第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、永続的発展のため、ひたむきに人を大切にしたものづくりに努め、国際競争を勝ち抜く、強い企業創りを目指しております。

その実現のため、経営理念に“愛され信頼される企業に”を第一に掲げ、コンプライアンスに徹し、真摯で誠実な企業活動を旨として、品質第一主義と弛まざる技術革新で顧客満足を希求するとともに、地域社会との共存共栄を図ってまいります。さらに企業の社会的責任の視点に立って、環境と社会に貢献し、向上心あふれる働きがいのある会社づくりに励み、企業価値を高めてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

① 2025年度までに、営業利益40億円、ROE5%の収益を確保します。

② 製造工程における化石燃料由来のCO₂排出量を2030年度までに2013年度比50%削減することを目標として掲げ、達成に向けて取り組んでまいります。

 

(3) 会社の経営戦略

当社グループは、2030年に目指す姿を「ビジョン2030」として掲げており、既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通した循環型社会の構築と、持続可能な未来の実現に取り組みます。またカーボンニュートラル社会の実現に向けて、事業活動におけるCO₂排出量削減の新たな目標に向けた取り組みを進めています。

「ビジョン2030」の実現に向けて、「既存事業の構造転換」「森林資源を活用した環境投資・環境ビジネス推進」を柱とした「中期経営計画2025」の取り組みを進めています。

「既存事業の構造転換」では、グラフィック用紙の需要減少への対応として高岡工場6号抄紙機の停機による印刷情報用紙の生産集約を図ります。また、コロナ禍で高まった家庭紙分野の需要は今後成長が期待できる分野であることから家庭紙分野へ新規参入します。さらに事業領域拡大としてパルプの増産、販売強化に取り組みます。グループ事業においては、他社商権の譲受による販路拡大、文具事業の整理など選択と集中による収益力の強化を目指します。

「森林資源を活用した環境投資・環境ビジネスの推進」においては、新素材CNF実用化の加速や、脱プラスチックへの対応として新素材マプカを製造する中越エコプロダクツ事業の早期事業化を目指します。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、新たなバイオマス発電設備の設置、既存ボイラーの脱石炭、植林事業の検討を進めます。

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社グループを取り巻く経済環境は、緊迫化する中東情勢、長期化するロシア・ウクライナ情勢等の海外要因に加え、人手不足を受けての人件費の上昇、物流の2024年問題への対応、円安等によるコスト増加により厳しい環境が想定されるとともに、国内紙需要は更なる減少が見込まれております。

このような状況下、以下の諸施策に取り組んでまいります。

 

 

① 収益基盤の強化

収益基盤拡充のため、引き続き以下に取り組んでまいります。

・販売強化の取り組み

新規販路の開拓に取り組むとともに、状況に応じた有利品種への置き換えによる販売製品の最適な構成を追求し、収益確保に努めます。

・原材料調達コストの低減

引き続き、海外産木材チップと比べ価格的に優位である国内産木材チップの集荷を増やし、製造工程で使用する諸資材の原価低減に努めます。

・安定操業と製造コストの削減

安定操業により収益基盤を確保するとともに、操業効率の改善により、製造コストの圧縮に努めます。

 

② 中期経営計画の取り組み

当社グループは、2030年に目指す姿を掲げた「ビジョン2030」と、その実現のために収益目標と環境目標を定めた「中期経営計画2025」を推進しております。

・既存事業の構造転換

主にグラフィック用紙を生産していた高岡工場6号抄紙機の跡地に家庭紙の抄紙機を新設し、2024年2月に営業運転を開始しました。新設した家庭紙抄紙機は、年間約22,000tの生産能力を有しており、ティシュ・タオルペーパー・トイレットペーパーの原紙を生産・販売する予定です。早期に安定操業を確立し、競争力のある原紙を供給できる体制を整えていきます。

外販パルプについては生産体制の強化、新規需要の取り込みを図り、2023年度は「中期経営計画2025」計画期間前の2020年度比で大幅な増産・増販となりました。

・森林資源を活用した環境投資・環境ビジネス推進

セルロースナノファイバー事業については、化粧品用途向けの原料の販売を開始しました。また、植物向けの新たな物理的防除資材に関する取り組みが、農林水産省「みどりの食料システム戦略に基づく基盤確立事業実施計画」に認定されました。現在当社のCNFの独自性を活かし、養鶏・農業資材用途や、樹脂・ゴム・再生プラスチック分野への展開を進めており、売上規模の拡大に向けて取り組んでまいります。

 

③ サステナビリティの取り組み

当社グループは「ビジョン2030」に掲げた「既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通じた循環型社会の構築と持続可能な未来を実現する」ために、サステナビリティ活動を推進しております。

 

a.気候変動対応

・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、提言に沿って事業への影響の分析を行い、重要なリスク・機会を開示しております。また製造工程における化石燃料由来のCO₂排出量を2030年度までに50%削減(2013年度比)を目標として掲げております。

・2024年度にGXリーグに新規参画し、今後GHG排出量削減やサプライチェーンでの取り組み、グリーン市場創出に向けた取り組みを進めてまいります。

・港湾・臨海部を脱炭素化する「カーボンニュートラルポート」形成に向けた港湾脱炭素化推進協議会が立ち上げられ、川内工場は川内港(鹿児島県薩摩川内市)、高岡工場と二塚製造部は伏木富山港(富山県高岡市)の協議会への参加を表明し、今後取り組みを進めてまいります。

 

b.人的資本への取り組み

「人材育成に関する方針」「社内環境整備に関する方針」を定め、2033年3月までに管理職に占める女性労働者・中途採用者の合計割合を25%以上、2026年3月までに育児休業取得率を男女ともに100%とする目標を設定し、取り組みを進めております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1. ガバナンス

当社グループでは気候変動対応を重要課題の一つとして捉えており、気候変動対応を含む環境全般を管掌する環境管理担当取締役の下、環境管理統括部を事務局とし組織横断的なメンバーで構成される気候変動対応推進グループを2022年6月に設置しました。環境管理担当取締役は気候変動対応の責任者として、グループ会社を含めた全社の気候関連問題を管理しています。重要事項は常務会及び取締役会へ付議・報告し、取締役会による全体的な監督を受けています。

 


 

 

2. 戦略

 (1) 気候変動に関する戦略

当社グループは、気候変動に関する複数のシナリオを用いて当社の戦略に与えるリスクと機会の影響を分析し、気候関連リスク・機会による事業への影響を評価し、その結果を気候変動戦略として事業戦略に反映することで、気候関連リスクへの対応を進め、また気候関連の機会実現を図っています。当社グループにおける事業戦略への影響または財務的影響をもとに算出した重要なリスク・機会項目は以下のとおりです。

 


 

 (2) 人的資本の取り組み

当社では経営理念として「愛され信頼される企業に」「環境と社会に貢献する企業に」「向上心あふれる働きがいのある会社に」を示し、永続的に発展していくために、ひたむきに人を大切にしたものづくりに努め、強い企業づくりを目指しております。

人材は創造性を発揮し企業価値を高める源泉であり、当社のビジョン2030で示した「既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通した循環型社会の構築と持続可能な未来を実現する」ために、多様な人材の確保と教育や環境の整備を進めております。

 

 ①人材育成に関する方針

「人・もの・心」を大切にする人材育成を行い、森林資源の有効利用を通じた循環型社会を構築し、持続可能な未来を実現して参ります。いかなる情勢の変化にも対応し、リスクを吸収できる創造力豊かな人材を育てるため人的資本への投資を行っております。

具体的には、採用した人材に職位・職能毎に必要なスキル・知識を身につけさせる研修制度だけでなく、担当職場での収益改善提案等の論文研修、従業員の自己啓発のための様々な通信教育コースの提供と受講料の一部負担、会社が選定した資格の取得者へ報奨金の支給を行っております。

 

 

 ②社内環境整備に関する方針

継続的に企業価値を向上するためには、多様な人材を確保すること、従業員の個性と能力を十分に発揮できる職場環境を整えていくことが重要な課題と捉えております。

人材の多様性により、様々な視点やアイデアが生まれ、業務の改善や新たな収益基盤創造の可能性が高まると考えております。

労働者不足の対応の観点からも、性別や年齢などに関係なく様々な人材が活躍できる環境や仕組みを整備し、人材が意欲をもって活躍できる生き生きとした組織の構築を進めて行きます。

優秀な人材を確保するため、新卒を対象とした定期採用に加え、即戦力として期待できる中途採用も積極的に行っております。

従業員一人ひとりが働きがいを持って能力を十分に発揮できる様、年に一度、自己申告表(自己評価・希望職場や勤務地・健康状態・今後1年間の目標・会社への要望等を記載)を上司に提出し、上司は部下の1年間の評価表を作成・提示し、部下との1対1での面接で状況の把握と今後1年の目標のすり合わせ等を行っております。

 

  a.安全安心な職場づくりについて

企業価値の向上の大前提には従業員が健やかに働く環境の形成があります。

無事故・無災害を目標に一人ひとりが強い意識を持ち、築き育む安全職場を目指しております。毎月、安全衛生に関する会議の開催と職場パトロールを実施し、労働災害の防止と健康の保持増進を図るとともに快適な職場環境の形成を促進しております。

コンプライアンスミーティングを毎月各職場で行い、ハラスメントは勿論、社会問題になっている案件を各職場で話し合っております。その討議内容・問題点と改善策を内部統制委員が取り纏めた上で内部監査室に報告し、内部監査室長は必要に応じ内部統制委員会で報告するとともに水平展開を図ることで、風通しの良い職場づくりを行っております。また、内部通報制度を設け、コンプライアンス経営の強化を図っております。

毎年、春の健康診断に合わせてストレスチェックを実施し、分析結果は個人が特定されないように各職場の上長にフィードバックされ、健康リスク指数が全国平均を上回る場合は低減させる対策を計画・実施しており、健康リスク指数は安定しております。また、高ストレスと判定された社員本人からの申し出があれば産業医の面談を実施しております。健康診断の受診率は、再検査の2次検診も含め100%となっております。

当社は2008年から社長自らが「健康企業中パ」を宣言し、会社・労働組合・健康保険組合が三位一体となって「健康経営」を推進しております。

 

  b.労働時間について

当社では組合員の1か月の時間外労働を法定時間(45時間)を下回る35時間以下とする労使協定を取り交わし、過重労働の防止に努めております。

また、コアタイムの無いフレックスタイム制度を導入し、柔軟な働き方を促進しております。

更に、毎月全従業員の時間外労働を確認し、80時間/月以上の長時間勤務者に対し産業医との個別面談を設定し、会社側は産業医のアドバイスに基づき早急に対処するなど、会社と産業医が連携し従業員を支援しております。

 

  c.ワークライフバランスについて

ワークライフバランスの充実のため、年次有給休暇の取得を奨励し、その取得率は80%程度で推移しております。また、年休取得の推進として、ゴールデンウィーク、年末年始などの大型連休や飛び石連休の合間の平日の一部を年休奨励日として設定し、長期の連休取得を可能にすることにより、心身ともにリフレッシュし労働生産性の向上を図っております。

 

 

  d.女性活躍の推進について

当社の女性従業員は、家族的な企業風土により、勤続年数は長く、育児休業取得率は100%で推移し、長期的なキャリアを形成しております。

直近5年以内に採用した総合職の約3割を女性が占めており、管理者としての育成を行い、本人の能力や適性を評価した上で、管理職として登用を進めて参ります。

男女間の賃金の公正性・公平性は、各個人の能力・資質に応じた平等性の観点から評価しております。

 

  e.中途採用について

採用環境は、労働人口の減少、コロナ禍からの景気回復に伴う求人の大幅な拡大により、厳しさを増しております。この環境下でも人材の流動性が一定量あることから、操業維持のために中途採用を進めていくことが重要となっております。また、中途採用者には、前職で培ったスキルやノウハウを生かし、新しい視点で当社の組織活性化・生産性向上などへの貢献を期待しております。

 

  f.高齢者雇用について

2025年4月から65歳までの定年延長若しくは定年の廃止、又は65歳までの継続雇用の義務化がなされます。

当社は2013年に再雇用制度を導入しておりますが、労使で定年延長制度を検討し、2024年4月に定年を60歳から65歳へ引き上げております。生産労働人口が減少する中、働く意欲のある高齢者を継続雇用することで組織パフォーマンスの維持を図っております。

 

3. リスク管理

気候変動対応推進グループ内の各施設・部門において、気候関連リスクの識別、評価を行います。事務局である環境管理統括部がリスクの管理と低減を指示・推進し、取り組み状況を環境管理担当取締役へ報告します。重要なリスクは環境保全委員会及び環境監査委員会に報告されます。環境管理担当取締役は常務会へ年1回以上報告を行い、結果は全社のリスク・マネジメントプロセスへ統合されます。事業存続に大きく関わる重要なリスクは取締役会に付議・報告し対処していきます。

 


 

 

4. 指標及び目標

 (1) 気候変動

カーボンニュートラル社会の実現に向け、気候関連リスク・機会を評価する指標としてScope1,2排出量の削減を実施すべく製造工程における化石燃料由来のCO₂排出量を2030年度までに2013年度比50%削減する目標を中期経営計画にて掲げております。

 

化石燃料由来の

CO₂排出量
[千t-CO₂]

2013年度
基準排出量

2022年度
実績排出量

削減割合
[%]

2030年度
目標排出量

削減割合
[%]

411

282

31.3

205

50.0

 

※化石燃料由来のCO₂排出量は、中越パルプ工業株式会社単体の排出量です。

 

GHG排出量
[千t-CO₂eq]

2022年度
Scope1排出量

2022年度
Scope2排出量

473

59

 

※GHG排出量は中越パルプ工業グループ全体の排出量です。

 

 (2) 人材育成

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標について、連結グループに属する全ての会社での記載が困難なため、当社における指標と目標および実績について記載いたします。

 

指標

目標

実績
(当連結会計年度)

補足説明

管理職に占める
女性労働者の割合

2033年3月まで25

4.0%

多様性を進める具体的な目標として、2033年3月までに管理職に占める女性と中途採用の合計割合を25%以上としております。

管理職に占める
中途採用者の割合

2033年3月まで25

11.2%

女性育児休業取得率

2026年3月まで100

100.0%

女性の育児休業取得率100%を維持しつつ、男性の取得率100%を目標といたします。

男性育児休業取得率

2026年3月まで100

38.5%

育児休業取得率

2026年3月まで100

42.9%

労働者の男女の賃金差異

69.8%

交替手当や深夜勤務手当のある3交替現場に女性を配属していないこと、女性管理職が少ないことが男性比で賃金が低い要因です。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 国内需要及び市況の変動リスク

当社グループの売上高の8割を占める紙・パルプ製造事業は概ね内需型産業であり、国内景気の影響を大きく受けます。国内景気の浮沈による国内需要の動向や市況価格の変動により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。紙の国内需要については既に減少傾向にあり、当該リスクへの対応を喫緊の課題として認識して、「中期経営計画2025」で既存事業の構造転換を計画し、家庭紙分野への新規参入やパルプの増産、販売強化に取り組んでおります。

② 原材料購入価格の変動リスク

当社グループはチップ、重油、古紙、薬品などの諸原燃材料を購入しておりますが、それぞれの国際市況、国内市況の変動により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 地球環境に対するリスク

当社グループは、気候変動対策を目的に、化石燃料使用の規制強化やそれに伴うコストの増加、紙をつくる上で、重要な原材料である木材の持続可能ではない調達の規制強化により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 地域環境汚染に対するリスク

当社グループは、環境規制遵守ができないことによる環境保護に関する風評リスク(地域社会との関係悪化に伴う反対運動の発生など)により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 為替レートの変動リスク

当社グループは輸出入取引をしており、このため当該国との取引通貨が為替変動することにより、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 金利の変動リスク

当社グループは、従来よりグループファイナンスによる資金の効率化に取り組んでおりますが、今後の金利の変動によっては経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 災害リスク

天変地異などの自然災害、テロなどの人的災害などによって、当社グループの生産設備に多大な被害を被ることにより、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応としてBCP(事業継続計画)を策定しております。

⑧ 新型コロナウイルス感染症のリスク

世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大影響による需要減少、当社グループの従業員が新型コロナウイルスに感染した場合や、政府・地域行政機関からの要請等により、生産活動を一時的に停止した場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。拡大する感染症への対策として、当社グループでは新型コロナウイルスの拡散防止と社員の健康・安全・雇用確保を最優先に、国内拠点の一部において在宅勤務を推進しております。工場での生産活動につきましては、政府や地域行政機関の方針に従い、感染防止に留意しながら稼働を継続しております。また、中越エコプロダクツ事業において、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、スケジュールが大幅に遅れておりますが、製造設備の早期営業運転を目指して取り組んでおります。

⑨ 訴訟リスク

当社グループの事業活動の遂行に当たっては、様々な法規制の適用下にあって、それらによる訴訟等のリスクにさらされる可能性があり、その結果、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 偶発債務

当社グループは、上記以外の項目に関しても偶発債務に起因する損失が発生するリスクがあり、その結果、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループを取り巻く経済環境は、新型コロナウイルス感染症の行動制限撤廃によるインバウンド需要の増加、人流の回復による個人消費の持ち直しなどから社会経済活動の正常化が進み、緩やかな景気回復の動きが見られました。

一方、中東情勢の緊迫化、原材料・エネルギー価格の高止まり、円安の進行、物価上昇など、依然として先行きは不透明な状況が続いております。

このような状況のなか当社グループは、製品価格の改定、パルプ販売増に加え、紙・パルプ製造事業の生産体制再構築や工場の安定操業に取り組みました。

紙・パルプ製造事業の生産体制再構築として着手しておりました新規家庭紙抄紙機につきましては、2024年2月に営業運転を開始し、家庭紙事業への新規参入を果たしました。

当期の経営成績につきましては、製品価格改定や減産下での効率操業などの取り組みにより、前期と比較し、増収・増益となりました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は107,826百万円(前年同期比2.0%増収)となり、営業利益は6,172百万円(前年同期比137.9%増益)、経常利益は6,820百万円(前年同期比100.7%増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,701百万円(前年同期比21.3%増益)となりました。

 

事業の種類別セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 

(紙・パルプ製造事業)

◎ 新聞用紙

新聞社における夕刊の休止、また発行部数及び頁数の減少による全体的な需要減に歯止めがかからず、数量は前期を下回りました。金額は価格改定が寄与して前期を上回りました。

 

◎ 印刷用紙

国内販売につきましては、コロナ禍で落ち込んでいた経済活動は正常化したものの、チラシ関連・書籍関連を中心にデジタル化の進行もあり数量は前期を下回りました。輸出につきましては、東南アジアを中心とした需要減退及び海外メーカーの販売攻勢により、数量は前期を下回りました。金額は価格改定が寄与したものの、販売数量減少を補えず前期を下回りました。

 

◎ 包装用紙

国内販売につきましては、自動車関連は回復基調にありましたが紙袋の需要回復には至らず、石油化学関連、合成樹脂関連の落ち込みが影響し、数量は前期を下回りました。輸出につきましては、海外市況の悪化により前期を下回りました。金額は販売数量減少があったものの、価格改定が寄与して前期を上回りました。

 

◎ 特殊紙・板紙及び加工品等

壁紙は堅調に推移し前期並の数量を確保しました。加工用途は輸出が落ち込んだ影響により全体数量は減少しましたが、価格改定が寄与して金額は前期を上回りました。

 

 

◎ パルプ

高岡工場6号抄紙機を2022年9月末に停止し外販パルプの販売を増やした影響などにより数量は前期を上回りましたが、前期の世界的なパルプ市況急騰の鎮静化により金額は前期を下回りました。

これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 

連結売上高   96,826百万円(前年同期比   2.7%増収)

連結営業利益   5,512百万円(前年同期比 256.2%増益)

 

(発電事業)

売電単価の価格改定を行ったことにより売上高は前期を下回り、減益となりました。

これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 

連結売上高   7,039百万円(前年同期比  4.1%減収

連結営業利益    410百万円(前年同期比 49.1%減益

 

(その他)

工場の定期点検停止等の影響で紙断裁選別包装・紙運送事業の取扱量は減少しましたが、設備設計施工関連事業等の受注が増加したことなどにより売上高は前期を上回りました。利益については、設備設計施工関連事業等の受注増に加え人件費などの経費低減により増益となりました。

これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 

連結売上高   17,036百万円(前年同期比   2.9%増収)

連結営業利益    279百万円(前年同期比 147.9%増益

 

財政状態は、次のとおりであります。

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ6,171百万円増加し、128,923百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,203百万円増加し、73,322百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,967百万円増加し、55,601百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,560百万円増加し、10,670百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は13,564百万円(前連結会計年度比409.4%増加)となりました。

これは主として、税金等調整前当期純利益5,022百万円、減価償却費5,926百万円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は7,905百万円(前連結会計年度比54.3%増加)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出8,036百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は3,102百万円(前連結会計年度比35.3%減少)となりました。

これは主として、長期借入れによる収入5,200百万円、短期借入金の純増減額429百万円による収入、長期借入金の返済による支出7,925百万円、配当金の支払額773百万円によるものです。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称等

数量

前年同期比(%)

紙・パルプ製造事業

583,835 t

89.1

パルプ

712,911 t

93.8

 

(注) パルプは未晒総生産量であり自家消費量を含んでおります。

 

b. 受注実績

当社グループは、大部分が市況を勘案した見込み生産を行っており、グループ全体の受注状況を把握することは困難であるため、該当事項については記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称等

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・パルプ製造事業

84,587

104.4

パルプ

12,239

96.3

96,826

103.3

発電事業

 

7,039

95.9

その他

3,959

86.6

合計

107,826

102.0

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

新生紙パルプ商事㈱

20,557

19.5

19,862

18.4

国際紙パルプ商事㈱

15,281

14.5

16,680

15.5

日本紙パルプ商事㈱

16,456

15.6

16,355

15.2

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績等は、製品価格の改定などにより、売上高は107,826百万円と前期に比べ2,158百万円の増収(前年同期比2.0%増)となりました。収益面では、製品価格の改定や減産下での効率操業などの取り組みにより、営業利益6,172百万円(前年同期比137.9%増)、経常利益6,820百万円(前年同期比100.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,701百万円(前年同期比21.3%増)となりました。

セグメント別の売上高については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

2025年3月期の国内経済につきましては、緊迫化する中東情勢、長期化するロシア・ウクライナ情勢等の海外要因に加え、人手不足を受けての人件費の上昇、物流2024年問題への対応、円安等によるコスト増加により厳しい環境が想定されるとともに、国内紙需要は更なる減少が見込まれております。

このような状況下、今までに築き上げた収益基盤の保持・拡充を図るとともに、最適工場操業による最高効率、最高原単位を追求することにより収益基盤の更なる強化に努めてまいります。また、『中期経営計画2025』に掲げた「既存事業の構造転換」として新設した家庭紙抄紙機の早期の収益貢献、「環境投資・環境ビジネスの推進」として当社の独自性を活かしたnanoforest®の用途拡大等を推進するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向け、化石燃料の削減や省エネ対策の実施、植林事業推進に引き続き取り組んでまいります。

 

 

⑤ 財政状態及びキャッシュ・フローの分析

当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ5.0%増加し、128,923百万円となりました。これは主として、現金及び預金が2,560百万円、家庭紙抄紙機設置工事等により有形固定資産が2,071百万円増加したこと等によります。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べ3.1%増加し、73,322百万円となりました。これは主として、金融機関からの借入金は2,295百万円減少しましたが、支払手形及び買掛金が2,095百万円、その他流動負債が1,601百万円増加したことによります。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ7.7%増加し、55,601百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益3,701百万円、配当金の支払777百万円などにより利益剰余金が2,924百万円増加したことによります。また自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.1ポイント増加し43.1%となりました。

当社グループのキャッシュ・フローにつきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

当社グループの資金計画は、設備投資資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としておりますが、銀行借入やコミットメントラインの利用などによって流動性を保持しております。

また、当社グループはCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金融通を行うことで資金効率を高めております。

当社グループの当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度末に比べ2,560百万円増加し、10,670百万円となりました。

なお、当連結会計年度末の金融機関からの借入金の内訳は以下のとおりであります。

                                           (単位:百万円)

 

合計

 返済
 1年以内

返済
1年超

短期借入金

18,830

18,830

長期借入金

22,807

5,944

16,862

合計

41,637

24,774

16,862

 

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループは、常に市場ニーズに密着し、創造的で信頼性の高い技術をもって、人と環境にやさしい「紙」の開発と安定した製品の供給により、経済・社会・文化の発展に寄与することを社会的使命と認識し「紙」の文化の創造に果敢に挑戦しております。

そして、「株主重視」「顧客重視」に心がけ、当社グループの総合力に対する信頼性と収益性の確保・向上を目指し、株主・顧客・地域社会・社員・企業の共存共栄を図るとともに、社会に対する貢献を重点に企業活動を行ってまいります。

また、グローバル化に対応し、迅速な情報開示に努め、透明な経営姿勢を保ち、加えて効率的な連結経営を行うことで、国際競争力の強化を図り、当社グループの存在価値を高めてまいります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでの研究開発は、社会に貢献し得る新素材・新製品の創製に努め、企業としての社会的責任を果たすことをコンセプトに、刻々と変わりゆく社会情勢にいち早く対応しながら進めています。

近年、多様性と包摂性への関心の高まりやデジタル技術の急速な普及と融合により、社会情勢は大きく変化し、様々な分野で変革が起こっています。また、気候変動は経済や社会に大きな影響を与え、持続可能でカーボンニュートラルな取り組みが求められています。こうした課題に対し、開発本部、生産本部、工場技術研究部門及び連結子会社技術研究部門といった社内での連携に加え、大学、研究機関、公設試、他業種の企業といった社外機関との連携も取り入れながら、技術と情報を供給し、研究開発を進めています。

当連結会計年度の研究開発費は444百万円でありましたが、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。

当社が現在注力している取組みとして、セルロースナノファイバー(CNF)、マプカ(MAPKA)の市場展開があります。また脱プラスチックを推進するため、紙、パルプの利用拡大に対しても全社的な取組みとして進めております。

具体的な研究開発活動は次のとおりであります。

 

1.紙製品への展開

(1) 環境対策新製品の開発

  ・機能性を持つ天然資源を活用した高付加価値製品の開発

(2) 現行品の品質改善

  ・特殊機能を付与した食品用途紙の開発

(3) 新規市場の開拓

  ・家庭紙分野への参入

  ・製造工程紙や緩衝材などの開発

 

2.天然資源の高度活用技術開発への展開

(1) セルロースナノファイバー(ナノフォレスト)の用途展開

  ・ナノ化及び樹脂化製造技術の更なる向上と、幅広い分野での用途開拓

  ・養鶏、農業、化粧品分野での利用拡大と拡販推進

  ・高機能CNFのサンプル提供拡大と製造技術の確立

(2) CO₂削減に貢献する、紙パウダーを主原料に合成樹脂を混合した非プラスチック素材マプカ(MAPKA)の

  市場展開

  ・成形材料開発及び製品のグレード開発、多くの分野への応用開発

(3) 新分野へのパルプの利用拡大

 

3.脱プラスチックへの取組

   ①プラスチック素材の性能を持つ紙の開発

   ②プラスチック材料を紙材料に置換

   ③プラスチック素材の一部に紙やパルプを配合し、プラスチック比率を低下

   ④プラスチック製品から紙製品への置換