第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針と経営戦略

当社グループは「ゴムからはじまる、未来がひろがる」を合言葉に、創業以来ものづくりで培った設計・試作・評価・量産のノウハウを集結させ、今までにない価値創造に挑戦し社会に提案し続ける企業、また、世界中のお客様や社会の声に真摯に耳を傾け、『安心』『安全』『快適』をお届けするグローバル企業を目指し、2021年2月24日発表の中期経営計画(2021年度-2023年度)を進めて参りました。

 

(2) 中期経営計画

中期経営計画(2021年度-2023年度)については、徹底した「原価低減活動」に加え、コア事業の収益拡大の「深化」と将来に向けた種まきの「新化」を中心に「体質強化」を目的とし、2023年度連結売上高 800億円、経常利益率 7%、ROE 8%、連結配当性向 30%を目標に掲げて参りました。新型コロナウイルスによる自動車生産の減少、ウクライナ情勢による資源高等がありましたが、下図の通り、経常利益率以外の目標値については達成いたしました。

 

 

売上高・各利益・ROE(連結)


 

現在、自動車産業は急速に電動化や自動運転などの次世代技術への移行が進んでおり、既存のビジネスモデルを超越した価値の創造が求められています。私たちはこの大きな変化をチャンスととらえ、より高い経営目標を達成するために、2023年6月28日「新中期経営計画2026」を策定致しました。

 

 

中期経営計画(2021年度-2023年度)で掲げた「体質強化」を着実に実行していくことで、前掲の通り、売上高と利益共に2023年度までの3年間は右肩上がりの成長を続けてきました。一方、営業利益においては計画とは程遠い水準にとどまっており、さらなる収益向上が必要であると考えております。長期的な視点に置きましては、フコク独自のコア技術で高付加価値製品・ソリューションを提供し続けることで「収益力のさらなる極大化」を狙います。今回の新中期経営計画は将来への飛躍的成長に向けた、ファーストステップとして位置付けております。具体的には、「既存事業の強化」と「成長事業・新事業の拡大」の事業戦略の両輪に加え、ESGを主体とした経営基盤の改革に取り組むことによって「収益力の最大化」を狙います。目標値については以下の通りです。

 

(目標値)2026年度:連結売上高 1,200億円、営業利益率 8%、ROE 12%

 

 


 

「新中期経営計画2026」において、事業戦略の両輪であります「既存事業の強化」と「成長事業・新事業の拡大」、ESGを主体とした経営基盤の改革についての詳細は以下の通りとなります。

 

①「既存事業の強化」の具体的実施項目としては、主に3つの方策を計画しております。1つ目が、既存の強い事業を、ソリューションビジネス化することにより、さらに強化すること。2つ目が、インド・インドネシアなどの強い成長地域へリソースを集中することで、稼ぐ力をさらに強化すること。3つ目が、これらの方策を力強く推進するための、ものづくり力の変革とグローバル人材育成のさらなる強化です。

 

②「成長事業・新事業の拡大」においては、今後特に成長が見込める3つの分野の積極的事業拡大を計画しております。1つ目は、ファクトリーオートメーション化で活躍するインダストリアル向け製品です。フコクの高い開発力で生み出した高性能材料を必要とする、半導体製造装置向けシール部品を拡大します。また、新エネルギー分野や航空・宇宙分野でも需要の掘り起こしに成功しており、新分野での拡大が期待されます。2つ目は、EV製品を中心としたCASE向け製品です。3つ目は、世界的に注目度が高まっているライフサイエンス製品になります。

 

 

③ESGを主体とした経営基盤の改革

 

ⅰ)環境への取組み(E)

当社は昨年度に環境負荷低減・脱炭素社会を実現するために「フコク環境目標」を設定しました。この目標を達成するための重点取組事項に沿って、製造工程廃棄物の削減とCO2の削減に向けて活動してまいります。また、TCFDへの賛同も宣言しており、TCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候変動リスクと機会が事業に与える影響を把握し、その影響に対する対応策も進めています。さらに、環境配慮型製品の開発についても積極的に取り組んでいます。

 

ⅱ)社会への取組み(S)

  ダイバーシティ&インクルージョンへの対応や働き甲斐のある環境づくりに積極的に取組んで行きます。

 

ⅲ)ガバナンスへの取組み(G)

コーポレートガバナンスやコンプライアンスの強化に取組み、さらに、組織風土改革として従来の発想から抜け出し、価値創造に貢献する風土の醸成を推進して行きます。

また、この度、創業70周年を節目として100年企業を目指してさらに飛躍するため、コーポレートスローガンを刷新しました。創業以来の企業スピリットである「Yes, We Do!」をベースに、ミッションである「あらゆる願いを、感動に変える」を頂点にビジョンとバリューをそれぞれ設定しました。

 

この目標を達成すべく全社一丸となって「既存事業の強化」と「成長事業・新事業の拡大」の事業戦略の両輪に加え、ESGを主体とした経営基盤の改革に取り組むことによって「収益力の最大化」を狙います。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

 ①基本方針

当社グループは、1953年の創業以来、「Yes, We Do!」の創業の精神の下、社会課題解決への貢献を念頭に置きながら、お客様の要望に真摯に向き合い、常に新しい価値を創造し持続的な成長を達成してきました。

2022年5月に「サステナビリティ基本方針」を制定し、地球環境や社会の様々な課題を解決し持続可能な世界の実現に貢献することを経営の最重要事項と捉え、サステナビリティ経営推進に取り組んでいます。

※サステナビリティ基本方針は下記URLをご参照下さい

https://www.fukoku-rubber.co.jp/sustainability.html

 

 ②重要課題(マテリアリティ)

ステークホルダーの皆さまからの期待や要請に応えるため、ステークホルダーにとっての重要度、当社グループにとっての重要度等を定性的に分析し、下記のとおり特に重要とされるマテリアリティを選定しました。重要課題を着実に解決していくため、各重要課題に対するKPI設定・実行計画策定を進め、また中期経営計画、各種方針やガイドラインに反映させて活動推進しております。

 

<フコクのマテリアリティ>

 


 

 ③ガバナンス

当社グループは、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置・運営し、委員会メンバーはESGの各重要課題の推進責任者として任命され、各種委員会や担当部門と連携しながら活動推進し、又、経営戦略室サステナビリティ推進課が全社の活動推進を担って取り組んでおります。サステナビリティ委員会では、経営課題として重要なサステナビリティに関するリスクと機会を特定し、マネジメントするため、実行計画の策定、当社グループ全体の活動推進、その進捗のモニタリング等を実行しております。その結果は、定期的に取締役会に報告され、取締役会ではその報告内容の管理及び監督を行っております。

2023年度は、サステナビリティ委員会を7回(年間計画4回)、取締役会報告を4回(年間計画4回)を実施しました。

 

 ④リスク管理

当社グループは、サステナビリティ委員会にてサステナビリティ課題におけるリスクのモニタリングや再評価、重要リスクの絞り込み等を行い、今後の戦略に反映しリスクに対応しております。

 

 ⑤指標及び目標

当社グループは、サステナビリティに関する重要課題、非財務指標を当社の経営計画に織りこんでおります。今後も当社グループは、ものづくりやサービスを通して世界中の皆様に安心・安全・快適を提供するため、環境への配慮、品質の強化、SCM体制の構築、ガバナンスの強化等を進め、持続可能な経営を推進すべく基盤強化を図ってまいります。

 

(2) ESGへの具体的取組み

① 環境への取組み(E)

気候変動を始めとする環境課題は、社会の重要課題の1つであり、国内外に広く事業を展開し、ものづくりやサービスを提供する当社グループにおいても最重要課題の1つとしております。当社は、2022年6月にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について分析と対応を強化し、関連情報の開示を積極的に推進しております。

カーボンニュートラル達成やサーキュラーエコノミーの実現に向けて環境目標を掲げ、環境に配慮したものづくりを進めるとともに、製品や技術で環境社会へ貢献できるよう取組みを推進しております。

 

気候変動への取組みは以下の通りです。

a.ガバナンス

当社グループは、取締役を委員長とする中央環境委員会で、気候変動を含む環境関連の重要課題を審議・決定し、環境マネジメントシステム(ISO14001)でグループ全体のマネジメントを行っております。中央環境委員会にて事業に重要な影響を及ぼすと判断された気候変動を含む重要課題についてはサステナビリティ委員会にて審議・決定を行い、マネジメントを行っております。

 

b.事業戦略

当社グループは、TCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候変動リスクと機会が事業に与える影響を把握し、その影響に対する戦略策定を進めております。

 

<気候変動による主なリスク及び機会>


 

今後、TCFD新ガイダンスに準拠したシナリオ分析の中で、精緻な財務インパクトの把握についても検討を進めてまいります。

 

c.リスク管理

当社グループは、サステナビリティ委員会、リスク管理委員会、及び環境マネジメントシステム(ISO14001)で、リスクのモニタリングや再評価、重要リスクの絞り込み等を行い、戦略に反映しリスクへ対応しております。

 

 

d.指標と目標

当社はサーキュラーエコノミーに向けた活動として「2025年に製造工程の廃棄物の50%削減」「2040年までに埋立処分率1%以下」、又、カーボンニュートラルに向けた活動として「2030年にCO2 46%削減(2013年基準)」「2050年までにカーボンニュートラル」を目標に設定し活動を推進しております。国内・海外子会社については、「2030年にCO2 30%削減」「2050年までにカーボンニュートラル」を環境目標(ガイドライン)として設定し、進捗状況をモニタリングしています。

 

<製造工程廃棄物削減>

サーキュラーエコノミーに向けた活動として「2025年に製造工程の廃棄物の50%削減」、更に「2040年までに埋立処分率1%以下」を設定し、廃棄物削減のために工法開発による不良低減や歩留まり改善、再資源化を進めております。


 

<カーボンニュートラルに向けた取組み>

2050年までにカーボンニュートラル達成のため、まずは2030年までに工場のものづくり現場による省エネ活動や、製品、技術、生産革新による削減活動を重点取組事項として活動推進しております。


    (注)1.日本国内の排出量は温対法に基づき算定しております。

       2.上記グラフの算出対象は、提出会社単体のScope1+2となります。

       3.脱炭素社会へ貢献するため、Scope3算定及び目標設定を検討しております。

 

②社会への取組み(S)

当社グループは、多様なステークホルダーと良好な関係を築いていくことは企業価値向上に欠かせないものと認識しております。今後も多様なステークホルダーとの双方向の対話や関わりの中で事業活動を推進してまいります。また、事業環境の大きな構造変化や社会課題に対して、課題解決に貢献するものづくりやサービスを提供し続けるため、多様な人材が活躍できる職場環境づくり(人的資本)、知財や研究開発力の強化(知的資本)、DX推進やグローバル生産体制の強化(製造資本)を進めております。

 

 

 

ⅰ)人材戦略

当社は、「新中期経営計画2026」において、事業戦略の両輪として「既存事業の強化」と「成長事業・新事業の拡大」を掲げております。そして、その事業戦略遂行の土台となる、「経営基盤の改革」の一つとして、「幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「働きがいのある職場環境づくり」を人材戦略の3つの柱とし、人材の多様性の確保を含む人材育成と社内環境整備に取り組んでおります。

 

<人材戦略の3つの柱と2023年度の取組み>

1.幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成(人材育成に関する考え方と取組み)

当社が求める人材像は、多角的な視点から物事の本質を深く考えて、自発的に素早く実行する人材です。このような人材がそれぞれの分野、階層で能力を最大限に発揮し活躍することが、中期経営目標を達成し、当社の持続的な成長と企業価値の向上に繋がるものと考えています。

 

・次世代経営幹部

次世代経営幹部の計画的な育成に向けて、2023年8月より「全社人財会議」を立ち上げました。役員により候補者の選抜を行い、育成の進捗を共有・議論する場として運営しています。

また、2023年度より管理職への登竜門であるプレフコク経営塾のプログラムを刷新しました。従来の役割認識と対応スキルの習得のみではなく、高い視座から物事を考えることを狙いとし、意識変革と行動変容へつながる取組みとして進めています。

 

・グローバル人材

国内外9か国で事業を展開する当社にとって、グローバルに活躍できる人材の育成は重要課題であると捉えています。2023年度は、海外拠点の運営に関わる人材に加え、海外事業の拡大を目指して、新たに成長市場へのセールスエンジニアの派遣を行っています。特に、より多くの若手社員に海外経験を積ませるため、海外トレーニー制度の活用を積極的に拡大しています。

また、海外赴任研修プログラムの拡充を行い、現地での業務遂行早期適応の更なる促進を図っています。

 

・デジタル人材

デジタル技術を活用して業務プロセスや生産プロセスを変革し、競争優位性を確保するためDXを推進しています。その活動を担う人材のデジタルリテラシーの向上に伴って、活動が加速することを確認しています。2023年度は、そのような人材をさらに増やすため、DXを担うデジタル人材の育成を教育体系の1つの柱である専門教育の主要プログラムとして設定し、準備を進めてまいりました。2024年度より本格的な取組みを開始します。

 

2.ダイバーシティ&インクルージョン(人材の多様性の確保に関する考え方と取組み)

当社は、性別、年齢、人種・国籍、障がいの有無等に関わらず、全従業員が活躍し成長できる環境を実現し、多様性を生かした新たな価値創造へつなげるための取組みを進めています。

 

・女性リーダーの継続的な輩出

当社では、管理職に占める女性比率が低いことを認識し、女性の採用強化、育児との両立支援等の女性が長く働き続けられる施策に加え、2023年度は「全社人財会議」において、女性リーダーの育成をテーマとして取り上げ、女性管理職登用促進に注力した取組みを開始しました。

 

・シニア社員の経験、ノウハウを生かした活躍

当社で今後増加するシニア社員が、その豊富な経験とノウハウを生かし、より生き生きと活躍できるよう、「全社人財会議」を中心としたシニア社員活躍の場を創出するフレームワークを作り、2024年度より運用を開始します。

 

 

3.働きがいのある職場環境づくり(社内環境整備に関する考え方と取組み)

「幅広い視点から自ら深く考え動く人材」の育成と、「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進のためには、働きがいのある職場環境づくりが不可欠であると考えています。

 

・従業員エンゲージメントの向上

  従業員エンゲージメントの向上を重要課題の一つと位置付け、エンゲージメントサーベイによるモニタリングを行い、課題を抽出し改善へつなげる取組みを始めています。一例として、自社の将来の方向性の不透明さが全社に関わる課題の一つとして挙げられ、2023年度は経営トップによる新中期経営計画の全従業員へ直接説明、新たに設定したMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のポスター掲示や社内報掲載により、その浸透を図る取組みを行ってきました。

 

・自分で描いたキャリアプランの実現支援

自分で描いたキャリアプランと企業の進むべき方向性が一致し、多様な個人が生き生きと働き、成長できるキャリア支援を推進しています。2023年度はキャリアプランのデータベース化を行い、サクセッションプランをはじめとする人材の登用、配置計画において、キャリアプランとのマッチングをより促進する施策を進めてまいりました。2024年度はキャリア支援対象者の拡大を行います。

 

・男性育児休業取得

2022年度に男女ともに仕事と育児・介護の両立を目指した社内制度を整備し、ガイドブックの作成・公開や社内報での紹介等の広報活動により、継続的に制度の活用促進を図ってまいりました。特に男性の育児休業取得に関しては、制度の理解浸透が進み、年々その取得率は向上しています。

 

 

 

ⅱ)指標・目標

区分

項目

目標(2026年度まで)

2022年度実績

2023年度実績

1.幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成

海外出向経験者比率
(事技職+管理職)

25

20%

20

デジタル人材育成人数

60

19名

20

2.ダイバーシティ&インクルージョン

女性管理職比率
(注1)

7.0

3.5%

3.7

障がい者雇用率

法定雇用率維持

2.9%

2.7

3.働きがいのある職場環境づくり

男性育児休業取得率
(注1)(注2)

50

16.6%

38.0

 

(注)1.管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率についての実績は、「第1 企業の状況  5.従業員の状況  (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」にも記載しております。

2.男性育児休業取得率の指標・目標に関して、2022年度は育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を設定しましたが、取得率が目標の100%を達成したため、2023年度は育児休業等の取得割合へ変更しております。

 

③ガバナンスへの取組み(G)

ガバナンスについては、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

(政治経済情勢)

当社グループは、世界各地に工場及び事業所を保有しており、各国の政治体制下における政策、及び経済状況の影響を受ける可能性があります。これに対し、積極的に情報収集を進め、さまざまなケースを想定して対策を講ずるべく努めております。

 

(需要変動等)

当社グループは、自動車関連部品が売上高の8割以上を占めており、自動車メーカー及び一次部品メーカーの経営戦略、生産動向の影響を受けます。特に、自動車メーカーのEV化、一次部品メーカーの統合やグローバル生産体制の見直しは、当社グループの需要動向に大きな影響を及ぼす可能性があります。顧客からの要請・ニーズの変化等を想定し、日常的な情報収集を進め、必要な技術開発投資などを適切に判断しながら対応策を検討しております。

 

(戦略的提携と合弁事業)

当社グループが推進する戦略的提携や合弁事業は、パートナーの経営方針や経営環境の変化により維持不可能となった場合には、当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、パートナーと常に良好なコミュニケーションを維持しながら情報交換や必要な交渉に努め、不測の事態の回避を図ると同時に、状況の変化に即応できる態勢を維持しております。

 

(原材料及び部品の外部業者への依存)

当社グループは多数の外部の取引先から原材料及び部品を購入しており、原材料及び部品の高騰、供給逼迫、さらには取引先の廃業などによって影響を被る可能性があります。これに対し、取引先との良好な関係を維持しつつ、製造原価の低減に資する選択的購入や切り替え、災害等の不測の事態における安定調達を目的として、継続的に取引先の拡充や適正化を進めると同時に、取引先の経営状況の把握や必要な支援の提供等にも努めております。

 

(コンプライアンス)

 当社グループは、人権遵守、コンプライアンス遵守の経営を進めております。しかしながら、事業活動を行う上で、法令に抵触する等の事態が発生した場合は、当社グループの信用低下や損害等による費用の発生等により、当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。当社グループとしてはこのような事態が発生しないよう、当社グループのミッション、ビジョン、バリューの浸透、組織風土改革、コンプライアンス啓発活動によるコンプライアンス意識及び知識の向上、違反の予防の徹底等に取り組んでおります。

 

(為替変動)

当社グループは海外に多くの取引先や提携先を持ち、事業所を展開しておりますため、為替レートの変動によって当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、継続的に変動を注視するとともに、必要に応じてネッティングや予約等の施策を講じ、可能な限りマイナスインパクトを軽減するべく努めております。

 

(知的財産の保護)

当社グループが保有する、自社製品に関連する多数の特許及び商標等の知的財産が広範囲にわたって保護できない場合、あるいは不当に侵害された場合には、事業活動が影響を被る可能性があります。これに対し、常に侵害にあたる事実の把握に努めており、そのような事実を認めた場合には適切な対抗手段を取れる体制を整えております。

 

(製造物責任)

大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、当社グループの業績と財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、設計から製品のリリースまでの全プロセスにおいて顧客や取引先との密なる連携に基づく工程並びに機能、品質の作りこみを常に心掛けております。また、万一の事態においては迅速なリカバリーと供給体制の維持に努めます。

 

(環境規制)

自動車部品業界は広範囲な環境その他の法的規制に服しており、これらの規制を遵守するための費用が、当社グループの事業にとって重大な金額となる可能性もあります。これに対し、日常的に情報の取得に努め、材料変更、工法・設備の改良、生産地変更など、負担軽減に向けた対応策を講じております。

 

(情報セキュリティ)

当社グループは、事業活動を通して得意先、取引先等の個人情報や機密情報を入手することがあり、また営業上・技術上の機密情報を保有しております。万一、サイバー攻撃その他によって情報セキュリティの仕組みが無効化し、これらの情報が流出または破壊された場合や、システムの停止等に陥った場合には、当社グループの業績や財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、万全のセキュリティを企図したグループ・ネットワークを構築し、日々の進化を図るとともに、当社グループ内の情報セキュリティ教育・啓蒙にも努めております。

 

(災害・戦争・社会インフラ麻痺等の影響)

当社グループは国内外に広く事業を展開しており、地震や津波等の自然災害、戦争、電力不足等の社会インフラの麻痺、伝染病、パンデミック、テロ、ストライキ等が発生した地域においては、原材料や部品の調達、生産活動、製品の販売及び物流などの遅延や停滞、また、受注減少や取引停止の可能性があります。そのような場合には、当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、日常的に情報の収集と共有を進めているほか、万一の事態においては危機対策本部を設け、「安全最優先」の基本方針に則って従業員の安全・安心を守ると同時に、当社グループ内の連携と相互支援を強めるなど、経営への影響を最小限に留めるよう努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症に起因する行動制限や海外渡航制限等も緩和され、経済活動の正常化が進み、緩やかな回復基調となりました。しかしながら、国際的な情勢不安の長期化や、資源価格高騰による物価上昇が続いており、金融資本市場の変動等も相まって、依然として先行き不透明な状況が続いております。

自動車業界においては、半導体の供給不足については緩和され、生産台数が回復しました。また、電気自動車については、積極的な研究開発投資や普及活動に取り組んではいるものの、一部の地域にて、電動自動車からハイブリッド車への需要の転換も見られました。

このような経済情勢の下で、当社グループにおいては、中国における景気低迷、資源価格高騰による原材料費の高止まり等の影響がありますが、一方で円安の影響による円換算時の収益増があり、また半導体不足による自動車メーカーの生産調整の影響が緩和され、損益にプラスの影響を与える状況となっております。

当連結会計年度の業績については、自動車メーカーの生産調整による影響の緩和及び為替の影響により、連結売上高は前年同期比7.9%増888億47百万円となりました。営業利益は、原材料費や燃料費の上昇の影響を合理化や売価反映等により吸収し、前年同期比81.4%増36億46百万円、経常利益は同30.4%増40億94百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同42.9%増30億50百万円となりました。

 

セグメントの経営成績は次のとおりです。

 

機能品事業

売上高は、自動車メーカーの生産が復調したこと及び為替換算の影響により、前年同期比10.2%増367億70百万円となりました。セグメント損益については、合理化効果や原材料価格等の上昇を売価に反映したことにより、前年同期比45.5%増39億14百万円の利益となりました。

 

防振事業

売上高は、東南アジア・インド、米国での需要増加及び為替換算の影響により、前年同期比7.9%増374億72百万円となりました。セグメント損益については、合理化効果や金具鋼材費の上昇を売価に反映したことにより、前年同期比38.0%増20億89百万円の利益となりました。

 

金属加工事業

売上高は、建設機械向けの受注好調により、前年同期比4.0%増67億37百万円となりました。セグメント損益については、合理化効果と金具鋼材費の上昇を売価に反映したことにより、前年同期比840.0%増22百万円の利益となりました。

 

ホース事業

売上高は、受注が好調なことを受けて、前年同期比4.6%増53億73百万円となりました。セグメント損益については、合理化効果や原材料価格等の上昇を売価に反映したことにより、前年同期比62.8%増1億90百万円の利益となりました。

 

産業機器事業

売上高は、国内での医療製品の受注が好調であったものの、中国及び東南アジアでのOA製品の需要低下等により、前年同期比1.5%減33億27百万円となりました。セグメント損益については、合理化効果や原材料価格等の上昇を売価に反映したことにより、前年同期比12.2%増6億81百万円の利益となりました。

 

 

財政状態の状況は次のとおりです。
 

総資産は、前連結会計年度末に比べて45億3百万円増加し、760億33百万円となりました。

主な要因は、円安下での為替換算に伴う現金及び預金、並びに売掛金の増加等による流動資産の増加31億89百万円によるものです。固定資産は、為替換算の影響や有形固定資産の取得等により13億13百万円増加しております。

負債は、前連結会計年度末に比べて4億45百万円増加し、340億23百万円となりました。

主な要因は、当連結会計年度末日が金融機関の休日であったため、電子記録債務の未決済額が連結会計年度末日残高に含まれていることによる流動負債の増加5億40百万円によるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べて40億57百万円増加し、420億10百万円となりました。
 主な要因は、利益剰余金の増加22億37百万円、為替換算調整勘定の増加15億60百万円等によるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ19億21百万円増加し、113億99百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は88億43百万円(前年同期は35億15百万円)となりました。これは主に減価償却費46億53百万円、税金等調整前当期純利益40億93百万円による資金の増加によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は44億66百万円(前年同期は39億88百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得が40億27百万円あったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は27億81百万円(前年同期は7億53百万円の収入)となりました。これは主に借入の返済が収入を18億79百万円上回ったこと、配当金の支払が8億13百万円あったことによるものです

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

機能品(百万円)

37,092

109.7

防振(百万円)

39,403

108.6

金属加工(百万円)

6,744

103.9

ホース(百万円)

5,376

105.3

産業機器(百万円)

3,368

98.5

合計(百万円)

91,985

108.1

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

機能品

36,523

112.2

3,556

115.3

防振

37,839

108.3

3,403

112.4

金属加工

6,566

100.4

454

72.7

ホース

5,226

102.8

401

90.5

産業機器

3,373

100.8

302

117.8

合計

89,530

108.6

8,118

109.2

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

機能品(百万円)

36,051

110.2

防振(百万円)

37,462

107.9

金属加工(百万円)

6,737

104.0

ホース(百万円)

5,268

104.6

産業機器(百万円)

3,327

98.5

合計(百万円)

88,847

107.9

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

a.繰延税金資産

繰延税金資産については、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。なお、当該課税所得を見積るにあたって、前提とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

b.固定資産の減損

固定資産のうち減損の兆候のある資産又は資産グループについて、将来キャッシュ・フローを見積り、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態の分析

 資産

当連結会計年度末の総資産は、前年同期比45億3百万円(6.3%)増760億33百万円となりました。うち流動資産は同31億89百万円(7.5%)増457億18百万円、固定資産は同13億13百万円(4.5%)増303億15百万円となっております。流動資産の増加は、円安下での為替換算に伴う現金及び預金、並びに売掛金の増加等によるものです。固定資産の増加は、設備投資に伴う有形固定資産の増加とDX推進のためのソフトウェア投資に伴う無形固定資産の増加等によるものです。

 負債

当連結会計年度末の負債の合計は、前年同期比4億45百万円(1.3%)増340億23百万円となりました。うち流動負債は同5億40百万円(2.1%)増268億85百万円、固定負債は同94百万円(1.3%)減71億37百万円となっております。流動負債の増加は、当連結会計年度末日が金融機関の休日であったため、電子記録債務の未決済額が連結会計年度末日残高に含まれていることによる増加等によるものです。固定負債の減少は、長期借入金の減少等によるものです。

 純資産

当連結会計年度末における純資産は、前年同期比40億57百万円(10.7%)増420億10百万円となりました。その主な要因は、増収に加え、原材料費や燃料費等の上昇の影響を生産合理化や販売価格への転嫁等で吸収したことによる利益剰余金の増加と、為替換算調整勘定の増加によるものです。為替換算調整勘定は主として米ドル及びタイバーツの為替変動の影響により前連結会計年度末の29億83百万円から45億44百万円に増加しました。非支配株主持分は、非支配株主に帰属する当期純利益74百万円の計上並びに為替換算調整勘定の増加により、前年同期比1億39百万円(6.0%)増24億72百万円となりました。

上記の結果、自己資本比率は前年同期比2.2ポイント52.0%、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産は前年同期比242.26円増の2,453.38円となりました。

 

b. 経営成績の分析

当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症に起因する行動制限や海外渡航制限等も緩和され、経済活動の正常化が進み、緩やかな回復基調となりましたが、国際的な情勢不安の長期化や、資源価格高騰による物価上昇が続いており、金融資本市場の変動等も相まって、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような経済情勢の下で、当社グループにおいては、自動車メーカーの生産調整の影響が緩和されたこと、円安の影響による円換算時の売上が増加したことにより、連結売上高は前年同期比7.9%増888億47百万円となりました。営業利益は、原材料費や燃料費の上昇の影響を合理化や売価反映等により吸収し、前年同期比81.4%増36億46百万円、経常利益は同30.4%増40億94百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は同42.9%増30億50百万円となりました。これにより、1株当たりの当期純利益は189.35円(前年同期は132.61円)となっております。

なお、セグメント別の業績分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 

c. キャッシュ・フローの分析

当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比53億27百万円増88億43百万円となりました。売上債権の回収と税金等調整前当期純利益の増加が主な要因となります。税金等調整前当期純利益の増加は、増収に加え、生産合理化効果や原材料等のコスト上昇の影響を売価に反映したことによるものです。なお法人税等の支払額は8億57百万円(前年同期は7億88百万円)となっております。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比4億77百万円増44億66百万円の支出となりました。有形固定資産の売却による収入の減少が主な要因となります。前期は子会社が所有する固定資産の売却があったことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、27億81百万円の支出(前年同期は7億53百万円の収入)となりました。業績の回復により、借入金の返済が収入を上回り18億79百万円の支出となったことが主な要因となります。一方、配当金の支払額は8億13百万円となっております。

現金及び現金同等物に係る換算差額は、主に中国元及び米ドルの為替変動の影響により3億25百万円となりました。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて19億21百万円増加し、113億99百万円となりました。

 

d. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資並びに配当金の支払いであります。これらの資金需要につきましては、自己資金及び金融機関からの借入による資金調達にて対応していくことを基本方針としております。

また、突発的な資金需要に備え、当社は主要な取引銀行との間でコミットメントライン契約を締結し、手許流動性リスクに備えております。なお、これについて当連結会計年度末の借入実行残高はありません。

当連結会計年度末における有利子負債は115億87百万円となっており、前連結会計年度末に比べ14億66百万円減少しております。

キャッシュ・フローの状況の詳細については、「c.キャッシュ・フローの分析」に記載のとおりであります。

 

e. 戦略的現状と見通し

自動車業界においては、半導体の供給不足については緩和され、生産台数が回復しました。一方で、ウクライナ情勢の長期化に加え中東情勢の悪化等、不安定な海外情勢、世界的な金融引き締めに伴う為替の変動、資源価格高騰等による値上げの傾向が継続しており、今後の経済情勢の先行きは依然として不透明な状況にあります。

このような状況の中、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループは2026年度連結売上高 1,200億円、営業利益率 8%、ROE 12%の目標を達成するため、2024年度は「新中期経営計画2026」の初年度であり、非常に重要な年として位置付けております。特に、ROEについては、持続的な企業価値向上に関わる指標とし、事業拡大のための投資、将来の成長の源泉となる研究開発活動、株主還元などバランスのとれた資金配分を通じてROE向上に取組み、これら目標値の達成により、PBR1倍超を目指します。

そして、飛躍的成長を経て、サステナブルな社会の実現に貢献できる“心から愛される企業“を目指します。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社の主な技術援助契約は次のとおりであります。

技術供与契約

 

契約締結先

内容

有効期間

対価

河北富躍鉄路装備有限公司(中国)

鉄道用ゴム部品の製造技術

自2009年10月13日
至2029年10月12日

売上高の一定割合

南京富国勃朗峰橡膠有限公司(中国)

鉄道用ゴム部品の製造技術

自2010年11月15日
至2030年11月14日

売上高の一定割合

 

 

6 【研究開発活動】

日本政府は2050年カーボンニュートラルを宣言し、自動車メーカーでは製品のライフサイクル全体で多くのCO2を排出していることから、BEV(Battery EV:電気自動車)やFCEV(Fuel Cell EV:燃料電池車)などZEV(Zero Emission Vehicle)へのシフトを急速に進めています。 当社グループは、自動車用ゴム部品を主要製品とするサプライヤーとして、持続可能な脱炭素社会の実現に向けて社会的課題の解決に取り組むと同時に、技術開発本部と関連部門とが相互に連携しながら、独自の技術を活かした新製品のスピーディな開発を推進しております。

当社が参画する「交換式バッテリーを共通利用した電動農業機械コンソーシアム」が、令和6年度(上半期)農業機械技術クラスター(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の農業機械研究部門が立ち上げた新たな農業機械を推進するための幅広い産学官連携のプラットフォーム)事業新規課題「小型電動農業機械用バッテリー保持機構の開発」を実施する委託先として決定されました。当社の持つ材料開発・解析技術・防振技術を駆使し、小型農業機械の電動化普及に貢献するべく、取り組んで参ります。

ゴムを構成する原材料の多くは石油由来であるため、原材料についてはバイオマス原料やCO2発生量の少ない原料へのシフト、生産プロセスにおいて低エネルギーで製造を可能とする易加工性の材料開発を進めており、当連結会計年度の研究開発費の総額は、1,896百万円となっております。

 

① 機能品セグメント

自動車分野においては、電動油圧ブレーキ用グロメット、ディスクブレーキ用ピストンシール、冷却装置用バルブ、冷却装置用パッキン、等速ジョイント用ブーツ等を国内外の顧客向けに開発しております。非自動車分野インダストリアル関連においては、リニアガイド用シール、エアーシリンダー用シールを国内の顧客向けに開発しています。また、CASE時代に対応し、電動車の熱マネジメント用バルブやシール等の開発も進めております。

特に当社の主軸商品であるワイパーブレードラバーにおいては、車輛評価が可能な大型環境試験室を導入することで、Tier1メーカーにて行う性能評価の一部を自社で実施することが可能となり、開発期間の大幅な短縮を実現いたしました。それにより、中国Tier1メーカーの課題を解決する手助けを行い、新規量産品及び開発品の引き合いを多数頂いております。また、環境対応の一環としてカーボンニュートラル材を使用したワイパーブレードラバーの研究を行い、安全対応として自動運転に必要な光学センサー用の特殊ラバー等の検討を進めております。

 

② 防振セグメント

CASE時代に対応した商品について、EV電池用緩衝材であるバッテリーホールドシートやセンサー用防振ゴム等の開発に積極的に取り組んでおり、この他、宇宙関連機器用防振ゴム等、新たな分野においても開発を行っております。

自動車分野においては、共創により足回り防振ゴムブッシュ等の新規受注を獲得し、サスペンション用ブッシュ等の各種防振ゴム、クランクシャフト用ダンパープーリー等を国内外の顧客向けに開発しており、更なる拡販活動を積極的に行っております。2023年度はASEAN地域及びインドに技術者を新たに派遣し、グローバルな開発を迅速に行える体制を構築しました。

一般産業分野においては、建機のキャビン用液封マウント、林業用機械のキャビン用小型液封マウント、住宅用防振ゴム、鉄道軌道用防振ゴム、鉄道関連の台車周辺緩衝ゴム等を国内外の顧客向けに幅広く開発しております。

長寿命、高い防振性能、カーボンニュートラル対応商品等、昨今増加している顧客ニーズにお応えするため、新材料、新形状を積極的に採用し、新しい付加価値をご提供できるよう開発を進めております。

 

③ 産業機器セグメント

ライフサイエンス事業においては、2023年6月より迅速細菌検査キット「RaST-TAS β-ラクタマーゼ・スクリーニング試薬キット」を株式会社スギヤマゲンより発売しました。また、再生医療や細胞加工で使用される細胞凍結保護液や細胞凍結バッグ、細胞分散酵素液等を上市し、更に高付加価値のシステムバッグや再生医療用高性能培地の開発等を進めています。その他の製品においても、大学、企業並びにクリニック等と積極的に共同研究を行っており、特に細胞加工技術を活用した化粧品原料は、更なる用途開発と有効性のエビデンスを蓄積するため、複数の大学と共同開発を検討しています。

 2022年度より開始しました航空宇宙分野の取組みは、2023年4月に航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステム(JISQ9100)を認証取得し、2024年度には航空機用部品の量産開始が目前となっています。更なる拡販と新分野参入の足場造りに注力しております。