当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は「創意革新」「人間尊重」「責任自覚」のもと「夢と若さをもって全員一致協力し、新しい豊かな技術で顧客と社会公共に奉仕することに努め、会社の安定成長と従業員の福祉向上を期する」ことを経営理念とし、これを実践することにより、建設を営む企業として社会的要請に適った建設技術の研鑚に努め、より良質で価値ある社会基盤の構築に貢献することを目指しております。
(2) 経営環境
建設産業におきましては、公共建設投資は防災・減災対策や加速化するインフラの老朽化への対応、国家防衛戦略などにより引き続き底堅く推移すると見込まれ、民間設備投資も伸び率は縮小するものの概ね堅調に推移する見込みです。
一方、技能労働者の高齢化等による担い手不足の問題のほか、「働き方改革関連法」に基づく時間外労働の上限規制などへの対応といった喫緊の課題を抱えており、持続可能な建設産業の確立に向けてDXの推進等による生産性向上や働き方改革への取り組みを加速する動きが高まっております。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは中期経営計画のテーマである“守りから攻めへ 挑戦する企業”への取り組みを継続し、2029年に迎える創立100周年に向け、環境変化にフレキシブルに対応し、厳しい環境に自ら挑戦する“レジリエント企業”を目指しております。
レジリエント企業の実現に向け、当社グループでは資本効率経営並びにサステナビリティ経営を推進しており、持続的な成長を支えるガバナンスの強化、建設産業全体の喫緊の課題である「働き方改革」や「担い手確保」への対応に正面から取り組むほか、成長ドライバーである洋上風力建設事業に対して、人的資本、技術開発、成長投資資金等を積極的かつ効果的に投下することにより、洋上風力建設のリーディングカンパニーを目指すなど、カーボンニュートラルの実現にも取り組んでまいります。
*レジリエント企業:ぶれない基軸を持ち、刻々と変化する環境にフレキシブルに対応し、厳しい逆境にも立ち向かうことができる持続可能な企業
■コーポレート・ガバナンス体制の強化
当社は、中長期的な企業価値向上の実現に向けて、コーポレート・ガバナンスの進化・高度化に取り組むことを決定いたしました。引き続き、最適なコーポレート・ガバナンスを推進し、中長期的な企業価値の向上を実現していくことが、株主の皆様をはじめとするステークホルダーや社会全般から信頼される企業として存続する基盤になると考えております。
●2023年度の実施状況
①独立社外取締役による現行のガバナンス体制のレビューを実施。
②上記レビューを受けてガバナンス体制の強化策を決定。
・取締役会の議長と業務執行機関の意思決定者を分離
・過半数の独立社外取締役による取締役会を確立
・役員指名・報酬委員会の委員長を独立社外取締役に変更
(委員会構成の過半数を独立社外取締役とすることは継続)
・業務執行の意思決定プロセスに「機関決定」の概念を導入
・経営の監督と執行の分離を念頭に置いた各種会議体の機能と運営を再定義
●2024年度の取り組み
①ガバナンス体制の更なる高度化
②役員評価、報酬制度の見直し
③CGコードの対応状況の点検、見直し
■資本効率経営
当社グループは、中長期的な企業価値向上の実現に向けて、“守りから攻めへ”の転換、“高収益モデル”への転換、そして“資本効率経営”への転換を進めております。
資本効率経営の一環として、各事業における投資の際には、事業戦略等の定性的な判断に加え、ハードル・レート※を基準とした定量的な判断を行っております。具体的な取り組みとして、2023年12月に投資決定を行いました自航式ケーブル敷設船の建造に際しましても、本投資が洋上風力建設事業を“高収益モデル”へと転換させる成長に資するかについての定性的な判断を行ったうえで、様々な事業変動リスクを想定した事業収支計画を策定し、ハードル・レートを用いた定量的な判断を取締役会にて行いました。
また、株主や機関投資家の皆様のご要望に応えるべく、半期ごとの決算説明会等の開催のほか、投資判断に影響を与えるリスクとリターンに関する重要情報を適時開示し、面談・対話を積極的に行うことで、当社グループの持続的成長と市場評価の向上に努めてまいります。
※CAPMを用いて株主資本コストを推定したうえで、WACCを算出し、投資判断の際のハードル・レートとしております。
■働き方改革及び担い手確保への取り組み
当社グループは、建設産業の健全な発展のため、生産性の向上や働きやすい環境の整備に取り組んでおります。特に、時間外労働の削減、建設現場の4週8閉所の実現を重要課題としてとらえ、様々な取り組みを実施し、建設産業の魅力向上を実現してまいります。
また、教育・研修を通じ、「人材から人財への成長」=「将来、各分野で活躍できる人財」の育成を続けるとともに、協力会社への支援も行っていくことで、持続可能な建設産業の実現を目指してまいります。
詳細は「統合報告書2023」P.62~64をご覧ください。
https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/01/CR2023_allpage.pdf
■気候変動への取り組み
当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現や環境負荷低減に向け、成長ドライバーである洋上風力事業やZEB(Net Zero Energy Building)/ZEH(Net Zero Energy House)の推進、建設廃棄物の削減に取り組んでおります。
我が国の洋上風力発電は、着床式を中心に順調に案件形成が進捗し、さらに浮体式の技術開発や設置場所のEEZへの拡大等も進めながら、政府目標である2050年カーボンニュートラル実現に向けて着実に進展しております。当社グループでは、こうした状況下において洋上風力事業を成長ドライバーとして位置付け、積極的な設備投資や技術開発に取り組んでおり、攻めの成長投資の第一弾として、自航式ケーブル敷設船の建造を決定いたしました。また、着床式・浮体式双方の事業に参画していくための基礎工事における技術開発も進めております。さらに、株式会社商船三井と洋上風力発電事業に関する合弁会社を設立するなど、国内外で増加が見込まれる作業船需要にこたえ、洋上風力発電事業の幅広い事業領域における要望に対応するエンジニアリング&ソリューションカンパニーとしてバリューチェーンに貢献してまいります。
建築事業においては、ZEB・ZEHの施工、ReReC®(Renewal Renovation Conversion)を通じた既存建物のコンバージョンによる省エネ化など環境負荷低減に向けた提案を積極的に行い、生産施設やオフィスビル等の省エネ化・低炭素化に取り組み、建築に関するあらゆる場面で最適なソリューションを提供し、社会公共に貢献する事業展開を行っております。
■当社グループのマテリアリティ
当社グループは、2022年7月に事業活動を通じて解決すべき課題を「東洋建設グループのマテリアリティ」として特定し、前述のカーボンニュートラル社会の実現等のほか、人権尊重やダイバーシティ&インクルージョン等の推進に継続して取り組んでおります。
人権尊重では、人権に関するリスクアセスメントを2023年度に実施しており、2024年度は人権デュー・デリジェンスを実施する予定です。また、ダイバーシティ&インクルージョンでは、外国籍の方や多様な経歴を持つ方の採用を積極的に行うとともに、女性や高齢者、障がいがある方等、全ての職員が働きやすい職場環境の整備を進めております。
これからも当社グループは、マテリアリティに基づく諸課題の解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
※各マテリアリティのKPI及び2023年度の目標・実績は、以下URLよりご参照ください。
https://www.toyo-const.co.jp/csr/materiality
■中期経営計画(2023年度~2027年度)
●2027年度(2028年3月期)達成目標
売 上 高:2,350億円以上
営業利益:150億円以上
当期純利益:90億円以上
R O E:12.0%以上
D/Eレシオ:0.4前後
※中期経営計画の内容は以下URLよりご参照ください。
○中期経営計画
https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/2023-2027_Mid-Term-Business-Plan-_J.pdf
○中期経営計画(補足資料)
https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/Mid-Term-Business-Plan_Supplementary-Material_J.pdf
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
Ⅰ 共通
(1)ガバナンス
■サステナビリティ基本方針
当社グループは、経営理念に基づき行動規範を遵守し、社会とより良い関係を保ちつつ、公正で信頼される事業活動を展開することにより、持続可能な社会の発展に貢献していくことをサステナビリティ基本方針としております。
■サステナビリティ経営の推進体制
「東洋建設グループのサステナビリティ基本方針」に基づいた事業活動を展開するため、経営方針会議直轄の常設機関としてサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、サステナビリティ推進役員を委員長とし、土木・建築・洋上風力の各事業本部長並びに、管理グループ担当役員を委員として構成しております。サステナビリティのリスクと機会に関連する取組状況や今後の方針等は、サステナビリティ委員会で審議を経て経営方針会議及び取締役会に報告し、経営計画や事業の運営等に反映しております。
なお、2023年度はサステナビリティ委員会を2回開催しております。
(2)戦略
■中期経営計画(2023年度~2027年度)
当社グループは、経営理念の実現に向け「レジリエント企業を継承しつつ、挑戦できる企業への変貌」を中期経営計画の基本方針に定め、「既存事業の深耕」、「経営基盤の強化」、「成長ドライバーの推進」、「資本効率経営への転換」を重点施策として事業運営を行っております。
サステナビリティ関連につきましては、「コーポレート・ガバナンス体制の強化」、「人財の獲得・育成」、「脱炭素社会の実現に貢献する洋上風力市場への参入」、「DXを活用した生産性の向上」等を特定し、具体的な取り組みを進めております。
なお、「コーポレート・ガバナンス体制の強化」は、社外取締役を過半数以上とし、かつ社外取締役を議長とすること、役員指名・報酬委員会は社外取締役が過半数を占め、かつ社外取締役を委員長とする体制への変更、経営の監督と執行の分離を意識した業務執行の意思決定プロセスを再構築すること、各種委員会の機能と位置づけを再定義すること等の諸施策を実施しております。
■マテリアリティ(重要課題)
環境に与える影響とサステナビリティ課題が財務に与える影響についてリスクと機会の両面から重要課題を抽出し、事業活動を通じて解決すべき課題を、東洋建設グループのマテリアリティとして以下のとおり特定しております。
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事業を通じた 社会課題の解決 |
カーボンニュートラル社会の実現 |
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環境負荷の軽減 |
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高品質かつ顧客ニーズに応えられる建設物の提供 |
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防災・減災への貢献 |
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事業基盤の強化 |
ガバナンス体制の強化継続 |
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魅力ある建設産業の実現 |
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人権尊重の徹底と ダイバーシティの推進 |
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社会貢献活動によるサステナブルな社会の実現 |
また、マテリアリティに応じた取組内容(サブ課題)も特定し、サブ課題に対するKPI(重要業績評価指標)を定め、取組内容を可視化しております。
(3)リスク管理
当社グループのマテリアリティ(サブ課題)のKPI及びサステナビリティ関連の重点施策につきましては、各事業部門、地域事業部が実行し、その進捗状況を経営企画部、土木・建築企画部及びサステナビリティ推進部(2024年4月1日設置)等が確認しております。進捗結果につきましては、サステナビリティ委員会での審議を受け、経営方針会議、取締役会に報告しております。
(4)指標及び目標
東洋建設グループのマテリアリティ(サブ課題)に関するKPIは以下のとおりとなっております。
(https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/CR2023_5_P51-54.pdf)
なお、各KPIの2023年度実績につきましては、「統合報告書2024」に掲載する予定です。(2024年9月予定)
Ⅱ 気候変動
当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の情報開示要請に準じ、気候変動に関連するガバナンス、事業への影響と対策、リスク管理等について検討と対応を行っています。
(1)ガバナンス
サステナビリティ委員会において、気候変動対応を含むサステナビリティに係る活動方針案等の検討、実施状況のレビューを行い、経営方針会議及び取締役会に報告し、必要に応じて審議しております。
(2) 戦略
当社はTCFDが推奨するガイダンスに則り、2040年までの事業環境をシナリオ分析の手法により想定し、気候変動が当社に与える影響を分析・評価しております。また、影響があるとするリスクや機会に対し、どのように対応すべきかを検討し、事業戦略に反映しております。
(3) リスク管理
気候変動を含むすべての業務リスクは、リスクマネジメント委員会で検討、評価し、取締役会に年2回報告しております。本社並びに事業部門は、業務プロセスに内在するリスクに対し、必要な回避策、低減策を講じて業務を行っております。また、気候変動に関する機会については、事業環境等の変化に応じ見直すこととしております。
(4) 指標及び目標
CO2排出量削減目標
※Scope1+2 は、(一社)日本建設業連合会の環境情報開示ガイドラインに基づき協力会社施工分のCO2排出量を算入しております。
※2023年度実績につきましては、算定が終了次第、当社Webサイトに掲載する予定です。(2024年8月末予定)
Ⅲ 人的資本
(1)ガバナンス
従業員の賃金や人事関連諸規程の制定・改定のほか、人財の採用方針や教育訓練計画、ダイバーシティ&インクルージョン、働き方改革、エンゲージメントなど、人的資本に関する重要事項については、経営方針会議及び取締役会で審議、決定しております。
(2) 戦略
中期経営計画(2023-2027)において、人財戦略として「“攻め”を支える多様な人財の獲得・育成」を挙げ、以下の4つの施策を実行しております。
■多様な人財が活躍できる基盤整備
当社グループでは、多様化する個々の性格や価値観を受け入れ、前向きな協業を生み出すことができる職場づくりこそが、人財の能力が最大限発揮され、会社の活性化・発展につながるものと考え、様々な方策を検討・実施し、職場環境整備に努めております。
当社における女性活躍に向けた取り組みでは、女性総合職を着実かつ継続的に採用していくため、新卒採用者に占める女性比率を20%とする目標を掲げております。また、結婚や育児等で離職し、キャリア継続を断念した職員が離職事由を解消した際に再入社できる制度(カムバック制度)や一般職から総合職への登用制度、女性用作業服の導入、工事現場の女性専用快適トイレの設置等、女性が活躍できる環境の整備に取り組んでおります。2020年には女性活躍推進への取組状況が優良な企業として「えるぼし認定」を受けております。また、外国籍の技術者の採用を積極的に進めており、多様な人財が最大限のパフォーマンスを発揮できる基盤の整備に取り組んでおります。
■魅力ある処遇の実現
当社は2014年以降、継続的なベースアップを実施しており、2023年度も基本給部分で3.7%の賃上げを実施しており、連結子会社においても、同様に賃金水準の向上を図っております。
また、当社では、建設業における現地一品生産、必要な資格や経歴を有する技術者の配置といった事業特性から、他産業に比べて転勤の頻度が高い傾向があります。そのため、本人のみならず、そのご家族にも様々な負担が生じていることから、転勤を一つの成果(社業への貢献)と捉え、赴任形態別に転勤1回当たり最大36万円を一時金として支給する転勤手当制度を2023年11月1日に新設いたしました。
当社グループは、今後も魅力ある処遇を提供していくため、報酬水準の向上、福利厚生の充実を図ってまいります。
■キャリア採用を含む積極的な採用の強化
成長を支える人財基盤の強化に取り組んでおり、新卒者の採用数を増やしているほか、洋上風力事業などの成長領域におけるスペシャリストやコーポレート部門において専門的な知識を有する人財を中心にキャリア採用に力を入れております。引き続き、アルムナイ採用をはじめとする多様な採用チャネルを検討・導入し、当社グループの経営基盤強化に資する人財の獲得に努めてまいります。
■若手の早期育成・抜擢、経営人財育成
職員一人ひとりの資質並びに能力の向上は、企業の成長に欠かすことのできない要素であるとともに、職員にとっても働き甲斐や仕事に対する満足度の向上につながります。当社グループでは、合同若しくは個社単位で階層別・職種別・目的別の研修や推奨資格取得のための研修・支援制度を設け、効果的な能力開発を進めております。
また当社では、次世代リーダーの育成・輩出に特化した研修を開始し、将来の会社経営を担う人財の育成に取り組んでおります。今後はリスキリングプログラムの実施など、環境の変化に対応していくための必要なスキル習得の機会を設けてまいります。
(3)リスク管理
建設産業におきましては、生産年齢人口の減少、建設技能者の高齢化等により担い手の確保が喫緊の課題であり、事業継続に当たっての大きなリスクであると認識しています。そのため「魅力ある建設産業の実現」や「ダイバーシティの推進」をマテリアリティとして特定し、「人財育成・担い手確保の推進」や「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」をサブ課題として設定いたしました。このサブ課題におけるKPIの実施・進捗状況をサステナビリティ委員会でレビューし、経営方針会議及び取締役会での審議・決定を経て、状況に応じた必要な施策を講じることにしております。
また、人権に関するリスクについては、人権リスクアセスメントを行ったところで、2024年度には当社グループの実態を調査し、適切な予防、軽減へとつなげる「人権デュー・ディリジェンス」を実施することにしております。
(4)指標及び目標
当社の人的資本・多様性に関する指標及び目標は以下のとおりです。
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KPI |
実績(当連結会計年度末) |
目標 |
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新卒採用者の |
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法定雇用率以上 |
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(注)1 男性職員の育児休暇取得率には育児目的休暇の取得を含みます。
2 本項目については、各連結子会社の規模・業態・制度の違いから一律記載は困難であるため、提出会社単体の記載といたします。
当社グループの事業展開に関して、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
当社グループでは、グループ全体のリスク管理方針及び管理体制について「リスク管理規程」を定め、その方針及び体制に基づき「リスクマネジメント委員会」を定期的に開催し、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、発生の未然防止に努めております。
なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)法令・コンプライアンスに関するリスク
当社グループの事業は、国内の建設業法、建築基準法、港則法、労働安全衛生法、品質確保法、独占禁止法等の法的規制の適用を受けております。また、海外事業においては、当該国の法的規制や貿易・制裁規制の適用を受けております。
これら国内外の法令等に違反した場合やコンプライアンスに反した場合は、法令による処罰のみならずレピュテーションの悪化、社会的制裁を受ける等、受注機会の喪失及び顧客の信頼を失う可能性があります。
役員、職員一人一人が事業活動を行うに際して基準とすべき行動規範等コンプライアンス関連事項について、具体的に守らなければならないことを行動指針として定め、コンプライアンスに反した行為等の抑止に努めております。また、海外においては、現地採用職員向けにコンプライアンスガイドラインを作成し、周知を図るとともに、現地の法令や外国公務員贈収賄防止法の遵守を徹底しております。
制度面では職制を通じた報告体制に加え社内・社外の通報窓口を有する内部通報制度を整備し、運用しております。
(2)工事施工中の事故・災害発生のリスク
働く人及びその他の関係者全員で労働安全衛生マネジメントシステムを運用し、職場の労働災害や健康障害を防止して、安全で健康的な労働環境の形成に万全を期しておりますが、工事での死亡・重篤災害等の発生や突発的な重大事故の発生による工事中断、工事遅延、また第三者への損害賠償責任等、予定外の費用が発生することにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
事故・災害防止の取り組みとして、工事着手前のリスクアセスメントによるリスク低減措置を実施し、施工中の実施状況の確認とその評価、改善を実施していくPDCAサイクルでの管理と共に作業者の危険感受性の向上教育等も取り入れ、安全衛生管理を徹底しております。
(3)製品・サービスの欠陥リスク
品質マネジメントシステムを運用し品質確保に万全を期していますが、万一品質基準への未達や安全性の問題等の欠陥が発生した場合には、顧客からの信頼を失うとともに契約不適合責任及び製造物責任による損害賠償や対策費用により業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対しては品質マネジメントシステムの継続的改善を図ることで、常に最適品質の建設生産物及びサービスの提供ができるよう努めております。
(4)自然災害・感染症リスク
巨大地震、津波、台風、大雨による風水害等の自然災害の発生による施工中工事への被害や船舶・機械・建物等の所有資産への被害、工事中断、工事遅延等が発生することにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、大規模な感染症拡大による建設投資の縮小・延期や資材調達遅延等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
自然災害リスクに対しては、気象・海象予報の確実な把握と早め、早めの作業中止と退避措置で被害を最小限に抑える対応と共に、災害時の事業継続計画(BCP)を策定し、現場及び顧客施設の被害状況の確認と復旧、国・自治体等関係機関と連携したインフラ・地域社会の迅速な復旧・復興が取れる体制を構築しております。また、感染症リスクに対しては、感染防止対策を徹底し、従来からお取引のある顧客を始めとした案件の着実な受注、優良なサプライヤーによる調達ルートの安定化に努めております。
(5)生産体制と人財確保に関するリスク
職員の教育訓練による社内人財育成をはじめ、協力会社への技術教育・指導を継続的に実施しておりますが、生産年齢人口の減少、建設技能者の高齢化等により、将来的に建設業従事者が更に減少した場合、経営計画の実行及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、過重労働やハラスメントにより、職員の健康被害等の不利益が生じる他、労働基準法違反等によって行政処分等の対象となることにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの課題への対応として、生産性の向上を図るためにICT施工の高度化やBIM/CIM(*)の適用を進展させるほか、業務のデジタル化やデータ一元化などDXの取り組みを進めております。また、生産体制を維持するために協力会社を対象とした資格取得支援、研修のほか、建設産業の魅力向上を目標としたアクションプランを策定し、協力会社の担い手確保への取り組みを実施しております。
労働基準法の改正により2024年4月から建設業に適用される「時間外労働の上限規制」については、働き方改革の推進、DXの活用による業務効率化、適正な工期の確保等により時間外労働の削減に努め、適正な労働時間の管理を実施しております。
人財確保については、定期新卒採用及び中途キャリア採用を積極的に実施し、将来に向けた人財を育成しております。働き方改革における人事制度の諸施策により、職員一人一人の特有なスキル、経験、価値観を活用し、能力や経験が認められて仕事に参画できる組織づくりを進めており、海外事業においても、それぞれの進出国において現地職員の育成を行い、現地化を図っております。
(*)Building/Construction Information Modeling Management:
IT技術を駆使した3次元モデルにより、計画、設計、施工、維持管理に至る関係者すべてが情報共有し、
業務の効率化と高度化を図る生産システム。
(6)建設資材価格及び労務単価の変動
建設資材価格、労務費などが高騰、あるいは資機材の納期遅延が生じた場合には、工事採算が悪化し業績に影響を及ぼす可能性があります。
市場の最新動向を入手し早期調達や調達先の多様化に取組み、また、発注者との請負契約において物価スライド条項を含める等の対策を実施しております。
(7)同意なき買収のリスク
2023年度を初年度とする新たな5ヶ年の中期経営計画を策定し、更なる「レジリエント企業」への進化に向けて、①“守りから攻め”への転換、②“高収益モデル”への転換、③“資本効率経営”への転換を3つの柱とする、大きな経営の転換の実行を進めております。この中期経営計画に掲げる目標の確実な達成とガバナンスの強化に継続的に取り組むことが、当社グループの持続的な成長や中長期的な企業価値の向上につながると考えております。このような中、仮に第三者からの買収提案を受けた場合、経済産業省が公表した「企業買収における行動指針」に基づき、当社の企業価値の向上に資する提案であるか否か等の観点に立ち、真摯かつ慎重に検討し、その買収提案に賛同するか否かを判断いたします。
こうした過程を経たうえで、同意なき買収者による当社株式の大量買付けが行われ経営権を支配された場合、その買収者の経営方針により人財の流失や業績に重大な影響を与える可能性があります。また、大量買付け者の登場で将来の経営体制や財務構成への重大な影響が予想されるなか、先行きが不透明なため格付機関による信用格付けへの制約が生じ、市場からの資金調達に影響を与える可能性があります。
(8)情報セキュリティに関するリスク
外部からの攻撃や職員の過失等により、営業・技術機密情報、個人情報が漏洩または消失した場合やシステム障害が発生した場合は、社会的信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
情報資産の重要度、脆弱性及び脅威の重大性を勘案して適宜リスク評価を行うとともに、技術的な対策及び職員へのセキュリティ教育を実施しております。
(9)海外事業におけるリスク
主にアジアを中心に建設事業を展開している他、ヨーロッパでケーブル敷設船の建造を進めておりますが、それら進出国における、テロ、紛争等の政情不安、経済情勢の変動、法制度の変更、為替レートの急激な変動等、事業環境に著しい変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
海外プロジェクトの取り組みにあたっては、当該国の政治・経済情勢、治安、及びグローバルなサプライチェーンも含めた資機材の調達リスク等を十分調査した上で、取締役会、経営方針会議で審議しております。
(10)気候変動のリスク
近年、気候変動の影響により大型台風やゲリラ豪雨等が発生しており、これらによる災害の激甚化により、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、温室効果ガス排出量の上限規制や炭素税の導入等がなされた場合、建設コストが増加する等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
カーボンニュートラル社会の実現に向けて事業活動から排出されるCO2排出量の削減率をKPIに設定し、建設機械・船舶からのCO2排出量削減、建設副産物の再資源化に取り組んでおります。
また洋上風力発電施設建設関連事業への参画や、ZEB(Zero Energy Building)、ZEH(Zero Energy House)の建築技術の確立に取り組んでおります。
(11)人権リスク
人権尊重のもと事業活動を行っていますが、取り組むべき人権課題は広範囲にわたっており、当社グループやサプライチェーンにおいて人権問題が発生した場合、レピュテーションの悪化等により顧客の信頼を失い、受注機会を喪失する可能性があります。当社グループは「東洋建設グループ人権方針」を策定し、人権尊重の責任を果たすとともに人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、人権問題の抑止に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況の概要
当連結会計年度における我が国経済は、コロナ禍からの回復もあって、40年ぶりの物価上昇などマクロ経済環境に大きな変化が生じました。一方、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の悪化、欧米での金融引締めによる対ドル・対ユーロでの円安継続のほか、中国経済の先行き懸念等による海外景気の下振れリスクには注意が必要な状況にあります。
建設産業においては、公共投資の底堅い推移と民間設備投資の継続的な持ち直しが見られ、事業量は堅調に推移しているものの、原油・資材価格や労務費などのコストの高止まりが続く中、コスト上昇分を十分に価格転嫁できておらず業績への影響が懸念されております。また、担い手確保や時間外労働の上限規制への対応は喫緊の課題であり、業界を挙げて取り組んでおります。
このような中、当社グループでは、①“守りから攻め”への転換、②“高収益モデル”への転換、③“資本効率経営”への転換を柱とした5ヶ年の中期経営計画(2023年度~2027年度)を策定し、更なるレジリエント企業への進化、成長に向けて取り組んでおります。また、DXの推進により生産性向上や働き方改革に努めるほか、“攻め”を支える多様な人財の獲得・育成にも取り組んでおります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
総資産は、受取手形・完成工事未収入金等の増加などから、前連結会計年度末に比べ104億43百万円増加し、1,641億60百万円となりました。
負債は、短期借入金の増加などから、前連結会計年度末に比べ36億27百万円増加し、833億60百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などから、前連結会計年度末に比べ68億15百万円増加し、808億円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の46.7%から0.9ポイント増加し、47.6%となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は、国内土木事業の順調な進捗により前期比(以下、同期比較)10.9%増の1,867億81百万円となり、営業利益は21.0%増の108億87百万円、経常利益は17.6%増の100億57百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は24.0%増の70億16百万円となりました。
事業セグメント別の実績は以下のとおりであります。
(国内土木事業)
高い競争力を有する本事業においては、事業量の確保及び収益力の強化に向けて、官庁海洋工事における大型プロジェクトの確実な受注、また民間及び官庁陸上工事の受注拡大に努めております。成長ドライバーである洋上風力建設事業においては、将来に向けて人財を育成するとともにケーブル敷設分野を中心とする多様なポジションでの参入に向けて取り組んでおります。当連結会計年度は、前期からの繰越工事の増加により、売上高は22.8%増の953億16百万円、セグメント利益は20.2%増の62億71百万円となりました。
また、洋上風力建設事業では国内最大級の自航式ケーブル敷設船の建造と洋上風力事業本部の新設を決定いたしました。なお、自航式ケーブル敷設船の投資判定にあたっては、取締役会において資本コストや資本収益性を意識した協議、検討を行いました。
(国内建築事業)
市場環境が急激に変化する中でも収益を拡大できるよう、組織営業力の強化及びストック市場への取り組み強化策であるReReC®(Renewal、Renovation、Conversion)や非請負分野の開拓に向けた体制整備のほか、DXの推進などによる生産性の向上や人財の育成に努めております。当連結会計年度は、一部工事で着工が遅れたため、売上高は6.4%減の632億24百万円、セグメント利益は7.9%減の29億41百万円となりました。
(海外建設事業)
フィリピンなど当社進出国を中心に地域に根差した事業展開を継続し、ODA案件の獲得及びフィリピン現地法人CCT CONSTRUCTORS CORPORATIONによる民間工事の拡大のほか、現地人財の育成に取り組み、収益基盤の構築に努めております。当連結会計年度は、手持工事の順調な進捗により、売上高は21.5%増の273億57百万円となり、セグメント利益は前期に発生した一過性の費用引当の繰入が当期はなくなったことから376.3%増の13億95百万円となりました。
(不動産事業)
当連結会計年度の売上高は1.2%減の4億45百万円、セグメント利益は29.2%減の1億76百万円となりました。
(その他事業)
保険代理店業、物品の販売・リース事業などであり、当連結会計年度の売上高は94.8%増の4億37百万円、セグメント利益は132.8%増の1億1百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加などにより85億12百万円の支出超過となりました。(前期は117億85百万円の収入超過)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などから、78億81百万円の支出超過となりました。(前期は4億85百万円の支出超過)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の増加などから、5億72百万円の収入超過となりました。(前期は28億72百万円の支出超過)
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、234億75百万円となりました。(前期末残高は390億8百万円)
キャッシュ・フロー指標の推移
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
自己資本比率(%) |
41.3 |
43.1 |
50.2 |
46.7 |
47.6 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
30.4 |
36.3 |
53.7 |
56.0 |
75.1 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
- |
- |
0.3 |
0.4 |
- |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
- |
- |
231.2 |
93.6 |
- |
※自己資本比率:自己資本(純資産-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払
①各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
②株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。
③キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち短期借入金、長期借入金を対象としております。また、利払は連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④キャッシュ・フローがマイナスである場合は、当該年度の記載を省略しております。
③生産、受注及び販売の実績
|
(1)受注実績 |
(単位 百万円) |
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
国内土木事業 国内建築事業 |
94,723 63,447 |
△8.0 1.6 |
|
海外建設事業 不動産事業 その他事業 |
12,330 445 437 |
△51.3 △1.2 94.8 |
|
合計 |
171,384 |
△10.5 |
(2)売上実績 (単位 百万円)
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
国内土木事業 国内建築事業 |
95,316 63,224 |
22.8 △6.4 |
|
海外建設事業 不動産事業 その他事業 |
27,357 445 437 |
21.5 △1.2 94.8 |
|
合計 |
186,781 |
10.9 |
(注)1.当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。
2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
なお、提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
受注工事高(契約高)及び施工高の状況
①受注工事高、完成工事高、繰越工事及び施工高
|
第103期(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
(単位 百万円) |
|
種類別 |
前期繰越 工事高 |
当期受注 工事高 |
計 |
当期完成 工事高 |
次期繰越高 |
当期施工高 |
||
|
手持工事高 |
うち施工高 |
|||||||
|
建設事業 |
|
|
|
|
|
% |
|
|
|
海上土木 |
(48,942) 49,654 |
68,043 |
117,697 |
55,110 |
62,586 |
0.6 |
381 |
55,261 |
|
陸上土木 |
(24,782) 24,890 |
37,859 |
62,750 |
27,459 |
35,291 |
0.2 |
58 |
27,302 |
|
建 築 |
81,338 |
61,861 |
143,199 |
66,912 |
76,287 |
0.5 |
389 |
66,387 |
|
計 |
(155,063) 155,883 |
167,764 |
323,647 |
149,482 |
174,165 |
0.5 |
829 |
148,951 |
|
不動産事業 |
- |
443 |
443 |
443 |
- |
- |
- |
- |
|
合計 |
(155,063) 155,883 |
168,207 |
324,090 |
149,925 |
174,165 |
- |
- |
- |
|
第104期(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
(単位 百万円) |
|
種類別 |
前期繰越 工事高 |
当期受注 工事高 |
計 |
当期完成 工事高 |
次期繰越高 |
当期施工高 |
||
|
手持工事高 |
うち施工高 |
|||||||
|
建設事業 |
|
|
|
|
|
% |
|
|
|
海上土木 |
(62,586) 63,848 |
57,316 |
121,164 |
71,418 |
49,746 |
0.7 |
349 |
71,386 |
|
陸上土木 |
35,291 |
34,225 |
69,516 |
27,850 |
41,665 |
0.2 |
93 |
27,885 |
|
建 築 |
76,287 |
62,335 |
138,622 |
62,289 |
76,333 |
0.6 |
442 |
62,321 |
|
計 |
(174,165) 175,427 |
153,876 |
329,303 |
161,558 |
167,745 |
0.5 |
864 |
161,593 |
|
不動産事業 |
- |
452 |
452 |
452 |
- |
- |
- |
- |
|
合計 |
(174,165) 175,427 |
154,328 |
329,755 |
162,010 |
167,745 |
- |
- |
- |
(注)1.前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額に増減のあるものについては、当期受注工事高にその増減を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2.次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。
3.次期繰越高(手持工事高)は、不動産事業を除き(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致しております。
4.前期繰越工事高の上段( )内表示額は、前事業年度における次期繰越高であり、下段は当該事業年度の外国為替相場の変動による増減額等を反映させたものであります。
②受注工事高の受注方法別比率
|
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。 |
(単位 %) |
|
期別 |
区分 |
特命 |
競争 |
計 |
|
第103期 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
海上土木工事 |
10.0 |
90.0 |
100 |
|
陸上土木工事 |
21.1 |
78.9 |
100 |
|
|
建築工事 |
48.6 |
51.4 |
100 |
|
|
第104期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
海上土木工事 |
12.0 |
88.0 |
100 |
|
陸上土木工事 |
21.1 |
78.9 |
100 |
|
|
建築工事 |
21.0 |
79.0 |
100 |
(注)算出は請負金額比によります。
③完成工事高
(Ⅰ)完成工事高 (単位 百万円)
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 (B)
|
||
|
官公庁 |
民間 |
(A) |
(A)/(B) (%) |
|||
|
第103期 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
|
海上土木工事 |
35,315 |
9,795 |
9,999 |
18.1 |
55,110 |
|
陸上土木工事 |
17,690 |
7,938 |
1,830 |
6.7 |
27,459 |
|
|
建築事業 |
3,823 |
62,980 |
108 |
0.2 |
66,912 |
|
|
計 |
56,830 |
80,713 |
11,938 |
8.0 |
149,482 |
|
|
第104期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
海上土木工事 |
45,962 |
13,639 |
11,816 |
16.5 |
71,418 |
|
陸上土木工事 |
20,121 |
7,452 |
276 |
1.0 |
27,850 |
|
|
建築事業 |
5,586 |
56,703 |
- |
- |
62,289 |
|
|
計 |
71,670 |
77,795 |
12,093 |
7.5 |
161,558 |
|
(注)1.完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第103期 請負金額10億円以上の主なもの
|
ケニア共和国ケニア港湾公社 |
モンバサ港コンテナターミナル開発工事(2期) |
|
国土交通省 |
川崎港臨港道路東扇島水江町線東扇島アプローチ部橋梁下部工事 |
|
東京都 |
六郷ポンプ所設備再構築に伴う建設及び耐震補強工事 |
|
四国旅客鉄道株式会社 |
予讃線海岸寺・詫間間護岸復旧その4工事 |
|
高槻市 |
高槻市エネルギーセンター第一工場解体及びリサイクル施設整備工事 |
|
株式会社日本エスコン |
岐阜県羽島市物流施設開発PJ |
第104期 請負金額10億円以上の主なもの
|
国土交通省 |
令和4年度馬毛島仮設桟橋築造工事(その2) |
|
国土交通省 |
令和3年度鹿児島港(谷山二区)係留施設築造工事(第2次) |
|
国土交通省 |
令和3年度 東京国際空港G誘導路他地盤改良工事 |
|
横浜市 |
新本牧ふ頭建設工事(その28・外周護岸B-2基礎及び本体工) |
|
上毛町 |
起工第4号 体育館新築工事 |
|
株式会社Peace Deli |
Peace Deli千葉誉田PJ新築工事 |
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。
第103期 国土交通省 24,309百万円 16.3%
第104期 国土交通省 45,524百万円 28.2%
|
(Ⅱ)不動産事業売上高 |
(単位 百万円) |
|
期別 |
区分 |
金額 |
|
第103期 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
土地建物販売収入 |
- |
|
賃貸収入 |
443 |
|
|
計 |
443 |
|
|
第104期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土地建物販売収入 |
2 |
|
賃貸収入 |
449 |
|
|
計 |
452 |
|
④手持工事高(2024年3月31日現在) |
(単位 百万円) |
|
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
|||
|
海上土木工事 |
22,220 |
8,796 |
18,729 |
49,746 |
|
陸上土木工事 |
34,174 |
7,491 |
- |
41,665 |
|
建築工事 |
25,471 |
50,861 |
- |
76,333 |
|
計 |
81,866 |
67,149 |
18,729 |
167,745 |
(注)手持工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
|
フィリピン共和国 |
パッシグ・マリキナ河川改修(フェーズ4)(パッケージ2) |
2025年10月完成予定 |
|
千代田区 |
雉子橋補修補強工事(第5号) |
2030年12月完成予定 |
|
東日本高速道路株式会社 |
首都圏中央連絡自動車道 松尾工事 |
2025年5月完成予定 |
|
阪神国際港湾株式会社 |
ポートアイランド(第2期)地区コンテナ南ふ頭再整備工事 |
2025年9月完成予定 |
|
添田町 |
添田町立小中学校建設事業校舎新築工事 |
2025年2月完成予定 |
|
横浜港埠頭株式会社 |
(本牧)D-5号ターミナル管理棟他整備工事 |
2025年3月完成予定 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
受注高 1,543億円(前期比138億円減)※当社個別
・国内土木事業は、複数の大型案件を受注した前期からの反動により91億円の減少、国内建築事業は、工場・倉庫など民間案件が引き続き堅調であったことから前期と比較して5億円の増加、海外建設事業は、注力していた大型案件を失注したことから前期と比較して53億円の減少となり、当社個別の受注高合計は前期と比較して138億円減少いたしました。
連結売上高 1,867億円(前期比184億円増)
・国内土木事業において繰越工事が前期と比較して大幅に増加したこと、また各事業における手持工事が順調に進捗したことにより、連結売上高は前期と比較して184億円増加いたしました。
連結売上総利益 233億円(前期比38億円増)
・売上高が前期と比較して大幅に増加したことにより増益となったほか、海外建設事業では前期に発生した一過性の費用引当の繰入がなくなったこともあり、連結売上総利益は前期と比較して38億円増加いたしました。
連結営業利益 108億円(前期比18億円増)
・売上総利益の増加により、連結営業利益は前期と比較して18億円増加いたしました。
② 資本の財源及び資金の流動性
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資金需要
当社グループの事業活動における資金需要は主に大きく分けて運転資金と設備資金需要の2つがあります。季節
的変動の影響を受けやすい建設業の事業特性を踏まえ、運転資金調達についてはコミットメントライン(特定融資枠)設定契約によるものとし、2023年9月に金融機関7行と総額100億円、期間1年のシンジケーション方式によるコミットメントライン設定契約を締結しております。また、2024年3月に金融機関1行と総額50億円、期間1年のコミットメントライン設定契約を締結しております。さらに、2024年5月には自航式ケーブル敷設船の建造に必要となる資金の借入として、金融機関11行と総額200億円、グリーンローンによるシンジケーション方式の実行可能期間付タームローン契約を締結しております。
その他、設備資金調達については、主要借入行を中心とした調達を行っております。
c.財務政策
当社グループの事業活動の推進、運営に必要な運転資金及び設備資金の調達を安定的に確保するため、金融機関からの借入による資金調達を行っております。
当連結会計年度末における長期借入金は16億15百万円、短期借入金は65億34百万円となり、有利子負債総額は前連結会計年度末比34億43百万円増の81億49百万円となっております。また引き続き、資金調達コスト低減にも取り組んでまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたっての重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、完成工事高及び完成工事原価の計上、販売用不動産の評価、貸倒引当金・完成工事補償引当金・工事損失引当金等の重要な引当金の計上、退職給付に係る負債の計上、繰延税金資産の計上等に関して、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果を連結貸借対照表及び連結損益計算書の金額に反映しております。但し、実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が当社グループの業績に重要な影響を及ぼすと考えております。
a.一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法による完成工事高
完成工事高の計上にあたっては、工事収益総額、工事原価総額及び連結会計年度末における工事進捗度を合理的に見積り、完成工事高を計上しております。工事施工中の事故・災害発生等による予定外の費用の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が変動し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における計画達成状況
|
連 結 |
年度計画 |
実績 |
達成状況 |
|
|
業績指標 |
売上高 |
1,925億円 |
1,867億円 |
(達成率 97.0%) |
|
営業利益 |
101億円 |
108億円 |
(達成率 107.8%) |
|
|
営業利益率 |
5.2% |
5.8% |
(計画値 +0.6ポイント) |
|
|
経常利益 |
96億円 |
100億円 |
(達成率 104.8%) |
|
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
60億円 |
70億円 |
(達成率 116.9%) |
|
|
財務指標 |
ROE(自己資本利益率) |
8.1% |
9.4% |
(計画値 +1.3ポイント) |
当社は、2023年12月8日開催の取締役会において、以下のとおり自航式ケーブル敷設船を建造することを決議し、2023年12月11日付で建造契約を締結いたしました。
(1)建造理由
洋上風力発電は着床式を中心に順調に案件形成が進捗しており、更に浮体式の技術開発やEEZ拡大検討なども進めつつ、政府目標である2050年カーボンニュートラル実現に向けて着実に進展しています。当社は、市場拡大が期待される洋上風力発電をはじめとした沖合建設工事用に、国内最大級の自航式ケーブル敷設船を建造いたします。
(2)ケーブル敷設船の概要
建造するケーブル敷設船は、国内の自然条件及び施工条件に適合するために最適な船体設計を行うことで、水深の浅い海域から浮体式洋上風力発電や直流送電事業を対象とする大水深海域までの広い海域において、高い稼働率での施工を可能としました。
また、本船は自航式ケーブル敷設船として活躍するとともに、高性能クレーンと広いデッキ面積によって、着床式基礎工事、浮体式洋上風力係留工事及び海洋資源関連事業等の多目的な分野に適用することができます。
|
主な仕様 |
総トン数約19,000t、推進出力約13,000kw、DPS Class2 |
|
船級Class NK |
|
|
宿泊90名(全室個室、シャワー・トイレ完備) |
|
|
船体主要寸法 |
全長150m×幅28m×深さ12m 最大喫水7.0m |
|
ケーブルタンク |
容量9,000t(可搬式含む) |
|
主/副クレーン |
250t/100t吊級(動揺低減機能付) |
|
その他設備 |
ヘリデッキ、4点係留装置(浅海域施工時)、2×ROVシステム、バッテリー蓄電システム |
|
投資金額 |
約300億円 |
|
資金調達 |
自己資金及び銀行借入(グリーンローン) |
(3)契約先の概要
契約先は外国法人であり、当社と契約先との間には、記載すべき資本関係、人的関係及び取引関係はありません。また、契約先は当社の関連当事者には該当しません。
(4)建造日程
|
取締役会決議日 |
2023年12月8日 |
|
契約締結日 |
2023年12月11日 |
|
完成引渡時期 |
2026年上期 |
(5)今後の見通し
2023年3月23日に公表いたしました中期経営計画において、当投資を反映しており連結業績に与える影響は軽微であります。
当社はコーポレート・メッセージとして『人と地球への責任を果たす企業へ』を掲げております。これは「技術は人のため、地球に生きるみんなのために使われるべきものであり、技術を使う我々は、それを理解して事業活動を持続していく」という精神と決意を謳っております。総合技術研究所をはじめ、本社技術部門ではこの決意に則って、研究開発に取り組む技術が地球環境に優しいこと、また生産性を向上させること、そしてより安全であることを希求して日々研鑽を積んでおります。
当連結会計年度においては「洋上風力関連事業をはじめとするカーボンニュートラルへの取り組み」「ICT及び自動化技術の導入による生産性向上」「建設DXの推進」等の社会課題に対して研究開発を推進してまいりました。
主な成果は以下のとおりです。なお国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業を対象に行った研究開発活動の総額は
(1) 海底ケーブル埋設機施工技術実証の洋上風力発電低コスト施工技術開発事業への採択
当社と株式会社関海事工業所(以下「関海事」)は、2023年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)から、風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/洋上風力発電低コスト施工技術開発(ウォータージェット式海底ケーブル埋設機施工技術実証)の採択を受けました。
洋上風力発電施設の設置範囲は非常に広いうえ、複雑で変化に富む日本の海底地盤にケーブルを埋設するためには、海底条件の変化に応じた施工が重要となります。
当社は洋上風力をはじめ多くの分野で基礎技術開発実績を有し、関海事は海底ケーブル工事における豊富な実績とノウハウを有しており、日本特有の海底条件に適用するケーブル埋設技術の確立により、洋上風力発電の低コスト化を実現すべく、両者の知見を活用し海底ケーブル埋設の施工技術開発に共同で取り組んでおります。
(2) TLP方式による浮体式洋上風力発電の実証試験事業における石狩湾沖合での大水深施工実験等の実施
当社は、2023年、TLP方式の浮体式洋上風力発電の実証試験事業において、外洋船を用いた大水深施工実験 (以下「本実験」)を北海道石狩湾沖合で実施いたしました。
これは、 NEDOにより、三井海洋開発株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社JERAとともに採択されたグリーンイノベーション基金事業の一つである「低コストと優れた社会受容性を実現するTLP方式による浮体式洋上発電設備の開発」のうち、当社が担当する係留基礎の現地実証を行うもので、本実験では、外洋船により大口径かつ長尺の鋼管杭を用いた基礎杭の施工性の検証及び設計引抜力の計測を実施いたしました。
当社はこれまで排他的経済水域(EEZ)をはじめとする外洋や大水深での様々な施工実績を有しておりますが、本実験の成果により、TLP係留基礎の施工技術開発が大きく前進するものと考えております。
また、同時期に、国内初となる繰返し荷重を用いた杭の引抜き実験も北海道石狩湾にて実施いたしました。この実験は試験体として国内最大規模の鋼管杭を用い、かつ繰返し荷重を作用させた引抜き実験であり、国内で初の試みとなりました。今後、両実験にて取得したデータ等に基づき、TLP係留基礎の設計及び施工技術を確立してまいります。
(3) 深層混合処理改良体へのCO2 固定化技術実証実験を実施
当社とエア・ウォーター株式会社(以下「エア・ウォーター」)は、エア・ウォーターが開発した小型CO2回収装置「ReCO2 STATION®」を使用して、深層混合処理船排気ガスから回収したCO2の深層混合処理改良体への固定化を目的とした実証実験を実施いたしました。
陸上用深層混合処理装置(実機)を使用した実地盤での実証実験は、ミキシングプラントでのセメントスラリー練混ぜ時に混入させたドライアイスによりCO2を溶解させ、そのセメントスラリーを実地盤に吐出・攪拌混合するもので、施工後に改良体の分析を行った結果、CO2が改良体に固定化されていることが確認できました。
2024年に自社作業船への小型CO2回収装置を搭載する予定ですが、引き続き深層混合処理船の排出ガスから回収したCO2をセメントスラリーや地盤へ様々な形態で供給し、固定量を増加させる手法の開発を行ってまいります。また、長期的なCO2固定量の変動などを把握しCO2固定量を最大化させる技術や固定量を適切に評価する技術を開発する予定です。
(4) AIを活用した技術開発(フライングビュー、AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ))
◆フライングビュー映像から効率的・経済的にAIモデルを作成
当社は、株式会社GAUSS、沖電気工業株式会社(以下「OKI」)と協働し、OKIのリアルタイムリモートモニタリングシステム「フライングビュー®※1」の広域俯瞰映像に表示される作業員や船舶などの画像データを使用し、クラウドを介してAIモデルを効率的・経済的に作成できる物体検知システムを構築いたしました。
今回、フライングビューの俯瞰映像から得られた画像データを使用し、クラウドを介してAIモデルを作成できる物体検知システムを構築することで、施工中におけるフライングビューの映像を誰でも・何処でも・容易にAI学習させることが可能となりました。これにより、従来に比べ導入費用と導入までの期間を6割以上削減することができました。
※1「フライングビュー®」は、沖電気工業株式会社の登録商標です。
◆土運船への積込管理支援システム「AI Loading Navi」を開発
当社は、富士通株式会社と協働し、土運船への積込映像からAI技術を活用して積込管理を支援するシステム「AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ)※2」を共同開発いたしました。
本システムは、グラブ浚渫中における土運船の船倉部分のカメラ画像を、リアルタイムにAI処理することで、土砂・水面・壁を画素単位で識別し、区画毎の土砂割合から積込位置の状態を自動判別して合図者・オペレーターを支援します。このAI処理は、高精度な画像識別ができるセマンティックセグメンテーション※3を用いており、過去2年分の積込画像を教師データとして学習させたものです。本システムの導入で、瞬時の定量的な自動判断が可能となり、作業効率の向上が期待されます。
※2「AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ)」は、特許共同出願中です。
※3セマンティックセグメンテーションとは、画像を画素単位で物体毎の領域に分類できるAIの画像認識技術です。
(5) 大型リクレーマ船※4による施工状況を4次元で「見える化」する「TORe-4D」を開発
リクレーマ船による揚土作業では、水中に投入した土砂の堆積状況の把握が困難で、作業員がレッド(重錘(じゅうすい)を使用して水深を確認し、土砂の投入管理を行う方法が一般的でした。そこで、土質性状を事前に把握し投入後の堆積状況を予測することで、状況の把握が困難だった水中への土砂投入作業を可視化することができる「TORe-4D」を開発し、当社保有の大型リクレーマ船「第二東揚号」に搭載いたしました。
「TORe-4D」は船体及びスプレッダー先端部に搭載した高精度のGNSS(全球測位衛星システム)によって正確な投入位置に誘導し、レーザー計測装置とベルトコンベアスピードモニターによって土量の管理を行うシステムです。事前に計測した含水比やスランプなどの土質条件に加え、気中部や水中部といった施工情報を複合的に組み合わせてシステムに反映し、投入位置及び水深データ(X,Y,Z)に時間の要素(t)を加えて四次元的に管理・記録することができるのが特徴です。
今後、「第二東揚号」が活躍する様々な現場にこのシステムを導入し、モデル精度の向上やシステムのアップデートを進め、より精度の高いシステム構築を行うことで、働き方改革・生産性向上を実現してまいります。
※4リクレーマ船は、海面の埋立工事等において、土運船より輸送されてきた土砂を揚土装置により揚荷し、コンベア等を介して埋立地等へ排出する作業船です。
(6) 港湾コンクリート構造物 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステム W-MG」を開発
当社は、大成ロテック株式会社及び株式会社フェクトと協働し、これまで陸上の鉄筋コンクリート構造物で施工実績のあるガラス質膜塗装を、港湾の鉄筋コンクリート構造物へ適合させた“港湾コンクリート構造物 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステム W-MG」”を開発いたしました。
本技術に用いる塗料は、遮塩性、遮気性及び遮水性に優れており、被膜層をコンクリート表面に形成することで、塩害等の著しい腐食環境下にある港湾構造物を保護します。また、ひび割れ追従性と耐候性も確認済みの塗装材のため、長期的な保護効果が期待できます。
塗料としての基本性能を有したうえで、無色透明でかつ長期的に透明度を維持できるので、維持管理における目視点検、診断、性能低下度の評価、維持・補修のサイクルの中で、塗布後もコンクリート表面の劣化状況や変状の進行を早期に発見できます。
さらに作業工程は、プライマー、下塗り、中塗り、上塗りの4工程(4日)が一般的ですが、本技術は、塗り重ね時間が短く、プライマーと上塗り2回の3工程を1日で施工完了できるため、作業期間を大幅に短縮でき、荒天待機が生じる港湾工事特有の海象による作業工程への影響を最小限にすることができます。
これまで、供試体による要素試験や実構造物における実証実験によるデータ収集を実施してきました。今後は、実証実験での長期的な性能確認を実施するとともに、さらに多用途に適用できる工法の開発を継続し、港湾コンクリート構造物の維持管理に貢献してまいります。なお、本技術は、一般財団法人沿岸技術研究センターが実施する港湾関連民間技術の確認審査・評価事業における評価証を取得しております。
(7) 2023年度 生成AIアプリ開発による設計施工プロセスの革新
当社は、建設プロジェクトの複雑化と情報共有の課題に対し、生成AI技術を活用した新たなデジタルワークフローを開発・導入いたしました。本取り組みは、設計施工プロセスにおける情報アクセスと意思決定の効率化を実現し、生産性向上、品質改善、更には安全性の強化に貢献しております。
建設プロジェクトは、企画から設計、施工、維持管理まで、膨大な情報がやり取りされる複雑なプロセスです。これまで設計者は、過去の指摘事項、法令データ、災害事例など、多岐にわたる情報を迅速かつ正確に確認する必要があり、情報検索に多くの時間を費やしておりました。特に、業務効率化と労働時間の短縮が喫緊の課題となっており、また、経験の浅い担当者の育成や、ベテラン技術者の経験値共有も重要な課題となっておりました。
これらの課題解決のため、当社はGoogle Cloud の Vertex AI Search を中心としたRAGシステムを導入いたしました。本システムは、過去の指摘事項、デジタル庁が公開する各種法令データ、不具合・災害事例などを統合し、設計者にチャットボット形式で迅速な回答やアドバイスを提供いたします。
本システム導入による主な効果は以下のとおりです。
・情報検索時間の短縮
膨大なデータの中から、設計者の求める情報を迅速かつ正確に引き出すことで、検索時間の短縮を実現いたしました。
・誰でも簡単に利用可能な環境構築
チャットボット形式を採用することで、情報検索の専門知識がなくても、誰でも簡単に利用できる環境を構築いたしました。
・同種課題の早期解決と新たな価値創造
過去の類似事例を迅速に参照することで、同種課題の早期解決を実現いたしました。また、生成AIによる情報分析を通じて、新たな価値創造や未然の事故防止にも貢献しております。
・経験値の共有と人材育成
ベテラン技術者の経験値をシステムに蓄積することで、経験の浅い担当者の育成を支援し、人材育成の効率化を図っております。
本アプリは、社内での試験運用を経て、2024年度より本格的な導入を開始しており、今後は検索範囲の拡大や外部情報との連携も視野に入れ、建設業界全体のDX化を加速させることを目指してまいります。
生成AI技術を活用した取り組みは、当社の成長戦略における重要な柱の一つであり、今後も更なる技術開発と社会貢献に尽力してまいります。
(8) 設計初期段階のトイレレイアウト検討を支援する生成AI設計支援システムを開発
当社は、株式会社テクトム(以下「テクトム」)が開発するディープラーニング(深層学習)を用いた画像生成AI技術を適用して、同時に複数のトイレレイアウト案を自動生成させることに成功いたしました。
建設業界は長時間労働や担い手不足が課題となっており、生産性向上と技術継承が求められております。意匠設計においても、顧客から住居や物流倉庫、商業施設等のレイアウトに対して様々な要望があることから提案のレパートリーと発想力が求められ、良質なレイアウトの企画検討に時間がかかる、あるいは短時間に最良なレイアウトにたどり着けないといった課題がありました。
このような背景から、設計者のクリエイティブな発想を支援しながら検討業務を効率化することを目的に、2021年よりトイレレイアウトの自動設計AIにおける実証実験を行ってまいりました。本実証実験では、従来の遺伝的アルゴリズムによるアプローチのみではなく、深層学習でのアプローチも用いており、当社の熟練設計者が過去に作成した設計図面を中心に、およそ1,400枚をAIに学習させました。これにより、自動設計結果に求める膨大なルールを記述する必要がなく、過去の熟練技術者の傾向を学習した人間らしいデザインを生成することが可能となります。
このように学習させた結果、設計者が検討させたいエリアを指定するだけで複数のレイアウト案を自動生成させることに成功いたしました。また、その後の開発において、男女の別、大便器数、小便器数、洗面器数の条件を指定することで、指定条件を満たすレイアウト案を自動生成させることが可能となりました。
当社は今回の実証実験結果を受け、テクトムが提供するAIプラットフォーム”Tektome”を活用したトイレレイアウト自動設計AIをAI Design Assistantとして位置付け運用を開始いたしました。また、将来的には様々な用途の施設においてレイアウトを自動生成できるシステムへと進化させ、単純作業にかかる労働時間を削減しながら、設計者がよりクリエイティブな作業に集中できるように支援する役割を担わせることにより、設計業務の品質向上を目指すとともに業務の省人化・省力化を目指してまいります。