文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)企業理念
帝国ホテルは、創業の精神を継ぐ日本の代表ホテルであり国際的ベストホテルを目指す企業として、最も優れたサービスと商品を提供することにより、国際社会の発展と人々の豊かでゆとりのある生活と文化の向上に貢献する。
(2)経営方針・経営戦略
当社グループは、東京事業所建て替え後を見据えた『中長期経営計画2036』を策定しております。
私たちは私たちの誇る誠実で人間味あふれる従業員の存在が企業価値を高める上で何よりも大切な、企業としての原点だと考えています。
ホテル業として従業員の満足度を高めながらサービスレベルを向上させれば、お客様の満足度が上がり、その結果として収益が向上し、その収益をハードウェアの改善や人材投資につなげることで従業員満足度とサービスレベルが更に高まるという理想的なサイクルが出来上がります。そのサイクルを発展的に循環させることであらゆるステークホルダーの期待に応えていくことが我々の使命であると考えています。
しかし、昨今、競合する新規ホテルの相次ぐ開業によりハードウェアにおける差は拡大し、従業員の努力だけではお客様に十分にご満足いただくことが難しくなってきました。
また、コロナ禍によりホテル事業のボラティリティの高さをあらためて思い知るところとなりました。
当社はこのコロナ禍を新たな取り組みで乗り越え、さらに地域一帯の再開発により新たなハードを手に入れ、当社の誇る従業員がその力を最大限に生かせる環境を整えるとともに、不動産事業の拡充により収益を安定させます。
また、視野が広く、語学、ICTなどに長けた顧客対応力の高い従業員を育成することでお客様の満足度を更に高めると共に、新たなハードや新規事業を通じて更に幅広い顧客を獲得し、日本の迎賓館としての役割を継続して担っていきます。
目指すべき姿
創業の精神を継ぐ「日本を代表するホテル」として、人を原点とする帝国ホテルブランドをより進化させる。また、いかなる経営環境下においても企業継続できる体制を構築し、来る2040年の開業150周年を目指す。
基本戦略
①グランドホテルの進化
日比谷本館建て替えによるハードウェア刷新と人材育成強化によるヒューマンウェアの充実をもって当社ブランド力を高める。
②企業としての安定的成長
今後のホテル事業を盤石の体制とするため、不動産事業等の拡充により、収益力・財務基盤の強化を図る。
③社会的課題の解決
当社企業活動の全てについてSDGs貢献度を最大限向上させる。
(3)経営環境及び優先的に対処すべき課題
今後も、地政学リスクの高まりや原材料、労務費の高騰が継続するものと思われますが、雇用、所得環境の改善を背景として個人消費や企業収益の回復傾向が続くと予想されます。
このような状況のもと、当社グループは2024年度から「中長期経営計画2036」のフェーズⅡを迎えます。
フェーズⅡでは、帝国ホテル東京の事業規模の縮小に伴う売上げの減少を補うべく、現本館におけるリソースを最適化し、適切な価格設定や効果的な販売促進により売上げと利益の最大化に努めてまいります。帝国ホテル大阪では2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に伴う賓客や訪日外国人客を迎えるべく万全な態勢を整えるとともに、90周年を迎えた上高地帝国ホテルでは次の100周年に向けてさらなる商品力、サービス力の強化に努めてまいります。そして、京都新規ホテルについても2026年の開業に向けて着実に準備を進めるなど「中長期経営計画2036」の実行に全社一丸となって取り組んでまいります。
また、「中長期経営計画2036」では人材を当社の原点と位置づけ、従業員の育成と満足度を高めることでサービスレベルを向上させ、売上げと利益の伸長を図り、その収益を人材や施設への投資に充てるという理想的なサイクルの循環を目指しています。京都新規ホテル、帝国ホテル東京の建替え後に向けて質の高いサービスを未来に伝えていくためにも、人的資本への投資を引き続き推進してまいります。
SDGsへの取り組みにつきましては、引き続きCO₂排出量や食品ロスの削減、健康経営や女性活躍の推進などの課題に取り組み、企業収益の確保、持続的成長とともに社会的責任を果たしてまいります。
今後も当社の企業理念である「国際的ベストホテル」を目指し、全力で取り組んでまいります。
(サステナビリティに関する企業の取組み)
当社グループは2020年4月、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)への対応を積極的に推進するため、従来の「環境委員会」を改め「サステナビリティ推進委員会」を発足させ、SDGsを基盤とした取り組み(環境配慮、リスク管理、社会貢献、ダイバーシティ等)を進めています。
『中長期経営計画2036』においても社会的課題の解決は重点課題の一つと位置付け、当社グループ企業活動の全てについてSDGs貢献度を最大限向上させることを戦略としております。
(1)ガバナンス
サステナビリティ推進委員会は社長を委員長とし、全役員・全部長・子会社社長で構成され、定例会議を年2回、その他必要に応じ随時開催しております。審議内容は、サステナビリティ推進活動の4つの基本方針(下記)に基づき、サステナビリティ全般に関わる法定報告・提出書類の適法な管理、各取り組みの適正性等を常に念頭に置き、目標の設定、計画の立案ならびに進捗の管理を行い、その審議・決議内容は取締役会において随時報告しております。なお取締役会は、これらの取り組みの進捗確認や協議等を行っております。
なお本委員会の下に5つの分科会を置き、部門を横断したメンバーがSDGsを始めとした様々な社会的課題に対し、全社的な推進体制で組織的かつ計画的に取り組んでいます。
(2)リスク管理
サステナビリティに係るリスクの識別・評価ならびに管理については、サステナビリティ推進委員会事務局である総務部が各部門と連携し、適正な分析・評価、リスクの予防措置、発生時の対応を検討してリスク管理委員会において審議し、必要に応じて取締役会に報告するプロセスとしております。
特に、気候変動対策に基づく法改正・規制に関し速やかに対応するとともに、異常気象に起因する各種調達資材の価格上昇、集中豪雨をはじめとした大規模自然災害による被害等については、当社グループ事業の持続可能性に大きく影響するリスクとして評価しております。なお人的資本・多様性に関するリスクを含め、その他当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は、
(3)気候変動に対する戦略
『中長期経営計画2036』において、企業活動の全てについてSDGs貢献度を最大限向上させることを戦略としております。特にリスクとして評価している気候変動に対し、新ハードウェアへの最新技術導入による環境負荷低減、省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギーの導入検証等の取り組みを進めてまいります。
(4)気候変動に対する指標と目標
[指標]直営事業所のScope1、2の温室効果ガス排出量を指標と定めております。
[目標]2030年度までに2013年度比で60%削減することを目標としております。
※排出量数値は概算となります。
(5)人的資本、多様性に関する戦略
中長期経営計画2036の各課題を達成するため、より多様な強みを持った人材が生き生きと力を発揮できる環境を整えることで、社会情勢やお客様ニーズ等の変化への対応力を有する組織を目指します。
①人材育成方針
事業の持続的な成長や発展の原点は従業員です。当社グループは、企業価値向上の要諦が優秀な従業員を育成し成長を促すことにあり、顧客満足度の向上は多様な人材が年齢・性別・国籍等を問わずそれぞれの強みを発揮することでもたらされると考えております。
今後も企業価値と顧客満足度の継続的な向上を目指すにあたり、下記の方針に基づく人材育成を進めてまいります。
イ 帝国ホテルの創業の精神や伝統を理解し、最高のサービスや商品を提供できる人材であること
ロ 持続的な発展に向けて、時代の潮流や新たな技術等を当社事業に的確且つ効果的に反映しながら、
イノベーションや変革を実現する人材であること
ハ 様々な文化的背景や多様な価値観を有し、多様性を受容、活用して当社グループの発展に繋げる人材である
こと
一人ひとりの成長が企業の発展にも直結するため、従業員が自律的に自身の能力向上に取り組める制度を整えています。また、多様な従業員が優れたサービスや商品を提供し続けるために、安心して働き続けられる環境の整備にも取り組んでいます。
イ 能力向上に向けた環境整備
(a) 語学研修や海外留学支援の実施
(b) 自己啓発(資格取得や通信教育受講)費用援助制度整備
ロ 安心して働き続けるための環境整備
(a) 健康経営 フィジカル・メンタルの両面から従業員の健康増進を進める。
(b) 両立支援 法定以上の休業日数等を制度化し、仕事と育児・介護との両立を支援する。
(c) 職場環境 研修や社内周知により各種制度の意義や目的を従業員が理解することで、
制度を利用しやすい環境を整える。
(6)人的資本、多様性に関する指標と目標
当社グループでは、上記「(5)人的資本、多様性に関する戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標は、次のとおりであります。
また、当社グループでは、上記「(5)人的資本、多様性に関する戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
当社グループは事業等のリスクに関し、諸規程を整備し、各種リスクに対する予防および発生時の対処等について研修、訓練を実施し、リスク管理の実効性を向上させております。また定期的に「リスク管理委員会」を開催し、事業運営に伴う各種リスクの適正な分析・評価、リスクの予防措置、発生時の対応等を検討し、総合的なリスク管理体制を整備しております。
これらの体制を踏まえ、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。
(1)自然災害及び火災等の事故の発生
大規模な地震や台風等の自然災害や火災等の事故の発生は、当社グループの所有する建物、施設等に損害を及ぼし、一時的な営業停止による売上減や修復のための費用負担が発生する可能性があります。
また、特に近年頻発する台風・集中豪雨の規模・範囲によっては、当社グループに直接的な損害が無い場合でも、消費マインドの減退や、国内交通機関への影響による来客数の減少等が予想され、当社グループの収益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、事業継続計画(BCP)、各種災害対策マニュアルに基づき、備蓄資材・食料等の管理、全事業所での年間約80回の総合・部分訓練等により、対応力を強化するとともに、定期的なマニュアル見直しによりその実効性を高め、災害時のお客様・従業員の安全を守り、速やかに事業再開に向けた活動に移行できるよう、体制を整備しております。
新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症の発生やまん延は、海外からの入国規制や渡航自粛による訪日外国人利用客の減少、国内での不要不急の外出自粛要請や消費マインドの減退などによる経済活動の減速、停滞が引続き予想されます。
当社グループにおいては、全事業所の宿泊需要の低下に伴う売上げの減少に加え、会食や宴会利用が低調となり、当社グループの収益確保に大きく影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、マスク、消毒液の備蓄やサーマルカメラの常備、在宅勤務体制の整備などを推進し、お客様・従業員の安全・安心を守るべく防疫体制を整備しております。
(3)テロ、戦争の勃発
テロ行為や戦争、紛争等の勃発による世界情勢の変化により、海外渡航制限や自粛による外国人利用客の減少、観光、レジャーや慶事に対する消費マインドの減退、加えて原材料・建築資材等の調達コスト上昇の長期化が予想されます。
当社グループにおいては、平常時の宿泊客外国人比率が約5割の東京本社、大阪事業所の売上げ回復の遅れに加え、自粛要請等による宿泊、各種会議・宴会の取り消しなどにより当社グループの収益確保に影響するとともに、調達コスト上昇により利益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、テロ対策マニュアルを整備し、行政の指導に基づく訓練等による対応力と実効性を高め、お客様・従業員の安全を確保する取り組みを推進しております。
また、宿泊者構成の多様性にも留意し、国内外の均衡のとれた営業活動を展開し、業績への影響を最小限に留めるよう努めております。
当社グループは、食に関わる全社横断的な組織として「食の安全と信頼委員会」を設置し、食中毒対策、食品衛生、食品表示、アレルギー対策、防除等に取り組むなど、食の安全管理には細心の注意を払っておりますが、ノロウイルス等による食中毒やアレルギー事故の発生等食品衛生や食の安全、安心に関する問題が発生した場合、当社グループ全体への信用の失墜とブランドの低下ならびに損害賠償等の費用負担に加え、各種宴会の取消しならびに受注減、レストランの来客数減等により、当社グループの収益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、食品安全管理運用書を整備し、全事業所の飲食関連施設・従業者に対する定期的な衛生管理点検、腸内検査、アレルギー対応シミュレーション、メニュー表示チェック等を実施し、定期的な運用書の見直しによりその実効性を高め、食に対するお客様の安心・安全の確保に努めております。
(5)個人情報や営業上の機密情報の漏洩
顧客の個人情報や営業上の機密情報の管理は、社内の情報管理、監視部門が中心になり、外部への流出防止を行っておりますが、情報の漏洩が発生した場合、当社グループ全体への信用の失墜とブランドの低下ならびに損害賠償等の費用負担により、当社グループの収益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、各種規程に基づき、定期的な個人情報保護状況の確認、サイバー攻撃対策、SNSモニタリング等を実施し、漏洩の防止に努めております。
当社グループは、接客業を主としており、人材育成の強化を通じてさらなるサービスの向上に努めるとともに、人材の確保ならびに従業員満足の向上にも努めております。
今後、関係法令・社会保険や労働条件・処遇等の労務環境の変化に対応する場合、人件費や業務委託費の増加となり、また人手不足の深刻化により商品提供が滞る場合、当社グループの収益確保に影響を与える可能性があります。
これらのリスクに対し、ハラスメント対策、メンタル疾患防止、時間外就労の管理の徹底および多様な働き方に対応する制度の整備等、従業員のケアに重点を置いた取り組みを進め、また雇用においては、正社員の計画的な採用、中途採用の通年実施に加え、非正規雇用市場の動向も注視し、適正な要員確保に努めております。
当社グループは、ホテル建物等の固定資産を保有しておりますが、今後一定規模を上回る不動産価額の下落や事業収支が悪化した場合、固定資産の一部について減損損失が発生する可能性があります。
これらのリスクに対し、設備投資計画時に当該事業用固定資産から生成される将来キャッシュ・フローが十分に見込まれるか、投資回収可能性を慎重に精査した上で意思決定を行うと共に、定期的に進捗及び達成度評価を実施しております。
ホテル事業においては、ホテル設備や土地を長期に賃借しているものがあり、当該不動産の継続利用が困難となった場合や契約期限が到来した際に更新されない場合は業績に影響が生じる可能性があります。また、長期賃貸借契約の途中で、何らかの事情に基づき契約が中途解約されることがあった場合、残存期間分の未経過賃料のうちの一部について、賃料の支払又は補填の義務が生じる可能性があります。
これらのリスクに対し、不動産の所有者の信用度等を勘案した上で、継続利用の蓋然性が高いと判断されるホテル不動産に対してのみ契約を締結するよう努めるとともに、新規の契約にあたっては賃借期間を可能な限り長期とできるよう交渉を行うように努めております。
当社は帝国ホテル東京の本館、タワー館及び駐車場ビルの建て替え計画の実施方針を決定しております。本建て替え計画の実施時期はタワー館が2024年度~2030年度、本館が2031年度~2036年度を予定しており、帝国ホテル東京としてのホテルの営業は継続することを計画しておりますが、建て替えに伴う一部事業規模の縮小による一時的な収益力低下などにより当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。
また、建て替えに伴う総事業規模は約2,000億円から約2,500億円程度を見込んでおりますが、物価上昇による資材の高騰や労務費の上昇などが生じた場合、想定していた費用を上回る負担が発生する可能性があります。加えて、本建て替え計画の実施資金に係る財務計画は、今後の関係諸機関との協議等を経た上で策定する予定ですが、その内容によっては、今後、本建て替え計画の実施資金の調達コストが当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、タワー館の建て替えについては、三井不動産株式会社(以下「三井不動産」といいます。)との共同事業として行うことを目指しており、現タワー館を解体後、当社が敷地を分筆したうえで、その土地の共有持分の一部を三井不動産に有償譲渡することとしております。当社と三井不動産は、協議の上、本譲渡にかかる売買契約の締結を行う予定ですが、その締結時期及び譲渡の実行時期については未定であり、当該売買契約の締結が予定通り実施されない場合には、本譲渡が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
なお、本計画の最終的な実施にあたっては、都市計画法、建築基準法その他の関連諸法令に従った許認可等が得られること、及び近隣の権利者等の関係諸機関との合意が成立することが前提となります。そのため、必要な許認可等が得られない場合や、関係諸機関との合意が成立しない場合等には、当社は最終的に本計画を実施しない又は建築工事の遅れ等で本計画が計画通りに進捗しない可能性があります。
その他の関係会社である三井不動産は、当連結会計年度末現在、当社の発行済株式総数の33.2%を保有しております。2007年に同社の資本参加を受けた際に基本協定書を締結し、以降、当社経営の自主性等を最大限尊重する友好的なパートナーとして将来的な再開発計画、ホテル・リゾート分野等での協力・提携等をともに検討しており、三井不動産の意向は当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、業務・資本提携の強化を図る人的交流の一環として、当社は三井不動産より役員を兼務する人材を受け入れておりますが、三井不動産との取引条件については、第三者と比較検討を実施した上で公正な取引条件で実施しており、当社の独立性に影響を及ぼすリスクはないと考えております。ただし、何らかの要因により三井不動産との関係に変化があった場合や、三井不動産の出資方針や取引方針等の変更が生じた場合には、出資関係、人的関係及び取引関係が見直される可能性があり、その結果当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は、株式会社東京証券取引所の定めるスタンダード市場の上場維持基準のうち、流通株式比率について、2024年3月31日時点において25.0%となっており、同社が上場維持基準として定める流通株式比率25%以上に近接していることから、何らかの事情により流動性が低下した場合には、上場維持基準に抵触する可能性があります。
今後もIRの充実や株主との対話など、引き続き各種取組を継続、基準への適合維持に努めてまいります。
当社グループの売上高の約8割が東京本社であり、特に上記事項が東京本社にて発生した場合、その他予期し得ない問題等が発生した場合、当社グループ全体の収益確保に大きく影響する可能性があります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、地政学リスクの高まりや物価上昇に伴う先行き不透明感がありましたが、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類となり、企業収益や個人消費等に持ち直しの動きが見られるなど、景気は緩やかに回復してまいりました。
ホテル・観光業界におきましては、国内観光需要や円安を背景としたインバウンド消費が伸長したことに加え、法人需要が回復するなど、改善傾向が継続いたしました。
このような状況のもと、当社グループにおきましては「中長期経営計画2036」のフェーズⅠの最終年度として国内観光需要やインバウンド需要を取り込むべく、高品質、高付加価値の商品やサービスの提供に努めるなど売上げと利益の増進に努めてまいりました。また、2023年8月には『インペリアルバイキング サール』の開店65 周年を機にリニューアルを行い、フランス料理に加え日本料理と中国料理を新たにメニューに加えたほか、2024 年3月にはシャンパンを中心に発泡性飲料を取り揃えた『THE RANDEZ-VOUS AWA(ランデブー アワ)』をオープンするなど、商品力の向上や新店舗の展開にも取り組んでまいりました。
SDGsへの対応としては、直営事業所における客室アメニティの一部を竹や木製に切り替えプラスチック使用量を削減したほか、サステナビリティ調達方針を策定し各パートナー企業と協同して持続可能で責任ある調達を進めました。また、人的資本に関する指標や目標に基づき、従業員の能力向上、健康経営や育児・介護の両立支援等の環境整備を進め、女性管理職比率や男性の育児休業取得率の向上を図るなど、人的資本と多様性の推進に注力しました。
経費面におきましては、生産性の向上や適切なコスト管理を徹底することで、引き続き利益の最大化に努めてまいりました。
以上の結果、当期における当社グループの売上高は前期比21.8%増の53,335百万円、EBITDAは前期比33.2%増の5,813百万円、営業利益は前期比715.9%増の2,839百万円、経常利益は前期比99.4%増の3,296百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比73.1%増の3,377百万円となり、前期を大幅に上回る結果となりました。
※ EBITDAとは、経常利益に支払利息及び減価償却費を加えた利益指標であり、当社は『中長期経営計画2036』において同指標を定量目標として掲げております。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
①ホテル事業
イ 帝国ホテル本社
宿泊につきましては、会員顧客の継続的な利用に加え、ビジネス・レジャー需要が回復し円安に伴いインバウンド需要が増加した結果、稼働率は前期比8.6ポイント増の64.8%となり、一室単価も引き続き高単価販売に努めた結果、前期比31.4%増の63,058円となりました。サービスアパートメントは、短期滞在需要を取り込み繁閑に合わせた販売施策を実施したことから、稼働率は65.1%となりました。その結果、売上高は前期比47.9%増の10,059百万円となりました。
食堂につきましては、記録的な酷暑による外食需要低下の影響を受けたものの、『インペリアルバイキング サール』のリニューアルや、慶事、歓送迎会需要の獲得に注力した結果、売上高は前期比11.2%増の6,395百万円となりました。
宴会につきましては、一般宴会は新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う法人需要の回復により、飲食を伴う宴会を中心に大型宴会の件数や人数が増加し、売上増となりました。婚礼は件数、単価が減少したものの、列席者の招待促進等に注力し人数が増加したことから売上増となりました。その結果、売上高は前期比24.9%増の11,555百万円となりました。
外販につきましては、ホテルショップ『ガルガンチュワ』は来客数の増加や高単価商品の充実により回復傾向にありましたが、巣ごもり需要が沈静化した影響でオンラインショップや卸部門が低調だったことから、売上高は前期比4.1%減の3,185百万円となりました。
ロ 帝国ホテル大阪
宿泊につきましては、インバウンド需要や国内外の大型団体を安定的に受注した結果、稼働率は前期比18.1 ポイント増の49.5%となりました。一室単価も継続的な高単価販売を実施した結果、10.2%増の28,442円となったことから、売上高は前期比74.3%増の1,947百万円となりました。
食堂につきましては、個人及び法人利用の回復と「苺スイーツバイキング」を始めとする企画商品の販売が好調であった結果、売上高は前期比22.9%増の1,257百万円となりました。
宴会につきましては、立食形式の宴会や大型宴会の受注が増え、婚礼もコロナ禍の反動により件数、人数、単価ともに増加したことから、売上高は前期比38.3%増の3,966百万円となりました。
以上のことなどから、ホテル事業の売上高は前期比26.0%増の51,125百万円となり、セグメント利益は前期比437.0%増の4,855百万円となりました。
②不動産賃貸事業
タワー館閉館に向けたテナントの退去により、売上高は前期比30.7%減の2,219百万円となり、セグメント利益は前期比70.0%減の408百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、27,738百万円となり、前期と比べ409百万円(1.5%)増加いたしました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を計上していることなどから、4,201百万円の収入(前期は税金等調整前当期純利益の計上などにより3,938百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、3,073百万円の支出(前期は1,584百万円の支出)となりました。有形固定資産の取得による支出が前期に比べて増加したことなどにより、使用した資金は1,489百万円増加いたしました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、718百万円の支出(前期は240百万円の支出)となりました。配当金の支払額が前期に比べて増加したことなどにより、使用した資金は、前期と比べ477百万円増加いたしました。
(注) 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の金額であります。
(注) 1 客室の収容能力は客室数により算出しております。
2 食堂及び宴会の収容能力は着席数により算出しております(宴会についてはディナー形式の着席数としております)。
当連結会計年度及び前連結会計年度の宿泊客、食事客及び宴会客の利用割合は次のとおりであります。
(注) 1 客室の収容能力は客室数により算出しております。
2 食堂及び宴会の収容能力は着席数により算出しております(宴会についてはディナー形式の着席数としております)。
当連結会計年度及び前連結会計年度の宿泊客、食事客及び宴会客の利用割合は次のとおりであります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における資産の合計は65,706百万円(前連結会計年度末61,743百万円)となり、3,963百万円増加いたしました。うち流動資産は35,606百万円(同34,807百万円)と、798百万円増加いたしました。これは売掛金が増加したことなどによるものであります。固定資産は30,100百万円(同26,935百万円)と、3,164百万円増加いたしました。これは有形固定資産が増加したことなどによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の合計は22,670百万円(同21,743百万円)となり、927百万円増加いたしました。うち流動負債は12,394百万円(同10,628百万円)と、1,765百万円増加いたしました。これは未払金の増加などによるものであります。固定負債は10,276百万円(同11,114百万円)と、838百万円減少いたしました。これは建替関連損失引当金の減少などによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の合計は43,036百万円(同40,000百万円)と、3,036百万円増加いたしました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上などによるものであります。この結果、自己資本比率は65.5%となりました。
当連結会計年度における売上高は53,335百万円(前年同期比21.8%増)、材料費・販売費及び一般管理費の合計額は50,495百万円(同16.3%増)、営業利益は2,839百万円(同715.9%増)、経常利益は3,296百万円(同99.4%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は3,377百万円(同73.1%増)となりました。
売上高の主な増加要因は、国内観光需要や円安を背景としたインバウンド消費が伸長したことに加え、法人需要が回復するなど、改善傾向が続いたことなどであります。
また、生産性の向上や適切なコスト管理を徹底することで、引き続き利益の最大化に努めたことにより、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を計上することができました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は、前期と比べ263百万円増加し、4,201百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,470百万円、減価償却費2,517百万円の計上などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は、3,073百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出3,565百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は、718百万円となりました。これは主に、配当金の支払いによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は27,738百万円となり、前連結会計年度末より409百万円増加いたしました。
当社グループの資金需要のうち主なものは、材料費、販売費及び一般管理費などの運転資金及び設備投資資金であり、全て自己資金を充当しております。なお、資金調達につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(金融商品関係)1.金融商品の状況に関する事項 (1)金融商品に対する取組方針」に記載のとおり、必要に応じて金融機関からの借入をする方針であります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
① 帝国ホテル本社の土地のうち12,807㎡は国有地であり、賃借期間は1997年12月1日から2027年11月30日までの30年間であります。
② 財団法人東京国際交流財団(現 ㈱東京国際フォーラム)が運営する東京国際フォーラムのケータリングサービス事業を受託しております。契約期間は2016年4月1日から2022年3月31日までの6年間の後、契約を延長し、2026年3月31日までであります。
③ 帝国ホテル大阪の建物を所有者(三菱マテリアル㈱・三菱地所㈱)から賃借しております。当初の賃借期間は2016年2月1日から2026年1月31日までの10年間でありましたが、契約を延長し、2028年1月31日までとなっております。
なお、2023年4月1日より契約内容を変更して、所有者(三菱マテリアル㈱・三菱地所㈱)から三菱地所㈱が賃借し、当社は三菱地所㈱から転貸借しております。
④ ザ・クレストホテル柏の建物を所有者(三菱UFJ信託銀行㈱)から賃借し、その運営を㈱帝国ホテルエンタープライズに委託しております。契約期間は2000年10月1日から2020年9月30日までの20年間の後、契約を延長し、2027年9月30日までとなっております。
⑤ 京都新規事業計画の実施にあたり、計画地の所有者である学校法人八坂女紅場学園と一般定期借地権設定契約及び事業協定書等を締結しております。計画地の賃貸借期間は2022年4月1日からホテル開業日(2026年春開業予定)の50年後の応当日までであります。
⑥ 京都新規事業計画における建築資金等に充当することを目的として、取引金融機関2行との間にシンジケーション方式によるコミットメント期間付タームローン契約を締結いたしました。
なお、当連結会計年度における借入実行残高はありません。
⑦ 帝国ホテル東京の建て替え等を三井不動産㈱との共同事業として行うため、現タワー館を解体後、敷地を分筆した上で、その土地の共有持分の一部を同社に譲渡し、共同で新タワー館を建設すること等を合意した基本合意書を締結しております。
⑧ 内幸町一丁目街区再開発における中地区セントラルタワーのスモールラグジュアリーホテルを運営するにあたり、セントラルタワーの事業者であるエヌ・ティ・ティ都市開発㈱とホテル運営方針等について協議すること等を合意した合意書を締結しております。
特記事項はありません。