第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、1926年(大正15年)の創業以来、「創造 融和 誠実」の社是のもと、地球が作り出してくれた安心・安全な素材である「炭酸カルシウム」の新たな価値を創造し、社員一同が助け合い、誠実なもの作りを通じて、人々の豊かな生活を支えることを旨としてまいりました。

1982年(昭和57年)には、当社グループの精神を体現する下記の「基本方針」を定め、誠実なもの作りと、チャレンジ精神を発揮して、社会に信頼され、会社と社員がともに栄えることで、企業価値の維持向上の実現を目指してまいりました。

「基本方針」

1.我々は信義を尊び誠実を旨として広く社会の信頼を得よう。

1.我々は未知に挑戦し困難に立ち向かう勇気と力を持とう。明日を切り拓くために。

1.我々は良いものを造ろう。社の名誉にかけて。

1.我々は栄光の社歴と光輝ある伝統をふまえ社の繁栄のもと生活の向上を図ろう。

今後も、社員、お客様、社会、株主等当社グループを取り巻くステークホルダーとの絶えざる「対話」を通じて、豊かな、持続可能な社会の実現のための課題を発見し、その克服に努めてまいります。

(2)目標とする経営指標

当社グループは、豊かな、持続可能な社会実現に向け、継続的に「人」と「もの」に投資するための指標として、ROE8%を中長期の経営指標といたします。

(3)中長期的な当社グループの経営戦略と対処すべき課題

今後の経済見通しにつきましては、ウクライナや中東など不安定な世界情勢、円安による原材料価格やエネルギーコストの高騰、特に電気・ガス代については政府補助金終了により単価が上昇し、また人件費・物流コストの上昇等引き続き厳しい状況が見込まれます。

このような情勢下、当社グループにおきましては、企業価値の維持向上のため、企業としてどうあるべきかを考えた結果、次の項目に重点を置いて経営を進め、私たちは、社会貢献、強靱化、継続性に優れた企業グループの確立を目指してまいります。

①2050年のカーボンニュートラル達成に向け、焼成技術の進化を積極的に取り入れ、炭酸ガス排出量のより少ないエネルギー源への転換を着実に進めてまいります。

②「資本コストや株価を意識した経営」の実現に取り組んでまいります。

DXを駆使して、生産システムを抜本的に見直し、収益構造を変えます。政策保有株の売却等、資金使途を見直し、成長分野向け新製品開発に重点的に振り向けてまいります。

③「働いて楽しい会社」の実現を目指し、次の項目に取り組んでまいります。

(1) チャレンジすることを賞賛する文化を確立します。

(2) 個々人が納得できる評価制度を定着させます。

(3) 人への惜しみない投資を継続します。

(4) 女性社員、外国人社員を積極的に採用します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティ及び人的資本に関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

①ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ関連リスクも含めたリスクマネジメントの全社的な取組と必要な情報の共有化を図るため、横断的な組織として、取締役を中心としたリスクマネジメント委員会を設置し、当社グループ全体のリスクマネジメント推進にかかる課題・対応策を審議し、定期的に取締役会で報告することとしております。

詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

②リスク管理

当社は人類にとって地球環境を保全することが最重要課題のひとつであることを認識し、すべての企業活動において環境保全に配慮することを基本理念とし、社会の持続的発展に貢献していくことを「環境方針」に定め、以下の4つの「行動指針」をグループ各社、役職員へ周知徹底を行っております。

1.地球環境の保全活動を推進するため、環境管理体制の充実と従業員への環境意識の教育啓蒙に努めます。

2.技術的に可能な範囲で、廃棄物の削減、省エネルギー、省資源及びリサイクルに努め、環境保全の改善に継続的に取り組みます。

3.環境関連法規、協定を遵守し、さらに環境目標を設定し、実施状況の確認と評価を行い、環境負荷低減に努めます。

4.新製品、新技術の開発にあたっては、研究・設備設計の段階から環境に配慮し、使用する原材料についても評価し、地球環境の保全に努めます。

また、2021年10月より製造工程で排出される二酸化炭素の削減に関する検討プロジェクトである「脱炭素プロジェクト」を社長直轄の組織として立ち上げ、検討内容・結果については適宜、取締役会にて報告を行っております。

リスク管理体制の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。また、具体的なリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

(2)人的資本

①戦略

当社グループでは持続的な成長を確保するため、女性や外国人をはじめとする様々な知見、経験を有する人材を採用しております。中途採用につきましては、当社グループの成長を促進させるために必要な多様性の確保を目的とし採用活動を行っており、その能力に応じて取締役、執行役員に登用しております。

②指標及び目標

採用後の社員研修による人材育成や女性が働きやすい環境の整備を進め、更なる多様性の確保に努めております。

詳細は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照ください。

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)原料の調達について

当社グループが調達する原料には特定少数の仕入先からしか入手できないものがあり、また、海外からの調達等のため、仕入先の国の政治・経済や為替動向により仕入量及び単価が大きく変動し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)知的財産権の保護について

当社グループは他社製品との差別化を図るために独自の技術開発と知的財産権の保護に努めておりますが、第三者による当社グループの知的財産を使用した類似製品の製造販売を完全に防止できないことや、当社グループの製品が他社の知的財産権の侵害をしていると判断されることが生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)貸倒れリスクについて

当社グループでは売上債権管理として与信年齢調べ、回収条件の厳正運用、引当金の設定などを行い、不測の事態に対応すべく努力しておりますが、取引先の信用不安などによる予期せぬ貸倒れにより当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4)製品の品質と責任について

当社グループは顧客に信頼されるべく品質第一に製品開発を行い、国際的な品質管理システムに則り製品を設計、製造しております。また、生産物責任賠償保険に加入しておりますが、これらを超える重大な品質トラブルが発生した場合、当社グループ及び製品への信頼を失う恐れがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5)事故及び災害について

当社グループは事故及び災害による製造設備の停止を防止するための対策を充実させる一方、生産拠点の分散を図るなど製品の安定供給体制整備に努めております。しかしながら予想を上回る大規模な産業事故、大規模災害などによる製造設備の損壊を被るような事態が発生した場合、可及的速やかに生産再開を図るため事業継続計画を立案しておりますが、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6)繰延税金資産の取崩しについて

当社グループは将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7)固定資産の減損について

当社グループは固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。将来、業績の大幅な悪化や不動産価格の下落等があった場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済については、欧米における金融引き締め及び資源・原材料価格の高騰、緊張が続くウクライナ・中東情勢、さらには中国経済の減速が不安視され、先行き不透明な状況が続きました。日本経済については、新型コロナウイルス感染症の法的位置づけが移行したことで、経済正常化に向けた動きや、雇用や所得環境の改善、更には個人消費やインバウンド需要の回復の動きが見られる一方、円安に伴う物価上昇などにより依然予断を許さない状況が続きました。

このような経済情勢下、当社グループにおきましては、主要対象分野である自動車関連が半導体供給不足の緩和を背景とした生産の回復、また為替相場が円安傾向になったことから輸出売上が増加し、売上高は128億89百万円(前年同期比2.3%増)と前年同期比2億94百万円の増加となりました。損益面につきましては、電力をはじめエネルギーコストが安定したことに加えコストダウンに注力した結果、営業利益は1億37百万円(前年同期比308.8%増)、経常利益3億57百万円(前年同期比45.3%増)、前期に計上した退職給付制度改定損などの特別損失が減少したことにより親会社株主に帰属する当期純利益は2億49百万円(前年同期比112.8%増)となりました。

財政状態の状況につきましては、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ20百万円増加し170億10百万円となりました。これは主に売掛金が1億91百万円、建設仮勘定が1億68百万円、投資有価証券が1億67百万円、受取手形が99百万円増加し、現金及び預金が5億1百万円減少したことなどによるものであります。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べ2億66百万円減少し70億22百万円となりました。これは主に短期借入金が2億40百万円、未払金が2億18百万円、前受金が増えたことにより流動負債その他が1億50百万円増加し、長期借入金が8億64百万円減少したことなどによるものであります。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2億87百万円増加し99億87百万円となりました。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5億66百万円減少し24億57百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果増加した資金は5億8百万円で、これは主に税金等調整前当期純利益3億25百万円、減価償却費4億96百万円などによる資金増加に対して、売上債権の増加2億84百万円などによる資金減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した資金は3億45百万円で、これは主に定期預金の払戻59百万円、投資有価証券の売却による収入12百万円の収入に対して、有形固定資産の取得3億1百万円などの支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した資金は7億62百万円で、これは主に短期借入金の純減額1億50百万円、長期借入金の返済による支出5億23百万円の支出によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度におけるグループ生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

化合炭酸カルシウム(百万円)

4,901

91.5

重質炭酸カルシウム(百万円)

1,218

116.0

その他(百万円)

4

44.8

合計(百万円)

6,124

95.5

(注)金額は、販売価格によっております。

b.受注実績

製品について見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

c.販売実績

当連結会計年度におけるグループ販売実績をグループ内での製造品・グループ外からの購入品の別及び品目別に示すと、次のとおりであります。

品目

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

グループ内

製造品

(製品)

化合炭酸カルシウム(百万円)

4,969

93.0

重質炭酸カルシウム(百万円)

1,212

115.9

その他(百万円)

4

44.8

小計(百万円)

6,186

96.7

グループ外

購入品

(商品)

化合炭酸カルシウム(百万円)

142

76.8

重質炭酸カルシウム(百万円)

2,822

109.0

その他(百万円)

3,737

109.3

小計(百万円)

6,702

108.2

合計(百万円)

12,889

102.3

 

当連結会計年度におけるグループ販売実績を用途別に示すと、次のとおりであります。

用途

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

合成樹脂(百万円)

5,434

100.6

塗料(百万円)

2,781

109.4

輸出(百万円)

1,738

95.5

食品・飼料(百万円)

755

96.1

ゴム(百万円)

746

99.8

その他(百万円)

1,432

110.7

合計(百万円)

12,889

102.3

(注)最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。

 

第77期につきましては、化合炭酸カルシウム等の生産合理化及び品質向上などを意図して、設備投資を6億73百万円(第76期比3億9百万円増)実行する予定です。

運転資金、設備投資資金等につきましては、自己資金又は金融機関からの借入による資金調達を予定しております。

中長期の目標経営指標としましては、自己資本当期純利益率(ROE)8%を目指しております。当期は2.6%(前期1.3%)であり、上記に記した施策にて更なる収益構造の改善に努める所存です。

 

②資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主な資金需要は、原材料や商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金並びに設備投資資金であります。また、これらの主な資金調達としては、営業活動によるキャッシュ・フローなどの自己資金や金融機関からの借入によっております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、炭酸カルシウムを中心とした各種無機粉体の特徴を活かし、日本国内のみならず海外ユーザーから求められております様々な用途における商品の高機能化、高品質化に応える研究開発活動を行っております。当社は2026年に創立100周年を迎えます。それに向けての対処すべき課題の解決を強力に推し進めるとともに、今後の事業発展の核となる新技術を確立するため、基礎研究から応用研究まで幅広く積極的に取り組んでおります。

現在、当社グループの研究開発は当社中央研究所により推進されており、その研究開発スタッフ総数は30名と、これは当社グループ総従業員数の11.0%に相当いたします。

当連結会計年度中に支出した研究開発費の総額は319百万円となっております。

当連結会計年度における主な研究開発状況及びその成果は、次のとおりであります。

(1)カーボンニュートラル、環境負荷低減に向けて、地球環境に配慮した新しい製造技術の検討を継続して検討しております。

(2)炭酸カルシウムの単分散化につながる粒子の表面改質、また炭酸カルシウム製造技術を活用して他の無機素材の合成、粒子形状コントロール等、基礎研究をさらに積み重ねております。

(3)応用研究開発としましては、安全性や環境にやさしい炭酸カルシウムの無機素材としての特徴を活かし、他の無機素材や有機素材を炭酸カルシウム素材でサステナブル向上による貢献、機能性を高めることによる新規分野への用途開発の研究を進めております。

(4)主な成果としましては、食品分野では新規グレードの開発、医療分野への用途開発、住宅資材分野においては高機能樹脂に適合した製品開発の数量増、自動車用資材分野製品の海外用途拡大、また合成樹脂分野において新規用途への参入を挙げる事ができます。