第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、ビッグデータ処理、人工知能、金融工学の3つのコアテクノロジーを軸に「情報通信技術の進歩を人に優しいかたちにして、愉快なる未来を創る」というミッションのもと、発想力と技術力を磨き、新しい事業を次々生み出すべく、尽力してまいります。

 また、2024年3月期は経営方針として、既存事業改善によるキャッシュ創出力強化に向けた「新アルゴリズム導入による効果改善」「ASP市場におけるポジションチェンジの推進」「ASA海外拠点展開による売上拡大」、新たに柱となる事業の育成による再成長のための「独自DSP立ち上げ支援サービス強化」「AIを活用したDTC支援ソリューションの立ち上げ」を経営方針として取り組みました。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループが保有する人工知能「VALIS-Engine」やビッグデータ処理等の技術を適用することにより、競争優位が生まれる領域へ展開し事業規模の拡大を目指しております。

 

(3) 経営環境

 当社グループが事業を展開しているインターネット広告市場は、引き続き拡大を続けております。「2023年日本の広告費」(株式会社電通調べ)によると、2023年のインターネット広告費は、コネクテッドTVの利用拡大に伴う動画広告需要の高まりや、デジタルプロモーション市場の拡大などが成長に寄与し、前年から7.8%増加して3兆3,330億円となりました。成長が見込まれるインターネット広告市場では、当社グループを取り巻く競争環境や市場環境が日々変化しております。当社グループは技術革新や市場の変化への対応、システムの強化、組織人事体制の構築等の経営課題に取り組むことで、経営環境の変化に対処していく方針であります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 技術革新及びインターネット広告を中心とした関連市場の変化への対応
 当社グループが主に事業展開を行うインターネット広告業界は、人工知能の進化など、近年急速な変化の中にあります。これに対応し、当社グループは業界の技術革新や市場の動向に対応したサービスの迅速な開発と提供に取り組んでいく方針であります。

 

② ビッグデータを高速処理するシステムの安定運用

 当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」は、SSPやアドエクスチェンジから送られてくる入札リクエストと広告主・広告代理店から依頼された多数の広告キャンペーンの膨大な組み合わせを当社のサーバー上にてミリセカンドで処理する必要があり、しかも、そのデータ量は急速に増加する傾向にあります。今後も安定した事業運営を行うためには、急激に増加するアクセス数を考慮したサーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散が必要となります。また、電力供給の制約や、火災・風水害・地震をはじめとする災害、サーバーやネットワークへの不正アクセス等、想定し得る様々な危機に対しても、適切に対処していく必要があります。今後も当社グループのサービスの改善を行うとともに、中長期的視野に立った設備投資を行い、システムの安定性確保に取り組んでいく方針であります。

 

③ 優秀な人材の確保と教育制度の充実

 当社グループは、今後の成長のために、優秀で多様性のある人材の確保が不可欠であると認識しております。

新卒採用、中途採用いずれにおいてもダイレクトリクルーティングの利用や採用広報の検討を行い、採用方法の多様化に取り組んでいます。また外部からアドバイザーを招き採用活動の精度の向上に努めています。

当社の求める専門性や資質を兼ね備えた人材の登用を進めるとともに、研修制度の充実等、教育体制の整備を進め、人材の定着と能力の底上げを行っていく方針であります。

 

④ グループ全体での内部管理体制強化

 当社グループは成長段階にあり、グループ会社を含め業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、バックオフィス業務の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化に取り組んでまいります。具体的には、業務運営上のリスクを把握してリスク管理を適切に行うこと、定期的に内部監査を実施することによってコンプライアンス体制を強化することなど、コーポレート・ガバナンス機能の充実を行っていく方針であります。また、当社は、2016年6月開催の定時株主総会でご承認をいただき、「監査等委員会設置会社」に移行しております。監査等委員会設置会社とは、業務執行者に対する監査機能の強化を目的として、取締役3人以上で構成され、社外取締役がその過半数を占める監査等委員会を設置し、その監査等委員会が取締役の監査・監督を行います。当社では、このような経営体制をとおして、コーポレート・ガバナンス体制のさらなる強化に取り組んでいく方針です。

 

⑤ サステナビリティ経営の推進
 当社グループは、持続可能な社会の実現のため、当社取締役会の指導・監督の下、当社のサステナビリティ活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行うサステナビリティ委員会を設置しております。現在の活動状況に関しては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
 

(5) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは継続的な成長をめざしており、重要視している経営指標は、売上高及び営業利益であります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

■サステナビリティ情報全般に関する開示

(1)ガバナンス

 「当社グループは、サステナビリティ経営を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。

 

・取締役会の指導・監督の下、サステナビリティ委員会を組織し、コーポレート担当執行役員を委員長としてサステナビリティに関する取組状況や目標の達成状況の報告を受け、モニタリングします。また、取締役会は、新たに設定した対応策や目標を監督します。

・当社グループのコーポレート部門は、サステナビリティ委員会の事務局を担当するとともに、サステナビリティ経営に係る企画・立案及び管理を行い、全社的なサステナビリティ経営の推進を担い、サステナビリティ経営上の戦略を検討・立案し、サステナビリティ委員会に提言します。

・活動結果はサステナビリティ委員会の審議を経て、原則として年一回取締役会へ報告・付議します。

・監査等委員会はサステナビリティ委員会に対し、適宜助言を行います。

 

 なお、一般にサステナビリティに関するものとして認識されるコーポレートガバナンスや腐敗防止、贈収賄防止、人権の尊重などの事項に関して当社グループでは、サステナビリティ委員会と並列する位置づけのコンプライアンス委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。

 また、コンプライアンス委員会で検討された事項のうちサステナビリティに関する事項は、サステナビリティ委員会に連携がなされます。

 

(2)戦略

①サステナビリティ基本方針の策定とマテリアリティの特定

当社グループは、サステナビリティ経営の推進にあたり、サステナビリティ基本方針を策定しております。また、サステナビリティが関連する当社グループの重大なマテリアリティに関して、サステナビリティ委員会による審議のもと以下のとおり設定いたしました。

 

a.環境(E)

環境負荷に配慮した事業活動

 

b.社会(S)

健全なインターネット広告市場の発展

技術力を有する人材の獲得/能力開発/キャリア形成支援の強化

発想力を有する人材の獲得/能力開発/キャリア形成支援の強化

ライフステージに応じた働き方を実現できる環境

ダイバーシティの尊重

 

c.ガバナンス(G)

コーポレートガバナンスの強化

倫理・コンプライアンスの徹底

 

②事業機会の創出と拡大

インターネット広告上のプライバシー保護にあたる、「ポスト3rd Party Cookie」への対応領域における広告主・消費者の関心は高く、広告主から、ポストCookie技術である「プライバシーサンドボックス」施策に取り組むインターネット広告会社への需要はさらに増していく可能性があると考えています。

 

また、当社グループのコンプライアンス委員会が担当する腐敗防止、贈収賄防止、人権の尊重などの領域に関し、当社グループでは以前より、事業活動におけるコンプライアンス経営を進めていますが、広告主から、コンプライアンス施策に取り組むインターネット広告会社への需要はさらに増していく可能性があると考えています。

 

③人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、性別、国籍、新卒・中途など特定の属性に依存せず能力重視での採用活動を行うものであります。

多様性の確保に向けた人材育成については、グレード・役割別の研修と職種別の研修を組み合わせることで、その実施を進めております。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、定期的に事業活動におけるリスクを検討・評価し、損失のリスク管理のための必要な体制 (リスクの発見・情報伝達・評価・対応の仕組みなど)の整備・運用に取り組んでいます。また、サステナビリティ委員長・コンプライアンス委員長は、自己の担当領域において、当社グループに損失を与えうるリスクを管理するために必要な体制の構築・維持を行う権限と責任を持ち、かかるリスク管理体制の整備・運用を推進しています。

さらに、かかる体制及びその運用状況については、定期的に取締役会がサステナビリティ委員会から報告を受け、その妥当性について確認しています。

一例として、当社グループは、インターネット広告業界に属することから、経済環境の悪化等による広告主の広告予算減少を重要リスクと認識しています。なお、サステナビリティ経営を構成する気候変動リスクその他のリスク(物理リスク・移行リスク)についても、今後、必要に応じて評価・分析を行っていきます。

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2026年3月まで20

10.5

(※)なお、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異に関する指標は記載を省略しております。

 

■気候変動問題に関する開示

 当社グループは、インターネット広告サービスを主たる事業としており、現在において気候変動問題が当社事業に重大な影響を及ぼすことの評価が困難なため、TCFDに基づく定量的な開示等は行っておりません。

 

なお、環境に関する全般的な取り組みに関しては、当社ウェブサイトに開示しております。

 

https://www.so-netmedia.jp/ir/businesspolicy/?tabarea=tabArea&tab=2

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境に関するリスクについて

① インターネット広告市場について

 当社グループのマーケティングテクノロジー事業は、インターネット広告市場を主たる事業対象としておりますが、広告業界においては、景気動向によって広告への支出を増減させる広告主が多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向にあります。また、インターネット広告業界においては、技術、顧客ニーズ及び競争が急速に変化することから、頻繁に新しい商品及びサービスの導入、新たな競争相手等が出現しており、当社グループにおいてもこれらの変化等に迅速に対応していく必要があります。

 インターネット広告市場は、テレビ広告市場を上回るまでに成長しておりますが、今後これらの状況に変化が生じ、企業がインターネット広告への支出を削減する場合、また当社が急速な環境変化への対応が遅れる場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② プログラマティック広告取引について

 当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad(ロジカド)」は、プログラマティック(RTBによるインターネット)広告取引に特徴があります。プログラマティック広告は、広告の費用対効果を高め、効率的な広告出稿を実現するテクノロジーとして、国内の広告業界でも相応のシェアを占めるにいたりました。しかしながら、一部メディアでは従来の非プログラマティックな広告取引への回帰がみられるなど、その将来性はいまだ不透明な部分があることから、今後においてプログラマティック広告の普及及び利用が想定どおり推移しない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新について

 当社グループは、ビッグデータ処理、人工知能、金融工学の専門家を採用し、開発チームとして組織することで、新技術の開発に積極的に取り組んでおります。しかしながら、何らかの理由により、当社グループにおいて急激な環境変化への対応が遅れた場合には、サービスの陳腐化、競争力低下等が生じる可能性があり、また、対応が可能であったとしても、追加の多大な費用や投資の負担が発生する可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 競合について

 当社グループのマーケティングテクノロジー事業における主な競争相手は、国内外において複数社存在しており、今後も競合他社による新規参入、市場環境の変化等により、競争が激化する可能性があります。また、競合他社の中には、当社グループに比べ強い財務基盤、広い顧客層及び高い知名度などを有している企業、当社グループにはないサービス及び商品を提供する企業があります。当社グループはプロダクトの競争力の源泉であるビッグデータ処理、人工知能、金融工学の3つをコアテクノロジーとして強化していくことで、競合他社と比較して競争力の高いプロダクトを継続して開発していく方針であります。しかしながら、競合先の営業方針、価格設定及び提供するサービス及び商品は、当社グループの属する市場に影響を与える可能性があり、これらの競合先に対し効果的な差異化を図れず、当社グループが想定している事業進展が図れない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 法的規制について

 インターネット関連分野においては、インターネット上のプライバシー保護の観点からcookie(ウェブサイト閲覧者のコンピューターにインストールされ、ユーザーのウェブ閲覧履歴を監視するテキストファイル)に対する規制など、インターネット利用の普及に伴って法的規制の在り方等については検討が引き続き行われている状況にあります。このため、関係諸法令の改正の動向によっては新たな法令遵守体制の構築が必要とされる可能性があり、今後、当社の事業運営において何らかの法規制に関連する紛争が発生した場合には、その管轄地、準拠法を含め、当該紛争に関する法的判断を的確に予想することができず、当社が法的リスクを負担せざるを得ない状況となる恐れがあります。また、今後のインターネットに対する日本を含む各国の法規制のあり方次第では、当社グループの将来の事業展開が制約を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、知的財産権について、過去もしくは現時点において、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したことによる損害賠償等の訴訟が発生している事実はありませんが、今後、当社グループの事業分野で当社グループの認識していない特許等が成立した場合又は競合他社が特許等を取得した場合、その内容によっては競争の激化又は当社グループへの損害賠償やロイヤルティの支払請求、使用差止請求等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容に関するリスクについて

① DSPにおける仕入先について

 当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」は、取引形態の性質上、広告枠を提供するSSP事業者又はアドエクスチェンジ事業者からの広告枠の仕入が必要となります。当社においては、新規仕入先の開拓等の施策により、広告枠の確保に努めております。しかしながら、SSP事業者又はアドエクスチェンジ事業者の方針、事業戦略の転換等によって、取引が継続されず広告枠の仕入ができなくなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② DSPにおける販売先について

 当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」の大部分は、広告代理店を経由し広告主へ販売されております。当社グループにおいては、勉強会の開催による当社プロダクトの紹介、新規広告代理店の開拓等の施策により、広告代理店との関係性強化に努めております。しかしながら、主要広告代理店の販売状況や経営環境に変化が生じた場合、もしくは主要広告代理店が他の競合サービスの取り扱いを増やした場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 季節変動について

 当社グループのアドテクノロジーの売上は、広告主の広告予算により構成されるため、広告主による月ごとの予算配分に影響を受け、1~3月に集中する傾向にあります。このため、安定的に月次業績が推移する業種に比べ、売上及び利益の変動が起こりやすく、大きく下振れ幅が顕著な場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 新規サービスについて

 当社グループは、アドテクノロジー及びマーケティングソリューション以外の新規サービスへ取り組んでおりますが、これによる人件費等の追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、当初の予測とは異なる状況が発生し、新サービスの展開が計画どおり進まない場合、投資を回収できず、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 海外企業との取引及び海外展開について

 当社グループでは、DSP「Logicad」において海外の企業と取引を行っております。これらの取引は、国際政治にかかわるリスク、地域特性によるリスクや為替変動によるリスクがあり、こうしたリスクが顕在化した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 海外子会社の財務諸表は原則として現地通貨で作成後、連結財務諸表作成のため円換算されております。したがって、決算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) システム等に関するリスクについて

 当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」は、利用しているサーバーの全てについて、24時間、365日の管理体制を敷いています。これらサーバーについては、重要性に鑑み、原則として二重化する等の不慮の事故への対策を講じています。しかしながら、不可抗力による緊急事態又は偶発事故の発生、行政もしくは司法当局による規制、地震、火災、洪水その他の自然災害や、十分な電気もしくは他のエネルギーの不足又は取得不能による停電、ソフトウエア又はハードウエアの故障や致命的欠陥、コンピュータウイルスやネットワークへの不正侵入、サービス提供妨害その他の破壊的行為、その他当社に通信回線を提供している電気通信事業者の行為等(以上の事象を含むがこれらに限定されるものではない)により、通信回線が提供されない、通信回線及びサーバーが使用不能となる、復旧まで多大の時間と労力を要する、又は復旧の目処が立たず、サービスの再開が不可能になる等の可能性があり、これらの場合には当社グループの経営、事業の継続性等に重大な影響を及ぼす可能性があります。この場合、当社グループの信用が毀損し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 事業運営体制に関するリスクについて

① 小規模組織について

 当社グループは小規模組織であることから、代表取締役を含む役員、幹部社員等の専門的な知識、技術、経験を有している役職員が、経営方針や事業戦略の決定、技術的な判断・遂行において重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会や事業執行会議等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図っており、特定人物に過度に集中しない体制整備を進めておりますが、これらの役職員が何らかの理由により退任、退職し、後任者の採用が困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 人材の確保及び育成について

 当社グループの事業展開においては、技術力を持つ人員のみならず、サービスの販売、運用調整を行う人員も重要な役割を果たしています。技術開発人員において創造性、技術力、サービス販売・運用人員において営業力、運用力、実行力、管理部門強化のために管理能力等様々な能力を有する人材を確保する必要がありますが、インターネット関連ビジネスにおいては人材の流動性が高いため、今後必要な人材を十分に確保できない恐れがあります。当社グループは人材の採用、育成に努め、また一部業務の外注化やシステム化等の業務内容の効率化に取り組みますが、必要な人材を十分に採用、育成できなかった場合には、当社グループの将来の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 内部管理体制について

 当社グループは、当社グループの企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を図る多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(5) その他

① 配当政策について

 当社グループは、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。現在当社グループは成長過程にあると認識しており、内部留保の充実を図り、収益力強化や事業基盤整備のための投資に充当することにより、なお一層の事業拡大をめざすことが、将来において安定的かつ継続的な利益還元に繋がるものと考えております。将来的には各期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案したうえで株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、株主価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、役員及び従業員に対して新株予約権を付与しております。当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は128,000株であり、発行済株式総数14,706,548株の0.9%に相当します。権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、株式価値の希薄化や株式売買需給への影響をもたらし、当社株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ M&A及び資本業務提携について

 当社グループは、同業他社等に対するM&Aや資本業務提携を実施することにより当社グループの事業を補完・強化することが可能であると考えており、出資及びM&Aを積極的に検討してまいります。その際、対象企業や事業の財務、税務、法務、ビジネス等について詳細なデューデリジェンスを行うなど、意思決定のために必要かつ十分と考えられる情報収集、精査、検討をすることにより、可能な限りリスク回避に努めておりますが、出資及びM&A後において、当社グループが認識していない問題が明らかとなった場合や、市場環境や競合状況の変化及び何らかの事由により事業展開が計画どおりに進まない場合、対象企業の株式価値や譲り受けた事業資産の減損処理を行う必要が生じるなど、当社グループの業績や財務状態に影響を与える可能性があります。

 

④ 繰越欠損金について

 当社は、税務上の繰越欠損金を有しております。これは法人税負担の軽減効果があり、今後とも当該繰越欠損金の繰越期間の使用制限範囲内においては納税額の減少により、キャッシュ・フロー改善に貢献することとなります。しかしながら、当社の業績が順調に推移することで繰越欠損金を上回る課税所得が発生した場合には、所定の税率にもとづく法人税等の納税負担が発生するため、当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) ソニーグループとの関係について

① ソニーグループ内における当社の位置づけについて

 当社グループはソニーグループ株式会社を中心とした企業集団に属しております。ソニーグループ株式会社の完全子会社であるソニー株式会社の完全子会社(ソニーグループ株式会社の完全孫会社)として当社株式を直接保有する親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は「エンタテインメント・テクノロジー&サービス」セグメント(提出日現在)に区分され、当社グループはその中においてインターネット関連サービスを展開する企業集団として位置付けられております。

 ソニーグループ内においては、インターネット関連サービスを展開する企業は他にも存在しますが、当社グループは主にRTBを活用したDSPを広告主及び広告代理店向けに提供する事業を国内において展開しており、これらの企業との事業及び展開地域における競合は生じておりません。

 これらのことから、当社グループ事業に係るソニーグループ内における競合は生じておらず、また現時点では今後発生する予定はないものと認識しておりますが、将来的にソニーグループの経営方針に変更が生じた場合等には、当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

② ソニーグループとの取引及び取引条件について

 ソニーグループ内において、ソニーグループ株式会社の完全孫会社であり当社株式を直接保有する親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社とは、当社グループのアドテクノロジーにおいて通信サービスとの広告宣伝取引を行っております。当該取引にあたっては、当社の利益を害することのないよう、他の広告主と同等の取引条件としております。

 

③ ソニーグループとの人的関係について

 本書提出日現在、当社取締役6名のうち、当社グループの親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の業務執行者1名を選任しています。兼任している役員は以下のとおりであります。

当社における役職

氏名

兼務先における役職

取締役(非常勤)

中川 典宜

ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社

代表取締役 執行役員社長

 また、当社グループの事業展開においては、創造性、技術力、実行力、管理能力等様々な能力を有する人材を確保する必要があります。しかしながら、インターネット関連ビジネスにおいては人材の流動性が高いため、優秀な人材を適時に採用することは容易ではありません。そのため、当社グループではソニーグループの人的資源を活用し、経営体質の強化と事業の拡大に資するため、これまで出向者を受け入れてきました。なお、現在、当社グループの各部門を統括し、承認権限を持つ者は、原則としてソニーグループ各社から当社に転籍しています。

 なお、当社グループに対するソニーグループの出資比率が変更された場合には、これらの人的関係が変動する可能性があります。

 

④ ソニーグループとの資本的関係について

 当連結会計年度末現在において、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は当社株式7,861,200株(当社議決権比率の54.07%)を保有しており、当社グループはソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の子会社となっております。ソニーグループにおいて、その出資比率は、直接保有、間接保有分を含め、当面過半数が維持される見込みです。しかしながら、何らかの理由によりソニーグループの出資比率が過半数を下回った場合、後記「5 経営上の重要な契約等」に記載のとおり、特許権においてソニーグループ株式会社の保有する広範な特許資産を利用することができなくなる可能性があり、他社の特許侵害回避や訴訟等への対応で費用が発生し、当社グループの業績や財務状態に影響を与える可能性があります。一方で、ソニーグループの評判が何らかの理由で著しく損なわれた場合、それが当社グループに起因するものでない場合にも、当社グループの業績や財務状態に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当社グループが事業を展開しているインターネット広告市場は、引き続き拡大を続けています。「2023年日本の広告費」(株式会社電通調べ)によると、2023年のインターネット広告費は、コネクテッドTVの利用拡大に伴う動画広告需要の高まりや、デジタルプロモーション市場の拡大などが成長に寄与し、前年から7.8%増加して3兆3,330億円となりました。

 このような経営環境のもと、当社グループは、「情報通信技術の進歩を人に優しいかたちにして、愉快なる未来を創る」というミッションのもと、2024年3月期は経営方針として、既存事業改善によるキャッシュ創出力強化に向けた「新アルゴリズム導入による効果改善」「ASP市場におけるポジションチェンジの推進」「ASA海外拠点展開による売上拡大」、新たに柱となる事業の育成による再成長のための「独自DSP立ち上げ支援サービス強化」「AIを活用したDTC(注1)支援ソリューションの立ち上げ」を経営方針として取り組みました。

 当連結会計年度は売上高においては、アドテクノロジー、マーケティングソリューションの減収により、当

連結会計年度では減収となりました。営業利益、経常利益は、アドテクノロジーの増益、組織再編によるコスト削減効果の発現により増益となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純損失は、中長期戦略の再定義によるデジタルソリューションの将来計画の見直しに伴うのれん等の減損損失を1,124,873千円計上した影響により減益となりました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,462,278千円減少し、6,674,989千円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ434,865千円減少し、2,974,932千円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,027,412千円減少し、3,700,057千円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高は9,336,856千円(前期比18.4%減)、営業利益は102,212千円(前期比492.3%増)、経常利益は95,990千円、親会社株主に帰属する当期純損失は1,028,592千円となりました。

 

 当社グループはマーケティングテクノロジー事業の単一セグメントでありますが、取扱いサービス別の売上高の概況は次のとおりであります。

 

1.アドテクノロジー

 広告主の広告配信効果を最適化するための広告買付プラットフォームであるDSP「Logicad」の提供を行っております。当連結会計年度は、上半期の減収傾向を下半期の特定大型案件によりリカバリーを行うも、

アドテクノロジーの売上は前期比6.1%減の6,650,589千円となりました。

 

2.マーケティングソリューション

 広告主と媒体を限定したクローズド型アフィリエイト「SCAN(スキャン)」の提供を行っています。当連結会計年度は、前期に実施したメディアデータを軸としたソリューション事業の売却及びASP領域の競争激化の影

響等により、マーケティングソリューションの売上は前期比66.8%減の821,871千円となりました。
 

3.デジタルソリューション

 連結子会社のルビー・グループ株式会社では、ラグジュアリーブランド向けEコマースの構築・運営・コンサルティングを提供しています。株式会社ASAではWebサイト、モバイル(Webアプリケーションなど)をはじめとするデジタルコンテンツの制作及び開発を行っています。連結子会社であった株式会社ゼータ・ブリッジは、2023年9月1日にSMN株式会社へ吸収合併されておりますが、SMN株式会社において全国各地のテレビCMメタデータの販売などのプロモーション関連領域のサービスを引き続き提供しています。当連結会計年度では子会社の株式会社ASAの受注案件数減少等の影響により、デジタルソリューションの売上は前期比2.8%減の1,792,000千円となりました。

 

4.その他

 テレビ番組表ポータル「テレビ王国」やインターネット利用支援ポータル「PreBell」の広告枠の企画及び販

売事業を行っています。当連結会計年度は、今期より「Prebell」の広告販売を開始した影響等により、その他の売上は前期比80.6%増の72,393千円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、投資活動及び財務活動による支出が営業活動による収入を上回ったため、前連結会計年度末に比べ164,044千円減少し2,433,603千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動においては、減価償却費605,889千円、のれん償却額166,340千円、顧客関連資産償却額63,700千円、減損損失1,124,873千円を計上した一方で、税金等調整前当期純損失1,040,858千円、売上債権が264,262千円増加、仕入債務が90,487千円減少、法人税等の支払額66,235千円がありました。その結果、営業活動により得られた資金は521,898千円となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動においては、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出が430,398千円、造作・サーバー等の有形固定資産の取得による支出が34,813千円となりました。その結果、投資活動により使用した資金は463,172千円となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動においては、長期借入金の返済による支出が226,536千円となりました。その結果、財務活動により減少した資金は228,750千円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、マーケティングテクノロジー事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載は省略しております。

 

a.生産実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

アドテクノロジー

6,650,589

93.9%

マーケティングソリューション

821,871

33.2%

デジタルソリューション

1,792,000

97.2%

その他

72,393

180.6%

合計

9,336,856

81.6%

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

(子会社への投資及びのれんの減損判定)

 子会社への投資及びのれんについては、事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化等、減損の判定が必要となる兆候が発生した場合に減損の判定を行っており、減損判定時には、事業計画の達成状況を検討し、報告単位の事業計画を基礎とした見積将来キャッシュ・フローに基づくインカムアプローチ(現在価値技法)により実質価額を算定しています。子会社への投資及びのれんの減損判定における報告単位の実質価額の算定は、その性質上、判断をともなうものであり、多くの場合、重要な見積り・前提を使用します。

 当連結会計年度において、のれん及び顧客関連資産を含む資産グループについて、減損の兆候を識別しております。減損の判定で必要な割引前将来キャッシュ・フローを見積もった結果、その総額がのれん及び顧客関連資産を含む資産グループの帳簿価額を下回り減損損失の認識が必要と判断されたため、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

 これらの見積りにおいて用いた仮定は、将来の不確実な経済条件の変動等によって影響を受ける可能性があり、実際の収支が見積りと異なった場合には、減損損失の計上に伴い、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に影響を与える可能性があります。

(繰延税金資産)

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1) 財政状態

(資産合計)

 当連結会計年度末における流動資産は、4,788,173千円となり、前連結会計年度末に比べ91,788千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が154,044千円減少した一方で、売掛金及び契約資産が264,262千円増加したことによるものであります。固定資産は1,886,815千円となり、前連結会計年度末に比べ1,554,066千円減少いたしました。これは主に、のれんが805,164千円、顧客関連資産が411,174千円減少したことによるものであります。

 その結果、総資産は6,674,989千円となり、前連結会計年度末に比べ1,462,278千円減少いたしました。

 

(負債合計)

 当連結会計年度末における流動負債は1,845,067千円となり、前連結会計年度末に比べ99,674千円減少いたしました。これは主に、買掛金が90,487千円、未払消費税等が25,945千円減少したことによるものであります。固定負債は1,129,864千円となり、前連結会計年度末に比べ335,190千円減少いたしました。これは主に、長期借入金が226,704千円、繰延税金負債が107,241千円減少したことによるものであります。

 その結果、負債合計は2,974,932千円となり、前連結会計年度末に比べ434,865千円減少いたしました。

 

(純資産合計)

 当連結会計年度末における純資産合計は3,700,057千円となり、前連結会計年度末に比べ1,027,412千円減少いたしました。これは主に、資本金及び資本剰余金が14,999千円増加した一方で、利益剰余金が1,028,592千円減少したことによるものであります。

 その結果、自己資本比率は54.9%(前連結会計年度末は57.7%)となりました。

 

2) 経営成績

(売上高)

 アドテクノロジー、マーケティングソリューションの減収により、当連結会計年度は減収となりました。この結果売上高は9,336,856千円となりました

 

(売上原価、売上総利益)

売上原価は6,741,276千円となりました。これは主に売上の減少にともなう仕入費用の減少によるものです。この結果、売上総利益は2,595,579千円となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益)

 販売費及び一般管理費は2,493,367千円となりました。これは主に事業再編の実施にともなう給与等の減少によるものです。この結果、営業利益は102,212千円となりました。

営業外収益は15,071千円、営業外費用は21,293千円発生しており、経常利益は95,990千円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 減損損失を1,124,873千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は1,028,592千円となりました。

 

当社グループはマーケティングテクノロジー事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の区分による分析は省略しております。

 

3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、広告枠の仕入費用、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備資金需要としては、主にソフトウエア開発にかかる無形固定資産投資、サーバー等の有形固定資産の取得によるものであります。

(財務政策)

 当社グループは、運転資金及び設備資金については主に、内部資金により調達しております。また、金融上のリスクに対応するため主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結することで、手許流動性を確保しております。

 

c.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況

 当連結会計年度は、売上高はアドテクノロジーにおいて下期はリカバリーをおこない減収幅縮小したものの、デジタルソリューションにおける株式会社ASAの海外事業の拡大遅れや、マーケティングソリューションにおけるASP領域の競争激化の影響等があり、期初計画を下回って着地いたしました。しかしながら、営業利益におきましては、アドテクノロジーの増益や構造改革による収益力回復により、期初計画を上回って着地いたしました。期初計画に比べ、売上は3,163百万円(△25.3%)減少し9,336百万円、営業利益は2百万円(+2.2%)増加し102百万円となりました。

 

指標

2024年3月期

(実績)

2024年3月期

(期初計画)

2024年3月期

(期初計画比)

売上高

9,336百万円

12,500百万円

△3,163百万円

(△25.3%)

営業利益

102百万円

100百万円

2百万円

(+2.2%)

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、システム等、事業運営体制、その他、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当社グループは常に市場動向を留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズにあったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

(4)経営戦略の現状と見通し

 当社グループは、「情報通信技術の進歩を人に優しいかたちにして、愉快なる未来を創る」というミッションを掲げており、ビッグデータ処理、人工知能、金融工学の3つのコアテクノロジーを源泉とした、アドテクノロジーのDSP「Logicad」を中心とする「マーケティングテクノロジー事業」の単一セグメントを提供しております。

 2024年4月に策定いたしました中長期戦略におきまして、「最先端のデータサイエンスとビッグデータを駆使してクライアントのデジタルマーケティング領域の課題を解決する総合デジタルマーケティングテクノロジー企業」をめざす姿に位置づけ、以下に掲げる3つの取り組みを進めてまいります。

①3つの構造改革の推進による成長性と収益性の向上

 「中核事業改革」・「事業ポートフォリオの再定義」・「収益構造改革」の3つの構造改革の加速により収益性を向上し、成長領域に配分する投資原資を創出してまいります。

②ソニーグループ連携の更なる深化と新規事業創造による成長

 ソニーグループの有する経営資源と当社の培ってきたコア・ケイパビリティ(「AI技術」・「ビッグデータ処理」 ・「データ可視化」・「高速マッチング」)を最適融合させた新たな成長の柱となる事業を創造いたします。

③成長を支える強靭な経営基盤の確立

 人的資本経営・先端技術投資・サステナビリティを推進し、当社の成長を支える強靭な経営基盤を確立していきます。

これらの活動により企業価値の更なる向上に努めてまいります。現時点において、対処すべき課題として当社グループで認識している事項につきましては、以下のとおりであります。

 

(5)経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報にもとづき最善の経営方針を立案し、社会貢献を前提として企業価値を最大限に高めるべく努めております。経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

商号・商標及び特許に関する契約

 従来、当社グループの商号に用いていた「So-net」及び「ソネット」の商標の商標権はソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社に帰属しており、当社はソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社との間で「So-net」及び「ソネット」商標権の通常使用実施権に関し、それぞれ以下のとおり使用許諾契約を締結しています。また、ソニーグループの保有する広範な特許資産を利用しつつ、他社から特許侵害で訴えられる可能性を最小限に抑えるため、特許等については包括的な権利不行使契約を以下のとおり締結しています。

 

①商号及び商標使用の許諾に関する契約(契約締結日:2008年8月31日)

 当社グループがソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の運営するサービスの広告営業を行う場合は、広告営業による売上高にもとづき使用許諾料をソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社に支払います。なお、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の当社に対する出資比率が過半数を下回ることとなった場合、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は使用許諾契約を解除することができます。

 契約期間は、2008年9月1日より2009年8月31日(1年単位で自動更新)になります。

 

②特許権等に関する権利不行使契約(契約締結日:2011年12月22日)

 特許権等に関する権利不行使契約にもとづき、当社及びソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は、それぞれ相手方及びソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の親会社等が保有する特許権及び実用新案権を利用した場合でも、かかる権利の行使を受けません。なお、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の当社に対する出資比率が過半数を下回ることとなった場合、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社はかかる権利不行使契約を解除することができます。

 契約期間は、2012年1月1日より2012年9月30日(1年単位で自動更新)になります。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。