総利益率が16.9%、海外土木工事の売上総利益率が12.2%と高水準であったものの、国内建築の売上総利益率が前期比3.5ポイント減少の7.3%となったことが主な要因であります(売上総利益率はいずれも当社単体の数値であります。)。
当連結会計年度において、中期経営計画2020の目標とする経営指標である「連結売上高3,800億円」「営業利益250億円」「ROE8.0%以上」を1年前倒しで達成しました。新型コロナウイルス感染症の影響等を鑑みれば、当連結会計年度の経営成績はまずまずの結果であったと考えております。
ロ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度末の財政状態の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前期末と比較して307億円増加(6.6%増)の4,970億円となり、2期連続の増加となりました。これは、連結売上高が前期比423億円増加(12.1%増)したことに伴い受取手形・完成工事未収入金等の売上債権が225億円増加したことに加え、開発・不動産事業を中心に269億円の設備投資を実施したことが主な要因であります。そのため、有利子負債残高は前期末と比較して357億円増加(41.5%増)の1,219億円(D/Eレシオ0.6倍)となり、2期連続の大幅増加となりました。
次期につきましては、開発・不動産事業を中心に220億円を設備投資する計画としております。この設備投資が計画どおり進んだ場合には、期末の有利子負債は1,200億円(D/Eレシオ0.6倍程度)となる見込みであります。
自己資本比率は39.6%となり、前期から2.7ポイント減少しました。これは、その他有価証券評価差額金の減少等により純資産が前期末比で微減したこと、上記のとおり総資産が307億円増加(6.6%増)したことが主な要因であります。
ハ セグメント情報に記載された区分ごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、セグメント情報に記載された区分ごとに資産及び負債を配分していないため、セグメント別の財政状態の分析・検討は記載しておりません。
セグメント情報に記載された区分ごとの経営成績等の状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2020」に基づく当事業年度業績計画の達成状況は次のとおりであります。なお、当社グループの受注高、売上高及び売上総利益(完成工事総利益・不動産事業等総利益)は、その大半を当社単体で占めていることから、以下の分析・検討は、いずれも当社単体の数値を記載しております。
(土木事業)
受注高は、期首計画比で71億円減少(6.2%減)の1,078億円となりました。これは、国内民間工事が好調であったものの、海外工事の新規受注がなかったことが主な要因であります。工事種別でみると鉄道が前期比で増加し、土地造成は前期比でほぼ横ばい、道路が前期比で減少となりました。
売上高は、期首計画比で66億円増加(5.0%増)の1,396億円となりました。これは国内、海外ともに大型工事が順調に進捗したためであります。
完成工事総利益は、期首計画比で46億円増加(25.3%増)の229億円となりました。これは国内の大型工事が順調に進捗したことに加え、一部工事において設計変更が確定したこと等によるものです。この結果、完成工事総利益率についても期首計画比2.6ポイント増加の16.4%となりました。
(建築事業)
受注高は、期首計画比で81億円増加(3.3%増)の2,531億円となりました。これは、前期に引き続き国内民間工事を中心に川上営業による計画受注を推進したことによるものです。特に国内において100億円以上の大型工事を6件受注しております。工事種別でみると事務所ビルや商業施設、物流施設などが前期比で増加となりました。
売上高は、期首計画比55億円増加(2.5%増)の2,275億円となりました。これは国内の大型工事を含め多くの工事が順調に進捗したこと等によるものです。
完成工事総利益は、期首計画比で51億円減少(23.8%減)の164億円となりました。これは、期首手持工事の中に低採算の大型工事が複数あり、これらの工事の利益回復が計画に届かなかったこと等によるものです。この結果、完成工事総利益率は、期首計画比2.5ポイント減少の7.2%となりました。
(開発・不動産事業等)
売上高は、期首計画比で20億円増加(25.0%増)の100億円となりました。また不動産事業等総利益は、期首計画比で6億円増加(25.3%増)の30億円となりました。
なお、当事業年度において、賃貸事業用の土地・建物の取得及び自社開発物件の建設等に200億円を投資しました。賃貸事業用の土地・建物のうち主なものは、「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況」に記載のとおりであります。
ニ 経営成績等に重要な影響を与える要因の分析
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える主な要因は、景気動向に伴う建設市場の動向、資材価格の変動及び建設技能労働者確保の状況であります。
国内経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の帰趨や内外経済へ与える影響の大きさ・期間など、不確実性の高い状況が続くものと予想されます。国内建設市場は、政府建設投資については当連結会計年度と同水準で推移すると予想されるものの、民間建設投資については本感染症拡大による影響を受けるものと予想されます。また、建設資材・建設技能労働者等の需給動向は引き続き留意が必要な状況にあり、懸念要素の残る経営環境となっております。
これらの要因に対処しつつ、持続的な成長を遂げるため、当社グループは、2018年度に策定した「西松-Vision2027」及び「中期経営計画2020」に掲げる各種施策に取り組んでおります。
ホ 目標とする経営指標の達成状況
当社グループは、2018年度を初年度とする「中期経営計画2020」において、「連結売上高3,800億円」「営業利益250億円」「ROE8.0%以上」「自己資本比率50.0%程度」「D/Eレシオ0.3倍程度」を目標とする経営指標として掲げ、この達成に向けて各種施策に取り組んでおります。
2年目である当連結会計年度の業績達成状況は「イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。また、自己資本比率及びD/Eレシオの達成状況は「② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要は、主として、土木事業及び建築事業に係る材料費、労務費、外注費、経費及び営業費用としての一般管理費等の運転資金と、開発・不動産事業等に係る固定資産の購入、改修費用等の設備投資資金であります。
当社グループは2018年度に10年後の将来を見据えた「西松-Vision2027」を策定いたしました。「西松-Vision2027」では、1,000億円を人財や事業領域の拡大、建設事業の進化など、将来のための成長投資に回すとともに、1,200億円をストックビジネス強化のため、開発・不動産事業を中心とした価値の高い事業創出に投資し、安定的収益基盤を強化してまいります。
これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による調達で対応していくこととしております。
手許の運転資金については、子会社も含めたグループ全体としての余剰資金の管理に努め、資本効率の向上を図っております。また、機動的な資金調達を目的として主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えております。
キャッシュ・フローの状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。次期につきましては、当期のような売上高の大幅な増加に伴う売上債権の増加や、協力業者への支払条件の緩和による仕入債務の減少は見込まれておりません。工事の立替資金の回収を図り、営業活動によるキャッシュ・フローの改善に努めてまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりですが、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
(完成工事高及び完成工事原価の計上及び工事損失引当金の計上)
成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗度の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しております。工事進行基準の適用にあたり、①工事収益総額、②工事原価総額、③決算日における工事進捗度のそれぞれについて、個別の工事契約ごとに信頼性をもった見積りを行うことが前提となっております。また、工事損失引当金の計上にあたっても、将来発生する損失額は、前記の3つの要素により見積りを行っております。このため、見積りにあたって仮定した個別の工事契約ごとの諸条件と異なる事象が発生した場合、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
(固定資産の減損)
収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった資産又は資産グループについては、固定資産の帳簿価額を回収可能額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。事業計画、市場環境、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件をもとに減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定を実施しておりますので、これらの前提条件に変更が生じた場合、減損処理が必要となり、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
該当事項はありません。
当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。
(土木事業・建築事業)
当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。
当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は
② リアルタイムにトンネル断面形状管理と地山評価ができる掘削支援システムを開発
③ 梁端部で接合を可能とするプレキャスト構法を開発
鉄筋コンクリート造建物のプレキャスト施工の更なる合理化を目的として、静岡理工科大学と共同研究を行い「ヒンジリロケーション構法」を開発しました。ヒンジリロケーション技術により、プレキャスト化した柱梁接合部から突き出す鉄筋の長さを短くすることが可能となります。これまで工場から運搬できなかった中柱の柱梁接合部もプレキャスト化が可能となり、生産性の向上に寄与します。
③ RC床ひび割れマップの作成を自動化
RC床ひび割れマップの作成を自動化するため、屋内で自律飛行できるUAVを自律制御システム研究所と共同開発しました。非GPS環境である屋内において、自己位置を検出するための特殊なセンサーを搭載したUAVによりRC床面を自動で撮影し、それを人工知能で解析して、ひび割れマップを自動作成する技術です。従来、人が床を目視観察してスケッチしていた作業を機械化・自動化することで、品質向上と省力化が期待できます。
② オンサイトで砒素を含有する掘削ずりを浄化する技術
① 下水汚泥焼却灰から肥料用のリンを高効率で回収する技術を開発
東大発の無線通信ベンチャー企業であるソナス株式会社が独自に開発したマルチホップ型LPWA「UNISONet Leap(ユニゾネット リープ)」を搭載した構造物モニタリングシステムの有効性を確認しました。この新しいLPWA通信は省電力広域無線でありながら、主要なLPWAと比較して高速かつ安定した通信が可能で、高精度な振動計測データをロスなく収集することが可能です。設置が容易でコストも大幅に削減できるため、構造物の老朽化や点検技術者の不足に悩む建設業界において新たな防災・減災の手段として注目されております。
(開発・不動産事業等)
研究開発活動は特段行っておりません。